JP2971326B2 - 連続鋳造用ロール - Google Patents
連続鋳造用ロールInfo
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Description
用いられる連続鋳造用ロールに関し、その使用環境にお
いて、特に耐ヒートクラック性および耐磨耗性の有利な
改善を図ろうとするものである。
引き抜き部には多数のロールが設けられている。これら
のロールは、高温の鋳片に接するとともに、水や水蒸気
にもさらされるといった過酷な環境の下で使用される。
例えば、ロールが1回転する間にうける温度履歴は、図
5の測定例からもわかるように、ロールが鋳片と接しな
い時には200℃程度であるが、鋳片と接する時には5
00℃程度まで上昇する過酷なものである。すなわち、
このロールは、操業時には上述した熱履歴を繰り返して
受けることに加え、スケールが付着した高温の鋳片と直
接接触するために、極めて厳しい環境で使用されるもの
である。
ルは損耗が激しくそのために、ロールまたはロールを組
み込んだセグメントを定期的に交換する必要があった。
ところが、ロールまたはセグメントの交換に必要なコス
トは、その補修、再生コストを含めると、連続鋳造装置
のメンテナンスに必要なコストの約30%も占めるとい
われている。従って、連続鋳造用ロールにかかるコスト
を削減することは、連続鋳造コストの低減ひいては鉄鋼
製品のコストの低減に大きく寄与することになり、ロー
ル寿命の延長は多年の課題となっていた。
で使われるロール寿命の延長を図るには、次のような材
料特性を有することが必要である。 1)熱履歴の繰り返しにより受ける熱衝撃、熱疲労に起
因してロール表面に生ずるヒートクラックが少ないこと
(耐ヒートクラック性)。 2)鋳片との接触により起こる磨耗が少ないこと(耐磨
耗性)。 3)水、水蒸気環境の下での酸化や腐食が少ないこと
(耐食・耐酸化性)。 4)鋳片から受ける負荷に耐えうること(機械強度)。
ついては、これまでにも数多くの提案がなされている。
例えば、開発初期はSC材を用いていたが、その後DI
N規格の21CrMoV511、JIS規格のSUS 431 などの材料
を用いることにより、機械強度(高温の機械強度を含
む)の改善を図ってきた。さらに、最近では、これら材
料の耐ヒートクラック性や耐磨耗性を向上させるため
に、その材料を心材として心材の表面に数mm程度の13Cr
−(1〜4)Ni系の肉盛溶接を施すことも行われるようにな
ってきた。さらにはSUH 660(15Cr-25Ni)の肉盛ロールが
使用される場合もある。
盛、すなわち13Cr−(1〜4)Ni系の肉盛を施したロールで
あっても、未だ、耐クラック性および耐磨耗性の点では
十分ではなく、連続鋳造コストの大幅な低減をもたらす
までには至っていないのが実情である。また、上記SUH
660 の肉盛を施したものは、耐クラック性および耐磨耗
性の点は改善されたものの、そもそも肉盛材の化学組成
が高Niであるために、ロールそのもののコストが高くな
り、それ故に、連続鋳造コストの大幅な低下にはつなが
らなかった。以上説明したように、例えば、肉盛材の化
学組成が低Ni材(低コスト材)の場合には耐クラック性
や耐磨耗性が十分ではなく、一方高Ni材は、ロールその
もののコスト高を招くという問題を抱えていた。
は、肉盛材の化学組成が低Ni材であっても上記既知技術
が抱えている上述した問題を惹起することのない連続鋳
造用ロールを提供することにある。この発明の他の目的
は、肉盛材の化学組成が低Ni材であって、耐クラック性
および耐磨耗性を兼備した連続鋳造用ロールを提供する
ことにある。
に向けて鋭意研究した結果、発明者らは、意外にも、肉
盛材に析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼を適用
すれば、耐クラック性および耐磨耗性を改善することが
可能となることを見いだし、本発明を完成するに至っ
た。
した下記の構成を要旨とするものである。 (1) 心材の表面に、化学組成が、 C:0.07wt%以下、 Si:1.00wt%以下 、Mn:1.00wt%以下、 Ni:3.00〜5.00wt%、 Cr:15.5〜17.5wt%、 Cu:3.0 〜5.0 wt%、 Nb+Ta:0.10〜0.30wt%、P:0.030 wt%以下、 S:0.030 wt%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的
不純物からなる、 析出硬化型マルテンサイト系ステンレ
ス鋼の肉盛層を有することを特徴とする連続鋳造用ロー
ル。
(1)記載の連続鋳造用ロール。
盛材として鋭意実験を重ねた。その結果、従来、連続鋳
造用ロールの肉盛材として全く顧みられたことがなかっ
た、析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼、とくに
17-4 PH 系(SUS 630 系)のステンレス鋼が有効である
との知見を得た。すなわち、この鋼を連続鋳造用ロール
のを肉盛材として採用したところ、耐ヒートクラック性
および耐磨耗性が著しく向上するほか、耐食性の点でも
優れた特性を示すことを見いだしたのである。なお、上
記17-4 PH 系のステンレス鋼に代表される析出硬化型マ
ルテンサイト系ステンレス鋼は、従来、その常温の高強
度特性を生かして、シャフト、航空機部品など限られた
特殊な用途の材料としては用いられていたものである。
しかし、連続鋳造用ロールとしては従来、全く検討され
ていなかった。その理由は、これらの析出硬化型マルテ
ンサイト系ステンレス鋼の使用温度は、いずれも比較的
低温であり、高温における使用は勿論、高温における特
性についてはもともと注目されていなかったからであ
る。
明者らは、まず析出硬化型マルテンサイト系ステンレス
鋼として17-4 PH PH系ステンレス鋼を選び、その0.2
%耐力について600 ℃の温度域まで調査した。その結果
を、13Cr-4Ni材および21CrMoV511と対比して図1に示
す。図1から、17-4 PH 系ステンレス鋼の強度は、常温
では、従来多用されていた13Cr-4Ni材と殆ど同じ強度を
示すが、連続鋳造用ロールが鋳片と接触する際の温度に
相当する高温域では、13Cr-4Ni材よりも50 N/mm2以上も
高い強度を有することがわかった。いわゆる、析出硬化
型マルテンサイト系ステンレス鋼が有するこのような性
質、すなわち、高温域にて高強度を示すために、このよ
うな鋼を肉盛層としてロール表面に形成すると、結果的
に連続鋳造用ロールの耐クラック性および耐磨耗性を向
上させることができるのである。なお、17-4 PH 系ステ
ンレス鋼の耐食性(海水中)の試験結果を比較材のそれ
とともに表1に示す。表1から、17-4 PH 系ステンレス
鋼は、耐食性においても、SUS 410 や SUS 431のステン
レス鋼よりも優れていることがわかった。
硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼として、好ましい
化学組成を上記要旨構成のとおりに限定した理由につい
て説明する。
耗性向上のために必要な元素であるが、0.07wt%を超え
て添加するとマトリックスの硬化および炭化物の析出が
過剰になり、使用時における熱衝撃および熱疲労により
ヒートクラックが発生しやすくなるほか、肉盛溶接時に
おける溶接作業性が悪化するので、その添加範囲は0.07
wt%以下、好ましくは0.05wt%以下とする。
て有効な元素であるが、過剰に添加しても効果が飽和す
るのみでなく溶接割れを生じやすくするので、その添加
範囲は1.00wt%以下、好ましくは0.20〜0.60wt%とす
る。
て、また均一なマルテンサイト組織を形成させるために
有効な元素である。しかし、1.00wt%を超えて添加する
と、延性、靱性および高温酸化性が劣化するので、その
添加範囲は1.00wt%以下とする。なお、Mnの好まし添加
範囲は、強度確保を考慮して、0.40〜0.80wt%の範囲で
ある。
ンサイト組織を形成させ、強度を向上させる元素であ
る。その効果を得るためには、少なくとも3.00wt%の添
加が必要であるが、5.00wt%を超えて添加しても効果が
飽和するので、Niの添加量は3.00〜5.00wt%とする必要
がある。なお、Niの好ましい添加範囲は3.50〜4.50wt%
である。
磨耗性、耐酸化性および耐食性を確保するためには不可
欠な元素である。これらの特性は、Cr添加量が15.5〜1
7.5wt%の範囲で達成される。すなわち、15.5wt%未満
では耐酸化性および耐食性が低下し、一方、17.5wt%を
超えると強度の低下をもたらすからである。
なわずに高温強度を向上させるのに極めて有効な元素で
あるとともに、Cuを含む析出物を介して耐食性改善にも
寄与する元素である。その効果を得るためには、Cuの添
加は少なくとも3.0 wt%必要であるが、5.0 wt%を超え
ると溶接性を劣化させるので、その添加範囲は3.0 〜5.
0 wt%とする。
いずれも組織の微細化に寄与し、その効果は互いに置換
可能である。前記効果を得るためには、Nb+Taにして0.
10wt%以上必要であるが、0.30wt%を超えると溶接性が
悪くなる。したがって、その添加範囲はNb+Taにして0.
10〜0.30wt%とする。
せる有害な元素であり、その影響は0.030 wt%を超える
と顕著になるので、0.030 wt%以下、好ましくは0.015
wt%以下にする必要がある。
靱性を劣化させる有害な元素であり、その影響は0.030
wt%を超えると顕著になるので、0.030 wt%以下、好ま
しくは0.010 wt%以下にする必要がある。
レス鋼からなる肉盛層の好ましい厚みを、3〜6mmの範
囲としたのは、3mm未満では肉盛再生する頻度が多くな
り、また6mmを超えると1回の再生費用が高くなるから
でる。
説明する。まず、肉盛方法は、溶接法、とくに帯状電極
を用いたサブマージアーク溶接が適している。このとき
用いる電極の化学組成は、心材の希釈率を考慮して決定
すればよい。溶接の後、後熱処理と析出処理を兼ねた 4
50〜 650℃で4〜8hrの熱処理を施す。その際、熱処理
温度を変化させることによって、強度、延性、硬さ等を
所望の範囲に調整することができる。なお、心材の鋼種
については特に定める必要はないが、前述したように、
ロールが鋳片から受ける負荷に耐えるために必要な強度
は保持していることが要求される。このことから、心材
としての好適な鋼種は、ロールの使用場所によっても必
要な強度レベルが異なるが、例えばの引張強さ60kg/mm2
以上の溶接性の良好な低合金鋼が挙げられる。また、心
材の化学組成についても同様に特に定める必要はない
が、例えば、好適な鋼種としては、DIN21CrMo
V511(C:0.17〜0.25wt%、Si:0.30〜0.60wt%、
Mn:0.30〜0.50wt%、P:0.035 wt%以下、S:0.035
wt%以下、Ni:0.60wt%以下、Cr:1.2 〜1.5 wt%、M
o:1.0 〜1.2 wt%、V:0.25〜0.35wt%) のようなも
のが推奨される。
び心材から15mmφ× 5mmの試験片を採取し、この試験片
に表3に示す条件で加熱、冷却の熱サイクルを加えた
後、試験片の縦断面に発生したクラックの大きさ分布を
観察した。その結果を図2に示す。図2より、本発明の
肉盛層に適用する析出硬化型マルテンサイト系ステンレ
ス鋼は、13Cr-4Ni材(比較材)や心材に比べて、耐ヒー
トクラック性が著しく優れていることがわかった。
て同表に示す2種の帯状電極を用いてサブマージアーク
溶接による肉盛を行った後、600 ℃で8hrの熱処理を施
し、機械研削加工により仕上げて4.5 mm の肉盛層を形
成し、380 mmφ×2350mmのロールに仕上げた。得られた
連続鋳造用ロールの肉盛層の化学組成を同様に表2に示
す。このロールを、連続鋳造設備の水平部の位置に組み
込み、鋳造経過によるクラック深さと磨耗量の変化の状
況を調査した。その結果を、それぞれ図3と図4に示
す。図3および図4から、本発明による連続鋳造用ロー
ルは、従来の13Cr-4Ni材によって肉盛層を形成したもの
(比較材)に比べ、クラック深さ、磨耗量ともに約1/
5に激減したことが認められた。
鋳造用ロールの耐ヒートクラック性および耐磨耗性を著
しく向上させることができる。しかも、このような優れ
た特性を示す連続鋳造用ロールを低Niの肉盛で達成でき
るので、連続鋳造装置のメンテナンスコストの削減に大
きく寄与する。また、本発明は、肉盛した連続鋳造用ロ
ールをそれが磨耗した場合には、再び肉盛を繰り返し研
削して製品とする場合にも適用できる。
示すグラフである。
すグラフである。
ラック深さの変化を示すグラフである。
耗量の変化を示すグラフである。
示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 心材の表面に、化学組成が、 C:0.07wt%以下、 Si:1.00wt%以下 、Mn:1.00wt%以下、 Ni:3.00〜5.00wt%、 Cr:15.5〜17.5wt%、 Cu:3.0 〜5.0 wt%、 Nb+Ta:0.10〜0.30wt%、P:0.030 wt%以下、 S:0.030 wt%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的
不純物からなる、 析出硬化型マルテンサイト系ステンレ
ス鋼の肉盛層を有することを特徴とする連続鋳造用ロー
ル。 - 【請求項2】 肉盛層の厚みが3〜6mmである請求項1
記載の連続鋳造用ロール。
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JP14757494A JP2971326B2 (ja) | 1994-06-29 | 1994-06-29 | 連続鋳造用ロール |
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JPH0810922A JPH0810922A (ja) | 1996-01-16 |
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CN103192045A (zh) * | 2013-04-28 | 2013-07-10 | 攀钢集团江油长城特殊钢有限公司 | 一种连续铸造生产大方坯马氏体不锈钢的方法 |
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- 1994-06-29 JP JP14757494A patent/JP2971326B2/ja not_active Expired - Fee Related
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