JP2969902B2 - 有機薄膜 - Google Patents

有機薄膜

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は有機薄膜に係り、特にフォトダイオードアレ
イやセンサーアレイ、或いはパターン認識素子等の情報
処理素子等に有効なドメイン構造を有する単分子膜を含
む有機薄膜を含む有機薄膜に関する。
[従来の技術] 近年、有機薄膜に対する関心が高まっている。即ち、
有機材料の持つ多様性を生かし、有機分子を配向性良く
薄膜化することによる、高性能、高集積、高効率の素子
開発が試みられている。有機薄膜の形成方法にはLB(ラ
ングミュアブロジェット)法、蒸着法、キャスト法等が
あるが、中でもLB法は、 Åオーダーで膜厚の制御された単分子膜ないし単分
子累積膜を形成することができる。
有機分子の配向を制御して並べることができる。
常温、常圧下で成膜できるため、種々の有機分子に
適用でき、容易にしかも安価に成膜することができる。
等の利点を有し、最近注目を集めている手段である。こ
のLB法によれば、単なる絶縁性の薄膜のみならず、様々
な機能を有する有機薄膜を作製することができることか
ら、例えば、光電変換素子、メモリー材料、導電性材
料、表示素子、非線形光学素子、レジスト材料、ガスセ
ンサー等の各種センサー等への応用が盛んに試みられて
いる。LB法は、更には、生体分子や有機分子の性質を分
子レベルで制御・利用した素子、いわゆるバイオ素子・
分子素子を実現する有力な手段と考えられている。
[発明が解決しようとする課題] ところが最近、有機薄膜の高集積化、多機能化を図る
上で、次のようなLB法の問題点が明かとなってきた。LB
法は本質的に、膜厚方向の高集積化、多機能化を得意と
する。即ち、種々の機能を有する単分子膜を様々に組み
合わせて累積し、累積膜のヘテロ化を行なうことで層方
向の高集積化、多機能化を比較的容易に達成できる。し
かし、膜内面での高集積化、多機能化を非常に不得意と
するのである。即ち、従来のLB法では膜内における2次
元的な構造を精密に制御することができず、複雑なパタ
ーン形成を要する高集積化素子、多機能素子へ直接応用
することが不可能である。この点を解決する手段とし
て、単分子膜或いは単分子累積膜の形成時、ないし形成
後に、電子線、X線、紫外線等のエネルギー線を照射す
ることにより望みのパターンを形成する等の方法が提案
されている。しかし、このような方法はエネルギー線を
照射するという過程が加わるため、操作が煩雑となる。
しかも、かかるエネルギー照射が単分子膜或いは単分子
累積膜の成膜分子にどのような影響を与えるかが十分に
は解明されているとは言い難く、LB法により制御された
膜構造及び膜機能が劣化してしまう恐れがある。
以上のように、2次元構造が制御された信頼性ある単
分子膜は、いまだ得られていないのが現状である。この
ような単分子膜、例えば機能性分子が一定領域を占める
別々のドメイン内に閉じ込められた構造を有する単分子
膜、が実現できれば、これを含む累積膜を作製すること
により、フォトダイオードアレイやセンサーアレイ等の
高集積化素子、高機能化素子への応用はもちろんのこ
と、人間の視覚や脳神経系のような高度な情報処理を行
なう素子への展開が可能であると期待されていた。
[課題を解決するための手段及び作用] 本発明の有機薄膜は、固体基板上に機能性分子を主と
して含む単分子膜を累積してなる有機薄膜において、該
有機薄膜を構成する累積膜のうち少なくとも1層が、一
般式(I)又は(II) で表されるポルフィリン誘導体及びマトリクス分子を含
む単分子膜から構成され、該単分子膜において前記ポル
フィリン誘導体がドメイン構造を形成し、このドメイン
構造が前記マトリクス分子からなる領域によって互いに
隔てられていることを特徴とする。
即ち、本発明者らは、生体での光合成系や電子伝達系
等で優れた光機能、電子機能を発揮し、自ら組織体を形
成する能力(自己組織化能)を有する化合物として知ら
れているポルフィリン誘導体について鋭意検討した結
果、前述の問題点を克服する単分子膜を見出し、本発明
を完成するに到った。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する固体基板としては、清浄なものであ
れば特に限定はされず、絶縁性のものでも導電性のもの
でも使用できる。絶縁性の基板としては例えば、石英
板、ガラス板等のセラミックス、ポリイミドフィルム、
ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチック
フィルム等が挙げられる。また、導電性の基板としては
例えばアルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ等の金属
又はそれらの合金、或いは、ガラス板やプラスチックフ
ィルム等の絶縁性基板上に、金属やインジウム及び/又
はスズの酸化物等の導電性の金属酸化物、或いはポリピ
ロール、ポリ(3−メチルチオフェン)等の導電性樹脂
等の薄膜を形成したもの、或いはシリコン、ガリウム、
ヒ素等の半導体基板等が用いられる。
有機漠膜の光電変換機能を利用して、これをフォトダ
イオード等の光情報処理素子へ応用する場合には、導電
性の基板を用いるのが好ましい。この場合、一般には、
ガラスや石英板等の絶縁性基板上に金属や、金属酸化物
の薄膜形成したものが用いられる。このときの誘電性薄
膜の厚みは、必要とされる導電度と透明性により決めら
れるが、通常は10〜2000Åの範囲である。
本発明の有機薄膜は、このような固体基板上に機能性
分子を主として含む単分子膜を累積してなるものであ
る。かかる機能性分子としては、例えば、ナフタレン、
アントラセン、ピレン、ペリレン等の縮合多環炭化水素
化合物、シアニン、メロシアニン、スクアリリウム、フ
タロシアニン、ポルフィリン、トリフェニルメタン、カ
ルバゾール、ナフトキノン、アントラキノン等の光導電
性化合物、オゾベンゼン、スピロピラン、スピロオキサ
ジン、レチナール等の光異性化を行う化合物、クライン
エーテル、シクロデキストリン等の包接機能を有する化
合物、TTF−TCNQ等の導電性化合物、ローダミン、フル
オレセイン、アクリジン、ニトロベンゾジアゾール等の
蛍光性化合物が挙げられる。
通常、このような機能性分子は、単独で安定な単分子
膜を形成しないので、単分子膜形成材料として、アラキ
ン酸やステアリルアミン等の親水基を有する長鎖アルカ
ンを加えて安定な単分子膜を形成させることができる。
又は、上記機能性分子を両親媒性化して、機能性分子単
独で安定な単分子膜を形成させることもできる。
両親媒性化の方法は、従来公知の方法を用いればよく
(例えば、「LB膜とエレクトロニクス」16〜32頁、シー
エムシー、1986年)、機能性分子がそれ自身で親水性の
場合は、適当な疎水基を導入する。一方、機能性分子が
疎水性であるときは、適当な親水基を導入する。一般に
は、機能性分子に適当な親水基と疎水基とを与えて、両
親媒性を付与する。
本発明においては、有機薄膜を構成する単分子膜のう
ち、少なくとも1層が前記一般式(I)又は(II)で表
されるポルフィリン誘導体及びマトリックス分子から構
成される。前記一般式(I),(II)において、Arは置
換基を有していても良いベンゼン、ナフタレン、アント
セラン、アセナフテン、インデン、フルオレン、アズレ
ン等から誘導される1価の芳香族炭化水素基を表す。置
換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の低
級アルキル基;エトキシ基、エトキシ基、プトキシ基等
の低級アルコキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基等
のアリールオキシ基;ベンジル基,フェネチル基等のア
ラルキル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロ
ゲン基;ニトロ基;シアノ基;水酸基;メトキシカルボ
ニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;アセチ
ル基、ベンゾル基等のアシル基等が挙げられる。
Rは、炭素数が1〜30のアルキル基であるが、特にオ
クチル基、デシル基等の直鎖アルキル基が好ましい。
Mは金属原子を主体とする陰イオンを表し、銅、亜
鉛、マグネシウム、カドミウム、パラジウム等の2価の
金属イオンはもちろん、例えば3価以上のインジウム、
アルミニウム、スズ、ゲルマニウム、鉛、チタン、バナ
ジウム、ルテチウム等の金属イオンと塩素、臭素等のハ
ロゲン原子;酸素原子;メチル基、ブチル基等のアルキ
ル基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ
基等が結合し、2価のイオンとしてポルフィリン環の窒
素原子に配位しているものであっても良い。
Xとしては例えば、塩素、臭素、ヨウ素原子や硫酸、
トルエンスルホン酸等から誘導される1価の陰イオン基
が挙げられる。
前記一般式(I)又は(II)によって表されるポルフ
ィリン誘導体は、各々単独で用いても2種類以上を混合
して用いてもよい。
前記マトリックス分子としては、親水基と長鎖の疎水
性とをバランス良く合わせ持つ両親媒性分子が用いられ
る。ここで親水基としては、例えば、カルボキシル基、
スルホン酸基、及びそれらの塩、或いは水酸基、アミノ
基、エステル基、アミド基、ピリジニウム基等が挙げら
れる。また、疎水基としては、例えば、直鎖状或いは分
岐状のアルキル基、ビニル基等のオレフィン系炭化水素
基、ビニリデン基等のジオレフィン系炭化水素基、エチ
ニレン基等のアセチレン系炭化水素基、フェニル基、ナ
フチル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基等が挙げ
られる。これらの疎水基には、フッ素原子等の疎水性基
が置換していても良い。
本発明に係るマトリックス分子は、このような親水基
と疎水基が、各々1つずつ、或いは2個以上組み合わさ
れて形成される両親媒性分子である。この際、各々の基
は直接結合していても良く、エーテル結合、エステル結
合、アミド結合等を介して結合していても良い。
本発明におけるマトリックス分子を更に具体的に例示
すると、アラキン酸、ステアリン酸、ω−トリコセン
酸、10,12−トリコサジイン酸等の長鎖脂肪酸やその金
属塩、又はそれらのエステルやアミド、或いはステアリ
ルアルコールやステアリルアミンのような長鎖脂肪族ア
ルコールやアミン等、親水性を有する長鎖アルカン類が
挙げられる。
本発明は有機薄膜は、公知のLB法(例えば、「LB膜と
エレクトロニクス」1〜15頁 33〜46頁、シーエムシ
ー、1986年)により作製するのが好ましい。即ち、親水
基と疎水基とを合せ持つ分子(両親媒性分子)を親水性
液体表面上に展開して、適当な表面圧を加えることによ
り単分子膜を作製したのち、これを固体基板上に累積す
る方法である。
液体表面上の分子は2次元系の特徴を有する。両親媒
性分子が展開される液体の表面積が大きい時は、分子は
まばらに存在しているが、仕切り板等にてこの表面積
(A)を圧縮して行くと、各分子は互いに接近して2次
元の集合状態を形成し、その集合状態に応じた表面圧
(π)を示す。そして、表面積が適当な大きさであれ
ば、分子は、単分子層を形成するが、更に圧縮を進める
と単分子層は崩壊してところどころ2分子層或いはそれ
以上の多層膜構造をとるようになり、圧縮によってもは
や圧力は増加しなくなる。この際の表面圧を「崩壊圧」
という。通常、崩壊圧が高いほど、その単分子膜は安定
であり、良好な2次元固体状の膜を形成する。
表面圧(π)を縦軸にし、表面積(A)を横軸にし
て、両者の関係をブロットした曲線をπ−A曲線と呼
び、当該単分子膜に特徴的な形を示す。
単分子膜が、崩壊圧の異なる2種類の成膜分子で構成
されている場合、そのπ−A曲線は、通常、その分子同
士の間に相互作用がないと、おのおのの分子によるπ−
A曲線を重ね合わせた形になる。即ち、表面積を圧縮し
ていくと、表面圧が増加していくが、一方の分子の崩壊
圧に達すると表面圧の増加はにぶり、π−A曲線の傾斜
が緩くなってくる。(以下、このような変化が起こる点
を、「転移点」と称す。)この転移点においては、表面
積の圧縮によって表面圧が殆ど変化しない平坦部が現れ
ることもある。ところが、更に圧縮を進めると再び表面
圧の増加が始まり、遂には他方の分子の崩壊圧に達する
と再び表面圧の増加が停止する。
一方、崩壊圧の異なる2種類の成膜分子の間に何らか
の相互作用が働く場合、転移点の表面圧は一方の分子の
崩壊圧とは必ずしも一致せず、それよりも高くなったり
低くなったりすることがある。(以下、この場合の転移
点における圧力を、その分子の「崩壊圧に相当する圧
力」と称する。)。
特に、崩壊圧の異なる2種類の成膜分子間の相互作用
が強い場合、転移点の特徴、即ち、π−A曲線の傾斜の
緩み、或いは平坦部が全く観測されなくなり、あたかも
1種類の分子から構成された単分子膜の示すπ−A曲線
のような、単調な曲線になる場合もある。
以上のような性質は、単分子膜を構成する分子が3種
類以上であるときも同様に観測される。
しかして、2次元固体状の単分子膜において、表面圧
を一定に保ち、固体基板を垂直に上下させると、単分子
膜が一層ずつ移し採られ、累積膜が形成される。
この方法を本発明の有機薄膜の作製に適用するには、
具体的には以下のようにする。
成膜分子をクロロホルム等の発揮性有機溶媒に溶か
し、これを純水等の親水性液体表面上に展開する。次に
液面上に設けた仕切り板を移動させて表面積を圧縮す
る。単分子膜が適当な凝集状態に達したら、表面圧を一
定に保持し、静かに固体基板を垂直に上下させることに
より、単分子膜を基板上に移しとる。この操作を必要回
数繰り返すことにより多層の累積膜が得られる。更に必
要であれば、異なる成膜分子について同様の操作を繰り
返し、ヘテロ構造の累積膜を得る。特に、前記一般式
(I)又は(II)で示されるポルフィリン誘導体とマト
リックス分子とからなる単分子膜を形成する際には、ポ
ルフィリン誘導体をドメイン化させるため、以下の操作
を行う。
上述の単分子膜の圧縮に伴い、表面圧を増加するが、
通常、マトリックス分子の崩壊圧よりもポルフィリン誘
導体の崩壊圧の方が低いので、ポルフィリン誘導体の崩
壊圧に相当する圧力でπ−A曲線の傾斜の緩み、或いは
平坦部が現れる。この部分を超えて更に圧縮を続ける
と、再び表面圧が大きく増加し始めるので圧縮を止め、
表面圧がポルフィリン誘導体の崩壊圧に相当する圧力よ
りも低くなるまで単分子膜を拡張する。この、圧縮・拡
張の操作を必要回数繰り返すことにより、マトリックス
分子からなる領域で互いに隔てられたポルフィリン誘導
体のドメイン構造が形成される。目的のドメイン構造が
得られた時点で、単分子膜に一定の表面圧をかけ、静か
に清浄な導電性基板を垂直に上下させることにより、単
分子膜を基板上に移しとる。この操作を必要回数繰り返
すことによりポルフィリン累積膜が形成される。
ポルフィリン累積膜を累積するタイミング及び累積の
層数は、有機薄膜に付与すべき機能によって決まる。例
えば、光電変換素子への応用を目的とするのであれば、
かかる単分子膜が単独で高い光電変換機能を有している
ので、これを導電性基板上に1層以上累積するだけで良
い。また、更に高度な光情報処理素子へ応用するために
は、ポルフィリン累積膜の下層及び/又は上層に電界感
受性の色素累積膜、例えば電界発光性の色素、或いは電
界感受性の蛍光色素等を含む累積膜を形成する等の層形
成が必要である。
本発明におけるドメイン構造は、境界線によって囲ま
れた有限の面積を有する領域、を意味する。その大き
さ、形、は成膜分子の組合せ及びその混合割合、親水性
液体の諸条件、圧縮・拡張の回数等に依存して決定され
るので、これらの条件を適当に設定して目的とする構造
を実現する。この際、ドメイン構造が形成される様子或
いは形成されたドメイン構造は、ポルフィリン誘導体が
蛍光性であるので、蛍光顕微鏡によりその場観察が行な
え、便利である。
なお、ポルフィリン誘導体とマトリックス分子との混
合割合は、目的とするポルフィリン誘導体のドメインの
大きさ及びドメイン同士の間隔によって決定されるが、
通常はマトリックス分子がポルフィリン誘導体に対し、
モル数で5倍以上存在することが好ましい。マトリック
ス分子の比率が少なすぎると、ポルフィリンが明瞭なド
メイン構造を形成しなくなる傾向がある。
単分子膜を展開する親水性液体としては、通常、純水
又は純水にナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウ
ム、カドミウム等の金属塩を加えたものが好適に用いら
れるが、マトリックス分子として長鎖脂肪酸類を使用す
る場合は、ポルフィリン誘導体のドメイン構造を形成す
る前に限って、2価又はそれ以上の価数を有する陽イオ
ンを加えない方が好ましい。即ち、かかる陽イオンの存
在は長鎖脂肪酸を凝集させる効果を有し、ポルフィリン
誘導体のドメイン化を妨げる傾向にある。従って、かか
る陽イオンは、ポルフィリンのドメインの形成された後
に、単分子膜の安定性を向上させる等の目的に応じて、
親水性液体に適宜添加すれば良い。親水性液体の温度
は、ポルフィリン誘導体のドメインを形成させる前に限
って、通常10℃以上に設定し、好ましくは20℃以上に設
定される。この温度が低すぎると、ポルフィリン誘導体
が明瞭なドメインを形成しなくなる傾向がある。ポルフ
ィリン誘導体がドメインを形成した後では、この温度に
特に制限はないが、単分子膜の変質をさけるため、50℃
以下に保持することが好ましい。
なお、本発明において、単分子膜を固体基板上に移す
際、基板と液体表面とのなす角度になんら制限はなく、
0〜90度の間の適当な角度に設定し、累積を行なうこと
ができる。
本発明の有機薄膜を光電変化素子として使用するため
には、通常、対抗電極が用いられる。対抗電極は、単分
子累積膜と密着させた状態で用いる場合と、電解質を含
む液を隔てた状態で用いる場合とがある。
対抗電極を単分子累積膜と密着させた状態で用いる場
合、単分子累積膜上に直接対抗電極を形成する。通常
は、アルミニウム、銀、金、マグネシウム、ニッケル、
パラジウム、テルル、インジウム等の金属或いはこれら
の合金を電極として真空蒸着法、スパッタリング法等に
より形成することが多いが、ピロールやチオフェン等
の、重合体として導電性のポリマーとなるモノマーの誘
導体からなるLB膜(LB法による薄膜)を形成し、重合と
ドーピングによる導電化処理による電極として用いても
良い。更に、これらの電極或いは、フィルムやガラス基
板上に形成されたインジウム及び/又はスズの酸化物等
からなる、いわゆる透明電極を密着させて、対抗電極と
して用いることもできる。これらのうち、通常は、蒸着
法により対抗電極を形成する。
また、光電変換素子として使用する場合は、導電性基
板と対抗電極のうち、少なくとも一方は光を透過する機
能を有していることが必要である。
[実施例] 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する
が、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に
より限定されるものではない。
実施例1 下記構造式 で表されるポルフィリン誘導体(化合物No.1)とアラキ
ン酸とをそれぞれ、0.25mmol/、2.5mmol/の濃度と
なるようにクロロホルムに溶解した。この溶液を純水
(pH7、30℃)上に一滴ずつ落として単分子膜を形成し
た。仕切り板にて単分子膜を圧縮し、そのπ−A曲線を
測定した。これを第1図に示す。第1図に示す如き、圧
力30mN/m付近に、ポルフィリンの崩壊圧相当する平坦部
が確認された。
この単分子膜についてポルフィリンの発する蛍光を利
用し、蛍光顕微鏡を用いたドメイン構造の観察を行なっ
た。単分子膜を水面に展開した直後では、アラキン酸が
大きさ数ミクロン程度の円形のドメイン構造を形成して
おり、ポルフィリンは全くドメインを形成せずに、単分
子膜一面に広がっていた。この状態で単分子膜の圧力を
15mN/mに保持し、アルミニウムを蒸着したガラス基板
(ガラス板の厚さ:1mm、アルミニウムの厚さ:10Å)を
水面に垂直に上下させて単分子を一層累積した(A)。
次に、この単分子膜を40mN/mまで圧縮し、その後すぐ
に、圧力が5mN/m以下になるまで単分子膜を拡張した。
この操作を3回繰り返すと、大きさ100μm程度のほぼ
円形に近いポルフィリンのドメイン構造が形成された。
これらのドメイン構造はアラキン酸からなる領域によっ
て互いに隔てられ、単分子膜内に分布していた。この状
態で単分子膜の圧炉を15mN/mに保持し、アルミニウムを
蒸着したガラス基板(ガラス板の厚さ:1mm、アルミニウ
ムの厚さ:100Å)を水面に垂直に上下させて単分子膜を
一層累積した(B)。
このように累積された膜、A、Bの上に、保護層とし
て、下記構造式 で表されるポルフィリン誘導体とアラキン酸とが均一に
混合された単分子膜(混合比=1:5)を6層累積した。
この層は、光電変換特性の増幅層としての役割を有して
いる。更に、その上に銀を100Åの厚さに蒸着し、光電
変換素子を形成した。銀側から、スポット径30μmの白
色光を照射し(強度:約200mW/cm2)、表面を30μmの
ステップで走査しながら光短絡電流の変化を測定した。
第2図にその結果を示す。ポルフィリン(化合物No.1)
がドメインを形成していない場合(A)は、電流の変化
が殆ど見られない。一方、ポルフィリン(化合物No.1)
がドメインを形成している場合(B)は、大きな電流の
変化が観測される。しかも、電流の絶対値は極めて高い
値を示している。これはBがフォトダイオードアレイと
して機能していることを示している。
[発明の効果] 以上詳述した通り、本発明の有機薄膜は、膜内におい
てポルフィリンがドメイン構造を形成している単分子膜
を含んでいるので、高機能かつ高集積なフォトダイオー
ドアレイやフォトセンサーアレイや、ポルフィリンの持
つ優れた光機能、電子機能を利用したパターン認識素子
等の情報処理素子等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図はポルフィリン(化合物No.1)とアラキン酸との
単分子膜のπ−A曲線を表すグラフ、第2図はポルフィ
リン累積膜内における光短絡電流の分布を表すグラフで
あって、曲線A及びBは、それぞれポルフィリン(化合
物No.1)がドメイン化していない場合と、している場合
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 51/00 H01L 31/10 A (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B05D 1/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固体基板上に機能性分子を主として含む単
    分子膜を累積してなる有機薄膜において、該有機薄膜を
    構成する累積膜のうち少なくとも1層が、一般式(I)
    又は(II) で表されるポルフィリン誘導体及びマトリクス分子を含
    む単分子膜から構成され、該単分子膜において前記ポル
    フィリン誘導体がドメイン構造を形成し、このドメイン
    構造が前記マトリクス分子からなる領域によって互いに
    隔てられていることを特徴とする有機薄膜。
JP2278504A 1990-10-17 1990-10-17 有機薄膜 Expired - Fee Related JP2969902B2 (ja)

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