JP2822495B2 - 有機薄膜 - Google Patents

有機薄膜

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ポルフィリン誘導体及びマトリックス分子
を構成成分とする単分子累積膜を基板上に形成してなる
有機薄膜に関し、特にフォトダイオード、太陽電池、フ
ォトセンサー等に応用されうる光電変換機能を有する有
機薄膜に関する。
〔従来の技術〕
光電変換機能を有する有機薄膜の製法としては、基板
上に真空蒸着法やスピンコート、バーコートなどの塗布
法により、有機分子からなる膜を成膜する方法が知られ
ている。しかし、高い光電変換効率を得るためには、電
荷の生成効率が高いことと、光吸収により生じる励起エ
ネルギーや生成した電荷が効率よく有機分子間を移動す
ることが必要である。このためには、有機分子の配向を
制御することが必要であるが、従来の真空蒸着法や塗布
法では配向の制御は困難であった。
一方、有機分子の単分子累積膜形成方法として知られ
ているLB(ラングミュア−プロジェット)法は、 1)Åオーダーで膜厚のコントロールされた均一な超薄
膜が形成できる、 2)有機分子の配向を制御して並べることができる、 3)常温、常圧下で成膜できるため種々な有機分子に適
用でき、容易でしかも安価に製膜できる、等の特徴を有
しており、バイオ素子・分子素子実現の一手段として最
近注目を集めており、導電性、絶縁性、光導電性等の性
質を利用したエレクトロニクス素子、非線形光学材料、
色素の吸収変化を利用した記録材料等の光機能性素子、
分子認識や化学反応を利用したセンサーあるいは反応触
媒等の応用に向けて開発が行なわれている。とりわけ光
電変換素子への応用を考えると、上記1)、即ち、より
高集積化光電変換素子、また上記2)、即ち、より高効
率光電変換素子の実現が期待できる。
このため、多くの有機分子、たとえばシアニン、メロ
シアニン、スクアリリウム、トリフェニルメタン、フタ
ロシアニン、ポルフィリン等の有機色素についてLB法に
よる単分子累積膜を作製し、ショットキー型あるいはp
−n接合型ダイオードを作る試みがなされてきた(表面
科学 第6巻、102頁、1985年)。
〔本発明が解決しようとする課題〕
しかし、これまでに用いられてきたLB法による有機分
子の単分子累積膜は、光電変換特性が良いとはいえず、
報告されたデータでは、短絡光電流値は、10-12〜10-9A
/cm2と小さい値であった。
この原因として、LB法特有の問題点が指摘されてい
る。即ち、単分子累積膜を形成する有機分子は分子内に
親水性基と疎水性基を有し、両方の性質の釣合い(両親
媒性のバランス)がとれていることが必要であるが、一
般には性能を保持し、且つ、均一な単分子膜を形成しう
るような両親媒性のバランスがとれた分子を得ることは
難しい。そのため、両親媒性のバランスがよくとれたア
ラキン酸やステアリン酸等の長鎖脂肪酸やステアリルア
ミン、ステアリルアルコール等の長鎖脂肪族のアミンや
アルコール等をマトリックス分子として添加して単分子
膜を形成することが一般に行なわれている。マトリック
ス分子の添加により、単独でも凝集しやすく均一な単分
子累積膜を形成しにくい有機分子であっても、良好な単
分子膜を形成し、基板上に累積することが可能となる
が、その反面、光電変換機能を有する有機分子の相対面
積の減少と、マトリックス分子が絶縁体として存在する
ため有機分子間の会合や励起エネルギー移動、生成した
電荷の移動等が妨害され、光電変換特性が低下すると考
えられている。
しかしながら、マトリックス分子の添加は、LB法にお
いては有効な手法であり、マトリックス分子が存在して
いても有機分子間の会合状態等が光電変換能の向上に適
した状態を取り得るものであれば、光電変換能に優れた
有機薄膜を得ることは可能である。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、生体での光合成に関与するクロロフィ
ル等光電変換特性に優れた化合物として知られているポ
ルフィリン誘導体について鋭意検討した結果、特定の構
造を有するポルフィリン誘導体がマトリックス分子の存
在下においても高い光電変換特性を示すことを見出し、
本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、一般式(I)又は(II) (式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素
基を表わし、Mは金属原子を主体とする2価の陰イオン
を表わし、nは1〜30の整数である。) で表わされるポルフィリン誘導体及びマトリックス分子
を含む単分子累積膜を基板上に形成してなることを特徴
とする有機薄膜に存する。
以下、本発明を詳細に説明する。
前記一般式(I)及び(II)において、Arは置換基を
有していてもよいベンゼン、ナフタレン、アントラセ
ン、アセナフテン、インデン、フルオレン、アズレン等
から誘導される1価の芳香族炭化水素基を表す。置換基
としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の低級ア
ルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の低
級アルコキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基等のア
リールオキシ基;ベンジル基、フェネチル基等のアラル
キル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン
原子;ニトロ基;シアノ基;水酸基;メトキシカルボニ
ル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;アセチル
基、ベンゾイル基等のアシル基等が挙げられる。
Mは金属原子を主体とする陰イオンを表し、銅、亜
鉛、マグネシウム、カドミウム、パラジウム等の2価の
金属イオンはもちろん、例えば3価以上のインジウム、
アルミニウム、スズ、ゲルマニウム、鉛、チタン、バナ
ジウム、ルテチウム等の金属イオンと塩素、臭素等のハ
ロゲン原子;酸素原子;メチル基、ブチル基等のアルキ
ル基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ
基等が結合し、2価のイオンとしてポルフィリン環の窒
素原子に配位していてもよい。
nは1〜30の整数であり、好ましくは2〜20の整数で
ある。
前記一般式(I)又は(II)で表わされるポルフィリ
ン誘導体は、2種以上混合して用いてもよい。
本発明において、マトリックス分子としては、長鎖の
疎水性基と親水性基とを有する両親媒性の化合物が用い
られる。例えば、アラキン酸やステアリン酸等の長鎖脂
肪族酸、そのエステルやアミド、あるいはステアリルア
ミンやステアリルアルコールのような長鎖脂肪族アミン
やアルコール等親水性基を有する長鎖アルカン類が挙げ
られる。長鎖の疎水性基、例えば、長鎖アルキル基に
は、フッ素原子等の疎水性基が置換していてもよい。
ポルフィリン誘導体とマトリックス分子の混合割合
は、得られる単分子累積膜の均一性や安定性と光電変換
特性とのバランスで決定されるが、通常はモル比で1:1
〜1:8の範囲が好ましい。マトリックス分子の比率が小
さすぎると膜の状態(均一性、安定性)が不良となる傾
向があり、大きすぎると光電変換特性が低下する傾向が
ある。
本発明で用いる基板としては特に限定されないが、光
電変換素子への応用を考えると導電性基板が好ましい。
例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ等の金
属又はそれらの合金、あるいはガラス板やプラスチック
フィルム等の絶縁性基板上に、金属や、インジウム及び
/又はスズの酸化物などの導電性の金属酸化物、ポリピ
ロール、ポリ(3−メチルチオフェン)等の導電性樹脂
等の薄膜を形成したものが用いられる。
その他の用途、例えば触媒や光記録等の用途では、石
英板、ガラス板、プラスチックフィルム、フッ化カルシ
ウム板等の絶縁性基板を用いることもできる。
一般的には、ガラスや石英板などの絶縁性基板上に金
属や、金属酸化物の薄膜を形成したものが用いられる。
このときの導電性薄膜の厚みは、必要な電導度と透明性
により決められるが、通常は10〜2000Åの範囲である。
本発明の有機薄膜は、LB法(“LB膜とエレクトロニク
ス”、1頁〜15頁、33頁〜46頁、シーエムシー、1986年
を参照されたい。)により作成するのが好ましい。具体
的には、例えば前記一般式(I)又は(II)で示される
ポルフィリン誘導体をクロロホルム等の揮発性有機溶媒
に溶解し、これを水面上に展開して単分子の膜を形成す
る。次に、水面上に設けた仕切板を徐々に移動させるこ
とにより展開面積を圧縮する。面積の圧縮に伴い、ポル
フィリン分子はその集合状態に応じた表面圧を示す。こ
の表面圧を一定値に保持し、膜が適当な凝縮状態にある
状態で静かに導電性基板を垂直に上下させることによ
り、ポルフィリン単分子膜を基板上に移しとる。この操
作を必要回数繰り返すことでポルフィリン累積膜が形成
される。
本発明において、累積層数は、1層でも光電変換機能
を発揮し得るため1層以上であればよいが、通常は、2
〜50層の範囲とされ、変換効率の点からは5〜20層の範
囲が好ましい。
なお本発明において、単分子膜を基板上に移す方法は
上述の垂直浸せき法に限定されない。例えば、基板を水
面に平行な状態で単分子膜を移しとる水平付着法等の方
法を用いて累積膜を形成してもよい。
本発明の有機薄膜を光電変換素子として使用するため
には、通常、対抗電極が用いられる。対抗電極は、単分
子累積膜と密着させた状態で用いる場合と、電解質を含
む液を隔てた状態で用いる場合がある。
対抗電極を単分子累積膜と密着させた状態で用いる場
合は、単分子累積膜上に直接対抗電極を形成する。通常
は、アルミニウム、銀、金、マグネシウム、ニッケル、
パラジウム、テルル、インジウム等の金属あるいはこれ
らの合金を電極として真空蒸着法、スパッタリング法な
どにより形成することが多いが、ピロールやチオフェン
等の、重合体として導電性ポリマーとなるモノマーの誘
導体からなるLB法により薄膜を形成し、重合とドーピン
グによる導電化処理により電極として用いてもよい。さ
らに、これらの電極あるいは、フィルムやガラス基板上
に形成されたインジウム及び/又はスズの酸化物等から
成る、いわゆる透明電極を密着させて、対抗電極として
用いることもできる。これらの内、通常は、蒸着法によ
り対抗電極を形成する。
また、光電変換素子として応用する場合は、導電性基
板と対抗電極の内、少なくとも一方は光を通過する機能
を有していることが必要である。
〔実施例〕
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する
が、本発明はその要旨を越えない限り実施例により限定
されるものではない。
製造例1 5−〔4−(1−カルボエトキシノナデシルオキシ)フ
ェニル〕−10,15,20−トリ(4−メチルフェニル)ポル
フィリン(下記構造式で表わされる化合物No.1)の合成 5−(4−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリ
(4−メチルフェニル)ポルフィリン0.20g(0.3ミリモ
ル)、炭酸カリウム0.41g(3.0ミリモル)及びジメチル
ホルムアミド20mlの溶液に、エチル−2−ブロモベヘネ
ート0.75g(1.8ミリモル)及びメチルホルムアミド5ml
の溶液をゆっくり滴下した後、室温で24時間撹拌した。
反応溶液に水100ml及びエタノール10mlを加え、析出し
た結晶を濾過した。得られた結晶をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィーで分離精製をし、目的物を0.240g得
た。収率79.7%。
得られた化合物No.1のIRスペクトル(KBrディスク)
を第1図に、1H−NMRスペクトル(CDCl3)を第2図にそ
れぞれ示す。
製造例2 5−〔4−(1−カルボキシノナデシルオキシ)フェニ
ル〕−10,15,20−トリ(4−メチルフェニル)ポルフィ
リン(下記構造式で表わされる化合物No.2)の合成 製造例1で合成した化合物No.1 0.10g(0.1ミリモ
ル)及びテトラヒドロフラン10mlの溶液に水酸化ナトリ
ウムの水−メタノール溶液(水酸化ナトリウム4.0gを水
5ml及びメタノール50mlに溶かしたもの)2.0mlをゆっく
り加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し
た後、テトラヒドロフラン20ml及び2規定塩酸10mlを加
え室温で1時間撹拌した。クロロホルムで抽出し、水で
洗浄、乾燥後、クロロホルムを減圧下で除去した。得ら
れた固形物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分
離精製し、目的物0.064gを得た。収率66.0%。
得られた化合物No.2のIRスペクトル(KBrディスク)
を第3図に示す。また、元素分析結果は下記のとおりで
あった。
製造例3 5−〔4−(1−カルボキシノナデシルオキシ)フェニ
ル〕−10,15,20−トリ(4−メチルフェニル)ポルフィ
リン−亜鉛(下記構造式で示される化合物No.3)の合成 製造例1で合成した化合物No.1 0.10g(0.1ミリモ
ル)、塩化亜鉛0.027g(0.2ミリモル)、酢酸ナトリウ
ム0.018g(0.22ミリモル)及び酢酸50mlの溶液を5時間
加熱還流した。酢酸を減圧下で除去し、得られた固形物
をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、
5−〔4−(1−カルボキシノナデシルオキシ)フェニ
ル〕−10,15,20−トリ(4−メチルフェニル)ポルフィ
リン−亜鉛を得た。このポルフィリンのテトラヒドロフ
ラン10ml溶液に水酸化ナトリウムの水−メタノール溶液
(前述)2mlをゆっくり加え、室温で1時間撹拌した。
溶媒を減圧下で除去した後、テトラヒドロフラン20ml及
び2規定塩酸10mlを加え、室温で30分間撹拌した。クロ
ロホルムで抽出し、水で洗浄、乾燥後、クロロホルムを
減圧下で除去した。得られた固形物をシリカゲルカラム
クロマトグラフィーで分離精製し、目的物0.069gを得
た。収率67.0%。
得られた化合物No.3のIRスペクトル(KBrディスク)
を第4図に示す。また元素分析結果は下記のとおりであ
った。
実施例1 製造例2で得られた無金属のポルフィリン(化合物N
o.2)のクロロホルム溶液(濃度1ミリモル/)とア
ラキン酸のクロロホルム溶液(濃度5ミリモル/)を
等量混合した溶液を純水上に一滴ずつ落して単分子膜を
形成した。仕切板により単分子膜を圧縮した。このとき
の表面圧−面積曲線を第5図に示す。次に、表面圧を25
mN/mに保ち、アルミニウムを半透明に蒸着したガラス基
板を水面に垂直に上下させて単分子膜を9層累積した。
累積比は上昇時が100%、下降時も100%と良好であっ
た。こうして得られた累積膜上に銀を蒸着し、ガラス基
板側から、400Wのハロゲンランプの光を分光した波長42
0nm、強度100μW/cm2の単色光を照射し、光電変換特性
を測定した。測定値は照射開始30秒後の値を採用した。
光短絡電流(ISC)は1×10-8A/cm2、光開放電圧
(IOC)は0.6Vであった。このISCの値は絶縁性のアラキ
ン酸をポルフィリン化合物の5倍量含むLB膜としては、
極めて高い値である。
実施例2 実施例1と同様にして、製造例3で得られたポルフィ
リンの亜鉛錯体(化合物No.3)の水面単分子膜を得た。
第6図に示されている表面圧−面積曲線から、きれいな
単分子膜が形成されていることがわかる。
実施例1と同様にして基板上に9層累積し、銀を蒸着
した後、425nmの単色光露光により光電変換特性を測定
したところ、 ISC=1×10-8A/cm2 IOC=0.7V の値が得られた。
〔発明の効果〕
本発明の有機薄膜は、従来のLB膜系光電変換薄膜に比
べきわめて高い光電変換特性を示すため、フォトダイオ
ードや太陽電池、フォトセンサー等への応用が可能であ
る。また、ポルフィリン誘導体の特性を生かした触媒や
光機能性素子として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、製造例1で得られた化合物No.1のKBrディス
クでのIRスペクトルを表わす図面である。 第2図は、製造例1が得られた化合物No.1のCDCl3溶液
での1H−NMRスペクトルを表わす図面である。 第3図は、製造例2で得られた化合物No.2のKBrディス
クでのIRスペクトルを表わす図面である。 第4図は、製造例3で得られた化合物No.3のKBrディス
クでのIRスペクトルを表わす図面である。 第5図は、化合物No.2とアラキン酸との混合物(混合比
(モル比)1:5)より形成した単分子膜の表面圧−面積
曲線を表わす図面である。 第6図は、化合物No.3とアラキン酸との混合物混合比
(モル比1:5)単分子膜の表面圧−面積曲線を表わす図
面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 31/10 C09K 3/00 C 51/10 G02F 1/35 504 // C07F 3/06 H01L 31/10 A 19/00 31/04 D C09K 3/00 31/08 T G02F 1/35 504 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 9/00 H01L 31/00 - 31/10 C07D 487/22 H01B 5/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I)又は(II) (式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素
    基を表わし、Mは金属原子を主体とする2価の陰イオン
    を表わし、nは1〜30の整数である。) で表わされるポルフィリン誘導体及びマトリックス分子
    を含む単分子累積膜を基板上に形成してなることを特徴
    とする有機薄膜。
  2. 【請求項2】基板が導電性基板である特許請求の範囲第
    1項記載の有機薄膜。
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