JP2966982B2 - 半導体レーザ - Google Patents

半導体レーザ

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JP2966982B2 JP3219938A JP21993891A JP2966982B2 JP 2966982 B2 JP2966982 B2 JP 2966982B2 JP 3219938 A JP3219938 A JP 3219938A JP 21993891 A JP21993891 A JP 21993891A JP 2966982 B2 JP2966982 B2 JP 2966982B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光通信装置等に利用さ
れる半導体レーザに係わり、特に歪量子井戸構造の活性
層を有する半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザの活性層を歪量子井戸構造
にすると、歪の効果により発光領域である井戸層の価電
子帯バント構造が変化し、しきい電流値等のレーザ特性
が改善されることが知られている。歪量子井戸構造と
は、井戸層を障壁層で挟み、且つ井戸層の格子定数を基
板のそれと異ならせたものである。
【0003】井戸層に用いる材料の格子定数が、基板材
料の格子定数に比べて大きい場合、井戸層には基板に対
して平行な平面内で二軸性の圧縮応力が加わり、格子は
立方晶系から正方晶系に変形する。この際、井戸層の価
電子帯は、無歪の場合に波数k=0で縮退していた重い
正孔帯(HH帯)と軽い正孔帯(LH帯)が分裂し、L
HはHH帯に比べて相対的にエネルギーが低下する。こ
のため、各バンド間の混合効果は大きく減少し、HH帯
のバンドの持ち上がりが少なくなる。この結果HH帯の
有効質量は無歪の場合に比べて大きく減少すると共に、
状態密度が低減される。
【0004】一般に、通常の無歪半導体の価電子帯(H
H帯)と伝導帯のバンド構造は非対称であり、価電子帯
(HH帯)キャリア(正孔)の有効質量は伝導帯キャリ
ア(電子)の有効質量に比して重くなる。従って、価電
子帯頂上付近での状態密度は伝導帯底付近のそれよりか
なり大きくなり、レーザ発振の条件を満たすためには、
価電子帯と伝導帯が対称となる理想的な場合に比べ余分
にキャリアを注入する必要がある。
【0005】これに対し、圧縮歪が加わると上述のよう
にHH帯の持ち上がりが少なくなるため、価電子帯と伝
導帯のバンド構造は対称に近づき、無歪の場合に比べレ
ーザ発振に必要なしきい値キャリア密度が大きく低減す
る。従って、しきい電流値を大幅に低下させることがで
きる。また、レーザの利得分布の広がりは有効質量の小
さい電子の密度に支配されており、歪の効果でレーザ動
作キャリア密度を低下させることにより、利得スペクト
ルの半値幅を減少させ、微分利得を増大させることがで
きる。そこで、微分利得の1/2乗に比例する緩和振動
数fr も歪の効果で増大させることができ、更にレーザ
の発振線幅を決める線幅増大因子(αパラメータ)を微
分利得の増大で減少させることができる。
【0006】次に、従来知られている歪量子井戸レーザ
の例(C.E.ZAH, IEEE.PHOTONICSTECHNOLOGY LETTERS. V
OL.2,NO.12,852(1990) )を、図12,13を参照して
説明する。図12は層構造を示す断面図、図13はその
バンド構造図である。層構造を簡単に説明すると、n型
InP基板30の上にn型InPクラッド層31,n型
InGaAsP光導波層32,歪量子井戸活性層33,
p型InGaAsP光導波層34,p型InPクラッド
層35及びp+ 型InGaAsコンタクト層36が順次
積層されている。
【0007】歪量子井戸活性層33は、厚さ20nmの
InGaAsP障壁層331 と厚さ2nmのInGaAs
井戸層332 を交互に積層したもので、井戸数は4個であ
る。また、井戸層332 のIn組成は0.78,歪量は約
1.7%であり、障壁層331の組成はバンドキャップ波
長1.3μmに相当する光導波層32,34と同一の組
成である。光導波層32,34を設け、また障壁層331
を光導波層32,34と同じ組成のInGaAsPにし
ているのは、光閉じ込め効果を大きくすると共に、キャ
リアの注入効率を大きくするためである。以上のような
層構造とすることにより、波長約〜1.55μmで発振
し、低しきい電流値,広帯域,狭線幅の半導体レーザを
実現している。
【0008】しかしながら、このような従来の歪量子井
戸構造の半導体レーザは、必ずしも最適な構成とはなっ
ておらず、以下に説明するように、構成或いは製法上の
問題が含まれていた。
【0009】一般に、歪量子井戸構造の井戸層厚は格子
不整合に伴うミスフィット転位が発生しないように、あ
る臨界膜厚以下にする必要がある。この臨界膜厚は、例
えばIn組成0.8のInGaAs層をInP層で挟ん
だ場合約10nm程度であるが、図12のようなレーザ
構造では井戸層厚が3nmより大きな領域で結晶性の著
しい低下が見られている。また、井戸層厚3nm以下と
した場合でも、井戸数をある程度以上に増すことでレー
ザ特性が低下し、例えば井戸層厚2nmのものでは井戸
数4を越える付近からレーザ動作しない素子が増えてく
る。さらに、井戸層厚2nm程度で井戸数3以下の場合
でも、結晶性の良い歪エピタキシャル成長層を安定に得
ることが難しく、レーザ特性のウェハ内又はウェハ間分
散が極めて大きい。
【0010】これは、歪量子井戸のレーザ構造におい
て、井戸層を4元混晶であるInGaAsPの障壁層で
挟んでいるために起こるものと考えられる。即ち、障壁
層に用いているInGaAsPは4元混晶のため、III
族元素とV族元素の比はほぼ1:1に保存されて結晶成
長されるものの、それぞれ III族元素(In,Ga)
間、V族元素(As,P)間での比が原料供給量により
決定される2つの自由度を持っている。このため、格子
歪のある結晶(InGaAs井戸層)上に4元混晶のよ
うな多元混晶を結晶成長するのは、無歪結晶(InP)
上に成長するのと比べると難しく、結晶界面近傍の混晶
組成や元素配置が異なってくる。そして、この影響、例
えば格子歪の伝搬や僅かな格子定数のずれ等により、更
に上層の結晶性を低下させるという問題がある。
【0011】また、歪3元混晶を4元混晶により挟む構
成であるため、井戸数が多い場合には量子井戸構造の中
央部ほど格子定数の基準が曖昧になり易く、井戸層と障
壁層の間の歪緩和が起り易い。これは即ち、歪の井戸層
への閉込めが弱くなることであり、本来歪の効果を含ん
で設計された量子準位が量子井戸間でのミスマッチング
(空間的エネルギー準位分散)を起すことになる。この
ため、量子井戸に形成される量子準位がエネルギー的な
拡がりを持って量子効果を低下させたり、量子井戸の多
重化によるレーザ利得の重ね合せ効果が得られなくなる
という問題が生じる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このように従来、歪み
量子井戸構造としてInGaAsP/InGaAs等の
多元混晶を用いた場合、歪量子井戸構造のエピタキシャ
ル成長の困難さ、或いは構成上の問題から、良好な素子
特性を実現できないという問題があった。
【0013】本発明は、上記事情を考慮してなされたも
ので、その目的とするところは、InGaAsP等の多
元混晶を障壁層として用いた歪量子井戸構造において
も、良好な素子特性が安定に得られる半導体レーザを提
供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の骨子は、基板結
晶とほぼ等しい格子定数の結晶層(例えば2元混晶)を
歪量子井戸層上の境界層、或いは多元混晶障壁層中の中
間層として設け、障壁層に格子定数の基準を与えて歪量
子井戸構造本来の特質を引き出せるようにしたことにあ
る。
【0015】即ち本発明は、化合物半導体基板上に、該
基板結晶と格子定数の異なる結晶からなる井戸層を、該
基板結晶と格子定数がほぼ等しい障壁層で挟んだ量子井
戸活性層を設けた量子井戸構造の半導体レーザにおい
て、次の (1)〜(4) の構成を採用したことを特徴とす
る。
【0016】(1) 井戸層上に、障壁層よりも基板結晶に
近い格子定数を有する境界層を形成したこと。 (2) 障壁層の内部に、障壁層よりも基板結晶に近い格子
定数を有する中間層を挿入したこと。 (3) 井戸層と障壁層との間に、障壁層よりも基板結晶に
近い格子定数を有する境界層をそれぞれ挿入したこと。 (4) 基板としてInPを用い、井戸層と障壁層との間
に、InP境界層をそれぞれ挿入したこと。
【0017】また本発明は、上記 (1)〜(4) において境
界層又は中間層を、障壁層より禁制帯幅が広く、且つ井
戸層に注入されるキャリアのトンネル結合が十分可能な
厚さに設定してなることを特徴とし、さらに上記 (4)に
おいて障壁層と境界層との間に、さらに障壁層と井戸層
の中間の禁制帯幅の半導体層を挟んだことを特徴とす
る。
【0018】
【作用】本発明によれば、多元混晶を障壁層とした歪量
子井戸構造であっても、境界層又は中間層が障壁層に格
子定数の基準を与えることになり、井戸層の歪による障
壁層やその上層の結晶性低下が少ない。また、歪量子井
戸を重ねた歪多重量子井戸構造とした場合にも、井戸層
と障壁層での歪緩和が起り難いため、素子特性や均一性
が大幅に向上し、同時に信頼性等も著しく向上する。そ
して更に、井戸層厚を大きくした場合や井戸数を多くし
た場合でも特性の優れた半導体レーザを作製することが
でき、歪量子井戸の層数等を素子の設計目的に合せて最
適化することが可能となる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。尚、ここではInPを基板とするInGaAsP
/InGaAs歪量子井戸レーザを例にとり説明する
が、他の材料系の歪量子井戸レーザの場合にも同様に実
施可能なものである。図1は本発明の第1の実施例に係
わる歪量子井戸レーザの概略構成を示す断面図であり、
図2は図1に示したレーザのエネルギーバンド図であ
る。
【0020】図1において、10はn型InP基板であ
り、この基板10上にn型InPクラッド層11,n型
InGaAsP光導波層12,歪量子井戸活性層13,
p型InGaAsP光導波層14,p型InPクラッド
層15及び高濃度のp型InGaAsコンタクト層16
が順次成長形成されている。ここで、各層11〜16
は、有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて連続
的に成長した。さらに、量子井戸活性層13以外の各層
は、InP基板10と格子整合するよう成長している。
【0021】歪量子井戸活性層13の構成としては、I
nGaAs歪量子井戸層132 とInP境界層133 の2層
をInGaAsP障壁層131 で挟み、それを繰り返した
構造としている。但し、このときInP境界層133 はI
nGaAs歪量子井戸層132 より後に結晶成長されるよ
う基板結晶10より表面側に形成する。
【0022】歪量子井戸活性層13の具体的な例として
は、InGaAsP障壁層131 をバンドギャップ波長
1.3μmに相当する組成で厚さ10nm、歪量子井戸
層132をIn0.8 Ga0.2 As(歪量約 1.8%)で厚さ
3nm、InP境界層133 を厚さ2nmとして歪量子井
戸の数を4とする。また、光導波層12,14はバンド
ギャップ波長1.2μmに相当する組成とし、それぞれ
50nmの厚さに形成する。
【0023】この構造では、InGaAsP障壁層131
が格子歪を持つInGaAs量子井戸層132 上ではな
く、格子定数の確定し易いInP(2元混晶)上に成長
され、エピタキシャル成長したウェハの結晶性が極めて
高い。このとき、InP境界層133 は図2に示すように
電子及び正孔に対して高い障壁となるため、キャリアが
十分トンネル可能な厚さに形成する必要があり、また2
元混晶としての格子定数が保てる厚さにする必要があ
る。
【0024】これらの考慮からここでは、InP境界層
133 の厚さを2nmとしている。このInP境界層133
を厚くすると更に結晶性が向上するが、このままでは有
効質量の大きい正孔の注入効率が悪くなる。しかしなが
ら、障壁層131 にアクセプタ変調ドープができる場合
は、2nm以上の厚さとすることも可能である。
【0025】図1に示した構造のウェハをMOCVD法
によりエピタキシャル成長し、図3に示すような構造
で、いわゆる埋込み構造のファブリー・ペロー型半導体
レーザを試作したところ、共振器長さ200μmで前面
70%,後面90%の高反射コートを行った後の発振し
きい値が約1mAと極めて低い値の素子が得られた。ま
た、しきい電流値の温度特性を測定したところ、室温付
近での特性温度が約80Kと良好な温度特性を示した。
なお図3において、17はp−InP層、18はn−I
nP層、19はSiO2 膜、21はp側電極、21はn
側電極である。
【0026】一方、図1に示した構造と同様の構造で、
井戸数が6個のウェハをMOCVD法によりエピタキシ
ャル成長し、図3に示すような構造で、いわゆる埋込み
構造の分布帰還型半導体レーザを作製したところ、以下
のような優れた特性が得られた。まず、発振しきい値電
流は、共振器長300μm,端子コート無しの場合で6
〜10mAと低く、更にウェハ内のバラツキは非常に少
なかった。また、−3dBの遮断周波数は約20GH
z,発振線幅約200kHzで、10Gbps直接変調
での波長チャーピングが0.4nmのものが得られた。
さらに、活性層の限界性能に相当する最大変調周波数は
その緩和振動及びダイピング特性から80GHz程度と
推定された。
【0027】このように本実施例によれば、InGaA
s井戸層132 上にInP境界層133を設け、その上にI
nGaAsP障壁層131 を形成しているので、InGa
As井戸層132 の歪によるInGaAsP障壁層131 の
結晶性低下を抑えることができる。そして、歪量子井戸
を重ねた歪多重量子井戸構造とした場合でも、InGa
As井戸層132 とInGaAsP障壁層131 での歪緩和
が起り難いため素子特性や均一性が大幅に向上し、同時
に信頼性等も著しく向上する。従って、歪量子井戸構造
本来の良好な素子特性を備えた信頼性の高い半導体レー
ザを実現することができる。
【0028】図4は本発明の第2の実施例に係わる歪量
子井戸レーザの要部構成を示す断面図、図5はそのエネ
ルギーバンド図である。なお、図1及び図2と同一部分
には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0029】この実施例は、歪量子井戸層132 と障壁層
131 の間に2元混晶境界層133 を設ける代わりに、障壁
層131 の中に2元混晶中間層134 を設け、歪量子井戸層
132と基準格子定数を与えるための2元混晶層134 の間
の材料的自由度を確保できるようにしたものである。
【0030】先に説明した図1の構造では、歪量子井戸
層132 をInGaAsとし2元混晶境界層133 をInP
とした場合、これれらの成長界面でGa及びAsを瞬間
的にIn及びPに置き換えてやる必要がある。しかしな
がら、一般にはこれらの急峻な切り換えが必ずしも容易
ではなく、InP側へのGaやAsの混入、またInG
aAs側へのInやPの拡散が僅かに起こってしまい、
結晶成長界面に両結晶の遷移領域が形成され易い。この
ため、実質的にInGaAsP4元混晶のような多元混
晶が挿入された形となり、しかもそれは結晶組成の制御
されたものではなく、従って格子定数等も制御されてい
ないため、ダングリングボンドによる界面準位が形成さ
れてしまう場合がある。
【0031】特に、図1に示した構造では井戸層132 と
してのInGaAsが格子歪を持っているためその危険
性が高く、量産レベルでの結晶成長安定性を確保するた
めにこれらを考慮していく必要がある。このような組成
や格子定数が不確定な遷移域領は、歪量子井戸層132 と
境界層133 との材料的共通性を高めること、即ち同種の
材料を用いることで軽減できるが、境界層133 の2元混
晶が材料的に自由度が小さいため、必ずしも適切な組み
合わせを得ることができない。
【0032】そこで本実施例では、歪量子井戸層132 と
基準格子定数を与えるための2元混晶層134 の間に組成
や格子定数の制御された言わば人為的遷移領域を設け、
ダングリングボンドによる界面準位の発生を予め防止し
ている。即ち本実施例では、図4に示すように、歪量子
井戸層132 と2元混晶層134 の間に、障壁層131 と同じ
多元混晶層131'を挟んでいる。
【0033】このように構成することで、多元混晶層13
1'が組成や格子定数の制御された人為的遷移領域として
ダングリングボンドによる界面準位の発生を防止し、し
かも多元混晶の材料的自由度から適切な組み合わせを求
めることが容易になる。ここで、前述したように格子歪
のある結晶、即ち歪量子井戸層132 上の多元混晶成長は
格子歪の伝搬や僅かな格子定数のずれ等により上層結晶
の結晶性を低下させる問題があったが、図4に示すよう
な構造ではこれらの問題が2元混晶中間層134により抑
制されている。即ち、多元混晶による格子歪の伝搬や僅
かな格子定数のずれ等が結晶自由度の少い2元混晶中間
層134 により停止又は補正され、その影響が上層の結晶
に現れなくなるためである。
【0034】このように本実施例では、先の第1の実施
例と同様の効果が得られるのは勿論のこと、歪量子井戸
による半導体レーザの量産レベルでの結晶成長安定性を
確保することが可能となる。
【0035】図6は本発明の第3の実施例に係わる歪量
子井戸レーザの要部構成を示す断面図、図7はそのエネ
ルギーバンド図である。なお、図4及び図5と同一部分
には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0036】この実施例は、第2の実施例の改良であ
り、2元混晶中間層134 を多元混晶障壁層131 の中に2
個ずつ設け、量子井戸へのキャリア注入効率を高められ
るようにしたものである。
【0037】第1の実施例で説明したようにInPの2
元混晶層は電子及び正孔に対して高い障壁であり、キャ
リアが十分トンネル可能なように薄くする必要がある。
ところが逆に、2元混晶として格子定数が保てるようあ
る程度厚くする必要もある。これら相反する要求を満た
すため第1の実施例ではInP境界層133 の厚さを2n
mとしてきたが、本実施例ではInP中間層134 を複数
に分離することでそれぞれの要求と、キャリア注入効率
の向上をはかっている。2元混晶(InP)中間層134
は、例えば1nmの厚さとして図6のように障壁層131
を挟んで2層設ける。
【0038】このようにすることで2元混晶中間層134
のトンネル確率はその厚さに対して指数関数的に増加
し、多元混晶による格子歪の伝搬停止や格子定数のずれ
補正は多段階に行われて同等となるため、結晶成長安定
性が確保されたままキャリア注入効率の向上が可能にな
る。また、2元混晶中間層134を3層としてもキャリア
注入効率の低下は余り無く、むしろ格子歪の伝搬停止や
格子定数のずれ補正の効果の向上が可能になる。
【0039】図8は本発明の第4の実施例に係わる歪量
子井戸レーザの要部構成を示す断面図、図9はそのエネ
ルギーバンド図である。なお、図1及び図2と同一部分
には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0040】この実施例は、歪量子井戸層132 と障壁層
131 の両方の境界に境界層133 をそれぞれ挿入したもの
である。即ち、歪量子井戸活性層13は、厚さ2nmの
InGaAs井戸層132 と厚さ10nmのInGaAs
P障壁層131 の間に厚さ2nmのInP境界層133 を挟
んだ構造を交互に繰り返した構造になっている。なお、
井戸数は6個で、InGaAs井戸層132 のIn組成は
0.8で,歪量は約1.8%である。また、InGaA
sP障壁層131 の組成はバンドギャップ波長1.2μm
に相当し、光導波層12,14も同じ組成である。
【0041】この構造では、格子歪を持ったInGaA
s井戸層132 は基板10と同じ材料のInP境界層133
で挟まれているために、エピタキシャル成長したウェハ
の結晶性は極めて高い。このとき、間に挟むInP層境
界133 は、電子及び正孔に対して高い障壁になるので十
分トンネル可能な厚さにする必要があるので、厚さを2
nmとしている。間に挟むInP境界層133 をもう少し
厚くすると、さらに結晶性は向上するが、有効質量の大
きい正孔の注入効率が悪くなるが、この場合はInGa
AsP障壁層131 にアクセプタを変調ドープすればよ
い。
【0042】図8に示した構成のウェハをMOCVD法
を用いてエピタキシャル成長し、図3に示す構造で埋込
み構造の分布帰還型半導体レーザを作製したところ、以
下のような優れた特性が得られた。まず、発振しきい値
電流は、共振器長300μmで、端面コート無しの場合
で約6〜12mAで、ウェハ内のバラツキは極めて少な
い。また、−3dBの遮断周波数は〜20GHz、発振
線幅は〜80KHzであり、10Gbpsの直接変調を
行った場合の波長チャーピングは.0.4nmであっ
た。さらに、推定される限界応答周波数は〜80GHz
ときわめて大きいものであった。
【0043】一方、図8と同様の構造で、井戸数が4個
のウェハを用いて、図3に示すような構造でファブリー
・ペロー型の半導体レーザを試作し、共振器長を200
μmとし、前面70%,後面90%の高反射コートを施
すと、発振しきい値電流が〜1mAのきわめて低しきい
値の素子を得ることができた。また、しきい値電流の温
度特性を測定したところ、室温付近での特性温度が約8
0Kと、従来構造の場合よりも優れた温度特性を得るこ
とができた。
【0044】図10は本発明の第5の実施例に係わる歪
量子井戸レーザの要部構成を示す断面図、図11はその
エネルギーバンド図である。なお、図8及び図9と同一
部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略す
る。
【0045】この実施例は、第4の実施例の構成に加
え、InGaAsP障壁層131 とInP境界層133 の間
に、InGaAsP障壁層131 とInGaAs井戸層13
2との中間禁制帯幅の半導体層(キャリア導入層)135
を挟んでいるのが特徴である。この中間禁制帯幅のキャ
リア導入層135 を挿入することで、キャリアの注入効率
が改善される。
【0046】なお、本発明は上述した各実施例に限定さ
れるものではない。実施例では、光導波層と障壁層にI
nGaAsPを用いた場合を例にとって説明したが、I
nGaAsPの代わりに、InGaAlAsを用いた場
合でもまったく同様の効果が期待できる。また、実施例
ではInGaAsP/InP系の材料を用いて説明を行
ってきたが、これは他の III−V族化合物半導体にも適
用可能であり、更に別の材料、例えばII−VI族化合物半
導体等にも適用可能である。その他、本発明の要旨を逸
脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0047】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、歪
量子井戸構造の活性層を用いて著しく素子特性の向上し
た量子井戸型半導体レーザを得ることができ、再現性,
信頼性等の点においても従来の半導体レーザと遜色のな
い素子が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例に係わる量子井戸型半導体レーザ
の概略構成を示す断面図、
【図2】第1の実施例レーザのエネルギーバンド図、
【図3】埋込み構造半導体レーザの素子構造例を示す断
面図、
【図4】第2の実施例に係わる量子井戸型半導体レーザ
の要部構成を示す断面図、
【図5】第2の実施例レーザのエネルギーバンド図、
【図6】第3の実施例に係わる量子井戸型半導体レーザ
の要部構成を示す断面図、
【図7】第3の実施例レーザのエネルギーバンド図、
【図8】第4の実施例に係わる量子井戸型半導体レーザ
の要部構成を示す断面図、
【図9】第4の実施例レーザのエネルギーバンド図、
【図10】第5の実施例に係わる量子井戸型半導体レー
ザの要部構成を示す断面図、
【図11】第5の実施例レーザのエネルギーバンド図、
【図12】従来の量子井戸型半導体レーザの概略構成を
示す断面図、
【図13】従来レーザのエネルギーバンド図。
【符号の説明】
10…n−InP基板、 11…n−InPクラッド層、 12…n−InGaAsP光導波層、 13…歪量子井戸活性層、 131 …InGaAsP障壁層、 132 …InGaAs井戸層、 133 …InP境界層、 134 …InP中間層、 135 …キャリア導入層、 14…p−InGaAsP光導波層、 15…p−InPクラッド層、 16…p+ −InGaAsコンタクト層。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】化合物半導体基板上に、該基板結晶と格子
    定数の異なる結晶からなる井戸層を、該基板結晶と格子
    定数がほぼ等しい障壁層で挟んだ量子井戸活性層を設け
    た量子井戸構造の半導体レーザにおいて、 前記井戸層上に、前記障壁層よりも前記基板結晶に近い
    格子定数を有する境界層を形成してなることを特徴とす
    る半導体レーザ。
  2. 【請求項2】化合物半導体基板上に、該基板結晶と格子
    定数の異なる結晶からなる井戸層を、該基板結晶と格子
    定数がほぼ等しい障壁層で挟んだ量子井戸活性層を設け
    た量子井戸構造の半導体レーザにおいて、 前記障壁層の内部に、該障壁層よりも前記基板結晶に近
    い格子定数を有する中間層を挿入してなることを特徴と
    する半導体レーザ。
  3. 【請求項3】化合物半導体基板上に、該基板結晶と格子
    定数の異なる結晶からなる井戸層を、該基板結晶と格子
    定数がほぼ等しい障壁層で挟んだ量子井戸活性層を設け
    た量子井戸構造の半導体レーザにおいて、 前記井戸層と障壁層との間に、前記障壁層よりも前記基
    板結晶に近い格子定数を有する境界層をそれぞれ挿入し
    てなることを特徴とする半導体レーザ。
  4. 【請求項4】化合物半導体基板上に、該基板結晶と格子
    定数がほぼ等しい障壁層と、該基板結晶と格子定数が異
    なる井戸層とを、交互に積層した量子井戸構造の半導体
    レーザにおいて、 前記井戸層と障壁層との間に、前記基板と同じ材料の境
    界層をそれぞれ挿入してなることを特徴とする半導体レ
    ーザ。
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