JP2008235519A - 光半導体素子及び光半導体素子の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の格子定数をもった高品質な光半導体素子を得る。
【解決手段】n−GaAs基板1上にInGaPバッファー層3を導入して擬似的に3元基板を作製し、該擬似3元基板上に成長温度550℃で成長したn−InGaAs層4、成長温度680℃で成長したn−InGaAs層5、InGaAs/InGaAs量子井戸層6を形成した。
【選択図】図1
【解決手段】n−GaAs基板1上にInGaPバッファー層3を導入して擬似的に3元基板を作製し、該擬似3元基板上に成長温度550℃で成長したn−InGaAs層4、成長温度680℃で成長したn−InGaAs層5、InGaAs/InGaAs量子井戸層6を形成した。
【選択図】図1
Description
本発明は、光半導体素子及び光半導体素子の作製方法に関し、特に、基板上に基板とは格子定数が異なる化合物半導体層を形成する作製方法及びそれを用いた化合物半導体素子に関するものである。
光源波長1.3μm〜1.55μmの光を用いた光ファイバ通信においては、従来、バンドギャップ、格子定数の関係上作製しやすい、InP基板上のInGaAsP系レーザが用いられてきた。このようなレーザは、通常、発振特性の改善のために活性層に歪量子井戸構造を採用している。
歪量子井戸構造においては、歪量を増大させれば、微分利得の向上によりレーザ特性が改善することが知られているが、大きすぎる歪は結晶性の劣化を招くので、歪量子井戸構造の構成材料としては、InP基板との格子定数差を考慮して井戸層には1%前後の圧縮歪となるInGaAsPを用い、障壁層にはInP基板と格子整合した組成となるInGaAsPを用いることが一般的に行われている。
このような従来のInP基板上レーザでは、伝導帯側の量子井戸と障壁層間のバンド不連続が小さいために、高温条件下にすると電子のオーバーフローによる光学利得の低下が生じ、しきい値電流の増加、効率の低下を引き起こす。しきい値電流の温度依存性を示す特性温度は50K程度と低く、温度調整器の使用が不可欠であった。
また、同じInP基板上において、InGaAsP系より大きなバンド不連続を持つといわれるAlGaInAs系レーザも開発されているが、GaAs基板上の短波長InGaAsレーザに比べると温度特性は劣っている。さらに、Alを含んだ材料固有の酸化による信頼性劣化が懸念される。
一方、GaAs基板上では、比較的短波長の0.78μm、0.85μm、0.98μm、1.06μm帯レーザが実用化されており、特性温度が150Kを超える優れた温度特性を示している。これは伝導帯側の大きなバンドオフセットによるものである。
しかしながら、InGaAs/GaAs歪量子井戸構造によって1.3μmでの発光を得るためには、該歪量子井戸構造のIn組成を50%程度に高める必要がある。In組成を高めると、In組成の増加とともに、GaAs基板との格子不整合が大きくなり、3次元成長やミスフィット転位が生じる。このため、1.3μm以上の波長帯での高品質な量子井戸の形成は困難であるという問題があった。
このような格子不整合とバンドオフセットの問題を改善する手段として、GaAsに比較して格子定数が大きいInGaAs3元基板上レーザが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、InGaAs3元基板は、基板作製時にInとGaの物性定数差から組成ゆらぎや欠陥が入りやすく、歩留まりが上がらないために大量生産が困難であるという問題があった。また、基板そのものが3元混晶であるために、2元のGaAsやInPに比べると熱伝導率が低く、半導体レーザや高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)などの電子デバイスなどにおいて、素子内部で発生した熱が放熱されにくく、素子温度を上昇させる問題があった。
またGaAs基板上にInGaAsやInAlAsのバッファー層を成長し、擬似的にInGaAs3元基板を作製する試みもなされてきた。これはバッファー層のIn組成を、GaAsに格子整合する値から徐々に増やし、転位の増殖を抑えながら、GaAs基板との格子不整合を緩和させる方法である。しかし、この方法ではミスフィット転位や貫通転位を完全にバッファー層中にとどめることが困難で、ミスフィット転位や貫通転位が、バッファー層の上に形成した半導体レーザやHEMTなどの電子デバイスまで到達し、閾値電流の上昇や漏れ電流の増加、信頼性の低下など特性を劣化させていた。
K.Otsubo, et al.,IEEE Photonics Technology Letter, Vol.10, No.8, pp.1073-1075, 1998.
上述した通信用の波長帯の光を出射する半導体レーザにおいては、量子井戸の伝導帯のバンドオフセットを大きくし、温度特性を高めた構造を作製するために最適な構成材料は、2元のGaAs基板やInP基板上に比較して格子定数差が大きいという問題がある。また、電子デバイスにおいても、所望のバンドギャップを持つ材料やその格子定数が、2元のGaAsやInP基板とは大きく異なる場合が生じる。そのような場合、結晶成長時にミスフィット転位や貫通転位などの格子欠陥が発生し、高品質の結晶を得ることが困難となることが考えられる。
また、InGaAsなどの3元基板はその作製方法自体が困難で、良好な結晶の基板を得ることが難しい。また、基板の放熱が悪いという問題がある。また別の方法として、GaAs基板上にInGaAsやInAlAsの組成を徐々に変化させたバッファー層なども検討されてきたが、ミスフィット転位や貫通転位が、バッファー層の上に形成した半導体レーザや、HEMTなどの電子デバイスまで到達し、該デバイスに特性の劣化や信頼性の低下などといった影響を与えていた。
本発明はこのような問題を解決するものであって、GaAs基板上に適当なバッファー層を導入することで、所望の格子定数をもった高品質な化合物半導体素子を得ることを目的とする。
上記の課題を解決するための第1の発明に係る光半導体素子は、1元基板または2元基板と、前記基板上に形成されたInGaPバッファー層と、前記InGaPバッファー層上に形成された第一の化合物半導体とを有することを特徴とする。
第2の発明に係る光半導体素子は、第1の発明において、前記基板が、前記第一の化合物半導体とは格子定数が異なる半導体であることを特徴とする。
第3の発明に係る光半導体素子は、第2の発明において、前記基板が、化合物半導体であることを特徴とする。
第4の発明に係る光半導体素子は、第3の発明において、前記基板が、GaAsであることを特徴とする。
第5の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記InGaPバッファー層と前記第一の化合物半導体との間に、格子定数がGaAsの格子定数より大きく且つInPの格子定数より小さい第二の化合物半導体を有することを特徴とする。
第6の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記化合物半導体が、InGaAsまたはInAlAsであることを特徴とする。
第7の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記InGaAsまたは前記InAlAsのIn組成xが、0<x≦0.53であることを特徴とする。
第8の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記InGaPバッファー層のIn組成が、前記基板の格子定数から前記第一の化合物半導体の格子定数の範囲内にあることを特徴とする。
第9の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記InGaPバッファー層の成長温度が450℃以上650℃以下であることを特徴とする。
第10の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第9のいずれかの発明において、前記第一の化合物半導体の発光波長が1.1μm〜1.6μmであることを特徴とする。
第11の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第10のいずれかの発明において、前記第一の化合物半導体がp型ドーパントとして炭素を用いた半導体を有することを特徴とする。
第12の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第11のいずれかの発明において、前記半導体がメサストライプ状に加工されており前記半導体の両側を半導体結晶により埋め込まれたことを特徴とする。
第13の発明に係る光半導体素子は、第1乃至第12のいずれかの発明において、前記半導体結晶が、Ruドープ半絶縁性半導体結晶であることを特徴とする。
第14の発明に係る半導体モジュールは、第1乃至第13のいずれかの発明に係る光半導体素子を有する半導体モジュールであって、光半導体素子の前記基板側とは反対側の面がヒートシンクに接していることを特徴とする。
第15の発明に係る光半導体素子の作製方法は、第1乃至第13のいずれかの発明に係る光半導体素子を成長する方法であって、前記基板上に成長温度450℃以上650℃以下で前記InGaPバッファー層を成長し、前記InGaPバッファー層上に前記第一の化合物半導体を成長することを特徴とする。
本発明者らは、上記課題を解決するための数多くの実験的検討を行った結果、有機金属気相成長法を用いてGaAs基板上に層厚が50nmから1000nmの範囲のInGaPバッファー層を成長した後、このバッファー層上にInGaAsまたはInAlAsなど所望の格子定数をもつ層を成長すると、表面の欠陥が少なく、フォトルミネッセンス発光強度が増大することを見出した。これは、InGaAsに比べ、InGaPにおける転位の伝播速度が小さいためと考えられる。このような知見に基づいて本発明に至った。
GaAs基板上にInGaPバッファー層を成長する際に、GaAsから格子定数が徐々に大きくなるようにInGaPバッファー層の組成を変化させていくと、上部の層へミスフィット転位や貫通転位などの欠陥が到達せずに、十分格子緩和したInGaAs層やInAlAs層を成長することができる。
これらの十分に格子緩和したInGaAs層やInAlAs層の上に、半導体レーザや光変調器、光増幅器など光半導体素子のクラッド層の材料として、ドーピングしたInGaP層やInAlAs層を成長し、活性層となる多重量子井戸層を成長する。その上に再度ドーピングしたInGaP層やInAlAs層を成長して、通信波長帯で動作する光半導体素子を作製する。これにより、伝導帯のバンドオフセットが大きな量子井戸を持った光半導体素子が実現できる。また3元基板で問題となっていた基板の放熱も問題とならないため、素子の温度上昇を抑えることができる。
なお、本発明においてバッファー層として用いるInGaPは、格子定数を、InとGaの組成比に応じてInPの格子定数からGaPの格子定数までの間で変化させることができる。このため、GaAs基板のみならず、GaPとほぼ同じ格子定数をもつSi基板乃至InPとほぼ同じ格子定数をもつ材料からなる基板のバッファー層として幅広く用いることができる。従って、この格子定数に対応するInGaAs層のIn組成xの範囲は0<x≦0.53となる。
本発明によれば、基板上にInGaPバッファー層を導入して擬似的に3元基板を作製することで、その上にInGaAs層やInAlAs層、InGaP層などの結晶を高品質に成長することができる。従って、前述した擬似的な3元基板の上には伝導帯のバンドオフセットが大きい量子井戸を持った光半導体素子が実現でき、高温環境下においても特性の変化の小さい動作の実現が可能となる。さらに、HEMTやHBTなどの電子デバイスに適用した場合には、大きなバンドオフセットを持つ構造とすることが可能で、高性能化が期待される。
また、3元基板で課題となっていた基板の放熱も改善されるため、素子全体の発熱を抑えた高温度特性動作が可能となる。
以下に示す実施例において、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1乃至図4に基づいて、本発明の第1の実施例を詳細に説明する。図1は本実施例に係る光半導体素子の層構造を示す概略構造図、図2はInGaPバッファー層上に作製した量子井戸からのフォトルミネッセンス発光スペクトルを示すグラフ、図3は本実施例に係る半導体装置の概略構造図、図4は本実施例に対応するバッファー層のIn組成変化を示す特性図である。
図1に示すように、本実施例においては、GaAs基板1上に、n−InGaPバッファー層としてのInGaP組成傾斜層3を成長して擬似的にInGaAs3元基板を作製している。
図1に示す光半導体素子の成長は、有機金属気相成長法(MOVPE法)を用いて行った。まず、GaAs基板1上に成長温度550℃、成長圧力76Torrにて厚さ100nmのGaAs層2を成長し、このGaAs層2の上に成長温度550℃で厚さ400nmのn−InGaPバッファー層としてInGaP組成傾斜層3を成長した。InGaP組成傾斜層3は、図4に示すように、GaAsに格子整合するIn組成0.48から成長をはじめ、最後はIn0.1Ga0.9Asに格子整合するIn組成0.58までInGaPの組成を線形に変化させた。
このInGaP組成傾斜層3の上に第二の化合物半導体としてのInGaAs層4,5を成長する。具体的には、成長温度550℃でIn0.1Ga0.9As層4を200nm成長する。In0.1Ga0.9As層4の上にさらに成長温度680℃においてIn0.1Ga0.9As層5を1μm成長した。この段階ではほぼ格子緩和されており、擬似的なInGaAs基板とみなすことができる。
そして、GaAs基板1、GaAs層2、InGaP組成傾斜層3、In0.1Ga0.9As層4、In0.1Ga0.9As層5からなる擬似的なInGaAs基板の上に、成長温度520℃において、第一の化合物半導体としての量子井戸構造6を成長した。量子井戸構造6は、厚さ8nmのIn0.5Ga0.5As量子井戸層62,64と、厚さ15nmのIn0.1Ga0.9As障壁層61,63,65とを交互に配した2層量子井戸構造とした。
この段階でフォトルミネッセンス測定を行ったところ、図2のように波長1.3μmでの発光が得られることを確認した。このときの半値全幅および発光強度は、上述した2層量子井戸構造6をIn0.1Ga0.9As3元基板上に形成した場合に得られる発光と同レベルのものが得られた。
次に、図3に示すように、図1に示した活性層、即ち量子井戸構造6を、ドーピングしたInGaPクラッド層15,7で挟んだダブルへテロレーザ構造を作製した。なお、図3において、図1に示し上述した部材(物質)と実質的に同一のものには同一符号を付している。
以下に、図3に示すダブルへテロレーザ構造の作製方法を詳述する。まず、GaAs基板1上に成長温度550℃、成長圧力76TorrにてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ100nmのGaAs層2を成長し、GaAs層2の上にSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ400nmのInGaP組成傾斜層3を成長した。なお、InGaP組成傾斜層3は、図4に示すようにGaAsに格子整合するIn組成0.48から成長をはじめ、最後はIn0.1Ga0.9Asに格子整合するIn組成0.58までInGaPの組成を線形に変化させた。このInGaP組成傾斜層3の上にSiを5x1017(cm-3)ドープしたIn0.1Ga0.9As層4を200nm成長する。
そして、In0.1Ga0.9As層4の上に成長温度650℃においてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ1μmのn−InGaPクラッド層15を成長し、n−InGaPクラッド層15の上に活性層として、図1に示すような、圧縮歪量子井戸層62,64の両側にIn0.1Ga0.9As障壁層61,63,65を配した歪量子井戸構造6を成長温度520℃で成長した。歪量子井戸構造6の上に成長温度650℃において亜鉛を5x1017(cm-3)ドープしたp−In0.58Ga0.42Pクラッド層7を1μmの厚さに成長し、p−In0.58Ga0.42Pクラッド層7の上にp型に2x1019(cm-3)ドープした厚さ100nmのIn0.1Ga0.9Asコンタクト層8を成長する。
このIn0.1Ga0.9Asコンタクト層8の上にスパッタリングでSiO2層を堆積し、さらにフォトリソグラフィによって幅2μm程度のストライプ状のマスクを形成する。ドライエッチングおよびウェットエッチングにより幅2μm、高さ1.6μmのメサストライプを形成する。このメサストライプの両脇をポリイミドで埋め込み、ポリイミド埋め込み層9とする。GaAs基板1を研磨後に上下にそれぞれp電極10、n電極11を形成し、リッジレーザへ加工した。
作製したレーザは、発振波長が1.26μmであり、閾値電流密度2kA/cm2、光出力は室温で5mWを実現した。
なお、本実施例においては、GaAs基板1上に成長するGaAs層2の層厚を100nm厚とする例を示したが、GaAs層2の層厚は500nm程度の厚さでもよく、また、零、即ち、GaAs層を設けない構成としてもよい。
また、GaAs層2上のInGaP組成傾斜層3のIn組成を0.48−0.59の範囲で線形的に変化させる例を示したが、In組成の変化は、線形的でなくてもよく、図5に示すIn組成変化としてもよい。例えば、図5(a)に示すように2次関数的でもよく、図5(b)に示すように階段状に変化させてもよい。または、図5(c)に示すように、組成を変化させることなく一定の組成のInGaPを用いてもよい。また、図5(d)、図5(e)に示すように、In組成は0.48−0.58の範囲外であってもよい。
また、GaAs層2上のInGaP組成傾斜層3の層厚は400nmとしたが他の層厚でもよく、100nm−1μmであることが望ましく、200−800nmであればさらに有効である。また、InGaP組成傾斜層3上に成長されるInGaAs層4は、200nm厚としたが、500nm程度の厚さでもよく、なくてもよい。また、InGaAs層4上のInGaPクラッド層15は1μm厚としたが、他の膜厚でもよく、0.5−2.0μmであることが望ましい。
GaAs層2上のInGaP組成傾斜層3の上にInGaAs層4を成長する例を示したが、これは、InGaAsでなくてもよい。ただし、GaAsより格子定数が大きいものが望ましい。さらに、長波長帯の光素子に適用することを考慮すればInPより格子定数が小さいことが望ましい。また、InGaP組成傾斜層3の上にInGaAs層4などを成長せずに、GaAs層2上のInGaP組成傾斜層3の上に連続してInGaPを成長しても構わない。
さらに、GaAs基板1上のGaAs層2、InGaP組成傾斜層3、InGaAs層4を550℃で成長する例を示したが、これらの成長温度は他の温度でもよく、450−600℃であることが望ましい。また、GaAs層2、InGaP組成傾斜層3、InGaAs層4上のInGaPクラッド層15を650℃で成長する例を示したが、InGaPクラッド層15の成長温度は他の温度でもよく、550−700℃であることが望ましい。また、活性層を520℃で成長する例を示したが、活性層の成長温度は他の温度でもよく、450−550℃であることが望ましい。
また、基板にはGaAs基板1を用いたが、Si基板、SiC基板、GaP基板を用いることもできる。また、サファイア基板など半導体以外の基板でも適用できる。
また、本実施例では素子の作製に有機金属気相成長法(MOVPE法)を用いたが、この他に分子線エピタキシー法(MBE法)やガスソース分子線エピタキシー法、有機金属分子線エピタキシー法、ハイドライド気相エピタキシャル成長法、クロライド気相エピタキシャル成長法でも可能である。
図6に基づいて、本発明の第2の実施例を詳細に説明する。図6は本実施例に係る光半導体素子の構造図である。
図1に示す光半導体素子は、波長1.3μmでの埋め込み型の分布帰還形半導体レーザ(DFB−LD)である。図1に示すように、本実施例に係る分布帰還形半導体レーザにあっては、GaAs基板101上にInGaPバッファー層103を成長して擬似的にInGaAs3元基板を作製している。
以下、図1に示す分布帰還形半導体レーザの作製方法を説明する。まず、GaAs基板101上に成長温度600℃、成長圧力76Torrにて、Siを5x1017(cm-3)ドープした厚さ1.0μmのInGaPバッファー層103を成長した。InGaPバッファー層103のIn組成は、図5(b)に示すように、GaAsに格子整合するIn組成0.48からIn0.1Ga0.9Asに格子整合するIn組成0.58までを階段状に、0.48、0.50、0.52、0.54、0.56、0.58と変化させた。なお、本実施例においては、上述した実施例1と異なりGaAs基板101上にGaAs層を成長しないものとする。
さらに、InGaPバッファー層103の上に成長温度650℃においてSiを5x1017(cm-3)ドープしたIn0.1Ga0.9As層104を500nm成長する。この上に成長温度650℃においてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ2μmのn−InGaPクラッド層105を成長し、その上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層112を導入する。その上に活性層として、In0.45Ga0.55As量子井戸層の両側に、In0.1Ga0.9As障壁層を配した歪量子井戸構造106を成長温度520℃で成長した。
この後、成長温度650℃において、歪量子井戸構造106の上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層113を成長し、回折格子を形成し、その上に亜鉛を1x1018(cm-3)ドープしたp−InGaPクラッド層107の一部を成長する。ここで、スパッタリングによりSiO2を堆積し、フォトリソグラフィ技術によりストライプ状のマスクを形成し、これをマスクとしてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ1.6μm程度のメサストライプを形成した。
引き続き、メサストライプの両側の基板上に、MOVPE法により、電流ブロック層としてRuドープのInGaP層109を層厚3μm成長させた。Ruの原料として、ビスエチルシクロペンタディエニルルテニウム(bis(ethylcycloPentadienyl)ruthenium(II))を用いた。
更に、SiO2からなるマスクをHFにより除去し、層厚1.5μmでZnドーピング濃度が5x1017(cm-3)であるp−In0.58Ga0.42Pオーバークラッド層107を成長した。その上にp型に2x1019(cm-3)ドープした厚さ100nmのIn0.1Ga0.9Asコンタクト層108を成長した。活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、In0.1Ga0.9As基板に格子整合する組成である。この成長後のウェハにp電極110、n電極111を形成した。
作製したレーザは、発振波長が1.27μmであり、閾値電流密度3kA/cm2、光出力は室温で1mWを実現した。
なお、本実施例では埋め込み層を半絶縁化するためのドーパントとしてRuを用いたが、Feを用いてもよい。
また、クラッド層105,7に用いる材料としては、InGaP、InAlAsのほかに、大きなバンドギャップを有するInGaAlAs、InAlP、InGaAlPなどを用いることも可能である。
このように、本実施例によれば、GaAs基板101上にInGaPの組成を変化させたバッファー層103を導入することで、上部の層へミスフィット転位や貫通転位などの欠陥が到達せずに、十分格子緩和したInGaAsやInAlAs層を成長することができる。この擬似的な3元基板の上には伝導帯のバンドオフセットが大きな量子井戸を持った光半導体素子が実現でき、高温環境下においても特性の変化の小さい動作の実現が可能となる。HEMTやHBTなどの電子デバイスにおいても大きなバンドオフセットを持つ構造が可能で、高性能化が期待される。
また、3元基板で問題となっていた基板の放熱も改善されるため、素子全体の発熱を抑えた高温度特性動作が可能となる。
図7に基づいて、本発明の第3の実施例を詳細に説明する。図7は本実施例に係る光半導体素子の構造図である。本実施例においては、光半導体素子として波長1.3μmでの直接変調型の分布帰還形半導体レーザ(DFB−LD)を実現するための構造について説明する。
図7に示すように、本実施例に係る分布帰還形半導体レーザにあっては、GaAs基板201上にInGaPバッファー層203を成長して擬似的にInGaAs3元基板を作製している。
以下、図7に示す分布帰還形半導体レーザの作製方法を説明する。まず、n−GaAs基板201上に成長温度520℃、成長圧力76TorrにてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ500nmのGaAs層202を成長し、該GaAs層202上にSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ500nmのInGaPバッファー層203を成長した。InGaPバッファー層203のIn組成は、図5(c)に示すように、0.54とする。なお、本実施例においてInGaPバッファー層203のIn組成は一定であるが、GaAsに格子整合する組成0.48とIn0.1Ga0.9Asに格子整合するIn組成0.58の中間であるIn組成0.54を用いる構成であるために、上部の層であるn−In0.1Ga0.9As層へのミスフィット転位や貫通転位などの欠陥の到達を防止することができる。
このInGaPバッファー層203の上に成長温度650℃、成長圧力76TorrにてSiをドープしたn−In0.1Ga0.9As層204を100nm成長し、その上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層212を導入する。さらにSiを5x1017(cm-3)ドープしたn−In0.58Ga0.42Pクラッド層205を500nmの厚さに成長した。
このn−In0.58Ga0.42Pクラッド層205の上に、活性層として、圧縮歪量子井戸層の両側に、引張り歪となるInGaAs/GaAs歪補償障壁層を配した歪量子井戸構造206を成長温度520℃で成長した。
詳述すると、厚さ8nmの量子井戸層の両側に、厚さ5nmのIn0.1Ga0.9As障壁層を配し、さらに、GaAs歪補償障壁層を配する。GaAs歪補償障壁層の厚さは15nmであり、相互に隣接する量子井戸層の間であって、In0.1Ga0.9As障壁層の間に配する。これらを3周期とした3層量子井戸活性層である。量子井戸層には1.3μm発光が可能となる組成であるIn0.5Ga0.5Asを用いた。歪量子井戸構造206の上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層213を成長し、回折格子を形成し、その上に亜鉛を1x1018(cm-3)ドープしたp−InGaPクラッド層207を成長温度650℃において成長する。
ここで、SiO2をマスクとしてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ2.0μm程度のメサストライプを形成した。引き続き、メサストライプの両側の基板201上に、MOVPE法により電流ブロック層として、RuドープのInGaP埋め込み層209を層厚2μm成長させた。更に、SiO2からなるマスクを除去し、層厚2μmでZnドーピング濃度が5x1017(cm-3)であるp−In0.58Ga0.42Pオーバークラッド層207を成長した。その上にp型に2x1019(cm-3)ドープした厚さ100nmのIn0.1Ga0.9Asコンタクト層208を成長した。活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、In0.1Ga0.9As基板に格子整合する組成である。この成長後のウェハにp電極210、n電極211を形成した。
このような方法でレーザ構造の表面を平坦に埋め込んで作製した埋め込みレーザの成長面を下にしてジャンクションダウンでヒートシンク215上にダイボンディングした。これにより成長面側からヒートシンク215側へと効率よく放熱させることができる。このようにマウントしたジャンクションダウン型レーザでは、従来のジャンクションアップ型に比べて、最高発振温度が10℃上昇した。
作製したレーザは、発振波長が1.3μmであり、閾値電流密度2.5kA/cm2、光出力は室温で5mWを実現した。
図8に基づいて、本発明の第4の実施例を詳細に説明する。図8は本実施例に係る光半導体素子の構造図である。本実施例においては、光半導体素子として、電界吸収型光変調器(EA変調器)を例に説明する。上述した実施例1乃至実施例3においては、光半導体素子として、In組成0.1のInGaAs層の上に波長1.3μm帯用のレーザを作製する例を示したが、基板のIn組成を高めることで、1.55μm帯用の光半導体素子の作製が可能となる。
図8に示すように、本実施例に係る光半導体素子にあっては、GaAs基板301上にInGaPバッファー層としてInGaP組成傾斜層303を成長して擬似的にInGaAs3元基板を作製している。
以下、図8に示す電界吸収型光変調器の作製方法を説明する。まず、n−GaAs基板301上に成長温度580℃、成長圧力76TorrにてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ100nmのGaAs層302を成長し、該GaAs層302の上にSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ200nmのInGaP組成傾斜層303を成長した。InGaP組成傾斜層303のIn組成は、GaAsに格子整合するIn組成0.48から成長をはじめ、最後はIn0.3Ga0.7Asに格子整合するIn組成0.78までIn組成を線形に変化させた。
このInGaP組成傾斜層303の上に成長温度650℃においてSiをドープしたn−In0.3Ga0.7As層304を1.0μmの厚さに成長し、さらにSiを5x1017(cm-3)ドープしたn−In0.78Ga0.22Pクラッド層305を1.5μmの厚さに成長し、その上に成長温度550℃において光吸収層構造を成長する。光吸収層構造は、InGaAs圧縮歪量子井戸層の両側に、引張り歪となるInAlAs障壁層を配した歪量子井戸構造306である。InAlAs歪補償層は厚さが10nmである。これらを6周期とした6層量子井戸光吸収層である。量子井戸層はIn0.6Ga0.4Asを用いた。量子井戸の厚さは10nmとする。
歪量子井戸構造306の上に成長温度650℃において亜鉛を5x1017(cm-3)ドープしたp−In0.78Ga0.22Pクラッド層307を1.5μmの厚さに成長し、その上にp型に2x1019(cm-3)ドープした厚さ100nmのIn0.3Ga0.7Asコンタクト層308を成長する。この上にスパッタリングでSiO2層を堆積し、さらにフォトリソグラフィによって幅2μm程度のストライプ状のマスクを形成する。ドライエッチングおよびウェットエッチングにより幅2μm、高さ3μmのメサストライプを形成する。この両脇をポリイミドで埋め込み、ポリイミド埋め込み層309とする。基板301を研磨後に上下にそれぞれp電極310、n電極311を形成し、リッジ構造へ加工し、波長1.55μmの光を制御する電界吸収型変調器を作製した。
この電界吸収型変調器は、室温において消光比は2V変化時に10dB以上の消光比が得られた。
図9に基づいて、本発明の第5の実施例を詳細に説明する。図9は本実施例に係る光半導体素子の構造図である。本実施例においては、光半導体素子として電界吸収型変調器と分布帰還形半導体レーザ(DFB−LD)をモノリシック集積したEA−DFBレーザの一例を説明する。
図9に示すように、本実施例に係るEA−DFBレーザは、EA変調器(図9中、左側部分)と分布帰還形半導体レーザ(DFB−LD、図中右側部分)をモノリシック集積したものであり、GaAs基板401上にInGaPバッファー層としてInGaP組成傾斜層403を成長して擬似的にInGaAs3元基板を作製している。
以下、図9に示すEA−DFBレーザの作製方法を説明する。まず、成長温度620℃においてn−GaAs基板401上に成長圧力76TorrにてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ100nmのGaAs層402を成長し、その上にSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ400nmのInGaP組成傾斜層403を成長した。InGaP組成傾斜層403は、GaAsに格子整合するIn組成0.48から成長をはじめ、最後はIn0.1Ga0.9Asに格子整合するIn組成0.58までIn組成を線形に変化させた。このInGaP組成傾斜層403の上にSiを5x1017(cm-3)ドープしたIn0.1Ga0.9As層404を200nm成長する。
分布帰還形半導体レーザ部の構成は、In0.1Ga0.9As層404上に、Siをドープしたn−In0.1Ga0.9Asバッファー層を成長し、さらに成長温度650℃においてSiを5x1017(cm-3)ドープしたn−In0.58Ga0.42Pクラッド層405を1.5μmの厚さに成長し、その上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層412を導入する。そして、その上に成長温度520℃において活性層構造を成長する。
活性層は、InGaAs圧縮歪量子井戸層の両側に、引張り歪となるGaAs障壁層を配した歪量子井戸構造406である。GaAs歪補償層は厚さが15nmである。これらを3周期とした3層量子井戸活性層である。量子井戸層は波長1.3μmで発振させるためIn0.5Ga0.5Asを用いた。量子井戸層の厚さは8nmとした。この上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層413を成長し、回折格子を形成し、その上をInGaPクラッド層407で埋め込む。
その後、このレーザ部分と後述する変調器部分を結合させるため、バットジョイント技術を用いる。即ち、レーザ構造成長層の上にスパッタリングでSiO2マスクをつけ、ウェットエッチングにより幅15μm、長さ400μmの領域のみ量子井戸活性層を有する島形状を形成する。その状態で変調器構造を成長することにより、レーザのメサ部分の周りに変調器構造が成長され、集積化される。
電界吸収型光変調器部分の構成は、InGaAs圧縮歪量子井戸層の両側に、引張り歪となるAl0.8Ga0.2As障壁層を配したInGaAs/AlGaAs歪量子井戸構造414である。Al0.8Ga0.2As歪補償層は厚さが10nmである。歪量子井戸構造414は、6層のInGaAs圧縮歪量子井戸層と7層のAl0.8Ga0.2As障壁層を交互に設けた6層量子井戸光吸収層である。量子井戸層は波長1.3μmの光の吸収係数を制御するのに最適な離調量を持った吸収波長をもつ組成であるIn0.4Ga0.6Asを用い、厚さは10nmとした。
バットジョイント成長の後にマスクを除去し、層厚1.5μmでZnドーピング濃度が5x1017(cm-3)であるp−In0.58Ga0.42Pオーバークラッド層407を成長した。その上にp型に2x1019(cm-3)ドープした厚さ100nmのIn0.1Ga0.9Asコンタクト層408を成長した。
さらに再度SiO2を堆積し、フォトリソグラフィ技術によりストライプ状のマスクを新しく形成する。これをマスクとしてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ1.6μm程度のメサストライプを形成した。引き続き、メサストライプの両側の基板401上に、MOVPE法により電流ブロック層として、Ruドープの図示しないInGaP層を層厚3μm成長させた。Ruの原料として、ビスエチルシクロペンタディエニルルテニウム(bis(ethylcycloPentadienyl)ruthenium(II))を用いた。また、電気的な絶縁を行うため、レーザ部と変調器部の間のInGaAsコンタクト層は除去する。この成長後のウェハにp電極410、n電極411を形成した。
本実施例によれば、EA−DFBレーザは閾値電流35mA、特性温度70K、消光比は10dB以上で高温化においても、レーザの閾値電流の変動が小さく、安定した動作を実現した。
図10に基づいて、本発明の第6の実施例を詳細に説明する。図10は本実施例に係る光半導体素子の構造図である。本実施例においては、光半導体素子としての分布帰還形半導体レーザの一例について説明する。
本実施例は、通常の長波長帯光デバイスで用いられるInP系結晶ではn型ドーパントとして振舞う炭素が、GaAs系結晶ではp型ドーパントとして振舞うことに着目したものである。ZnがInP系結晶でp型ドーパントとして用いられると熱拡散しやすいのに対し、炭素は熱拡散しにくいという特徴がある。このことを利用すればZnが活性層等に拡散することにより生じていた素子特性の劣化等の従来の問題を解消することができる。
図10に示すように、本実施例に係る光半導体素子にあっては、Si基板501上にInGaPバッファー層503を成長して擬似的にInGaAs3元基板を作製している。
以下、本実施例に係る光半導体素子の作製方法を説明する。まず、成長温度550℃においてn−Si基板501上に成長圧力76TorrにてSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ100nmのGaAs層502を成長し、その上にSiを5x1017(cm-3)ドープした厚さ200nmのInGaPバッファー層503を成長した。図5(d)に示すように、InGaPバッファー層503のIn組成は0.62とする。この場合、In0.1Ga0.9Asに格子整合するIn組成0.58より大きいIn組成を用いることとなるが、上層である後述するn−In0.58Ga0.42Pクラッド層505へのミスフィット転位や貫通転位などの欠陥の到達を十分に防止することができる。
InGaPバッファー層503の上に、成長温度650℃においてSiを5x1017(cm-3)ドープしたn−In0.58Ga0.42Pクラッド層505を1.5μmの厚さに成長し、その上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層512を導入する。その上に成長温度520℃において活性層構造を成長する。
活性層構造は、圧縮歪量子井戸層の両側に、引張り歪となるInGaAs/GaAs歪補償障壁層を配した歪量子井戸構造506を成長温度550℃で成長した。さらに詳述すると、厚さ10nmの量子井戸層の両側に、厚さ5nmのIn0.1Ga0.9As障壁層を配し、さらに、GaAs歪補償障壁層を配する。GaAs歪補償層は厚さが15nmであり、相互に隣接する圧縮歪量子井戸層間であって、In0.1Ga0.9As障壁層の間に配する。これらを3周期とした3層量子井戸活性層である。量子井戸層には1.3μm発光が可能となる組成であるIn0.5Ga0.5Asを用いた。
歪量子井戸構造506の上に40nmの厚さのノンドープのInGaAsPガイド層513を成長し、回折格子を形成し、その上に炭素を5x1017(cm-3)ドープしたp−InAlAsクラッド層507を1.5μmの層厚まで成長する。その上にp型に2x1019(cm-3)ドープした厚さ100nmのIn0.1Ga0.9Asコンタクト層508を成長した。炭素ドーピングの材料としては、四臭化炭素(CBr4)を用いた。
そして、SiO2をマスクとしてRIE(反応性イオンエッチング)により、幅2μmで高さ3μm程度のハイメサストライプを形成した。引き続き、メサストライプの両側の基板501上に、MOVPE法により電流ブロック層として、FeドープのInAlAs埋め込み層509を層厚4μm成長させた。この成長後のウェハにp電極510、n電極511を形成した。
p−InAlAsクラッド層507のドーパントとして、炭素を用いたことで、従来の亜鉛で起きたような熱拡散の影響を低減できる。これにより活性層中の光吸収が小さくなり、効率が向上する。また、半絶縁InAlAs埋め込み層509中のドーパントである鉄とp−InAlAsクラッド層507のドーパントである炭素の間では相互拡散が起きないため、従来の鉄と亜鉛を用いた場合に比較して漏れ電流が少なく、低閾値電流動作を実現した。なお、活性層以外の化合物半導体は特に断らない限り、In0.1Ga0.9As基板に格子整合する組成である。
作製したレーザは、発振波長が1.3μmであり、閾値電流密度1kA/cm2、光出力は室温で5mWを実現した。
なお、本実施例ではバッファー層としてIn組成0.62のInGaP層503を用いたが、図5(e)に示すようにInGaP層のIn組成をGaAsに格子整合する0.48以下の0.42からIn0.1Ga0.9Asに格子整合する0.58以上の0.66まで変化させても十分に上層であるn−In0.58Ga0.42Pクラッド層505へのミスフィット転位や貫通転位などの欠陥の到達を防止することができる。また、In組成がGaAsに格子整合する組成0.48以下の0.42であるInGaP層を用いても、十分に上層であるn−In0.58Ga0.42Pクラッド層505へのミスフィット転位や貫通転位などの欠陥の到達を防止することができる。
以上全ての実施例において、電界吸収型光変調器およびレーザの量子井戸には上記のInGaAsの他に、GaInNAsやInGaAsP、InGaAlAsなどを用いることができる。
また障壁層の材料は上記の他に、InGaAlAs、GaNAs、GaInNAs、GaAsPなどを用いることができる。
クラッド層に用いる材料としては、InGaPのほかに、大きなバンドギャップを有するInAlAs、InGaAlAs、InAlP、InGaAlPなどを用いることも可能である。
またこれらの実施例ではリッジを絶縁体のポリイミドで埋め込んだが、BCBでの埋め込みやFeやRuをドーピングしたInGaPやInAlAsなどの半絶縁の半導体で埋め込むこともできる。
さらに、歪量子井戸構造の発光波長が1.1μm〜1.6μmであれば、上述した実施例を良好に適用することができる。
本発明は、光半導体素子及び光半導体素子の作製方法に関し、とくに基板上に基板と格子定数の異なる半導体層を形成する作製方法及びそれを用いた化合物半導体素子に適用可能である。
1,101,201,301,401,501 n−GaAs基板
2,202,302,402,502 n−GaAs層
3,103,203,303,403,503 n−InGaPバッファー層
4,5,104,204,304,404,504 n−InGaAs層
15,105,205,305,405,505 n−InGaPクラッド層
6,106,206,306,406,506 InGaAs/InGaAs量子井戸層
7,107,207,307,407,507 p−InGaPクラッド層
8,108,208,308,408,508 p−InGaAsコンタクト層
9,109,209,309,509 埋め込み層
10,110,210,310,410,510 p電極
11,111,211,311,411,511 n電極
212,213,312,313,412,413,512,513 ガイド層
215 ヒートシンク
2,202,302,402,502 n−GaAs層
3,103,203,303,403,503 n−InGaPバッファー層
4,5,104,204,304,404,504 n−InGaAs層
15,105,205,305,405,505 n−InGaPクラッド層
6,106,206,306,406,506 InGaAs/InGaAs量子井戸層
7,107,207,307,407,507 p−InGaPクラッド層
8,108,208,308,408,508 p−InGaAsコンタクト層
9,109,209,309,509 埋め込み層
10,110,210,310,410,510 p電極
11,111,211,311,411,511 n電極
212,213,312,313,412,413,512,513 ガイド層
215 ヒートシンク
Claims (15)
- 1元基板または2元基板と、
前記基板上に形成されたInGaPバッファー層と、
前記InGaPバッファー層上に形成された第一の化合物半導体と
を有することを特徴とする光半導体素子。 - 前記基板が、前記第一の化合物半導体とは格子定数が異なる半導体であることを特徴とする請求項1記載の光半導体素子。
- 前記基板が、化合物半導体であることを特徴とする請求項2記載の光半導体素子。
- 前記基板が、GaAsであることを特徴とする請求項3記載の光半導体素子。
- 前記InGaPバッファー層と前記第一の化合物半導体との間に、格子定数がGaAsの格子定数より大きく且つInPの格子定数より小さい第二の化合物半導体を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記化合物半導体が、InGaAsまたはInAlAsであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記InGaAsまたは前記InAlAsのIn組成xが、0<x≦0.53であることを特徴とする請求項6記載の光半導体素子。
- 前記InGaPバッファー層のIn組成が、前記基板の格子定数から前記第一の化合物半導体の格子定数の範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記InGaPバッファー層の成長温度が450℃以上650℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記第一の化合物半導体の発光波長が1.1μm〜1.6μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記第一の化合物半導体がp型ドーパントとして炭素を用いた半導体を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記半導体がメサストライプ状に加工されており前記半導体の両側を半導体結晶により埋め込まれたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の光半導体素子。
- 前記半導体結晶が、Ruドープ半絶縁性半導体結晶であることを特徴とする請求項12記載の光半導体素子。
- 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の光半導体素子を有する半導体モジュールであって、該半導体素子の前記基板側とは反対側の面がヒートシンクに接していることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の光半導体素子を成長する方法であって、前記基板上に成長温度450℃以上650℃以下で前記InGaPバッファー層を成長し、前記InGaPバッファー層上に前記第一の化合物半導体を成長することを特徴とする光半導体素子の作製方法。
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