JP2963092B1 - 補強布入り障子紙及びその製造方法 - Google Patents

補強布入り障子紙及びその製造方法

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JP2963092B1 JP23631498A JP23631498A JP2963092B1 JP 2963092 B1 JP2963092 B1 JP 2963092B1 JP 23631498 A JP23631498 A JP 23631498A JP 23631498 A JP23631498 A JP 23631498A JP 2963092 B1 JP2963092 B1 JP 2963092B1
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Abstract

【要約】 【課題】 従来の障子紙と同様の機能を具えつつ、破れ
にくい強靱性を有し、又、補強用の布が透けて見えるこ
とによるソフト感を与える補強布入り障子紙を提供をす
る。 【解決手段】 レーヨン100%の糸を用いて作成した
補強布2を、パルプを主原料とする表障子紙3と裏障子
紙5との間に挟み、且つ該表障子紙3と裏障子紙5と補
強布2の全体を糊で一体化する。表障子紙の外面には、
補強布2の糸の配置の突状浮き出し模様13を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルプを主原料と
する表裏の障子紙間にレーヨン100%の補強布を介在
させて全体を一体化した補強布入り障子紙に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】障子紙を破れにくくするための手段の一
つとしては、特公昭49−12847号公報が開示する
ような、表障子紙と裏障子紙との間に縦列平行状や斜交
網目状、螺旋状等の配列様式で芯糸を配置し、該表障子
紙と裏障子紙と芯糸の全体を一体化したものが提案され
ている。
【0003】又、表障子紙と裏障子紙との間に寒冷紗を
介在させて強靱性を付与した障子紙や、障子紙基材の表
面に織物製補強布を貼着した補強布貼り障子紙も提供さ
れている。この補強布貼り障子紙は、補強布を糊で貼り
付ける際に糊が障子紙基材の裏側に抜けてしまうのを防
止するため、障子紙基材の裏面にフイルムを張り合わせ
ていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記従来
の補強された障子紙は、次のような問題点を有してお
り、実用性に乏しかった。(1) 芯糸を縦列平行状や斜交
網目状、螺旋状等の態様で配置した前記障子紙にあって
は、芯糸の交差部分が固定状態にないことから十分な破
れ防止効果が得られない問題があった。又この障子紙
は、製造能率や製造コスト等の観点から糸列間の間隔を
広くせざるを得ないと考えられるが、このようにしたと
きは、障子の紙部分に指や物が当たった場合にそれが芯
糸で受け止められる確率が小さくなり、この面からも、
障子紙としての強靱性が良好でない問題があった。又、
このように芯糸の交差部分が固定状態にないことから、
かかる障子紙を障子枠に貼り付けた後に余分な紙部分を
カッターナイフで切断する際、芯糸が刃先に引っ掛かっ
て不用意に引き出されやすく、切断を円滑且つ綺麗に行
いにくい問題があった。
【0005】(2) 寒冷紗を表裏の障子紙間に挟んで構成
した前記障子紙は、寒冷紗によって十分な強靱性が確保
されているとは言えるが、寒冷紗は綿製の織物であっ
て、パルプを主原料とする障子紙とは吸湿性や放湿性に
関しての相性が良好でなく、従って、吸湿と放湿を繰り
返す一般の障子紙におけるような優れた吸放湿性能を発
揮できないばかりか、吸放湿に伴う表障子紙や裏障子紙
の伸縮に良好に追随できない問題もあった。
【0006】(3) 前記補強布貼り障子紙は、障子紙基材
の裏面にフイルムを張り合わせる必要があるために、障
子紙の製造コストが非常に高く付く問題があったばかり
でなく、障子枠に貼られて障子とされたときに、フイル
ム面で光が反射して見た目が悪い問題があった。又フイ
ルムを張り合わせることによって、障子紙として要求さ
れる通気性が失われる問題もあった。加えて、障子紙基
材への織物の接着を安定させるために、目の細かい織物
を使用せざるを得なかったのであるが、このような目の
細かい織物を貼着して構成した障子紙は透光性が極端に
悪く、この点からも障子紙として不適当であった。その
上、織物の目が細かいために糸消費量が多くなり製造コ
ストの上昇を招く原因ともなっていた。又、補強布が露
出状態にあることから、かかる障子紙を障子枠に貼り付
けた後に余分な紙部分をカッターナイフで切断する際、
芯糸が刃先に引っ掛かって切断を円滑且つ綺麗に行いに
くい問題があった。更に、このような補強布貼り障子紙
は、通常、その補強布面を室内側に向けて障子枠の桟に
糊付けされるものであるが、補強布を構成する縦糸や横
糸においてのみ接着されることから、その接着が不確実
になりやすい問題もあった。更に又、露出する補強布面
が凹凸面であるために埃が付着しやすく、加えて、補強
布が露出状態にあるために、障子とした場合に補強布の
印象が強過ぎる不都合もあった。
【0007】本発明は、かかる問題点を解決し得る補強
布入り障子紙の提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
本発明は以下の手段を採用する。即ち本発明に係る補強
布入り障子紙は、レーヨン100%の糸を用いて作製し
た補強布を、パルプを主原料とする(場合によっては、
染料等が混合されることもある。本発明において以下同
様)表障子紙、裏障子紙間に挟んで全体を一体化してな
り、該糸が、表障子紙の内面に食い込んで該表障子紙と
面接触しており、且つ前記補強布を構成する糸が表障子
紙の内面を押し上げて、該表障子紙の外面に、前記補強
布の糸の配置の突状浮き出し模様が形成されていること
を特徴とするものである。
【0009】本発明に係る補強布入り障子紙のより好ま
しい態様は、レーヨン100%の糸を用いて作製した補
強布を、パルプを主原料とする表障子紙、裏障子紙間に
挟み、且つ該表障子紙と裏障子紙と補強布の全体を接着
剤で一体化してなり、該糸が、表障子紙及び裏障子紙の
内面に食い込んで該表障子紙及び裏障子紙に面接触して
おり、且つ前記補強布を構成する糸が表障子紙及び裏障
子紙の内面を押し上げて、該表障子紙の外面及び裏障子
紙の外面に、前記補強布の糸の配置の突状浮き出し模様
が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】前記各補強布入り障子紙において、前記補
強布が織物である場合、1インチ当たりの縦糸及び横糸
の配設本数を9〜15本に設定するのがよい。又前記各
補強布入り障子紙において、補強布が編物とされること
もある。
【0011】本発明に係る補強布入り障子紙のより好ま
しい態様は、レーヨン100%である、60番手の縦糸
と16〜60番手の横糸を用いた織物としての補強布
を、パルプを主原料とする表障子紙、裏障子紙間に挟
み、且つ該表障子紙と裏障子紙と補強布の全体を接着剤
で一体化してなり、前記補強布を構成する糸が、表障子
紙の内面及び裏障子紙の内面に食い込んで該表障子紙及
び裏障子紙に面接触しており、且つ該糸が表障子紙を押
し上げて、該表障子紙の外面に、前記補強布の糸の配置
の突状浮き出し模様が形成されたものとして構成するの
がよい。
【0012】又本発明に係る補強布入り障子紙において
補強布が織物である場合、縦糸を横糸に比して細く形成
するのがよい。
【0013】又本発明に係る補強布入り障子紙の製造方
法は、抄紙工程を経るものであり、無端状に循環するフ
ェルトの表面に、前記表障子紙となる湿紙層を形成した
後、該湿紙層に補強布を重ね、その後、前記フェルトの
表面に支持された湿紙層に前記補強布を圧接することに
よって、前記補強布の糸を湿紙層の内面に食い込ませて
該湿紙層に面接触状態となし、且つ該湿紙層の外面に前
記補強布の糸の配置の突状浮き出し模様を形成し、次に
該補強布の表面に、前記裏障子紙となる湿紙層を形成
し、その後、両湿紙層と補強布との一体化物を乾燥させ
ること特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1〜3において本発明に係る補
強布入り障子紙1は、補強布2を表障子紙3と裏障子紙
5との間に挟み且つ接着剤6を用いて全体を一体化した
ものである。
【0015】前記表障子紙3及び裏障子紙5は、従来の
障子紙と同様に、パルプを主原料として製造されてい
る。
【0016】又前記補強布2は、吸水性や放湿性の面に
おいて前記表障子紙3や裏障子紙5と同様の性質を持っ
たものであり、図1に示すように、レーヨン100%で
ある縦糸7と横糸9を用いた織物として形成されてい
る。この縦糸7としては50〜65番手のものを用い、
又横糸9としては16〜60番手のものを用いるのがよ
い。例えば、縦糸7として60番手の細い糸を用い、横
糸9としては、前記番手のもので太さがランダムに変化
する糸や、必要に応じて着色された糸を用いることによ
り、又、異なる番手の複数種類の糸を横糸として用いる
こと等によって、補強布2に各種の横縞柄を付与でき
る。特に図4に示すように、縦糸7としてこのような細
い糸を用いるときは、このような柄形成に関与する横糸
9が縦糸7によって隠される部分が少なくなり、従って
前記横縞柄をより明確なものとなし得る。
【0017】このような構成を有する表障子紙3と裏障
子紙5との間で前記補強布2を挟み且つ表障子紙3と裏
障子紙5との間に接着剤を介在させて三者を一体化する
ことにより、本発明に係る補強布入り障子紙1が構成さ
れており、前記補強布2を構成する縦糸7及び横糸9
が、例えば図3に示すように、表障子紙3の内面10及
び裏障子紙5の内面11に食い込んだ状態となってい
る。そして前記補強布2の縦糸7及び横糸9が、表障子
紙を押し上げて、該表障子紙の外面12に、図2〜3に
示すように、前記補強布2の縦糸7、横糸9の配置の突
状浮き出し模様13が形成されている。
【0018】かかる構成を有する補強布入り障子紙1
は、表障子紙3と裏障子紙5とを予め製造した後、接着
剤(澱粉質糊等)を介在させて両者間で前記補強布2を
挟んで全体を一体化してもよいのであるが、次のような
抄紙工程を経て製造するのが、製造能率の向上と製造コ
ストの低減を期し得て好ましい。
【0019】図5はその工程説明図であり、符号15、
16は夫々、第1の丸網抄紙機、第2の丸網抄紙機を示
す。該第1の丸編抄紙機15は、紙料液16を貯留した
紙料液槽17内で回転する第1の円形金網19を具えて
おり、該円形金網19の回転に伴い、その表面に湿紙層
を形成させる。又第2の丸編抄紙機16も、紙料液20
を貯留した紙料液槽21内で回転する第2の円形金網2
2を具えており、該円形金網22の回転に伴い、その表
面に湿紙層を形成させる。又図5において符号23は、
第1ローラ25、第2ローラ26、第3ローラ27、第
4ローラ29等のローラに支持されて無端循環するフェ
ルトである。そして、これらのローラに支持されたフェ
ルト23の表面30に対して、第2のローラ26との対
向位置で前記第1の円形金網19が圧接状態となり、第
4ローラ29との対向位置で、第2の円形金網22が圧
接状態となる。又第3ローラ27との対向位置で、ロー
ラ31、32、33に巻回された金網35が圧接状態と
なるように構成されている。又符号36は、前記補強布
2を巻回した補強布ロールであり、該補強布2が、前記
第3ローラ27と前記金網35との間に挟持された状態
で順次巻き戻される。
【0020】然して、前記フェルト23が矢印方向に無
端循環することに伴い、前記第1の円形金網19の表面
に形成された湿紙層37が、図6に示すように前記フェ
ルト表面30に圧接状態で転移され、フェルトと共に進
行せしめられる。その後、該転移された湿紙層37の表
面には、前記第3ローラ27を通過する際に、図7に示
すように、前記補強布ロール36から巻き戻された補強
布2が重ねられ、その際、前記湿紙層37と補強布2と
の間に、図示しない糊供給装置によって糊(澱粉質等の
糊)6が供給される。その後、湿紙層37と補強布2と
は、前記金網35によってフェルト表面30に圧接され
る。このとき、補強布2の縦糸7及び横糸9がフェルト
表面30に向けて湿紙層37を押圧するため、これらの
糸が、図7に示すように、湿紙層37に食い込み状態と
なり且つ湿紙層37のフェルト面側に突状浮き出し模様
を形成する。その後該補強布2の表面には、図8に示す
ように、前記第2の円形金網22の表面に吸着形成され
た湿紙層39が圧接状態に転移され、前記補強布2の縦
糸7及び横糸9が、該湿紙層39に食い込み状態とな
る。そして前記接着剤(糊)6によって、該湿紙層3
7,39と補強布2とが接着され、且つ表裏の湿紙層3
7,39相互が接着一体化され、縦糸7及び横糸9の周
辺に形成された微小空間40にも糊6が略充填状態とな
る。
【0021】その後、表裏の湿紙層と補強布との一体化
物33はフェルト23と共に進行せしめられ、フェルト
23から分離された後に乾燥機35にかけられ、巻取り
ロール41に巻き取られる。
【0022】図9〜10は、前記構成を有する補強布入
り障子紙1を障子枠42に貼着して構成した障子43を
示すものであり、意匠性を考慮して、突状浮き出し模様
13(図2)が形成されている前記表障子紙3を室内側
に向けて糊付けしている。なお前記突状浮き出し模様1
3は、現実には淡いものであるが、図9〜10において
は便宜上明瞭に表している。又図10においては突状浮
き出し模様13の目を稍荒く表している。前記糊付け
は、前記従来の補強布貼り障子紙のように、補強布を構
成する縦糸及び横糸が桟に直接糊付けされるのではな
く、突状浮き出し模様13が形成されてはいるが、図1
1に示すように、あくまでも表障子紙3において桟45
に糊付けされる。従って補強布入り障子紙1は、前記補
強布貼り障子紙を布面で直接糊付けするのとは異なり、
広い面積で桟45に安定的に接着されることになる。
【0023】又このように表4子紙3において桟45に
接着されるため、補強布の布目を、従来の補強布貼り障
子紙におけるように極端に小さくする必要がなく、その
結果、障子紙としての適当な透光性を確保できる。
【0024】又、補強布2がレーヨン100%の糸を用
いて作製されているため、吸湿や放湿及びそれに伴う伸
縮の性質が表障子紙3及び裏障子紙5と同様であるた
め、この点において、従来の障子紙と同様の性質を有し
ている。
【0025】更に又、この糊付けの際に、補強布入り障
子紙の余分な紙部分をカッターナイフで切断するとき
は、縦糸と横糸の交差部分が固定状態にあり、しかも補
強布2が表障子紙3と裏障子紙5との間に挟まれて全体
が一体化しているために、容易且つ確実な切断が可能で
あり、前記した従来の糸入り障子紙や補強布貼り障子紙
におけるような不安定な切断となる恐れがない。
【0026】〔その他の実施の形態〕 (1) 本発明に係る補強布入り障子紙に用いる補強布2
は、レーヨン100%の糸を用いて作製した編物として
構成されてもよい。この場合は、編目の形態に応じて、
織物とは異なる独特の透け模様が得られることなる。
【0027】(2) 表障子紙の外面に前記突状浮き出し模
様が形成されないこともある。又、表障子紙の外面と裏
障子紙の外面の双方に突状浮き出し模様が形成されるこ
ともある。
【0028】(3) 前記のような抄紙工程を経て補強布入
り障子紙が製造される場合は、補強布の縦糸及び横糸が
表障子紙の内面及び裏障子紙の内面に食い込んだ状態と
なし得るために、表障子紙と裏障子紙と補強布の全体
が、接着剤を介在させることなく一体化されたものとし
て構成されることもある。
【0029】
【発明の効果】本発明に係る補強布入り障子紙は、従来
一般に使用されている障子紙の機能即ち、透光性や吸湿
性、放湿性及びこの吸放湿に伴う伸縮性等の機能を具え
つつ、破れにくい強靱性を有し、又補強布が透けて見え
ることによるソフト感を与えることができ、加えてカッ
ターナイフによる切断を容易且つ綺麗に行うことができ
る等の特別な付加価値を具えている。これをより具体的
に説明すれば以下のようである。
【0030】(1) 本発明に係る補強布入り障子紙は、表
障子紙と裏障子紙との間に補強布を挟んで全体を一体化
した構成を有するため、補強布により強靱性が付与され
ており、障子の紙部分に指や物が当たった場合に破れに
くい。従来の糸入り障子紙は、芯糸の交差部分が固定状
態になく、又製造コストの低減等の要請から糸列間も広
くならざるを得なかったため、破れにくさの面で不十分
であったが、本発明はこのような問題点を解決してい
る。
【0031】(2) 前記補強布は、パルプを主原料とする
表障子紙や裏障子紙と同様の性質を有するレーヨン10
0パーセントの糸を用いて作製されているため、三者を
一体化して構成された本発明の補強布入り障子紙は、吸
湿や放湿を行う調湿作用を一般の障子紙と同様に発揮
し、又それに伴う伸縮に関しても、従来の障子紙と略同
様である。更に、一般の障子紙と略同様の通気性を有
し、このような通気性に伴って、室内の埃を吸着できる
良好なフィルター作用も発揮できる。
【0032】(3) 又本発明に係る補強布入り障子紙は、
その表裏が、従来の障子紙と同様の表障子紙及び裏障子
紙を用いて構成されているため、前記した従来の補強布
貼り障子紙におけるような好ましくない反射が生じた
り、補強布が露出する不自然さもなく、外観上は従来の
障子紙と略同様である。そして表障子紙と裏障子紙との
間に介在された補強布は、前記補強布貼り障子紙におけ
るように補強布が直接露出するのではなく、補強布入り
障子紙の透光性によって淡く透けてみえるため、補強布
の柔らかい風合いにより、部屋にソフトな雰囲気を醸し
出すことができる。
【0033】そして補強布は、織物や編物等により構成
できる共に適宜に着色できる。又補強布の布目の大きさ
も、前記した障子紙の破れにくさを確保し得る範囲で変
化させることができるため、これらによって各種の意匠
効果が得られることになる。
【0034】(4) 又、縦糸と横糸からなる布目の凹凸面
を有する前記従来の補強布貼り障子紙に比し埃が付着し
にくい。
【0035】(5) 更に、糸の交差部分が固定状態にある
補強布を、表障子紙と裏障子紙との間に挟んで全体を一
体化しているため、補強布入り障子紙を障子枠に貼着す
る際に、該補強布入り障子紙の余分な紙部分をカッター
ナイフで切断することが容易である。芯糸相互が固定状
態にない従来の障子紙や、補強布が露出状態になる前記
補強布貼り障子紙にあっては、これをカッターナイフで
切断する際に、刃先が糸に引っ掛かって切断を円滑に行
い難い問題があったのであるが、本発明はこれを解決し
ている。
【0036】(6) 又前記補強布貼り障子紙にあっては、
その補強布側の面を障子枠に貼り付ける際の接着力の確
保の観点から、前記のように、目の細かい補強布を使用
せざるを得なかったのであるが、本発明によるときは、
補強布を表障子紙と裏障子紙との間に挟むこととし、障
子枠への布入り障子紙の接着を紙の面で行うこととして
いるため、補強布入り障子紙を破れにくくする範囲で補
強布の目を大きく形成することが可能である。このよう
に補強布の目を大きく形成できることは、障子紙として
の透光性が補強布によって極力損なわれないようにする
上でも好ましい。
【0037】(7) 本発明に係る補強布入り障子紙は、安
価に入手し得るレーヨン糸を用いて補強布を形成するこ
と、前記のように補強布の目を大きく形成できることか
ら糸の消費量が少なくて済むこと、又、前記補強布貼り
障子紙のようにフイルムを貼り合わせる必要がないこと
等によって、比較的低コストで製造され得る。
【0038】(8) 障子を構成した場合に室内側に位置す
る面に、補強布の糸の配置の突状浮き出し模様が現され
るようにするときは、室内側に補強布が間接的に浮き出
され、補強布の柔らかい風合いが強調されることになっ
て好ましい。又このように突状浮き出し模様が形成され
る場合であっても、障子枠の桟への補強布入り障子紙の
貼り付けは、前記補強布貼り障子紙におけるように糸そ
のものによってではなく、あくまでも紙部分で広い面積
で行うことができるため、桟への接着力を向上させるこ
とができる。このように、桟への接着力を確保しつつ且
つ補強布を印象付けて障子の見栄えを向上できる点が本
発明の特徴となっている。
【0039】(9) 補強布を構成する糸を、表障子紙の内
面及び裏障子紙の内面に食い込んだ状態とすることによ
り、表障子紙と裏障子紙と補強布とをより良好に一体化
し得ることとなる。
【0040】(10)表障子紙と裏障子紙と補強布の全体
を、接着剤により一体化するときは、表障子紙と裏障子
紙相互を接着できると共に、これらと補強布とを接着で
きることになり、三者をより一層強力に一体化できて好
ましい。これによって、補強布を形成する糸の周りに殆
ど空間がない状態となし得、カッターナイフによる補強
布入り障子紙の切断を一層容易に且つ綺麗に行うことが
できることになる。
【0041】(11)補強布が織物である場合、その縦糸を
横糸に比して細く形成することにより、縦糸によって隠
れる横糸部分をできるだけ少なくして、横糸による縞模
様をより明確に表すことができる。
【0042】(12)又、補強布を構成するレーヨンはセル
ロース系繊維であるために、本発明に係る補強布入り障
子紙を前記のように抄紙工程を経て製造する場合であっ
ても、該補強布を、合成繊維の糸を用い或いはレーヨン
と合成繊維との混紡糸を用いて構成する場合のように、
軟化したり、溶融したりする問題を生じさせる恐れがな
い。又焼却時に有害ガスを発生させる恐れもない。
【0043】(13)補強布を織物として構成する場合、縦
糸として、現時点で入手容易な最も細い60番手のレー
ヨン糸を用いることにより、障子紙として要求される透
光性や柔軟性を損なうことなく所要の強靱性も付与でき
て好ましい。又、縦糸を細くした分だけ、表障子紙と裏
障子紙の接着面積の増大が図られることになり、表障子
紙と裏障子紙と補強布の全体を、より強固に接着一体化
できることとなる。このようなことから、カッターナイ
フによる補強布入り障子紙の切断をより一層確実且つ容
易に行い得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る補強布入り障子紙を示す部分斜視
図である。
【図2】その部分拡大図である。
【図3】その拡大断面図である。
【図4】補強布を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明に係る補強布入り障子紙の製造工程説明
図である。
【図6】フェルトへの湿紙層の転移状態を示す断面図で
ある。
【図7】湿紙層に補強布が食い込んだ状態を示す断面図
である。
【図8】補強布に湿紙層が圧接状態に転移された状態を
示す断面図である。
【図9】本発明に係る補強布入り障子紙を貼着して構成
された障子を示す正面図である。
【図10】その部分拡大図である。
【図11】障子枠の桟への補強布入り障子紙の接着状態
を示す断面図である。
【符号の説明】
1 補強布入り障子紙 2 補強布 3 表障子紙 5 裏障子紙 6 接着剤 7 縦糸 9 横糸 13 突状浮き出し模様 23 フェルト 37 湿紙層 39 湿紙層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭59−80500(JP,U) 実開 昭61−16400(JP,U) 実用新案登録3042082(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D21H 27/00 - 27/30

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーヨン100%の糸を用いて作製した
    補強布を、パルプを主原料とする表障子紙、裏障子紙間
    に挟んで全体を一体化してなり、該糸が、表障子紙の内
    面に食い込んで該表障子紙と面接触しており、且つ前記
    補強布を構成する糸が表障子紙の内面を押し上げて、該
    表障子紙の外面に、前記補強布の糸の配置の突状浮き出
    し模様が形成されていることを特徴とする補強布入り障
    子紙。
  2. 【請求項2】 レーヨン100%の糸を用いて作製した
    補強布を、パルプを主原料とする表障子紙、裏障子紙間
    に挟み、且つ該表障子紙と裏障子紙と補強布の全体を接
    着剤で一体化してなり、該糸が、表障子紙及び裏障子紙
    の内面に食い込んで該表障子紙及び裏障子紙に面接触し
    ており、且つ前記補強布を構成する糸が表障子紙及び裏
    障子紙の内面を押し上げて、該表障子紙の外面及び裏障
    子紙の外面に、前記補強布の糸の配置の突状浮き出し模
    様が形成されていることを特徴とする補強布入り障子
    紙。
  3. 【請求項3】 補強布が織物であり、1インチ当たりの
    縦糸及び横糸の配設本数が9〜15本であることを特徴
    とする請求項1〜2のいずれかに記載の補強布入り障子
    紙。
  4. 【請求項4】 補強布が編物であることを特徴とする請
    求項1〜2のいずれかに記載の補強布入り障子紙。
  5. 【請求項5】 レーヨン100%である、60番手の縦
    糸と16〜60番手の横糸を用いた織物としての補強布
    を、パルプを主原料とする表障子紙、裏障子紙間に挟
    み、且つ該表障子紙と裏障子紙と補強布の全体を接着剤
    で一体化してなり、前記補強布を構成する糸が、表障子
    紙の内面及び裏障子紙の内面に食い込んで該表障子紙及
    び裏障子紙に面接触しており、且つ該糸が表障子紙を押
    し上げて、該表障子紙の外面に、前記補強布の糸の配置
    の突状浮き出し模様が形成されていることを特徴とする
    補強布入り障子紙。
  6. 【請求項6】 縦糸を横糸に比して細く形成したことを
    特徴とする請求項3又は5記載の補強布入り障子紙。
  7. 【請求項7】 請求項1、2又は5に記載の補強布入り
    障子紙を抄紙工程を経て製造する製造方法であって、無
    端状に循環するフェルトの表面に、前記表障子紙となる
    湿紙層を形成した後、該湿紙層に補強布を重ね、その
    後、前記フェルトの表面に支持された湿紙層に前記補強
    布を圧接することによって、前記補強布の糸を湿紙層の
    内面に食い込ませて該湿紙層に面接触状態となし、且つ
    該湿紙層の外面に前記補強布の糸の配置の突状浮き出し
    模様を形成し、次に該補強布の表面に、前記裏障子紙と
    なる湿紙層を形成し、その後、両湿紙層と補強布との一
    体化物を乾燥させること特徴とする補強布入り障子紙の
    製造方法。
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