JP2962445B2 - 連続鋳造機の湯面状況検出方法 - Google Patents

連続鋳造機の湯面状況検出方法

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JP2962445B2
JP2962445B2 JP7368992A JP7368992A JP2962445B2 JP 2962445 B2 JP2962445 B2 JP 2962445B2 JP 7368992 A JP7368992 A JP 7368992A JP 7368992 A JP7368992 A JP 7368992A JP 2962445 B2 JP2962445 B2 JP 2962445B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳型内の溶鋼湯面上に
投入したパウダーにより、該湯面の酸化防止や過冷却防
止を図る連続鋳造機の湯面状況検出方法に係り、特に、
投入された湯面上のパウダーの不足検出の信頼性向上
や、製造される鋳片の欠陥検出等に有用な湯面上の状況
検出を行うことができる連続鋳造機の湯面状況検出方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼塊法に比べて、連続鋳造は、工程数を
減少することができるという特徴を有している。従っ
て、連続鋳造は、エネルギ効率が高く、又、歩留りを向
上させることができる。
【0003】このような連続鋳造においては、鋳型に流
し込まれた溶鋼の湯面(以降、単に湯面と称する)上に
は、酸化カルシウムCa Oや、二酸化珪素Si O2 等を
主成分とするモールドパウダー(以降、単にパウダーと
称する)が投入される。投入された該パウダーは、湯面
からの熱供給によって、焼結層や溶融層を湯面上に形成
する。又、鋳型に流し込まれた溶鋼が順次鋳造されてい
くに連れ、該パウダーは、最終的に凝固シェルと鋳型と
の間に流れていく。
【0004】連続鋳造において、このようなパウダー
は、次のような役割を果たしている。
【0005】(1)鋳型内溶鋼表面の酸化防止 (2)鋳型と鋳片との間の潤滑 (3)浮上した介在物の捕獲 (4)鋳型内溶鋼表面の保温(過冷却防止)
【0006】連続鋳造中に、以上列挙したような役割を
湯面上に投入されたパウダーが十分に果たすためには、
該湯面上に欠損することなくパウダー層が形成されなけ
ればならない。特に、溶融したパウダー層や焼結したパ
ウダー層上に、欠損することなく未溶融のパウダー層が
形成されることが望ましい。
【0007】例えば、湯面上へのパウダー供給量の減少
等により、湯面上のパウダー層に欠損が生じてしまう
と、該湯面上に、「炎」や、「パウダー赤熱」や、「パ
ウダー焼結」や、「過剰なガス抜け」等の現象が生じて
しまう。これらの現象が生じてしまうと、連続鋳造され
る鋳片のカギ割れやタテ割れ、鋳片内部での介在物や気
泡のトラッピング等が発生してしまい、製造される鋳片
の品質に欠陥が生じてしまう。
【0008】従って、従来から、湯面上に欠損すること
なくパウダー層を形成するための様々な技術が開示され
ている。
【0009】例えば、特開昭59−229267では、
湯面上へのパウダー投入装置において、湯面上のパウダ
ー欠損部を順次検出する手段と、前記欠損部を検出する
毎に、この検出した欠損部に対してパウダーの投入を行
うように制御する制御手段とを具備した連続鋳造パウダ
ー投入装置に関する技術が開示されている。該技術は、
パウダー欠損部を検出する手段とパウダーの投入ノズル
とを一緒に、湯面上を順次走査させるというものであ
る。従って、この特開昭59−229267で開示され
ている技術によれば、湯面上のパウダー欠損部の検出と
共にパウダーを投入することができ、このため、欠損部
検出からパウダー投入までの遅延時間を短縮することが
できる。又、パウダー欠損部の検出をパウダー投入まで
記憶するためのメモリをも不要とすることができる。
【0010】又、特開昭60−49846では、湯面上
に散布されたパウダー層の表面温度及びその温度分布か
ら、該パウダー層の厚み及びその厚み分布を算出すると
共に、これに従って、湯面上のパウダー層の厚みが一定
になるようにパウダーを散布するという技術が開示され
ている。この特開昭60−49846で開示されている
技術によれば、湯面上のパウダー層の厚さを測定しなが
ら、これが一定となるようにパウダーを散布することが
でき、連続鋳造の省力化を図ることができる。
【0011】又、特開平2−251346では、中央部
に注入ノズルが配置された連続鋳造鋳型上方の、前記注
入ノズルを挾んだ相対する部位に、一対若しくは複数対
の湯面状況検出用イメージセンサを配置している。又、
前記各々のイメージセンサから時々刻々と入力される湯
面状況の入力画像を、基準閾値で2値化し、明部と暗部
に区別するようにしている。又、前記各々のイメージセ
ンサ視野内の湯面部分について、前記明部の面積比率R
n を求める。次いで、前記明部面積比率Rn の単位時間
当りの変化率Dn を求める。このようにして求められた
前記明部面積比率Rn 及び、若しくは変化率Dn と湯面
異常状況の相関により、湯面の異常状況を検出するとい
う技術が開示されている。この特開平2−251346
で開示されている技術によれば、湯面上で発生する炎
や、鋳型震動等による湯面の揺動による湯面上の温度状
況等の大きな変化や、外乱光の影響を受けることなく、
より正確にパウダー不足状況を検出することができる。
【0012】
【発明が達成しようとする課題】しかしながら、前述の
特開昭59−229267や特開昭60−49846で
は、投入された湯面上のパウダーの不足検出の信頼性が
十分ではないという問題があった。例えば、湯面上に発
生する炎をパウダー不足と誤検出してしまうことがあっ
た。又、鋳型震動等による湯面上の揺動により、湯面上
の温度状況等の検出結果が変動してしまうことにより、
あるいは外乱光の影響を受けることによって、正確にパ
ウダー不足状況を検出することが困難であった。
【0013】又、前述の特開平2−251346では、
前記明部の面積比率Rn を求めたり、該面積比率Rn の
単位時間当りの変化率Dn を求めるようにしているた
め、湯面上の比較的狭い範囲でのパウダーの不足検出を
行う際には、その信頼性が低下してしまうという問題が
ある。又、イメージセンサ等の高価な検出手段を用いな
ければならないという問題がある。
【0014】本発明は、前記従来の問題点を解決するべ
くなされたもので、投入された湯面上のパウダーの不足
検出の信頼性向上や、製造される鋳片の欠陥検出等に有
用な湯面上の状況検出を行うことができる、連続鋳造機
の湯面状況検出方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、鋳型内の溶鋼
湯面上に投入したパウダーにより、該湯面の酸化防止や
過冷却防止を図る連続鋳造機の湯面状況検出方法におい
て、光学検出手段により、前記湯面上の輝度を検出し
て、時系列方向の複数の輝度データを求める輝度測定手
順と、所定単位時間中の前記複数の輝度データの分散
を、時系列方向に順次求める輝度分散算出手順と、少な
くとも該分散を用いた弁別関数により、前記湯面の状況
を検出する湯面状況検出手順とを備えたことにより、前
記課題を達成したものである。
【0016】又、前記連続鋳造機の湯面状況検出方法に
おいて、前記光学検出手段が、前記湯面上の複数場所の
輝度を検出するものであって、前記輝度測定手順と、前
記輝度分散算出手順と、前記湯面状況検出手順とが、そ
れぞれの処理を前記複数場所毎に行うものであって、更
に、前記湯面の状況の検出結果のうち、少なくとも異常
と思われる状況を、その検出場所と共に、前記時系列に
対応させて記録する湯面状況記録手順をも備えたことに
より、前記課題を達成すると共に、製造される鋳片の欠
陥検出等により有用な情報を得ることができるようにし
たものである。
【0017】
【作用】前述した従来技術等、可視光や赤外線等を検出
する光センサやカメラ等を用いて、湯面状況、例えば投
入された湯面上のパウダーの不足等を検出しようとした
場合、次に列挙するような湯面状況を区別することが困
難であった。
【0018】(1)投入された湯面上のパウダーの不足
(溶鋼の出現等) (2)炎の発生 (3)湯面上への焼結パウダーの出現 (4)湯面上でのパウダー燃焼 (5)湯面上でのパウダー赤熱
【0019】従って、従来では、湯面上でのパウダー赤
熱であるにも拘らず、湯面上に溶鋼が出現してしまった
等と誤検出してしまうことがあった。
【0020】なお、以上列挙した5項目等の湯面状況
を、以降、種々の湯面状況と称する。
【0021】本発明は、これら種々の湯面状況を光学検
出により区別するための方法を見出すために、光学検出
手段により測定された多数の輝度データを求めながらな
されたものである。又、該輝度データを様々な手法で加
工しながら見出したものである。
【0022】この結果、時系列方向に順次求められた、
所定単位時間中の前記複数の輝度データの分散によれ
ば、前述のような種々の湯面状況をより明瞭に区別し、
検出することができることが見出された。本発明は、こ
の結果に基づいたものである。
【0023】図1は、本発明の要旨を示すフローチャー
トである。
【0024】この図1に示されるように、本発明は、ス
テップ102で示される輝度測定手順と、ステップ10
6で示される輝度分散算出手段と、ステップ120で示
される湯面状況検出手順とにより構成されている。又、
本発明はこれを限定するものではないが、前記ステップ
102、106、120に加えて、ステップ124で示
される湯面状況記録手順をも備えるようにしてもよい。
【0025】前記輝度測定手順は、光学検出手段によ
り、連続鋳造機の鋳型内の溶鋼湯面上の輝度を検出し
て、時系列方向の複数の輝度データを求める手順であ
る。
【0026】本発明は、前記光学検出手段を限定するも
のではない。この光学検出手段は、可視光を検出するも
のであってもよく、赤外線を検出するものであってもよ
い。又、この光学検出手段は、例えばシリコンフォトダ
イオードのような湯面上の特定点の輝度を検出するもの
であってもよく、あるいは、ビデオカメラのように、前
記湯面上を撮影した視野内の多数点の輝度を検出可能な
ものであってもよい。更に、このような光学センサやカ
メラを、必要に応じて複数用いてもよい。例えばカメラ
を用いる場合、前記湯面上方に配置されたイマージョン
ノズル等によって死角が生じてしまい、1台のカメラで
前記湯面の全てを視野内に収めることができない場合も
ある。このような場合には、複数のカメラを適当に配置
することが好ましい。
【0027】前記輝度分散算出手順は、所定単位時間中
の前記複数の輝度データの分散を、時系列方向に順次求
める手順である。この分散とは、一般的によく知られて
いる統計量であり、次式のように表わすことができる。
【0028】分散(V(x ,y ))=Σ(平均(V(x
,y ))−V(x ,y ))2 /n )…(1)
【0029】なお、上記平均は、同様に一般的によく知
られている統計量であり、次式のように表わすことがで
きる。
【0030】 平均(V(x ,y ))=ΣV(x ,y )/n …(2)
【0031】前記湯面状況検出手順は、少なくとも前述
のような分散を用いた弁別関数により、種々の湯面状況
を検出する手順である。実施例としてグラフを用いて詳
しく後述するように、前述のような輝度データの分散に
よれば、種々の湯面状況をより明瞭に区別することがで
きる。例えば、予めこれらの種々の湯面状況に対応する
輝度データの分散の特徴を把握しておき、弁別関数を決
定しておけば、効果的に湯面状況を検出することが可能
である。
【0032】なお、本発明は、このような弁別関数を具
体的に限定するものではない。例えば、この弁別関数
は、前述のような輝度データの分散と共に、輝度データ
の平均を用いるものであってもよい。又、この弁別関数
は、逐次求められる輝度データの分散と、予め定められ
ている設定値とを比較することにより、湯面状況を検出
するものであってもよい。あるいは、近年様々な分野で
用いられるようになってきている知識工学の手法に従っ
て検出するものであってもよい。例えば、予め求められ
ている種々の湯面状況毎の輝度データの分散や平均等を
主とした知識ベースを用い、所定の推論エンジンにより
湯面状況を検出するものであってもよい。又、この弁別
関数は、ニューラルネットワークにより構成してもよ
い。
【0033】以上説明したように、本発明では、時系列
方向の複数の輝度データの分散を用いることにより、効
果的に種々の湯面状況を検出することができる。従っ
て、本発明によれば、湯面状況の誤認を低減することが
でき、投入された湯面上のパウダーの不足検出の信頼性
向上や、製造される鋳片の欠陥検出等に有用な湯面上の
状況検出を行うことができる。
【0034】なお、本発明はこれを限定するものではな
いが、前述の光学検出手段は、ビデオカメラ等、あるい
は複数の光学センサを用いる等、前記湯面上の複数場所
の輝度を検出するものであってもよい。更に、前記輝度
測定手順と、前記輝度分散算出手順と、前記湯面状況検
出手順とが、それぞれの処理を前記複数場所毎に行うも
のであってもよい。更に、これらの手順に加え、前記湯
面状況の検出結果のうち、少なくとも異常と思われる状
況を、その検出場所と共に、前記時系列に対応させて記
録する湯面状況記録手順をも備えるようにしてもよい。
【0035】このように前記複数場所毎に湯面状況を検
出すると共に、この検出結果を、その検出場所や前記時
系列に対応させて記録することにより、得られた検出結
果を連続鋳造機で製造される鋳片の品質管理等により効
果的に用いることが可能である。例えば、このように記
録された湯面状況を用いて、連続鋳造機の下流工程にあ
る鋳片ガス切断機により、鋳片の品質不良部分の範囲を
切断除去することも可能である。又、このように記録さ
れた湯面状況によれば、該連続鋳造機の下流工程で行わ
れる品質検査結果と対応させることにより、前記湯面状
況検出手順の弁別関数の設定値や知識ベースを実績に従
って更新することができ、湯面状況検出精度を順次向上
させていくことも可能である。
【0036】
【実施例】以下、図を用いて本発明の実施例を詳細に説
明する。
【0037】図2は、本発明が適用された湯面状況検出
装置、及び連続鋳造機とその周辺機器の構成図である。
【0038】この図2において、タンディッシュ7に蓄
えられていた溶鋼は、イマージョンノズル5の吐出口5
a から鋳型1へと供給される。該鋳型で冷却されながら
連続鋳造される鋳片2は、特にその外側は凝固シェル2
a となっており、その内側は溶鋼2b となっている。
【0039】連続鋳造中、パウダー供給装置6は、その
パウダー供給制御装置6a によりバルブ6b の開度等を
制御しながら、前記鋳型1内の湯面3上にパウダーの投
入を行う。該湯面3上に投入されたパウダーは、溶融パ
ウダー層4a や、未溶融パウダー層4b や、場合によっ
ては焼結パウダー層を形成する。
【0040】又、連続鋳造される鋳片2の鋳造速度は、
鋳造速度制御装置30により制御されている。
【0041】この図2に示される連続鋳造機において、
本発明の湯面状況検出方法は、特に、監視カメラ8と、
画像処理装置9と、湯面状況検出装置10とにより実施
されている。
【0042】前記監視カメラ8は、ビデオカメラが用い
られており、本実施例では合計2台用いられている。即
ち、この図2に図示されている監視カメラ8と、この図
2において前記イマージョンノズル5の裏側に配置され
た監視カメラ8とを用いている。
【0043】前記画像処理装置9は、2台の前記監視カ
メラ8からの画像信号を入力し、所定サンプリング時間
毎に、前記湯面3上の複数場所の輝度を検出して、時系
列方向に順に複数の輝度データを求める。
【0044】前記湯面状況検出装置10は、前記画像処
理装置9から順次出力される前記複数場所の輝度データ
を入力し、これら複数場所毎の湯面状況の検出を行う。
又、該湯面状況検出装置10は、前記湯面上の複数場所
毎に、前記湯面状況の検出結果を時系列に対応させて記
録する。該湯面状況検出装置10で得られた検出結果
は、前記鋳造速度制御装置30での鋳造速度の決定に用
いられる。又、該湯面状況検出装置10で得られた検出
結果は、前記パウダー供給制御装置6a にも出力され、
前記湯面3上へのパウダーの投入の可否及びその量の決
定に用いられる。
【0045】図3は、前記湯面状況検出装置のハードウ
ェア構成を示すブロック図である。
【0046】この図3に示されるように、前記湯面状況
検出装置10のハードウェアは、主として、CPU(ce
ntral processing unit )50と、主記憶装置52と、
ハードディスク装置54と、光ディスク装置56と、フ
ロッピディスク装置58と、入出力装置60と、キーボ
ード62と、CRT(cathode ray tube)制御装置64
a と、CRT64b と、システムバス70とにより構成
されている。
【0047】前記CPU50は、前記ハードディスク装
置54から読み込まれた前記主記憶装置52上の本実施
例に係るプログラムモジュール等を実行する。前記ハー
ドディスク装置54には、本実施例に係るプログラムモ
ジュールやデータ等が記憶されており、必要に応じて前
記主記憶装置52へと読み出されるようになっている。
【0048】前記光ディスク装置56は、前記ハードデ
ィスク装置54に記憶されているプログラムモジュール
やデータ等のバックアップに用いられている。又、前記
フロッピディスク装置58は、種々のプログラムモジュ
ールやデータの、他のコンピュータシステム等との受け
渡しに用いられている。
【0049】前記入出力装置60は、前記パウダー供給
制御装置6a や、前記画像処理装置9、前記鋳造速度制
御装置30等との入出力に用いられている。
【0050】前記キーボード62は、オペレータが当該
湯面状況検出装置10を操作する際に用いられる。又、
該キーボード62は、種々のデータ設定等の際にも用い
られる。
【0051】前記CRT制御装置64a は、ビットマッ
プ表示装置であり、数字等の文字だけでなく、グラフや
画像等も前記CRT64b に表示することができる。
【0052】なお、前記システムバス70は、前記CP
U50、前記主記憶装置52、前記ハードディスク装置
54、前記光ディスク装置56、前記フロッピディスク
装置58、前記入出力装置60、前記キーボード62及
び前記CRT制御装置64aの間でのデータ等の受け渡
しの際に用いられている。
【0053】図4は、前記湯面状況検出装置の構成を示
すブロック図である。
【0054】この図4に示されるように、湯面状況検出
装置10は、主として、輝度平均算出部10a と、輝度
分散算出部10b と、湯面状況検出部10c と、湯面状
況データベース10d と、湯面状況記録部10e と、ト
ラッキングバッファ10f とにより構成されている。
【0055】前記輝度平均算出部10a は、前記画像処
理装置9から出力される前記湯面3上の複数場所毎の、
時系列方向の複数の輝度データを用いながら、該時系列
方向の平均を順次求める。これは、所定単位時間前から
現在までの前記複数の輝度データの平均を、前記複数場
所毎に順次求めるというものである。
【0056】前記輝度分散算出部10b は、前記画像処
理装置9から出力される前記湯面3上の複数場所毎の、
時系列方向の複数の輝度データを用いて、その分散を時
系列方向に順次求める。該輝度分散算出部10b は、所
定単位時間前から現在までの前記複数の輝度データの分
散を、前記複数場所毎に求めるというものである。
【0057】前記湯面状況検出部10c は、予め設定さ
れている前記湯面状況データベース10d 内のデータに
基づいて、前記輝度平均算出部10a から時系列方向に
順次出力される前記輝度データの平均と、前記輝度分散
算出部10b から時系列方向に順次出力される前記輝度
データの分散とに従って、前記湯面3上の状況を検出す
る。該湯面状況検出部10c は、前記湯面3上の複数場
所毎の湯面状況を検出する。
【0058】前記湯面状況データベース10d には、以
下に列挙するような種々の湯面状況毎に、前記輝度デー
タの平均や前記輝度データの分散や、これらの経過時間
に従った変動の特徴等を予め記憶されている。
【0059】(1)投入された湯面上のパウダーの不足
(溶鋼の出現等) (2)炎の発生 (3)湯面上への焼結パウダーの出現 (4)湯面上でのパウダー燃焼 (5)湯面上でのパウダー赤熱
【0060】前記湯面状況記録部10e は、所定時間間
隔で前記湯面状況検出部10c から順次出力される前記
複数場所毎の湯面状況検出結果を、前記複数場所毎に前
記トラッキングバッファ10f に書き込んでいく。又、
該湯面状況記録部10e は、所定時間間隔毎に記録され
た前記トラッキングバッファ10f のこれらのデータ
を、当該湯面状況検出装置10の外部からの要求に従っ
て読み出し、該要求元へと出力する。
【0061】前記トラッキングバッファ10f は、FI
FO(first-in first-out)型のバッファとなってい
る。例えば、該トラッキングバッファ10f に記憶され
ているデータが本実施例の連続鋳造機より下流の工程で
用いられる場合には、当該連続鋳造機で鋳造された鋳片
が、この場所まで移動する間、該鋳片該当箇所の湯面状
況検出結果は該トラッキングバッファ10f に記憶され
ている。
【0062】以下、グラフを用いながら、前記湯面状況
データベース10d に記憶されている湯面状況の弁別条
件を説明する。
【0063】なお、以下で説明する図5〜図12のグラ
フにおいて、横軸は時刻t (分)であり、縦軸は輝度平
均あるいは輝度分散となっている。又、輝度データの値
の範囲は0から255までである。
【0064】図5は、湯面上が定常状態時の輝度平均の
経過時間に従った変化を示すグラフである。
【0065】又、図6は、湯面上が定常状態時の輝度分
散の経過時間に従った変化を示すグラフである。
【0066】これら図5及び図6のグラフでは、時刻0
分から16分まで、メニスカス面上では何も生じていな
い状態となっているが、これ以降で若干炎が発生してい
る状態になっている。図6の時刻19分での輝度分散の
値が非常に大きいのは、輝度分散が輝度変化を微分した
ものに類似しているためである。又、炎が発生していな
いときの輝度平均は、80〜90前後であり、輝度分散
も同様に低い値を保っている。
【0067】従って、輝度平均が80〜90前後で一定
しており、且つ、輝度分散が比較的低い値の場合は、湯
面状況は安定していると判定することができる。
【0068】なお、鋳型の振動等により若干湯面が揺れ
たとしても、パウダー表面は同じ輝度値となっているの
で、このために輝度平均や輝度分散に影響を与えること
はない。
【0069】図7は、湯面上への焼結パウダーの出現時
の輝度平均の経過時間に従った変化を示すグラフであ
る。
【0070】又、図8は、湯面上への焼結パウダーの出
現時の輝度分散の経過時間に従った変化を示すグラフで
ある。
【0071】湯面上へ焼結パウダーが出現すると、この
図7に示されるように、経過時間に従った輝度平均の変
動は比較的少ないにも拘らず、この図8に示されるよう
に、経過時間に従った輝度分散の変動は大きくなってい
る。これは、湯面上に出現しているパウダーの焼結場所
が鋳型の振動や湯沸き等による湯面の上下動に従って揺
れ、測定点の輝度値が変化するためである。
【0072】従って、輝度平均が80〜90前後で比較
的一定しているにも拘らず、輝度分散が大きく変化する
場合は、湯面上への焼結パウダーの出現と判定すること
ができる。
【0073】なお、前記図7において輝度平均が20〜
50程度変化している。これは、実験によれば、湯面を
照らす照明やカメラアングルの条件により影響を受ける
ものであり、焼結パウダーの見易さに従って影響を受け
るということが分かっている。即ち、輝度値の検知のし
易さに従った影響を受けているためである。
【0074】図9は、湯面上でのパウダー燃焼時の輝度
平均の経過時間に従った変化を示すグラフである。
【0075】又、図10は、湯面上でのパウダー燃焼時
の輝度分散の経過時間に従った変化を示すグラフであ
る。
【0076】これらグラフにおいては、特に、弱い青色
の炎を測定したときの一例である。この炎は、湯面上に
投入されたパウダー内の可燃性物質が燃焼したものであ
り、湯沸きとは直接関係のない現象である。
【0077】このようなパウダー燃焼が生じると、前記
図9に示されるように、輝度平均は100〜200前後
で変動し、前記図10に示されるように、輝度分散は0
〜2000前後で変動する。従って、このことから、湯
面上のパウダー燃焼を判定することができる。この種の
炎は、従来、2値化による検知方法では、閾値設定が難
しく検知が困難であった範疇のものである。
【0078】図11は、湯面上でのパウダー赤熱時の輝
度平均の経過時間に従った変化を示すグラフである。
【0079】又、図12は、湯面上でのパウダー赤熱時
の輝度分散の経過時間に従った変化を示すグラフであ
る。
【0080】これら図11及び図12に示される如く、
前述したグラフと比べて、輝度平均と輝度分散とが共に
明らかに全く違った傾向を示している。即ち、図11に
示されるように、輝度平均は150〜255前後の幅で
変動しているのに対して、図12に示されるように、輝
度分散は0〜4000の非常に広い幅で変動している。
又、輝度の値が255で飽和してしまったために、輝度
分散の値が0になってしまっている時刻もある(時刻1
7分)。従って、このように輝度分散が広い幅で変動し
ていることから、湯面上でのパウダー赤熱を判定するこ
とができる。
【0081】本実施例では、以上図5〜図12を用いて
説明したそれぞれの湯面状況毎に、輝度平均の閾値と輝
度分散の閾値とを前記湯面状況データベース10d に記
憶させている。又、これら記憶されている閾値と求めら
れた輝度平均及び輝度分散により、湯面状況の判定を行
っている。
【0082】本実施例では、定常状態であるか否かの判
定については、ほぼ100%の精度で弁別することがで
きている。又、前述したそれぞれの湯面状況の弁別につ
いても、その精度は約80%以上となっている。なお、
これらの精度は、輝度平均の閾値や輝度分散の閾値を調
整することによって、更に向上させることができると思
われる。
【0083】なお、このような輝度平均や輝度分散を用
いた弁別関数は、ニューラルネットワークを用いて実現
することも可能である。
【0084】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、投
入された湯面上のパウダーの不足検出の信頼性向上や、
製造される鋳片の欠陥検出等に有用な湯面上の状況検出
を行うことができるという優れた効果を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の要旨を示すフローチャート
【図2】本発明が適用された湯面状況検出装置、及び連
続鋳造機とその周辺機器の構成図
【図3】前記湯面状況検出装置のハードウェア構成を示
すブロック図
【図4】前記湯面状況検出装置の構成を示すブロック図
【図5】湯面上が定常状態時の輝度平均の経過時間に従
った変化を示すグラフ
【図6】湯面上が定常状態時の輝度分散の経過時間に従
った変化を示すグラフ
【図7】湯面上への焼結パウダー出現時の輝度平均の経
過時間に従った変化を示すグラフ
【図8】湯面上への焼結パウダー出現時の輝度分散の経
過時間に従った変化を示すグラフ
【図9】湯面上でのパウダー燃焼時の輝度平均の経過時
間に従った変化を示すグラフ
【図10】湯面上でのパウダー燃焼時の輝度分散の経過
時間に従った変化を示すグラフ
【図11】湯面上でのパウダー赤熱時の輝度平均の経過
時間に従った変化を示すグラフ
【図12】湯面上でのパウダー赤熱時の輝度分散の経過
時間に従った変化を示すグラフ
【符号の説明】
1…鋳型、 2…鋳造中の鋳片、 2a …凝固シェル、 2b …溶鋼、 3…湯面、 4a …溶融パウダー層、 4b …未溶融パウダー層、 5…イマージョンノズル、 5a …吐出口、 6…パウダー供給装置、 6a …パウダー供給制御装置、 6b …バルブ、 7…タンディッシュ、 8…監視カメラ、 9…画像処理装置、 10…湯面状況検出装置、 10a …輝度平均算出部、 10b …輝度分散算出部、 10c …湯面状況検出部、 10d …湯面状況データベース、 10e …湯面状況記録部、 10f …トラッキングバッファ、 30…鋳造速度制御装置、 50…CPU、 52…主記憶装置、 54…ハードディスク装置、 56…光ディスク装置、 58…フロッピディスク装置、 60…入出力装置、 62…キーボード、 64a …CRT制御装置、 64b …CRT。
フロントページの続き (72)発明者 関口 浩 岡山県倉敷市水島川崎通一丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (72)発明者 冨永 孝男 岡山県倉敷市水島川崎通一丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 平5−77015(JP,A) 特開 平3−210946(JP,A) 特開 平2−151355(JP,A) 特開 昭61−132253(JP,A) 特開 昭61−130823(JP,A) 特開 昭59−176630(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/18 B22D 11/10 B22D 11/10 370 B22D 11/16 104

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋳型内の溶鋼湯面上に投入したパウダーに
    より、該湯面の酸化防止や過冷却防止を図る連続鋳造機
    の湯面状況検出方法において、 光学検出手段により、前記湯面上の輝度を検出して、時
    系列方向の複数の輝度データを求める輝度測定手順と、 所定単位時間中の前記複数の輝度データの分散を、時系
    列方向に順次求める輝度分散算出手順と、 少なくとも該分散を用いた弁別関数により、前記湯面の
    状況を検出する湯面状況検出手順とを備えたことを特徴
    とする連続鋳造機の湯面状況検出方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記光学検出手段が、前記湯面上の複数場所の輝度を検
    出するものであって、 前記輝度測定手順と、前記輝度分散算出手順と、前記湯
    面状況検出手順とが、それぞれの処理を前記複数場所毎
    に行うものであって、 更に、前記湯面の状況の検出結果のうち、少なくとも異
    常と思われる状況を、その検出場所と共に、前記時系列
    に対応させて記録する湯面状況記録手順をも備えたこと
    を特徴とする連続鋳造機の湯面状況検出方法。
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