JP2959189B2 - 空気質制御システム - Google Patents

空気質制御システム

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人間の在室に基づく空
気質の状態を検知し、該検知信号により空調装置、換気
装置、空気清浄装置もしくはそれらの複合化された装置
を制御する空気質制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】昨今、オフィスビルを始め一般住宅にお
いても建物の密閉度が向上し、冷暖房の高効率化、省エ
ネルギー化が図られるようになってきた。しかしその反
面人間の在室および諸活動によって発生する二酸化炭素
や各種臭気の蓄積が促進され、室内の空気質が低下して
健康を害したり不快感が増大するという問題が顕在化し
てきた。このような状態に対処するために各種の空調装
置や換気装置もしくは空気清浄装置が導入されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来の空調装置
や換気装置もしくは空気清浄装置は専ら初期的に設定さ
れた条件に応じた運転制御を行なうのみで、人間の在室
が主要因となる空間の実際の空気質に対応した制御を行
なうことはほとんど行なわれていなかった。本発明はこ
の課題を解決し、実際の空気質の変化に対応した的確で
きめ細かな空気質制御を比較的容易に行なうことを目的
とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、人間の在室が
主要因となる空間の空気質を検知する検知手段、温
度,湿度を検知する検知手段、前記空気質検知手段か
らの出力により、在室状態と体臭で決定される空気質
態を判定する機能を有する信号処理手段前記信号
処理手段からの信号により空気質環境を変化させるため
空調装置、換気装置、空気清浄装置もしくはそれらの
複合化された装置を制御するための制御手段を具備し、
前記空気質検知手段として二酸化炭素を検知するセンサ
と、有機溶剤ガスを検知するセンサ、揮発性含窒素化合
物ガスを検知するセンサもしくは揮発性含硫黄化合物ガ
スを検知するセンサの少なくとも一種のセンサとを用い
ることを特徴とする空気質制御システムである。
【0005】
【作用】在室負荷の状態の判定、および体臭レベルの判
定を行っているので、在室負荷をより忠実に判断でき、
したがって空調装置等を効果的に制御して空気質を快適
なレベルに維持管理することができる。
【0006】
【実施例】図1は本発明の一実施例を示すブロック図で
ある。図1において、1は空気質を検知する空気質検知
手段、2は温度、湿度を検知する温度、湿度検知手段、
3は空気質検知手段の出力に対して空気質の判定を行な
い、かつ温度、湿度の補正を行なう機能を有する信号処
理手段、4は処理された信号により空調装置、換気装
置、空気清浄装置もしくはそれらの複合化された装置を
制御する制御手段、5は空調装置、換気装置、空気清浄
装置もしくはそれらの複合化された装置である。
【0007】本実施例では、空気質の変化(低下)は主
として人間の在室に起因するとし、空気質検知手段とし
て人間の呼気中の二酸化炭素を検知するNASICON
系固体電解質ガスセンサ(以後、単に二酸化炭素センサ
という)、および人間の体臭の構成成分である各種アル
コール等有機溶剤ガスを検知するSnO2系半導体ガス
センサ(以後、単にアルコールセンサという)を用い
た。
【0008】信号処理手段は、空気質検知手段からの出
力により在室に起因する空気質の変化の度合を判定する
機能を有している。センサ出力があらかじめ空気質の低
下度もしくは不快感のレベル(不快度)との対応関係か
ら導かれた設定値に達すると、空調装置等の運転信号を
制御手段に送るようにする。空気質の低下度もしくは不
快度は申告試験等の方法により決定でき、センサ出力と
の対応関係は比較的容易に求めることができる。したが
って、空気質の低下度もしくは不快度によりセンサ出力
レベルを細分化し、空気質の変化の度合に対応したきめ
細かな制御を行なうことも可能である。
【0009】温度、湿度検知手段としてはセラミックサ
ーミスタ、および湿度センサを用いた。空気質の不快感
は温度と湿度によって影響を受け易く、さらにガスセン
サの特性も温度、湿度によってある程度変動することが
避けられない。したがって、信号処理手段は温度、湿度
の補正を行なう機能も有している。
【0010】次に実施例のシステムの動作を実験結果に
基づいて説明する。本実施例では、在室状態を検知する
ガスセンサとして二酸化炭素センサ、およびアルコール
センサを用いたが、体臭を検知するセンサとしてアルコ
ールセンサに代えてアンモニア等の揮発性含窒素化合物
ガスを検知するセンサ、もしくは硫化水素等の揮発性含
硫黄化合物ガスを検知するセンサを用いても同様の効果
を得ることができる。測定は換気および空気清浄機能付
きの空調装置(以下、単に空調装置という)を設置した
約1.5×2×2.2mの部屋を設けて行なった。二種
類のセンサは壁面上床から約2mの高さの位置に隣接し
て取り付けた。なお、実験内容によっては測定毎の測定
室の空気質がほぼ一定になるように測定直前に所定時間
空調装置を運転し、そのときの各センサの出力が測定雰
囲気の基準レベルを表わすように実験条件を設定した。
したがって本実験においては二酸化炭素センサの初期出
力もしくはアルコールセンサの初期出力が測定室内の空
気質の基準レベルすなわちバックグランドレベルを示す
こととなる。
【0011】図2は、測定室に人間が1人在室した場合
の各センサの出力の変化を示す。測定室の温度は約20
℃、湿度は約60%RHに設定した。入室してからしば
らく経過した後に二酸化炭素センサの出力が変化し始
め、時間の経過とともに出力が増加する傾向を示した。
これよりやや遅れてアルコールセンサの出力も徐々に増
加する傾向を示した。
【0012】図3は、在室者が軽い運動を行なった場
合、および1人在室しているところに後からもう1人入
室した場合の各センサの出力の変化を示している。温
度、湿度条件は前記と同じに設定した。軽い運動を行な
った場合(一点鎖線で示す)には、二酸化炭素センサの
出力変化は小さいが、アルコールセンサの出力は比較的
大きく変化している。すなわち活動量の増加にともなっ
て人体からのアルコール系ガスの発散量が多くなり、体
臭に起因する空気質の変化が大きくなることを示すもの
である。一方人数の増加(実線で示す)に対しては二酸
化炭素センサの出力変化が大きい反面、アルコールセン
サの出力変化は小さい。破線はいずれも1人が在室を続
けた場合の出力変化を示す。
【0013】これらの実験の結果、二酸化炭素センサの
出力は体臭が検知できるレベルに存在しているかどうか
にかかわらず空気質の変化の度合を示し、一方アルコー
ルセンサの出力は二酸化炭素濃度の大小にかかわらず体
臭に起因する空気質すなわちバックグランドの臭気レベ
ルの変化の度合を示すことが明らかである。これらの特
性を利用することにより制御対象空間の空気質の変化が
人数の変化によるものかあるいは臭気のレベルの変化に
よるものかを比較的容易に判定することが可能であり、
空気質の変化原因に対応した空気質制御を行なうことが
可能となる。
【0014】図4は測定室の温度と湿度が20℃−40
%RHの場合(実線)、30℃−75%RHの場合(破
線)、および20℃−40%RHを基準として30℃−
75%RHの時に温度、湿度の補正を行なった場合(一
点鎖線)の各々の条件下において人間が1人在室したと
きの二酸化炭素センサとアルコールセンサの出力特性を
示す。温度、湿度条件が異なるとガスセンサの応答特性
がかなり変化し、空気質の判定に影響がおよぶことが明
らかであるが、温度、湿度補正を行なうことによってこ
の影響をほぼなくすことができ、空気質制御システムの
信頼性を向上させることができる。またセンサ特性だけ
でなく、感覚としての空気質の不快度も温度、湿度の影
響を受ける。この場合不快度と温度、湿度の相関はあら
かじめ求めることができるため、マイコンを用いて信号
処理することにより比較的容易に補正を行なうことがで
きる。
【0015】これらの個別の実験結果を基に、前記各セ
ンサを用いて簡単な空気質制御システムを構成した。測
定室の温度は20±4℃、湿度は55±6%RHであっ
たため、20℃ー55%RHを基準状態とする温度、湿
度補正処理を行なった。空調装置を運転する信号を出す
タイミングと運転モードは次のように設定した。在室状
態に関しては二酸化炭素センサの出力が二酸化炭素濃度
1000ppm相当レベルになったときに換気モードの
運転信号を出し一定時間換気モード運転を行なうことと
した。体臭に関しては、アルコールセンサの出力が基準
レベルの1.2倍になったときに空気清浄モードの運転
信号を出し、センサの出力が基準レベルに復帰した後も
一定時間運転を継続することとした。在室と体臭を同時
にあるいは相前後して検知した場合には、出力がそれぞ
れの設定値に達した時点で前記各モードの運転信号をそ
れぞれ出すようにした。なお空気質判定出力設定レベル
は基準状態(20℃ー55%RH)における空気質の低
下度および不快度と各センサ出力特性の関係から決定し
た。
【0016】図5は測定室に人間が1人入り、その後3
人増えて計4人となり、しばらくして2人減って計2人
になったときの空気質の変化に対応して空調装置を自動
運転したときの各センサの出力パターンである。二酸化
炭素センサが在室状態を、アルコールセンサが体臭レベ
ルをそれぞれ検知し、センサ出力がそれぞれの検知設定
レベルに達したときに空調装置が特定モードの運転を行
なって測定室の空気質が初期レベルに戻る様子が現われ
ている。図に基づいてシステムの動作を詳細に説明す
る。まず時刻t0で測定室に人間が1人入るとやや遅れ
て在室を検知した二酸化炭素センサの出力が増加し始
め、時刻t1で在室検知設定レベル(VA)に達すると同
時に空調装置の換気モード運転信号を出す。一方時刻t
1ではアルコールセンサの出力は体臭検知設定レベルに
まだ達していない。そして所定時間(ΔtA)空調装置
が作動して空気質が初期の状態に復帰するにしたがって
二酸化炭素センサとアルコールセンサの出力はともに低
下する。時刻t2で空調装置の換気モード運転が終了す
る直前にさらに3人が入室したため、二酸化炭素センサ
の出力は在室状態に対応して急速に増加し始める。この
とき二酸化炭素センサの出力が在室検知設定レベルに達
する以前の時刻t3でアルコールセンサの出力が体臭検
知設定レベル(VB)に達し、この情報に基づいて空気
清浄モード運転信号を出し、空調装置が空気清浄モード
で作動する。やや遅れて二酸化炭素センサの出力が時刻
4で在室検知設定レベルに達し、この情報に基づいて
換気モード運転信号が出され、空調装置が換気モードで
作動する。そして時刻t5で換気モード運転が終了した
後も引続き二酸化炭素センサが在室を検知し続け、時刻
6で再び在室検知設定レベルに達すると、換気モード
運転信号が出され、換気モードでの運転を開始する。一
方この間も空気清浄モード運転は継続しており時刻t 7
で終了する。時刻t8で換気モード運転が終了する前に
在室者が2人に減ったため、二酸化炭素濃度の増加速度
が遅くなり、時刻t10で換気モード運転信号が出され
る。一方時刻t9でアルコールセンサの出力が体臭検知
設定レベルに達しているためにその時点で空気清浄モー
ドでの運転が始まっている。
【0017】このように、本実施例になる空気質制御シ
ステムは在室に基づく空気質の変化を的確にとらえ、そ
の情報に基づいて空調装置の運転を制御し、空気質を不
快感を与えないレベルに維持する機能を有することがわ
かった。
【0018】なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではない。実施例では空気質検知手段としてNASI
CON系固体電解質二酸化炭素センサとSnO2系半導
体アルコールセンサを用いた場合を説明したが、これに
限定するものではなく、材料や原理の異なる各種のガス
センサを用いることができる。体臭の原因となる複数の
ガス種を検知する複数のセンサを用いることも、よりき
め細かな制御を行なう上で有効である。また、複数のセ
ンサを単に組み合わせるのでなく、1チップにハイブリ
ッド化された複合ガスセンサを用いるとシステムのコン
パクト化を図ることができる。また、複数ガスに応答す
る1個のガスセンサを用いて空気質を変化させる複数の
原因を識別することもできる。この場合には、例えば空
気質の変化原因を特定する各ガス種に対する同一センサ
の異なる応答特性をあらかじめマイコンに記憶させてお
き、センサの実際の応答特性と比較することで比較的容
易に空気質の変化の原因を特定することが可能となる。
【0019】さらに実施例では空気質が一定の不快レベ
ルを越えないように空調装置の間欠運転制御を行なった
場合を説明したが、空気質を常に一定レベルに維持する
ように、空調装置等の制御をさらにきめ細かく行なうこ
ともできる。すなわち空気質検知手段の出力レベルを細
分化し、空気質レベルの変化に敏感に対応する制御信号
を出すことにより空調装置等の運転能力を細かく変化さ
せ、その結果空気質レベルをほぼ一定の範囲内に維持す
ることが可能となる。ファジイ制御などの手法を用いる
ことも有効である。また換気モード、空気清浄モード等
を細かく使い分けたりあるいは組み合わせるなどして最
適な空気質制御を行なうこともできる。また雰囲気の温
度、湿度条件に時間とともに連続あるいは不連続な変化
をもたせるような運転制御を行なう場合などにも、空気
質の不快度およびセンサ特性の温度、湿度特性を考慮し
た補正を行なうことにより空気質の最適な制御が可能と
なる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明になる空気
質制御システムを用いることにより、人間の在室に起因
する空気質の状態変化に判定し、それに基づいて空調装
置等を的確に制御して空気質を快適なレベルに維持管理
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の空気質制御システムのブロ
ック構成図
【図2】在室を検知するセンサの出力パターン図
【図3】在室負荷の変化に対応するセンサの出力パター
ン図
【図4】在室を検知するセンサの出力に対する温度、湿
度の影響を示す図
【図5】図1に示す空気質制御システムの動作説明図
【符号の説明】
1 空気質検知手段 2 温度、湿度検知手段 3 信号処理手段 4 制御手段 5 空調装置等
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−70930(JP,A) 特開 平1−200140(JP,A) 特開 平2−118357(JP,A) 特開 昭59−204767(JP,A) 特開 昭61−159046(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F24F 11/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人間の在室が主要因となる空間の空気質
    を検知する検知手段と、温度,湿度を検知する検知手段
    と、前記空気質検知手段からの出力により、在室状態と
    体臭で決定される空気質の状態を判定する機能を有する
    信号処理手段と、前記信号処理手段からの信号により空
    気質環境を変化させるための空調装置、換気装置、空気
    清浄装置もしくはそれらの複合化された装置を制御する
    ための制御手段を具備し、前記空気質検知手段として二
    酸化炭素を検知するセンサと、有機溶剤ガスを検知する
    センサ、揮発性含窒素化合物ガスを検知するセンサもし
    くは揮発性含硫黄化合物ガスを検知するセンサの少なく
    とも一種のセンサとを用いることを特徴とする空気質制
    御システム。
  2. 【請求項2】 信号処理手段は、二酸化炭素を検知する
    センサからの出力信号により在室負荷の状態を判定し、
    かつ有機溶剤ガスを検知するセンサ,揮発性含窒素化合
    物ガスを検知するセンサもしくは揮発性含硫黄化合物ガ
    スを検知するセンサの少なくとも一種のセンサからの出
    力信号により体臭のレベルを判定する機能を有すること
    を特徴とする請求項1記載の空気質制御システム。
  3. 【請求項3】 信号処理手段は、空気質検知手段からの
    出力に対して温度、湿度の補正を行なう機能を有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の空気質制御システム。
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