JP2957533B2 - Ba−K−Bi−O系またはBa−Rb−Bi−O系超電導接合の作製方法 - Google Patents

Ba−K−Bi−O系またはBa−Rb−Bi−O系超電導接合の作製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば超高周波検
出や超微小磁界検出などに利用される、超電導接合のた
めのBa−K−Bi−O系またはBa−Rb−Bi−O
系超電導接合の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2は例えばJpn.J.Appl.P
hys.Vol.34(1995)pp.L1348−
L1351に記載された従来のBa−K−Bi−O系超
電導接合の製造を示す模式図であり、1はMgOバイク
リスタル基板、2はMgOバイクリスタル基板の粒界接
合部、3はBa−K−Bi−O系超電導薄膜、4は2の
直上に形成された、Ba−K−Bi−O系超電導薄膜の
粒界接合部である。
【0003】次に動作について説明する。MgOバイク
リスタル基板1の上にスパッタリング法、レーザアブレ
ーション法などによりBa−K−Bi−O系超電導薄膜
3を約200nmの厚さに堆積する。成膜されたBa−
K−Bi−O系超電導薄膜3は、基板の面方位に従って
結晶方位をそろえた形で形成される性質がある。このた
め、バイクリスタル基板の接合部の両側では異なる向き
に結晶方位をそろえた薄膜が形成される。従ってこのB
a−K−Bi−O系超電導薄膜3はバイクリスタル基板
の接合部2の直上に重なるように粒界接合部4を持つ。
このように作製されたBa−K−Bi−O系超電導薄膜
3をエッチングなどの手法で回路形状にパターニング
し、粒界接合部4が数μm〜数百μmの幅を持つように
整形し、超電導接合として機能するようにする。
【0004】このように構成された超電導接合では、超
電導薄膜の粒界接合部が超電導弱結合として働き、準粒
子電流の障壁となって非線型な電流−電圧特性をもたら
したり、超電導電流の障壁となってジョセフソン効果を
生じさせたりする。このような効果はマイクロ波のミキ
サや超電導量子干渉素子として利用される。
【0005】しかし、このような従来の超電導接合で
は、接合の超電導特性が接合作製時に決定されてしまう
という問題点があった。すなわち、超電導接合4の品質
は超電導薄膜3を作製した時点で決定されてしまうの
で、例えば接合の臨界電流密度などの超電導特性を制御
することによって所定の幅の接合の臨界電流値を所望の
値にするためには、超電導薄膜3の品質を精密にコント
ロールする必要があり、これは極めて困難であった。ま
た、接合作製後に接合の臨界電流密度を調整する手段が
ないため、接合の臨界電流値を所期の値にするために、
あらかじめ接合の幅を大きめにパターニングして臨界電
流値を十分大きくしておき、臨界電流値を一度測定した
後、再度パターニングを行って接合幅を縮めて臨界電流
値を小さくする方向に調節するといった作業を行ってい
た。これは接合幅を変えるだけのために面倒な測定や2
度目のパターニングを行う必要があり、手間がかかるば
かりか、これらのプロセスによって思わぬダメージを接
合に与える危険性もあった。さらに、接合の臨界電流値
が小さくなりすぎた場合、もはやこれを大きくする方法
がないので、その素子は使用不可能になっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】これまでの超電導接合
は以上の様に構成されていたため、接合作製後に超電導
接合の臨界電流密度等の超電導特性を変化させる方法が
ないこと、とりわけ超電導特性を向上する方法のないこ
とが欠点であった。例えば臨界電流密度を大きくするこ
とはできなかった。
【0007】この発明の目的は、特にBa−K−Bi−
O系またはBa−Rb−Bi−O系超電導薄膜を用いた
超電導接合の作製方法において、接合の作製後に臨界電
流密度を増大させるなど、接合特性を向上させる方法を
提供し、接合作製後に接合の特性を所望の値に調整する
ことを可能にする作製方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を
重ねた結果、上記のような従来の課題を解決することが
できた。すなわち本発明は、基板上に作製したBa−K
−Bi−O系超電導体の人工粒界接合において、接合を
作製した後に、接合部分にイオンビーム照射を行うこと
を特徴とする、Ba−K−Bi−O系超電導接合の作製
方法を提供するものである。また本発明は、基板上に作
製したBa−K−Bi−O系超電導体の人工粒界接合に
おいて、接合を作製した後に、接合部分に中性粒子ビー
ム照射を行うことを特徴とする、Ba−K−Bi−O系
超電導接合の作製方法を提供するものである。さらに本
発明は、基板上に作製したBa−Rb−Bi−O系超電
導体の人工粒界接合において、接合を作製した後に、接
合部分にイオンビーム照射を行うことを特徴とする、B
a−Rb−Bi−O系超電導接合の作製方法を提供する
ものである。さらにまた本発明は、基板上に作製したB
a−Rb−Bi−O系超電導体の人工粒界接合におい
て、接合を作製した後に、接合部分に中性粒子ビーム照
射を行うことを特徴とする、Ba−Rb−Bi−O系超
電導接合の作製方法を提供するものである。
【0009】本発明の超電導接合の作製方法では、Ba
−K−Bi−O系超電導体またはBa−Rb−Bi−O
系超電導体等を用いてバイクリスタル基板上に人工粒界
接合を作製した後、接合部分にイオンビームまたは中性
粒子ビームを照射する。この照射によって、その微視的
な機序は明らかでないが、被照射部分の接合内で変化が
生じ、臨界電流密度の増大、規格化接合抵抗の減少とい
った、接合品質の改善がなされる。この結果、これまで
実現できなかった、接合作製後に接合特性を向上させる
ことが可能になった。これにより、従来不可能であっ
た、接合の臨界電流値の増大が可能になり、接合の作製
歩留まりが大幅に向上した。
【0010】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、本発明の実
施の形態を図について説明する。図1は本発明の実施の
形態によるBa−K−Bi−O系超電導接合の作製方法
を示す模式図であり、図において、1〜4の各番号は上
記従来例と同一または相当する部分であり、5はArイ
オンビーム照射装置、6は5から引き出されたArイオ
ンビームである。
【0011】次に作製方法について説明する。MgOバ
イクリスタル基板上にRFスパッタリング法を用いてB
a−K−Bi−O系超電導薄膜を厚さ200nmに成膜
する。この薄膜にフォトレジストを塗布し、マスクパタ
ーンを光学転写した後、現像によって余分なレジストを
除去する。これをArイオンを用いたイオンビームエッ
チング法でエッチングした後レジストを除去し、接合部
分を幅7μmのブリッジ状に成形する。これにより幅7
μmの粒界接合を有する超電導素子を作製する。
【0012】このようにして作製した素子を液体ヘリウ
ムで冷却し4端子法で接合の電流−電圧特性を測定した
ところ、接合の臨界電流密度は1470A/cm2、規
格化接合抵抗は2.3×10-6Ω・cm2であった。
【0013】次に、この素子を取り出し常温に戻し、こ
れにレジスト等を塗布することなく、図1のようなAr
イオンビームエッチング装置に入れてイオンビームを照
射した。図1のイオンビーム照射装置5から引き出され
た加速エネルギー400eVのArイオンビーム6を、
基板に対し45°の入射角で30秒間照射した。基板は
水冷し、毎分20回転の速度で回転させた。
【0014】この後、再び素子を液体ヘリウムで冷却し
4端子法で接合の電流−電圧特性を測定したところ、接
合の臨界電流密度は3200A/cm2、規格化接合抵
抗は1.1×10-6Ω・cm2となっていた。すなわ
ち、臨界電流密度は2倍以上に、規格化接合抵抗は半分
以下に、それぞれ向上していた。
【0015】さらに同様のイオンビーム照射と接合の電
流−電圧特性の測定を交互に繰り返したところ、イオン
ビーム照射時間の総計2分30秒で接合の臨界電流密度
は15000A/cm2、規格化接合抵抗は2.9×1
-7Ω・cm2となった。すなわち、臨界電流密度は1
0倍以上に、規格化接合抵抗は約10分の1に、それぞ
れ向上した。
【0016】また、イオンビーム照射時間が2分30秒
を越えても、接合特性はほとんど変化しなくなり、接合
特性が劣化することはなかった。ただし、イオンビーム
のエッチング効果によって薄膜の厚さが減少するのに伴
い、臨界電流値の減少と接合抵抗値の増大がみられた。
【0017】以上のように、これまで不可能であった、
接合作製後の接合の臨界電流密度の増加が、初めて可能
になった。
【0018】実施の形態2.実施の形態1.では照射す
るビームとして、Arイオンビームを使用したが、この
ビームにホットフィラメントから電子を供給して電荷を
中和した中性粒子ビームを使用した場合、接合の臨界電
流密度の向上は約5倍に、規格化接合抵抗の減少は約5
分の1になった。したがって、中性粒子ビーム照射によ
っても接合特性の向上が可能であることが示された。
【0019】実施の形態3.実施の形態1.では接合の
材料としてBa−K−Bi−O系超電導体を使用した超
電導接合を対象としたが、本発明はBa−Rb−Bi−
O系超電導体を使用した超電導接合に対しても同様の効
果が得られる。
【0020】実施の形態4.実施の形態2.では接合の
材料としてBa−K−Bi−O系超電導体を使用した超
電導接合を対象としたが、本発明はBa−Rb−Bi−
O系超電導体を使用した超電導接合に対しても同様の効
果が得られる。
【0021】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、基板上に
作製したBa−K−Bi−O系超電導体の人工粒界接合
において、接合を作製した後に、接合部分にイオンビー
ム照射を行うので、接合の作製後に接合特性を向上させ
ることが可能になり、再パターニングなどの複雑な行程
を経ずに接合の特性値を所望の値に調整することができ
る。
【0022】請求項2に係る発明によれば、基板上に作
製したBa−K−Bi−O系超電導体の人工粒界接合に
おいて、接合を作製した後に、接合部分に中性粒子ビー
ム照射を行うので、前記と同様に接合の作製後に接合特
性を向上させることが可能になり、再パターニングなど
の複雑な行程を経ずに接合の特性値を所望の値に調整す
ることができる。
【0023】請求項3に係る発明によれば、基板上に作
製したBa−Rb−Bi−O系超電導体の人工粒界接合
においても、接合を作製した後に、接合部分にイオンビ
ーム照射を行うことにより、接合の作製後に接合特性を
向上させることが可能になり、再パターニングなどの複
雑な行程を経ずに接合の特性値を所望の値に調整するこ
とができる。
【0024】請求項4に係る発明によれば、基板上に作
製したBa−Rb−Bi−O系超電導体の人工粒界接合
において、接合を作製した後に、接合部分に中性粒子ビ
ーム照射を行うので、接合の作製後に接合特性を向上さ
せることが可能になり、再パターニングなどの複雑な行
程を経ずに接合の特性値を所望の値に調整することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1.〜4.による超電導薄
膜の作製方法を示す模式図である。
【図2】従来の超電導薄膜の作製方法を説明するための
図である。
【符号の説明】
1 バイクリスタル基板、2 バイクリスタル基板の粒
界接合部、3 超電導薄膜、4 超電導薄膜の粒界接合
部、5 Arイオンビーム照射装置、6 イオンビーム
または中性粒子ビーム。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 幸久 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三菱電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−263768(JP,A) 特開 平6−177443(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 39/24 H01L 39/00 H01L 39/22

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に作製したBa−K−Bi−O系
    超電導体の人工粒界接合において、接合を作製した後
    に、接合部分にイオンビーム照射を行うことを特徴とす
    る、Ba−K−Bi−O系超電導接合の作製方法。
  2. 【請求項2】 基板上に作製したBa−K−Bi−O系
    超電導体の人工粒界接合において、接合を作製した後
    に、接合部分に中性粒子ビーム照射を行うことを特徴と
    する、Ba−K−Bi−O系超電導接合の作製方法。
  3. 【請求項3】 基板上に作製したBa−Rb−Bi−O
    系超電導体の人工粒界接合において、接合を作製した後
    に、接合部分にイオンビーム照射を行うことを特徴とす
    る、Ba−Rb−Bi−O系超電導接合の作製方法。
  4. 【請求項4】 基板上に作製したBa−Rb−Bi−O
    系超電導体の人工粒界接合において、接合を作製した後
    に、接合部分に中性粒子ビーム照射を行うことを特徴と
    する、Ba−Rb−Bi−O系超電導接合の作製方法。
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