JP2956430B2 - 大入熱溶接時の熱影響部耐割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板 - Google Patents

大入熱溶接時の熱影響部耐割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板

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JP2956430B2 JP20287793A JP20287793A JP2956430B2 JP 2956430 B2 JP2956430 B2 JP 2956430B2 JP 20287793 A JP20287793 A JP 20287793A JP 20287793 A JP20287793 A JP 20287793A JP 2956430 B2 JP2956430 B2 JP 2956430B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、大入熱溶接、例え
ば、溶接入熱が200KJ/cmを超えるサブマージア
ーク溶接法によって、角溶接され組み立てられるボック
ス形状の建築柱用の、熱影響部耐割れ性に優れた建築ボ
ックス柱用鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、建築物の高層化ならびに大スパン
化が進み、鉄骨用高張力鋼板の厚肉化に伴い、鋼材の溶
接施工量が増加した。一方、溶接作業者の不足、工期短
縮という社会的背景および要請から、高層建築用等のボ
ックス柱の角継手部の溶接法は、従来の、炭酸ガス溶接
で下盛りした後にサブマ−ジア−ク溶接(以下、SAW
という)で多層溶接する方法から、鉄粉入りボンド型フ
ラックスを使用した多電極のSAWで1層溶接する方法
が主流となってきた。後者の方法においては、鋼板の厚
肉化とともに溶接入熱の増大が要求され、例えば、板厚
60mmの鋼板を溶接する入熱は、500 KJ/cm にも達する。
【0003】このような大入熱溶接が多用されるととも
に、溶接熱影響部(以下、HAZという)内の鋼板の板
厚中央に、超音波探傷により検出される欠陥(以下、超
音波探傷欠陥という)エコ−が認められるようになり、
建築物の安全性を確保する上で問題となっている。
【0004】上述した状況下において、大入熱溶接熱影
響部の超音波探傷欠陥の発生を防止する手段として、例
えば特開昭62-56554号公報には、顕微鏡観察による鋼板
中のMnS系介在物の長さの総和を 0.1mm/mm2 以下に
規定した、高張力鋼板に関する技術(以下、先行技術1
という)が開示されている。特開平4-272156号公報に
は、鋼板中の非偏析部の硬さに対する偏析部の硬さが、
ある一定値以上の場合に、顕微鏡観察による鋼板のA系
介在物の清浄度を0.008%以下に規定する、高張力鋼板に
関する技術(以下、先行技術2という)が開示されてい
る。そして、特開平4-272133号報には、鋼板中の非偏析
部の硬さに対する偏析部の硬さを、ある一定値以下とな
さしめ、かつ、顕微鏡観察による鋼板のA系介在物の清
浄度を0.008%以下に規定する、高張力鋼板に関する技術
(以下、先行技術3という)が開示されている。
【0005】即ち、先行技術1では、超音波探傷欠陥エ
コ−の発生原因をMnS系介在物と地鉄との間のボイド
にあるとし、鋼にカルシウム(Ca)および/または希土
類金属(REM)を添加することによって、MnS系介
在物量の低減およびMnS系介在物の形態を制御してい
る。先行技術2では、欠陥エコ−の発生原因は、A系介
在物と地鉄との間のボイドが起点となった割れであると
し、先行文献1と同様、鋼にカルシウム(Ca)および/
または希土類金属(REM)を添加している。先行技術
3では、欠陥エコ−の発生原因を、先行技術2と同じで
あるとし、カルシウム(Ca)添加の他に、A系介在物が
多く存在する偏析部の硬さを低減するために、連続鋳造
スラブに1280℃以上の温度で8 時間以上の拡散均熱処理
を行なっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鋼への
カルシウム(Ca)および/または希土類金属(REM)
の添加は、高温におけるカルシウムおよび希土類金属の
蒸気圧が高いので、添加方法に種々の工夫が必要となる
結果、鋼材の製造コストを上昇させ、また、スラブの成
分偏析を緩和する拡散均熱処理を行なうために、加熱コ
スト等がかさむ。従って、大入熱溶接部の耐割れ性に優
れた高張力鋼板を先行技術で製造すると鋼板の製造コス
トが著しく上がるので、もっと安価で有効な策が望まれ
ている。
【0007】本発明者等は、大入熱溶接における熱影響
部からの超音波欠陥エコ−発生現象の本質と原因がいか
なるものであるかを解明すべく研究を行なった結果、次
の重要な知見を得た。超音波探傷欠陥エコ−は、水素割
れを検出したものであり、水素割れ発生の典型的メカニ
ズムは、大入熱SAWにより拡散性水素が、鋼板の中心
偏析帯に散在するMnS系介在物と地鉄との界面に集積
し、拘束応力下でその界面が剥離し、その界面から周囲
の硬化組織に剥離が伝播し、割れに至ったものである。
割れは、大入熱SAWを行なったときに、2相域温度範
囲内(Ac1 〜Ac3 で表す)に加熱された鋼板の中心偏析
部に発生する。図8 は、角溶接部の熱影響部に発生した
水素割れの説明図である。図9 は、図8 の水素割れ、お
よび、その周辺組織の2段エッチング処理された金属組
織の走査電子顕微鏡写真を示し、図10は、図9 の一部の
拡大写真である。大入熱SAWを行った際の2相域HA
Z内に位置する中心偏析部には、バンド状のMartensite
Austenite Constituent(以下、M−Aという)が生成
しており、割れはそのM−Aの内部を貫通している。図
10の矢印で示した部分がM−Aである。
【0008】上記知見に基づき、本発明者等も、先行技
術2,3 と同様の考え方で、鋼中硫黄含有量を極端に低減
した極低S化およびCa添加により、拡散性水素が集積し
易い場所であるMnS系介在物と地鉄の界面を減少さ
せ、割れの発生防止を試みた。しかし、A系介在物であ
るMnS系介在物がなくなると、今度は鋼板の中心偏析
帯の硬化組織自身に水素が集積し、割れが発生すること
が明らかとなった。後述する比較鋼板のNo.C5 はその例
である。そこで、発想を転換し、MnS系介在物と地鉄
との界面に水素が集積し、界面が剥離しても、この剥離
が、その周囲の硬化組織に割れとなって伝播することを
阻止する研究を行った。即ち、多数のボックス柱角継手
の割れ発生部および割れの発生しない健全部を詳細に観
察した結果、次の重要な知見が得られた。即ち、割れ
は、図9 に示すように、鋼板の中心偏析帯が、2 相域温
度に達したHAZ の位置に存在し、この中心偏析帯でM−
Aが生成した場合に発生しており、2相域に加熱された
中心偏析帯にM−Aが生成しない場合には、割れ(水素
割れ)は発生しにくい。従って、たとえ鋼板が、大入熱
SAWを行った際の2相域HAZに相当する熱履歴を受
けたとしても、中心偏析帯にM−Aが生成しないように
材料設計をすれば、割れ(水素割れ)の発生を抑制する
ことができる。
【0009】上述した割れの発生を抑制するためには、
偏析元素であるMn、P を低減するという対策もあるが、
連続鋳造材の鋼板の中心偏析度(中心偏析帯内の成分元
素の濃度÷溶鋼中の成分元素の濃度) は、Mnが2以上、
P が10以上と大きいので、大入熱SAW によって、鋼板の
中心偏析部が2相域温度への到達に相当する熱履歴を受
けても、その中心偏析帯にM−Aが生成しないように材
料設計をする必要がある。表1に示すMn含有量のみを変
化させたNo. M1〜M5の化学成分組成を有する鋼板につい
て、引張試験およびM−A面積率の測定を行なった。
【0010】
【表1】
【0011】図3は、鋼板のMn含有量と、引張強さおよ
びM−A面積率との関係を示す。同図から、Mn含有量を
0.5 wt.%程度まで低減しなければM−Aの生成を抑える
ことができない。しかしながら、Mn含有量が0.5 wt.%未
満では、柱材としての母材強度を、引張強さ(TS)≧490M
Paを満足させることが困難となる。表1に示すP 含有量
のみを変化させたNo. L1〜L4の化学成分組成を有する鋼
板について、引張試験およびM−A面積率の測定を行な
った。図4は、鋼板のP 含有量と、引張強さおよびM−
A面積率との関係を示す。同図から、P 含有量を、[P]
<0.005 wt.%とすれば、大入熱SAWの2相域HAZに
相当する熱履歴を受けても鋼板の中心偏析帯にM−Aが
生成しないようになるが、そこまで[P] を低減するする
と著しいコスト上昇を招く。一方、先行技術3 のように
高温長時間の拡散均熱処理を施せば、Mn、P 偏析の拡散
を図る効果はあるが、拡散均熱処理を実施すると、大量
生産は不可能となるし、鋼材の製造コストを著しく上昇
させる。
【0012】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、大入熱SAWによりボックス柱の組み立てを
行った場合、その熱影響部に位置する中心偏析帯にM-A
が生成しにくく、従って、割れが発生しにくい、安価な
建築ボックス柱用高張力鋼板およびその製造方法を提供
することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成しう
る高張力鋼板とその製造方法について、本発明者等は鋭
意研究を重ねた結果、鋼中のシリコン含有量を特定の値
以下に低減することによって、鋼板の中心偏析帯にM−
Aが生成しにくくし、水素割れを抑制することが可能で
あるとの新しい知見を得、この知見に基づき上記目的を
達成するに至ったものである。
【0014】即ち、この発明の第1実施態様は、炭素
(C):0.06〜 0.18 wt.%、シリコン(Si):0.05 w
t.% 以下、マンガン(Mn):0.80〜 1.60wt.% 、燐
(P):0.015 wt.%以下、硫黄(S):0.003wt.% 以
下、アルミニウム(Al):0.005 〜 0.080wt.%、およ
び、残り:鉄(Fe)および不可避不純物からなること
を特徴とする、大入熱溶接時の熱影響部耐割れ性に優れ
た建築ボックス柱用鋼板である。
【0015】この発明の第2実施態様は、本発明の第1
実施態様の鋼板の化学成分組成に加え、銅(Cu):0.
10〜0.40wt.%およびニッケル(Ni):0.10〜0.40wt.%
以下を含有するものである。
【0016】この発明の第3実施態様は、本発明の第1
実施態様の鋼板の化学成分組成に加え、バナジウム
(V):0.010〜0.050wt.% 、チタン(Ti):0.005
〜 0.050wt.%およびニオブ(Nb):0.005 〜 0.050w
t.%からなる群から選んだ少なくとも1つの成分を含有
するものである。
【0017】この発明の第4実施態様は、本発明の第2
実施態様の鋼板の化学成分組成に加え、バナジウム
(V):0.010〜 0.050wt.%、チタン(Ti):0.005
〜 0.050wt.%およびニオブ(Nb):0.005 〜0.050wt.
% からなる群から選んだ少なくとも1つの成分を含有す
るものである。
【0018】
【作用】以下に、この発明の鋼板の化学成分組成を上述
した範囲内に限定した理由について述べる。
【0019】(1) 炭素(C):炭素は、建築柱用鋼板とし
て、引張強さで490 MPa 以上の強度を確保するために、
0.06wt.%以上含有されていることが必要である。しかし
ながら、その含有量が0.18wt.%を超えると小入熱による
仮付け溶接時に予熱が必要となり工程が増加する。従っ
て、炭素含有量は、0.06〜0.18wt.%の範囲内に限定すべ
きである。
【0020】(2) シリコン(Si):シリコンは、この発明
では不純物として作用し、後述するように、0.05wt.%を
超えると、鋼板の中心偏析帯にM−Aが生成し、割れを
抑制することが困難となる。従って、シリコン含有量
は、0.05wt.%以下に限定すべきである。
【0021】(3) マンガン(Mn):マンガンは、建築柱用
鋼材として、引張強さで490 MPa 以上の強度を確保する
ために、0.8 wt.%以上含有されていることが必要であ
る。一方、マンガンは偏析し易い元素であるため、その
含有量が1.60wt.%を超えると、鋼板の中心偏析部では3.
2 wt.%以上の濃度となる。その結果、大入熱溶接により
2 相域の温度範囲に加熱されると、M−Aの生成を抑制
することが困難となり、上述した、シリコンを0.05wt.%
以下にした効果を打ち消し、水素割れが発生しやすくな
る。従って、マンガン含有量は、0.80〜1.60wt.%の範囲
内に限定すべきである。
【0022】(4) 燐(P):燐は不純物元素であり、非常に
偏析しやすく且つ焼入れ性を著しく高める元素である。
そして、含有量が0.015 wt.%を超えると、鋼板の中心偏
析帯では0.15wt.%以上となる。その結果、大入熱溶接に
よって2相域温度範囲内に加熱されると、低シリコン化
の効果をもってしてもM−Aの生成を抑制することが困
難となり、割れが発生し易くなる。従って、燐含有量
は、0.015 wt.%以下に限定すべきである。
【0023】(5) 硫黄(S):硫黄は不純物元素であり、非
常に偏析しやすく且つそのほとんどがMnS系介在物と
して鋼中に存在する。そして、MnS系介在物と地鉄と
の界面は最も水素が集積し易い場所であり、硫黄の含有
量が0.003 wt.%を超えると、著しく大形のMnS系介在
物を部分的に形成する傾向にあり、上記界面の剥離のみ
によって超音波探傷欠陥エコ−を検出することがある。
従って、硫黄含有量は、0.003 wt.%以下とすべきであ
る。
【0024】(6) アルミニウム(Al):アルミニウムは脱
酸に必要な元素であるが、0.005 wt.%未満では脱酸効果
が不十分である。一方、その含有量が0.080wt.% を超え
ると、鋼板の靱性を害する。従って、アルミニウムの含
有量は、0.005%〜0.080wt.% の範囲内に限定すべきであ
る。
【0025】(7) 銅(Cu), ニッケル(Ni):銅、ニッケル
はともに固溶強化する元素であるが、0.10 wt.% 未満で
はその効果が十分でない。一方、その含有量が、0.40w
t.%を超えると、銅の場合はCu割れ防止対策が必要とな
り、また、ニッケルの場合はコスト上昇をきたし経済性
が不利となる。従って、銅, ニッケルはともに含有量を
0.10〜0.40 wt.% の範囲内に限定すべきである。
【0026】(8) バナジウム(V),チタン(Ti), ニオブ(N
b):バナジウム、チタン、ニオブはいづれも強い炭化物
形成元素であり、微量の含有量で析出強化が可能で、厚
物の建築用鋼材に有用な元素である。しかし、バナジウ
ムは0.010wt.% 未満、チタンおよびニオブはともに0.00
5 wt.%未満では、その効果が期待できない。一方、バナ
ジウム、チタン、ニオブはいづれもその含有量が0.050w
t.% を超えると、鋼板の靱性が著しく劣化する。従っ
て、バナジウムの含有量は0.010 〜0.050wt.% 、チタン
の含有量は0.005 〜0.050wt.% 、ニオブの含有量は0.00
5 〜0.050wt.% の範囲内に限定すべきである。
【0027】次に、この発明におけるシリコンの作用と
シリコン含有量の限定理由について述べる。先ず、鋼が
2相域温度範囲まで加熱された場合に、シリコンがM−
Aの生成を促進する理由について述べる。シリコン(S
i)は、フェライト生成元素であり、且つ、炭素(C)と
反発する性質を有する元素である。従って、2相域温度
範囲内に加熱されたときの鋼中のSiとC の分配を考える
と、Siはフェライト側に富化し、且つ、C をオ−ステナ
イト側へ追いやるように作用すると考えられる。従っ
て、Si含有量が高いと、オ−ステナイト側にC が著しく
富化し、焼入れ性が増す。次に、冷却過程では、Siはセ
メンタイト中に溶け込むことができないため、Si含有量
が高い場合には、セメンタイトの生成が阻害され、オ−
ステナイトの状態で低温までもちきたらされ、そのため
M−Aが形成され易くなるものと考えられる。この発明
ではSi含有量を低減することによってはじめて、上述し
たM−Aの形成を抑制することが可能となったものと考
える。次に、Si含有量の低減によるM−Aの生成の抑制
効果、それに伴う割れ発生の防止効果等について述べ
る。
【0028】表2 に示す、引張強さ50kgf/mm2(490MPa)
級のボックス柱用の鋼の典型的成分を基本成分として、
Si含有量のみを変化させた化学成分組成の鋼板を対象
に、大入熱SAW により2 相域温度範囲に至る加熱、冷却
の熱シミュレ−ション試験を実施して、鋼板の中心偏析
帯のM-A 面積率を測定した。
【0029】
【表2】
【0030】図5 は、熱シミュレ−ション試験の温度パ
タ−ンを示す。図1 は、上記熱シミュレ−ション試験の
結果得られた、鋼板のSi含有量と鋼板の中心偏析帯のM-
A 面積率との関係を示す。図1 から明らかなように、Si
含有率を、0.05wt.%以下にすれば、M-A が生成しないこ
とがわかる。
【0031】次に、表2 に示す化学成分組成の鋼板を対
象に、半ボックス施工試験を行い、溶接部の超音波探傷
試験を実施して、割れの発生状況を測定した。半ボック
ス施工試験は、図6 に示すように、鉛直に直立させたフ
ランジ1 の上端部フランジ面に、エレクトロスラグ溶接
3 でウェブ2 を保持し、そして、ウェブ2 の端面をフ
ランジ面に接して保持させ、フランジ1 とウェブ2 とを
SAW で溶接して、試験体を作成した。試験体の寸法は、
同図に示すように、縦245mm,横245mm,長さ700mm であ
る。SAW の溶接条件は、2 電極の一層溶接であり、温度
30℃、湿度80% の環境で1 時間放置して吸湿させたフラ
ックス( 以下、フラックス条件1 という) で、50kgf/mm
2 級の鉄粉入りボンド型フラックスを使用した。ワイヤ
−は50kgf/mm2 級の6.4mm φ、入熱は400 KJ/cm であ
る。溶接後、3日間試験体を放置し、図6 に矢印でUST
と示した溶接フランジ角部を、JIS G0901 に準じて超音
波探傷試験を行ない、割れのプロフィ−ルを描き、図7
に示すように HAZ割れ率( 長さ%)を定義した。
【0032】図2 は、前記半ボックス施工試験の結果得
られた、Si含有量とHAZ 割れ率との関係を示す。同図か
ら明らかなように、Si含有量を0.05wt.%以下にすれば、
HAZ割れが発生しないことがわかる。表2 に、供試鋼板
の板厚、母材の引張強さ、M-A 面積率、および、フラッ
クス条件1 のときのHAZ 割れ率を併記した。表2から明
らかなように、Si含有量が0.05wt.%以下のとき、母材の
引張強さは490 MPa 以上を十分満足している。上述した
結果から、シリコンは、この発明では不純物として作用
し、0.05% を超えると、鋼板の中心偏析帯にM−Aが生
成し、割れを抑制することが困難となる。従って、シリ
コン含有量は、0.05% 以下に限定すべきである。
【0033】本発明の鋼板は、上述した化学成分組成
中、(1):炭素、シリコン、マンガン、燐、硫黄およびア
ルミニウムを含有しているか、(2):前記(1) の成分元素
に加えて、銅およびニッケルを含有しているか、(3):前
記(1) の成分元素に加えて、バナジウム、チタンおよび
ニオブのうち少なくとも1 種を含有しているか、(4):前
記(2) の成分元素に加えて、バナジウム、チタンおよび
ニオブのうち少なくとも1 種を含有していなければなら
ない。
【0034】次に、本発明鋼板の第1の製造方法につい
て説明する。溶鋼の鋳造方法は、生産性を上げる観点か
ら連続鋳造方法が好適である。前記連続鋳造で製造され
たスラブを1300℃以上の温度に加熱することによって、
Mn、P の拡散を図ることができるので、鋼板の中心偏析
帯における成分偏析が軽減される。かくして、1300℃以
上の温度に加熱されたスラブに熱間圧延を施して鋼板を
製造する。このよにして製造した鋼板を対象に、前記半
ボックス施工試験( 前記フラックス条件1)を行なったと
ころ、HAZ 割れは発生しなかった。
【0035】次に、本発明鋼板の第2の製造方法につい
て説明する。前記第1の製造方法と同様、溶鋼を連続鋳
造する。そして、前記連続鋳造の末期に、スラブに軽圧
下を施し、スラブのクレ−タ内の、成分元素が濃化した
未凝固溶鋼の流動を抑制することによって、スラブの中
心部におけるMn、P 等の成分偏析を軽減することができ
る。次いで、軽圧下が施されたスラブを1300℃以上の温
度に加熱することによって、Mn、P の拡散を図ることが
できので、鋼板の中心偏析帯における成分偏析が軽減さ
れる。かくして、1300℃以上の温度に加熱されたスラブ
に熱間圧延を施してを製造する。このよにして製造した
鋼板を対象に、前記半ボックス施工試験をより厳しいフ
ラックス条件、即ち、フラックス放置時間を5 時間に変
更し( 以下、フラックス条件2 という) 、その他の条件
は同一で行なった。その結果、HAZ 割れは発生しなかっ
た。従って、この発明の製造方法は、上記第1の製造方
法でもよいし、上記第2の製造方法でもよい。。
【0036】
【実施例】次に、この発明を実施例により、比較例と対
比しながら説明する。表3 に示す、本発明の範囲内の化
学成分組成を有する、Si含有量が0.05wt.%以下の溶鋼N
o. P1〜P17 を転炉で溶製し、連続鋳造法で製造した。
【0037】
【表3】
【0038】上記No. P1〜P17 の溶鋼のうち、No. P1,P
3,P7,P12,P15,P16の溶鋼については、連続鋳造の末期に
スラブに軽圧下を施したものである。前記スラブを表面
手入れした後に、加熱炉で1300〜1350℃の温度範囲に加
熱し、そして、熱間圧延した。かくして、本発明鋼板N
o. P1〜P17 を製造した。同表に併せて示すように、そ
の化学成分組成のうちの少なくとも1 つが、本発明の範
囲外である溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブを
製造した。このうち、No. C7は連続鋳造の末期にスラブ
に軽圧化を施したものであり、No. C2,C9は連続鋳造に
おいて電磁攪拌鋳造を行なったものである。C5はCaを20
ppm(0.0020wt.%) 含有するS 含有量0.0003wt.%という極
低S 成分鋼である。前記スラブを表面手入れした後に、
加熱炉で1300〜1350℃の温度範囲に加熱し、次いで、熱
間圧延した。かくして、比較鋼板C1〜C9を製造した。鋼
板の板厚は、本発明鋼板、比較鋼板ともに30〜70mmの範
囲内である。
【0039】本発明鋼板および比較鋼板の各々につい
て、大入熱のSAW による前述した半ボックス施工試験を
行ない、前述した超音波探傷試験によるHAZ 割れ率を測
定した。また、各鋼板の母材の引張試験を行なった。表
3 に、各鋼板No. の製造法、板厚、半ボックス施工試験
によるHAZ 割れ率を併記した。但し、半ボックス施工試
験における溶接入熱は、板厚30mmの場合に210 KJ/cm 、
板厚70mmの場合に600 KJ/cm であり、その間は板厚が厚
くなるとともに入熱を大きくした。なお、HAZ 割れ率
は、前記フラックス条件1 のときの結果を基本とした
が、軽圧下鋳造したもの、電磁攪拌鋳造を行なったも
の、または、Caを含有した極低S 成分のものについて
は、前記フラックス条件2 のときの結果も示した。
【0040】表3 から、次のことが明らかである。即
ち、本発明鋼板であるNo. P1〜P17 の鋼板はいずれも、
大入熱SAW のHAZ 割れ率が0 であった。No. P1〜17のう
ち、軽圧下鋳造をしたNo. P1,P3,P7,P12,P15,P16は、フ
ラックスの吸湿時間を5 時間とした( 前記フラックス条
件2)厳しい溶接条件においてもHAZ 割れ率は0 であっ
た。また、本発明鋼の引張強さはいずれも、その目標値
490 MPa 以上を満足している。
【0041】これに対して比較鋼板であるNo. C1〜C9の
中には、大入熱SAW のHAZ 割れ率0のものは得られず、5
〜45% の割れ率であった。そして、前記フラックス条
件2による厳しい溶接条件においては、軽圧下鋳造(C
7)、電磁攪拌鋳造(C2,C9) 、または、Caを含有した極低
S 成分(C5)の場合でも、大入熱SAW のHAZ 割れ率は10〜
55% であった。ここで、HAZ 割れは板厚中心部に発生し
ていた。
【0042】
【発明の効果】本発明は、上述したように構成されてい
るので、従来のように板厚の中心偏析帯にM−Aを生成
させることなく、安価に且つ大量に引張強さ490 MPa 級
の高張力鋼板を生産することが可能となる。従って、入
熱200 KJ/cm 以上といった大入熱SAW により、鋼板でボ
ックス柱を組み立てた場合、その角継手部の熱影響部の
板厚中心部に発生する水素割れの発生を抑制することが
でき、従って、前記熱影響部の超音波探傷欠陥の発生を
なくすることが可能となるので、鉄骨メ−カ−等が溶接
部を手直し作業をしなくてもよい、大入熱溶接時の耐熱
影響部割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板を、安価に
且つ効率よく供給することが可能となる、工業上、有用
な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】490MPa級鋼板の、シリコン含有量と大入熱SA
Wの2相域温度HAZの熱シミュレ−ションによるM−
A面積率との関係を示すグラフである。
【図2】490MPa級鋼板の、シリコン含有量と大入熱SA
Wによる半ボックス施工試験によるHAZ割れ率との関
係を示すグラフである。
【図3】490MPa級鋼板の、マンガン含有量と大入熱SA
Wの2相域温度HAZの熱シミュレ−ションによるM−
A面積率との関係を示すグラフである。
【図4】490MPa級鋼板の、燐含有量と大入熱SAWの2
相域温度HAZの熱シミュレ−ションによるM−A面積
率との関係を示すグラフである。
【図5】鋼板の、大入熱SAWの2相域温度HAZの熱
シミュレ−ションパタ−ンを示す説明図である。
【図6】大入熱SAWによる半ボックス施工試験の試験
体の形状と超音波探傷試験位置を示す図である。
【図7】半ボックス施工試験体のHAZの割れ率の、超
音波探傷欠陥による定義を説明する図である。
【図8】角溶接部の熱影響部に発生した水素割れの説明
図である。
【図9】図8の水素割れ、および、その周辺の金属組織
の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】図9の一部の拡大写真である。
【符合の説明】
1 フランジ、 2 ウェブ、 3 エレクトロスラグ溶接部 4 ダイヤフラム、 5 大入熱SAW 部、 6 超音波探傷部、 7 溶接金属 8 熱影響部(HAZ) 9 母材 10 水素割れ。 C1,C2,C3 JIS G0901 に準ずる超音波探傷による割れ
の長さ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−272156(JP,A) 特開 平4−272133(JP,A) 特開 昭62−56518(JP,A) 特開 昭61−194113(JP,A) 特開 昭51−90919(JP,A) 特公 平5−69902(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 301 C21D 8/02 C22C 38/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素(C) :0.06 〜 0.18
    wt.%、 シリコン(Si) :0.05 wt.% 以下、 マンガン(Mn) :0.80 〜 1.60 wt.%、 燐(P) :0.015 wt.%以下、 硫黄(S) :0.003 wt.%以下、 アルミニウム(Al):0.005 〜 0.080 wt.% および 残り:鉄(Fe)および不可避不純物 からなることを特徴とする、大入熱溶接時の熱影響部耐
    割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板。
  2. 【請求項2】 炭素(C) :0.06 〜 0.18
    wt.%、 シリコン(Si) :0.05 wt.% 以下、 マンガン(Mn) :0.80 〜 1.60 wt.%、 燐(P) :0.015 wt.%以下、 硫黄(S) :0.003 wt.%以下、 アルミニウム(Al):0.005 〜 0.080 wt.% 、 銅(Cu) :0.10 〜 0.40 wt.% 、 ニッケル(Ni) :0.10 〜 0.40 wt.% および 残り:鉄(Fe)および不可避不純物 からなることを特徴とする、大入熱溶接時の熱影響部耐
    割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板。
  3. 【請求項3】 炭素(C) :0.06 〜 0.18
    wt.%、 シリコン(Si) :0.05 wt.% 以下、 マンガン(Mn) :0.80 〜 1.60 wt.%、 燐(P) :0.015 wt.%以下、 硫黄(S) :0.003 wt.%以下、 アルミニウム(Al):0.005 〜 0.080 wt.% 、 下記からなる群から選んだ少なくとも1つの成分、 バナジウム(V) :0.010 〜 0.050 wt.% 、 チタン(Ti) :0.005 〜 0.050 wt.% 、 ニオブ(Nb) :0.005 〜 0.050 wt.% および 残り:鉄(Fe)および不可避不純物 からなることを特徴とする、大入熱溶接時の熱影響部耐
    割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板。
  4. 【請求項4】 炭素(C) :0.06 〜 0.18
    wt.%、 シリコン(Si) :0.05 wt.% 以下、 マンガン(Mn) :0.80 〜 1.60 wt.%、 燐(P) :0.015 wt.%以下、 硫黄(S) :0.003 wt.%以下、 アルミニウム(Al):0.005 〜 0.080 wt.% 、 銅(Cu) :0.10 〜 0.40 wt.% 、 ニッケル(Ni) :0.10 〜 0.40 wt.% 、 下記からなる群から選んだ少なくとも1つの成分、 バナジウム(V) :0.010 〜 0.050 wt.% 、 チタン(Ti) :0.005 〜 0.050 wt.% 、 ニオブ(Nb) :0.005 〜 0.050 wt.% および 残り:鉄(Fe)および不可避不純物 からなることを特徴とする、大入熱溶接時の熱影響部耐
    割れ性に優れた建築ボックス柱用鋼板。
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