JP2955650B2 - チーズホエー発酵飲料の製造方法 - Google Patents

チーズホエー発酵飲料の製造方法

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JP2955650B2
JP2955650B2 JP9120092A JP12009297A JP2955650B2 JP 2955650 B2 JP2955650 B2 JP 2955650B2 JP 9120092 A JP9120092 A JP 9120092A JP 12009297 A JP12009297 A JP 12009297A JP 2955650 B2 JP2955650 B2 JP 2955650B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チーズホエー発酵
飲料の製造方法に関し、詳しくはチーズ製造時に得られ
るチーズホエーを原料とし、カルシウム化合物を添加し
た後、加熱し、これにヨーグルト用乳酸菌を作用させる
ことによってチーズホエー発酵飲料を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】チーズ製造時に副生する乳清(ホエー)
には独特の風味(ホエーフレーバー)があるため、その
ままでは飲用に適さない。しかし、チーズを大量に生産
する場合、副生するチーズホエーも可なりの量となる。
そのため、チーズホエーを利用した飲料の製造について
は、過去にも試みられたことがあるが、ホエーフレーバ
ーを完全に消去することができず、その風味が消費者か
ら敬遠され、未だ飲料としては定着していない。
【0003】本発明者は、チーズホエー飲料の製造にあ
たり、原料として用いるチーズホエーについて、そのホ
エーフレーバーの発生を抑える方法を開発し、当該チー
ズホエーを用いてチーズホエー飲料を製造する方法を確
立した(特願平7−315821号明細書)。この方法
では、原料牛乳を75℃、1分〜5分又はこれと同等以
上の条件で殺菌処理した原料牛乳に特定のスターター乳
酸菌を作用させて得られるチーズホエーを原料として使
用することに特色がある。
【0004】しかし、この方法で製造したチーズホエー
飲料は、加熱変性したβ−ラクトグロブリン(以下、β
−Lgと略記することがある。)を主とするタンパク質
が沈殿せず懸濁しており、この状態では、タンパク質に
よる口腔内の皮膜形成感や渋味の原因となる。また、こ
の懸濁物は8000×g程度の遠心力では完全に沈殿を
形成せず、遠心分離後の上清に残存する。
【0005】本発明者は、これまで一般のチーズホエー
から飲用に耐え得るチーズホエー飲料が製造できなかっ
た理由について検討し、チーズ製造中に汗臭や渋味を
主とする不快臭(ホエーフレーバー)の発生が避けられ
ないチーズホエーの貯蔵中にβ−Lgから硫黄化合物
が形成され、青臭い特有の不快臭が形成されるチーズ
ホエーを乳酸菌で発酵させると、の不快臭の発生が促
進される等の理由が考えられるとの結論に達した。これ
らの問題点は、チーズスターターとして特定の乳酸菌、
すなわちラクトコッカス・ラクチス 8W株(FERM
P−14165)とラクトコッカス・ラクチス 71
2A株(FERM P−15235)を用いること、β
−Lgや酵素を加熱変性させてからチーズを製造するこ
とによって解消できることを見出した。しかし、この方
法によっても得られるチーズホエーにタンパク質の懸濁
物が存在することがわかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、タンパク質の懸濁物に起因する口腔内の皮膜形
成感、渋味、喉ごしの悪さを解消したチーズホエー発酵
飲料の製造方法を提供することである。そこで本発明者
は、牛乳のβ−Lgは熱変性を受けやすいタンパク質で
あり、β−Lg溶液にカルシウムを加えて加熱するとゲ
ルが形成される性質があること[A.C.Zittle et al.:J.D
airy Sci.,39,514(1956)] を利用して、膜処理を用いる
ことなくホエー中のβ−Lgを除去する方法を検討し
た。その結果、原料のチーズホエーにカルシウム塩を加
え、特定温度で加熱処理し、次いでヨーグルト用乳酸菌
を加えて発酵させることによって、上記の課題が解消で
きることを見出し、本発明に到達した。さらに、ヨーグ
ルト用乳酸菌を加えて発酵させるに先立ち、炭酸カルシ
ウムを添加することによりカルシウム含量の多い飲料が
得られることも知見した。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明
は、殺菌処理したチーズ製造用原料牛乳にスターター乳
酸菌を作用させて得られるチーズホエーから脱脂した
後、カルシウム化合物を添加し、85〜95℃で加熱処
理し、次いでヨーグルト用乳酸菌を加えて発酵させた
後、固−液分離して固形物を除くことを特徴とするチー
ズホエー発酵飲料の製造方法である。請求項4に記載の
本発明は、上記請求項1の発明において、加熱処理した
後、ヨーグルト用乳酸菌を加えて発酵させるに先立ち、
炭酸カルシウムを添加することを特徴とするチーズホエ
ー発酵飲料の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いるチーズホエーは、
前記した原料牛乳を75℃、1分〜5分又はこれと同等
以上の条件で殺菌処理した原料牛乳に特定のスターター
乳酸菌を作用させて得られるチーズホエーに限定され
ず、従来から一般的に採用されている方法である原料牛
乳を63℃で30分間保持する殺菌方法または73℃で
十数秒程度加熱する高温短時間(HTST) 法などで殺菌し
たものを用いたチーズ製造法から得られるチーズホエー
であっても、不快臭が発生していない条件のスイートホ
エーも利用できる。ここで、スイートホエーとは、明確
な定義はないが、チーズ製造工程のクッキング終了時に
排除されるホエーのうちpHが5.8から6.6の範囲
を示すもの[F.V.Kosikowsky et al.;Cheese and fermen
ted milk foods (1977)]と一般的に考えられ、ゴーダ、
エダム、エメンタル、チェダー等のホエーがこれに相当
する。原料牛乳の殺菌を、例えば75℃で1〜2分の条
件で行うと、牛乳中に含まれるほとんどの酵素は完全に
失活し、以後のチーズ製造工程で乳成分と反応しないた
め、青臭いフレーバー(青草臭)を生成しない。したが
って、このような殺菌条件を経て得られるチーズホエー
は、本発明に好適なものと言える。
【0009】次に、チーズ製造用原料牛乳に作用させる
スターター乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクチス
8W株(FERM P−14165)及びラクトコッ
カス・ラクチス 712A株(FERM P−1523
5)が好適で、これらを組み合わせて用いる。本発明で
は、スターター乳酸菌を作用させて得られるチーズホエ
ーをそのまま使用しないで、該ホエーから脱脂した後、
カルシウム化合物を添加し、85〜95℃で加熱処理す
る。脱脂処理は、クリームセパレーターなどを使用する
常法により行えばよい。また、カルシウム化合物として
は塩化カルシウム及び水酸化カルシウムが用いられる。
どちらか一方のカルシウム化合物を添加すると、チーズ
ホエーのpHは酸性もしくはアルカリ性となり、後続の
工程において不都合が生じる。そのため、両者を等量づ
つ用いることが好ましく、通常はそれぞれチーズホエー
1リットルあたり0.3〜0.7g程度使用する。
【0010】カルシウム化合物を添加した後、85〜9
5℃で加熱処理することによって、チーズホエー中のタ
ンパク質を主とする懸濁物を沈澱させる。なお、加熱処
理の時間は5分以上行うべきであり、通常は10〜30
分間行う。例えば、85℃で30分、90℃で20分あ
るいは95℃で5〜10分が適当である。次いで、チー
ズホエーにヨーグルト用乳酸菌を加えて発酵させる。発
酵は、35〜45℃、好ましくは40℃で12〜24時
間、好ましくは16時間行う。なお、カルシウム濃度の
高いチーズホエー発酵飲料の製造を望む場合は、上記乳
酸発酵を行うに先立って、炭酸カルシウムを添加する。
ここで、炭酸カルシウム以外のカルシウム化合物を使用
すると、例えば塩化カルシウムでは塩味を増すため、添
加量に制約があり、十分な効果が期待できない。一方、
水酸化カルシウムの場合は、系のpHを高めてしまうた
め、やはり添加量に制約がある。これに対して、炭酸カ
ルシウムは中性の溶液中では溶解度が低く、ほとんど溶
けないが、pHが低くなると、可溶性となり、カルシウ
ムは酸と結合する。したがって、炭酸カルシウムは発酵
中のpHの急激な低下を抑える緩衝作用があり、乳酸菌
の生育にとっても好都合である。乳酸発酵が終了した
後、固−液分離して培養物から固形物を除く。固−液分
離法としては、単に所定時間静置したのち上清を採取す
る方法でもよいが、好ましくは遠心分離を行う。遠心分
離の条件としては、3000×gで30分程度が適当で
ある。
【0011】図1は、チーズ製造工程と共に本発明のチ
ーズホエー発酵飲料の製造工程の流れの一態様を示した
ものである。本図により本発明を説明すると、前記の条
件で殺菌処理した原料牛乳を30℃程度まで冷却後、塩
化カルシウムを原料牛乳100kgあたり20g程度添
加する。さらに、スターター乳酸菌として、ラクトコッ
カス・ラクチス 8W株とラクトコッカス・ラクチス
712A株の脱脂乳培養物をそれぞれ原料牛乳の1%程
度添加する。スターター接種後、クエン酸(20%溶
液)でpHを6.30に調整した後、粉末レンネット
(例えばクリスチャン ハンセン社製)を原料牛乳10
0kgあたり3g程度添加し、30℃で1時間放置して
カードを形成させる。
【0012】生成したカードをカードナイフで1cm角
に細切する。10分間放置後、クッキングを行う。クッ
キングは、ホエー温度を30分間で30℃から36℃に
昇温させながら、ゆっくり攪拌して行う。この時点で、
一部のホエーを排除する(原料牛乳100kgあたり5
0kg、一次排除ホエー)。次いで、排除したホエーの
代わりに40℃の温水を原料牛乳100kgあたり10
kg加え、36℃でさらに40分間クッキングを続けた
後、ホエー中のカードを沈降させ、堆積板でプレスし、
残りのホエーを排除する(二次排除ホエー)。その後、
カードを1kg容のモールドに分取し、チーズ製造工程
にまわす。
【0013】一方、上記工程で得られた一次排除ホエー
と二次排除ホエーを混合し、クリームセパレーターで脂
肪分を除く。このチーズホエー(80kg)にカルシウ
ム化合物(塩化カルシウム40gと水酸化カルシウム4
0g)を加えた後、加熱処理する。加熱処理後、乳酸発
酵を行うために糖類を5%程度加える。糖類としては、
グルコース,シュクロース,転化糖等の通常の飲料製造
用の糖類が挙げられる。さらに、チーズホエー発酵飲料
中のカルシウム濃度を高めることを望む場合は、炭酸カ
ルシウムをチーズホエー80kgあたり240g添加す
る。次いで、ヨーグルト用乳酸菌をスターターとして1
%程度添加し、乳酸発酵を行う。なお、ヨーグルトスタ
ーターとしては、市販されているものでよく、ラクトバ
チルス・ブルガリクス,ラクトバチルス・デルブリッキ
ー,ストレプトコッカス・サーモフィラス等が好適であ
る。発酵は、通常40℃で20時間程度でよい。発酵終
了後、固−液分離にて沈澱物を除去する。その後、70
℃程度の温度で瞬間殺菌を行い目的とするチーズホエー
発酵飲料(約80kg)を得る。なお、飲料製造用材料
として、各種の香料,粉末コーヒー,果汁,クエン酸,
炭酸,果肉等の通常の飲料製造用の材料の中から適宜選
択して加えることによって、様々な風味の飲料を製造す
ることができる。
【0014】
【実施例】次に、本発明を実施例等によって詳しく説明
するが、本発明はこれによって限定されるものではな
い。 試験例1 加熱殺菌を75℃で15秒または75℃で1分間で行っ
た原料牛乳から得たチーズホエーを用い、これに添加す
るカルシウム化合物の種類と量による影響について調べ
た。なお、チーズの製造は、軟質チーズの製造方法に従
って、以下の通りに行った。すなわち、75℃で15秒
または75℃で1分加熱殺菌した原料牛乳50kgを3
0℃まで冷却後、塩化カルシウムを10g添加した。こ
れにスターター乳酸菌として、ラクトコッカス・ラクチ
ス 8W株(FERM P−14165)とラクトコッ
カス・ラクチス 712A株(FERM P−1523
5)の脱脂乳培養物をそれぞれ原料牛乳の1%添加し
た。スターター接種後、クエン酸(20%溶液)でpH
を6.30に調整し、粉末レンネット(クリスチャン
ハンセン社製)を1.5g添加し、30℃で1時間放置
してカードを形成させた。
【0015】生成したカードをカードナイフで1cm角
に細切し、10分間放置後、クッキングを行った。クッ
キングは、ホエー温度を30分間で30℃から36℃に
昇温させながら、ゆっくり攪拌して行った。この時点
で、一部のホエー(20kg)を排除し、一次排除ホエ
ーとした。次いで、排除したホエーの代わりに40℃の
温水を5kg加え、37℃でさらに40分間クッキング
を続けた後、ホエー中のカードを沈降させ、堆積板で2
0分間プレスし、残りのホエーを排除した(二次排除ホ
エー20kg)。上記チーズ製造工程によって得られた
一次排除ホエーと二次排除ホエーを混合し、クリームセ
パレーターで脂肪分を除き、遠心分離で沈澱を取り除い
て、チーズホエーを得た。75℃で15秒で殺菌処理し
た原料牛乳から得られたチーズホエーをホエーA、同様
に75℃で1分殺菌したものから得られたチーズホエー
をホエーBと称し、これらを試験例に用いた。この段階
で、ホエーAとホエーBともに不快臭は発生していなか
った。
【0016】該チーズホエーに、塩化カルシウムまたは
/および水酸化カルシウムを所定量添加し、その後加熱
処理を90℃で10分間行った。加熱処理後、チーズホ
エーを冷蔵庫(5℃)中で6時間放置して沈澱を形成さ
せた。次いで、デカンテーションによりチーズホエー上
清部分を得た。この上清部分のpH値と上清部分に含ま
れるタンパク質含量を測定した。結果を第1表に示す。
【0017】
【表1】 *1 単位はg/L、*2 単位は%、*3 加熱処理後、褐変した
【0018】表から明らかなように、ホエーA、Bは同
様な傾向を示した。ホエーAにおいて、塩化カルシウム
のみを添加した試料2では、タンパク質含量は低くなっ
たものの、pHも5.83と低くなってしまい、このホ
エーにヨーグルトスターターを接種して発酵させること
には不都合であった。一方、水酸化カルシウムのみを用
いた試料3,4の場合、ホエーのpHがアルカリ性に傾
き、90℃10分間の加熱によって該ホエーが褐変し
た。これに対して、塩化カルシウムと水酸化カルシウム
をそれぞれ0.5g/Lづつ添加した試料5では、ホエ
ーのpHは中性を示し、加熱後においても褐変しなかっ
た。同様の結果がホエーBについても得られたことか
ら、カルシウム化合物は塩化カルシウムと水酸化カルシ
ウムを等量づつ加えるのが良く、特にそれぞれ0.5g
/L添加することが好ましいことがわかった。
【0019】試験例2 試験例1のホエーAおよびホエーBを用い、カルシウム
化合物として塩化カルシウムと水酸化カルシウムをそれ
ぞれ0.5g/L添加した後、加熱条件を変化させて、
ホエー上清中のタンパク質含量を測定した。結果を第2
表に示す。
【0020】表から明らかなように、ホエーBは、ホエ
ーAに比べてより低い温度での加熱によってタンパク質
の沈澱が形成される。また、ホエーBの場合、85℃、
10分の加熱でホエー中のタンパク質含量は0.68%
となったが、ホエーAの場合は同一加熱条件で0.73
%を示し、ホエーBの85℃、10分の加熱処理の場合
と同程度のタンパク質含量を示す加熱条件は90℃、1
0分であることがわかった。これらのことから、ホエー
Aは90℃、10分以上の加熱で、ホエーBは85℃、
10分以上の加熱で、ホエー中のタンパク質を主とする
懸濁物を沈澱させることができるが、加熱処理後のホエ
ー上清は著しく白濁していた。このため、8000×g
で30分の遠心分離を試みたが、白濁を除去できなかっ
た。
【0021】試験例3 試験例2によって得られた各種のホエーにヨーグルトス
ターターを接種して乳酸発酵させた場合のホエー発酵飲
料の清澄度を調べた。なお、乳酸発酵は以下の手順で行
った。加熱処理後、ホエーを80℃まで冷却し、シュク
ロースを5%添加し、市販のヨーグルトスターターを
1.0%接種し、40℃で16時間培養した。得られた
ホエー発酵飲料を7℃で一晩熟成後、3000×gで2
0分間遠心分離を行って得た上清について清澄度を目視
観察により判定した。結果を第2表に示す。
【0022】
【表2】 *1単位は%
【0023】上記の如く、ホエーAでは90℃で5分の
加熱では、沈澱は形成されるもののホエー発酵飲料の上
清は白濁していた。この白濁物質は、カルシウムとリン
酸からなる微粒子と考えられるが、8000×gで30
分間遠心分離を行っても完全には沈澱しなかった。一
方、90℃で10分加熱したホエーAでは、発酵飲料に
僅かな白濁が見られたが、90℃、20分および95
℃、5分の加熱では、白濁のない清澄な発酵飲料を得る
ことができた。また、85℃、10分の加熱では、ホエ
ー発酵飲料は白濁しており、好ましい状態ではなかっ
た。また、ホエーBでは80℃で10分、80℃で20
分または85℃で5分の加熱の場合に、僅かにホエー発
酵飲料に白濁が見られたものの、それ以上の加熱条件で
はほとんど清澄化した。以上のことから、発酵後の清澄
度を考慮すると、ホエーの加熱温度はホエーA、Bとも
に90℃で10分以上、好ましくは90℃で20分が望
ましいことが示された。
【0024】試験例4 試験例1のホエーAおよびホエーBを用いて、ホエー発
酵飲料中のカルシウム含量を高める方法について検討し
た。すなわち、脱脂処理したチーズホエーに塩化カルシ
ウムと水酸化カルシウムをそれぞれ0.5g/Lづつ添
加し、90℃で10分加熱した。これに糖5%と所定量
の炭酸カルシウムを添加した後、市販ヨーグルトスター
ター(クリスチャンハンセン社、ラクトバシルス・ブル
ガリクスCH−2、ストレプトコッカス・サーモフィラ
スCH−1)を接種し、40℃で16時間発酵させた。
発酵終了後1日冷蔵してから上清を採取した。この上清
中に含まれるカルシウム含量を測定した。結果を第3表
に示す。
【0025】
【表3】
【0026】表から明らかなように、炭酸カルシウムの
添加量に従ってホエー発酵飲料中のカルシウム含量は増
加する。しかし、炭酸カルシウムを5g/L添加した場
合、発酵飲料は僅かなえぐ味が感じられた。
【0027】試験例5 試験例1のホエーAおよび/またはホエーBを原料と
し、90℃、20分の加熱処理前にカルシウム化合物
を添加せず、乳酸発酵開始前にも炭酸カルシウムを添加
しない場合、塩化カルシウムと水酸化カルシウムをそ
れぞれ0.5g/Lづつ添加して90℃で20分加熱し
たが、乳酸発酵開始前には炭酸カルシウムを添加しない
場合、塩化カルシウムと水酸化カルシウムをそれぞれ
0.5g/Lづつ添加して90℃で20分加熱後、乳酸
発酵開始前に炭酸カルシウムを3g/L加えた場合に得
られるホエー発酵飲料の上清中に残存するタンパク質を
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により分離
し、分子種を分析した。なお、SDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動は、U.K.Laemnli, Nature(London),22
7, 680 (1970)に準じて行った。すなわち、すなわち、
日本エイドー社製、ミニゲルスラブ泳動装置NA−10
12を用い、10%のポリアクリルアミドゲルで、0.
05M トリス−グリシン緩衝液(pH8.3、SDS
1g/L入り)中で40mAで1時間泳動した。泳動
に用いたホエー(10ml)は蒸留水(3L)で透析
(5℃、20時間)し、凍結乾燥した後、タンパク質濃
度が2mg/ml程度となるように試料調製用溶液
(0.5M トリス塩酸緩衝液(pH6.8)25m
l、SDS 4g、2−メルカプトエタノール 10m
l、0.2%BPBメタノール液 1ml/100m
l)に加え、100℃で2分間加熱した。泳動には各試
料の10μlを用いた。ゲル中のタンパク質は、0.1
%CBB−50%メタノール−7%酢酸溶液中で20分
間染色し、7%酢酸溶液中で一晩脱色した。なお、試料
中のα−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリンの位
置は、シグマ社の標品の泳動位置から決定した。この電
気泳動終了後のゲルの写真を図2に示す。電気泳動に用
いた試料のうち、AはホエーAそのもの、BはホエーB
そのもの、CはホエーBをの方法で処理して得たホエ
ー発酵飲料、DはホエーBをの方法で処理して得たホ
エー発酵飲料、EはホエーBをの方法で処理して得た
ホエー発酵飲料を示す。
【0028】図2から明らかなように、試料Cではホエ
ーフレーバーや口腔内の皮膜形成感等の原因であるβ−
Lgが完全に沈澱として除かれておらず、上清中に懸濁
して存在しているが、試料DやEではβ−Lgとα−ラ
クトアルブミンを主とするタンパク質が完全に除かれて
いる。
【0029】実施例1 原料牛乳100kgを75℃で1分または75℃で15
秒で加熱殺菌した。該殺菌牛乳を30℃まで冷却後、塩
化カルシウムを20g添加した後、チーズスターターと
して、ラクトコッカス・ラクチス 8W株(FERM
P−14165)およびラクトコッカス・ラクチス 7
12A株(FERM P−15235)の脱脂乳培養物
をそれぞれ1%づつ添加し、よく攪拌した。次いで、粉
末レンネット(クリスチャン ハンセン社製)3gを5
0mlの水に溶解させたものを添加した。これを、30
℃で50分間静置し、カードを形成させた。次に、凝固
したカードをカードナイフで1cm角に細切し、10分
間放置した後、チーズホエー温度を、30分で30℃か
ら36℃まで昇温させながら、カードをゆっくり攪拌
し、クッキングを行った。この時点で、ホエーを一部
(40kg)排除し、これを一次排除ホエーとした。し
かる後、ホエーの一部を排除したカードに40℃の湯水
を10kg加え、37℃で40分間攪拌してクッキング
を行った。クッキング終了後、チーズホエー中のカード
を20分間プレスし、残りのホエーを排除した(二次排
除ホエー、40kg)。カードは1kg容のモールドに
詰め、圧搾成形した後、8%食塩水に一晩浸漬して加塩
し、乾燥、真空包装して熟成させた。
【0030】一次排除ホエーおよび二次排除ホエーを混
合し、合計80kgのチーズホエーを得た。これをクリ
ームセパレーターで脱脂した後、該ホエー10kgあた
り塩化カルシウムおよび水酸化カルシウムをそれぞれ5
gづつ添加し、90℃で20分加熱した。加熱終了後、
80℃まで冷却した該ホエーに、砂糖を5%の割合とな
るように添加した。続いて、これを40℃まで冷却後、
炭酸カルシウムを30g/10kgの割合で添加してか
ら、ヨーグルトスターターとして、市販のラクトバシル
ス・ブルガリクスCH−2およびストレプトコッカス・
サーモフィルスCH−1の脱脂培養物(クリスチャン
ハンセン社製)をそれぞれ0.5%づつ接種し、40℃
で16時間培養した。
【0031】培養終了後、7℃の冷蔵庫で1日熟成させ
た後、3000×gで30分間遠心分離を行い、沈澱を
除去した。得られた上清を70℃で瞬間殺菌してチーズ
ホエー発酵飲料を得た。この製品は、口腔内の皮膜形成
感や渋味がなく、喉ごしのよいものであった。
【0032】実施例2 この例では、通常のチェダーチーズの製造工程から得ら
れるチーズホエーを用いてホエー発酵飲料を製造した。
原料牛乳100kgを63℃で30分間殺菌処理後、3
2℃まで冷却してから塩化カルシウムを20g加えた
後、市販のチーズスターター(クリスチャン ハンセン
社製)を2%接種し、30分間静置後、レンネット(ク
リスチャン ハンセン社製)を3g/100kgの割合
で加え、45分間静置してカードを形成させた。凝固し
たカードをカードナイフで1cm角に細切後、クッキン
グ処理を行った。クッキング温度を40分かけて32℃
から38℃まで上昇させた時点でホエー(50kg)を
排除した(一次排除ホエー)
【0033】引続き38℃でクッキングを1時間継続し
たが、終了時には不快臭が発生していたため、チーズホ
エー発酵飲料の原料としては不適当であった。そこで、
一次排除ホエーのみを原料として、チーズホエー発酵飲
料を製造することにした。一次排除ホエー50kgをク
リームセパレーターで脱脂した後、塩化カルシウムおよ
び水酸化カルシウムをそれぞれ25gづつ添加し、攪拌
しながら90℃で20分間加熱した。加熱処理終了後、
80℃まで冷却した時点で、シュクロースを5%相当分
加え、45℃までさらに冷却した。これに、ヨーグルト
スターターとして、市販のラクトバシルス・ブルガリク
スCH−2およびストレプトコッカス・サーモフィルス
CH−1の脱脂培養物(クリスチャン ハンセン社製)
をそれぞれ0.5%づつ接種し、40℃で20時間発酵
させた。発酵終了後、5℃の冷蔵庫に1日静置した後、
3000×gで20分遠心分離して沈澱を除去した。こ
のようにして得られたチーズホエー発酵飲料をビンに充
填後、70℃で瞬間殺菌した。このチーズホエー発酵飲
料は、実施例1で製造された発酵飲料と同様に、好まし
いものであった。
【0034】
【発明の効果】本発明の方法によれば、チーズホエーに
カルシウム化合物を添加した後、加熱処理するため、口
腔内の皮膜形成感や渋味の原因となるβ−ラクトグロブ
リンをを主とするタンパク質を除去することができる。
そのため、本発明により得られるチーズホエー発酵飲料
は、不快な風味がない上に喉ごしがよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 軟質チーズの製造工程およびチーズホエー発
酵飲料製造工程の一態様を示した図である。
【図2】 チーズホエーを用いて得られる発酵飲料中の
タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
で分離した後の電気泳動写真である。
フロントページの続き (72)発明者 染谷 幸雄 茨城県つくば市松代5丁目16番地 520 −204 (56)参考文献 特開 平10−33115(JP,A) 特開 平9−131162(JP,A) 特開 平7−303447(JP,A) 特開 平7−99885(JP,A) 特開 昭61−170341(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 21/02 A23L 2/38 WPIDS(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 殺菌処理したチーズ製造用原料牛乳にス
    ターター乳酸菌を作用させて得られるチーズホエーから
    脱脂した後、カルシウム化合物を添加し、85〜95℃
    で加熱処理し、次いでヨーグルト用乳酸菌を加えて発酵
    させた後、固−液分離して固形物を除くことを特徴とす
    るチーズホエー発酵飲料の製造方法。
  2. 【請求項2】 カルシウム化合物が塩化カルシウム及び
    水酸化カルシウムである請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 スターター乳酸菌がラクトコッカス・ラ
    クチス 8W株(FERM P−14165)及びラク
    トコッカス・ラクチス 712A株(FERM P−1
    5235)である請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 加熱処理した後、ヨーグルト用乳酸菌を
    加えて発酵させるに先立ち、炭酸カルシウムを添加する
    ことを特徴とする請求項1記載の方法。
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