JP2852410B2 - チーズホエー飲料の製造法 - Google Patents

チーズホエー飲料の製造法

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JP2852410B2 JP7315821A JP31582195A JP2852410B2 JP 2852410 B2 JP2852410 B2 JP 2852410B2 JP 7315821 A JP7315821 A JP 7315821A JP 31582195 A JP31582195 A JP 31582195A JP 2852410 B2 JP2852410 B2 JP 2852410B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チーズホエー飲料
の製造法に関し、詳しくはチーズ製造時に原料牛乳を特
定の条件下で殺菌処理し、これにチーズスターターを作
用させて得られるチーズホエーを用いてチーズホエー飲
料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】チー
ズ製造時に副生する乳清(ホエー)には独特の風味(ホ
エーフレーバー)があるため、そのままでは飲用に適さ
ない。そのため、チーズを大規模生産する場合は、副生
するチーズホエーを濃縮、乾燥させ、粉末化して製菓原
料等に利用する例もあるが、小規模生産の場合は、チー
ズホエーをそのまま廃棄する例も多く、河川等の汚染源
ともなっている。チーズホエーを利用した飲料は、過去
にも製造、販売された経緯はあるが、ホエーフレーバー
が消費者から敬遠され、定着していない。チーズ製造時
に副生するチーズホエーに独特のフレーバーが発生する
原因は、未だ解明されておらず、またフレーバー物質も
同定されていないなど、ホエーフレーバーの解決策は見
出されていないのが実状である。
【0003】本発明者はホエーフレーバーは、牛乳中
のある種の酵素がフレーバーの前駆物質の形成に関与
し、前駆物質が酸化的に分解されて生成する物質(青草
臭に関与)、β−ラクトグロブリンの関与する風味物
質(硫化物臭に関与)、チーズスターター乳酸菌の発
酵時に生成する乳酸以外の呈味物質(酢酸,アセトン,
ジアセチルなど、不快臭に関与)によって形成されるも
のと考えた。そこで、本発明者はチーズホエーの有効利
用を図る手段として、チーズ製造工程において、ホエー
フレーバーの発生を回避して得たチーズホエーを利用し
てチーズホエー飲料を製造する方法を開発すべく検討し
た。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するため鋭意検討した結果、ホエーフレーバーの
発生要因に牛乳中の酵素,脂肪球,β−ラクトグロブリ
ン,乳酸菌等が関連していることを究明した。特に、チ
ーズホエーの不快なフレーバーの発生は、チーズ製造原
料牛乳の殺菌後に残存する酵素に原因があると考え、該
原料牛乳の殺菌方法を通常の低温長時間加熱殺菌(63
℃,30分)又は高温短時間加熱殺菌(73℃,十数
秒)という条件と大幅に異なる75℃,1分以上又はこ
れと同等以上の条件で行うことにより、酵素を失活さ
せ、上記に起因するホエーフレーバーの発生を回避で
きることを見出した。ホエー中に含まれる主要なタンパ
ク質であるβ−ラクトグロブリンは、牛乳の加熱臭の原
因物質として知られているが、このタンパク質の変性は
70℃を越えると不可逆性が著しく増加し、75℃では
κ−カゼインと結合体を形成し、レンネット凝固性が変
化することが知られている(C.A.Zittle et al.:J.Dair
y Sci.,45,807(1962))。これに対して、本発明による7
5℃,1分以上の加熱は、変性したβ−ラクトグロブリ
ンをカード中に取り込ませ、チーズホエー中のβ−ラク
トグロブリンを減少させることになり、上記のβ−ラ
クトグロブリンによる風味への影響を極力抑えることが
できる。また、ホエーフレーバーの発生度合いは、チー
ズスターターとして使用する乳酸菌の種類等によっても
異なるが、特定の乳酸菌を組み合わせれば、上記のホ
エーフレーバーの発生を抑制できることを見出し、本発
明に到達した。
【0005】すなわち、請求項1に記載の発明は、チー
ズホエー飲料を製造するにあたり、75℃〜85℃,1
分〜5分の条件で殺菌処理したチーズ製造原料牛乳にス
ターター乳酸菌を作用させて得られるチーズホエーを用
いることを特徴とするチーズホエー飲料の製造法であ
り、請求項2に記載の発明は、スターター乳酸菌として
ラクトコッカス・ラクチス 8W株(FERM P−1
4165)とラクトコッカス・ラクチス 712A株
(FERM P−15235)を用いることを特徴とす
る請求項1記載のチーズホエー飲料の製造法である。
【0006】
【発明の実施の形態】従来のチーズ製造原料牛乳の殺菌
方法は、前記したように、63℃,30分間又は73
℃,十数秒程度の条件で実施されており、いわゆる低温
殺菌である。その理由は、高温殺菌ではホエータンパク
質の変性に伴うカードの軟化のため、チーズ製造に不都
合が生じると考えられていたからである。しかし、本発
明者は、ホエーフレーバーの発生に関与していると考え
られる酵素を失活させるため、従来の殺菌温度をはるか
に超える温度で原料牛乳の殺菌処理を行い、この原料牛
乳にスターター乳酸菌を作用させて得られるチーズホエ
ーにはホエーフレーバーが発生しないか、フレーバーの
発生が殆ど抑制されることを確認した。また、チーズホ
エーと同時に得られるカードについてもチーズ製造に良
好に利用できることを確認した。
【0007】本発明に用いる基本的な原料牛乳の殺菌条
件は、75℃,1分以上で、通常は75〜85℃、好ま
しくは75〜80℃で1〜5分間、好ましくは1〜3分
間の殺菌処理である。牛乳中に含まれる酵素の殆どは上
記の殺菌処理で完全に失活し、以後のチーズ製造工程で
乳成分と反応しない。したがって、以後のチーズ製造工
程で青臭いフレーバー(青草臭)を生成しない。
【0008】また、本発明の殺菌処理を行うことによ
り、乳清中のβ−ラクトグロブリンが変性してチーズカ
ード中に取り込まれるという現象が生じ、結果的にチー
ズ収量も増加する。加熱変性したβ−ラクトグロブリン
は牛乳の加熱臭発生の原因物質として知られている(祐
川金次郎著、MILK PROTEIN, 実業図書,1981) が、75
〜80℃,1〜5分の加熱処理をした牛乳を用いた場合
では、乳酸菌や酵母による発酵中の異臭(硫化物臭)の
発生はほとんどない。但し、75℃で2分間の加熱と8
0℃で1分間の加熱では、チーズホエーの風味に差があ
り、前者は牛乳らしい濃厚感があるのに対し、後者はほ
とんど無味で濃厚感は薄れる。これは、ホエー中に残存
するβ−ラクトグロブリンと関係があると考えられる。
第2表に牛乳の殺菌温度とチーズホエー中の主要成分含
量を示したように、β−ラクトグロブリン以外の成分は
殺菌温度による著しい含量変化は見られないが、β−ラ
クトグロブリン含量は75℃,2分間の加熱で90%程
度残存しているが、80℃,1分間の加熱では約40%
と著しく減少している。
【0009】以上に述べたように、本発明における原料
牛乳の殺菌方法は、ホエーフレーバー生成に関与する酵
素の失活のみならず、チーズホエー中のβ−ラクトグロ
ブリンをチーズカードに取り込ませることでチーズの収
量を増加させると共に、硫黄化合物の発生も防止すると
いう効果を有するものである。
【0010】また、チーズ製造に使用する乳酸菌の種類
によってもホエーフレーバー(不快臭)の発生度合いが
異なる。一般に、市販されているチーズスターターを用
いた場合に得られるホエーには、不快なホエーフレーバ
ーが発生するのは避けられないとされているが、本発明
に用いるチーズスターターの場合は、該フレーバーの発
生が抑制できる。本発明に用いるチーズスターターと市
販されているチーズスターター(BDノーマル 01,
ハンセン社製)で製造されたホエーの特徴を比較する
と、市販スターターの場合、一次ホエー(スターターを
接種してから1時間40分後に採取したもの)では不快
臭を感じないが、これを放置しておくにつれて典型的な
ホエーフレーバーが発生してくる。一方、本発明のチー
ズスターターの場合、一次ホエー(スターターを接種し
てから1時間40分後に採取したもの),二次ホエー
(スターターを接種してから2時間10分後に採取した
もの)においても不快臭や酸味がほとんど感じられず、
これを放置しておいてもホエーフレーバーが発生するこ
とはない。
【0011】本発明ではチーズスターターとして、ラク
トコッカス・ラクチス8W株(FERM P−1416
5、以下8W株と略記する。)およびラクトコッカス・
ラクチス712A株(FERM P−15235、以下
712A株と略記する。)を用いる。8W株は、チーズ
に滑らかさをもたらすのに必要であり、単独で長時間培
養しても不快なフレーバーを生成しない菌株である。ま
た、712A株は、チーズらしいフレーバーを付与する
のに必要であるが、単独で長時間培養すると不快なフレ
ーバーを生成する菌株である。これらの両菌株をチーズ
スターターとしてチーズ製造に使用した場合に、チーズ
ホエーの不快なフレーバー形成が避けられるが、その理
由は以下の通りであると考えられる。
【0012】チーズスターターとして牛乳中に接種され
た乳酸菌は、チーズ製造工程のクッキングにおいてカー
ド中に留まるものと、ホエー中に出てくるものに分か
れ、その割合は使用する乳酸菌およびチーズ製造条件に
よって変動する。例えば、本発明者が目的としている軟
質チーズ(畜試チーズ)の製造工程における生菌数の推
移を図1に示したが、図から明らかなように、チーズ製
造工程中のホエーに含まれる生菌数は、8W株と712
A株で著しい差があることが分かる。すなわち、一次ホ
エー(スターターを接種してから1時間40分後)と二
次ホエー(スターターを接種してから2時間10分後)
の排除時のホエー中の生菌数が8W株では増加している
のに対し、712A株では添加時の菌数を下回ってい
る。一方、カード中の712A株の菌数は、一次ホエー
排除時から二次ホエー排除時にかけて著しく増殖を示し
た。このことは、712A株は乳タンパク質との親和性
が強く、カード中に留まる割合が8W株に比べて高いこ
とを示している。
【0013】さらに、一次ホエーと二次ホエーを混合
し、30℃で16時間培養したところ、不快なホエーフ
レーバーは発生しなかった。また、この培養後のホエー
混合液中の生菌数を測定したところ、8W株は3×10
8 /mlと増殖しているのに対し、712A株では10
6 /ml以下と著しい生育阻害が見られ、8W株が71
2A株の生育を抑制するものと考えられる。以上のこと
から明らかなように、本発明のチーズスターターを用い
れば、チーズホエー中の712A株は生菌数が少なく、
またその生育は8W株により阻害されるため、712A
株の増殖によって発生するホエーフレーバーは抑制され
るのである。
【0014】次に、チーズホエー生成,分離,チーズホ
エー飲料の製造工程について、詳しく述べる。図2に3
ヵ月熟成で食せる軟質チーズ(畜試チーズ)の製造工程
を示した。この図2の製造工程を参考にして述べると、
まず原料牛乳を75℃で2分間、または80℃で1分間
殺菌処理後、30℃まで冷却してから塩化カルシウムを
20g/100Kg加えた後、チーズスターターの脱脂
乳培養物を接種する。この場合、スターター乳酸菌とし
ては、8W株(FERM P−14165)と712A
株(FERM P−15235)の脱脂乳培養物を各々
1%添加する。
【0015】スターター接種後、クエン酸(20%溶
液)でpHを6.30に調整し、レンネットを3g/1
00Kg添加し、30℃で1時間カード形成させる。生
成したカードをカードナイフで1cm角に細切する。1
0分間放置後、クッキングを行う。クッキングは、ホエ
ー温度を30分間で30℃から36℃に昇温させて行
う。この時点で、一部のホエーを排除する(原料乳10
0Kg当り40Kg、一次排除ホエー)。次いで、排除
したホエーの代わりに40℃の温水を5Kg/100K
gの割合で加え、36℃でさらに30分間クッキングを
続けたのち、残りのホエーを排除する(二次排除ホエ
ー)。その後、カードを1Kg容のフープ10個に詰
め、圧搾成型した後、加塩、乾燥、包装、熟成させる。
【0016】本発明に用いるチーズホエーは、チーズ製
造過程で生じるものであればよく、上記の軟質チーズの
他、硬質チーズ等の他のチーズ製造過程で得られるもの
でもよい。上記の例では、軟質チーズ製造工程で得られ
た一次排除ホエーと二次排除ホエーを一緒に混合し、ク
リームセパレーターで脂肪分を除き、さらに遠心分離を
行って沈澱物を除いてチーズホエーを得る。
【0017】次に、チェダータイプのチーズの製造工程
について説明する。原料牛乳を75℃で2分間、または
80℃で1分間殺菌処理後、30℃まで冷却してから塩
化カルシウムを20g/100Kg加えた後、チーズス
ターターの脱脂乳培養物を接種する。この場合、スター
ター乳酸菌としては、8W株(FERM P−1416
5)と712A株(FERM P−15235)の脱脂
乳培養物を各々1%添加する。スターター接種後、クエ
ン酸(20%溶液)で牛乳のpHを6.30に調整し、
レンネットを3g/100Kg添加し、30℃で1時間
カード形成させる。生成したカードをカードナイフで1
cm角に細切する。10分間静置後、クッキングを行
う。クッキングはホエー温度を30分間で30℃から3
6℃に昇温させて行う。この時点で一部のホエーを排除
する(原料乳100Kg当り40Kg、一次排除ホエ
ー)。その後、温度を38℃とし、さらに50分間クッ
キングを続けた後、カードを沈降させ、堆積板でプレス
し、残りのホエーを排除する(二次排除ホエー)。
【0018】ホエー排除後、10分間プレスしたカード
は定法によりチェダーリング以降の工程を行い、チェダ
ータイプのチーズを製造する。このようにして得られる
カードは、63℃で30分間加熱殺菌した牛乳からのカ
ードに比べて明らかに軟質であり、収量も約1割ほど増
加する。この場合も、上記チーズ製造工程で得られた一
次排除ホエーと二次排除ホエーを一緒に混合し、クリー
ムセパレーターで脂肪分を除き、遠心分離機で沈澱を取
り除いてチーズホエーを得る。
【0019】上記のようにして調製したチーズホエーを
用いて、各種のチーズホエー飲料、発酵性飲料を製造す
ることができる。図3にチーズホエー飲料の製造工程の
1例を示した。なお、チーズホエー飲料の製造におい
て、乳糖資化性の微生物を用いて発酵を行うと、用いた
微生物の特性により多様な商品設計が可能になり、風味
の改善や、特に乳糖資化性の微生物を用いた場合、チー
ズホエー中の乳糖が減少し、乳糖不耐性の人にも受け入
れられる飲料を製造することができる。
【0020】本発明のチーズホエー飲料の原料として
は、チーズホエーの他、糖類,飲料製造用材料,発酵用
スターターなどが用いられる。糖類としては、シュクロ
ース,転化糖,蜂蜜,ぶどう糖,シロップ等の通常の飲
料製造用の糖類が挙げられる。糖類の添加濃度は、通常
の場合、チーズホエーに対して4〜6%で、好ましくは
5%である。本発明のチーズホエー飲料の製造に用いる
飲料製造用材料としては、各種の香料,粉末コーヒー,
果汁,クエン酸,炭酸,果肉等の通常の飲料製造用の材
料が挙げられる。これらは、必要に応じて適宜添加する
ことができる。
【0021】なお、チーズホエーを含む発酵性飲料を製
造する場合は、ヨーグルトスターター,チーズスタータ
ー,酵母,乳糖資化性酵母, ケフィア構成菌等を発酵用
スターターとして用い、以下のように行う。前記で調製
したチーズホエーを30℃で16〜24時間培養し、ホ
エー中に存在する8W株による乳酸発酵を進行させる。
得られた発酵ホエーは発酵臭,酸味の比較的少ない特徴
を持っている。この発酵ホエーにシュクロース,転化
糖,蜂蜜,ぶどう糖等の糖類を3〜8%、好ましくは5
%添加し、市販されているヨーグルトスターター(ラク
トバチルス・デルブリッキー サブスぺーシーズ ブル
ガリクス,ストレプトコッカス・サーモフィラスなど)
の脱脂乳培養物を1〜2%接種し、40℃で16〜20
時間培養することによって、発酵飲料を製造できる。用
いるヨーグルトスターターの種類によっては、わずかな
不快臭が発生する場合もあるが、香料,果汁,クエン酸
等で調整して不快臭を消すことができる。
【0022】また、アルコール含有飲料を製造する場合
は、前記で調製したチーズホエーにシュクロース等の糖
類を5〜10%、好ましくは8%加え、市販の酒精酵母
(サッカロマイセス・セレビシエ),ワイン酵母(サッ
カロマイセス・セレビシエ)などから適当な酵母を選択
して接種し、23〜27℃、好ましくは25℃で5〜2
0日間、時々攪拌しながら発酵させる。こうして得られ
る飲料には、添加した糖の量等によって、アルコールが
1〜3%程度含まれる。
【0023】以上述べたように、本発明により得られる
チーズホエー飲料には様々の態様があり、チーズホエー
の種類,発酵用スターター,飲料用添加物等の組合せに
より、多様な飲料が提供される。これらの飲料は不快臭
がなく、風味に優れるだけでなく、乳糖含量も低減され
ており、乳糖不耐性の人にも受容されるものである。
【0024】
【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明する
が、本発明はこれにより限定されるものではない。 試験例1 チーズ製造の際の牛乳の殺菌条件を設定するために、7
5℃で10秒,30秒,1分,2分および80℃で1分
加熱した牛乳をレンネットで凝固させた際のチーズホエ
ーを採取し、5℃で1日冷蔵後の官能的特徴を検討し
た。その結果、75℃で1ないし2分間の加熱殺菌条件
で不快な青草臭の発生が抑制されることが判明した。ま
た、80℃で1分間の処理では、牛乳らしい濃厚感が希
薄になり、飲み易さが増した。したがって、以下の実施
例では、原料牛乳の殺菌温度は75℃で2分間あるいは
80℃で1分間、またはこれらと同等の条件を採用し
た。
【0025】試験例2 牛乳100Kgを63℃で30分間、75℃で2分間ま
たは80℃で1分間加熱殺菌した後、図2に示した軟質
チーズ(畜試チーズ)の製造工程にしたがってチーズを
製造した場合、および常法のチェダーチーズ製造工程に
したがってチェダーチーズを製造した場合のそれぞれの
チーズの収量を第1表に示した。
【0026】
【表1】
【0027】表から明らかなように、80℃で1分間加
熱した牛乳を用いる場合は、塩化カルシウムを添加せ
ず、かつpHを調整しなくても、軟質チーズの製造が可
能であった。一方、チェダーチーズの場合、80℃で1
分間加熱した牛乳からはチェダリング時のカードの可塑
性が不良で、実質的にチーズを製造できなかった。した
がって、75℃で2分間ないし80℃で1分間加熱した
牛乳からチーズを製造する場合は、塩化カルシウムを2
0g/100Kg添加し、pHを6.30に調整してか
ら製造することとした。
【0028】また、75℃で2分間および80℃で1分
間加熱した牛乳からチーズを製造すると、畜試チーズと
チェダーチーズの両者共に、63℃で30分間加熱処理
した牛乳を用いた場合と比較してチーズの収量は約1割
増加した。これは、チーズカードが加熱変性したβ−ラ
クトグロブリンを取り込んだことにより、カードのホエ
ー排除力が弱まり、ホエーがチーズカード中に多く取り
込まれた結果である。しかも、75℃で2分間加熱した
牛乳から得られた畜試チーズの品質は、63℃で30分
間加熱した牛乳から得られたものに比べて柔らかであ
り、風味も遜色のないものであった。また、80℃で1
分間加熱した牛乳から得られたチェダーチーズは、カー
ドが柔らかいため、軟質なグリーンチーズとなるが、熟
成度合いは63℃で30分間加熱した牛乳から得られた
ものに比べて早く、約4ヵ月の熟成で食することができ
る。
【0029】試験例3 上記試験例の畜試チーズ製造の際に副生したチーズホエ
ーを採取したところ、80Kgのチーズホエーが得られ
た。このチーズホエー中のタンパク質,カルシウムおよ
びリン酸含量を測定した結果を第2表に示した。表から
明らかなように、63℃で30分間加熱した牛乳を用い
てチーズを製造した場合、副生するチーズホエー中には
7.6g/リットルの総蛋白質が含まれる。一方、牛乳
を75℃で2分間加熱した場合には、チーズホエー中に
7.0g/リットルの総蛋白質が含まれ、80℃で1分
間加熱した場合には、5.8g/リットルの総蛋白質が
含まれていた。このように総タンパク質量は、従来法に
比べて本発明の加熱殺菌条件を適用した場合の方が少な
い。この総タンパク質量の減少は、チーズホエー中の主
要な蛋白質であるβ−ラクトグロブリンが4.2g/リ
ットルから3.8g/リットル(75℃,2分の処理)
と1.8g/リットル(80℃,1分の処理)に減少し
たことによる。一方、カルシウムやリン酸の含量は加熱
殺菌条件にほとんど影響されなかった。いずれの場合の
ホエー中にも原料牛乳の約20%のカルシウム、約12
%のリン酸が含まれていた。
【0030】
【表2】
【0031】実施例1 試験例3で得たチーズホエーに砂糖を4%、インスタン
トコーヒー粉末を0.5%加えた後、70℃で5秒間加
熱殺菌してコーヒー添加チーズホエー飲料を製造した。
本飲料は砂糖4%でも十分に甘味があり、あたかも黒砂
糖を加えたような味を有する。
【0032】実施例2 試験例3で得たチーズホエーに砂糖を5%添加した後、
ヨーグルトスターター(ラクトバシルス・デルブリッキ
ー サブスペーシーズ ブルガリクス BCH株とスト
レプトコッカス・サーモフィラス 9Y株の脱脂乳培養
物の1対1の混合物)を1%加え、40℃で20時間発
酵させた。その後、冷蔵庫(5℃)で1日間熟成後、ク
エン酸とレモンエキスで調整し、飲料とした。発酵ホエ
ー(未調整)はわずかなホエーフレーバーが認められた
が、香料や果汁等の添加によって該フレーバーは消失し
た。
【0033】実施例3 試験例3で得たチーズホエーを30℃で16時間培養し
て得られた発酵ホエーに、生のイチゴを100g/10
リットルおよび砂糖を5%となるように加え、ミキサー
でイチゴの果肉を細切した後、濾過して飲料を製造し
た。
【0034】実施例4 試験例3で得たチーズホエーに砂糖を8%添加した後、
市販されているワイン酵母(サッカロマイセス・セレビ
シエ OC−2)を接種し、25℃で10日間時々攪拌
しながら発酵させてアルコール飲料を製造した。本飲料
は、わずかに糖が残存しており、アルコール濃度は3%
弱であった。
【0035】実施例5 酵母に日本酒用の酒精酵母(サッカロマイセス・セレビ
シエ 協会7号)を用いたこと以外は実施例4と同様に
してアルコール飲料を製造した。本飲料は、アルコール
濃度が3%を越えるものであった。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、チーズ製造時に副生す
るチーズホエーについて、その特有のフレーバーの発生
を抑制することができるので、このチーズホエーを利用
して嗜好性の高いホエー飲料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 チーズの製造工程中の乳酸菌の生菌数の推移
を示すグラフである。
【図2】 軟質チーズの製造工程を示した図である。
【図3】 チーズホエー飲料の製造工程を示した図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 染谷 幸雄 茨城県つくば市松代5丁目16番地 520 −204 (72)発明者 古川 左近 千葉県千葉市中央区亀井町13−41 (56)参考文献 特開 平6−30710(JP,A) 特開 平7−250672(JP,A) 特開 昭61−170341(JP,A) 特開 昭51−38459(JP,A) 特公 昭34−6232(JP,B1) 特公 昭33−3787(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23C 1/00 - 23/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チーズホエー飲料を製造するにあたり、
    75℃〜85℃,1分〜5分の条件で殺菌処理したチー
    ズ製造原料牛乳にスターター乳酸菌を作用させて得られ
    るチーズホエーを用いることを特徴とするチーズホエー
    飲料の製造法。
  2. 【請求項2】 スターター乳酸菌としてラクトコッカス
    ・ラクチス 8W株(FERM P−14165)とラ
    クトコッカス・ラクチス 712A株(FERM P−
    15235)を用いることを特徴とする請求項1記載の
    チーズホエー飲料の製造法。
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