JP2952354B1 - 電子線発生装置 - Google Patents

電子線発生装置

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JP2952354B1
JP2952354B1 JP10175569A JP17556998A JP2952354B1 JP 2952354 B1 JP2952354 B1 JP 2952354B1 JP 10175569 A JP10175569 A JP 10175569A JP 17556998 A JP17556998 A JP 17556998A JP 2952354 B1 JP2952354 B1 JP 2952354B1
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慎三 森田
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Abstract

【要約】 【課題】 大きな電子電流を有するとともに高い加速エ
ネルギーを有する電子線を効率よく発生させる小型で安
価な電子線発生装置を提供する。 【解決手段】 容器11内にタングステンフィラメント14
およびこれに接続された冷陰極15を具える熱電子放出陰
極と、リング状の陽極17とを対向して配置し、冷陰極と
陽極との間に加速用直流電源26を接続する。容器11内
に、希薄気体、例えばアルゴンガスを0.1 〜1000 mTorr
の圧力で満たす。希薄気体の放電で生成される正イオン
によって、熱電子放出陰極の電子空間電荷が中和される
ので、熱電子放出陰極からきわめて大きな電子電流が放
出される。また、希薄気体の放電によって生成されるプ
ラズマにより電界分布が変化し、陽極降下領域に大きな
電界が形成され、これによって電子は高いエネルギーに
加速される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子線を発生する
装置、特に大きな電子電流を有するとともに高い加速エ
ネルギーを有する電子線を効率よく発生することができ
る電子線発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子線発生装置は、電子線によって気体
を励起してプラズマを発生させ、半導体集積回路の製
造、各種薄膜の作成、表面処理などを行なうプラズマC
VD装置やプラズマエッチング装置などのプラズマプロ
セス装置や、電子線を廃棄ガスに照射して処理する廃棄
ガス処理装置、電子線を照射して微細加工を行なう表面
加工装置、表面物質の基板への拡散支援装置、電子励起
表示装置など種々のプロセス装置に使用されている。
【0003】例えば、本出願人の出願に係る特公平7−
122143号公報および特許第2739889号公報
には、電子線発生装置を有するプラズマプロセス装置が
記載されている。このプラズマプロセス装置において
は、電子線発生装置の容器と所定のプロセスを行なう容
器とを電子線を透過する隔膜を介して連結している。こ
の隔膜としては、ポリエステルフィルムを金属メッシュ
によって保持したものや、シリコン基板の表面を選択的
にエッチングしてメッシュ構造を形成したものが開示さ
れている。ここで、隔膜は、電子線発生空間の圧力(高
真空)と、プロセス処理を行なう空間の圧力との差に耐
えるだけの機械的な強度を有する必要があるので、電子
線をこの隔膜を透過させるためには、電子線発生装置と
しては大きな電子線電流を有するとともに高い加速エネ
ルギーを有する電子線を発生できるものが望ましい。
【0004】上述したプロセス装置以外でも、大きな電
子線電流を有するとともに高い加速エネルギーを有する
電子線を発生できる電子線発生装置が望まれているが、
そのためには一般に高い放電電圧や加速電圧が必要とな
り、装置が大掛かりとなるとともに価格の高いものとな
ってしまう。例えば、上述したプラズマプロセス装置を
半導体装置の製造に使用する場合、かなりの台数が必要
となるので、電子線発生装置もできるだけ小型のものが
望ましい。
【0005】従来の電子線発生装置を、その雰囲気で大
別すると、高真空タイプのものと、ガス雰囲気タイプの
ものとに分類される。高真空タイプのものは、電子の平
均自由行程よりも小さな寸法の電子加速系で電子を加速
する方法が採用される場合に使用されている。すなわ
ち、ガスが存在すると、電子の平均自由行程が短くな
り、電子の加速が十分にできないと考えられているから
である。また、ガス雰囲気タイプのものは、ガス雰囲気
中で放電を発生させ、その放電中の電子を取り出して加
速するものである。
【0006】上述した高真空タイプのものもガス雰囲気
タイプのものも、陰極の形態に応じて、冷陰極を使用す
るものと、熱電子放出陰極を使用するものとに分けられ
る。高真空タイプのもので、冷陰極を用いるものは、電
界放出型の電子線源として顕微鏡などに利用されてい
る。また、高真空タイプで熱電子放出陰極を用いるもの
は、比較的大きな電子電流を得ることができ、かっての
真空管で広く利用されていた。一方、ガス雰囲気タイプ
のもので、冷陰極を有するものは、例えば「応用物理」
第41巻、第3号, 1972, pp.238(30)〜249(41) に記載さ
れている。この電子線発生装置では、高い放電電圧が必
要であるので、ホローカソード(窪みのある陰極)が使
用されており、数mTorr から数Torrまでのガス圧で放電
されると、通常よりも低い電圧で放電することができ
る。このとき、放電で生じた正イオンがホローカソード
に向けて流れるため、ホローカソードからの電子流が絞
られて細いビームとなる。さらに、印加電圧を高くする
と、電圧はグロー放電の陰極降下部に加わり、電子は加
速されて数KeV にもなることが報告されている。さら
に、熱電子放出陰極を有するものは、放電電子線源とし
て、カウフマン(Kaufman )型の電子線源が知られてお
り、例えば、J. Vac. Sci. Technol. A3(4), July/Aug1
989, pp.1774-1778に記載されている。このカウフマン
型の電子線源においては、ガス雰囲気中で熱陰極放電を
行い、その放電で生成された電子を第3の陽極で10-5To
rr以下の高真空中に引き出すようにしている。したがっ
て、電子加速の部分は上述した高真空タイプのものと同
じである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した種々のタイプ
の電子線発生装置の内、最も一般的に使用されているも
のは、熱電子放出陰極を用いた高真空タイプのものであ
る。すなわち、真空容器内で、熱電子放出電極を陰極と
し、円形の電極を陽極として対向して配置し、これらの
間に直流電圧を印加して電子を加速するものである。こ
のような電子線発生装置では、熱電子放出陰極周辺に電
子の空間電荷が形成され、陰極−陽極間に加えられた直
流電圧によって陰極周辺の電子空間電荷で変形された電
界が作られる。したがって、陽極周辺に大きな電界が形
成され、この電界によって電子は加速される。しかし、
熱電子放出陰極からの電子の放出は、陰極周辺の電子空
間電荷によって制限されてしまい、大きな電子放出電流
を得ることができない欠点がある。
【0008】また、上述した高真空タイプのものや、熱
電子放出陰極を用いるガス雰囲気タイプのもの(カウフ
マン型)では、電子の加速のために高真空が必要である
ので、大掛かりで高価な排気手段が必要となる。また、
上述した電子励起によるプロセス装置においては、電子
線発生部とプロセス処理部との間の隔膜を電子線が透過
する必要があるので、相当高い加速エネルギーを有する
電子線を発生させる必要がある場合もある。一方、この
隔膜を薄くして電子線の透過を容易としようとすると、
電子線発生部とプロセス処理部との間の圧力差を隔膜が
支えることができなくなってしまうという問題もある。
【0009】したがって、本発明の目的は、上述した従
来の種々の欠点を解消もしくは軽減し、大きな電子放出
電流を有するとともに高い加速エネルギーを有する電子
線を効率良く発生することができ、しかも小型で安価な
電子線発生装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による電子線発生
装置は、密閉空間を画成する容器と、この容器内に配置
された熱電子放出陰極と、前記容器内に前記熱電子放出
陰極と対向するように配置され、電子線が透過できるよ
うな形状を有する陽極と、前記熱電子放出陰極と陽極と
の間に放電電圧を印加する手段とを具え、前記容器内を
希薄気体で満たし、この希薄気体の放電で生成される正
イオンによって熱電子放出陰極の電子空間電荷を中和す
るとともに陽極降下が発生する領域に大きな加速電界を
形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0011】本発明は、以下の事実を確かめ、その認識
を基にして成したものである。すなわち、熱電子放出陰
極と、電子を透過する陽極とを容器内に対向して配置
し、この容器内を希薄気体で満たし、希薄気体中で熱電
子放出陰極を有する直流放電を発生させると、通常のグ
ロー放電に見られる陰極周辺の大きな電圧降下は消失
し、その代わりに通常のグロー放電では殆ど無視される
程度の陽極周辺の電圧降下が顕著となる。そして、この
陽極周辺の電圧降下領域で電子の加速が行われる。これ
は、希薄気体の放電で生成される正イオンが熱電子放出
陰極の電子空間電荷を中和するため、放出電子電流は増
加し、また、このプラズマによって電界分布が変化し
て、陽極降下部に大きな電界が形成されるという事実に
基づくものである。したがって、加速電圧が高くなれば
なるほど希薄気体の電離度が高くなり、陰極周辺の空間
電荷の効果は緩和され、電子放出電流は増加し、陽極効
果部の電界は増加傾向を示すため、比較的大きな電子放
出電流を効率よく加速することができる。本発明では、
このようにして、大きな電子放出電流を有するとともに
高い加速エネルギーを有する電子線を効率良く発生させ
ることができ、しかも高真空とする必要がないので、装
置を小型で安価とすることができる。
【0012】本発明による電子線発生装置においては、
前記電子線を透過できる形状の陽極を、リング状、円筒
状またはメッシュ状に構成するのが好適である。また、
前記容器内の希薄気体の圧力は、0.1 〜1000 mTorrとす
るのが好適である。ここで、希薄気体の圧力を0.1 mTor
r よりも低くすると、熱電子放出陰極の電子空間電荷を
中和するための正イオンの発生量が少なくなり、十分大
きな電子放出電流が得られない。また、希薄気体の圧力
を1000 mTorrよりも高くすると、蛍光灯の放電と同じグ
ロー放電と熱電離型プラズマとの中間のプラズマとなっ
てしまい、陽極降下領域の電位差がそれほど顕著ではな
くなるとともに電子の平均自由行程が短くなり過ぎてし
まう。さらに、前記容器内の希薄気体は、特に限定され
るものではないが、熱電子放出陰極のフィラメントと反
応してこれを変成する恐れのある反応性気体や高価な気
体は使用しない方が望ましく、そのような観点からアル
ゴン、ヘリウム、窒素などの通常容易に入手することが
できる不活性気体や水素などの非反応性気体とするのが
好適である。また、本発明では熱電子放出陰極を用いる
ので、熱電子放出陰極と陽極との間に印加される放電電
圧は直流電圧でも交流電圧でも良い。
【0013】さらに、本発明は上述した電子線発生装置
を電子線源とする電子励起によるプロセス装置にも関す
るものであり、電子線発生装置の容器と連結された反応
容器と、これらの容器の間に配置された電子線を透過す
る隔膜とを具えることを特徴とするものである。このよ
うな電子励起によるプロセス装置の隔膜としては、後述
する実施例で使用するようなメッシュのような開口を有
する隔膜としたり、上述した特公平7−122143号
公報および特許第2739889号公報に記載されてい
るような開口を持たない隔膜とすることができる。ここ
で、開口を有する隔膜を使用するとき、反応容器に反応
ガスを導入する場合には、この反応ガスが電子線発生装
置の容器に侵入しないようにする必要がある。このた
め、反応容器のガス圧力を電子線発生装置の容器のガス
圧力よりも低く設定する必要がある。しかし、このよう
に反応容器のガス圧力を低く設定できない場合もあり、
その場合には開口を持たない隔膜を使用すれば良い。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明による電子線発生装
置の一実施例の構成を示す線図である。なお、本例で
は、電子線によって励起してプラズマを発生させ、電子
励起によるプロセス装置として構成したものである。電
子線発生用の第1の容器11と、プロセス用の第2の容
器12とを連結し、これらの間に100 ライン/ インチの
銅メッシュ13を配置する。すなわち、本例では、開口
を有する隔膜を用いるものである。第1の容器11の内
部には、タングステン製のフィラメント14と、冷陰極
15とを配置する。フィラメント14には加熱電源16
を接続し、フィラメントを加熱してて熱電子を発生させ
る熱電子放出陰極を構成する。第1の容器11の内部に
は、さらに、電子線が透過するリング状の陽極17を配
置する。第1の容器11を真空ポンプ(拡散ポンプ)1
8に連結し、容器内を所定の圧力に保つことができるよ
うにする。このため、第1の容器11と真空ポンプ18
との間の経路に真空計19を配置する。
【0015】第2の容器12には所定のガスを充填した
ガスタンク20を連結する。本例では、このガスタンク
20にアルゴンガスを充填する。また、第2の容器12
内のガス圧力を検知するために真空計21を設ける。実
際の装置においては、第1の容器11で発生させた電子
線を銅メッシュ13を経て第2の容器12に導き、第2
の容器内のガスを電子線で励起してプラズマを発生さ
せ、このプラズマを利用して所定のプロセスが行われる
ものである。したがって、例えばプラズマエッチングを
行なう場合には第2の容器12内には半導体ウエファが
配置されるが、本例では、種々の特性を測定するため
に、第2の容器12内には、平板プローブ22を配置
し、これを電流計23を経て可変直流電源24に接続す
る。
【0016】第1の容器11内に配置したタングステン
フィラメント14とフィラメント電源16との間には電
流計25を接続する。このフィラメント電源16は、直
流であっても交流であっても良い。さらに、可変の加速
用直流電源26を設け、その正端子を100 Ωの抵抗27
および1KΩの抵抗28を経て陽極17に接続し、これ
らの抵抗の接続点を接地する。また、加速用直流電源2
6の負端子を、フィラメント14に接続された冷陰極1
5へ接続する。さらに、加速用直流電源26の両端間に
電圧計29を接続する。銅メッシュ13は抵抗30を経
て接地し、導電性材料で造られている第2の容器12を
抵抗31を経て接地する。
【0017】図2は、上述した電子線発生装置におい
て、加速用直流電源26の電圧を変化させると共に、フ
ィラメント14を流れるフィラメント電流を電流計25
で測定しながら調整し、フィラメント14から放出され
る電子による放出電流を、抵抗27間の電圧の測定値か
ら演算により求めるとともに第2の容器12内に配置さ
れた平面プローブ12で検出される透過電流を電流計2
3で測定した結果を示すものである。図2の曲線Aは放
出電流を示し、曲線Bは透過電流を示すものである。な
お、容器11内に満たされたアルゴンガスの圧力は1mT
orr とした。これらの曲線から明らかなように、加速電
圧を増加するに伴って、放出電流も透過電流も二つのピ
ークを有する特徴的な変化を示した。すなわち、約25
0Vから、放出電流および透過電流ともに急激に増加す
るが、500V付近で、これらの電流は急減する。加速
電圧をさらに高くすると、放出電流も透過電流は共にゆ
っくりとした増加に転じ、2000Vで次のピークを示
す。放出電流は、その後ほぼ飽和するが、透過電流は僅
かに減少した後、再度増加していく。
【0018】通常の熱電子放出電子銃の場合、陰極から
の電子放出は熱電子の作る空間電荷によって電子放出が
制限されてしまう。しかし、希薄気体中で250V程度の電
圧を印加すると、気体が電離され、生成された正イオン
が陰極周辺の電子空間電荷を中和するので陰極からの電
子放出は増強され、したがって放出電流が著しく増加す
る。また、電離気体は電子線源の電位分布を変化させ、
陽極周辺の電界を強調するため、この領域でも電子が加
速される。したがって、透過電子は放出電子の増加とと
もに増加する。ところが、透過電子の個数およびエネル
ギーがともに増加すると、銅メッシュ13よりも後段の
第2の容器12内で別の放電が顕著となり、そこで生成
された正イオンがメッシュ周辺の電子を中和するため、
透過電流が急速に減少することになる。また、透過電流
の減少は放出電流にも影響し、放出電流も減少する。
【0019】さらに、加速電圧を増大すると、透過電子
の個数およびエネルギーが増加して第2の容器12内の
電子数を増加させ、その負電位のためメッシュ13周辺
の正イオンの取り込みが生じて、透過電流は再度増加す
る。より一層加速電圧が増加すると、電子は第2の容器
12の内壁と衝突して二次電子放出が行われる。この二
次電子放出は透過電流を減じるため、第2のピークを形
成する。
【0020】上述した現象は、第1の容器11および第
2の容器12内にプローブを配置した実験によっても確
認された。先ず、直径が0.5 mmで、長さが5 mmの銅線
を、第1の容器11内において、リング状陽極17より
も5mm陰極側に配置して、電子線源でのプローブ測定
を行った結果を図3に示す。加速電圧が3KVの条件
で、プローブ電圧がゼロのときプローブ電流は約6μA
であった。そして、リング状電極の電圧をゼロとする
と、プローブ電流がゼロのときのプローブ電圧は−75
0Vとなった。この電圧はこの位置の空間電荷を示すも
のである。さらに負のプローブ電圧を大きくすると、プ
ローブ電流は飽和した。負のプローブ電流の存在は電子
線源で電離が生じて正イオンが存在することを示してい
る。しかし、正イオンが衝突して二次電子を放出するよ
うに大きな負のプローブ電圧は、プローブ電流にプロー
ブからの二次電子放出電流を重畳することになるので、
正味のイオン電流の見積もりは難しいが、正イオンの存
在を否定するものではない。
【0021】熱電子放出陰極を有する電極系で直流放電
を行った場合、陰極降下がなくなり、電界は電極間で一
様になるので、そのときのプローブ位置の空間電荷は−
250Vとなる。したがって、実験で測定されたプロー
ブ電位は一様電界の電位よりも500Vも低い電圧とな
っている。このことは、陽極周辺部分に大きな電位差が
生じていることを示している。したがって、陽極降下領
域での大きな電界で電子が加速されて銅メッシュ13を
透過することが分かる。
【0022】次に、第2の容器12内の電子電流および
エネルギーを測定するために、直径30mmの電極をテ
フロン板で裏打ちしたプローブをメッシュ13から25
mm内側に配置して、プローブ電圧と電流との関係を測
定した。プローブ電流がゼロのときのプローブ電圧を測
定したところ図4に示すように、加速電圧5KVと7K
Vで、プローブ電圧は、2000Vと4300Vであっ
た。この電圧は透過電子のエネルギーを示しており、加
速電圧が7KVのときは、電子は4300eVとなり、
1μm のポリイミド隔膜を電子が透過するのに必要な十
分なエネルギーに加速されていることがわかる。さら
に、このプローブによる測定結果は、負電流の存在を示
しており、正イオンの存在が確認された。したがって、
第2の容器12内での高エネルギー電子の存在と電離と
が確認された。
【0023】以上のように、電子線源に希薄気体が満た
されていると、その電離によって電子線源の電位分布が
変化して陽極周辺に大きな電位降下が形成され、この領
域で電子の加速が効果的に行われる。この加速電子エネ
ルギーは加速電圧が7KVのときに4300eVとな
り、1μm の隔膜を電子が透過するのに必要な値になる
ことが確認された。
【0024】本発明は上述した実施例にのみ限定される
ものではなく、幾多の変更や変形が可能である。例え
ば、上述した実施例では、電子線を発生する第1の容器
と、この電子線を利用する第2の容器との間にメッシュ
を設けたが、これらの容器を開口を持たない隔膜で分離
することもできる。この場合には、第1の容器内のガス
の種類および圧力と、第2の容器内のガスの種類および
圧力とは自由に設定できる。しかし、圧力差を大きくす
るときは、隔膜の膜厚を厚くする必要があるが、このと
きは、電子線加速電圧を大きくすれば良い。
【0025】
【発明の効果】上述したように、本発明による電子線発
生装置においては、0.1 〜1000 mTorrの希薄気体中で、
熱電子放出電極を陰極とし、リング状、円筒状或いはメ
ッシュ状の電極を陽極としてこれらの間に加速電圧を印
加し、陰極降下のない放電を生じさせる。すると、陽極
周辺に印加電圧のかなりの部分が加わり、高電界が生
じ、電子を効率よく加速することができる。したがっ
て、陽極電極としてリング状、円筒状、メッシュ状の電
極を使用することによって加速電子を効率良く透過させ
ることができる。
【0026】例えば、1 mTorr の希薄気体が存在し、加
速電圧が7KVを越えると、加速電子エネルギーは43
00eV以上のエネルギーとなる。この場合には、電子
は1μm 程度の有機物薄膜を透過することができる。そ
して、透過電子によって第2の容器12内の気体を電離
させ、エッチング、CVD、気体処理などに使用でき
る。メッシュ電極を透過した電子は、大電流電子線源と
して、電界、磁界の存在下で加工され、加工や表面原子
のバルクへの拡散や、種々の個体表面励起にも使用でき
る。電子線加速電圧として、直流以外に、交流電圧また
は歪み電圧を使用することもできる。熱陰極のために、
自己整流され、電子のみを種々のパルス状に加速するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による電子線発生装置の一実施
例の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、加速電圧を変化させたときの放出電流
および透過電流の変化を示すグラフである。
【図3】図3は、プローブ電圧と、プロープ電流との関
係を示すグラフである。
【図4】図4は、第2の容器内でのプローブ電圧と、プ
ローブ電流との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
11 第1の容器(電子線発生槽)、 12 第2の容
器(反応槽)、 13銅メッシュ、 14 タングステ
ンフィラメント、15 冷陰極、 16 フィラメント
用電源、17 リング状陽極、 18 真空ポンプ、
19 真空計、20 ガスボンベ、 21 真空計、
22 平面プローブ、 23 電流計、 24 可変直
流電源、 25 電流計、 26 加速用直流電源、
27,28,30,31 抵抗
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−302291(JP,A) 特開 平4−58445(JP,A) 特開 平3−167741(JP,A) 特開 昭61−153937(JP,A) 特開 昭63−133439(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 37/06 - 37/077 H01J 33/00 - 33/04 H01J 37/301 G21K 5/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密閉空間を画成する容器と、この容器内
    に配置された熱電子放出陰極と、前記容器内に前記熱電
    子放出陰極と対向するように配置され、電子線が透過で
    きるような形状を有する陽極と、前記熱電子放出陰極と
    陽極との間に加速電圧を印加する手段とを具え、前記容
    器内を0.1 〜1000 mTorrの圧力の希薄気体で満たし、こ
    の希薄気体の放電で生成される正イオンによって熱電子
    放出陰極の電子空間電荷を中和して放出電子電流を増大
    させるとともに陽極降下が発生する領域に放出電子電流
    を加速する大きな加速電界を形成するように構成したこ
    とを特徴とする電子線発生装置。
  2. 【請求項2】 前記陽極を、リング状、円筒状またはメ
    ッシュ状に構成したことを特徴とする請求項1に記載の
    電子線発生装置。
  3. 【請求項3】 前記容器内の希薄気体を非反応性気体と
    したことを特徴とする請求項1に記載の電子線発生装
    置。
  4. 【請求項4】 前記熱電子放出陰極が、フィラメント
    と、冷陰極とを具えることを特徴とする請求項1に記載
    の電子線発生装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れかに記載の電子線発
    生装置の容器と連結された反応容器と、これらの容器の
    間に配置された電子線を透過するが開口を持たない隔膜
    とを具えることを特徴とする電子励起によるプロセス装
    置。
JP10175569A 1998-06-23 1998-06-23 電子線発生装置 Expired - Lifetime JP2952354B1 (ja)

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