JPH1140069A - マイクロチャネルプレートを用いたイオン源 - Google Patents

マイクロチャネルプレートを用いたイオン源

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JPH1140069A
JPH1140069A JP21419697A JP21419697A JPH1140069A JP H1140069 A JPH1140069 A JP H1140069A JP 21419697 A JP21419697 A JP 21419697A JP 21419697 A JP21419697 A JP 21419697A JP H1140069 A JPH1140069 A JP H1140069A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大面積に亘り一様なイオンビーム束が得られ
るイオン源を得ることを目的とする。 【解決手段】 高真空度を維持することができる真空チ
ャンバ8内には、マイクロチャンネルプレート(MC
P)1が配置されており、MCP1の電子出射面6側に
は、電子コレクタ9が配置されている。これらのMCP
1及び電子コレクタ9には、それぞれMCP用電源10
(Va)及び電子コレクタ用電源11(Ve)が接続さ
れている。また、MCP1の電子出射面6と電子コレク
タ9との間にガスを導入するガス導入管12が真空チャ
ンバ8に設けられている。また、MCP1の電子入射面
4側には、イオンコレクタ13が配置されており、この
イオンコレクタ13にはイオンコレクタ用電源13a
(Vi)が接続されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロチャネル
プレート(以下、場合によりMCPとする)を用いたイ
オン源に関し、特に、MCPで生成された電子で雰囲気
(ガス)をイオン化し、そのイオンをMCPを通して取
り出す、マイクロチャネルプレートを用いたイオン源に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、イオン源の代表的なものとして、
RF(radio frequency)型イオン源、
PIG(penning ionization ga
uge)型イオン源、ビームプラズマ型イオン源、デュ
オプラズマトロンなどがある。これらは、それぞれ独自
の方式によりプラズマを形成し、イオンビームを形成す
る。
【0003】例えば、RF型イオン源は、数十MHzの
マイクロ波の印加によりガスをイオン化する。また、P
IG型イオン源は、冷陰極放電によりプラズマを形成す
る。ビームプラズマ型イオン源では、電子ビームを形成
し、この電子ビームをガス中を走らせることにより、電
子ビームに沿ってプラズマを形成し、電子ビームと逆方
向にイオンビームを取り出す。デュオプラズマトロン
は、フィラメントより放出された電子流によりプラズマ
を形成し、このプラズマよりイオンビームを引き出して
いる。
【0004】さらに、これらとは別に、高温表面に接触
した物質の一部がイオン化して放出される現象(表面電
離)を利用したものや、液体金属(例えばGaなど)を
用いたイオン源などもある。これらのイオン源は、用途
に応じて適宜使い分けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のイオ
ン源では、まずプラズマを形成し、そこからイオンを引
き出している。従って、このイオン引き出しに要する電
極構造から、イオン流はビーム状になる場合が多く、あ
る程度広い範囲に面分布したイオンビーム束を作ろうと
しても、一様なイオンビーム束が得られないという問題
点があった。また、表面電離を利用したイオン源では、
イオンビーム束をある程度広げることはできるが、十分
に広げることはできないという問題点があった。
【0006】そこで本発明は、このような問題点を解決
するためになされたものであり、MCPを用いることに
よって、大面積に亘り一様なイオンビーム束が得られる
イオン源を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載
の発明は、電子入射面及び電子出射面を有するマイクロ
チャネルプレートと、マイクロチャネルプレートの電子
入射面及び電子出射面間に所定の電圧を印加するマイク
ロチャネルプレート用電源と、マイクロチャネルプレー
トの電子出射面側に配置された電子コレクタと、電子コ
レクタに所定の電圧を印加する電子コレクタ用電源と、
マイクロチャネルプレートの電子出射面側にガスを導入
するガス導入手段と、マイクロチャネルプレート及び電
子コレクタを内部に収容し、ガス導入手段が設けられる
と共に、高真空度に維持される真空チャンバとを備えた
イオン源であって、真空チャンバ内に導入されたガスを
マイクロチャネルプレートで生成された電子でイオン化
し、このイオン化されたガスイオンをマイクロチャネル
プレートを介して電子入射面から放出することを特徴と
するマイクロチャネルプレートを用いたイオン源であ
る。
【0008】この発明によれば、導入されたガスをマイ
クロチャネルプレートで生成された電子でイオン化し、
このイオン化されたガスイオンをマイクロチャネルプレ
ートを介して電子入射面から取り出すので、マイクロチ
ャネルプレートと同等の大面積に亘って均一なイオンビ
ーム束を得ることができる。
【0009】請求項2に記載の発明は、ガスの電子によ
るイオン化を、自励発振状態で行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、マイクロチャネルプレートに
光を照射する光照射手段を、さらに備えたことを特徴と
する。請求項4に記載の発明は、マイクロチャネルプレ
ートの電子入射面側に配置されたイオンコレクタと、イ
オンコレクタに所定の電圧を印加するイオンコレクタ用
電源とをさらに備えたことを特徴とする。
【0010】請求項5に記載の発明は、マイクロチャネ
ルプレートに印加される電圧が、1000V〜1600
Vの範囲であることを特徴とする。請求項6に記載の発
明は、電子コレクタに印加される電圧が、50V〜50
0Vの範囲であることを特徴とする。請求項7に記載の
発明は、イオンコレクタに印加される電圧が、+200
00V〜−1500Vの範囲であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、真空チャンバ内に導入される
ガスが、酸素、水素、窒素、希ガス、アルカリ金属蒸
気、金属蒸気、有機化合物及び高分子ガスからなる群か
ら選ばれたガスであることを特徴とする。請求項9に記
載の発明は、真空チャンバ内に導入されるガスの真空度
が、10-3Torr〜102Torrの範囲であること
を特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき、本発明
に係るマイクロチャネルプレートを用いたイオン源の実
施形態について説明する。なお、各図中、同一符号は同
一又は相当部分を示し、重複する説明は省略する。本発
明者らは、大口径イオン源の開発を目的として、微弱光
や荷電粒子の検出器として使用されてきたマイクロチャ
ネルプレート(MCP)の発振モードに注目して研究を
進めてきた。MCPをこの発振モードすなわち、自励発
振状態で動作させると、MCPの片側の面からイオンビ
ームが放出され、MCPの外径と等しいビーム径をもつ
任意の大口径ガスイオンビームを得ることができること
を見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】図1は、本発明の一実施形態によるイオン
源に用いられるMCPを示す概略斜視図である。MCP
1は、微小なチャネルエレクトロンマルチプライア(C
EM)すなわち、チャネル2を数百万本束ねて薄い板状
とした二次元マルチプライアである。それぞれのチャネ
ル2は、内壁を抵抗体とした非常に細いガラスパイプで
構成され、独立した二次電子増倍器を形成している。
【0013】MCP1を低真空中内で高利得で動作させ
ると、イオンフィードバック効果によりSSCM(Se
lf-Sustained Cascade Mode)と
よばれる自励発振という発振状態を起こす。図2は、M
CPのチャネル壁を示す概略断面図である。図2(a)
に示すように、電子入射面4からチャネル2内に入射し
た粒子、放射線又は電子(e-)は、チャネル壁3に衝
突して二次電子が放出される。放出された二次電子5
は、電子出射面6から出射し、電子出射面6の近傍に存
在するガス分子をイオン化して正イオン7例えばアルゴ
ンイオン(Ar+)を生成する。生成した正イオン7
は、図2(b)に示すように、今度は逆に電子出射面6
からチャネル2内に入射し、チャネル壁3に衝突して二
次電子5を生成する。生成された二次電子5は、図2
(c)に示すように、再び電子出射面6から放出され
る。
【0014】この時、正イオンの二次電子放出係数βと
MCPのゲインGとの積で表されるループゲインが1に
達すると、自励発振状態となる。このような発振状態
で、MCP1を動作させると、フィラメント等の電子源
を使用せずにMCP1の片側で電離を起こすことができ
る。従って、図2(d)に示すように、MCP1の外径
にほぼ等しいイオンビーム7aを自動的に得ることがで
きる。
【0015】図3は、本発明の一実施形態によるMCP
を用いたイオン源を示す概略構成図である。図におい
て、高真空度を維持することができるガラス等で作製さ
れた真空チャンバ8内には、MCP1が配置されてお
り、MCP1の電子出射面6側には、電子コレクタ9が
配置されている。これらのMCP1及び電子コレクタ9
には、それぞれMCP用電源10(Va)及び電子コレ
クタ用電源11(Ve)が接続されている。また、MC
P1の電子出射面6と電子コレクタ9との間にガスを導
入するガス導入管12が真空チャンバ8に設けられてい
る。また、MCP1の電子入射面4側には、イオンコレ
クタ13が配置されており、このイオンコレクタ13に
はイオンコレクタ用電源13a(Vi)が接続されてい
る。なお、電子コレクタ9及びイオンコレクタ13は、
ガス放出を極力少なくするため、SUS、Ni、Mo等
の材質で作製することが望ましい。
【0016】本発明によるイオン源は以上のように構成
され、使用するMCP1としては、低抵抗のMCPの方
が、高い出力電子電流を得ることができるため、高抵抗
のMCPよりも望ましい。低抵抗のMCPとしては、1
0MΩ〜100MΩのMCPを使用するのが望ましい。
【0017】また、MCP1に対する印加電圧として
は、1000V〜1600V、より好適には、1000
V〜1200Vとするのが望ましい。このような印加電
圧をMCP1に印加することにより、MCP1の動作
を、イオンフィードバックを仲介とした自励発振状態を
達成することができる。この場合、イオン流束は、MC
P1の抵抗値で決まる一定の周期(周波数)で繰り返し
パルス状に放射される。
【0018】さらに、電子コレクタ9に印加する電圧
は、導入するガスや真空度に依存するが、好適には50
V〜500Vの範囲とするのが望ましい。また、イオン
コレクタ13に印加する電圧は、好適には+20000
V〜−1500Vとするのが望ましい。真空チャンバ8
内に導入されるガスとしては、酸素、水素、窒素、希ガ
ス例えばHe、Ne、アルカリ金属例えばCsの蒸気、
Ga蒸気のように気化し易い金属の蒸気、有機化合物例
えばメタン等のガス及び高分子ガスからなる群から選ば
れたガス等が好適に使用できる。また、導入されたガス
の真空度は、10-3Torr〜102Torr、さらに
好ましくは10-1Torr〜101Torrとするのが
望ましい。
【0019】[実施例]以下、実施例に基づいて、本発
明をさらに詳細に説明する。図4は、本発明の実施例に
よるMCPを用いたイオン源を示す概略構成図である。
図において、MCP1は、低抵抗(42MΩ)のMCP
であり、外径1インチ、チャネル内径10μm、チャネ
ル長−内径比40、開孔率57%、チャネルのバイアス
角度はO゜である。また、導入ガスは、窒素又はアルゴ
ンを使用した。
【0020】このMCP1を真空チャンバ8内に配置
し、MCP1の電子出射面6側には電子コレクタ9を配
置し、電子入射面4側にはイオンコレクタ13を設置し
た。また、出力特性の向上を目的として、MCP1のイ
オン放出面となる電子入射面4に光照射を行った。すな
わち、光源として重水素ランプ14を使用し、この重水
素ランプ14からの光は、レンズ15、ミラー16を通
り、真空チャンバ8の側壁に設けられた窓17を介し、
ミラー18によりMCP1の電子出射面6に導かれる。
【0021】ここで、光照射手段である重水素ランプ1
4によりMCP1に照射される光の光量は、10nW/
cm2〜1μW/cm2の範囲とするのが望ましい。この
範囲内であれば、MCP1から取り出されるイオン流束
の出力特性を向上させることができる。光照射手段は、
UV光や電子ビーム等の照射手段であっても良い。な
お、イオンコレクタ13は、重水素ランプ14からの光
を透過し易いように、メッシュ状となっている。イオン
コレクタ13には、オシロスコープ19が接続されてい
る。ここで、光の照射は、MCP1の電子入射面4側か
ら行っているが、電子出射面6側から行っても良い。
【0022】イオン源の動作は、まず、真空チャンバ8
内を10-5Torr程度の高真空状態に排気した後、ガ
ス導入管12から窒素又はアルゴンを導入して0.09
Torr〜0.11Torr程度に維持した。MCP用
電源10の印加電圧Vaをパラメータとして、MCP1
のストリップ電流Is、電子電流Ie、出力イオン電流
Iiを測定し、SSCMの発生を検出した。また、光照
射を行った場合の効果も検討した。出力イオン電流につ
いては、直流電圧測定の他に、波形の観測も行った。
【0023】図5は、印加電圧Vaとストリップ電流I
s、電子電流Ie、出力イオン電流Iiとの関係を示す
線図である。この図から明らかなように、導入されたガ
スのガス圧を一定に保ち、印加電圧を徐々に増加させる
と、Isは最初はオーミックな特性を示す。しかし、発
振開始電圧(発振閾値電圧)Vthを越えると、Isは急
激な増加を示し、それと同時に電子電流Ie、出力イオ
ン電流Iiが観測され始める。一度発振が開始される
と、印加電圧をVth以下に低下させても発振状態はある
程度まで維持され、ヒステリシスが観測される。
【0024】低抵抗MCPでは、出力電子飽和を起こし
にくいため、Vthは高抵抗MCPに比べて高くなる。図
5では、真空チャンバ8内のガス圧力を上げイオンの生
成効率を高くし、電子コレクタ9及びイオンコレクタ1
3への印加電圧Ve及びViを上げることで、Vthを下
げることができた。また、出力イオン電流Iiは、高抵
抗MCP(例えば2000MΩ)を使用した場合と比べ
ると約60倍多く得ることができた。また、電子電流I
eから出力イオン電流Iiへの変換効率をη:Ii/I
eで表すと、ηは印加電圧に対してほぼ一定であった。
このイオン電流の飽和について、チャネル内の二次電子
の持つエネルギー変化に着目し、動作時のチャネル内の
電位分布についてシミュレーションを行った。
【0025】MCP1がVth以上の飽和動作領域に入る
と、電子の出力端すなわち、電子出射面6の近傍では、
放出二次電子により電界強度が低下し、チャネル2内の
電位分布が変形する。単一CEMについてC.Bouc
hordらの解析によると、発振状態における出力端の
電界強度はさらに減少するため、チャネル2内の電子増
倍度が1となり、飽和領域では実質的なゲインが行われ
ない。またCEMに対して、このチャネル有効長の減少
についてシミュレーションが示されており、この解析法
をMCP1に適用して計算を行った。計算では、MCP
1の特性定数と共に、実験値を規格化したパラメータを
用いている。
【0026】図6は、印加電圧とチャネル有効長につい
ての計算結果を示す線図である。図6に示すように、発
振開始電圧Vthでチャネル有効長は急激に減少し、印加
電圧の増加と共にさらに減少して飽和する傾向を示して
いる。また、印加電圧を下げることでチャネル有効長は
増加し、発振条件を満たせなくなるとチャネル有効長の
減少がなくなることがわかる。
【0027】次に、自励発振状態におけるチャネル内の
電位及び電界変化の計算結果を図7に示す。図7から明
らかなように、飽和領域では電界強度は急激に減少し、
それに伴い電位分布も変化する。飽和領域では、二次電
子は十分なエネルギーを得られず、高エネルギー側の分
布が減少する。このことから、印加電圧を上げた場合、
飽和領域が長くなり、距離がほぼ0.5以上において、
ηは一定に留まると考えられる。
【0028】イオン電流Iiのリターディング電圧Vre
tに対する依存性を図8に示す。リターディング曲線を
微分することによりエネルギー分布が得られる。図から
VretがVaに近づくとIiが減少している。これはイ
オンと残留気体とが衝突することなく、イオンがイオン
コレクタまで到達したことを意味しており、チャネルか
ら放出されたときにイオンのもつエネルギーが保持され
ている。放出イオンが印加電圧付近に分布をもつという
ことは、ほとんどのイオンはMCP1と電子コレクタ間
とで生成され、MCP1のチャネルを通って放出してい
ると考えられる。従って、MCP1のチャネル長−内径
比α(通常40)を考慮にいれると、放出イオンは直線
性の優れたビームとなっていることが予想される。
【0029】そこでイオンコレクタとして、蛍光体を塗
布した透明電極付きのガラス基板を用い、イオンビーム
のパターンを撮影した。蛍光スクリーン上に写ったイオ
ンビームのパターンを示す写真を図9に示す。但し、撮
影は、窒素ガス圧9.0×10-3Torr、Va=13
00V、Ve=90V、Vi=200V、MCPとガラ
ス基板との距離は1cmであった。図9から明らかなよ
うに、ビーム径はMCP1の有効面積(20mmφ)に対
応し、均一性も確認できた。動作状態が変化するとパタ
ーンは多少の広がりをみせるものの、均一性、指向性に
優れたビームを得ることができた。
【0030】次に、MCP1に光照射を行ったときの効
果を確認するために、暗状態、光照射状態でそれぞれ測
定を行った。これらの結果を印加電圧と電流密度との関
係として、それぞれ図10(a)、(b)に示す。光照
射を行った場合には、暗状態のときと比べ発振開始電圧
Vthが約300V低くなっていることがわかる。光照射
することにより、MCP1の端面には暗状態のときより
も多くの電子が存在する。そのため、SSCM状態の開
始に必要な増倍電子が低い印加電圧にも関わらず得るこ
とができる。図5で示したように、本発明によるイオン
源は、印加電圧が低いときほど効率が高い。従って、光
強度の増大によりVthがさらに低下し、高効率化が可能
である。
【0031】MCP1から出力されたイオン電流及び電
子電流の波形をオシロスコープで観測した。結果を図1
1に示す。イオン電流及び電子電流双方ともに周期的な
パルス波形となっており、イオン電流が電子電流に同期
していることがわかる。鋭いパルス波形となるのは、次
のように説明される。すなわち、発振の開始時にはMC
P1の出力端から放出された電子に対応する正の電荷が
MCP1の内部に取り残される。この電荷が後続の電子
を押さえ込むように作用する。そして、チャネル壁3を
流れるストリップ電流Isによって電子が補給され、正
電荷を中和する。この中和までに時間がかかるため、周
期的な波形になる。また、イオン電流が電子電流に同期
しているのは、残留気体がMCP1内で増倍された電子
と衝突することによりイオンが放出されているという一
連の動作を示している。
【0032】次に、出力イオン電流波形の変化を知るた
め、導入ガスであるArガスのガス圧をパラメータとし
たときのピークイオン電流、周期の印加電圧依存性の結
果を図12に示す。印加電圧を増加していくにつれ、ピ
ークイオン電流は大きくなり、周期は減少する。これ
は、それぞれ電離効率及びストリップ電流の増大による
と考えられる。また、Arガス圧を高くするにつれ、M
CP1端面でのAr原子の電離効率が向上しイオン電流
は増大する。
【0033】このように、MCP1のイオンフィードバ
ック効果を利用した自励発振状態である発振モードが確
認でき、均一で、指向性に優れたイオンビームを得るこ
とができた。本発明によるMCPを用いたイオン源の動
作理論から、自励発振状態ではMCPの有効長が制限さ
れ、チャネル内の電位分布が変化していることがわかっ
た。また、出力イオン電流は、電子電流と同期した周期
的なパルス波形を有し、ガス圧、印加電圧に依存する。
本発明によるMCPを用いたイオン源の動作条件、出カ
イオンのエネルギー等を考慮すると、大口径イオン源と
しての利用が可能である。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
導入されたガスをMCPで生成された電子でイオン化
し、このイオン化されたガスイオンをMCPを介して電
子入射面から放出するので、MCPと同等の大面積に亘
って均一なイオン流束を得ることができるという効果を
奏する。また、各チャネルからMCP面に垂直にイオン
が放出されることから、面内の電流密度の均一性も得ら
れる。
【0035】さらに、自励発振状態においてイオンを発
生させれば、フィラメント等の電子源を使用せずにイオ
ンビームを自動的に得ることができる。従って、本発明
によるイオン源は、スパッタリング、露光、ガス反応促
進など種々の用途に利用することができるという効果を
奏する。
【0036】本発明によるMCPを用いたイオン源で
は、イオン流束の大きさは利用するMCPのサイズで決
まるものであり、現在4.5インチ程度まで利用でき
る。形成されるイオン流束は、MCP全面に亘り一様な
イオン密度分布を持つことができる。これは、自励発振
状態すなわち、自己発振モードの場合、自己発振がMC
Pの全面に亘り一様に生ずることによる。また、UV光
又は電子ビームの照射分布を一様にすることにより、一
様で均一なイオンビーム束が得られる。
【0037】この大面積に亘る一様性は、従来技術では
実現できなかった点であり、これにより、例えば直径の
大きなウエハー全面に亘り、一様なイオンスパッターエ
ッチングが可能となり、また、逆のイオンインプラも可
能となる。さらに、本発明によるMCPを用いたイオン
源では、イオン流束は、アスペクト比α=40〜80と
いったチャネルをすり抜けたものから成るため、良くコ
リメートされており平行性が良い。従って、イオンレン
ズ系を用いて、精度の高いフォーカスが可能となる。さ
らに、例えばマスクを通して露光やスパッターを行った
り、イオンインプラを行う場合に都合が良いという効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるイオン源に用いられ
るMCPを示す概略斜視図である。
【図2】MCPのチャネル壁を示す概略断面図である。
(a)は、MCPのチャネルから二次電子が放出された
状態、(b)は、二次電子によりイオン化されたアルゴ
ンイオンがMCPのチャネル内に入射する状態、(c)
は、MCPのチャネル内に入射したアルゴンイオンから
再び二次電子が放出される状態、及び(d)は、放出さ
れた二次電子によりイオン化されたアルゴンイオンが再
びMCPのチャネル内に入射する状態をそれぞれ示す。
【図3】本発明の一実施形態によるMCPを用いたイオ
ン源を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施例によるMCPを用いたイオン源
を示す概略構成図である。
【図5】印加電圧とストリップ電流、電子電流及び出力
イオン電流との関係を示す線図である。
【図6】印加電圧とチャネル有効長についての計算結果
を示す線図である。
【図7】自励発振状態におけるチャネル〜の電位及び電
界変化の計算結果を示す線図である。
【図8】イオン電流のリターディング電圧に対する依存
性を示す線図である。
【図9】蛍光ディスプレー上に表示した中間調画像を表
した写真である。
【図10】MCPに光照射を行わなかった場合及び行っ
た場合の印加電圧と電流密度との関係を示す線図であ
る。(a)は、MCPに光照射を行わなかった場合、及
び(b)はMCPに光照射を行った場合をそれぞれ示
す。
【図11】MCPから出力されたイオン電流及び電子電
流の波形を示す線図である。
【図12】アルゴンガスのガス圧をパラメータとした時
のピークイオン電流及び周期と印加電圧との関係を示す
線図である。
【符号の説明】
1…マイクロチャネルプレート(MCP)、2…チャネ
ル、3…チャネル壁、4…電子入射面、5…二次電子、
6…電子出射面、7…正イオン、7a…イオンビーム、
8…真空チャンバ、9…電子コレクタ、10…MCP用
電源、11…電子コレクタ用電源、12…ガス導入管、
13…イオンコレクタ、13a…イオンコレクタ用電
源、14…重水素ランプ、15…レンズ、16,18…
ミラー、17…窓、19…オシロスコープ。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子入射面及び電子出射面を有するマイ
    クロチャネルプレートと、 前記マイクロチャネルプレートの前記電子入射面及び前
    記電子出射面間に所定の電圧を印加するマイクロチャネ
    ルプレート用電源と、 前記マイクロチャネルプレートの前記電子出射面側に配
    置された電子コレクタと、 前記電子コレクタに所定の電圧を印加する電子コレクタ
    用電源と、 前記マイクロチャネルプレートの前記電子出射面側にガ
    スを導入するガス導入手段と、 前記マイクロチャネルプレート及び前記電子コレクタを
    内部に収容し、前記ガス導入手段が設けられると共に、
    高真空度に維持される真空チャンバとを備えたイオン源
    であって、 前記真空チャンバ内に導入されたガスを前記マイクロチ
    ャネルプレートで生成された電子でイオン化し、このイ
    オン化されたガスイオンを前記マイクロチャネルプレー
    トを介して前記電子入射面から取り出すことを特徴とす
    るマイクロチャネルプレートを用いたイオン源。
  2. 【請求項2】 前記ガスの前記電子によるイオン化を、
    自励発振状態で行うことを特徴とする請求項1記載のマ
    イクロチャネルプレートを用いたイオン源。
  3. 【請求項3】 前記マイクロチャネルプレートに光を照
    射する光照射手段を、さらに備えたことを特徴とする請
    求項1又は2に記載のマイクロチャネルプレートを用い
    たイオン源。
  4. 【請求項4】 前記マイクロチャネルプレートの前記電
    子入射面側に配置されたイオンコレクタと、 前記イオンコレクタに所定の電圧を印加するイオンコレ
    クタ用電源とをさらに備えたことを特徴とする請求項1
    〜3のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレート
    を用いたイオン源。
  5. 【請求項5】 前記マイクロチャネルプレートに印加さ
    れる電圧は、1000V〜1600Vの範囲であること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイ
    クロチャネルプレートを用いたイオン源。
  6. 【請求項6】 前記電子コレクタに印加される電圧は、
    50V〜500Vの範囲であることを特徴とする請求項
    1〜5のいずれか1項に記載のマイクロチャネルプレー
    トを用いたイオン源。
  7. 【請求項7】 前記イオンコレクタに印加される電圧
    は、+20000V〜−1500Vの範囲であることを
    特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のマイク
    ロチャネルプレートを用いたイオン源。
  8. 【請求項8】 前記真空チャンバ内に導入されるガス
    は、酸素、水素、窒素、希ガス、アルカリ金属蒸気、金
    属蒸気、有機化合物ガス及び高分子ガスからなる群から
    選ばれたガスであることを特徴とする請求項1〜7のい
    ずれか1項に記載のマイクロチャネルプレートを用いた
    イオン源。
  9. 【請求項9】 前記真空チャンバ内に導入されるガスの
    真空度は、10-3Torr〜102Torrの範囲であ
    ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載
    のマイクロチャネルプレートを用いたイオン源。
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