JP2951794B2 - 調心装置及びその計測機構較正方法 - Google Patents

調心装置及びその計測機構較正方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、回転軸に対する軸受
の心出しを高精度に行い組立てられるようにした、調心
装置及びその計測機構較正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、圧縮機や電動機などの回転軸と
保持機構を組立てる場合、シリンダや固定子枠などの筒
体の両端開部に取付ける軸受の中心と、筒体を貫通する
回転軸の軸心を一致させる必要がある。これが一致しな
いと、軸受部における機械損が大きくなり、回転機械の
性能が低下する。特に、ロータリ圧縮機やスクロール圧
縮機においては、軸受に対するラジアル荷重が大きいの
で、軸受には通常すべり軸受が用いられるが、上記のよ
うな軸受の中心と回転軸の軸心が一致していないと、軸
受部の焼付きに至ることがある。
【0003】このような回転軸に対する軸受部の調心装
置として、従来、例えば特開昭57−71737号公報
や特開昭57−71739号公報に示された、ロータリ
圧縮機の調心装置がある。図5は特開昭57−7173
7号公報に示された従来の調心装置の概略構成図であ
る。図において、第1の軸受部10を固着した主軸受体
6と、第2の軸受部19を固着した副軸受体18とを、
それぞれ第1のXYテーブル3と第2のXYテーブル2
2とに水平に保持するとともに、軸受部10、19に挿
通される回転軸12を支持機構13によって垂直に保持
している。第1のXYテーブル3は第1のベース1上に
可動に支持され、第2のXYテーブル22は第2のベー
ス21の下面に可動に支持されている。11は回転軸1
2に設けられた偏心カムで、圧縮ローラ8aがはめられ
ている。9はシリンダで、圧縮ローラ8aとの間に圧縮
室8を形成している。上記軸受部10、19と回転軸1
2との接触を検出するセンサ27、28、29、30の
信号により、上記第1、第2のXYテーブル3、22を
制御するとともに、そのときの第1、第2のXYテーブ
ル3、22の座標を位置検出器31、32で検出するよ
うにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の調
心装置では、回転軸12に対する軸受部10、19の心
出しを高精度に行うためには、次の条件が不可欠であ
る。(1)回転軸12を保持した支持機構13の保持剛
性が十分高いこと。(2)第1、第2のXYテーブル
3、22によって保持された主軸受体6と副軸受体18
とが、支持機構13によって保持された回転軸12に対
して高い精度で直交すること。
【0005】上記課題の条件(1)は、ロータリ圧縮機
のように第1の軸受部10と第2の軸受部19の距離が
短い場合には、比較的容易に実施できる。しかし、電動
機回転子を固着した回転軸の両端を2つの軸受で支持す
る構造の、スクロール圧縮機のような場合には、回転軸
の保持できる部分、すなわち、両軸受の外に出た部分が
小さく、支持機構で回転軸を高い保持剛性で保持するの
は難しい。したがって、従来の調心装置は、2つの軸受
の距離が長い回転軸の軸受の心出しを高精度に行うこと
ができないという問題点があった。
【0006】上記課題の条件(2)は、対象ワーク、す
なわち、主軸受体6、副軸受体18、回転軸12の形状
精度が十分高精度であること、機械精度、すなわち、支
持機構13、第1、第2のXYテーブル3、22による
主軸受体6と副軸受体18の保持再現性が十分高精度で
あることが必要である。しかし、実際の生産現場では、
環境温度を精度高く一定に保つことは、経済上の点から
難しく、機械精度を長期にわたって高精度に維持するこ
とは難しいという問題点があった。また、ワークの保持
再現性には摩擦係数のばらつきなどにより、精度的限界
がある。
【0007】この発明は上記のような問題点を解決する
ためになされたもので、(1)2つの軸受の距離が長い
回転軸の軸受部の心出しを高精度に行うことができ、
(2)環境温度が変化しても高精度な調心機能を維持で
き、(3)ワークの保持再現性が高くなくても高精度な
調心が行えるようにした、調心装置及びその計測機構較
正方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明にかかる調心装
置は、水平に固定された架台と、主軸受体を水平に保持
した載置台と、この載置台を鉛直に昇降させる昇降機構
と、上記載置台の上昇状態での上記架台に対する位置姿
勢を一時的に固定する載置台固定機構と、副軸受体を保
持するチャック機構と、このチャック機構を水平面内で
移動させるXYステージと、副軸受体を固定するボルト
を回転させ締付けるボルト締付け機構と、上記載置台の
上昇固定状態での上記架台に対する位置姿勢を計測する
載置台計測機構と、載置保持された主軸受体の載置台に
対する位置姿勢を計測する主軸受体計測機構と、主軸受
体を保持した載置台の上昇固定状態において、副軸受体
の架台に対する位置姿勢を計測する副軸受体計測機構
と、上記載置台計測機構、主軸受体計測機構及び副軸受
体計測機構の計測値情報を基に、主軸受体に対する副軸
受体の位置姿勢を演算し、主軸受体に対する副軸受体の
位置姿勢が所定の値になるように、上記XYステージの
動作を制御するとともに、昇降機構、載置台固定機構、
チャック機構及びボルト締付け機構の動作をシーケンス
制御する制御装置とを設けたものである。
【0009】また、この発明による調心装置の各計測機
構の較正方法は、製作された主、副軸受体を有する保持
機構のうちの1台、又はこの保持機構を模擬製作したも
ので、あらかじめ、主軸受と副軸受体との位置姿勢関係
が分かっているものを基準ゲージとして用い、この基準
ゲージを装置に組込んだ状態での、主軸受体に対する副
軸受体の位置姿勢の演算値が、上記基準ゲージの主軸受
体に対する副軸受体の位置姿勢の値と一致するように、
載置台計測機構、主軸受体計測機構及び副軸受体計測機
構の計測値のゼロ点を較正するものである。
【0010】
【作用】この発明においては、主軸受体に対する副軸受
体の位置姿勢を直接計測し、調心するようにしており、
スクロール圧縮機のような2つの軸受の距離が長い回転
軸の軸受の心出し調整が、高精度に行われる。
【0011】また、主軸受体とこの主軸受体を保持する
載置台との位置姿勢関係を主軸受体計測機構で、載置台
と架台との位置姿勢関係を載置台計測機構で、チャック
機構に保持された副軸受体の架台に対する位置姿勢関係
を副軸受体計測機構でそれぞれ計測するので、ワークの
保持再現性が高くなくても、高精度な調心が行える。
【0012】さらに、この発明における調心装置の各計
測機構は、基準ゲージによって較正する。すなわち、比
較計測法で計測をするので、環境温度が変化して装置が
熱変形しても、作業対象の主、副軸受体を保持した保持
機構と、基準ゲージとが同じ環境に置いてあれば、各計
測機構の較正を周期的に行うことにより、高精度な調心
機能を維持できる。
【0013】
【実施例】図1ないし図3はこの発明の一実施例による
調心装置を示し、図1は計測系、図2は調整系、図3は
ボルト締め系をそれぞれ示す断面図であり、被調心機と
してスクロール圧縮機の場合を示す。図1において、4
0は電動機の回転子41を固着した回転軸、42はシェ
ルをなす筒体43に固定された電動機の固定子、44は
筒体43の下方側内に焼ばめなどで固着された主軸受体
で、軸受部45を介し回転軸40の下部軸端を半径方向
に支持する。46は筒体43の上方側内に溶接などで固
着された支持部、47はこの支持部46に取付けられる
副軸受体で、軸受部48を介し回転軸40の上部軸端を
半径方向に支持する。上記筒体43、主軸受体44、支
持部46及び副軸受体47とで、保持機構49をなして
いる。
【0014】次に、50は水平に固定された架台、51
は主軸受体44を筒体43を介しクランプ機構52によ
って水平に保持する載置台で、架台50の底部に固定さ
れた、空気圧シリンダなどからなる昇降機構53により
昇降される。載置台51の内部には、載置台51上に保
持された主軸受体3の、載置台51に対する位置を計測
するための3本の電気マイクロメータ54及び姿勢を計
測するための3本の電気マイクロメータ55を備えてあ
る。これら電気マイクロメータ54及び55で主軸受体
計測機構56を構成している。載置台51は最上昇位置
では載置台51に設けられた突起部57が、架台50に
設けられた突起受部58に当接し、載置台51の上昇状
態での架台50に対する位置姿勢は一時的に固定され
る。これら昇降機構53による載置台51の上昇押付け
と、突起部57の突起部58への当接手段で、載置台固
定機構59をなしている。60は載置台51の上昇状態
での架台50に対する位置を計測する3本の電気マイク
ロメータで、載置台計測機構61を構成する。62は架
台50に支柱などで固定された天板で、副軸受体47の
架台50に対する位置を計測するための3本の電気マイ
クロメータ63及び姿勢を計測するための3本の電気マ
イクロメータ64が固定されている。これら電気マイク
ロメータ63、64で副軸受体計測機構65を構成して
いる。
【0015】制御装置(図示しない)は、上記各計測機
構56、61、65の計測値情報を基に、主軸受体44
に対する副軸受体47の位置姿勢を演算する。
【0016】この演算について、図4を用いて説明す
る。図4は本実施例における調心装置の計測系を模式的
に示した図である。72は保持機構49を模擬して製作
された基準ゲージで、主軸受体73及び副軸受体74を
備えており、この主軸受体73に対する副軸受体74の
位置姿勢関係は、あらかじめ、3次元測定機で測定する
ことによって分かっている。図4において、各記号の意
味は次のとおりである。 {b} :架台50に設定した座標系 {mj}:載置台51に設定した座標系 {jq}:載置台計測機構61のゼロ点に設定した座標
系 {mq}:主軸受体計測機構56のゼロ点に設定した座
標系 {sj}:天板62に設定した座標系 {sq}:副軸受体計測機構65のゼロ点に設定した座
標系 {wm}:保持機構49の主軸受体44に設定した座標
系 {ws}:保持機構49の副軸受体47に設定した座標
系 {rm}:基準ゲージ72の主軸受体73に設定した座
標系 {rs}:基準ゲージ72の副軸受体74に設定した座
標系 ここで、2つの座標系{a}と{b}の間の位置姿勢関
係をabで表わす。このabは、{a}に対する{b}
の位置姿勢を表わす4×4の同次変換行列である。
【0017】回転軸40部及び保持機構49部を本装置
に組込んだ状態での、各座標系の関係は次の式で表わさ
れる。 bjqjqmjmjmqmqwmwmwsbsjsjsqsqws…(1) 一方、基準ゲージ72を本装置に組込んだ状態での、各
座標系の関係は次の式で表わされる。 bjqjqmjmjmqmqrmrmrsbsjsjsqsqrs…(2) ここで、各同次変換行列の特性は次のとおりである。bjq:任意設定可能 jqmj:計測値
mjmq:任意設定可能mqwm:計測値 wmws:求める演算解
bsj:一定(未知)sjsq:任意設定可能 sqws:計測値
mqrm:計測値rmrs:一定(既知) sqrs:計測値
【0018】まず、基準ゲージ72を本装置に組込んだ
状態で、各計測機構のゼロ点を次のように較正する。す
なわち、 b jq mjmqsjsqを次の式を満たすよ
うに決定する。bjqjqmj = I …(3)mjmqmqrm = I …(4)bsjsjsqsqrsrmrs …(5) ここで、Iは4×4の単位行列である。式(1)〜
(5)を連立させて解けば、求めるwmwsは次の式で表
わせる。 wmws=(mqwm-1mqrmrmrs・(sqrs-1sqws …(6) ここで、(T)-1はTの逆行列である。
【0019】すなわち、求めるwmwsが、計測値と既知
の一定値とだけで表現できることが分かる。このこと
は、回転軸40部及び保持機構49部を本装置に組込む
際に、主軸受体44と載置台51の位置姿勢関係mjwm
や、架台50に対する載置台51の位置姿勢関係bmj
が、ワークごとに変化してもよいことを示している。ま
た、各計測機構56、61、65の取付位置関係は、一
定でありさえすればよく、特別に高精度な機械的位置調
整を行う必要がない。さらに、本装置の環境温度が変化
して装置が熱変形し、例えば、bsjの値が変化して
も、再度基準ゲージ72を用いて各計測機構の較正を行
えばよいことが分かる。
【0020】次に、図2により本実施例における調心装
置の調整系について説明する。図において、66は副軸
受体47を保持するチャック機構で、チャック爪67、
加圧ピン68を備えている。69はこのチャック機構6
6を水平面内で移動させるXYステージで、上記制御装
置によって、主軸受体44に対する副軸受体47の位置
姿勢関係が所定の値になるようにシーケンス制御され
る。ここで、前述した計測系は調整動作中も機能し、主
軸受体44に対する副軸受体47の位置姿勢が常時演算
されている。
【0021】つづいて、図3により本実施例における調
心装置のボルト締め系について説明する。図において、
70は先端部にボルト71の頭に対応したビットを備
え、駆動電動機(図示しない)に連結されたボルト締付
け機構である。前述の調整作業が完了した後、制御装置
によるシーケンス制御で、ボルト締付け機構70によっ
てボルト71を回転させ締付け、副軸受体47を支持部
46に締結する。
【0022】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、主軸
受体に対する副軸受体の位置姿勢を直接計測し、調心す
るようにしたので、スクロール圧縮のような2つの軸受
の距離が長い回転軸の軸受部の心出しが高精度に容易に
行われる。
【0023】また、この発明によれば、主軸受体と、こ
の主軸受体を保持する載置台との位置姿勢関係を主軸受
体計測機構により、載置台と架台の位置姿勢関係を載置
台計測機構により、チャック機構に保持された副軸受体
の架台に対する位置姿勢関係を副軸受体計測機構によ
り、それぞれ計測するようにしたので、ワークの保持再
現性が高くなくても高精度な調心がなされる。
【0024】さらに、この発明によれば、調心装置の各
計測機構は、基準ゲージによって較正する、すなわち、
比較計測法で計測を行うので、環境温度が変化し装置が
熱変形しても、作業対象のワークと基準ゲージが同じ環
境に置いてあれば、各計測機構の較正を周期的に行うこ
とによって高精度な調心機能が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による調心装置の計測系を
示す断面図である。
【図2】図1の調心装置の調整系を示す断面図である。
【図3】図1の調心装置のボルト締め系を示す断面図で
ある。
【図4】図1の計測系による計測値情報で制御装置によ
る演算を説明する模式図である。
【図5】従来の調心装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
40 回転軸 44 主軸受体 46 支持部 47 副軸受体 49 保持機構 50 架台 51 載置台 52 クランプ機構 53 昇降機構 56 主軸受体計測機構 59 載置台固定機構 61 載置台計測機構 65 副軸受体計測機構 66 チャック機構 69 XYステージ 70 ボルト締付け機構 71 ボルト 72 基準ゲージ 73 主軸受体 74 副軸受体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B23P 19/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸を支持する保持機構の主軸受体と
    副軸受体の心出しを行う調心装置において、 固定された架台と、この架台に配置され上記主軸受体を
    水平に保持した載置台と、この載置台を鉛直に昇降させ
    る昇降機構と、上昇状態での上記載置台の上記架台に対
    する位置姿勢を一時的に固定する載置台固定機構と、上
    記副軸受体を保持するチャック機構と、このチャック機
    構を水平面内で移動させるXYステージと、副軸受体を
    上記保持機構の支持部に取付けるボルトを締付け回転さ
    せるボルト締付け機構と、上昇固定状態での上記載置台
    の上記架台に対する位置姿勢を計測する載置台計測機構
    と、上記載置台に保持された主軸受体の載置台に対する
    位置姿勢を計測する主軸受体計測機構と、上記主軸受体
    を保持した載置台の上昇固定状態において副軸受体の上
    記架台に対する位置姿勢を計測する副軸受体計測機構
    と、上記載置台計測機構、主軸受体計測機構及び副軸受
    体計測機構の計測値情報を基に、主軸受体に対する副軸
    受体の位置姿勢を演算し、この主軸受体に対する副軸受
    体の位置姿勢が所定の値になるように、上記XYステー
    ジの動作を制御するとともに、上記昇降機構、載置台固
    定機構、チャック機構及びボルト締付け機構の動作をシ
    ーケンス制御する制御装置とを備えたことを特徴とする
    調心装置。
  2. 【請求項2】 回転軸を支持する主軸受体と副軸受体と
    を設けた保持機構を模擬して作られ、あらかじめ主軸受
    体と副軸受体との位置関係が分かっているものを基準ゲ
    ージとし、 架台に配置された載置台に上記基準ゲージを保持し、載
    置台を昇降機構で上昇固定し、上記主軸受体に対する副
    軸受体の位置姿勢の制御装置による演算値が、上記基準
    ゲージの主軸受体に対する副軸受体の位置姿勢の値と一
    致するように、上昇固定状態での、上記載置台の架台に
    対する位置姿勢を計測する載置台計測機構と、保持され
    た主軸受体の載置台に対する位置姿勢を計測する主軸受
    体計測機構と、副軸受体の架台に対する位置姿勢を計測
    する副軸受計測機構の各計測値のゼロ点を較正すること
    を特徴とする調心装置の計測機構較正方法。
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