JP2948246B2 - リポソーム類 - Google Patents

リポソーム類

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JP2948246B2 JP1511013A JP51101389A JP2948246B2 JP 2948246 B2 JP2948246 B2 JP 2948246B2 JP 1511013 A JP1511013 A JP 1511013A JP 51101389 A JP51101389 A JP 51101389A JP 2948246 B2 JP2948246 B2 JP 2948246B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、外部表面に共有結合的に結合しているポリ
エチレングリコール(PEG)部分を有しているリポソー
ム類に関する。
循環中のリポソーム類の半減期を長くするための数多
くの方法が探求されてきた。方法の中には、Allen T.M.
他、Biochim.Biophys.Acta 818:205−210に記述されて
いるように、脂質二重層中へのガングリオシド類の組込
み、そしてGosh P.およびBachawat B.K.、Biochim.Biop
hys.Acta 632:562−572に記述されているように、グリ
コシド類のような分子でリポソームの表面を覆うこと、
そしてSenior J.著、「治療学的薬剤担体におけるCRC評
論」“CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Car
riers"3:123−193(1987)に記述されているようなポロ
キサマー類(poloxamers)が含まれる。
しかしながら、ベシクル類を架橋させることなくそし
てベシクルに実効電荷を与えることなく、水系の溶質を
定量的に保持しながら、リポソーム類(これらが、小さ
い単一薄板のベシクル類または多層板のベシクル類、或
は限定された大きさを有する大きな単一薄板のベシクル
類であろうと)の表面親水性を向上させる技術が必要と
されている。
Unger他、Radiology,171 81−85(1989)およびTilco
ck他、Radiology,171 77−80(1989)に記述されている
Gd−DTPAのような、磁気共鳴画像に関する循環寿命特性
を改質するためのリポソーム類の使用において、特殊な
問題が生じている。かん流剤としての使用に関しては、
リポソームのGd−DTPAの循環寿命を伸ばすことが望まれ
ている。
一度、静脈内に投与されると、リポソーム類は、血漿
の蛋白質(例えば、HDL)および細網内皮系(RES)との
数多くの相互作用を受け、この結果、該循環からのベシ
クル類の不安定化とクリアランスをもたらす。該循環中
のベシクルの安定性を改良するために、今日まで利用さ
れてきた方法は、コレステロールまたは糖脂質の如きス
テロール類をベシクル類のリピッド組織内に組み込むこ
とであった。この両方の方法の欠点は、該ステロールま
たは他の高相転移リピッドが水に対するベシクル膜の透
過性を減少させ、そのことによって、捕捉されたGd−DT
PAに関するリラックス性(relaxivity)が減少し、従っ
て、コントラスト剤としてのそれの有効性が低下するこ
とが示されたことである。
我々は、驚くべきことに、リピッドの二重層を崩壊す
ることなしにリポソーム類の外部表面にPEGを共有結合
的に結合させると、このリポソーム類の循環寿命が引き
伸ばされ得ることを見い出した。
従って、本発明は、外部表面で共有結合的に結合して
いるPEG部分を有するリポソーム類を提供する。
好適には、このPEG部分は、リポソームを形成する少
なくとも1種のリン脂質種の頭基中のアミノ基に対して
結合している。この頭基中にアミノ基を有している適切
なリン脂質には、ホスファチジルエタノールアミン(P
E)およびホスファチジルセリン(PS)が含まれる。
このリポソーム類は、リン脂質種の少なくとも1つが
PEGと結合するための適切な頭基を有していることを条
件として、いかなる適切なリン脂質またはリン脂質混合
物(これらの多くは文献中で既に公知である)から形成
されていてもよい。このリポソーム類内の空間はいかな
る通常の水系の相を含有していてもよく、そしてこのリ
ポソーム類は、水系の懸濁液として、或は他のいかなる
通常の調剤として、例えば薬学的に許容される担体また
は希釈剤を含んでいてもよい薬学的調剤として、例えば
静脈内投与のための調剤とし、与えられてもよい。好適
な担体には、任意に補助材料、例えば緩衝液、防腐剤、
抗酸化剤および等浸透圧性の塩類を含有している注射用
無菌水が含まれる。
好適には、このリポソーム類は、押し出しで製造され
た大きな単一薄板のベシクル類(LUVettes)であり、よ
り好適にはジオレイルホスファチジルコリンとジオレイ
ルホスファチジルエタノールアミンとのモル比が7:3〜
5:5のリピッド二重層であり、最も好適には、このリポ
ソーム類は水系のGd−DTPAを含有している。
本発明は更に、ポリエチレングリコールの反応性を示
す誘導体、好適には2,2,2−トリフルオロエタンスルホ
ニル(トレシル)モノメトキシPEGでリポソーム類を処
理することを含む方法を提供する。トレシルモノメトキ
シPEG(TMPEG)およびその製造は、我々の共出願中の英
国出願番号8824591.5に記載されている。
好適には、反応性を示すPEG誘導体とリポソーム類と
の反応は、周囲温度または生理学的温度の水溶液中で行
われる。この反応は、中性に近いpH、例えば生理学的緩
衝液中で生じるが、pH9〜10でより速くそしてより広範
である。リポソーム類に対する反応性PEG誘導体の比率
を調節することによって、該リポソーム類と結合するPE
G部分の数が調節できる。
ポリ(エチレングリコール)(PEG)は、エチレンオ
キサイド繰り返し単位から成る2つの末端ヒドロキシル
基を有する水溶性のポリマー: HO(CH2CH2O)nCH2CH2OH である。PEG類はそれらの分子量で種類分けされ、従っ
て、例えばPEG6000は約6000の分子量を有しており、そ
してnは約135である。
PEG類を、種々の化学的方法により蛋白質に共有結合
的に結合させることができる。我々は、モノメトキシPE
G5000(MPEG)の単一の遊離ヒドロキシル基を活性化さ
せるためにトレシルクロライド(2,2,2−トリフルオロ
エタンスルホニルクロライド)を用いたが、他のトレシ
ルハライド類およびMPEGの他の反応性を示す誘導体も使
用できる。カップリング段階で架橋したリピッド類を作
り出すところの、両末端が活性化されたPEGを生じさせ
る可能性は、PEGのその他のヒドロキシル基を反応性を
示さないメチルエーテルとして「ブロックする」ことに
よって避けられる。
リン脂質類ホスファチジルエタノールアミン(PE)お
よびホスファチジルセリン(PS)は、極性の頭基中に遊
離アミノ基を有している。水溶液中、リン脂質は離液メ
ソモオルフィズム(mesomorphism)を示し:大部分のリ
ン脂質は、リピッドの二重層(リポソーム類)を含む閉
鎖されたベシクル構造を有している。PEは、独立してい
るときHII相を有しているが、ホスファチジルコリン(P
C)との混合物中では二重層構成を有している。我々
は、外側と内側の表面の両方が暴露されているPEのアミ
ノ基を有するリピッドベシクルを得るため、PE/PC混合
物からリポソームを調製した。外側のPE分子のみがトレ
シル−PEGに近づくことができ、それゆえ、修飾は非対
称である。
リポソーム表面に結合しているPEGの量は、リピッド
の組成、ポリエチレングリコールの反応性誘導体とアミ
ノ基含有頭基を有するリン脂質との比率、反応時間、お
よびpHを変化させることによって調節できる。例えばリ
ピッド二重層の統合性の崩壊のためのマーカーとして、
捕捉されている色素の放出を用いた体系的な研究、並び
に、例えば静脈内投与した後のマウスの血流中の処理さ
れたリピッドの半減期を監視することによって、最適な
製造方法が得られる。
循環中に注入された未処理リポソームの主な運命は、
大きさに拘らず、肝臓のクッパー細胞による取り込みお
よび脾臓中の固定された大食細胞による取り込みであ
る。細胞内皮系(RES)によるこのような取り込みは、
生物学的活性分子のゆっくりとした徐放のためおよびRE
S組織以外の処理のための貯蔵場所の形成の如き用途に
おけるリポソーム類の適用性を制限している。PEG部分
を外部表面上に導入するため、本発明に従ってリポソー
ム類を処理すると、驚くべきことに、血清とリポソーム
との相互作用が減少し、そして驚くべきことに、静脈内
投与した後の循環寿命が向上する。
本発明の、PEGを有するリポソーム類の特に好適な使
用は、Gd:ジエチレントリアミンペンタセディックアシ
ッド(diethylenetriamine pentacedic acid)のキレー
トの如きMR画像剤の放出に関するものである。
本発明は更に、例えば薬のための、そして磁気共鳴画
像(MR)用のコントラスト剤のための放出手段として、
ヒトまたは動物体に対して行われる治療学的および診断
上の方法において、リポソームの外部表面に結合してい
るPEG部分を有するリポソーム類の使用を提供する。本
発明は、ヒトまたはヒト以外の動物に必要な診断上もし
くは治療上の薬剤を含む、有効で無毒量の、上記PEG含
有リポソーム類の静脈内投与から成る治療または診断方
法を提供する。
本発明を、付随する図面から成る図によってここに説
明するが、ここで、図1はマウス中の循環からのPEG化
したSUVsおよび未PEG化SUVsに関するクリアランスの比
較を示す。
図1A: PEG化したか( )、或は未処理( )の、組成
がDSPC:PE:コレステロール(モル比0.4:0.1:0.5)のSUV
sをマウスに静脈注射した(0.4mg/25gマウス)。CF(投
薬量±se、5匹)の血液レベルを示す;3Hリン脂質のク
リアランスは同じであった(示していない)。
図1Bおよび1C: SUVの製造に関して、大きなベシクルを
除去するため100,000gで1時間遠心分離を行い、そして
注射の量が0.8mg/25gマウスである以外は図1Aの条件と
同じ。CF(図1B)クリアランスと3Hリン脂質クリアラン
ス(図1c)の両方は、PEG化( )および未PEG化( )
ベシクルに関して示した。
本発明を下記の実施例でここに説明する。
実施例1〜10 PEG化リピッドベシクルの製造 A.活性化トレシル−MPEGの製造 塩基性触媒としてピリジンを用いて、室温で、ジクロ
ロメタン中の乾燥モノメトキシPEG5000(これはUnion C
arbideから入手可能)をトレシルクロライド(2,2,2−
トリフルオロエタン−スルホニルクロライド)(これは
Flukaから入手可能)で処理することによってトレシル
化モノメトキシPEG(TMPEG)が得られた。ジクロロメタ
ンを減圧下除去した後、得られる固体をメタノールHCl
混合物(1000mL当たり0.3mLの濃HCl)に溶解し、そして
−20〜0℃で再沈澱させた。固体を遠心分離で単離し、
サンプル中にピリジンがなくなるまで(255nmで検出)
この操作を繰り返した後、酸がなくなるまでこの固体を
メタノールから再沈澱させた。
B.リピッドのベシクル表面のPEG化 得られるTMPEGとリピッドのベシクルとを、緩衝液中
室温で反応させた(以下を参照)。該ベシクルの外部表
面へのMPEGのMPEG共有結合付着は、Tilcock他、Biochi
m.Biophys.Acta 979:208−214(1989)の方法と同様の
方法による、PEGとデキストランとの水系の二相系中の
ベシクルの分配挙動における変化で明らかに示される。
この相系の組成は、該ベシクルが上部のPEG豊富相中へ
の低い分配度を示し;ベシクルが接触面に存在している
か、或はMPEGの底部のデキストラン豊富相中に存在する
ように調整した。ベシクルの表面へのMPEGの付着は、そ
れらをより「PEGらしく」(該PEG豊富相によって、それ
らの湿潤化が増大する)し、そしてそれらは上部相に分
配される。
実施例1 MLVs(多層板ベシクル類)のPEG化 20%(w/w)の卵ホスファチジルエタノールアミン(E
PE)と80%(w/w)の卵ホスファチジルコリン(EPE)と
14C EPCとを含有している多層板ベシクルを、0.05Mの燐
酸ナトリウム緩衝液、pH7.5(PBS)を含有している0.12
5MのNaCl中、10mgの全リピッド/mLに調製した。ベシク
ルの0.1mLのサンプルを、PBS中で調製したTMPEGの溶液
(最終濃度0−170mg/mL)と一緒に、室温で2時間保温
した。0.01Mの燐酸ナトリウム、pH6.8を含有している0.
15MのNaCl中、5%(w/w)のPEG6000と5%(w/w)のDe
xtran T500から成る相系の二相系(1mLの上部相と1mLの
底部相)にサンプル(0.05mL)を加え、この系を混合
し、そして混合(全体)後直ぐの混合物から採取したサ
ンプル、そして相分離が完了した後(20分)の上部相お
よび底部相から採取したサンプルの放射能を測定するこ
とで、サンプルを分配させた。
表1の結果は、リポソームをTMPEGに暴露すること
で、PEGが豊富な上部相へのそれらの分配が増大するこ
とを示している。このことは、おそらくは、EPEのアミ
ノ基への共有結合的付着により、PEGがリポソームに付
着してきたことを示している。
TMPEGがなんらかの効果を有するためには、ベシクル
中にPEが存在していることが必要とされる。100%のEPC
から成るMLVsをTMPEGで2時間処理した後、0.01Mの燐酸
ナトリウム、pH6.8で緩衝させた0.15MのNaCl中の5%/5
%PEG6000−Dextran T500系中で分配させたとき、乾燥
液で処理したMIVsに比べていかなる差異も見られなかっ
た(表2)。
TMPEGの活性は保存中に減少する。蛋白質をPEG化する
能力を失ったサンプルは、EPEを含有しているリポソー
ムの分配に対していかなる効果も有していないことを見
い出した。この観察は、ベシクル類を含有している非PE
を生じさせるTMPEGのこの無能力と共に、TMPEGが特にPE
に対して付着しておりそして変化した分配化は、ベシク
ル表面に対するTMPEGの吸着から生じたものでないこと
を支持している。
実施例2 SUVs(小さい単一薄板ベシクル類)のPEG化 モル比が0.8:0.2:1のジステアロイルホスファチジル
コリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノ
ールアミン(DPPE)およびコレステロールから成るSUVs
を、トレーサー3H−DPPC(30mgのリン脂質当たり6x106d
pm)を用いて、Senior J.他、Biochim.Biophys.Acta 83
9:1−8(1985)の方法で調製した;ここで、2mLのPBS
(0.05Mの燐酸ナトリウム緩衝液、pH8.5で緩衝させた0.
125MのNaCl)中で、25mgのDSPC、5.5mgのDPPEおよび15m
gのコレステロールを水和させた。連成反応および次の
操作中、水溶性分子のリポソーム保持率を測定するた
め、Senior他、Biochim.Biophys.Acta 839:1−8(198
5)に記述されているように、カルボキシフルオレセン
(Carboxyfluoresecein)を部分的に精製し、そして0.1
5Mで捕捉させた。125mg/mLのPBS(0.05Mの燐酸ナトリウ
ム緩衝液、pH8.5で緩衝させた0.125MのNaCl)中で調製
した等容積のTMPEGと一緒に、0.5mLのSUVを保温した
(全DPPEに対するTMPEGの比率は6.25である)。次に、
このベシクルをSepharose 4B−CL上のゲル濾過で未反応
のTMPEGから分離した後、0,01Mの燐酸ナトリウム、pH6.
8を含有している0.15MのNaCl中の5%のPEG8000(Union
Carbide)および5%のDextran T500(Pharmacia)か
ら成る相系中、実施例1と同様にして分配させた。表3
中の結果は、リポソームをTMPEGに暴露すると、緩衝液
のみで処理したベシクル(対照区)に比較して、PEGの
豊富な上部相へのそれらの分配が増大することを示して
いる。このことは、PEGがDPPEのアミノ基に共有結合的
に結合していることを示唆している。捕捉されているCF
を失うことなしにPEG化が進行した。
実施例3 実施例2で用いたのと同様なSUVsをTMPEG(125mg/m
L)で処理した後、それらの分配化を、MPEG(125mg/m
L)または緩衝液で処理したSUVsと比較した;ここで、T
MPEGで処理したベシクルは完全(100%)に上部相中に
分配されたが、一方、MPEG処理ベシクルおよび緩衝液処
理ベシクルは上部相への分配化を示さず、そして接触面
相と底部相との間に同様な等しい分布を示した。このこ
とは、TMPEGがベシクル表面に対して共有結合付着で作
用しているのであって、吸着によるのではないとする示
唆に対して、追加的支持を与えている。
実施例4 限定された大きさのLUVettes(押し出しで製造した大き
な単一薄板ベシクル類)のPEG化 Tilcock他、Biochim.Biophys.Acta 979:208−214(19
89)に記述されているのと同様にしてLUVettesを調製し
た。
直径が100nmのLUVettesを、最終濃度が10mg/mLになる
ように調製した。種々のモル比(全部で20ミリモル)の
クロロホルム中のジオレイルホスファチジルコリン(DO
PC)とジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DO
PE)とから成る混合物を2uCの33H DPPCと一緒にした
後、減圧(<0.1mmHg)下、2時間蒸発させることで溶
媒を除去した。このリピッドを1.55mLの50mMのHepes、1
00mMのNaCl、pH7〜9中に、室温で、渦巻き状に混合す
ることで分散させ、10mg/mLの最終的リピッド濃度を得
た。次に、Hope他、Biochim.Biophys.Acta 821:55−65
(1985)の方法により、押し出し装置(Lipex Biomembr
anes、Canada)を用い、2枚重ねの100nmのポリカーボ
ネート製フィルターを通して、該リピッド分散液のMLVs
を繰り返し(10回)押し出すことで大きい単一薄板のベ
シクルを製造した。直径を、Nicompモデル270の粒子分
析機を用いてQELで測定した。
このベシクルを、40ulのTMPEG含有緩衝液を用いて、
室温で保温することによってPEG化した。間隔をおい
て、20ulのサンプルを取り出し、そして燐酸ナトリウム
を用いて室温でpH6.8に緩衝させた0.15MのNaClで調製し
たところの、5%のPEG8000(Union Carbide)と5%De
xtran T500(Pharmacia)系の、1.5mLの上部相および1.
5mLの底部相から成る相系中で分配させた。この相を混
合し、分離させた後20分後の上部相と底部相のサンプル
を取り出した。未処理のベシクルの上部相への分配化が
著しく低く(>5%);即ち、該ベシクルの大部分が底
部相とかさ高い接触面相との間にほぼ等しく分画される
ように、この相系を選択した。
実施例5 実施例4では、LUVettesの外側の表面に存在している
DOPEに対して2倍過剰量のTMPEGを用いたPEG化反応の時
間的過程およびpH依存性を用いた。pHが8〜9のとき、
TMPEGを用いた保温では、経時的にベシクルが上部相に
移動した。pHが7.5のとき、反応はかなり遅く、そしてp
Hが7.0のときは、実際上、上部相への移行は生じなかっ
た。底部相と接触面相との分配化も測定した別の実験
で、pHが7.2のとき、上部相の分配化は変化しなかった
が、接触面相の分配化が上昇すると、底部相の分配化が
低下することが分かり、このことは、より高いpHのとき
に比べてゆっくりではあるが、pHが7.2のときでもPEG化
が進行することを示している。pHが8のとき、分配化
は、底部相から接触面相に、そして次に上部相へ移動
し、そしてpHが9および10のとき、ベシクルは接触面相
および底部相から即座に上部相へ移動する。このよう
に、PEG化反応はpHに対して非常に敏感であり、そして
時間およびpH条件を適切に選択することで、PEG化の度
合を決定することができる。PEG化の度合はまた、使用
するTMPEGの量で調節され得る。TMPEGのモル比を変化さ
せながら、DOPE/DOPC(0.2:0.8)から成る100nmのLUVet
tesをpH9.0で処理すると、PEG化が上昇するに従って上
部相への分配が上昇した。1.0〜1.3のモル比の上部相中
の分配化において、20%から90%への著しい上昇が生じ
た。底部相および接触面相における分配化も測定したが
(表4)、TMPEG:外部DOPEのモル比がより低い比率のと
きのPEG化は、底部相から接触面相へ、そして次に上部
相への段階的な分配の変化を生じ、PEG化の度合の段階
的変化を明らかに示していた。
分配化の時間的経過からして、pHが9のときの反応は
実際上1時間で完了することは明らかである。このよう
に、PEG化の限定された度合は、TMPEG:DOPEの比を調節
することによって得られる。
pHが8.5のホウ酸緩衝液中の0.05MのTNBS中、Hope M.
J.およびCullis P.R.、J.Biol.Chem.262:4360−4366(1
987)の方法で製造したLUVettesの外部表面を暴露した
アミノ基の画分(PEからの)を測定した結果、DOPC:DOP
Eのベシクル(8:2)に関する47%の値を与え、この値
は、内部表面と外部表面とのPEの等しい分布に関する50
%の理論値に近い。PEG化は、この定量法で検出できるP
E含有量の減少を生じさせ、PEの遊離NH2基へのMPEGの共
有結合付着を示唆していた。例えば、外部PEに対して3
倍モル過剰のTMPEGを、7:3のモル比のDOPC:DOPEベシク
ルに1時間加えたとき、PEG化された外部PEのパーセン
トは36%であり;そして、6倍モル過剰を加えたとき、
このPEG化のパーセントは45%に上昇した。
実施例6 PEG化に対するリピッドベシクルの安定性 SeniorおよびGregoriadis著「リポソーム技術」“Lip
osome Technology"(G Gregoriadis編集)3巻、263頁
(1984)CRC Press.に記述されているように、リピッド
ベシクルの安定性は、6CF(6−カルボキシルフルオレ
セン)の発散の度合で測定された。DOPC:DOPEから成る1
00nmのLUVettesを、pHが8.5の100mMのNaCl中、捕捉され
ている50mMの6CF(6−カルボキシルフルオレセン)を
用いて合成し、外部の6CFは、溶離剤として50mMのHepe
s、100mMのNaCl、pH8.5を用いたSephadex G−25上のカ
ラムクロマトグラフィーで除去した。潜在性期間測定の
ためのサンプルを4mLの緩衝液(100mMのNaCl、50mMのHE
PES、pH9)に加えた後、蛍光を測定し(放出された色
素)、そして25mMのオクチルグルコシドの入っている4m
Lの緩衝液に加え、該ベシクルの完全な崩壊を確実にす
るため37℃で30カ月保温した後、蛍光を測定した(全色
素)。蛍光は、490nmで励起させ、そして520nmの発光を
測定した。
100nmのLUVettesは、いかなる潜在性期間の損失もな
しにTMPEGでTMPEG化された。一層のPEG化(相分配で示
される)を確実にするため、ベシクルの外側の表面に存
在しているDOPEに対して3倍モル比のTMPEGを用いて、D
OPC:DOPEが8:2のベシクルを、pH8.5で処理した。2時間
に渡って、該ベシクルからの6CFの漏出はなく、これ
は、リピッドの二重層の崩壊なしにPEG化が生じること
を明らかに示している。
実施例7 SUVsと血清との相互作用 連成させたPEG(上を参照)を有するか或は有してい
ない、組成がDSPC:PE:コレステロール(モル比0.4:0.1:
0.5)のSUVs0.1mLを、0.5mLの新鮮な血漿(マウス)ま
たは緩衝液と一緒に、37℃で培養した。このサンプルを
間隔をおいて取り出し、そして上の実施例と同様にして
分配化させた。SUVsは、約20%が上部相、60%が接触面
相、そして20%が底部相に分配された。血清で処理する
と、直ちに(1分以内)、それらの分配(0%が上部
相、40%が接触面相、そして60%が底部相)で示される
ところの、ベシクル表面特性の変化が生じた。血漿の蛋
白質単独では、主に、底部相へ分配された(68%が底部
相、32%が上部相:分配係数=0.47±0.02、n=4)。
このように、SUVsは直ちに血清の蛋白質で被覆され、こ
れが次に、該蛋白質と同様の特性でもってベシクルの分
配化を生じさせると考えられる。SUVsのPEG化は、上部
相へのそれらの分配を増大させ(ほとんど100%);血
清に暴露すると、それらの分配は接触面相および底部相
へと変化したが、しかし重要なことは、未PEG化SUVsに
対する血清の実際上の瞬間的な効果に比べて、この課程
は非常に遅かったことである。分配挙動は、PEG化およ
び血清の結合によって与えられる力の合計に関係してお
り、そして前者は1次関数でないため、分配に対する血
清の効果がPEG化および未PEG化リポソームに対して同じ
であるか否かを測定するのは簡単ではない。しかしなが
ら、これは、分配係数に対するPEG化の効果に関する詳
細な用量応答の分析を行うことで測定され、その結果、
血清の影響が、「PEG当量」として用量応答曲線の種々
の部分で測定され得る。これによって、血清がPEG化お
よび未PEG化リポソームに対して異なる効果を有してい
るか否かが分かる。分配挙動に関する大きさの変化の度
合は、PEG化がベシクル上への血清成分の吸着を低下さ
せることを示唆している。
血清に暴露させたSUVsのクロマトグラフィーによる分
離によって、暴露前のベシクルの分配挙動に近い分配挙
動を示すベシクルが得られた。従って、ベシクルと血清
との間の相互作用は、ベシクルを再び単離することによ
って逆戻りする。
これらの実験はまた、PEG化によって与えられたSUVs
の変化した表面特性は、血清蛋白質の吸着によっては本
質的に逆戻りしないことも示している。
実施例8 血清に対するLUVettesの安定性はPEG化によって上昇す
る。
血清に対するLUVettesの安定性を測定するため、捕捉
された6CF(50ul)を含有しているベシクルを、0.5mLの
血清(新しく水和させた凍結乾燥のヒトの血清、Monitr
ol−ES、Dade Diagnostics)と一緒に37℃で培養し、約
1mg/mLの最終リピッド濃度とし、この濃度は、Unger他R
adiology 171:81−85の画像実験を基にした、期待され
る最大インビボ血清濃度に相当している。間隔をおいて
サンプルを取り出し、放出された6CFを蛍光定量法で測
定した。外側の表面のDOPEに対して3倍過剰のTMPEGを
用いて、ベシクルを室温で一晩PEG化し、その後、潜在
性の損失があった。
8:2のモル比のDOPC:DOPEの50nmのベシクルが、血清の
存在下、かなりの潜在性の損失を示し(例えば、2時間
後10%のみの潜在性が存在していた)、これは、PEG化
によって低下しなかった、即ち、100nmのベシクルは2
時間後35%の潜在性を示し、これはPEG化の影響を受け
ず、200nmのベシクルはより小さい潜在性の損失を示し
(例えば、65%の潜在性が2時間後残存していた)、こ
れはまた、PEG化によって阻害されなかった。しかしな
がら、7:3のモル比のDOPC:DOPEの100nmのベシクルに関
して、PEG化は、潜在性の血清誘発損失を、率に関して
2だけ減少させた。DOPEの含有量を40モル%および50モ
ル%に上昇させると、血清に対するベシクルの安定性が
上昇したが、それにも拘らず、PEG化によって追加的安
定性が得られた。表5にこれらのデータを要約する。
実施例9 PEG化は、包含されているGd−DTPAのリラックス性を変
化させない。
Tilcock他、Rradiology 171:77−80(1989)の方法に
よって、DOPC:DOPEが7:3のLUVettes中に、Gd−DTPAを包
含させた。
サンプルの半分がTMPEGでPEG化された(外側の表面
上、3:1のモル比のTMPEG:PE)。対照区およびPEG化サン
プルの両方を、食塩緩衝液(139mMのNaCl、10mのHepe
s、6mMのKCl、pH8.5)中に希釈して、2、1、0.5およ
び0.25mMの有効Gd濃度(該ベシクルの公知捕捉容積およ
びリピッド濃度を与え、そして捕捉されたGd−DTPAの濃
度が0.67Mであると仮定して、Tilcock他、Radiology 17
1:77−80(1989)に記述されているのと同様にして計算
した)を有する4つのサンプルを得た。10〜12mLのサン
プルを、Toshiba 0.5 MRT−50A全体スキャナーを用いて
像を撮った。有効Gd−DTPA濃度に対する1/T1(スピン格
子緩和時間定数)の線形回帰から、リラックス度を得
た。これは、ベシクルのPEG化の影響を受けなかった。
実施例10 SUVsのPEG化はそれらのインビボクリアランスを減少さ
せる。
組成がDSPC:PE:コレステロール(モル比0.4:0.1:0.
4)のSUVs(0.4mgのリン脂質を含有している0.2mL)
を、オスのTOマウス(各グループ中5匹)の尾の静脈中
に静脈注射した。PEG化および未PEG化ベシクルのクリア
ランスを、「リポソーム技術」“Liposome TEchnology"
3巻、263−282頁(1984)、CRC Press中のSenior and G
regoriadisの方法を用いて、間隔をおいて取り出した血
液のサンプル(25ul)中で測定した、捕捉されているCF
および3H−放射能標識リン脂質から定量した。Sneior他
Biochim Biophys Acta 839:1−8(1985)に記述されて
いるのと同様のもう1つの実験で、100,000gで1時間超
遠心分離したときの上済み液として、20〜100nm(平均5
0nm)の小さいベシクルを含有している0.8mg容量のリン
脂質が得られた。
図1Aは、音波処理した未遠心分離調剤を静脈投与した
後のSUVsのクリアランスを示している。この調剤は、PE
G化および未PEG化の両方のサンプル中に、迅速に排出さ
れるいくつかの大きなベシクルを、おそらくは、含有し
ている。しかしながら、より遅いクリアランス相は、該
リピッド容量の約50〜60%に相当しており、未PEG化調
剤(7時間)に比較して、PEG化サンプルの半減期(10
時間)に関しては著しい差を示した。より大きなベシク
ルを除去した調剤においては(図1Bおよび図1C)、PEG
化ベシクルは、未処理のベシクルの12時間に比較して、
14時間の半減期を有していた。
なお、本発明の主たる特徴及び態様を示せば次のとお
りである。
1.外部表面上に共有結合的に結合したPEG部分を有する
リポソーム類。
2.該リピッド二重層がジオレイルホスファチジルコリン
(DOPC)およびジオレイルホスファチジルエタノールア
ミン(DOPE)の混合物から成る上記1に従うリポソーム
類。
3.該リピッド二重層が7:3〜5:5のモル比のDOPC:DOPEか
ら成る上記2に従うリポソーム類。
4.Gd:ジエチレントリアミンペンタアセティックアシッ
ド(Gd−DTPA)を含有する水相を含む上記1〜3のいず
れか1項に従うリポソーム類。
5.上記1〜4のいずれか1項に従うリポソーム類および
薬学的に許容される担体または希釈剤から成る水系懸濁
液を含む薬学的組成物。
6.ヒトまたは動物体の処置方法或はヒトまたは動物体に
対して行う診断方法における使用のための上記1〜4の
いずれか1項に従うリポソーム類。
7.ヒトまたは動物体の処置方法或はヒトまたは動物体に
対して行う診断方法における使用のための薬剤の製造に
おける上記1〜4のいずれか1項に従うリポソーム類の
使用。
8.ヒトまたは動物体の磁気共鳴画像形成を含む診断方法
における造影剤を含有する水相を含むリポソーム類の上
記7に従う使用。
9.ポリエチレングリコールの反応性誘導体でリポソーム
類を処理することを含む上記1〜4のいずれか1項に従
うリポソームの製造方法。
10.該反応性誘導体が2,2,2−トリフルオロエタンスルホ
ニル−モノメトキシ−ポリエチレングリコールである上
記9に従う方法。
11.それらを必要としているヒトまたはヒト以外の動物
に対する診断剤または治療学的薬剤を含有する水相を含
む以上記1に従う有効で無毒量のリポソーム類を静脈内
投与することを含む治療または診断方法。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 9/127 A61K 49/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル−P
    EG誘導体をリポソームと反応させることにより得られう
    る外部表面上に共有結合的に結合したPEG部分を有する
    リポソーム類。
  2. 【請求項2】2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル−
    モノメトキシ−ポリエチレングリコールをリポソームと
    反応させることにより得られうる外部表面上に共有結合
    的に結合したPEG部分を有するリポソーム類。
  3. 【請求項3】リピッド二重層が7:3〜5:5のモル比のジオ
    レイルホスフアチジルコリン(DOPC)対ジオレイルホス
    フアチジルエタノールアミン(DOPE)からなる請求の範
    囲第2項記載のリポソーム類。
  4. 【請求項4】請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の
    リポソーム類および製薬学的に許容しうる担体または希
    釈剤からなる製薬学的組成物。
  5. 【請求項5】リピッド二重層を崩壊させることなくリポ
    ソーム類の外部表面上にポリエチレングリコール(PE
    G)部分を共有結合的に結合させることを特徴とするリ
    ポソーム類の生体内循環寿命を延ばす方法。
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