JP2944053B2 - 含ハロゲン合成繊維の処理方法 - Google Patents

含ハロゲン合成繊維の処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は含ハロゲン合成繊維の処
理方法に関する。含ハロゲン合成繊維は難燃特性を付与
された合成繊維として周知である。なかでも、塩化ビニ
ルや塩化ビニリデン等の含ハロゲン系ビニルモノマーを
共重合した難燃改質アクリル繊維、所謂モダクリル繊
維、塩化スズや塩化アンチモン等のハロゲン系化合物を
添加した含ハロゲン系アクリル繊維がよく知られてい
る。しかし、かかる含ハロゲン合成繊維は、ハロゲンを
含有することに起因し、その製造・加工工程において、
カードやリング精紡機等の紡績機械、その他の製造・加
工設備に錆を発生させ易い。
【0002】合成繊維の製造・加工においては、工程油
剤、紡績油剤、後加工用油剤等が繊維に付与される。こ
れらの油剤に用いられる成分としては、1)リン酸エス
テル塩、硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、2)
第四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩等のカチオン
界面活性剤、3)エチレンオキサイド及び/又はプロピ
レンオキサイド付加物、多価アルコール部分エステル等
の非イオン界面活性剤、4)動植物油脂、鉱物油、脂肪
酸エステル等、各種が知られている。しかし、これらの
成分から調製される油剤を含ハロゲン合成繊維に付与し
ても、前述したような錆の発生を抑制することはできな
い。
【0003】本発明はその製造・加工設備の発錆を抑制
できる含ハロゲン合成繊維の処理方法に関するものであ
る。
【0004】
【従来の技術】従来、金属用防錆剤乃至その補助剤の類
として、亜硝酸塩、ポリリン酸塩、有機カルボン酸塩、
アミン塩、EDTA、ジシクロヘキシルアンモニウムナ
イトレート等が知られており、トリスアミノ化合物やそ
の有機酸縮合物(特開昭57−26174)、ラノリン
脂肪酸のアルカノールアミン塩(特開昭58−6733
2)等が提案されている。また製造・加工設備の発錆抑
制に配慮した繊維の処理手段として、ジアミン両性化合
物を用いる例(特開平1−111066)、炭酸グアニ
ジンとアルキル硫酸との反応物を用いる例(特公昭59
−36033)、アルコールのリン酸エステル塩とグア
ニジン塩とを併用する例(特公昭61−58592)等
が提案されている。
【0005】ところが、上記のような従来の金属用防錆
剤乃至その補助剤の類や処理手段を含ハロゲン合成繊維
に適用しても、その製造・加工設備の発錆抑制に殆ど効
果がない。含ハロゲン合成繊維の製造・加工現場におけ
る実情は、その製造・加工設備の発錆を覚悟して使用
し、そのメンテナンスに多大の労力を費やして、しかも
低い生産性を余儀なくされているのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、従来手段では、含ハロゲン合成繊維の製造
・加工において、製造・加工設備の発錆を抑制できない
点である。
【0007】
【課題を解決するための手段】しかして本発明者らは、
上記観点で鋭意研究した結果、各々単独では殆ど効果を
発揮しない特定の2成分を併用すると、該2成分が予測
できない顕著な相乗効果を発揮し、含ハロゲン合成繊維
の製造・加工設備の発錆を抑制できることを見出した。
【0008】すなわち本発明は、含ハロゲン合成繊維に
下記のA成分とB成分とを付与することを特徴とする含
ハロゲン合成繊維の処理方法に係る。 A成分:有機カルボン酸のアルカリ金属塩及び/又は有
機カルボン酸のアミン塩 B成分:グアニジン塩
【0009】本発明において、対象となる含ハロゲン合
成繊維としては、1)塩化ビニル、塩化ビニリデン等の
含ハロゲン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとを共
重合したモダクリル繊維、2)塩化スズ、塩化アンチモ
ン等のハロゲン系化合物を添加した含ハロゲン系アクリ
ル繊維、3)ビス(ヒドロキシエチル)テトロブロモビ
スフェノールA等を共重合したポリエステル繊維、4)
塩素化パラフィン、デカブロモナフタレン、デカブロモ
ジフェニール等のハロゲン化物を添加した各種の合成繊
維、等が挙げられる。
【0010】本発明において、前記A成分を構成するこ
ととなる有機カルボン酸としては、1)カプリル酸、カ
プリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、
ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルシン酸、
リノール酸等の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸
類、2)コハク酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン
酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン
酸、ドデセニルコハク酸、1,2,3,4−ブタンテト
ラカルボン酸等の2価以上の脂肪族多価カルボン酸類、
3)安息香酸、トルイン酸、フタル酸、イソフタル酸、
テレフタル酸、トリメリット酸等の1価又は2価以上の
芳香族カルボン酸類、4)乳酸、酒石酸、オキシ安息香
酸、ヒドロキシステアリン酸等の水酸基を有するカルボ
ン酸類、等が挙げられる。なかでも炭素数8〜22の飽
和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸類を用いると、特
に優れた発錆抑制効果を発揮し、好ましい。
【0011】本発明において、前記A成分のうちでアル
カリ金属塩を構成することとなるアルカリ金属として
は、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、ま
たアミン塩を構成することとなるアミンとしては、1)
メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エ
チルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチ
ルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチ
ルアミン等の脂肪族アミン類、2)アニリン、ピリジ
ン、モルホリン、ピペラジン又はこれらの誘導体等の芳
香族アミン類又は複素環アミン類、3)モノエタノール
アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、
イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、
トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミ
ン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノー
ルアミン等のアルカノールアミン類、4)アンモニア、
等が挙げられる。なかでもアルカリ金属としてナトリウ
ム、カリウムを、またアミンとしてアルカノールアミン
類を用いると、特に優れた発錆抑制効果を発揮し、製造
のし易さや繊維の加工特性の上でも、好ましい。
【0012】前記A成分は以上例示したような有機カル
ボン酸とアルカリ金属及び/又はアミンとの組み合わせ
から得られる塩である。いずれもこれらの塩を用いる
と、良好な発錆抑制効果を発揮するが、なかでも繊維に
付与する操作の簡便さ等から、水分散性又は水溶性の塩
がより有利であり、このような例としては、炭素数8〜
22の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸のナトリ
ウム、カリウム又はアルカノールアミン塩が挙げられ
る。
【0013】本発明において、前記B成分を構成するこ
ととなる酸成分としては、1)硫酸、リン酸、亜リン
酸、炭酸、ホウ酸、チオ炭酸等のハロゲンを含有しない
無機酸類、2)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン
酸、p−トルエンスルホン酸、スルファニル酸、酢酸、
シュウ酸モノエチル等の有機酸類が挙げられる。また前
記B成分を構成することとなる他の成分であるグアニジ
ンとしては、置換基を有しないグアニジンの他に、置換
基を有するグアニジン類も使用することができ、かかる
置換基を有するグアニジンとしては、フェニルグアニジ
ン、ジフェニルグアニジン、ドデシルグアニジン、ホル
ミルグアニジン、アセチルグアニジン、1,2−N−ジ
アセチルグアニジン、1,3−N−ジアセチルグアニジ
ン、ベンゼンスルホニルグアニジン等が挙げられる。
【0014】前記B成分は、以上例示したような酸類と
置換基を有しないグアニジン又は置換基を有するグアニ
ジンとの組み合わせから得られる塩である。いずれもこ
れらの塩を用いると、良好な発錆抑制効果を発揮する
が、なかでも繊維に付与する操作の簡便さ等から、水分
散性又は水溶性の塩がより有利であり、このような例と
しては、リン酸グアニジン、炭酸グアニジン、ホウ酸グ
アニジン等が挙げられる。
【0015】本発明は、以上説明したようなA成分とB
成分とを含ハロゲン合成繊維に付与することにより、該
含ハロゲン合成繊維の製造・加工設備の発錆抑制に対
し、各々単独使用の場合からは到底予測できない顕著な
相乗効果を発揮させるものである。本発明を実施するに
際して、含ハロゲン合成繊維へのA成分及びB成分の最
適付与量は、含ハロゲン合成繊維の特性によっても異な
るが、通常、含ハロゲン合成繊維に対してA成分が0.
01〜0.30重量%となるようにし、またB成分が
0.001〜0.10重量%となるようにするのが好ま
しく、特にA成分が0.02〜0.20重量%となるよ
うにし、またB成分が0.002〜0.07重量%とな
るようにして且つA成分/B成分=1/1〜0.1(重
量比)とするのがより好ましい。余り少量の付与では発
錆抑制効果が不足気味になり、逆に余り多量の付与では
含ハロゲン合成繊維の加工特性を悪化させる場合が生じ
る。
【0016】本発明は含ハロゲン合成繊維へのA成分及
びB成分の付与手段を特に限定するものではない。A成
分及びB成分を同時に付与しても又は別々に付与しても
よく、これらを従来から知られている前述したような工
程油剤、紡績油剤、後加工油剤等と共に付与してもよ
い。その付与工程も、含ハロゲン合成繊維の紡糸工程、
延伸工程、紡績工程、後加工工程等、いずれでもよい。
付与方法も特に限定するものではないが、A成分及びB
成分を水溶液、水分散液、乳化液として、浸漬法、噴霧
法、ローラー接触法等で付与するのが有利である。
【0017】
【実施例】以下、本発明の構成及び効果をより具体的に
するため、実施例及び比較例を挙げる。各例における発
錆抑制効果の評価は下記の評価1、2、3で行なった。
【0018】・評価1、2 編針(森辰ニードル社製の編針K140S)を非イオン
界面活性剤含有水溶液で洗浄し、次にエタノールでよく
洗浄した。別にガーネットワイヤー(富士金属針布社製
のシリンダー針布KC−86)を6cmに切断し、スチー
ルウールで研磨した後、先ずエタノールで、次にエチル
エーテルで洗浄した。そして試料綿5gで、上記の編針
及びガーネットワイヤーの各1本を両者が接触しないよ
うに巻き込み、包んだ。これを予め水1mlを入れておい
た直径25mmのガラス試験管に入れ、密栓した後、70
℃で48時間放置した。放置後の編針、ガーネットワイ
ヤーを肉眼観察し、その発錆の程度を次の判定基準で評
価して、結果を表1〜4に示した。結果については、編
針での評価を評価1とし、またガーネットワイヤーでの
評価を評価2とした。
【0019】・評価3 試料綿をフラットカード(豊田自動織機社製)、PDF
型練条機(石川製作所社製)及びFL−4型粗紡機(豊
田自動織機社製)に供して粗糸を作製し、次にTLW型
精紡機(豊田自動織機社製)に供したときの精紡リング
を肉眼観察し、その発錆の程度を次の判定基準で評価し
て、結果を表3、4に示した。使用した精紡リングは通
常リング(金井重要工業社製KS−7)であり、精紡は
25℃で65%RHの雰囲気下に48時間連続して行な
い、精紡リングの肉眼観察は48時間連続精紡後に行な
った。
【0020】・判定基準 5;発錆なし 4;痕跡程度に発錆が認められる 3;明確な発錆が認められる 2;強い発錆が認められる 1;非常に激しい発錆が認められる
【0021】・実施例1〜9、比較例1〜11 表1、2に記載した組成の油剤を各例で調製した。別に
2デニール×51mm長の、塩化ビニルを29重量%及び
塩化ビニリデンを15重量%共重合したモダクリル繊維
を、60℃温水で洗浄して脱油・乾燥した。各例の油剤
をエマルジョンとなし、乾燥したモダクリル繊維に対し
て表1、2に記載の付与量となるように、該エマルジョ
ンをスプレー給油した。給油後、熱風乾燥機にて60℃
で90分間乾燥し、更に120℃で10分間熱処理を行
ない、試料綿を得た。
【0022】・実施例10〜17、比較例12〜16 実施例1〜9の場合と同じモダクリル繊維を、同様に洗
浄して脱油・乾燥した。そして油剤a又はbの0.3%
水溶液を乾燥したモダクリル繊維に対して表3、4に記
載の付与量となるようにスプレー給油した。給油後、熱
風乾燥機にて60℃で90分間乾燥した。別に表3、4
に記載した組成の油剤を各例で調製した。そして各例の
油剤を油剤a又はbを付与して乾燥したモダクリル繊維
に対して表3、4に記載の付与量となるようにスプレー
給油した。給油後、熱風乾燥機にて60℃で90分間乾
燥し、更に120℃で10分間熱処理を行ない、試料綿
を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】注)表1〜4において、A−1〜A−6は
本発明のA成分に相当する。B−1、B−2は本発明の
B成分に相当する。表中数値はモダクリル繊維に対する
付与量(重量%)である。 A−1;カプリル酸ナトリウム A−2;カプリル酸ブチルジエタノールアミン A−3;ラウリン酸カリウム A−4;ラウリン酸モノエタノールアミン A−5;ステアリン酸ナトリウム A−6;オレイン酸トリエタノールアミン B−1;リン酸グアニジン B−2;炭酸グアニジン
【0028】C−1;ジシクロヘキシルアミン亜硫酸塩 C−2;HostacorBS(商品名、ヘキスト社製) C−3;トリポリリン酸ナトリウム C−4;グリシドキシプロピルトリメトキシシラン C−5;EDTA
【0029】油剤a;ラウリルホスフェートカリウム塩
30重量%、ポリオキシエチレン(2モル)オクチルホ
スフェートカリウム塩20重量%、ポリオキシエチレン
(5モル)ステアリルエーテル40重量%及びソルビタ
ンモノパルミテート10重量%から成る油剤 油剤b;1−(2−ヒドロキシエチル)−1−エチル−
2−ウンデシル−2−イミダゾリニウムエチルサルフェ
ート20重量%、ポリオキシエチレン(180モル)ヒ
マシ油エーテル20重量%、ポリオキシエチレン/ポリ
オキシプロピレン(60/40)ブロックポリマー(分
子量4000)20重量%、ソルビタンモノパルミテー
ト10重量%及びポリオキシエチレン(10モル)ラウ
レート30重量%から成る油剤
【0030】
【発明の効果】既に明らかなように、以上説明した本発
明には、含ハロゲン合成繊維の製造・加工において、そ
の製造・加工設備の発錆を抑制できるという効果があ
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含ハロゲン合成繊維に下記のA成分とB
    成分とを付与することを特徴とする含ハロゲン合成繊維
    の処理方法。 A成分:有機カルボン酸のアルカリ金属塩及び/又は有
    機カルボン酸のアミン塩 B成分:グアニジン塩
  2. 【請求項2】 含ハロゲン合成繊維に対してA成分を
    0.01〜0.30重量%となるように、またB成分を
    0.001〜0.10重量%となるように付与する請求
    項1記載の含ハロゲン合成繊維の処理方法。
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WO2009008239A1 (ja) * 2007-06-20 2009-01-15 Nankyo Efnica Co., Ltd. 難燃性、防曇性等を有する多機能性組成物

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