JP2943412B2 - 酸化チタン含有ナイロン66の製造方法 - Google Patents

酸化チタン含有ナイロン66の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化チタンを含むナイ
ロン66を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ナイロン66はナイロン6とともに繊
維、プラスチック等の用途に幅広く用いられているポリ
アミドである。このポリアミドには、酸化チタン(Ti
2 )が、プラスチック用途の場合では、製品の白色着
色剤として、また、繊維用途の場合では、艶消し剤とし
て添加されている。
【0003】しかしながら、ポリマー中の酸化チタンの
分散性が悪いと後加工工程及び最終製品に少なからぬ悪
影響を及ぼす。特に、繊維用途に用いる場合では、紡糸
時の糸切れの増加、紡糸機の濾圧上昇等の製糸工程での
重大なトラブルの原因となる。
【0004】酸化チタンの添加方法としては、重合後の
ポリアミドに押し出し機等により酸化チタンを練り込む
方法、重合中に酸化チタンを添加する方法があるが、コ
スト面、酸化チタンの分散性の面から後者の方が有効で
ある。このため工業的には重合の初期段階において、酸
化チタンの水スラリーを原料に添加する方法が、広く実
施されている。
【0005】酸化チタンを重合系に添加する場合の分散
性向上の方法として、英国特許第554,718号明細
書には、重合系内の温度が210℃〜215℃の範囲に
なった時点で酸化チタンを添加する方法が記載されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来の酸化チタン配合方法では、内部に加熱体を有する重
合缶を用い、かつ添加剤として酢酸、マンガン化合物を
含むような、酸化チタンが凝集し易い重合系に添加し
て、総重合時間(T)2時間以内でナイロン66の重合
を行なう場合には、酸化チタンの分散性がなお不十分で
あった。
【0007】そこで、本発明は、上記従来技術をさらに
改良し、酸化チタンが凝集し易い重合系をとる場合で
も、製品ポリマー中に酸化チタンが良好に分散したナイ
ロン66を得ることを主な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明は、内部に加熱体を有する重合缶内でナイロ
ン66塩を水溶液系で加圧バッチ重合してナイロン66
ポリマーを製造するにあたり、重合系内へのナイロン6
6塩の仕込みから重合終了までの総重合時間(T時間)
を2時間以内とし、重合系内へ、酢酸、マンガン化合物
の添加の後、酸化チタンを水スラリーで添加する時期
を、酢酸、マンガン化合物の添加からT/5時間経過以
後、かつ、ナイロン66塩仕込みからT/3時間経過以
前とすることからなる。
【0009】このように、本発明では、酸化チタン水ス
ラリーの添加時期を、酢酸、マンガン化合物の添加時か
らT/5時間経過の以後に、かつ、ナイロン66塩仕込
み時からT/3時間経過の以前とすることが重要であ
る。
【0010】酸化チタン水スラリーの添加時期が、酢
酸、マンガン化合物の添加時からT/5時間経過の前と
早過ぎる場合は、重合系内に未反応の酢酸、マンガン化
合物が多く存在しているため、ポリマー中における酸化
チタンの分散が悪くなる。
【0011】また、酸化チタン水スラリーの添加時期
が、ナイロン66塩仕込みからT/3時間経過の後と遅
過ぎる場合は、未反応の酢酸、マンガン化合物による悪
影響はないもののナイロン66の重合が相当進んでいて
系内の粘度が高くなっているので、酸化チタンを系内全
体に均一に分散させることが難しい。
【0012】本発明で用いる酸化チタンは、ナイロン6
6用の添加剤として用いられている物であればよく、ル
チル型でもアナターゼ型でもよい。また、分散性向上の
目的で酸化チタン粒子の表面をAl,Zn,Si等で処
理した物であってもよい。勿論、前処理としてサンドグ
ラインダー等で処理し粗大粒子をカットした物でもよい
し、酸化チタンの分散性向上剤を酸化チタン水スラリー
中に併用添加してもよいし、また、その分散向上剤をナ
イロン66塩水溶液中に添加しても構わない。
【0013】この酸化チタンの添加量は、ポリマーの用
途に応じた量とすればよく、一般的には0.01〜20
重量%の範囲がとられる。
【0014】また、本発明で用いるマンガン化合物は、
ナイロン66用の添加剤として用いられている物であれ
ばよく、例えば、塩化マンガン、硼酸マンガン、ピロリ
ン酸マンガン、次亜燐酸マンガン、珪酸マンガン、コハ
ク酸マンガン、吉草酸マンガン、沃化マンガン、燐酸水
素マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、酒石酸
マンガン、クエン酸マンガン、安息香酸マンガン、サル
チル酸マンガン、グリセロリン酸マンガン、乳酸マンガ
ン、フェノールスルホン酸マンガンが挙げられる。なか
でも、塩化マンガン、硼酸マンガンのように酸化チタン
を特に凝集させ易いマンガン化合物を用いる場合に本発
明は有効である。
【0015】このマンガン化合物の添加量は、ポリマー
の用途に応じた量とすればよく、一般的にはMn換算で
ポリマに対し2〜20ppmの範囲がとられる。
【0016】また、マンガン化合物と同時に添加する酢
酸の量は、ポリマーの用途に応じた量とすればよく、一
般的には、ナイロン66塩に対し0.1〜1.0モル%
の範囲がとられる。
【0017】この酢酸とマンガン化合物の添加は、酸化
チタンの添加のT/5時間以前であれば、ナイロン66
塩仕込みの直後に行ってもよいし、また、少し時間経過
後に行ってもよい。
【0018】内部に加熱体を有する重合缶としては、例
えば、図1に示すように、内部にコイル状の加熱体1を
有する重合缶3が挙げられる。図1において、加熱体1
はその中を通過する加熱媒体によって加熱され、その加
熱媒体は、その入口6、出口7から出入りする。また、
重合缶3は外側からも加熱媒体によって加熱され、その
加熱媒体は、その入口9、出口10から出入りする。さ
らに、重合缶内部の反応混合物を攪拌するために、撹拌
翼2が重合缶内部が設けられている。そして、反応原料
のナイロン66塩は原料仕込口4から重合缶内に投入さ
れ、また、酢酸、マンガン化合物、酸化チタン水スラリ
ーは、添加剤投入口5から重合缶内に投入される。重合
反応が終了して得られたナイロン66ポリマは、ポリマ
吐出口8から排出される。
【0019】本発明で用いる重合缶は、図1に示す態様
の他に、多数の加熱管を内部に竪型に配した重合缶、あ
るいは、円筒型加熱器を内部に有した重合缶であっても
よい。
【0020】また、この重合缶を用いての総重合時間
(T)は、得られるポリマの品質のために2時間以内と
する必要がある。この総重合時間(T)が2時間を越え
る場合は、得られるポリマの熱変性特性、特にポリマの
色調が悪くなる。
【0021】本発明法は、重合缶内部の加熱体の表面積
の大きさによらず有効である。しかし、重合時間の短縮
のため加熱面積を大きくするほど撹拌不良箇所が増大し
酸化チタンの分散が更に悪くなる。このため、重合缶内
部の加熱体の加熱面積が製品ポリマー1kgあたり30cm
2 以上である場合に、本発明は特に有効である。
【0022】本発明法が適用されるナイロン66ポリマ
ーは、ナイロン66、あるいはナイロン66を主体とし
品質改善のための他のポリアミドを共重合したナイロン
66系共重合ポリマである。
【0023】
【作用】ナイロン66塩を水溶液の系でバッチ重合する
場合、重合時間が長いとポリマーの熱劣化が起こり品質
に少なからぬ悪影響を与える。このため、重合缶内部に
加熱体を設けることにより、伝熱面積を増し重合時間の
短縮を図ることが行なわれる。この場合、重合缶内のポ
リマーの流動が内部の加熱体によりやや悪化し撹拌効果
が悪くなる。このため重合中に酸化チタンが軽度に凝集
してもその再分散が妨げられ、酸化チタンの分散不良を
生じ易い。
【0024】また、この重合工程では、製品ポリマーの
粘度安定化のために、モノカルボン酸あるいはモノアミ
ンを添加することが行なわれる。このうち酢酸は、安価
であること等により工業的に広く使用されている。しか
し、酢酸は、イオン性が強いために酸化チタンを凝集さ
せ易い。
【0025】さらに、酸化チタンを含むポリアミドは、
光により酸化チタンと反応し、原子状の酸素を生じ易
く、酸化チタンを含まないポリアミドに比べ耐候性が悪
い。このため、耐候性を向上する目的で酸化チタンをマ
ンガン化合物でコーティングしたり、マンガン化合物を
重合中に併用添加したりすることが行なわれる。
【0026】ところが、塩化マンガン、ほう酸マンガン
等のマンガン化合物を重合中に添加すると、ポリマー中
で酸化チタンの分散性が悪くなる。一方、マンガン化合
物でコーティングした酸化チタンを用いるとポリマー中
での分散は良好であるが、それを水スラリーとして添加
する場合、水スラリーの調製段階で酸化チタンが凝集し
易く、分級等の後操作が必要になるので、経済性、操作
性が悪くなり、実用的でない。
【0027】本発明者は、このように重合缶内部に加熱
体を有し、かつポリマーの添加剤として酢酸、マンガン
化合物を含む場合における酸化チタンの添加時期につい
て鋭意検討した結果、意外にも、酢酸、マンガン化合物
の添加から酸化チタンスラリーの添加までの時間が、さ
らに、ナイロン66塩仕込みから酸化チタンスラリーの
添加までの時間が、ポリマー中の酸化チタンの分散性に
大きく影響することを見い出した。そして、その最適時
間について検討を重ねた結果、酸化チタンスラリーの添
加時期は、その総重合時間との関係で前記したとおり表
されることがわかり本発明をなすに至ったものである。
【0028】即ち、前記した特定の時期に酸化チタンス
ラリーを添加すれば、重合系内の未反応の酢酸、マンガ
ン化合物が少なく、かつ、系内の粘度が高くなり過ぎて
ないので、系内における酸化チタンの分散性は、最も良
くなるのである。
【0029】
【実施例】以下の実施例中の物性は、次のようにして測
定した。
【0030】凝集酸化チタン数(コ/g): 得られた
ペレットのサンプル約50mgを再溶融して約10μm程
度の薄膜状となし、顕微鏡で5μm以上の大きさの酸化
チタン粒子を数えた。
【0031】濾過圧力(kg/cm2 ・hr): ペレットを
285℃で溶融し、5μmのフィルターで1.3g/cm
2 ・min の速度で2時間濾過した。このときの単位時間
当りの濾過圧力の上昇速度を濾過圧力とした。
【0032】[実施例1、2、比較例1、2]ナイロン
66塩を水溶液系で、図1のように内部にコイル状加熱
体を有する重合缶を用いて重合した。その際、ナイロン
66塩を重合缶へ仕込み、その直後に酢酸0.005モ
ル(対ナイロン66塩)と塩化マンガン(マンガン換算
で8ppm 、対ポリマー)とを重合缶へ添加した後、酸化
チタン0.3重量%(対ポリマー)を添加し、ナイロン
66塩仕込みから100分で重合を終了した。そして、
酸化チタンの添加時期は、表1に示すとおりに種々変更
して行ない、得られたポリマー中の酸化チタンの分散性
を評価した。
【0033】その結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】表1の結果から明らかなように、酸化チタ
ンの添加時期が本発明で特定した範囲内である実施例
1、2の場合は、凝集酸化チタンの数が少なく、しか
も、濾過圧力の上昇も小さかった。
【0036】これに対し、酸化チタンの添加時期が、酢
酸、マンガン化合物の添加時からT/5時間経過前と早
過ぎた比較例1の場合、及び、ナイロン塩仕込み時から
T/3時間経過後と遅過ぎた比較例2の場合は、いずれ
も、凝集酸化チタンの数が多かった。しかも、比較例1
の場合は、濾過圧力の上昇もかなり大きかった。
【0037】[実施例3、比較例3〜5]酢酸0.00
5モル(対ナイロン66塩)と塩化マンガン8 ppm(マ
ンガン換算で8 ppm、対ポリマー)とを重合缶へナイロ
ン66塩の仕込みの10分後に添加し、また、酸化チタ
ンの添加時期を表2のとおりに変更した以外は、前記実
施例と同様にして、総重合時間100分で重合を行なっ
た。そして、得られたポリマー中の酸化チタンの分散性
を評価した。
【0038】その結果を表2に示した。
【0039】
【表2】
【0040】表2の結果から明らかなように、酢酸及び
マンガン化合物をナイロン66塩仕込みから少し経過後
に添加する場合でも、酸化チタンの添加時期を本発明で
特定した範囲内とすることにより、優れた酸化チタン分
散効果を得ることができた。
【0041】
【発明の効果】本発明方によるナイロン66の製造方法
は、次の効果を奏する。
【0042】得られたナイロン66中において酸化チタ
ンが微細粒子で分散性良く配合されている。
【0043】従って、後工程、特に製糸工程での紡糸糸
切れや紡糸機濾圧上昇速度が減少し、製糸トラブルを減
少できる。
【0044】本発明法は、酸化チタンをナイロン66中
に重合段階で添加する場合に有用であり、得られた酸化
チタン含有ナイロン66は、繊維用途、プラスチック用
途等に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる重合缶の一実施態様を示す内部
構造斜視図である。
【符号の説明】
1:(重合缶内部の)加熱体、 2:撹拌翼、 3:重
合缶、 4:原料仕込口、 5:添加剤投入口、 8:
ポリマ吐出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08K 5:09 3:10) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 69/28 C08L 77/06 C08K 3/22 C08K 5/09

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に加熱体を有する重合缶内でナイ
    ロン66塩を水溶液系で加圧バッチ重合してナイロン6
    6ポリマーを製造するにあたり、重合系内へのナイロン
    66塩の仕込みから重合終了までの総重合時間(T時
    間)を2時間以内とし、重合系内へ、酢酸、マンガン化
    合物の添加の後、酸化チタンを水スラリーで添加する時
    期を、酢酸、マンガン化合物の添加からT/5時間経過
    以後、かつ、ナイロン66塩仕込みからT/3時間経過
    以前とすることを特徴とする酸化チタン含有ナイロン6
    6の製造方法。
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