JP2942974B2 - ガスセンサ及びその製造方法 - Google Patents

ガスセンサ及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はH2S(硫化水素ガス)
の検出に優れたガスセンサ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスの吸脱着により抵抗値が変化する金
属酸化物半導体(SnO2)に電極を接続し、抵抗値を測
定することでガスの有無を検出するようにした半導体ガ
スセンサが従来からガス漏れ警報器等として使用されて
いる。
【0003】一方、最近ではトイレやキッチン等の住居
内におけるオートベンチレーション(自動換気)を行な
うためのガスセンサの開発が要望されている。つまり、
トイレやキッチン等の悪臭成分の主なものは、硫化水
素、アンモニア、アミン類及びメルカプタン類であり、
快適な住環境を維持するにはこれらのガス濃度が数pp
b〜数ppmの範囲で検出できるセンサが必要とされ
る。しかしながら従来の金属酸化物半導体ガスセンサに
よる検出可能濃度は数百ppm以上である。
【0004】そこで、特開昭63−313048号及び
特開昭63−313049号には、Snのアルコキシド
溶液を絶縁基板に塗布した後、アルコキシド溶液を熱分
解してSnO2膜を形成し、このSnO2膜に別の金属(通
常酸化物の形態となっている)を添加して、ガス検出感
度を高めるようにした提案がなされている。しかしこの
方法ではH2S除去時の応答速度が遅く、ヒートクリー
ニングする方法が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図9は上述した従来の
ガスセンサのSnO2膜の細孔分布を示すグラフ、図10
は同ガスセンサのSnO2膜の細孔面積分布を示すグラフ
であり、図9からは従来のSnO2膜の細孔分布は均一性
に欠け、また図10からは大部分の細孔表面は30Å以
下の細孔内に存在していることが分る。
【0006】また図11は上述したSnO2からなるガス
センサの応答曲線を示すグラフであり、縦軸はガス感度
の逆数を対数目盛で表示している。これより200℃及
び300℃の応答曲線を見ると、ガス感度は比較的良好
であるが雰囲気をH2Sから空気に切り替えた時の回復
応答性が悪いことが分る。一方センサ温度を400℃ま
で高めれば回復応答性は良くなるが、図12にも示すよ
うにSnO2及びIn23は急激にガス感度が低下する。
尚図12中、低温側の素子温度でガス感度の表示のない
ものは素子抵抗が測定限界であることを示す。
【0007】また回復応答性を高めるためにセンサを加
熱するヒートクリーンニングも知られているが、この場
合には連続測定ができず更にヒートクリーンニング用の
別回路が必要となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め本発明者らは多孔質物質内でのガス拡散について着目
した。即ち、半導体ガスセンサのような多孔質物質内に
おけるガス拡散は非常に遅くクヌッセン拡散と呼ばれ、
この時の細孔内における拡散定数は以下の(数1)で表
わされる。
【0009】
【数1】
【0010】また、この時の拡散速度式は以下の(数
2)で示すグムケラーの拡散式が成立すると考えられ
る。
【0011】
【数2】
【0012】上記の(数2)より短時間で吸脱着が平衡
に達するためには細孔の半径(r)が大きく、膜厚Lが
小さく、温度Tが大きい程有利である。
【0013】上記の知見に基づき本発明は、絶縁基板上
に形成するSnO2膜の厚みを1μm以下とし且つ平均細
孔径を100Å以上とした。
【0014】
【作用】絶縁基板上にSnO2をゾルの形態で塗布し、こ
れを600℃以上の温度で焼成することで細孔分布を均
一にし且つ細孔径の平均を100Å以上にすることがで
きる。
【0015】
【実施例】以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。ここで図1は本発明に係るガスセンサの一例
を示す斜視図、図2は同ガスセンサの拡大断面図であ
る。
【0016】ガスセンサ1はアルミナ基板2に一対の櫛
形Au電極3,3を焼成により形成し、このAu電極3,
3が接続するSnO2膜4を同じく焼成によりアルミナ基
板2表面に形成し、更にアルミナ基板2内にはヒータ5
を埋設している。
【0017】SnO2膜4は厚みが1μm以下で平均細孔
径が100Å以上になっている。斯かるSnO2膜4を形
成するにはSnO2ゾルをアルミナ基板2に塗布した後焼
成する。具体的には、塩化第二スズ水溶液に重炭酸アン
モニウム水溶液を添加、生成したゲルを水洗いし、これ
にアンモニア水を加えてpH10にした後、オートクレ
ーブ中で200℃で水熱処理することにより20Å程度
の結晶形のSnO2ゾルを生成し、このSnO2ゾルをアル
ミナ基板2に塗布し乾燥せしめた後焼成する。
【0018】SnO2ゾルの製法は上記に限らず、塩化第
二スズの塩酸酸性水溶液に水酸化ナトリウムを添加混合
する方法、塩化第二スズ水溶液を陰イオン交換樹脂によ
り処理する方法、スズアルコキシドを各種の手段で加水
分解する方法等が挙げられる。
【0019】ところで、図3はSnO2ゾルの焼成温度と
細孔分布との関係を示すグラフ、図4はSnO2ゾルの焼
成温度と細孔面積分布との関係を示すグラフであり、前
記したように短時間で吸脱着が平衡に達するためには細
孔の分布が均一で半径(r)が大きい程有利であること
を鑑みれば、焼成温度は600℃以上とすべきである。
このように焼成温度を600℃以上とすることで平均細
孔径が100Å以上のSnO2膜を形成することができ
る。
【0020】また図5はSnO2ゾルの焼成温度、測定温
度及びガス感度の関係を示すグラフ、図6はSnO2ゾル
の焼成温度と応答曲線との関係を示すグラフ、図7はガ
スセンサの測定温度と応答曲線との関係を示すグラフ、
図8は700℃で焼成した場合のガス濃度とガス感度と
の関係を示すグラフであり、図5からは600℃以上で
焼成した場合にはガス感度が飛躍的に向上することが分
る。また図6からは600℃以上で焼成した場合にセン
サ出力及び回復応答性が向上することが分る。そして、
図7及び図8からは600℃以上(700℃)で焼成す
れば測定温度が160℃〜300℃程度においても充分
なガス感度、センサ出力及び回復応答性を発揮すること
が分る。
【0021】
【発明の効果】以上に説明した如く本発明によれば、絶
縁基板上にSnO2ゾルを塗布するようにしたので、焼成
後のSnO2膜の厚みを1μm以下にコントロールするこ
とができ、また焼成温度を600℃以上としたのでSn
2膜の平均細孔径を100Å以上にすることができ
る。そして、SnO2膜の厚みを1μm以下とし平均細孔
径を100Åとすることで、ガス感度、センサ出力及び
回復応答性に優れたガスセンサとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガスセンサの一例を示す斜視図
【図2】同ガスセンサの拡大断面図
【図3】SnO2ゾルの焼成温度と細孔分布との関係を示
すグラフ
【図4】SnO2ゾルの焼成温度と細孔面積分布との関係
を示すグラフ
【図5】SnO2ゾルの焼成温度、測定温度及びガス感度
の関係を示すグラフ
【図6】SnO2ゾルの焼成温度と応答曲線との関係を示
すグラフ
【図7】ガスセンサの測定温度と応答曲線との関係を示
すグラフ
【図8】ガス濃度とガス感度との関係を示すグラフ
【図9】従来のSnO2膜の細孔分布を示すグラフ
【図10】従来のSnO2膜の細孔面積分布を示すグラフ
【図11】従来のガスセンサの応答曲線を示すグラフ
【図12】各種金属酸化物半導体のH2S感度と温度と
の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1…ガスセンサ、2…絶縁基板、3…電極、4…SnO2
膜。
フロントページの続き (72)発明者 土田 敬之 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番 1号 東陶機器株式会社内 (56)参考文献 特開 昭48−89793(JP,A) 特開 平3−287057(JP,A) 特開 平2−132361(JP,A) 特開 平1−293501(JP,A) 特開 昭54−31798(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 27/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SnO2に対するガスの吸脱着による抵抗
    値の変化を利用したガスセンサにおいて、前記SnO2
    絶縁基板上に薄膜として形成され、その厚みは1μm以
    下で且つ平均細孔径が100Å以上であることを特徴と
    するガスセンサ。
  2. 【請求項2】 SnO2に対するガスの吸脱着による抵抗
    値の変化を利用したガスセンサの製造方法において、前
    記SnO2は絶縁基板上にSnO2ゾルの形態で塗布した
    後、600℃以上の温度で焼成して形成することを特徴
    とするガスセンサの製造方法。
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