JP2929252B2 - 大規模浮体構造物の建造方法 - Google Patents

大規模浮体構造物の建造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、浮体空港・浮体人工島
等のような大規模浮体構造物の建造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、空港施設・廃棄物処理施設・エネ
ルギー施設等を計画する場合、陸上においては広大な用
地確保が困難で、自然環境破壊に伴う反対が多く、騒音
等の公害問題が生じやすい等の理由から海上空間を利用
する方向にある。また、これらの施設以外にも海上レジ
ャー施設・海上都市等の人工島の計画もある。これらの
施設は、臨界部から沖合に展開されてきているため、大
水深の場所に設置される計画が多い。従来、これらの施
設は埋立方式で建設される場合が主流であったが、水深
増大に伴い膨大な埋立土砂が必要となり、大規模護岸の
建設とあわせて膨大な建設資金を要するとともに、工事
期間が長くかかり、工事中の周辺海域の水質汚濁の懸
念、完成後の地盤沈下等の問題や、魚場の損失の問題が
発生する。このため、埋立方式の問題点を解消するもの
として、各種の浮体構造形式の人工島が提案されてい
る。出願人は、図1に示す如く、浮体構造物の下面に作
用する波浪外力50を軽減し、かつ浮体構造物の防食コ
スト増を招くことがない、経済的な大規模浮体構造物と
して浮体構造物外周に浮体構造物の下面より下方に延在
して没水し、浮体構造物の下面への波浪外力の伝達を軽
減する消波版5を浮体構造物と一体的に設けたことを特
徴とする大規模浮体構造物1を提案している(特願平4
−103767号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記大規模
浮体構造物1は、例えば平面積が数百haにもなるた
め、これ迄建造事例がないため、未知な部分が多く、大
規模な曳航設備を必要とする問題点があった。本発明
は、かかる事情に鑑み、大規模浮体構造物を全体として
曳航しないでよく、接合作業の全てを気中作業で行う大
規模浮体構造物の建造方法を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、大規模浮体構造物1を下面外周に没水
壁体9を有する多数の浮体ユニット2、3に分割製作
し、この浮体ユニット2、3を海中架台20を設けたブ
ロック接合場所へ移動して架台上に軟着底させ、各浮体
ユニット2、3同士の上面接合端10a及び隔壁接合端
10bの気中部を溶接接合して中ブロック4とし、次に
中ブロック4を設置場所へ浮上曳航し、各浮体ユニット
2、3の下部に圧縮空気33を送り、接合しようとする
中ブロック4下面を海面より上昇させた状態で中ブロッ
ク4同士の溶接接合を行うとともに、中ブロック4製作
時未溶接の各浮体ユニット2、3の下面接合端10c及
び隔壁の未接合端10bを溶接接合し、接合終了後、前
記圧縮空気33を排気することを特徴とする大規模浮体
構造物の建造方法により構成される。
【0005】
【作用】多数の浮体ユニット2、3を、予め所定の上端
高さとした海中架台20を設けたブロック接合場所へ移
動し、各浮体ユニットを浮力を利用して海中架台20上
に所定レベル高さで軟着底させた状態で、各浮体ユニッ
ト2、3同士の気柱部接合端の溶接接合を行って中ブロ
ック4とし、次に各中ブロック4を浮力を利用して、架
台20上から離脱させ、浮上曳航して設置場所に移動さ
せ、浮上状態で各中ブロック4同士の気中部接合端を溶
接接合し、ついで各浮体ユニット2、3の下部に圧縮空
気33を送り、各中ブロック4の下面を海面40より上
昇させて、未接合端を気中部とした状態で溶接接合を行
うものである。即ち、中ブロック4同士の浮上接合20
において、各浮体ユニット2、3は下面外周が没水壁体
9で囲まれているため、この部分に圧縮空気33を送り
中ブロック4を海面から浮上させることにより、全ての
溶接接合作業を気中で行うこととしたものである。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図1〜図10は、本発明の1実施例を示すもので
ある。図1は、本発明が適用される大規模浮体構造物1
の一部省略断面図を示すものであって、浮体構造物の外
周に下方に延在して水深Cまで没水した消波版5を浮体
構造物と一体的に設け、浮体構造物の下面板8への波浪
外力50の伝達を軽減させるものである。本発明はこの
大規模浮体構造物を建造するにあたり、先ず、陸上又は
ドックにて下面板8外周に没水壁体9を有する多数の浮
体ユニット2、3として分割製作し、次にこの浮体ユニ
ット2、3を海中架台20上で接合端の気中部を溶接接
合して、複数の浮体ユニットからなる中ブロック4と
し、その後この中ブロック4を設置地点まで浮上曳航し
て、中ブロック4同士の接合端の気中部を溶接接合した
後、没水壁体9で囲まれた各浮体ユニット下面に圧縮空
気23を送り、海面上から浮上させ各浮体ユニットの未
接合部を気中溶接して、図2に示すような大規模浮体構
造物1を建造するものである。
【0007】図3〜図6は、本発明に用いる浮体ユニッ
トの例であって、このうち図3、図4は、大規模浮体構
造物1の外周部の浮体ユニットである。外周部の浮体ユ
ニット2では、下面外周の没水壁体9の一部を浮体構造
物の消波版5と兼ねることができる。浮体ユニットは、
上面板6と下面板8と格子状に設置された複数の隔壁7
で構成され、下面外周にはリブ付の没水壁体9が設けら
れており、消波版5以外の外周部は、隣接する浮体ユニ
ットと溶接接合する接合端部10が形成されている。な
お、各接合端部10には、隔壁接合端10b・下面接合
端10cの溶接作業のため、上面板に人孔11が設けら
れている。
【0008】図7は、前記浮体ユニットを中ブロック4
に接合する様子を示したものである。中ブロック4製作
場所は、できるだけ静穏な海域を選定するのが望まし
く、予め海中架台20を設けておく。この海中架台20
は海底に杭支持されるもので、潮位、浮体ユニットの吃
水高さを考慮し、上端レベルを決定する必要がある。即
ち、満潮時に浮上状態で浮体ユニットを海中架台20上
に配置し、潮位低下に伴って浮体ユニットの自重が海中
架台に載荷されるような軟着底方式にすることにより、
海中架台20の構造を簡素化することができる。
【0009】なお、海中架台上への浮体ユニットの載置
にあたっては、浮体ユニットの浮力を調整して吃水を変
える手段を講じても良い。海中架台に載置した浮体ユニ
ットは、隣接する浮体ユニットの接合端10を合致さ
せ、図8に示すように上面接合端10aを溶接した後人
孔11から接合端部10に入り、隔壁接合端10bの気
中部Aのみを溶接接合する。実施例では2ケの浮体ユニ
ットの接合しか示していないが、同様にして所要数の浮
体ユニットを接合し中ブロック4とする。次に、この中
ブロック4を満潮時に海中架台20上から離脱させ、浮
上曳航して設置地点まで移動させ、図9、図10に示す
ように、外周が没水隔壁9で囲まれた浮体ユニットの下
部にコンプレッサー30から配管32を通じて圧縮空気
33を送り、中ブロック4下面を海面40より上昇させ
隣接する中ブロック4の接合端10を合致させた後、上
面接合端10a、隔壁接合端10b、下面接合端10c
の溶接接合を行う。さらに、中ブロック4製作時未溶接
であった各浮体ユニットの没水接合部〔隔壁接合端下部
10b(中ブロック4移動時の水中部B)・下面接合端
10c〕を気中にて溶接する。同様の手段により全ての
中ブロック4同士の接合を行うことにより、大規模浮体
構造物1を完成させた後、圧縮空気33を排気して浮上
させる。
【0010】
【発明の効果】本発明によれば、従来例のない大規模な
浮体空港浮体人工島を、製作が容易な陸上ヤード又はド
ッグにて多数の浮体ユニット2、3に分割製作し、次に
複数の浮体ユニットを海中架台上20に軟着底させて接
合して中ブロック4化することにより、レベル合せを容
易とし、かつ軟着底により海中架台20の構造を簡素化
可能とし、更に設置地点でブロック4化したものを、海
面から浮上させて溶接接合して大規模浮体構造物1を建
造するため、大規模浮体構造物1を曳航しないで良いた
め大規模な曳航設備を必要とせず、曳航時の航路規制ス
ペースが軽減できるとともに、全ての溶接接合を気中で
行うため、溶接強度・品質を充分確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により建造された大規模浮体構造物の一
部省略断面図である。
【図2】本発明の大規模浮体構造物の全体図を示す図で
ある。
【図3】外側ユニットを示す図である。
【図4】外側ユニットの側面図である。
【図5】中間浮体ユニットを示す図である。
【図6】中間浮体ユニットの側面図である。
【図7】中ブロック製作状況を示す図である。
【図8】中ブロック接合状況を示す図である。
【図9】中ブロック接合による大規模浮体構造物建造状
況を示す図である。
【図10】中ブロック接合要領を示す図である。
【符号の説明】
1 大規模浮体構造物 2 外側浮体ユニット 3 中間浮体ユニット 4 中ブロック 5 消波版 6 上面板 7 隔壁 8 下面板 9 没水壁体 10 接合端 10a 上面接合端 10b 隔壁接合端 10c 下面接合端 11 人孔 20 架台 30 コンプレッサー 32 配管 33 圧縮空気 40 海面 50 波浪外力
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−93527(JP,A) 特開 昭52−15102(JP,A) 特開 昭55−39856(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B63B 9/06 107 B63B 35/44 B63B 35/38 B63B 35/53

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大規模浮体構造物1を下面外周に没水壁
    体9を有する多数の浮体ユニット2、3に分割製作し、
    この浮体ユニット2、3を海中架台20を設けたブロッ
    ク接合場所へ移動して架台上に軟着底させ、各浮体ユニ
    ット2、3同士の上面接合端10a及び隔壁接合端10
    bの気中部を溶接接合して中ブロック4とし、次に中ブ
    ロック4を設置場所へ浮上曳航し、各浮体ユニット2、
    3の下部に圧縮空気33を送り、接合しようとする中ブ
    ロック4下面を海面より上昇させた状態で中ブロック4
    同士の溶接接合を行うとともに、中ブロック4製作時未
    溶接の各浮体ユニット2、3の下面接合端10c及び隔
    壁の未接合端10bを溶接接合し、接合終了後、前記圧
    縮空気33を排気することを特徴とする大規模浮体構造
    物の建造方法
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