JP2927535B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

自動変速機の油圧制御装置

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JP2927535B2
JP2927535B2 JP2312324A JP31232490A JP2927535B2 JP 2927535 B2 JP2927535 B2 JP 2927535B2 JP 2312324 A JP2312324 A JP 2312324A JP 31232490 A JP31232490 A JP 31232490A JP 2927535 B2 JP2927535 B2 JP 2927535B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は自動変速機の油圧制御装置、特に変速中にラ
イン圧の可変制御を行うようにした自動変速機における
油圧制御装置に関する。
(従来の技術) 一般に自動車に搭載される自動変速機は、トルクコン
バータと変速歯車機構とを組合せ、この変速歯車機構の
動力伝達経路をクラッチやブレーキ等の複数の摩擦締結
要素の選択的作動により切り換えて、所定の変速段に自
動的に変速するように構成したもので、この種の自動変
速機には、上記各摩擦締結要素のアクチュエータに対す
る油圧の給排を制御する油圧制御回路が設けられる。
この油圧制御回路には、オイルポンプの吐出圧を所定
のライン圧に調整するレギュレータバルブ、手動操作に
よってレンジを切り換えるマニュアルバルブ、運転状態
に応じて作動して上記各アクチュエータに通じる油路を
切り換えることにより、複数の摩擦締結要素を選択的に
締結させる複数のシフトバルブ等が設けられる。また、
近年においては、上記レギュレータバルブによるライン
圧の調整値をエンジンのスロットル開度等の運転状態に
応じて変化させるためのデューティソレノイドバルブ
や、変速時に上記シフトバルブを作動させるON−OFFソ
レノイドバルブ等を備え、これらを電気的に制御するこ
とにより、変速制御の精度を向上させることが行われて
いる。
一方、この種の自動変速機においては、変速時におけ
る摩擦締結要素の締結もしくは解放動作に伴っていわゆ
る変速ショックが発生し、これが乗員に不快感を与える
という問題がある。そこで、上記のようにライン圧を電
気的に制御するようにした自動変速機においては、変速
時に該ライン圧を低下させる制御を行って、変速ショッ
クを低減させることが行われる。
そして、このような変速中のライン圧制御において
は、例えば特開開1−193446号公報に開示されているよ
うに、変速時間の学習によるライン圧の補正制御が行わ
れることがある。この制御は、変速時にその変速に要し
た時間を計測し、この変速時間を予め設定された目標時
間と比較して、その偏差が解消されるように、変速時に
おけるライン圧を補正するというものである。
(発明が解決しようとする課題) ところで、上記のような変速時における変速時間の学
習によるライン圧の補正制御においては、上記公報にも
記載されているように、作動油の温度が低い場合には、
学習動作を禁止することになる。
つまり、油温が低く、作動油の粘度が高い場合には通
常時よりも変速時間が長くなるため、この状態で変速時
間を学習すると、該変速時間を目標時間に一致させるた
めにライン圧が過度に高く補正されることになり、その
ため油温が上昇した後の変速時に、ライン圧が高過ぎて
変速ショックが効果的に解消されないことになる。そこ
で、このような誤学習を防止するために、低油温時には
変速時間の学習動作を禁止するのである。
しかし、このようにすると、学習の機会がそれだけ少
なくなり、変速中のライン圧制御の精度が十分に向上し
ないことになる。
本発明は、変速中におけるライン圧制御に際して、変
速時間の学習に基づく補正制御を行う場合に、誤学習を
回避しながら、この学習動作を低油温時にも実行可能と
し、もって変速中のライン圧制御の一層の精度の向上を
図ることを課題とする。
(課題を解決するための手段) 上記課題を解決するため、本発明は次のように構成し
たことを特徴とする。
すなわち、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置
は、油圧制御回路に設けられて摩擦締結要素に供給され
るライン圧を調整するライン圧調整手段と、該ライン圧
調整手段によって調整されるライン圧を変速時における
実変速時間と目標変速時間との偏差に応じて学習補正す
るライン圧補正手段とを有する自動変速機において、上
記ライン圧補正手段を、作動油の油温に拘らず学習補正
量を設定するように構成すると共に、上記ライン圧調整
手段を、エンジン負荷に応じて設定されたベースライン
圧に上記ライン圧補正手段によって設定された学習補正
量を付加することにより最終的に設定されるライン圧を
調整するように構成し、かつ、作動油の温度を検出する
油温検出手段と、上記ライン圧補正手段によって設定さ
れた学習補正量の最終的に設定されるライン圧への反映
度合を、上記油温検出手段によって検出された油温に応
じて修正する補正量修正手段とを備えたことを特徴とす
る。
(作用) 上記の構成によれば、変速時に、その変速時間の学習
に基づいてライン圧が補正され、その補正されたライン
圧で以後の変速が行われることになるので、変速中にお
けるライン圧制御が精度よく行われて、最適の変速時間
で変速が行われることになる。そして、特に本発明によ
れば、上記学習補正によるライン圧の補正量が油温に応
じて修正されるので、該油温が低温のときにも適正な補
正が行われることになる。従って、誤学習を回避しなが
ら、学習補正の回数を増加させることができて、変速中
のライン圧制御が一層精度よく行われることになる。
(実 施 例) 以下、本発明の実施例について説明する。
まず、第1図によりこの実施例に係る自動変速機の機
械的構成を説明すると、この自動変速機10は、主たる構
成要素として、トルクコンバータ20と、該コンバータ20
の出力により駆動される変速歯車機構30と、該機構30の
動力伝達経路を切換えるクラッチやブレーキ等の複数の
摩擦締結要素41〜46及びワンウェイクラッチ51,52とを
有し、これらにより走行レンジとしてのD,2,1,Rの各レ
ンジと、Dレンジでの1〜4速、2レンジでの1〜3
速、1レンジでの1〜2速とが得られるようになってい
る。
上記トルクコンバータ20は、エンジン出力軸1に連結
されたケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22
に対向状に配置されて該ポンプ22により作動油を介して
駆動されるタービン23と、該ポンプ22とタービン23との
間に介設され且つ変速機ケース11にワンウェイクラッチ
24を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ25
と、上記ケース21とタービン23との間に設けられ、該ケ
ース21を介してエンジン出力軸1とタービン23とを結合
するロックアップクラッチ26とで構成されている。そし
て、上記タービン23の回転がタービンシャフト27を介し
て上記変速歯車機構30側に出力されるようになってい
る。ここで、上記エンジン出力軸1にはタービンシャフ
ト27内を貫通するポンプシャフト12が連結され、該シャ
フト12により変速機後端部に備えられたオイルポンプ13
が駆動されるようになっている。
一方、上記変速歯車機構30はラビニョ型プラネタリギ
ヤ装置で構成され、上記タービンシャフト27上に遊嵌合
された小径のスモールサンギヤ31と、該サンギヤ31の後
方において同じくタービンシャフト27上に遊嵌合された
大径のラージサンギヤ32と、上記スモールサンギヤ31に
噛合された複数個のショートピニオンギヤ33と、前半部
が該ショートピニオンギヤ33に噛合され且つ後半部が上
記ラージサンギヤ32に噛合されたロングピニオンギヤ34
と、該ロングピニオンギヤ34及び上記ショートピニオン
ギヤ33を回転自在に支持するキャリヤ35と、ロングピニ
オンギヤ34に噛合されたリングギヤ36とで構成されてい
る。
そして、上記タービンシャフト27とスモールサンギヤ
31との間に、フォワードクラッチ41と第1ワンウェイク
ラッチ51とが直列に介設され、またこれらのクラッチ4
1,51に並列にコーストクラッチ42が介設されていると共
に、タービンシャフト27とキャリヤ35との間には3−4
クラッチ43が介設され、さらに該タービンシャフト27と
ラージサンギヤ32との間にリバースクラッチ44が介設さ
れている。また、上記ラージサンギヤ32とリバースクラ
ッチ44との間にはラージサンギヤ32を固定するバンドブ
レーキでなる2−4ブレーキ45が設けられていると共
に、上記キャリヤ35と変速機ケース11との間には、該キ
ャリヤ35の反力を受け止める第2ワンウェイクラッチ52
と、キャリヤ35を固定するローリバースブレーキ46とが
並列に設けられている。そして、上記リングギヤ36が出
力ギヤ14に連結され、該出力ギヤ14から差動装置を介し
て左右の車輪(図示せず)に回転が伝達されるようにな
っている。
ここで、上記各摩擦締結要素41〜46及びワンウェイク
ラッチ51,52の作動と変速段との関係をまとめると第1
表のようになる。
一方、この自動変速機には、第2図に示すように、上
記各摩擦締結要素41〜46を第1表に従って選択的に作動
させて、運転状態に応じた変速段を形成するための油圧
制御回路60が備えられている。この油圧制御回路60に
は、各摩擦締結要素41〜46に通じる締結圧供給油路を切
り換える変速用の第1〜第3ソレノイドバルブ61〜63
と、ロックアップクラッチ26の制御用の第4ソレノイド
バルブ64と、ライン圧を制御するためのデューティソレ
ノイドバルブ65とが設けられている。
そして、これらのソレノイドバルブ61〜65を制御する
コントローラ70が備えられ、該コントローラ70に、トル
クコンバータ20のタービン回転数を検出するタービン回
転数センサ(もしくは当該車両の車速を検出する車速セ
ンサ)71からの信号と、エンジンのスロットル開度を検
出するスロットル開度センサ72からの信号と、作動油の
油温を検出する油温センサ73からの信号と、運転者によ
って操作される変速モード選択スイッチ74からの信号と
が入力され、上記センサ71,72及びスイッチ74からの出
力信号が示すタービン回転数(もしくは車速)、スロッ
トル開度及び選択された変速モードとに基づいて変速制
御とロックアップ制御とを行い、また、これらのセンサ
71〜73及びスイッチ74からの出力信号に応じて変速中及
び非変速中のライン圧制御を行うようになっている。こ
こで、この実施例では、変速モードとして、変速点を低
タービン回転数(低車速)側に設定した燃費性能重視の
エコノミモードと、変速点を高タービン回転数(高車
速)側に設定した動力性能重視のパワーモードとの選択
が可能とされている。
次に、第3図により上記各摩擦締結要素41〜46のアク
チュエータに対して油圧を給排する油圧制御回路60につ
いて説明する。
この油圧制御回路60には、第1図に示すオイルポンプ
13からメインライン101に吐出された作動油の圧力を所
定のライン圧に調整するレギュレータバルブ81が備えら
れ、該レギュレータバルブ81によって調整されるライン
圧が上記デューティソレノイドバルブ65によって可変制
御されるようになっている。つまり、ソレノイドレデュ
ーシングバルブ82によって一定圧とされた油圧が、デュ
ーティソレノイドバルブ65によりデューティ率(1ON−O
FFサイクルのON時間比率)に応じた値のパイロット圧に
調整され、このパイロット圧がライン102を介してレギ
ュレータバルブ81の増圧ポート81aに導入されることに
より、ライン圧が該パイロット圧ないし上記デューティ
率に応じた値に調整されるのである。
このライン圧は、運転者により手動操作されるマニュ
アルバルブ83の入力ポートaに供給され、該バルブ83の
シフト位置(レンジ)P,R,N,D,2,1に応じて、出力ポー
トb,c,d,eに選択的に出力されるようになっている。つ
まり、Dレンジ及び2レンジではポートb,cに、1レン
ジンではポートb,dに、Rレンジではポートeにそれぞ
れ出力される。
そして、D,2,1の各前進レンジでライン圧が出力され
るポートbは、ライン103を介して1−2シフトバルブ8
4に連通されている。この1−2シフトバルブ84は、上
記第1ソレノイドバルブ61によって切り換え作動され、
1速では該ソレノイドバルブ61がOFF(閉)とされるこ
とにより、スプール84aが図面上(以下、同様)左側に
位置し、2−4ブレーキ45のアプライ室45aに通じるラ
イン104をドレンさせる。また、2〜4速では上記第1
ソレノイドバルブ61がON(開)となることにより、スプ
ール84aが右側に位置して、上記ポートbから導かれた
ライン103を上記ライン104に連通させ、ライン圧を上記
2−4ブレーキ45のアプライ室45aに導入させる。さら
に、この1−2シフトバルブ84は、1レンジの1速で
は、上記ポートdからローレデューシングバルブ85が設
けられたライン105を介してライン圧が供給され、これ
をライン106,107を介してローリバースブレーキ46に供
給する。
また、上記マニュアルバルブ83のポートbからのライ
ン圧は、ライン103,108,109を介して2−3シフトバル
ブ86の一端にパイロット圧として供給されると共に、該
2−3シフトバルブ86にはポートcからライン110を介
してライン圧が供給される。そして、上記パイロット圧
が第2ソレノイドバルブ62によって給排制御されること
により、該ソレノイドバルブ62がON(開)となる1,2速
では、2−3シフトバルブ86のスプール86aが右側に位
置して、3−4クラッチ43に通じるライン111がドレン
されると共に、OFF(閉)となる3,4速では、スプール86
aが左側に位置して、上記ライン110からのライン圧をラ
イン111を介して3−4クラッチ43に供給する。
また、上記ライン111は、3−4シフトバルブ87にも
導かれている。この3−4シフトバルブ87は、第3ソレ
ノイドバルブ63によってパイロット圧の給排が制御さ
れ、該ソレノイドバルブ63がON(開)となるDレンジの
1,2,4速、及び2レンジの1速では、スプール87aが右側
に位置することにより、2−4ブレーキ45のリリース室
45bに通じるライン112をドレンさせる。また、該ソレノ
イドバルブ63がOFF(閉)となるDレンジの3速、2レ
ンジの2,3速、及び1レンジの1,2速では、該3−4シフ
トバルブ87のスプール87aが左側に位置して、2−3シ
フトバルブ86に接続されているライン111を上記ライン1
12に連通させる。従って、2−3シフトバルブ86のスプ
ール86aの位置に応じて、2−4ブレーキ45のリリース
室45bにライン圧が供給される。
さらに、この3−4シフトバルブ87は、マニュアルバ
ルブ83のポートbにライン103,108を介して接続された
ライン113とコーストクラッチ42に通じるライン114とを
連通し、もしくは遮断することにより、該コーストクラ
ッチ42の作動を制御する。
このようにして、第1〜第3ソレノイドバルブ61〜63
のON,OFF動作により各摩擦締結要素が要求されている変
速段に応じて、第1表に従って選択的に締結されるよう
になっている。そして、この油圧制御回路60には、変速
ショックの低減等のため、上記の各バルブに加えて、1
−2アキュムレータ88、2−3アキュムレータ89、2−
3タイミングバルブ90、N−Dアキュムレータ91、N−
Rアキュムレータ92、3−2タイミングバルブ93、及び
バイパスバルブ94等が備えられている。さらに、第4ソ
レノイドバルブ64によってパイロット圧の給排が制御さ
れて、ロックアップクラッチ26を締結させもしくは解放
させるロックアップコントロールバルブ95、及びトルク
コンバータ20に供給される作動圧を調整するコンバータ
リリーフバルブ96等が備えられている。
次に、上記コントローラ70及びデューティソレノイド
バルブ65によるライン圧制御の具体的動作を、第4図以
下のフローチャートに従って説明する。
第4図のフローチャートはライン圧制御のメインルー
チンを示すもので、このルーチンでは、まずステップS1
で変速すべき時期であるか否かを判定し、変速時期でな
いと判定した場合には、ステップS2による非変速中のラ
イン圧制御を、変速時期であると判定した場合には、ス
テップS3による変速中のライン圧制御をそれぞれ実行す
る。また、変速時期であると判定した場合は、ステップ
S4でその変速がシフトアップ変速であるか否かを判定
し、シフトアップ変速時にはステップS5による変速時間
の学習によるライン圧の補正制御を、シフトダウン変速
時にはステップS6による吹き上がり回転数の学習による
ライン圧の補正制御をそれぞれ行う。
上記ステップS2による非変速中のライン圧制御は、第
5図にフローチャートを示すサブルーチンに従って次の
ように行われる。
このサブルーチンでは、ステップS11,S12で、エンジ
ンのスロットル開度及びトルクコンバータのタービン回
転数を第2図に示すそれぞれのセンサ72,71からの信号
に基いて読み込み、次いでステップS13で、これらのス
ロットル開度及びタービン回転数に応じたライン圧の目
標値Pを予め設定されたマップから読み取る。
そして、ステップS14で、この目標ライン圧Pに対応
するデューティソレノイドバルブ65のデューティ率Dを
後述するサブルーチンに従って決定すると共に、ステッ
プS15で、該デューティソレノイドバルブ65に出力する
デューティ駆動信号の周波数を例えば35Hzに設定し、さ
らにステップS16で、このデューティ率Dと駆動周波数
の逆数である周期とに基づいて、デューティソレノイド
バルブ65の1ON−OFFサイクル中のON時間を算出する。そ
して、ステップS17で、上記のようにして求めたON時間
となるように、デューティソレノイドバルブ65にデュー
ティ駆動信号を出力する。これにより、第3図に示すレ
ギュレータバルブ81の増圧ポート81aに供給されるパイ
ロット圧が調整され、ライン圧が上記ステップS13で求
めた目標ライン圧Pに制御されることになる。
一方、第4図のステップS3による変速中ライン圧制御
は、第6図にフローチャートを示すサブルーチンに従っ
て次のように行われる。
このサブルーチンでは、ステップS21で今回の変速が
シフトアップ変速であるか否かを判定し、シフトアップ
変速である場合には、ステップS22でスロットル開度を
読み込むと共に、ステップS23でこのスロットル開度と
今回の変速の種類、即ち変速前後の変速段とに基づいて
目標ライン圧Pを設定する。つまり、コントローラ70の
メモリには、第7図に示すように、スロットル開度と変
速の種類とに応じた目標ライン圧Pが予めマップとして
設定されており、このマップから今回の変速時における
目標ライン圧Pを読み取るのである。これは、シフトア
ップ変速時における各摩擦締結要素の必要トルク容量
が、入力トルクに対応するスロットル開度によって変化
するだけなく、いずれの変速段間の変速であるかによっ
ても異なることに着目し、各変速段間のシフトアップ変
速について、常に最適のトルク容量が得られるようにす
るものである。具体的には、第8図に示す従来のライン
圧P′より低めに設定され、且つ各変速の種類によって
異なる特性とされている。なお、この目標ライン圧P
は、詳しくは、第4図のステップS5に示す変速時間の学
習によるライン圧補正制御として、後述するサブルーチ
ンに従って設定され、その場合に、第7図に示すマップ
は、変速中の燃料カット制御が実行されるか否かによっ
て異なるものが作成される。
また、今回の変速がシフトダウン変速である場合は、
ステップS24で3−2シフトダウン変速であるか否かを
判定し、3−2シフトダウン変速でない場合には、ステ
ップS25で第4図のステップS2による制御と同様の制
御、つまり第5図のサブルーチンによる非変速中のライ
ン圧制御を実行する。
これに対して、今回の変速が3−2シフトダウン変速
である場合には、ステップS26でタービン回転数を読み
込むと共に、ステップS27で、このタービン回転数に応
じたベースライン圧P0を第9図に示すように予め設定さ
れたマップから読み取る。ここで、3−2シフトダウン
変速時にのみ、このようなベースライン圧P0を設定する
のは、この変速時には第1図及び第3図に示す3−4ク
ラッチ43の解放動作と2−4ブレーキ45の締結動作が同
時に行われるので、これらの動作のタイミングを調整す
る必要があると共に、特に2−4ブレーキ45の最適締結
タイミングがタービン回転数によって異なるので、ライ
ン圧もタービン回転数に対応させて変化させるためであ
る。なお、このベースライン圧P0は、詳しくは、第4図
のステップS6に示す吹き上がり回転数の学習によるライ
ン圧補正制御において、後述するサブルーチンに従って
設定される。
そして、この3−2シフトダウン変速時には、次にス
テップS28でスロットル開度の変化率を算出すると共
に、ステップS29で、このスロットル開度変化率に応じ
て第10図に示すような特性で予め設定されたマップから
補正係数C1を求め、この補正係数C1を上記ベースライン
圧P0に掛けることにより目標ライン圧Pを設定する。こ
れは、スロットル開度変化率が大きいときは、シフトダ
ウン変速によるタービン回転数の上昇速度も大きくなる
ので、これに対応させて2−4ブレーキ45の締結タイミ
ングを早めるためである。
そして、以上のようにして、ステップS23またはステ
ップS29で目標ライン圧Pが設定されると、ステップS30
〜S33で、前述の非変速中のライン圧制御を示す第5図
のフローチャートのステップS14〜S17と同様にして、目
標ライン圧Pに応じたデューティ率Dの決定、デューテ
ィ駆動信号の周波数の設定、デューティON時間の算出、
及びデューティソレノイドバルブ65へのデューティ駆動
信号の出力の各動作を行なう。これにより、変速中にお
けるライン圧がそれぞれの変速に適した値に制御される
ことになる。ここで、この変速中においては、ライン圧
制御の応答性を高めるため、上記デューティ駆動信号の
周波数は例えば70Hzに設定される。
次に、第5図のステップS14及び第6図のステップS30
によるデューティ率Dの決定動作のサブルーチンを第11
図のフローチャートによって説明する。
このサブルーチンでは、ステップS41で、第5図また
は第6図のサブルーチンで設定された目標ライン圧Pを
読み込み、次いでステップS42で第2図に示す油温セン
サ73からの信号に基づいて、当該自動変速機の作動油の
油温を読み込む。そして、ステップS43で、そのときの
油温とライン圧とに応じたベースデューティ率D0を、第
12図に示すように複数の油温について予め設定されたマ
ップから求める。ここで、ベースデューティ率D0を設定
するためのパラメータとして油温を用いるのは、目標ラ
イン圧Pを得るためのデューティ率Dが油温によって異
なるからであり、また、実際の油温が予めマップが設定
されている油温に該当しないときは、これらのマップか
ら線形補間法によってベースデューティ率D0が求められ
る。
次に、ステップS44で、エンジンのキーオン後の経過
時間を測定し、ステップS45でこの経過時間に応じた補
正係数C2を第13図に示すように予め設定されたマップか
ら読み取る。つまりエンジンないし自動変速機の作動直
後においては、油圧制御回路中におけるエアの存在によ
り、デューティ率に対する制御圧の特性が通常時とは異
なるので、これを補正するのである。
そして、ステップS46で、この補正係数C2を上記ベー
スデューティ率D0に掛けることにより最終デューティ率
Dを算出し、これを第5図及び第6図のライン圧制御で
用いる。
また、第4図のステップS6による吹き上がり回転数の
学習によるライン圧補正制御、つまり、第6図のステッ
プS27で設定される3−2シフトダウン変速時における
ベースライン圧P0に対する補正制御は、第14図にフロー
チャートを示すサブルーチンによって行われる。
このサブルーチンでは、ステップS51でタービン回転
数を読み込み、次いでステップS52で、変速前のタービ
ン回転数から変速後の目標タービン回転数N0を算出す
る。次に、ステップS53で、タービン回転数の変化率を
算出すると共に、ステップS54で、この変化率が所定値
以下となったか否か、つまり第15図に示すタービン回転
数の変化における変速終了時期に相当する点X0に達した
か否かを判定する。そして、この点X0に達すれば、ステ
ップS55でそのときのタービン回転数Nを読み込むと共
に、ステップS56で、この変速終了時のタービン回転数
Nの上記変速後の目標タービン回転数N0に対する偏差Δ
N(=N−N0)を算出する。
次に、ステップS57で、上記偏差ΔNに応じた補正係
数C3を第16図に示すように予め設定されたマップから読
み取り、ステップS58で、この補正係数C3を第6図のス
テップS27で設定された3−2シフトダウン変速時のベ
ースライン圧P0に掛けることにより、該ベースライン圧
P0を補正する。その場合に、変速終了時のタービン回転
数Nの目標回転数N0に対する偏差ΔNが0であれば補正
係数C3=1とされ、該偏差ΔNが正のとき(変速終了時
のタービン回転数が第15図のN1のように目標回転数N0
り大きいとき)は、補正係数C3>1とされ、また偏差Δ
Nが負のとき(変速終了時のタービン回転数が第15図の
N2のように目標回転数N0より小さいとき)は、補正係数
C3<1とされる。つまり、3−2シフトダウン変速の終
了時にタービン回転数ないしエンジン回転数が吹き上が
る場合にはベースライン圧P0を高くする方向に補正し、
該回転数が引き込まれる場合には該ベースライン圧P0
低くする方向に補正し、これによって当該3−2シフト
ダウン変速時における3−4クラッチ43の解放動作と2
−4ブレーキ45の締結動作とが最適タイミングで行われ
ることになる。
一方、本案の特徴部を構成する第4図のフローチャー
トのステップS5で行われる変速時間の学習によるライン
圧補正制御、つまり第6図に示す変速中のライン圧制御
において、ステップS23として行われるシフトアップ変
速時の目標ライン圧Pを設定する制御は、第17図にフロ
ーチャートを示すサブルーチンによって次のように行わ
れる。
この制御では、まずステップS61,S62で、タービン回
転数及びスロットル開度を読み込み、次いでステップS
63で変速前のタービン回転数から変速後の目標タービン
回転数を算出すると共に、ステップS64で変速動作が終
了したか否か、即ちタービン回転数がシフトアップ変速
により上記目標回転数まで低下したか否かを判定し、該
目標回転数まで低下したときに変速動作が終了したもの
と判定する。
次に、ステップS65で変速動作の開始時から終了時ま
での変速時間Tを算出し、またステップS66で変速中に
おける平均スロットル開度((変速開始時の開度+変速
終了時の開度)/2)を算出すると共に、ステップS
67で、変速中の燃料カット制御が行われたか否かを判定
する。この変速中の燃料カット制御は、変速時にエンジ
ンへの燃料の供給を停止させてエンジン出力を低下させ
ることにより、変速ショックを低減するためのもので、
エンジン出力が大きくなるスロットル開度が4/8以上で
の変速時に実行されるようになっている。
そして、この燃料カット制御が行われなかった場合に
はステップS68〜S71により、また該制御が行われた場合
にはステップS72〜S75により、ライン圧の補正量を設定
する制御をそれぞれ実行する。これらの制御は略同様に
行われ、まず、変速の種類及び燃料カット制御の有無に
応じて予め設定されているマップから該当するベース変
速時間T0又はT0′(「′」は燃料カット制御実行時の値
を示す、以下同様)を読み込み(ステップS68,S72)、
次いで、上記ステップS66で算出した変速中の平均スロ
ットル開度に応じた補正係数C4又はC4′を第18,19図に
示すように予め設定されたマップから読み取り、この補
正係数C4又はC4′を上記ベース変速時間T0又はT0′に掛
けることにより最適変速時間T1又はT1′を算出する(ス
テップS69,S73)。
ここで、上記補正係数C4,C4′を示す第18,19図のa1,a
2,…,a1′,a2′,…等の数値は、1より大きく且つ添え
字が小さいほど大きな値とされ、従って上記最適変速時
間T1,T1′は低スロットル開度時ほど長くなる。これ
は、低スロットル開度時ほど変速ショックが顕著に現れ
ることに対処するためである。なお、第19図の燃料カッ
ト制御実行時のマップでは、該制御が行われる平均スロ
ットル開度が8/4以上の場合についてのみ、補正係数
C4′の値が設定されている。
そして、ステップS65で求めた実変速時間Tと、上記
最適変速時間T1又はT1′とを比較し、その偏差ΔT(=
T−T1)又はΔT′(=T−T1′)を算出すると共に
(ステップS70,S74)、その偏差ΔT又はΔT′に応じ
たライン圧の補正量ΔP又はΔP′を第20,21図に示す
ように予め設定されたマップから読み取る。その場合
に、第20,21図におけるb1,b2,b1′,b2′等の数値は、0
より大きく且つ添え字が大きいほど大きな値とされてい
る。従って、ライン圧補正量ΔP,ΔP′は、偏差ΔT,Δ
T′が正のとき(実変速時間Tが最適変速時間T1又は
T1′より長いとき)は、その偏差ΔT,ΔT′が大きいほ
ど大きな値とされ、偏差ΔT,ΔT′が負のとき(実変速
時間Tが最適変速時間T1より短いとき)は、その偏差Δ
T,ΔT′が小さいほど(絶対値が大きいほど)負の大き
な値とされる。また、同じ偏差に対しては、燃料カット
制御実行時のライン圧補正量ΔP′の絶対値は、該制御
非実行時のライン圧補正量ΔPの絶対値より小さな値と
されている(例えばb1′<b1)。これは、燃料カット制
御実行時にはエンジン出力が低下しているので、これに
対応させてライン圧の補正量も少なくするためである。
このようにして変速時間の学習により、今回の変速の
種類、変速中の平均スロットル開度及び変速中の燃料カ
ット制御の有無に応じたライン圧補正量ΔP又はΔP′
が設定される。そして、次に、このライン圧補正量ΔP
又はΔP′が、当該自動変速機の作動油の油温によって
修正される。
つまり、ステップS76で油温を読み込み、次いでステ
ップS77で、その油温に応じた補正係数C5を第22図に示
すような特性で予め設定されたマップから読み込むと共
に、この補正係数C5を上記ステップS71又はS75で求めた
ライン圧補正量ΔP又はΔP′に掛けることにより、こ
れらの補正量を修正する。その場合に、第22図に示すよ
うに、上記補正係数C5は所定油温(例えば60℃)以下
で、1より小さくなり且つ油温が低くなるほど0に近づ
くように設定されている。従って、当該変速時間の学習
によるライン圧の補正の効果が低油温時ほど弱められる
ことになる。
また、このようにして油温に応じて修正されたライン
圧補正量ΔP又はΔP′は、さらに変速モードと、上記
ステップS66で算出した変速中の平均スロットル開度
と、燃料カット制御の有無とに応じて修正される。
つまり、ステップS78で、変速モードがエコノミモー
ドとパワーモードのいずれであるかを読み込み、次いで
ステップS79で変速中の燃料カット制御が実行されてい
るか否かを判定する。そして、該燃料カット制御が実行
されていない場合は、ステップS80〜S82により、また実
行されている場合はステップS83〜S85により、上記ステ
ップS77で修正したライン圧補正量ΔP又はΔP′をさ
らに修正し、これらを用いて最終ライン圧Pを設定す
る。
この最終ライン圧Pの設定は、燃料カット制御の実行
時と非実行時とで略同様に行われ、まず、上記ステップ
S78で読み込んだ変速モードと、上記平均スロットル開
度とに応じて第23,24図に示すように予め設定されたマ
ップから該当する補正係数C6又はC6′を読み取る(ステ
ップS80,S83)。その場合に、これらの補正係数C6,C6
を示す第23,24図のマップにおけるcP1,cP2,…,cE1,cE2,
…,cP1′,cP2′,…,cE1′,cE2′,…等の数値は、1以
下で且つ添え字が小さいほど小さい値とされている。ま
た、同一平均スロットル開度に対してはエコノミモード
時の値がパワーモード時の値より小さく(例えば、CE1
<CP1)、且つ燃料カット制御実行時の値が非実行時の
値よりも小さくされている(例えば、CP1′<CP1)。こ
れは、低スロットル開度時、エコノミモード時、燃料カ
ット制御実行時に、それぞれライン圧の補正量を少なく
するためである。
そして、次に、燃料カット制御の実行時と非実行時の
それぞれについて、スロットル開度及び変速の種類に応
じた変速時のベースライン圧P0又はP0′を第25,26図に
示すように予め設定されたマップから読み取り(ステッ
プS81,S84)、このベースライン圧P0又はP0′と、上記
補正係数C6又はC6′と、ライン圧補正量ΔP又はΔP′
とを用いて、次のいずれかの式により最終ライン圧Pを
算出する(ステップS82,S85)。
燃料カット制御非実行時 P=P0+ΔP×C6 燃料カット制御実行時 P=P0′+ΔP′×C6′ 以上により、変速時間の学習による最終ライン圧Pの
設定が終了し、これが今回の変速時における変速の種
類、スロットル開度及び燃料カット制御の有無に応じた
新たな目標ライン圧として、第7図のマップを記憶して
いるメモリの該当するエリアに登録される。そして、以
後の変速時に、このマップから該当する目標ライン圧が
読み出され、このライン圧となるように前述の制御が行
われる。
なお、上記実施例においては、最終ライン圧としての
目標ライン圧を記憶更新するようにしたが、ライン圧補
正量を記憶更新して、これをベースライン圧に加算して
目標ライン圧を得るように構成してもよく、この場合も
同様の効果が得られる。
(発明の効果) 以上のように、本発明によれば、変速中のライン圧制
御に際して、変速時間の学習によるライン圧の補正制御
が行われると共に、この制御によって得られるライン圧
補正量が作動油の油温に応じて修正されるので、変速時
間が通常よりも長くなる低油温時にも適正な補正が行わ
れることになる。これにより、この種の自動変速機にお
いて、誤学習を回避しながら学習補正の回数を増加させ
ることが可能となって、変速中のライン圧制御が一層精
度よく行われ、もって変速時間が適切で且つ変速ショッ
クの小さい変速が実現されることになる。
また、本発明では、作動油の油温に応じた修正が、こ
の油温に拘らずに設定された学習補正量に対して行なわ
れるので、学習制御のプロセスを油温に拘らず共通化で
きると共に、制御に用いられる記憶手段の容量の大幅な
増大が回避される利点がある。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の実施例を示すもので、第1図は自動変速
機の機械的構成を示す骨子図、第2図は制御システム
図、第3図は油圧制御回路図、第4図はライン圧制御の
メインルーチンを示すフローチャート図、第5、第6図
はそれぞれ非変速中及び変速中のライン圧制御のサブル
ーチンを示すフローチャート図、第7〜10図は第6図の
サブルーチンで用いられるマップの説明図、第11図はデ
ューティ率決定のサブルーチンを示すフローチャート
図、第12図(a),(b),(c)及び第13図はこのサ
ブルーチンで用いられるマップの説明図、第14図は吹き
上がり回転数の学習によるライン圧補正制御のサブルー
チンを示すフローチャート図、第15図はこのサブルーチ
ンの作動説明図、第16図はこのサブルーチンで用いられ
るマップの説明図、第17図は変速時間の学習によるライ
ン圧補正制御のサブルーチンを示すフローチャート図、
第18〜26図はこのサブルーチンで用いられるマップの説
明図である。 10……自動変速機、60……油圧制御回路、65,81……ラ
イン圧調整手段(デューティソレノイドバルブ、レギュ
レータバルブ)、70……ライン圧補正手段、補正量修正
手段(コントローラ)、73……油温検出手段(油温セン
サ)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16H 59/00 - 61/12 F16H 61/16 - 61/24 F16H 63/40 - 63/48

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】油圧制御回路に設けられて摩擦締結要素に
    供給されるライン圧を調整するライン圧調整手段と、該
    ライン圧調整手段によって調整されるライン圧を変速時
    における実変速時間と目標変速時間との偏差に応じて学
    習補正するライン圧補正手段とを有する自動変速機の油
    圧制御装置であって、上記ライン圧補正手段は、作動油
    の油温に拘らず学習補正量を設定するように構成されて
    いると共に、上記ライン圧調整手段は、エンジン負荷に
    応じて設定されたベースライン圧に上記ライン圧補正手
    段によって設定された学習補正量を付加することにより
    最終的に設定されるライン圧を調整するように構成され
    ており、かつ、作動油の温度を検出する油温検出手段
    と、上記ライン圧補正手段によって設定された学習補正
    量の最終的に設定されるライン圧への反映度合を、上記
    油温検出手段によって検出された油温に応じて修正する
    補正量修正手段とが備えられていることを特徴とする自
    動変速機の油圧制御装置。
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