JP2925704B2 - 馬鈴薯汁液の精製法 - Google Patents

馬鈴薯汁液の精製法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、馬鈴薯澱粉製造工程において排出される馬
鈴薯汁液の精製法に関するものであり、更に詳しくは澱
粉分離後の濃厚汁液から加熱凝固物(ポテトプロテイ
ン)を除去し、脱臭・脱色処理した脱蛋白液の不快な味
を除去する方法に関するものである。
馬鈴薯の脱蛋白汁液は、小麦粉の性質を改良し、ケー
キの浮きをよくするため製菓改良剤(特開平2−104239
号)として利用される。
また、この脱蛋白液には、糖、アミノ酸、有機酸等が
含まれ、味覚の改良に効果があるため、これを精製して
食品素材として用いること(特願平2−36722号)も行
われている。
しかし、この精製した脱蛋白液にえぐ味などの独特の
不快な味を感じることがある。この発明は、このような
不快な味を除去するとき利用される。
従来の技術 馬鈴薯から澱粉を製造する際、排出される廃水は河川
の汚染の原因となり社会的な問題となっている。
従って、馬鈴薯の総合的な利用の観点からみても排出
される馬鈴薯汁液の利用が望まれるが、現在のところ濃
厚汁液は、ポテトプロテインの回収、脱水澱粉粕と混合
して飼料とする、畑や草地へ肥料として直接散布するな
どの方法が試みられているにすぎない。
なお、一部の澱粉工場では、馬鈴薯の磨砕乳から澱粉
を分離した後の濃厚汁液に含まれる蛋白を加熱凝固させ
て回収したポテトプロテインを、飼料として利用するこ
とが試みられている。しかし、蛋白質回収後の残液(脱
蛋白液)には、まだ有機物が多量に残り、その濃度が高
いため、そのままでは河川に流すことができず、肥料と
して畑や牧草地に散布されている。
一方、資源の有効利用や付加価値を高めるという点か
らみると、濃厚液を食糧化することが好ましいが、最近
ではポテトプロテインの利用法として、その酵素的加水
分解による栄養組成物とすること(特開昭64−20060)
が提案されている。
しかし、ポテトプロテイン回収後の脱蛋白液は、着色
して黒褐色をしており、しかも特有の不快な臭を呈する
ため畑や草地への散布する以外に利用法がなく、その利
用研究もほとんどなされていなかった。
本発明の発明者らは、不快な臭を有する黒褐色の脱蛋
白液の脱臭・脱色法について研究し、イオン交換樹脂及
び活性炭で処理するとよいことを見いだし、脱蛋白液の
精製法として特許(特願2−36722号)に出願してい
る。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、この脱蛋白液の精製法による処理は脱
臭・脱色に効果があったが、不快な味の除去には充分な
効果があるとはいえなかった。特に、ケーキのように製
品の持っている風味が弱い嗜好製品に使用した場合や添
加量が多い場合には、ややえがらっぽいえぐ味をした不
快な味を感じる場合があった。
課題を解決するための手段 本発明の発明者らは、このような不快な味を解決すべ
く鋭意研究を行った結果、脱蛋白液をトランスグルコシ
ダーゼを用いて酵素処理をすることにより、不快な味が
除去できることを見出し、この発明を完成させた。
本発明では、馬鈴薯澱粉製造工程において排出される
脱蛋白液、すなわち馬鈴薯の磨砕乳から澱粉を分離した
後の濃厚汁液から蛋白を分離した黒褐色をして不快な臭
を有する脱蛋白液を用い、これをイオン交換樹脂及び活
性炭で処理して脱臭・脱色した脱蛋白液とし、この脱臭
・脱色した脱蛋白液が有する不快な味をトランスグルコ
シダーゼで改良している。
すなわち、本発明は、既に提示した脱蛋白液の精製法
(特願平2−36722号)により処理した脱臭・脱色した
脱蛋白液をトランスグルコシダーゼにより酵素処理し
て、不快な味のない脱蛋白液とするものである。
本発明を実施するには、先ず、馬鈴薯澱粉製造工程に
おいて馬鈴薯から澱粉などを取り去った濃厚汁液を加熱
して熱凝固性蛋白質(ポテトプロテイン)を回収したと
き後に残る残液である脱蛋白液を用い、これをイオン交
換樹脂及び活性炭で処理し、無色ないしはわずかに黄色
味を帯びた脱臭・脱色した脱蛋白液とする。
ここに用いる活性炭としては、脱色及び脱臭能のある
活性炭であればよく、例えば木質活性炭ややし殻活性炭
などが利用できる。
さらに、イオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂
がよく、特にスチレン系の樹脂が好ましいく、なかでも
アニオン交換基として第3級アミン基あるいは第4級ア
ンモニウム基を有するものが好ましい。
脱蛋白液の脱臭・脱色処理は、活性炭処理を行った脱
蛋白液または活性炭処理を行わない脱蛋白液をイオン交
換樹脂により処理した後、さらに活性炭処理することに
より行う。
イオン交換樹脂による処理を行うには、バッチ法又は
カラム法が用いられる。
バッチ法として例えば、活性化したイオン交換樹脂と
処理液とを混合し、両者がよく接触するように撹拌もし
くは振盪し、処理液中の臭い及び着色物質をイオン交換
樹脂に吸着後、イオン交換樹脂を除去する方法で行われ
る。このときの樹脂の使用量は、処理液1当たり50g
位で充分である。また、この量のイオン交換樹脂を使用
した場合、処理時間は、1時間前後が好ましい。
カラム法として、例えば活性化したイオン交換樹脂を
カラムに充填し、脱蛋白液を上部より流通させることに
より処理液中の臭い及び着色物質をイオン交換樹脂に吸
着させ、カラムの下から流出する流出液を取得する方法
で処理される。
このようにしてイオン交換樹脂で処理した脱蛋白液
は、引き続き活性炭で処理する。処理の方法は、イオン
交換樹脂と同様にバッチ式又はカラム式で行える。
次いで、脱臭・脱色処理した脱蛋白液にトランスグル
コシダーゼを作用させ、酵素処理を行う。
ここに用いるトランスグルコシダーゼは、糖転移作用
を持つアルファグルコシダーゼであれば、その種類、起
源を問わず利用でき、例えば黒麹菌(アスペルギルス・
サイトイ)などのアスペルギルス属、リゾプス属或はム
コール属などの糸状菌の培養液から分離したトランスグ
ルコシダーゼなどが使用される。
特に、天野製薬から発売されているトランスグルコシ
ダーゼ配合四段用酵素製剤の利用は、菌の培養と培養物
から酵素を分離し、精製する手間が省けるだけでなく、
容易に入手でき、しかも品質が安定しているので便利で
ある。
酵素処理は、脱臭・脱色処理した脱蛋白液にトランス
グルコシダーゼを加え、加温することにより実施避され
る。
加温は、pH5.0〜5.5にて、40〜55℃の範囲で行うのが
好ましい。このとき、脱臭・脱色処理した脱蛋白液にぶ
どう糖を添加してから酵素処理してもよい。
また、処理時間は、添加する酵素の量や温度などによ
り異なるが、前記トランスグルコシダーゼ配合四段用酵
素製剤を0.2(W/V)%添加した場合、40〜55℃において
15〜24時間処理したとき、好ましい結果が得られた。
脱臭・脱色して酵素処理した脱蛋白液は、液体のまま
食品素材として用いてもよいが、澱粉、デキストリン、
カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、大豆蛋白などの粉
末化助剤を添加し、または添加せずに噴霧乾燥、凍結乾
燥、真空乾燥などの公知の乾燥法により乾燥し、粉末あ
るいは顆粒状として用いることもできる。
このように酵素処理した脱蛋白液をそのまま又は粉末
として食品に添加した場合、例え使用量が多くても不快
な味は感じられず、好ましい味覚のものとなった。
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1 馬鈴薯澱粉廃液である濃厚汁液から熱凝固物を除去し
た脱蛋白液(ホクレン芽室澱粉工場から入手)を活性化
したポリスチレン系アニオン交換樹脂を詰めたカラムに
通した後活性炭粉末を加え、脱臭、脱色処理を行った。
この脱臭・脱色処理した脱蛋白液1にトランスグル
コシダーゼ製剤(天野製薬製、四段用酵素剤TG−B)を
2g加え、50℃にて20時間作用させた後加熱処理して酵素
作用を停止させた。得られた酵素処理した脱蛋白液は、
不快な味の無い、透明な液体であった。
なお、得られた酵素処理した脱蛋白液1を凍結乾燥
して白色の粉末135gを得た。
また、酵素処理した脱蛋白液3に分枝デキストリン
900gを加え、噴霧乾燥して白色の粉末1050gを得た。
実施例2 実施例1に記載の脱臭・脱色処理した脱蛋白液1に
ぶどう糖10gを添加し、トランスグルコシダーゼ製剤
(天野製薬製、四段用酵素剤TG−B)を2g加え、45℃に
て15時間作用させた。得られた液は、不快な味を感じな
い透明な液体であった。この処理液にカゼイン100gを加
え、凍結乾燥して白色の粉末230gを得た。
試験例 スポンジケーキの原料配合物に、脱臭・脱色処理した
が酵素処理をしていない馬鈴薯の脱蛋白液(酵素処理
前、対照区とする)、また実施例1に従い酵素処理した
脱蛋白液(酵素処理後、試験区とする)を加え、オール
インミックス法にてスポンジケーキを調製し、10名のパ
ネラーにより味覚を検査する官能試験を行った。
なお、スポンジケーキの原料配合は、表1の通りで
り、数値は重量部で示してある。
スポンジケーキは、表1に示す原料を全部ミキサーの
ボールに入れ、比重が0.48〜0.50となるまでに泡立てた
後、その泡立てた原料混合物の400gを直径が16cmの型に
流し込み、180℃に調節したオーブンで30分間焼成して
作った。
このスポンジケーキにえぐ味を感じるか否かの官能試
験を行った結果、表2のようになった。表の対照区は酵
素処理をする前の脱蛋白液を用いたものであり、試験区
は酵素処理をした脱蛋白液を用いたものである。
この結果から、対照区のスポンジケーキには全員がえ
ぐ味を感じたが、試験区のスポンヂケーキはほとんどの
人がえぐ味を感じなかったことが知れる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】馬鈴薯澱粉製造工程において澱粉を分離し
    た後の濃厚汁液から蛋白を分離した脱蛋白液をイオン交
    換樹脂及び活性炭で処理した後、トランスグルコシダー
    ゼにより酵素処理することを特徴とする馬鈴薯汁液の精
    製法。
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