JP2925703B2 - 豚の飼料の給与方法 - Google Patents

豚の飼料の給与方法

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Description

【発明の詳細な説明】 “産業上の利用分野” 本発明は子豚の離乳直後の発育停滞を防止し、豚を健
全に生育させる豚への飼料の給与方法に関する。
“従来の技術” 子豚の離乳直後の発育停滞は、離乳時に子豚の飼料の
形態が、液状の母乳から、粉上の哺乳期子豚用飼料へ移
行することによる一時的な飼料摂取量の低下、及び下痢
発生による場合が多い。結果として子豚の離乳直後の発
育停滞は肥育期間の遅れとして、最後まで影響して来る
ため、養豚家にとっては大きな問題であった。
それでいて離乳時までの子豚の飼料については軽視さ
れがちで格別の顧慮が払われておらず、本格的な科学的
検討は行われていない。わずかに子豚の離乳直後の発育
停滞防止策として、できるだけ早く餌付けを開始して、
子豚を粉飼料になれさせておく程度で、これといった確
実な方法がないのが実情である。
事実、豚の飼料についての研究開発は主に離乳後の豚
を対象にして行われており、酢酸含有物の使用について
の知見も多少は認められるものの、いずれも離乳後の豚
を対象としており、本発明のように離乳前までの幼豚を
対象とするものではない。
例えば、酢酸含有物を豚に給与することにより、豚の
発育促進をはかったり、健康維持、疾病予防をするため
に、酢酸含有物として食酢を用いたものとして、特公昭
55−46688号において、飼料中又は飼料の外に給餌量の
約1%以上の果実酢又は果実酢を混合した食酢を与える
ことを特徴としたものや、特開昭63−301755号のように
動物の下痢を減少させ、疾病を防止るために食酢を含ん
だ動物用混合飼料などが知られている。
しかしながら、これらの先行技術は、いずれも離乳前
までの幼豚用の飼料に関するものでもなければその示唆
もなく、そのうえ、いずれも給与期間が2週間以上もの
長期に及び、そのため給与する酢酸含有物の使用量も増
大し、また給与量自体も本発明に比して大量である。し
かも後者においては、酢酸含有物のほかに糖類の併用が
必須であって、糖類の使用がなければ上記した効果すら
奏されない、換言すれば酢酸含有物の単用については全
く何も開示するところがないのみならず、最終的な肥育
への効果も不明確という欠点は避けられない。
本発明は、離乳後の子豚の発育停滞を防止するため
に、注射等苦痛や副作用を伴うことのない飼料という形
式で、しかも離乳後にそれを給与するのではなく、離乳
後の発育停滞の防止としては直接関係のない離乳前に給
与し、そのうえ離乳前の特定時期の子豚には給与された
ことのない酢酸及び/又は酢酸含有物を給与するもので
あるが、このようなことは、いずれも従来知られておら
ず新規技術である。
“発明が解決しようとする課題” 通常母豚から10頭前後出産された子豚は、母乳で育成
され、10日目頃から哺乳期子豚用飼料を与え始め、母乳
の不足と粉飼料への慣れを開始したのち、20〜30日前後
で離乳して完全に哺乳期子豚用飼料のみでの育成へと移
るが、完全には粉飼料に慣れておらず、消化不良による
下痢や食欲停滞により、離乳後10〜20日の1日当りの体
重増は離乳直前のそれを下回り、この期間はその前後と
比較すると発育が停滞し、最終的に肥育期間が延長する
ため、養豚農家にとっては豚舎の回転率が悪くなり、そ
の経営に大きな影響を及ぼしており、いかに短期間でス
ムーズに粉飼料に慣れさせ、1日当りの体重増が離乳前
を下回らないようにするかが重大な問題になっている。
“課題を解決するための手段” 養豚は肥育期間が比較的短いため、上記のような養豚
のいわばスタート付近で遅れが出ると、肥育期間中にそ
の遅れを回復できないことが多々生じ、養豚農家にとっ
ては大きな損失となる。
このような離乳後の子豚の発育停滞の重要性に鑑み、
本発明者らは各方面からその改善について検討を行った
が、成功するには至らなかった。
そこで発想の大転換の必要に迫られ、次のような技術
課題を新たに設定し、その解決策を追求し、その結果、
本発明の完成に至った。
すなわち、離乳後の子豚の発育停滞防止策の実施時期
の検討、動物医薬等の非経口投与の検討といった基本的
な事項についてはじめて総合的な検討を行った結果、離
乳「後」の子豚の発育停滞の防止を離乳「後」に行うの
ではなく、離乳「前」に、しかも酢酸及び/又は酢酸含
有物を経口的に給与したところ、全く予期せざること
に、粉飼料に慣れておらず嗜好性の面からも給与しても
食べないと予測されていた子豚が喜こんでこれを食べる
こと、そしてまさに驚異的なことに、離乳前の給与によ
って離乳後の発育停滞の防止がなされること、つまり、
酢酸及び/又は酢酸含有物による発育停滞の防止という
予期し得ない効果が奏されること、しかもその効果がし
ばらくタイムラグをおいてから現われること、というき
めて有用な新知見を得た。
この新知見を基礎として更に検討の結果、酢酸使用量
は0.001g/日・頭という極く微量で充分であり、且つ、
給与期間もわずか10日間で充分であり、酢酸は飼料又は
飲料水に添加して経口的に給与すれば良く、また子豚の
嗜好性も高いので、通常の動物医薬のように注射等苦痛
を伴う非経口投与の必要がなく、子豚を傷つけることも
ないことも併せて確認し、本発明が完成されたのであ
る。
本発明は、酢酸及び/又は酢酸含有物を、離乳時まで
の子豚に給与するという飼料の給与方法を基本的技術思
想とし、もって離乳直後の発育停滞を防止するものであ
る。
以下本発明について詳述する。
本発明に用いる酢酸は、合成酢酸でも醸造酢酸でもよ
いが、醸造酢酸を使用するのが好ましい。
酢酸含有物としての醸造酢としては、リンゴ、ブド
ウ、ミカン等の果汁をアルコール発酵せしめた後または
リンゴ、ブドウ、ミカン等の果汁にアルコールを添加
し、酢酸発酵せしめた醸造酢である果実酢のほか、米
酢、その他穀物酢等が広範に使用される。これら食酢
は、原料特有の香気があり、豚の嗜好性向上に寄与でき
るので特に好ましい。またこれらの醸造酢をサイクロデ
イキストリンや酢酸ナトリウム、デキストリン等に吸着
させたものや、麩や籾穀、酢粕、酒粕等に混合、吸着さ
せた粉末タイプのものも、ここでいう酢酸含有物として
用いることができる。
また本発明は、酢酸を主要有効成分とするものであ
り、これをそのまま飲料水及び/又は飼料に添加してお
いてこれを自由に摂取せしめてもよい。給与量として
は、1日当り酢酸として0.001〜0.5gという少量で良
く、この範囲内で豚の日令、体重に合わせて適宜増量調
節しても差し支えない。
母豚から離乳した子豚は通常子豚用の豚房で集団飼育
(子豚期)され、そして生後60日程度で肥育豚房に再び
移動する。この子豚期の1日当りの体重増の低下をいか
に抑え、より高い体重増へ推移させるかが肥育のポイン
トになるため、本発明における酢酸及び/又は酢酸含有
物の給与時期については、より早期の、子豚の離乳前ま
でにすることにより、酢酸含有物の給与効果を短期間に
且、少量で引き出すことが可能となった。
また給与期間としては、離乳時までの間で10日間、好
ましくは離乳直前の連続10日間が望ましい。
給与量としては、酢酸として0.001g〜0.5g/日・頭以
上の給与が好適である。
以下実施例によって本発明を具体的に説明する。
実験例1 LW×Dの交配により出生した子豚を試験に用いた。酢
酸の給与は、生後16日令から25日令(離乳日)までの連
続10日間とし、飲水に酢酸を稀釈して給与し、以下の結
果を得た。
上記の結果から明らかなように、酢酸を0.001g/日・
頭以上給与した試験区では、離乳後の1日当りの増体重
増加の停滞が見られず、順調に生育していることがわか
った。このように酢酸給与量としては、0.001g/日・頭
以上好ましくは0.01g〜0.5g/日・頭以上が子豚の離乳時
における発育停滞防止に有効であった。
実施例2 実施例1と同様の交配で生まれた子豚を用いた。食酢
の量は0.01g/日・頭で同一にして、給与開始時期を以下
のようにして比較を行った。尚、酢酸の給与は連続10日
として、実施例1と同様にして実施した。
上記の結果から明らかなように、酢酸を離乳前に10日
間給与した試験区では、離乳後の1日当りの増体重増加
の停滞が見られず、順調に生育していることがわかっ
た。離乳直後から給与した場合が、ほぼ現状維持となっ
た。
このように酢酸の給与時期としては、離乳前からが好
ましく、子豚の離乳時における発育停滞防止に有効であ
った。
実施例3 実施例1と同様の子豚を用いて、最終肥育成績に及ぼ
す影響について以下のごとく試験を行った。尚、酢酸の
給与は連続10日とした。
上記の結果から明らかなように、離乳前後の発育停滞
は最終的な肥育日数の延長につながることが明らかにな
った。より効率的な経営が求められる養豚家にとって、
最終的に肥育日数の15日の短縮は大きな差であり、酢酸
給与の効果がより明白に現れている。
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本
発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕 生後16日目から子豚11頭に離乳時(25日令)まで、市
販米酢(酢酸濃度4.5%(W/V))を50倍に稀釈したもの
を給与したところ、40〜60ml/頭・日これを摂取した。
この子豚の生時(平均体重1.40kg)から離乳時(25日令
平均体重7.15kg)までの、1日当りの平均増体重は0.23
0kg/頭・日であり、離乳後から60日令(平均体重17.72k
g)までの1日当りの平均増体重は0.302kg/頭・日であ
り、離乳直後の発育停滞がなく順調に生育した。
〔実施例2〕 生後18日目から子豚10頭に離乳時(27日令)まで、粉
末酢(酢酸濃度15.0%(W/W))を代用乳に0.1%(W/
W)添加混合して給与してたところ、60〜100g/頭・日こ
れを摂取した。この豚はその後離乳直後の発育停滞がな
く順調に生育し、生後160日で104.5kgに到達したため出
荷した。なおこの時粉末酢を給与しなかった豚は、185
日目を要して103.2kgに到達した。
〔実施例3〕 生後16日目から子豚10頭に離乳時(25日令)まで、市
販りんご酢(酢酸濃度5.0%(W/V))を100倍に稀釈し
たものを給与したところ、70〜110ml/頭・日これを摂取
した。この子豚の生時(平均体重1.70kg)から離乳時
(20日令平均体重7.08kg)までの、1日当りの平均増体
重0.215kg/頭・日であり、離乳後から35日令(平均体重
9.98kg)までの1日当りの平均増体重は0.290kg/頭・日
であり、離乳直後の発育停滞がなく順調に生育した。
“発明の効果” 本発明によれば離乳直後の発育停滞を簡便にして、且
安価に防止でき、従って豚の肥育日数の短縮がはから
れ、収益の向上がはるかに図れる効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−152948(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23K 1/16,1/18

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】乳と哺乳期子豚用飼料との併用時から離乳
    時までの子豚1頭当たり、酢酸及び/又は酢酸含有物
    を、1日当たり酢酸量として0.001g〜0.5g投与すること
    を特徴とする豚への飼料の給与方法。
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