JP2923380B2 - ジャンパの曲線形状の想定方法 - Google Patents

ジャンパの曲線形状の想定方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は送電線の鉄塔部分に形成
されるジャンパに関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄塔間に送電線を架線する場合、電線を
鉄塔が支持する碍子連に取り付ける部分にジャンパと呼
ばれる回避経路を形成する必要がある。この部分は送電
線に所定のジャンパ深さを持たせて屈曲させる等の特別
な工事が必要となるため、電線を何mかの余裕を見込ん
で切断してジャンパ部を形成し、その後に正確にジャン
パ長の寸法を取り、ジャンパの端部を圧縮クランプによ
り本線と接続する工法が取られていた。しかしこのよう
な従来工法では高い鉄塔上でジャンパ線の寸法取り作業
を行う必要があり、危険性が大きい欠点があった。
【0003】また電線を切断することなくひと続きのま
までジャンパを形成する架線工法も考えられるが、ジャ
ンパの形状を正確に予測する技術が開発されていなかっ
たために現場で経験に基づいてジャンパを形成しつつ電
線の送り込みを行わざるを得ず、先行する鉄塔の工事が
完了した後でないと次の鉄塔の工事に掛かれない問題が
あった。
【0004】そこで本発明者等は先に、ジャンパ部の電
線がカテナリ曲線とスプライン曲線との中間的な曲線を
描くものと仮定して予めジャンパ長を決定しておき、電
線を切断することなくひと続きのままでジャンパを形成
することができる架線工法を発明し、既に特開平1-3118
13号公報として提案済みである。ところがこの工法は短
いジャンパ線の場合にはジャンパ長の決定の誤差が大き
く、好ましい形状のジャンパを形成することができない
という問題があった。
【0005】一般にジャンパの形成に当たっては、ジャ
ンパ線と下部アームとの間の絶縁距離を確保することが
最優先される。このために将来ジャンパ線に支持碍子及
び避雷碍子を設置することが予定されている場合にも、
下部アームとの間の絶縁距離を確保するためにジャンパ
長の決定の誤差を見込んでジャンパ線の長さを短めに設
定することとなる。このため、従来はいざ支持碍子及び
避雷碍子を設置しようとするときに、ジャンパ線の長さ
が不足して設置できないという重大な問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
従来の問題点を解決し、鉄塔上での危険なジャンパ線の
寸法取りを行うことなく一度で最適な曲線形状を想定し
て、ジャンパ線の最適長さを決めることができ、また将
来ジャンパ線に支持碍子及び避雷碍子を設置する場合に
も支障なく設置できるようにした送電線のジャンパを提
供するために完成されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題
を解決するために、従来の工法においてジャンパ線長さ
の決定に誤差が生ずる原因を追求した。この結果、ジャ
ンパ線が短くなると重力の影響よりも電線の剛性の影響
が支配的となってジャンパ線の形状はスプライン曲線に
近づくこと、しかも従来の工法においてはジャンパ線が
両側のクランプ点とジャンパ深さにより決定される中央
の1点の合計3点を通るものとしてスプライン曲線を決
定していたために、実際とのずれが大きくなっているこ
とを知った。
【0008】本発明のジャンパの曲線形状の想定方法は
これらの知見に基づいて完成されたものであり、鉄塔ア
ームの取付点E、Eに取り付けられたそれぞれの碍子連
の他端に連結される、クランプ連結点Cとバナナ部の出
口点Bとバナナ部基部のクランプけがき点Aとを有する
クランプ金具の間に、鉄塔間部分の電線と切断されない
ひと続きの電線により架設されるジャンパの曲率形状を
想定するにあたり、ジャンパが前記バナナ部の出口点B
と、ジャンパの中央点Oと、その出口点Bと中央点Oの
中間の拘束点Pとを通過するスプライン曲線を形成する
ものとし、前記拘束点Pの座標(X,Y,Z)を次式で
定めることを特徴とするものである。 X=−M・cos(δ−α+K)・cos(η+K´) Y=−M・cos(δ−α+K)・sin(η+K´) Z=−M・sin(δ−α+K) 但し、出口点Bを原点として表される。 ここで、η=tan -1〔〔Y1 −(Y2 +Y0 )/2 〕÷
〔X1 −(X2 + X0 )/2 〕〕 K=γ+α−δ+aとして定まる垂直方向の補正角 K´=ε−θ′+b として定まる水平補正 γ :俯角。鉄塔アームの両端に位置する取付点E、Eを
結んだ直線と平行な出口点Bを含む直線と、その出口点
Bとジャンパの中央点Oを結ぶ直線とによって挟まれる
垂直方向の角度 α:カテナリ角。鉄塔アームの両端に位置する取付点
E、Eを結んだ直線の延長線と、取付点Eと碍子連に連
結するクランプ連結点Cを結ぶ直線とによって挟まれる
垂直方向の角度 δ:クランプバナナ角度。前記取付点Eとクランプ連結
点Cを結んだ直線と平行でクランプけがき点Aから取付
点E側に延びる直線と、前記クランプけがき点Aと出口
点Bとを結ぶ直線とによって挟まれる垂直方向の角度 θ′:碍子連水平角度。鉄塔アームの両端に位置する取
付点E、Eを結んだ直線の延長線に対して、碍子連の延
在する方向が取付点Eを基点にしてどれだけ水平方向に
振れているかを表す角度 ε:鉄塔アームの両端に位置する取付点E、Eを結んだ
直線と平行で出口点Bを含む直線に対して、出口点Bと
ジャンパに取り付けられた支持碍子の取付位置を結ぶ線
が出口点Bを基点にしてどれだけ水平方向に振れている
かを表す水平角 a:8〜26°の値から選ばれる、補正角Kの垂直方向
補正定数 b:5〜15°の値から選ばれる、水平補正角K′の補
正定数 M:高圧送電線の場合10cm、超高圧送電線の場合50cm X0 , Y0 : 碍子連の鉄塔への取付点Eの座標 X1 , Y1 : クランプ連結点Cの座標 X2 , Y2 : ジャンパの中央点Oの座標 以下に本発明を図示の実施例により更に詳細に説明す
る。
【0009】
【実施例】鉄塔を横から見た場合の図1において、1は
送電線の鉄塔アーム、2は碍子装置3により鉄塔アーム
1に支持された送電線、4は碍子装置3の先端のクラン
プ金具5により鉄塔アーム1を回避する方向に張り出さ
れたジャンパである。
【0010】図2に拡大して示したように、クランプ金
具5はくさび作用により電線を保持する本体部分6の下
方にバナナ状に湾曲したバナナ部7を突設したものであ
り、本発明においてはジャンパ4は鉄塔間部分と切断さ
れないひと続きの状態のまま、このバナナ部7に案内さ
れて下方へ張り出されることとなる。本明細書では点A
をクランプけがき点、点Bを出口点、点Cをクランプ連
結点、点Dをクランプ基点と呼ぶこととする。
【0011】本発明においてジャンパ4は、クランプ金
具5のバナナ部の先端の出口点Bと、空中に設定された
架空の拘束点Pと、ジャンパの中央点Oとを通過し、こ
れらの各点間でスプライン曲線を描くものとしているの
である。そしてこの拘束点Pの座標は、出口点Bを原点
として、 X=−M・cos(δ−α+K)・cos(η+K´) Y=−M・cos(δ−α+K)・sin(η+K´) Z=−M・sin(δ−α+K) の式で表される。
【0012】拘束点Pは、図2に示すようにクランプけ
がき点Aと出口点Bとを通る直線ABに対して出口点B
から垂直方向の角度Kを持つ直線mを引き、この直線m
上の出口点BからMの距離の点である。この場合、垂直
方向の角度Kは、後記の垂直方向の補正角Kとして算出
される値とする。またこのMの値は、電圧66KV〜154KV
の高圧送電線の場合10cm、電圧275KV 〜500KV の超高圧
送電線の場合50cmとする。
【0013】次に上記の式を説明する。まずジャンパ4
が水平角を持たず直線的に形成されている場合には、図
1のようにαは、鉄塔アームの両端に位置する取付点
E、Eを結んだ直線の延長線と、取付点Eと碍子連に連
結するクランプ連結点Cを結ぶ直線とによって挟まれる
垂直方向の角度(カテナリ角)、δは、前記取付点Eと
クランプ連結点Cを結んだ直線と平行でクランプけがき
点Aから取付点E側に延びる直線と、前記クランプけが
き点Aと出口点Bとを結ぶ直線とによって挟まれる垂直
方向の角度(クランプバナナ角度)とすると、図3に示
される幾何学的な関係から、拘束点PのX,Zの座標
は、 X=−M・cos(δ−α+K) Z=−M・sin(δ−α+K) となる。またここで使用された垂直方向の補正角Kは、
実験の結果と、使うクランプの形状及び架線状態によっ
て導き出されたもので、K=γ+α−δ+a(但しγ:
鉄塔アームの両端に位置する取付点E、Eを結んだ直線
と平行な出口点Bを含む直線と、その出口点Bとジャン
パの中央点Oを結ぶ直線とによって挟まれる垂直方向の
角度(俯角)、a:定数)と定義される値である。すな
わち、垂直方向の補正角Kはγ、α、δと定数aから導
き出されるものであって、δ、a一定のもと、正の範囲
でαが増加するとγは減少し、Kは大きくなるが、αが
負の範囲になると、δは一定でもKは減少するものであ
る。また、δはクランプの形状、すなわち、電線の剛性
によって変化するものであるから、電線の剛性が小さい
とクランプの形状は曲率が小さくなり、その結果、δは
大きくなってKの値は減少傾向に向かう一方、電線の剛
性が大きいとクランプの形状は曲率が大きくなり、その
結果、δは小さくなってKの値は増加傾向に向かうこと
となる。さらに、定数aはクランプ金具5の形状、すな
わち、電線の太さや、電線の用途や材質における種別
(耐熱電線、硬銅より線、鋼心アルミより線等)により
異なる電線の剛性によって変化するものである。電線の
剛性が小さいとクランプの形状は曲率が小さくなり、そ
の結果、aは大きくなってKの値は増加傾向に向かう一
方、電線の剛性が大きいとクランプの形状は曲率が大き
くなり、その結果、aは小さくなってKの値はそれほど
増加しないこととなる。たとえば鋼心アルミより線の場
合、電線の太さが410mm2 以上ではa=8とし、碍
子連に取り付けられたアークホーンとの絶縁距離を確保
できるようにすることが好ましい。また、410mm2
未満ではa=26として、鉄塔アームとの絶縁距離を確
保することが好ましい。一方、耐熱電線や硬銅より線等
の場合はaが8〜26°の間で決定されることが多くの
実例により検討した結果判明した。
【0014】しかしジャンパ4が鉄塔を上から見た場合
の図4に示されるような鉄塔アームの両端に位置する取
付点E、Eを結んだ直線の延長線に対して、碍子連の延
在する方向が取付点Eを基点にしてどれだけ水平方向に
振れているかを表す碍子連水平角度θ′を持つ場合に
は、ジャンパはY軸方向にも傾斜するので上式に対して
その補正を行う必要があり、拘束点PのX,Y座標は X=−M・cos(δ−α+K)・cos(η+K´) Y=−M・cos(δ−α+K)・sin(η+K´) となる。但しη=tan -1〔〔Y1 −(Y2 +Y0 )/2 〕
÷〔X1 −(X2 +X0 )/2 〕〕であって、ηを図示す
れば図4 において鉄塔アームの両端に位置する取付点
E、Eを結んだ直線の延長線と、取付点Eとジャンパの
中央点Oを結ぶ直線の中点とクランプ連結点Cを結んだ
直線とによって挟まれる水平方向の角度である。このη
は支持碍子がない場合にジャンパが出口点Bにおいても
なめらかなスプライン曲線となるような拘束点Pを定め
るものである。また、K´は、K´=ε−θ′+b と定
義される角度であって、支持碍子を設置する空間をジャ
ンパの中央点O付近に確保するための水平補正角であ
る。ここで、bは多くの実例により検討した結果、5〜
15°の範囲で定める定数とすればよいことが確認さ
れ、εは鉄塔アームの両端に位置する取付点E、Eを結
んだ直線と平行で出口点Bを含む直線に対して、出口点
Bとジャンパに取り付けられた支持碍子の取付位置を結
ぶ線が出口点Bを基点にしてどれだけ水平方向に振れて
いるかを表す水平角である。ただし、支持碍子のない場
合は、ジャンパ線は重力によって出口点Bからほぼ鉛直
方向に向くので、水平補正角は必要なくなり、また、碍
子連水平角度が小さくなればなるほど、直線EBと直線
OBは一致するようになる(図4参照)ためこの場合も
水平補正角は必要なくなる。なお、ここでいう碍子連水
平角度の小さい場合とは、θ′=20°を基準として判
断するが、電線の剛性の程度も考慮しなければならな
い。すなわち、支持碍子を設置する場合において、電線
の剛性が小さいと、カテナリ曲線に近づくため支持碍子
を設置する余裕が生じ、θ′=20°よりも大きな値で
も水平補正角を与えなくてもよい場合がある一方、電線
の剛性が大きければ、スプライン曲線になりやすいた
め、支持碍子を設置する空間が確保できなくなり、θ′
=20°よりも小さな値から水平補正角で補正する必要
が生じる場合があるからである。
【0015】このように本発明におけるジャンパの曲線
形状は、クランプ金具のバナナ部の出口点Bと、座標
(X,Y,Z)が決定された架空の拘束点Pと、ジャン
パの中央点Oとをそれぞれ通過するスプライン曲線を描
くものであり、鉄塔間部分の電線と切断されないひと続
きの電線により形成されたものとして想定されるのであ
る。そしてこのようにしてジャンパの曲線形状を決定す
ることにより、次のとおりの多くの利点を持つ。
【0016】
【発明の効果】本発明を利用して得られるジャンパ
は、本線部分と切断されないひと続きの電線により形成
されたものであるので、従来のように鉄塔上で危険なジ
ャンパ線の寸法取り作業を行う必要がない。本発明の
ジャンパの曲線形状の想定方法により、ジャンパの形状
及びジャンパ長を予め計算により求めることができるの
で、ひと続きの電線上にジャンパの両端の位置をけがい
ておくことにより、多数の鉄塔において同時にジャンパ
形成を伴う架線工事を行うことができる。本発明を利
用して得られるジャンパは、下部アームとの間の絶縁距
離を正確に設定できるので、将来ジャンパ線に支持碍子
及び避雷碍子を設置する場合にも、ジャンパ線の長さが
不足して設置できないというトラブルを招くおそれがな
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のジャンパの側面図である。
【図2】本発明のジャンパの要部の拡大側面図である。
【図3】拘束点Pの座標を示す線図である。
【図4】ジャンパの水平角を示す平面図である。
【符号の説明】
B 出口点 P 拘束点 O ジャンパの中央点

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄塔アームの取付点E、Eにそれぞれ取
    り付けられた碍子連の他端に連結される、クランプ連結
    点Cとバナナ部の出口点Bとバナナ部基部のクランプけ
    がき点Aとを有するクランプ金具の間に、鉄塔間部分の
    電線と切断されないひと続きの電線により架設されるジ
    ャンパの曲率形状を想定するにあたり、ジャンパが前記
    バナナ部の出口点Bと、ジャンパの中央点Oと、その出
    口点Bと中央点Oの中間の拘束点Pとを通過するスプラ
    イン曲線を形成するものとし、前記拘束点Pの座標
    (X,Y,Z)を次式で定めることを特徴とするジャン
    パの曲線形状の想定方法。 X=−M・cos(δ−α+K)・cos(η+K´) Y=−M・cos(δ−α+K)・sin(η+K´) Z=−M・sin(δ−α+K) 但し、出口点Bを原点として表される。ここで、η=ta
    n -1〔〔Y1 −(Y2 +Y0 )/2〕÷〔X1 −(X2
    0 )/2 〕〕 K=γ+α−δ+aとして定まる垂直方向の補正角 K´=ε−θ′+b として定まる水平補正 γ :俯角。鉄塔アームの両端に位置する取付点E、Eを
    結んだ直線と平行な出口点Bを含む直線と、その出口点
    Bとジャンパの中央点Oを結ぶ直線とによって挟まれる
    垂直方向の角度 α:カテナリ角。鉄塔アームの両端に位置する取付点
    E、Eを結んだ直線の延長線と、取付点Eと碍子連に連
    結するクランプ連結点Cを結ぶ直線とによって挟まれる
    垂直方向の角度 δ:クランプバナナ角度。前記取付点Eとクランプ連結
    点Cを結んだ直線と平行でクランプけがき点Aから取付
    点E側に延びる直線と、前記クランプけがき点Aと出口
    点Bとを結ぶ直線とによって挟まれる垂直方向の角度 θ′:碍子連水平角度。鉄塔アームの両端に位置する取
    付点E、Eを結んだ直線の延長線に対して、碍子連の延
    在する方向が取付点Eを基点にしてどれだけ水平方向に
    振れているかを表す角度 ε:鉄塔アームの両端に位置する取付点E、Eを結んだ
    直線と平行で出口点Bを含む直線に対して、出口点Bと
    ジャンパに取り付けられた支持碍子の取付位置を結ぶ線
    が出口点Bを基点にしてどれだけ水平方向に振れている
    かを表す水平角 a:8〜26°の値から選ばれる、垂直方向の補正角K
    の補正定数 b:5〜15°の値から選ばれる、水平補正角K′の補
    正定数 M:高圧送電線の場合10cm、超高圧送電線の場合50cm X0 , Y0 : 碍子連の鉄塔への取付点Eの座標 X1 , Y1 : クランプ連結点Cの座標 X2 , Y2 : ジャンパの中央点Oの座標
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