JP2912142B2 - 抗有膜ウィルス性組成物およびその製造方法 - Google Patents

抗有膜ウィルス性組成物およびその製造方法

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JP2912142B2
JP2912142B2 JP5254202A JP25420293A JP2912142B2 JP 2912142 B2 JP2912142 B2 JP 2912142B2 JP 5254202 A JP5254202 A JP 5254202A JP 25420293 A JP25420293 A JP 25420293A JP 2912142 B2 JP2912142 B2 JP 2912142B2
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弘章 岡
冨岡  敏一
冨田  勝己
賢二 星野
西野  敦
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医療機器や医薬品を始
めとして、衛生用品、調理用品など広範囲の生活環境に
おいて適用される抗有膜ウイルス性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、抗ウイルス剤として1−アダマン
タナミン塩酸塩、チオセミカルバジド、アラビノシルヌ
クレオシド、ヌクレオシド、2’,3’−ジデオキシヌ
クレオシド、ピロ燐酸誘導体等の化学療法剤があった。
さらに抗菌・抗ウイルス剤として銀、銅等の金属あるい
は金属塩を直接混入した衛生サックなどの衛生用品があ
った。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の抗ウイルス剤は、特定のウイルスに対してしか効力
がなく、さらに抗菌性を併せ持つものが無いため医薬品
以外の用途には使用できなかった。また、樹脂成形品に
用いることを目的とした抗ウイルス剤としても樹脂成形
温度に耐え得る抗ウイルス剤は無かった。さらに、上記
従来の抗菌・抗ウイルス剤を混入した衛生用品は、直接
各材料に抗菌・抗ウイルス剤が混入されていた。抗菌・
抗ウイルス剤が直接混入されていることから、これら剤
が直接人体に接触し、皮膚を刺激するのを避けることが
できない。また、これら材料中に混入されている抗菌・
抗ウイルス剤が、これら材料表面で抗菌・抗ウイルス作
用に与る量を調節することはできない。
【0004】本発明は、医薬品としてだけでなく、樹脂
成形品、ゴム成形品、樹脂繊維等にも適用できる抗菌性
を有する抗有膜ウイルス性組成物を提供することを目的
とする。本発明はまた、抗菌・抗ウイルス作用をする成
分が直接露出せず、従って混入した樹脂成形品等に人体
が触れても、皮膚刺激性の少ない抗菌・抗有膜ウイルス
性組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明
は、徐放性を有し、抗菌・抗ウイルス作用を長期にわた
って持続する抗菌・抗有膜ウイルス性組成物を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の抗有膜ウイルス
性組成物(以下、抗ウイルス性組成物という。)は、
銀、銅および亜鉛よりなる群から選択される少なくとも
一種の金属チオスルファト錯塩およびチオスルファト塩
と、前記チオスルファト錯塩およびチオスルファト塩を
担持した多孔性粒子担体とからなる。本発明の好ましい
抗ウイルス性組成物は、チオスルファト銀錯塩およびチ
オスルファト銀塩と、これらの塩を担持している多孔性
粒子担体とからなる。ここにおいて、前記多孔性粒子担
体には、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、ジルコニ
ア、モンモリロナイト等の無機酸化物粒子が用いられる
が、なかでもシリカゲル粒子が好ましい。
【0006】本発明の抗ウイルス性組成物は、前記金属
錯塩および金属塩を担持した多孔性粒子担体の表面は、
少なくともその一部が被覆層により被覆されていること
が好ましい。この被覆層の面積や厚さ、多孔度等によ
り、担体に担持されている塩の溶出速度が制御される。
この被覆層を形成する方法の一つとして、アルコキシシ
ランのアルコール溶液に水を加えて加水分解するゾルゲ
ル法により二酸化ケイ素の被覆層を形成する方法があ
る。アルコキシシランおよびアルコールとしては、それ
らのアルキル基の炭素数1〜4のものが好ましい。この
被覆層の形成により、抗ウィルス性組成物は好ましい徐
放性を有することとなる。従って、環境汚染の影響も極
めて小さい。また、担体に担持されている金属塩、特に
銀塩の熱安定性が向上する。
【0007】本発明の前記チオスルファト金属錯塩およ
びチオスルファト金属塩は、単体で固体として得ること
は困難であるが、以下に述べるように、水溶性の化合物
として作製し、その水溶液をシリカゲルのような多孔性
粒子担体に含浸し、乾燥することによって、担体に担持
させた状態で固定化することができる。前記チオスルフ
ァト金属錯塩およびチオスルファト金属塩は、金属塩の
水溶液に亜硫酸塩および硫酸水素塩よりなる群から選択
される少なくとも一つの塩を加え、次にチオ硫酸塩を加
えることによって得ることができる。チオスルファト金
属錯塩およびチオスルファト銀塩を調整するために用い
る前記塩の割合は、金属塩1モルに対して、硫酸塩およ
び/または硫酸水素塩2〜4モル、チオ硫酸塩2〜6モ
ルが適当である。硫酸塩および/または硫酸水素塩、お
よびチオ硫酸塩の量が少ないと錯塩の形成が十分でな
く、多すぎると変色の原因となる。
【0008】また、多孔性粒子担体に担持させるチオス
ルファト金属塩およびチオスルファト銀塩は、両者あわ
せて、担体100重量部に対して1〜10重量部、特に
3〜5重量部が好ましい。担持量が多くなると、変色し
やすくなる。前記亜硫酸塩、硫酸水素塩およびチオ硫酸
塩は、好ましくはナトリウム塩であり、さらに好ましく
はカリウム塩である。
【0009】上記のようにして得られるチオスルファト
金属錯塩およびチオスルファト金属塩を含む水溶液は、
これをそのまま抗菌・抗ウイルス性を有する殺菌・殺ウ
イルス・消毒液として用いることができる。この消毒液
を用いる消毒方法は、チオスルファト金属錯塩およびチ
オスルファト金属塩を含む溶液を病原菌と接触させ、そ
の増殖を抑止する方法である。さらに好ましい消毒方法
は、チオスルファト金属錯塩およびチオスルファト金属
塩を担持している多孔性粒子担体を分散させた水、アル
コールまたは両者の混合液を消毒液として用いる方法で
ある。担体は、担持している塩について徐放性を有する
ところから、長期にわたり殺菌・殺ウイルス作用を発揮
する。また、前記溶液に含まれるチオスルファト金属錯
塩とチオスルファト金属塩の総量は、溶液100m1当
たり1〜10gが好ましい。本発明は、さらに、シリコ
ーンゴム、あるいは親水性高分子の粉体や繊維からなる
水分吸収体などの衛生用品の素材に前記の抗ウイルス性
組成物を混入して抗ウイルス性を付与する。
【0010】
【作用】本発明に用いるチオスルファト金属錯塩および
チオスルファト金属塩は、空気中の酸素によりその極近
傍にラジカルを形成し、このラジカルがこれに接近した
微生物等の膜表面に影響を与える。このため、膜を有す
るウィルスに対して、抗菌・抗ウィルス作用を発揮す
る。すなわち、前記金属錯イオンおよび金属イオンがウ
ィルスエンヴェロープ表面、細菌の膜に結合することに
より、有膜ウィルスの脱核過程および菌の繁殖を阻害す
ると同時にDNA合成阻害、転写および逆転写酵素阻害
により抗菌・抗ウィルス作用を発揮するものと思われ
る。
【0011】また、消毒液においては、エタノールを溶
媒として用いることにより、菌またはウィルスの脂質膜
成分を速効的に破壊する効果を付加することができる。
エタノール20〜70重量%の水−エタノール混合液は
好ましい溶媒である。また、他の殺菌剤との併用も可能
であり、例えばアルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩
の20〜40重量%水溶液も好ましい。本発明のチオス
ルファト金属錯塩およびチオスルファト金属塩は、各種
の化学療法剤、例えば1−アダマンタナミン塩酸塩、チ
オセミカルバジド、アラビノシルヌクレオシド、2’,
3’−ジデオキシヌクレオシド、ピロリン酸誘導体と併
用することにより、抗菌・抗ウィルススペクトルを広く
することができる。これらの化学療法剤を併用する方法
としては、水溶液にして、チオスルファト金属錯塩およ
びチオスルファト金属塩とともに前記塩の少なくとも一
方に配位させて多孔性粒子担体に担持させる方法、ある
いはチオスルファト金属錯塩およびチオスルファト金属
塩を担持した多孔性粒子担体と混合する方法などがあ
る。
【0012】本発明の抗ウィルス性組成物は、各種樹脂
やゴム、樹脂繊維等に混入することにより、それらに抗
菌・抗ウィルス性を付与することができる。例えば実施
例5のシリコーンゴムを避妊具コンドームや手袋に用い
たり、実施例6の水分吸収性粉体を生理用品とするなど
である。またワセリンなどの軟膏基材に混合することに
より抗ウィルス性軟膏が得られる。
【0013】
【実施例】以下に、本発明の好ましい実施例につき詳し
く説明する。本発明の抗菌・抗ウイルス性組成物は、多
孔性粒子担体と、これに担持された銀、銅または亜鉛の
チオスルファト錯塩およびチオスルファト塩からなる。
最も好ましいチオスルファト錯塩およびチオスルファト
塩は、銀の塩である。また、好ましい担体は平均粒径1
〜10μmのシリカゲル粒子であり、特にJIS規格Z
0701規定のB型シリカゲルである。なかでも相対湿
度50%以下の低湿度下(25℃)では吸湿率が20%
以下で、相対湿度90%以上の高湿度下(25℃)では
吸湿率50%のものが好ましい。このシリカゲルは、低
湿度下では少ししか吸湿せず、高湿度下では吸湿量が大
きい。このようなシリカゲルに担持された抗菌・抗ウイ
ルス剤は、容易には揮散せず、かつ熱に安定であり、従
って長期にわたって抗菌・抗ウイルス効果を発揮する。
さらに、シリカゲルは透明であり、屈折率が合成樹脂の
それと類似している。従って、抗菌・抗ウイルス剤を担
持したシリカゲルを合成樹脂等に混練してもその色を変
えたりすることがない。
【0014】本発明の好ましい抗ウイルス性組成物は、
例えば次にようにして作製する。まず、酢酸銀の水溶液
に亜硫酸ナトリウムおよびチオ硫酸ナトリウムを加える
ことによって、チオスルファト銀およびチオスルファト
銀錯塩の水溶液を作製する。次に、この水溶液をシリカ
ゲルのような多孔性の担体に含浸し、乾燥することによ
って、前記チオスルファト銀およびチオスルファト銀錯
塩を担体に担持させた状態で固定化する。前記銀塩がど
のような銀化合物の形で担体に担持されているのか明ら
かではないが、この銀化合物は、CuのKα線を用いた
X線回折像によって同定することができる。
【0015】図1はこのX線回折像を示すもので、酸化
銀(Ag2O)の回折線(●印)とともに、JCPDS
(Joint Committee on Power
Diffraction Standards)カ−
ドでは認められない回折像、すなわち回折角2θの1
0.3゜、11.2゜、11.9゜および12.3゜
(以下これらの2θの値を各々P1,P2,P3およびP4
で表わす。)に回折強度を有することが明確に認められ
る。なお、○印は硫酸ナトリウム(Na2SO4)の回折
線を示す。前記の銀塩を担体に担持させる工程におい
て、乾燥温度を高くすると、上記の銀化合物特有のX線
回折強度が認められなくなる。図1は、乾燥温度100
℃以下で得られる抗ウイルス性組成物のX線回折像を示
している。また、図2は240℃で10分間加熱乾燥し
たもの、図3は240℃で30分間加熱乾燥したもの、
図4は500℃で5分間加熱乾燥したものそれぞれのX
線回折像を示している。
【0016】加熱温度が200℃を超えると、Ag2
およびP1〜P4におけるX線回折強度は次第に小さくな
る。そして500℃で加熱したものでは、銀化合物が昇
華するためかNa2SO4以外の回折強度は認められなく
なる。後述のような抗菌・抗ウイルス効果を有するのは
図1のようなX線回折像を示すものの他、図2のように
1〜P4における回折強度が小さくなり、しかもそれら
がほぼ等しくなっているが、P1〜P4に明確な回折強度
が認められるものである。図3や図4に示すようなX線
回折像を示すものは、全く抗菌・抗ウイルス効果を有し
ない。
【0017】前記のチオスルファト銀錯塩およびチオス
ルファト銀塩を作製する際に用いた亜硫酸塩、硫酸水素
塩およびチオ硫酸塩はナトリウム塩であるが、カリウム
塩を用いた場合に得られる抗ウィルス性組成物のX線回
折像を図5に示す。JCPDSでは認められない回折
像、すなわち回折角2θの8.7゜、9.4゜、9.8
゜および 11.2゜に回折強度を有することが認めら
れる。図1に比べて、特長ある回折強度を有する回折角
が小さい方へシフトしている点が異なっている。なお、
酸化銀(Ag2O)の回折線は明確には認められない
が、硫酸カリウム(K2SO4)およびK246の回折
線が認められる。
【0018】前記のように、多孔性粒子担体に担持させ
るためのチオスルファト銀錯塩およびチオスルファト銀
塩は、水溶性の銀塩、例えば酢酸銀、硝酸銀の水溶液
に、亜硫酸塩および硫酸水素塩よりなる群から選択され
る少なくとも一つの塩とチオ硫酸塩を加えることによっ
て得ることができる。銀塩1モルに対して、亜硫酸塩お
よび/または硫酸水素塩2〜4モル、チオ硫酸塩2〜6
モルが好ましい。このようにして調製される溶液中にお
いては、チオスルファトイオン、銀イオンとともに[A
g(S23)]3-、[Ag2(S23)]2-などで表さ
れるチオスルファト銀錯イオンが共存している。この溶
液は、塩素を含む水道水に接しても目立った白濁を生じ
ないところから、銀イオンは大部分が錯イオンを形成し
ているものと思われる。いずれにしても上記のようなイ
オンの共存状態において、抗菌・抗ウィルス作用を発揮
する。これらチオスルファト銀錯塩およびチオスルファ
ト銀塩の多孔性粒子担体への担持量は、担体100重量
部に対して、1〜10重量部が好ましく、2〜5重量部
がさらに好ましい。
【0019】[実施例1]30mlの脱イオン水に酢酸
銀0.232gを溶解し、亜硫酸カリウム0.627g
を加えて攪拌溶解する。次いで、チオ硫酸カリウムK2
23を1.540g加えて攪拌溶解する。こうして、
チオスルファト銀錯塩およびチオスルファト銀塩の水溶
液を調製する。上記の水溶液を吸着させる多孔性担体と
して本実施例では、「JIS Z 0701包装用シリ
カゲル乾燥剤」に記載のB型のシリカゲル粉末を用い
る。このB型のシリカゲル粉末は、低湿度下では吸湿率
が低く、高湿度下では吸湿率が高く、かつ高湿度におけ
る総吸湿量の高いシリカゲル粉末である。ここでは粒径
2〜30μ(平均粒径:8μm)のものを用いる。この
シリカゲル粉末を180℃で2時間以上乾燥した後、さ
らに60℃で24時間乾燥させる。
【0020】次に、上記シリカゲル100重量部に対
し、銀成分として2重量部になるように前記水溶液を混
合した後、減圧下で60℃に加熱して速やかに水分を除
去する。次いで、これを2〜30μmの粒径に粉砕す
る。こうしてチオスルファト銀錯塩およびチオスルファ
ト銀を担持したシリカゲルを得る。次に、テトラエトキ
シシラン100重量部をエチルアルコール100重量部
に溶解させた溶液に、前記のシリカゲル100重量部を
分散させた後、これに純水を加えてテトラエトキシシラ
ンを加水分解させ、前記シリカゲルの表面の少なくとも
一部を生成する二酸化ケイ素被膜により被覆させ、次に
これを乾燥させる。
【0021】[実施例2]酢酸銀200mgを約50〜
60℃の純水30mlに溶解させた後、濾過し溶解残渣
を除去した濾液に、1gの亜硫酸カリウムおよび1.8
gのチオ硫酸カリウムを順次加え溶解させる。この溶液
に、「JIS Z 0701包装用シリカゲル乾燥剤」
記載のB型のシリカゲルで平均粒径約2.6μmのもの
を加えて混合し、次いで減圧下で乾燥させることにより
チオスルファト銀錯塩およびチオスルファト銀塩を担持
したシリカゲルを得る。 [実施例3]30mlの脱イオン水に酢酸銅0.272
gを溶解し、亜硫酸カリウム1.0gを加えて攪拌溶解
する。次いで、チオ硫酸カリウムK223・5H2Oを
0.66g加えて攪拌溶解する。こうして、チオスルフ
ァト銅錯塩およびチオスルファト銅塩の水溶液を調製す
る。次に、実施例1と同様にして、チオスルファト銅錯
塩およびチオスルファト銅塩をシリカゲルに担持させ、
そのシリカゲルの表面の一部を二酸化ケイ素被膜により
被覆する。
【0022】[実施例4]30mlの脱イオン水に酢酸
亜鉛0.286gを溶解し、亜硫酸カリウム1.0gを
加えて攪拌溶解する。次いで、チオ硫酸カリウムK22
3・5H2Oを0.66g加えて攪拌溶解する。こうし
て、チオスルファト亜鉛錯塩およびチオスルファト亜鉛
塩の水溶液を調製する。次に、実施例1と同様にして、
チオスルファト亜鉛錯塩およびチオスルファト亜鉛塩を
シリカゲルに担持させ、そのシリカゲルの表面の一部を
二酸化ケイ素被膜により被覆する。 [実施例5]実施例1で得た組成物、すなわちチオスル
ファト銀およびチオスルファト銀錯塩を担持し、表面に
二酸化ケイ素被膜を被覆したシリカゲル粒子のうち粒径
2μm以下のものを3重量%混練したゴム素材を成形
し、架橋させてシリコーンゴム薄膜を作製する。
【0023】[実施例6]アクリル酸メチルと酢酸ビニ
ル各5gを10mlのベンゼン中で懸濁重合させ、10
mlのメタノール中に分散後、実施例2のチオスルファ
ト銀錯塩およびチオスルファト銀塩を担持したシリカゲ
ル粒子1gを加える。この懸濁液をNaOHの40重量
%水溶液によりケン化し、アセトンで洗浄後、乾燥して
水分を除去して水分吸収性の粉体を得る。 [実施例7]軟膏基材であるワセリンに実施例2のチオ
スルファト銀錯塩およびチオスルファト銀塩を担持した
シリカゲル粒子を3重量%混合する。
【0024】[実施例8]実施例1で調整したチオスル
ファト銀錯塩およびチオスルファト銀塩の水溶液に、L
−アダマンタナシン塩酸塩10ミリモルを溶解する。こ
の水溶液を、実施例2で用いたのと同じシリカゲル粒子
に吸着させ、減圧化で乾燥する。 [実施例9]実施例2で得た、チオスルファト銀錯塩お
よびチオスルファト銀塩を担持したシリカゲル粒子10
gをエタノール50重量%の水−エタノール混合液10
0mlに分散させて殺菌・消毒液を調整する。 [実施例10]実施例4で得た、チオスルファト亜鉛錯
塩とチオスルファト亜鉛塩を担持したシリカゲル粒子1
0gをエタノール50重量%の水−エタノール混合液1
00mlに分散させて消毒液を調整する。 [実施例11]実施例9の溶液を室温で1週間放置した
後の溶液を消毒液とする。
【0025】[比較例1]シリカゲルを混入しない他
は、実施例5と同様にしてシリコーンゴム被膜を作製す
る。 [比較例2]エタノール50重量%の水−エタノール混
合液を消毒液とする。 [比較例3]比較例2の混合液を室温で1週間放置した
後の溶液を消毒液とする。
【0026】上記各実施例および比較例の試料を用いて
抗菌・抗ウイルス作用を調べた結果を説明する。実施例
1〜8および比較例1の試料については、各試料1gと
リン酸緩衝液3mlとを30分振蘯して、試料中の塩
を抽出した液を、また、実施例9〜11および比較例2
〜3の試料については、それら消毒液をそれぞれ試験液
とする。ウイルスとして、有膜ウイルスのはしかウイル
ス(measles virus:Nagahata
株)、エイズウイルス(Human Immunode
ficient virus:JMH−1型)、単純ヘ
ルペスウイルス(Herpes simmplex v
irus:G株)、インフルエンザウイルス(Infl
uenza virus:Okuda株)Aを用いる。
また、比較として、無膜ウイルスのポリオウイルス(p
olio virus:Sabin生ワクチン1型)を
用いる。
【0027】実施例および比較例の試験液1mlとTC
ID50(/1ml)6.5〜8.5のウイルス液1ml
を混合し、30分後、ポリオウイルス、はしかウイルス
および単純ヘルペスウイルスについては、アフリカミド
リザル腎臓由来ヴェロ(Vero)細胞、エイズウイル
スについては成人胸腺細胞白血病患者由来MT−4細
胞、インフルエンザウイルスについてはイヌ腎臓由来M
DCK細胞の各106cells/mlにそれぞれ感染
させ、1週間後の細胞の生死により感染力を評価する。
これらの結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】次に、抗菌作用について説明する。菌とし
ては大腸菌エスケリチア コーライ(Escheric
hia coli)、黄色ブドウ状菌スタフィロコッカ
スアウレウス(Staphylococcus aur
eus)およびメチシリンレジスタンス スタフィロコ
ッカス アウレウス(Methicillineres
istannce staphylococcus a
ureus)を用いる。各試験液1mlと104から1
6CFU/mlの菌液1mlとを混合し、30分放置
後普通寒天培地(ニッスイ製薬)で混釈し、18時間培
養後の菌数を測定する。この結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】次に、チオスルファト錯塩およびチオスル
ファト塩と化学療法剤を併用した実施例を説明する。 [実施例12]チオスルファト銀錯塩およびチオスルフ
ァト銀を含む水溶液に1−アダマンタナミン塩酸塩を加
えてその配位化合物を調製し、この水溶液をシリカゲル
粒子に吸着させ、乾燥する。 [実施例13]チオスルファト銀錯塩およびチオスルフ
ァト銀を含む水溶液にチオセミカルバジドを加えてその
配位化合物を調製し、この水溶液をシリカゲル粒子に吸
着させ、乾燥する。 [実施例14]チオスルファト銀錯塩およびチオスルフ
ァト銀を含む水溶液にアラビノシルヌクレオシドを加え
てその配位化合物を調製し、この水溶液をシリカゲル粒
子に吸着させ、乾燥する。
【0032】[実施例15]チオスルファト銀錯塩およ
びチオスルファト銀を含む水溶液にヌクレオシドを加え
てその配位化合物を調製し、この水溶液をシリカゲル粒
子に吸着させ、乾燥する。 [実施例16]チオスルファト銀錯塩およびチオスルフ
ァト銀を含む水溶液に2’,3’−ジデオキシヌクレオ
シドを加えてその配位化合物を調製し、この水溶液をシ
リカゲル粒子に吸着させ、乾燥する。 [実施例17]チオスルファト銀錯塩およびチオスルフ
ァト銀を含む水溶液にピロリン酸誘導体を加えてその配
位化合物を調製し、この水溶液をシリカゲル粒子に吸着
させ、乾燥する。
【0033】実施例12〜17の各試料とリン酸緩衝液
とを振蘯して試料中の化合物を約10nM/lの濃度に
抽出した液を用い、前記と同様にしてウイルスに感染さ
せて抗ウイルス性を評価した。その結果を表3に示す。
感染価が10-3以下に低下した場合を+、そうでない場
合を−で表している。
【0034】
【表3】
【0035】実施例12〜15では銀塩を化学療法剤に
配位させた例を挙げたが、銅塩、亜鉛塩を前記化学療法
剤に配位させたものについても前記と同様の効果が確認
された。
【0036】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、樹脂成
形品やゴム成形品にも適用することができ、抗菌効果を
も有する抗ウイルス性組成物を得ることができる。ま
た、担体表面に被覆層を形成することにより、徐放性を
有し、長期にわたって抗菌・抗ウイルス効果を持続す
る。さらに、本発明によれば、抗菌・抗ウイルス性の衛
生用品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における抗ウィルス性組成物
のX線回折図形を示す。
【図2】同組成物を240℃で10分間加熱したものの
X線回折図形を示す。
【図3】同組成物を240℃で30分間加熱したものの
X線回折図形を示す。
【図4】同組成物を500℃で5分間加熱したもののX
線回折図形を示す。
【図5】本発明の他の実施例における抗ウィルス性組成
物のX線回折図形を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 33/34 A61K 33/34 33/38 ADY 33/38 ADY A61L 2/16 A61L 2/16 A (72)発明者 星野 賢二 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 西野 敦 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 上田 重晴 大阪府吹田市藤白台3−5 A−10− 108 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01N 59/16 A01N 59/20 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銀、銅および亜鉛よりなる群から選択さ
    れる少なくとも一種の金属のチオスルファト錯塩および
    チオスルファト塩を多孔性粒子担体に担持させた抗有膜
    ウィルス性組成物。
  2. 【請求項2】 チオスルファト銀錯塩およびチオスルフ
    ァト銀塩を多孔性粒子担体に担持させた抗有膜ウィルス
    性組成物。
  3. 【請求項3】 前記塩を担持している多孔性粒子担体の
    少なくとも一部が被覆物により被覆されている請求項1
    または2記載の抗有膜ウィルス性組成物。
  4. 【請求項4】 前記被覆物が、アルコキシシランの加水
    分解により生成させた二酸化ケイ素である請求項3記載
    の抗有膜ウィルス性組成物。
  5. 【請求項5】 前記担体に担持された銀化合物が、Cu
    のKα線によるX線回折像において、AgOの回折線
    を有するとともに、回折角2θの10.3゜、11.2
    ゜、11.9゜および12.3゜に回折強度を有するこ
    とによって特徴づけられた請求項2記載の抗有膜ウィル
    ス性組成物。
  6. 【請求項6】 前記担体に担持された銀化合物が、Cu
    のKα線によるX線回折像において、回折角2θの8.
    7゜、9.4゜、9.8゜および11.2゜に回折強度
    を有することによって特徴づけられた請求項2記載の抗
    有膜ウィルス性組成物。
  7. 【請求項7】 銀、銅および亜鉛よりなる群から選択さ
    れる少なくとも一種の金属のチオスルファト錯塩および
    チオスルファト塩の溶液を調製する工程、前記溶液と多
    孔性粒子担体とを混合して前記溶液を前記担体に含浸す
    る工程、乾燥して前記塩を担体に担持させる工程からな
    る抗有膜ウイルス性組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記溶液を調製する工程が、前記金属の
    可溶性塩の水溶液に亜硫酸塩および硫酸水素塩よりなる
    群から選択される少なくとも一種を前記可溶性塩1モル
    に対して2〜4モルの割合で加える工程と、次に溶液に
    チオ硫酸塩を前記可溶性塩1モルに対して2〜6モルの
    割合で加える工程からなる請求項7記載の抗有膜ウイル
    ス性組成物の製造方法。
  9. 【請求項9】 担体がシリカゲルであり、さらに前記塩
    を担持した担体とアルコキシシランのアルコール溶液と
    を混合し、その混合物に水を加えて前記アルコキシシラ
    ンを加水分解させることにより担体の表面に二酸化ケイ
    素被膜を生成させる工程を有する請求項7記載の抗有膜
    ウイルス組成物の製造方法。
  10. 【請求項10】 銀、銅および亜鉛よりなる群から選択
    される少なくとも一種の金属のチオスルファト錯塩およ
    びチオスルファト塩と、1−アダマンタナミン塩酸塩、
    チオセミカルバジド、アラビノシルヌクレオシド、ヌク
    レオシド、2’,3’−ジデオキシヌクレオシドおよび
    ピロリン酸誘導体よりなる群から選択される化学療法剤
    であってその官能基に前記塩の少なくとも一方を配位し
    ている化学療法剤とを多孔性粒子担体に担持させた抗有
    膜ウイルス性組成物。
  11. 【請求項11】 請求項1〜6のいずれかまたは請求項
    10記載の抗有膜ウイルス性組成物を含むシリコーンゴ
    ム。
  12. 【請求項12】 請求項1〜6のいずれかまたは請求項
    10記載の抗有膜ウイルス性組成物を含む親水性高分子
    からなる水分吸収体。
  13. 【請求項13】 請求項1〜6のいずれかまたは請求項
    10記載の抗有膜ウイルス性組成物を混入したワセリン
    からなる軟膏。
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