JP2909959B2 - タンパク質超薄膜固定型リアクターの製造方法及び得られたタンパク質超薄膜固定型リアクターを用いた化学反応 - Google Patents
タンパク質超薄膜固定型リアクターの製造方法及び得られたタンパク質超薄膜固定型リアクターを用いた化学反応Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、固体担体上に設けた
タンパク質超薄膜を設けて基質分子の化学反応、特に酵
素反応を行うタンパク質超薄膜固定型リアクターの製造
方法に関する。
タンパク質超薄膜を設けて基質分子の化学反応、特に酵
素反応を行うタンパク質超薄膜固定型リアクターの製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】生体反応の多くにおいては、
酵素などのタンパク質が単独でまたは協同的あるいは連
鎖的に働くことによって、高効率かつ高選択性の物理的
および化学的過程を遂行している。この機能を人工的に
模倣し、酵素リアクターやバイオセンサーなどの新たな
分子デバイスを開発するためには、タンパク質を所望の
順序で集積した構造を用いることが必要である。一般
に、タンパク質を固体担体上に固定化する方法として
は、大きく分けて、吸着やキャストによって基板上に直
接固定化する方法、ラングミューアー・ブロジェット法
(LB法という)など液体面上に展開された薄膜を移し
取る方法、他の成分との交互吸着によって固定化する方
法等がある。
酵素などのタンパク質が単独でまたは協同的あるいは連
鎖的に働くことによって、高効率かつ高選択性の物理的
および化学的過程を遂行している。この機能を人工的に
模倣し、酵素リアクターやバイオセンサーなどの新たな
分子デバイスを開発するためには、タンパク質を所望の
順序で集積した構造を用いることが必要である。一般
に、タンパク質を固体担体上に固定化する方法として
は、大きく分けて、吸着やキャストによって基板上に直
接固定化する方法、ラングミューアー・ブロジェット法
(LB法という)など液体面上に展開された薄膜を移し
取る方法、他の成分との交互吸着によって固定化する方
法等がある。
【0003】吸着によって基板上に直接固定化する方法
では、固定化されるタンパク質の層の厚さは固体基板と
の相互作用が及ぶ範囲に限られる。したがって、この方
法ではタンパク質の吸着を繰り返し行うことができず、
特に複数のタンパク質を順序よく積層することはできな
い。同様に、タンパク質溶液そのものや、または二分子
膜形成脂質と混合して固体基板上にキャストする方法で
は、タンパク質の固定化がキャストおよび溶媒の蒸発と
いう一連のプロセスで完結する。したがって、この方法
でも複数のタンパク質を順序良く固定化することはでき
ない。また、分子層を任意の順序で並べた分子的精密さ
を持つ薄膜の作成法としては、LB法が知られている。
これは、脂質のような両親媒性の物質を有機溶媒中に溶
解させ、水溶液上に展開し、得られた単分子膜を固体基
板上に移し取ることによって、任意の厚さの薄膜を積層
順序をコントロールしながら積層する方法である。しか
しながら、タンパク質の中には気−水界面で表面変性し
て活性を失ってしまうものも多いので、この方法は一般
のタンパク質に広く応用されるわけではない。また、こ
の方法では、水相にタンパク質が散逸してしまい、一般
的に高価なタンパク質を用いる方法としては経済性が悪
いという欠点もある。これらの問題に加え、LB法は生
産性に劣っていたり、使用する設備が高価でかつ取り扱
いが容易でないなどの要因によってもタンパク質固定化
法として広く採用されるまでにはいたっていない。
では、固定化されるタンパク質の層の厚さは固体基板と
の相互作用が及ぶ範囲に限られる。したがって、この方
法ではタンパク質の吸着を繰り返し行うことができず、
特に複数のタンパク質を順序よく積層することはできな
い。同様に、タンパク質溶液そのものや、または二分子
膜形成脂質と混合して固体基板上にキャストする方法で
は、タンパク質の固定化がキャストおよび溶媒の蒸発と
いう一連のプロセスで完結する。したがって、この方法
でも複数のタンパク質を順序良く固定化することはでき
ない。また、分子層を任意の順序で並べた分子的精密さ
を持つ薄膜の作成法としては、LB法が知られている。
これは、脂質のような両親媒性の物質を有機溶媒中に溶
解させ、水溶液上に展開し、得られた単分子膜を固体基
板上に移し取ることによって、任意の厚さの薄膜を積層
順序をコントロールしながら積層する方法である。しか
しながら、タンパク質の中には気−水界面で表面変性し
て活性を失ってしまうものも多いので、この方法は一般
のタンパク質に広く応用されるわけではない。また、こ
の方法では、水相にタンパク質が散逸してしまい、一般
的に高価なタンパク質を用いる方法としては経済性が悪
いという欠点もある。これらの問題に加え、LB法は生
産性に劣っていたり、使用する設備が高価でかつ取り扱
いが容易でないなどの要因によってもタンパク質固定化
法として広く採用されるまでにはいたっていない。
【0004】最近、脂質などで被覆した酵素を有機溶媒
に溶解し、変性を最小限におさえてタンパク質を必要量
だけ水面上に展開する手法が考案されている。この方法
で得られる膜では脂質分子が密なパッキング状態をとる
ため、膜中での基質拡散が妨げられ、酵素反応システム
として用いるには不向きである。実際に、グルコースオ
キシターゼ(GOD)を固定化したLB膜では、基質や
生成物の拡散の困難さが反応の進行を妨げることが報告
されている。また、LB膜の累積は平滑な無孔性の基板
上に限られるのが一般的であり、いろいろな機能を持つ
さまざまな担体へとタンパク質を固定化できる手法では
ない。
に溶解し、変性を最小限におさえてタンパク質を必要量
だけ水面上に展開する手法が考案されている。この方法
で得られる膜では脂質分子が密なパッキング状態をとる
ため、膜中での基質拡散が妨げられ、酵素反応システム
として用いるには不向きである。実際に、グルコースオ
キシターゼ(GOD)を固定化したLB膜では、基質や
生成物の拡散の困難さが反応の進行を妨げることが報告
されている。また、LB膜の累積は平滑な無孔性の基板
上に限られるのが一般的であり、いろいろな機能を持つ
さまざまな担体へとタンパク質を固定化できる手法では
ない。
【0005】タンパク質を他の成分と交互吸着させ、タ
ンパク質を一層づつ固定化してゆけば、タンパク質を任
意の順序で固定化することができる。このための方法
が、最近いくつか報告されている。その中のひとつとし
て、ビチオン/アビジン系のように特異的リガンドで複
数(2種)のタンパク質を積み上げる方法が知られてい
るが、タンパク質を労力をかけて化学修飾する必要があ
り、この方法は極めて限られた組み合わせに適用できる
だけで一般性に欠ける。また、タンパク質をルコニウム
フォスフェートや両頭性の脂質(bolaamphip
hiles)との静電的な相互作用によって交互に吸着
する方法が考案されている。しかしながら、これらの例
では、タンパク質間をつなぎ止めている成分が剛直なた
めか、積層は数層程度に限られ、また、限られた種類の
タンパク質にしか適用されていない。つまり、これらの
方法では、必要なタンパク質を所望の順番で固定化する
ことはできずに、特に複数タンパク質を用いた酵素反応
システムの作成には向いていない。
ンパク質を一層づつ固定化してゆけば、タンパク質を任
意の順序で固定化することができる。このための方法
が、最近いくつか報告されている。その中のひとつとし
て、ビチオン/アビジン系のように特異的リガンドで複
数(2種)のタンパク質を積み上げる方法が知られてい
るが、タンパク質を労力をかけて化学修飾する必要があ
り、この方法は極めて限られた組み合わせに適用できる
だけで一般性に欠ける。また、タンパク質をルコニウム
フォスフェートや両頭性の脂質(bolaamphip
hiles)との静電的な相互作用によって交互に吸着
する方法が考案されている。しかしながら、これらの例
では、タンパク質間をつなぎ止めている成分が剛直なた
めか、積層は数層程度に限られ、また、限られた種類の
タンパク質にしか適用されていない。つまり、これらの
方法では、必要なタンパク質を所望の順番で固定化する
ことはできずに、特に複数タンパク質を用いた酵素反応
システムの作成には向いていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は従
来方法の欠点を改良し、タンパク質分子層を変性を伴わ
ず複数のタンパク質を所望の順序で集積、固定し基質分
子との化学反応を行えるように種々検討した結果、タン
パク質が荷電を有する条件、例えば等電点より充分離れ
たpHで積層することによってタンパク質の種類によら
ず任意の順序で積層化したタンパク質超薄膜が得られる
ことを見出し、本発明を完成したもので、本発明は基質
分子の化学反応、特に酵素反応を行うタンパク質超薄膜
固定型リアクターを提供することを目的とする。
来方法の欠点を改良し、タンパク質分子層を変性を伴わ
ず複数のタンパク質を所望の順序で集積、固定し基質分
子との化学反応を行えるように種々検討した結果、タン
パク質が荷電を有する条件、例えば等電点より充分離れ
たpHで積層することによってタンパク質の種類によら
ず任意の順序で積層化したタンパク質超薄膜が得られる
ことを見出し、本発明を完成したもので、本発明は基質
分子の化学反応、特に酵素反応を行うタンパク質超薄膜
固定型リアクターを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項1の発明の要旨は、固体担体をタンパク質の
溶液中、および、該タンパク質とは反対の荷電を有する
有機高分子イオンの溶液中に交互に浸漬し、前記固体担
体上に分子的精密さで構造制御されたタンパク質超薄膜
を形成することを特徴とするタンパク質超薄膜固定型リ
アクターの製造方法であり、請求項2の発明の要旨は、
荷電を有する固体担体を、該固体担体とは正味の反対荷
電を有する有機高分子イオンまたはタンパク質の溶液に
浸漬し、該固体担体上の荷電の中和および過剰荷電の飽
和により固体担体の表面荷電の逆転を行い、次に、この
表面荷電とは逆の正味荷電を有するタンパク質または有
機高分子イオンの溶液に浸漬し、表面荷電の中和および
過剰荷電の飽和により表面荷電の再逆転を行う過程を繰
り返して行うことにより、少なくとも2種以上のタンパ
ク質を積層化した超薄膜を設けることを特徴とするタン
パク質超薄膜固定型リアクターの製造方法である。そし
てこれらの方法を用いて、固体担体上に複数種のタンパ
ク質層からなる超薄膜を作成し、得られたタンパク質超
薄膜を用いて基質分子の化学変化を行うことを特徴とす
る基質分子の化学反応方法、また、これらタンパク質薄
膜を分離機能を有する担体上に固定化し、化学変化と同
時に基質と生成物を分離する基質分子の化学反応方法、
及び、タンパク質が酵素であるリアクターである酵素固
定化膜型リアクターである。
め、請求項1の発明の要旨は、固体担体をタンパク質の
溶液中、および、該タンパク質とは反対の荷電を有する
有機高分子イオンの溶液中に交互に浸漬し、前記固体担
体上に分子的精密さで構造制御されたタンパク質超薄膜
を形成することを特徴とするタンパク質超薄膜固定型リ
アクターの製造方法であり、請求項2の発明の要旨は、
荷電を有する固体担体を、該固体担体とは正味の反対荷
電を有する有機高分子イオンまたはタンパク質の溶液に
浸漬し、該固体担体上の荷電の中和および過剰荷電の飽
和により固体担体の表面荷電の逆転を行い、次に、この
表面荷電とは逆の正味荷電を有するタンパク質または有
機高分子イオンの溶液に浸漬し、表面荷電の中和および
過剰荷電の飽和により表面荷電の再逆転を行う過程を繰
り返して行うことにより、少なくとも2種以上のタンパ
ク質を積層化した超薄膜を設けることを特徴とするタン
パク質超薄膜固定型リアクターの製造方法である。そし
てこれらの方法を用いて、固体担体上に複数種のタンパ
ク質層からなる超薄膜を作成し、得られたタンパク質超
薄膜を用いて基質分子の化学変化を行うことを特徴とす
る基質分子の化学反応方法、また、これらタンパク質薄
膜を分離機能を有する担体上に固定化し、化学変化と同
時に基質と生成物を分離する基質分子の化学反応方法、
及び、タンパク質が酵素であるリアクターである酵素固
定化膜型リアクターである。
【0008】
【作用】本発明においては、分子レベルの膜厚をもち、
しかも活性を保持したタンパク質超薄膜が任意の層数だ
け形成される。このタンパク質超薄膜が形成されるの
は、以下のような原理に基づく。タンパク質と反対荷電
を有する固体担体表面をタンパク質の水溶液に浸漬させ
ると、静電相互作用によってタンパク質が吸着する。そ
の際に、タンパク質は担体表面上の荷電を中和するのみ
ならず、過剰に吸着して、表面には新たな荷電が現れ
る。これをタンパク質とは反対の荷電を持つ有機高分子
イオンの水溶液中に浸漬させると、有機高分子イオンに
よる荷電の中和および過剰吸着によって、表面には新た
な反対荷電が現れる。この過程を繰り返すことによっ
て、タンパク質と有機高分子イオンの交互吸着が実質上
無限に行われる。また、それぞれのステップにおける過
剰吸着量は、荷電の飽和によって制限され、各回一定量
のタンパク質および有機高分子イオンが固定化されるこ
ととなる。
しかも活性を保持したタンパク質超薄膜が任意の層数だ
け形成される。このタンパク質超薄膜が形成されるの
は、以下のような原理に基づく。タンパク質と反対荷電
を有する固体担体表面をタンパク質の水溶液に浸漬させ
ると、静電相互作用によってタンパク質が吸着する。そ
の際に、タンパク質は担体表面上の荷電を中和するのみ
ならず、過剰に吸着して、表面には新たな荷電が現れ
る。これをタンパク質とは反対の荷電を持つ有機高分子
イオンの水溶液中に浸漬させると、有機高分子イオンに
よる荷電の中和および過剰吸着によって、表面には新た
な反対荷電が現れる。この過程を繰り返すことによっ
て、タンパク質と有機高分子イオンの交互吸着が実質上
無限に行われる。また、それぞれのステップにおける過
剰吸着量は、荷電の飽和によって制限され、各回一定量
のタンパク質および有機高分子イオンが固定化されるこ
ととなる。
【0009】以上に示した作成原理からわかるように、
本発明ではタンパク質の水溶液をそのまま用いることが
できるため、タンパク質の変性を避けることができる。
これまで、考案されているタンパク質固定化法はしばし
ばタンパク質の変性を伴い、タンパク質の活性を機能と
して用いることができない点を考えると、本発明による
タンパク質固定化の方法は酵素反応システムを作成する
うえで優れた方法であると言える。また、タンパク質の
吸着が静電的な相互作用に基づいており、あらゆるタン
パク質がなんらかの表面荷電を有していることを考える
と、本方法は水溶性のタンパク質に広く応用される手法
であるといえる。つまり、タンパク質の表面荷電は溶液
中のpHによって制御することができるので、タンパク
質水溶液のpHや相手の有機高分子イオンを選ぶことに
よって、広範囲のタンパク質が固定化されることにな
る。この特質は、本発明が特定の反応に対する酵素反応
システム作成に限定されず、広範囲の反応系に適用でき
ることを意味している。
本発明ではタンパク質の水溶液をそのまま用いることが
できるため、タンパク質の変性を避けることができる。
これまで、考案されているタンパク質固定化法はしばし
ばタンパク質の変性を伴い、タンパク質の活性を機能と
して用いることができない点を考えると、本発明による
タンパク質固定化の方法は酵素反応システムを作成する
うえで優れた方法であると言える。また、タンパク質の
吸着が静電的な相互作用に基づいており、あらゆるタン
パク質がなんらかの表面荷電を有していることを考える
と、本方法は水溶性のタンパク質に広く応用される手法
であるといえる。つまり、タンパク質の表面荷電は溶液
中のpHによって制御することができるので、タンパク
質水溶液のpHや相手の有機高分子イオンを選ぶことに
よって、広範囲のタンパク質が固定化されることにな
る。この特質は、本発明が特定の反応に対する酵素反応
システム作成に限定されず、広範囲の反応系に適用でき
ることを意味している。
【0010】さらに、複数のタンパク質を所望の順序で
固定化することが可能で、異なるタンパク質機能を組み
合わせて反応効率の良い複合酵素反応システムを作成す
ることもできる。加えて、本法では、タンパク質の形状
に応じて自由にコンフォメーションを変えることのでき
る柔軟な有機高分子イオンをタンパク質の固定化に用い
ているため、脂質などの剛直な成分を用いた場合に比し
て、薄膜内での基質、生成物の拡散が容易であるという
利点を持つ。しかも、本手法によるタンパク質薄膜作成
法は担体をタンパク質水溶液や有機高分子イオン水溶液
に浸けるだけという、極めて簡便な手法で短時間で行わ
れ、特別な設備をほとんど必要としない。そのため、固
体担体を自由に選択することができ、分離機能などの付
加機能を酵素反応システムに付与することができる。
固定化することが可能で、異なるタンパク質機能を組み
合わせて反応効率の良い複合酵素反応システムを作成す
ることもできる。加えて、本法では、タンパク質の形状
に応じて自由にコンフォメーションを変えることのでき
る柔軟な有機高分子イオンをタンパク質の固定化に用い
ているため、脂質などの剛直な成分を用いた場合に比し
て、薄膜内での基質、生成物の拡散が容易であるという
利点を持つ。しかも、本手法によるタンパク質薄膜作成
法は担体をタンパク質水溶液や有機高分子イオン水溶液
に浸けるだけという、極めて簡便な手法で短時間で行わ
れ、特別な設備をほとんど必要としない。そのため、固
体担体を自由に選択することができ、分離機能などの付
加機能を酵素反応システムに付与することができる。
【0011】そこで、より具体的にこの発明の方法につ
いて説明すると、まず、本発明で使用する有機高分子イ
オンは、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高
分子のことをいう。ポリアニオンとしては、一般的に、
スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負荷電を帯びること
のできる官能基を有するものであり、例えば、ポリスチ
レンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PV
S)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリア
クリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポ
リマレイン酸、ポリフマル酸などが用いられ、ポリカチ
オンとしては、一般に、4級アンモニウム基、アミノ基
などの正荷電を帯びることのできる官能基を有するも
の、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリ
ルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアン
モニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン
(PVP)、ポリリジンなどを用いることができる。こ
れらの有機高分子イオンは、いずれも水溶性あるいは水
と有機溶媒との混合液に可溶なものである。また、導電
性高分子、ポリ(アニリン−N−プロパンスルホン酸)
(PAN)などの機能性高分子イオン、種々のデオキシ
リボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)、ペクチンな
どの荷電を有する多糖類などの荷電を持つ生体高分子を
用いることもできる。
いて説明すると、まず、本発明で使用する有機高分子イ
オンは、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高
分子のことをいう。ポリアニオンとしては、一般的に、
スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負荷電を帯びること
のできる官能基を有するものであり、例えば、ポリスチ
レンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PV
S)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリア
クリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポ
リマレイン酸、ポリフマル酸などが用いられ、ポリカチ
オンとしては、一般に、4級アンモニウム基、アミノ基
などの正荷電を帯びることのできる官能基を有するも
の、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリ
ルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアン
モニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン
(PVP)、ポリリジンなどを用いることができる。こ
れらの有機高分子イオンは、いずれも水溶性あるいは水
と有機溶媒との混合液に可溶なものである。また、導電
性高分子、ポリ(アニリン−N−プロパンスルホン酸)
(PAN)などの機能性高分子イオン、種々のデオキシ
リボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)、ペクチンな
どの荷電を有する多糖類などの荷電を持つ生体高分子を
用いることもできる。
【0012】タンパク質は水溶性であれば一般的に表面
に荷電を有するので、種類を問わず用いることができ
る。例えば、グリコースオキシダーゼ(GOD;分子量
186000、等電点4.2)、ペルオキシダーゼ(P
OD;分子量42000、等電点7.2)グルコアミラ
ーゼ(GA;分子量100000、等電点4.2)、ア
ルコール脱水素酵素(ADH;分子量100000、等
電点9)、ジアホラーゼ(DA;分子量700000、
等電点4)、チトクローム(Cyt;分子量1240
0、等電点10.1)、リゾチーム(Lys;分子量1
4000、等電点11)、ヒストンf3(His;分子
量15300、等電点11)、ミオグロビン(Mb;分
子量17800、等電点7.0)、ヘモグロビン(H
b;分子量64000、等電点6.8)などが例として
あげられる。
に荷電を有するので、種類を問わず用いることができ
る。例えば、グリコースオキシダーゼ(GOD;分子量
186000、等電点4.2)、ペルオキシダーゼ(P
OD;分子量42000、等電点7.2)グルコアミラ
ーゼ(GA;分子量100000、等電点4.2)、ア
ルコール脱水素酵素(ADH;分子量100000、等
電点9)、ジアホラーゼ(DA;分子量700000、
等電点4)、チトクローム(Cyt;分子量1240
0、等電点10.1)、リゾチーム(Lys;分子量1
4000、等電点11)、ヒストンf3(His;分子
量15300、等電点11)、ミオグロビン(Mb;分
子量17800、等電点7.0)、ヘモグロビン(H
b;分子量64000、等電点6.8)などが例として
あげられる。
【0013】固体担体としては、銀(表面アニオン
性)、ガラスや石英((表面アニオン性)、表面荷電を
持つポリマーフィルムなどのように表面に荷電のあるも
の、あるいは、金(メルカプトプロピオン酸などの吸着
により表面に荷電を導入することができる)や種々の電
極などのように荷電を導入することができるものであれ
ばどのようなものでも用いることができる。さらに、固
定化原理が単純な吸着に基づいているため、固定化担体
は平滑である必要はなく、また、材質的にも様々なもの
を選択できる。例えば、平滑な固体基板の他に、フィル
ターなどの多孔性の固体担体、シリカゲルなどの粉末、
ビーズなどの樹脂も用いることができる。
性)、ガラスや石英((表面アニオン性)、表面荷電を
持つポリマーフィルムなどのように表面に荷電のあるも
の、あるいは、金(メルカプトプロピオン酸などの吸着
により表面に荷電を導入することができる)や種々の電
極などのように荷電を導入することができるものであれ
ばどのようなものでも用いることができる。さらに、固
定化原理が単純な吸着に基づいているため、固定化担体
は平滑である必要はなく、また、材質的にも様々なもの
を選択できる。例えば、平滑な固体基板の他に、フィル
ターなどの多孔性の固体担体、シリカゲルなどの粉末、
ビーズなどの樹脂も用いることができる。
【0014】タンパク質および有機高分子イオンは基本
的に水溶液とするが、溶解性に応じて有機溶媒を混合さ
せることもできる。それぞれの溶液濃度はタンパク質や
有機高分子イオンの溶解性に依存するが、吸着過程が固
定化されている荷電の中和および再飽和に基づいている
ので、特に厳密な濃度設定は必要としない。標準的な濃
度例としては、タンパク質溶液が1mg/ml、有機高
分子イオンは1−3mg/mlが挙げられるが、この濃
度範囲に限定されるものではない。また、必要に応じて
HClなどの添加あるいは緩衝液の使用によって、タン
パク質および有機高分子イオンが充分に荷電を持つよう
になるpHに溶液のpHを調整する。まず、表面に荷電
を有する固体担体を2種類の有機高分子イオン溶液(ポ
リカチオンとポリアニオン)に交互に浸し、柔軟な有機
高分子イオンの薄膜を固体担体上に作成する。ただし、
この有機高分子イオンの薄膜の作成過程を省いても、以
降のタンパク質超薄膜の作成は可能である。最終的に目
的とするタンパク質とは反対荷電を有する有機高分子イ
オンを最外層に固定化する。その後、タンパク質水溶液
への浸漬、水による洗浄、有機高分子イオン水溶液への
浸漬、水による洗浄、の過程を繰り返すことによって、
タンパク質の多層超薄膜を作成する。ここで標準的な浸
漬時間は10〜20分間であるが、同操作では吸着平衡
がが自発的に得られるので、厳密な浸漬時間は必要とさ
れない。
的に水溶液とするが、溶解性に応じて有機溶媒を混合さ
せることもできる。それぞれの溶液濃度はタンパク質や
有機高分子イオンの溶解性に依存するが、吸着過程が固
定化されている荷電の中和および再飽和に基づいている
ので、特に厳密な濃度設定は必要としない。標準的な濃
度例としては、タンパク質溶液が1mg/ml、有機高
分子イオンは1−3mg/mlが挙げられるが、この濃
度範囲に限定されるものではない。また、必要に応じて
HClなどの添加あるいは緩衝液の使用によって、タン
パク質および有機高分子イオンが充分に荷電を持つよう
になるpHに溶液のpHを調整する。まず、表面に荷電
を有する固体担体を2種類の有機高分子イオン溶液(ポ
リカチオンとポリアニオン)に交互に浸し、柔軟な有機
高分子イオンの薄膜を固体担体上に作成する。ただし、
この有機高分子イオンの薄膜の作成過程を省いても、以
降のタンパク質超薄膜の作成は可能である。最終的に目
的とするタンパク質とは反対荷電を有する有機高分子イ
オンを最外層に固定化する。その後、タンパク質水溶液
への浸漬、水による洗浄、有機高分子イオン水溶液への
浸漬、水による洗浄、の過程を繰り返すことによって、
タンパク質の多層超薄膜を作成する。ここで標準的な浸
漬時間は10〜20分間であるが、同操作では吸着平衡
がが自発的に得られるので、厳密な浸漬時間は必要とさ
れない。
【0015】このようにして作成されたタンパク質超薄
膜を酵素反応システムとして用いるときには、薄膜を固
定化してある固体担体を該当する基質を含む溶液中に挿
入することによってなされ、特別な設備を一切必要とし
ない。また、タンパク質薄膜を固定化した多孔性担体に
基質溶液を通過させることによっても反応を行う事が出
来る。以上の通りのこの発明について、次に実施例を示
し、さらに詳しく説明する。
膜を酵素反応システムとして用いるときには、薄膜を固
定化してある固体担体を該当する基質を含む溶液中に挿
入することによってなされ、特別な設備を一切必要とし
ない。また、タンパク質薄膜を固定化した多孔性担体に
基質溶液を通過させることによっても反応を行う事が出
来る。以上の通りのこの発明について、次に実施例を示
し、さらに詳しく説明する。
【0016】
実施例1、2 実施例1、2として、本方法によってタンパク質が繰り
返し、一定量ずつ固定化していることを示すために、銀
電極で被覆した水晶発振子上へのタンパク質超薄膜の固
定化を行った。水晶発振子はマイクロバランスとして知
られ、振動数変化よりその表面上に固定化された物質量
を10~9gの精度で測定することができるデバイスであ
る。銀電極(面積約0.2cm2)の表面は部分的な酸
化のためアニオン性となっている。まず銀電極水晶発振
子にポリカチオンあるいはポリアニオンを前駆層として
数層交互に固定化し、その表面へのタンパク質の吸着を
行った。実施例1としてPSSとPODの交互吸着を、
実施例2としてPEIとGODの交互吸着を測定した。
図1は実施例1の吸着に基づく水晶発振子の振動数変化
を示す。図に示されたように、繰り返し吸着における吸
着量は、初めの数層を除いてほぼ一定である。つまり、
この結果は、本方法においては一定量のタンパク質が各
回吸着されることを示すものである。また、吸着量から
計算したところ各回の吸着量は、タンパク質の単分子層
吸着に相当することがわかった。さらに図から、これら
の交互吸着過程は何層にもわたって繰り返し行うことが
可能であることがわかる。すなわち、酵素反応システム
の必要性に応じて、所望の層数のタンパク質を固定化で
きることを示している。
返し、一定量ずつ固定化していることを示すために、銀
電極で被覆した水晶発振子上へのタンパク質超薄膜の固
定化を行った。水晶発振子はマイクロバランスとして知
られ、振動数変化よりその表面上に固定化された物質量
を10~9gの精度で測定することができるデバイスであ
る。銀電極(面積約0.2cm2)の表面は部分的な酸
化のためアニオン性となっている。まず銀電極水晶発振
子にポリカチオンあるいはポリアニオンを前駆層として
数層交互に固定化し、その表面へのタンパク質の吸着を
行った。実施例1としてPSSとPODの交互吸着を、
実施例2としてPEIとGODの交互吸着を測定した。
図1は実施例1の吸着に基づく水晶発振子の振動数変化
を示す。図に示されたように、繰り返し吸着における吸
着量は、初めの数層を除いてほぼ一定である。つまり、
この結果は、本方法においては一定量のタンパク質が各
回吸着されることを示すものである。また、吸着量から
計算したところ各回の吸着量は、タンパク質の単分子層
吸着に相当することがわかった。さらに図から、これら
の交互吸着過程は何層にもわたって繰り返し行うことが
可能であることがわかる。すなわち、酵素反応システム
の必要性に応じて、所望の層数のタンパク質を固定化で
きることを示している。
【0017】実施例3、4 実施例3、4として、複数のタンパク質を同一薄膜内に
固定化した。まず、実施例3として、PEIとGODを
交互吸着した薄膜を前駆層の上に作成し、さらにその上
にPSSとPODを交互吸着した。また、実施例4とし
ては、逆の積層順序で2種類のタンパク質薄膜を積層し
た。つまり、実施例4においては、PSSとPODを交
互吸着した薄膜を前駆層の上に作成し、さらにその上に
PEIとGODを交互吸着した。これらの結果を図2に
示した。図からわかるように、それぞれのタンパク質層
の積層過程は、他方のタンパク質層の積層過程に影響さ
れず、実施例3と4における対応する部分の振動数変化
量は同一である。つまり、タンパク質層はそれぞれ独立
に行うことができることになる。この特質は、タンパク
質層を所望の順序で積層できることを反映しており、連
続的な化学変化に対して反応効率のよい酵素反応システ
ムをつくる上で重要な知見である。
固定化した。まず、実施例3として、PEIとGODを
交互吸着した薄膜を前駆層の上に作成し、さらにその上
にPSSとPODを交互吸着した。また、実施例4とし
ては、逆の積層順序で2種類のタンパク質薄膜を積層し
た。つまり、実施例4においては、PSSとPODを交
互吸着した薄膜を前駆層の上に作成し、さらにその上に
PEIとGODを交互吸着した。これらの結果を図2に
示した。図からわかるように、それぞれのタンパク質層
の積層過程は、他方のタンパク質層の積層過程に影響さ
れず、実施例3と4における対応する部分の振動数変化
量は同一である。つまり、タンパク質層はそれぞれ独立
に行うことができることになる。この特質は、タンパク
質層を所望の順序で積層できることを反映しており、連
続的な化学変化に対して反応効率のよい酵素反応システ
ムをつくる上で重要な知見である。
【0018】実施例5 実施例5として、GOD1層のみからなるタンパク質薄
膜をグルコース、POD、酸化還元色素DA67を含む
水溶液に浸けて、酵素反応を行った。反応式を化1に、
また測定系の模式図を図3に示した。反応が進行するに
従って、DA67が酸化され、607nmおよび665
nmの吸収が増大する。このときのスペクトル変化の様
子を図4に示した。時間とともに、これらの吸収ピーク
が速やかに増加し、薄膜中に固定化されたGODを介し
て反応が順調に進行していることがわかる。このこと
は、薄膜中に固定化されたGODが活性を保っているこ
とを示している。
膜をグルコース、POD、酸化還元色素DA67を含む
水溶液に浸けて、酵素反応を行った。反応式を化1に、
また測定系の模式図を図3に示した。反応が進行するに
従って、DA67が酸化され、607nmおよび665
nmの吸収が増大する。このときのスペクトル変化の様
子を図4に示した。時間とともに、これらの吸収ピーク
が速やかに増加し、薄膜中に固定化されたGODを介し
て反応が順調に進行していることがわかる。このこと
は、薄膜中に固定化されたGODが活性を保っているこ
とを示している。
【0019】
【化1】
【0020】実施例6〜9 実施例6〜9として、実施例5と同様なGOD固定化薄
膜(1層膜)を、種々の溶液に浸け、図4に示したよう
なスペクトル変化が固定化されたGODに触媒された反
応に基づくものであることを確証した。これらの結果を
図5にまとめた。図5には、665nmにおける吸光度
をモニターした結果を示した。まず、実施例6としてP
OD(0.0004mg/ml)とDA67(0.00
01mg/ml)のみを含む溶液を5分間放置した(図
5の0からA)。このときには、吸光度の上昇は認めら
れず、DA67の自然酸化による吸光度上昇の影響のな
いことが確かめられた。そこに、GOD固定化薄膜を浸
漬した(実施例7、図5のAからB)。このときにも、
吸光度の増加は見られなかった。これは、溶液系内にG
ODの基質であるグルコースが含まれていないからであ
る。つまり、GODによってグルコースを酸化するとい
う反応が起こらないかぎり、全体の反応(図3)が起こ
りえないことがわかる。次に、GOD固定化薄膜をいっ
たん溶液系から取りだし(図5のB)、そこに0.01
mg/mlのグルコースを加えた(実施例8、図5の
C)。このときにも、吸光度の上昇はほとんど観測され
なかった(図5のCからD)。これは、溶液系にGOD
が存在しないためである。この結果は、最初のGOD固
定化薄膜の浸漬(実施例7)において、溶液中にGOD
が漏出しなかったこと、つまり薄膜中でのGOD固定化
の安定製を示すものである。実施例9として、GOD固
定化薄膜をこの溶液系(グルコース、POD、DA67
の全てを含む)に浸漬した(2回繰り返した。すなわ
ち、図5のDにおいて薄膜を浸漬し、図5のEにおいて
薄膜を系から取り出した)。図5の挙動より、GOD薄
膜が存在するときにのみ吸光度上昇が認められ、薄膜を
溶液系から取り出したときには、吸光度が上昇しないこ
とが明らかである。これは、ここで観測されている吸光
度上昇がGODによって触媒される反応に基づくことを
端的に表すものである。この操作は、繰り返し2回行っ
たが、ほぼ同様な吸光度上昇が認められ、GOD薄膜が
繰り返し使用可能なことを示している。最後に、実施例
10として、GOD固定化薄膜(2層膜)を別個に作成
し、それを同じ基質溶液に浸漬した(図5のF)。この
場合、実施例9の1層膜の場合に比べて、吸光度上昇速
度が約2倍となり、GOD薄膜の層数に応じて、反応の
進行度が増加することがわかった。この結果は、基板上
に積層された薄膜のうち内部の層に固定化されたGOD
も反応に関与していることを示すものである。
膜(1層膜)を、種々の溶液に浸け、図4に示したよう
なスペクトル変化が固定化されたGODに触媒された反
応に基づくものであることを確証した。これらの結果を
図5にまとめた。図5には、665nmにおける吸光度
をモニターした結果を示した。まず、実施例6としてP
OD(0.0004mg/ml)とDA67(0.00
01mg/ml)のみを含む溶液を5分間放置した(図
5の0からA)。このときには、吸光度の上昇は認めら
れず、DA67の自然酸化による吸光度上昇の影響のな
いことが確かめられた。そこに、GOD固定化薄膜を浸
漬した(実施例7、図5のAからB)。このときにも、
吸光度の増加は見られなかった。これは、溶液系内にG
ODの基質であるグルコースが含まれていないからであ
る。つまり、GODによってグルコースを酸化するとい
う反応が起こらないかぎり、全体の反応(図3)が起こ
りえないことがわかる。次に、GOD固定化薄膜をいっ
たん溶液系から取りだし(図5のB)、そこに0.01
mg/mlのグルコースを加えた(実施例8、図5の
C)。このときにも、吸光度の上昇はほとんど観測され
なかった(図5のCからD)。これは、溶液系にGOD
が存在しないためである。この結果は、最初のGOD固
定化薄膜の浸漬(実施例7)において、溶液中にGOD
が漏出しなかったこと、つまり薄膜中でのGOD固定化
の安定製を示すものである。実施例9として、GOD固
定化薄膜をこの溶液系(グルコース、POD、DA67
の全てを含む)に浸漬した(2回繰り返した。すなわ
ち、図5のDにおいて薄膜を浸漬し、図5のEにおいて
薄膜を系から取り出した)。図5の挙動より、GOD薄
膜が存在するときにのみ吸光度上昇が認められ、薄膜を
溶液系から取り出したときには、吸光度が上昇しないこ
とが明らかである。これは、ここで観測されている吸光
度上昇がGODによって触媒される反応に基づくことを
端的に表すものである。この操作は、繰り返し2回行っ
たが、ほぼ同様な吸光度上昇が認められ、GOD薄膜が
繰り返し使用可能なことを示している。最後に、実施例
10として、GOD固定化薄膜(2層膜)を別個に作成
し、それを同じ基質溶液に浸漬した(図5のF)。この
場合、実施例9の1層膜の場合に比べて、吸光度上昇速
度が約2倍となり、GOD薄膜の層数に応じて、反応の
進行度が増加することがわかった。この結果は、基板上
に積層された薄膜のうち内部の層に固定化されたGOD
も反応に関与していることを示すものである。
【0021】実施例10〜15 実施例10〜15として、GOD固定化薄膜のうち1層
膜(実施例10、11)、2層膜(実施例12、1
3)、3層膜(実施例14、15)をグルコース(0.
01mg/ml)、POD(0.0004mg/m
l)、DA67(0.0004mg/ml)を含む水溶
液に浸漬し、反応速度を測定した。図6にはその結果
を、グルコースの反応率を縦軸にとって示した。実施例
10と11、実施例12と13、実施例14と15は、
それぞれ同じ条件において繰り返し測定したものである
が、良い再現性が得られている。この再現性の良さは、
このタンパク質薄膜をセンサーなどに反応する場合に、
精度のよい応答が得られることを示すものである。異な
る層数のサンプル同士を比べると、層数の増加にほぼ比
例して反応速度が増加している。これは、実施例9にお
いても見られたように、薄膜内部層に固定化されたGO
Dも反応に関与していることを示すものである。そのこ
とは同時に、薄膜中での基質分子や生成物分子の拡散が
律速でないことを示す結果である。他の固定化法でタン
パク質を固定化した場合には、膜中での基質分子等の拡
散が反応律速となってしまうことが多く報告されてい
る。本方法で固定化されたタンパク質薄膜においてこの
ような問題点を克服できたのは、タンパク質を固定化し
ている有機高分子イオンが柔軟でさほど密な構造を取ら
ないことと、分子厚みに近い超薄膜であるため、基質等
の拡散距離が問題にならないことが、その理由であろ
う。
膜(実施例10、11)、2層膜(実施例12、1
3)、3層膜(実施例14、15)をグルコース(0.
01mg/ml)、POD(0.0004mg/m
l)、DA67(0.0004mg/ml)を含む水溶
液に浸漬し、反応速度を測定した。図6にはその結果
を、グルコースの反応率を縦軸にとって示した。実施例
10と11、実施例12と13、実施例14と15は、
それぞれ同じ条件において繰り返し測定したものである
が、良い再現性が得られている。この再現性の良さは、
このタンパク質薄膜をセンサーなどに反応する場合に、
精度のよい応答が得られることを示すものである。異な
る層数のサンプル同士を比べると、層数の増加にほぼ比
例して反応速度が増加している。これは、実施例9にお
いても見られたように、薄膜内部層に固定化されたGO
Dも反応に関与していることを示すものである。そのこ
とは同時に、薄膜中での基質分子や生成物分子の拡散が
律速でないことを示す結果である。他の固定化法でタン
パク質を固定化した場合には、膜中での基質分子等の拡
散が反応律速となってしまうことが多く報告されてい
る。本方法で固定化されたタンパク質薄膜においてこの
ような問題点を克服できたのは、タンパク質を固定化し
ている有機高分子イオンが柔軟でさほど密な構造を取ら
ないことと、分子厚みに近い超薄膜であるため、基質等
の拡散距離が問題にならないことが、その理由であろ
う。
【0022】実施例16 実施例16として、POD薄膜(1層膜)を作成し、基
質溶液(H2O2 0.2wt%とDA67 0.08m
g/mlを含む)中に浸漬した。そのときの反応の進行
を図7(a)に示した。時間とともに反応率が増加して
ゆき、POD固定化薄膜においてもPODの活性は失わ
れておらず、H2O2の還元反応が触媒されていることが
わかる。
質溶液(H2O2 0.2wt%とDA67 0.08m
g/mlを含む)中に浸漬した。そのときの反応の進行
を図7(a)に示した。時間とともに反応率が増加して
ゆき、POD固定化薄膜においてもPODの活性は失わ
れておらず、H2O2の還元反応が触媒されていることが
わかる。
【0023】実施例17 実施例17として、GOD(2層膜)をPOD薄膜(2
層膜)のうえに積層した複合タンパク質薄膜を作成し、
グルコース(0.01mg/ml)とDA67(0.0
08mg/ml)を含む基質溶液に浸漬した。反応進行
を図7(b)に示したが、時間とともに反応率が増加し
ていることがわかる。これは図3に示した複合酵素反応
系のうち、GODとPODがともに薄膜中に固定化され
ている場合にも反応が起こりうることを示すものであ
る。つまり、複数のタンパク質を固定化した薄膜中にお
いて複合酵素反応が進行しうることを実証するものであ
る。
層膜)のうえに積層した複合タンパク質薄膜を作成し、
グルコース(0.01mg/ml)とDA67(0.0
08mg/ml)を含む基質溶液に浸漬した。反応進行
を図7(b)に示したが、時間とともに反応率が増加し
ていることがわかる。これは図3に示した複合酵素反応
系のうち、GODとPODがともに薄膜中に固定化され
ている場合にも反応が起こりうることを示すものであ
る。つまり、複数のタンパク質を固定化した薄膜中にお
いて複合酵素反応が進行しうることを実証するものであ
る。
【0024】実施例18、19 実施例18、19として、実施例5と同様な薄膜を作成
し、これをそれぞれ、空気中とpH7の緩衝液中に2ケ
月保存し、再び実施例5のようにタンパク質の活性を測
定した。その結果、両保存条件においても、タンパク質
の活性はほぼ100%保たれていることが確認された。
この結果は本方法で得られるタンパク質超格子酵素反応
システムの長期安定性を示すものである。 実施例20〜22 実施例20〜22として、GOD薄膜(4層膜)を多孔
性のフィルターに固定化し、そこに10wt%のグルコ
ース1mlを透過させた。得られたろ液にPOD/DA
67を加えたときのUVスペクトルを図8に示した。こ
こには、反応の進行を示すUV吸収が認められた。つま
り、固体担体として多孔性フィルターを用いたものでも
酵素反応システムとして使用できることがわかった。実
施例21として多孔性のフィルターを有機高分子イオン
を用いずにGOD水溶液に直接浸漬したものを、実施例
22として多孔性フィルターそのものを用いて実施例2
0と同様な実験を行った。図8より、実施例21、22
の場合には全く反応が進行していないことがわかった。
これらの実施例の方法ではGODが多孔性フィルターに
固定化されず、反応が進行しなかったのである。
し、これをそれぞれ、空気中とpH7の緩衝液中に2ケ
月保存し、再び実施例5のようにタンパク質の活性を測
定した。その結果、両保存条件においても、タンパク質
の活性はほぼ100%保たれていることが確認された。
この結果は本方法で得られるタンパク質超格子酵素反応
システムの長期安定性を示すものである。 実施例20〜22 実施例20〜22として、GOD薄膜(4層膜)を多孔
性のフィルターに固定化し、そこに10wt%のグルコ
ース1mlを透過させた。得られたろ液にPOD/DA
67を加えたときのUVスペクトルを図8に示した。こ
こには、反応の進行を示すUV吸収が認められた。つま
り、固体担体として多孔性フィルターを用いたものでも
酵素反応システムとして使用できることがわかった。実
施例21として多孔性のフィルターを有機高分子イオン
を用いずにGOD水溶液に直接浸漬したものを、実施例
22として多孔性フィルターそのものを用いて実施例2
0と同様な実験を行った。図8より、実施例21、22
の場合には全く反応が進行していないことがわかった。
これらの実施例の方法ではGODが多孔性フィルターに
固定化されず、反応が進行しなかったのである。
【0025】実施例23〜25 実施例23〜25として、グルコアミラーゼ(GA)と
GODの複合薄膜を多孔性のフィルター上に固定化し、
0.25%のでんぷん溶液を透過させ、そのときに生ず
るグルコースとH2O2の生成量を検討した(図9)。G
AはでんぷんをGODの基質であるグルコースへと分解
することのできる酵素である。実施例23は、フィルタ
ーの上にGOD薄膜をつくり、その上にPEIとPSS
の交互積層膜を10層積層し、最外層にGA薄膜を固定
化した薄膜を用いたものである。実施例24は、実施例
23のうちでGODとGAを入れ替えたもの、すなわ
ち、GAがフィルター上の内層に、GODが最外層に固
定化された薄膜を用いたものである。実施例25ではG
ODとGAを同一層内に同時に固定化した薄膜を用いた
ものである。図9より、実施例23のGAが最外層にあ
るものにおいてのみ、効率良く反応が起こっていること
がわかった。これは、GAの基質であるでんぷんがGA
層に接し、生じたグルコースが内層のGODによって酸
化されたことを示す結果である。それに対し、実施例2
4の薄膜では、でんぷんを基質とするGAが内層に存在
するために、両者の接触がなく全体の複合酵素反応が起
こらなかったものと考えられる。また、実施例25では
GODとGAを同時に固定化したため、一方のタンパク
質のみが優先的に固定化され、2種のタンパク質が必要
な連続反応が進行しなかったものと考えられる。これら
の結果は、タンパク質薄膜を反応経路に応じて順次積層
することが、効率の良い複合酵素反応システムの作成に
不可欠であることを示している。このような積層順序を
制御したタンパク質の固定化は、一般のタンパク質固定
化法では困難な場合が多い。実施例23〜25におい
て、得られたろ液をヨウ素−でんぷん反応によってテス
トしたところ、反応の進行度にかかわらず、ろ液中には
基質であるでんぷんは検出されなかった。これは、高分
子であるでんぷん基質が固体担体としての多孔性フィル
ターを通してろ液中に漏出しなかったことを示す。つま
り、この系では、反応と同時に基質と生成物との分離が
なされたことになる。
GODの複合薄膜を多孔性のフィルター上に固定化し、
0.25%のでんぷん溶液を透過させ、そのときに生ず
るグルコースとH2O2の生成量を検討した(図9)。G
AはでんぷんをGODの基質であるグルコースへと分解
することのできる酵素である。実施例23は、フィルタ
ーの上にGOD薄膜をつくり、その上にPEIとPSS
の交互積層膜を10層積層し、最外層にGA薄膜を固定
化した薄膜を用いたものである。実施例24は、実施例
23のうちでGODとGAを入れ替えたもの、すなわ
ち、GAがフィルター上の内層に、GODが最外層に固
定化された薄膜を用いたものである。実施例25ではG
ODとGAを同一層内に同時に固定化した薄膜を用いた
ものである。図9より、実施例23のGAが最外層にあ
るものにおいてのみ、効率良く反応が起こっていること
がわかった。これは、GAの基質であるでんぷんがGA
層に接し、生じたグルコースが内層のGODによって酸
化されたことを示す結果である。それに対し、実施例2
4の薄膜では、でんぷんを基質とするGAが内層に存在
するために、両者の接触がなく全体の複合酵素反応が起
こらなかったものと考えられる。また、実施例25では
GODとGAを同時に固定化したため、一方のタンパク
質のみが優先的に固定化され、2種のタンパク質が必要
な連続反応が進行しなかったものと考えられる。これら
の結果は、タンパク質薄膜を反応経路に応じて順次積層
することが、効率の良い複合酵素反応システムの作成に
不可欠であることを示している。このような積層順序を
制御したタンパク質の固定化は、一般のタンパク質固定
化法では困難な場合が多い。実施例23〜25におい
て、得られたろ液をヨウ素−でんぷん反応によってテス
トしたところ、反応の進行度にかかわらず、ろ液中には
基質であるでんぷんは検出されなかった。これは、高分
子であるでんぷん基質が固体担体としての多孔性フィル
ターを通してろ液中に漏出しなかったことを示す。つま
り、この系では、反応と同時に基質と生成物との分離が
なされたことになる。
【0026】
【発明の効果】以上、詳しく説明したように、この発明
においては、交互吸着法によって固定化されたタンパク
質薄膜を用いて、タンパク質に特異的な基質分子の化学
変化が触媒される。また、複数のタンパク質を固定化し
た薄膜を用いることによって、薄膜中における複合酵素
反応を行うこともできる。さらに、多孔性のフィルター
を固体担体として用いることにより、反応と同時に基質
と生成物を分離することもできる。本発明の方法では、
固定化されるタンパク質の選択に自由度があり、酵素シ
ステムを模した様々な組み合わせの人工リアクターの開
発やその反応を基盤とする新規のセンサーシステムの開
発などが可能である。
においては、交互吸着法によって固定化されたタンパク
質薄膜を用いて、タンパク質に特異的な基質分子の化学
変化が触媒される。また、複数のタンパク質を固定化し
た薄膜を用いることによって、薄膜中における複合酵素
反応を行うこともできる。さらに、多孔性のフィルター
を固体担体として用いることにより、反応と同時に基質
と生成物を分離することもできる。本発明の方法では、
固定化されるタンパク質の選択に自由度があり、酵素シ
ステムを模した様々な組み合わせの人工リアクターの開
発やその反応を基盤とする新規のセンサーシステムの開
発などが可能である。
【図1】 実施例1のタンパク質吸着過程の時間変化に
基づく水晶発振子振動数変化を示す図である。
基づく水晶発振子振動数変化を示す図である。
【図2】 実施例3、4のタンパク質吸着過程の時間変
化に基づく水晶発振子振動数変化を示す図である。
化に基づく水晶発振子振動数変化を示す図である。
【図3】 実施例5で用いた測定系の模式図である。
【図4】 実施例5で得られたUVスペクトル図であ
る。
る。
【図5】 実施例6〜10で得られた吸光度の変化を表
す図である。
す図である。
【図6】 実施例10〜15における反応率変化を表す
図である。
図である。
【図7】 実施例16、17における反応率変化を表す
図である。
図である。
【図8】 実施例20〜22で得られたUVスペクトル
図である。
図である。
【図9】 実施例23〜25におけるグルコースとH2
O2の生成量を表す図である。
O2の生成量を表す図である。
フロントページの続き (72)発明者 恩田 光彦 福岡県久留米市国分町1560−8 サンラ イズ1 202号 (56)参考文献 特開 平1−163649(JP,A) 特開 昭51−51577(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12M 1/00 - 3/10 C12N 11/00 - 13/00
Claims (5)
- 【請求項1】 固体担体をタンパク質の溶液中、およ
び、該タンパク質とは反対の荷電を有する有機高分子イ
オンの溶液中に交互に浸漬し、前記固体担体上に分子的
精密さで構造制御されたタンパク質超薄膜を形成するこ
とを特徴とするタンパク質超薄膜固定型リアクターの製
造方法。 - 【請求項2】 荷電を有する固体担体を、該固体担体と
は正味の反対荷電を有する有機高分子イオンまたはタン
パク質の溶液に浸漬し、該固体担体上の荷電の中和およ
び過剰荷電の飽和により固体担体の表面荷電の逆転を行
い、次に、この表面荷電とは逆の正味荷電を有するタン
パク質または有機高分子イオンの溶液に浸漬し、表面荷
電の中和および過剰荷電の飽和により表面荷電の再逆転
を行う過程を繰り返して行うことにより、少なくとも2
種以上のタンパク質を積層化した超薄膜を設けることを
特徴とするタンパク質超薄膜固定型リアクターの製造方
法。 - 【請求項3】 請求項1ないし2の方法を用いて、固体
担体上に複数種のタンパク質層からなる超薄膜を作成
し、それらのタンパク質超薄膜を用いて基質分子の化学
変化を行うことを特徴とする基質分子の化学反応方法。 - 【請求項4】 請求項1ないし3の方法によりタンパク
質薄膜を分離機能を有する担体上に固定化し、化学変化
と同時に基質と生成物を分離する基質分子の化学反応方
法。 - 【請求項5】 タンパク質が酵素である請求項1ないし
4の何れかの項記載の基質分子の化学反応方法。
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MX2009003661A (es) * | 2006-10-06 | 2009-04-22 | Baxter Int | Microcapsulas que contienen microparticulas modificadas en la superficie y metodos para formar y utilizar las mismas. |
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