JP3020427B2 - タンパク質超格子の作成方法 - Google Patents

タンパク質超格子の作成方法

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JP3020427B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、タンパク質超格子の
作成方法に関するものである。さらに詳しくは、この発
明は、分子レベルで構造制御され、タンパク質や機能性
分子が任意の順序で積層された超薄膜(タンパク質超格
子)の作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来より、タンパク質を固定
基板上に固定化する方法としては、大きく分けて、吸着
やキャストによって基板上に直接同化する方法、LB法
など液体上に展開された薄膜を移し取る方法、他の成分
との交互吸着によって固定化する方法が知られている。
【0003】このうちの吸着法としては、マイカなどの
固体基板をタンパク質溶液中に浸漬し、その表面への吸
着によってタンパク質を固定化する方法が知られてい
る。しかしながら、この方法の場合には、固定化される
タンパク質の厚さは固体基板との相互作用が及ぶ範囲に
限られる。したがって、この方法ではたんぱくの吸着を
繰り返し行うことができないため、複数のタンパク質を
順序よく積層することはできない。同様に、タンパク質
溶液そのものや二分子膜形成脂質とともに固体基板上に
キャストする方法では、タンパク質の固定化がキャスト
および溶媒の蒸発という一連のプロセスで完結する。し
たがって、この方法でも複数のタンパク質を順序良く固
定化することはできない。
【0004】一方、分子を任意の順序で並べた分子レベ
ルの精密さを持つ薄膜の作成法としては、LB法が知ら
れている。これは、脂質のような両親媒性の物質を有機
溶媒中に溶解させ、水溶液上に展開し、得られた単分子
膜を固体基板上に移し取ることによって、任意の厚さの
薄膜を積層順序をコントロールしながら積層する方法で
ある。このLB法をタンパク質に適用すれば分子レベル
の複数のタンパク質超薄膜を作成できる可能性があると
考えられるが、実際には、タンパク質の中には気−水界
面で表面変性して活性を失ってしまうものも多いので、
LB法によるタンパク質固定化法は一般のタンパク質に
広く応用されるわけではない。また、この方法では、水
相にタンパク質が散逸してしまい、一般的に高価なタン
パク質を用いる方法としては経済性が悪いという欠点も
ある。
【0005】また最近では、脂質などで被覆した酵素な
どを有機溶媒に溶解し、タンパク質を必要量だけ変性を
最小限におさえて水面上に展開する手法が提案されてい
るが、タンパク質の被覆、有機溶媒への溶解、水面上へ
の展開、およびそれに続くLB膜の作成という多段階に
わたる過程を時間と労力をかけて行う必要があり、生産
性の高い方法とはいえない。このように、一般的に言っ
て、LB法は生産性に劣っていたり、使用する設備が高
価でかつ取り扱いが容易でないなどの要因により、タン
パク質固定化法として広く採用されるまでにはいたって
いない。
【0006】なお、タンパク質を他の成分と交互吸着さ
せ、タンパク質を一層づつ固定化してゆけば、タンパク
質を任意の順序で固定化することができる。このための
方法が、最近いくつか報告されている。その中のひとつ
は、ビオチン−アビジンという特殊なタンパク質間の相
互作用に基づいたものであるが、タンパク質を労力をか
けて化学修飾する必要があり、どのようなタンパク質に
対しても簡便に適用できる手法ではない。また、タンパ
ク質をジルコニウムフォスフェートや両頭性の脂質(bol
aamphiphiles) を静電的な相互作用によって交互に吸着
する方法が考案されている。しかしながら、これらの例
では、タンパク質間をつなぎ止めている成分が剛直なた
めか、積層は数層程度に限られ、また、限られた種類の
タンパク質にしか適用されていない。つまり、これらの
方法は、任意の種類のタンパク質を、任意の厚さだけ、
任意の順番で固定化しなければならないというタンパク
質超格子構造作成に必要な条件を満たしていない。
【0007】このように、従来の手法で複数種のタンパ
ク質を任意の順序で積層した分子レベルの超薄膜(タン
パク質超格子)を作成することは困難である。つまり、
多くの固定化法ではタンパク質を段階的に一種類ずつ固
定化することができない。LB法では、作成中のタンパ
ク質の変性、設備の高価さ、作成技術の難しさが問題点
として挙げられ、また、これまでに報告されている交互
吸着法では、特定のタンパク質にしか用いられないとい
う一般性の欠如と限られた層数しか積層できないという
制約が問題となる。
【0008】そこで、この発明は、以上の通りの従来技
術の欠点を解消し、任意のタンパク質の複数種を、任意
の層数だけ、任意の順番で、変性を伴わず、分子レベル
で積層した超薄膜、すなわちタンパク質超格子を簡便に
作成することのできる新しい方法を提供することを目的
としている。また、さらには、この方法を応用して、タ
ンパク質と機能分子を併せ持つような薄膜を作成するこ
ともこの発明は目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、タンパク質
の複数の溶液とこのタンパク質とは反対の荷電を有する
少くとも1種以上の有機高分子イオンの溶液の各々に固
体基板を交互に浸漬し、固体基板上に分子レベルで構造
制御された複数種のタンパク質層を含んだ超格子薄膜を
得ることを特徴とするタンパク質超格子の作成方法(請
求項1)を提供する。
【0010】そしてまた、この発明は、荷電を有する
か、あるいは荷電を固定化した固体基板を、固体基板と
は正味の反対荷電を有する有機高分子イオンまたはタン
パク質の溶液に浸漬し固体基板上の荷電の中和および過
剰荷電の飽和による表面荷電の逆転を行い、さらに、そ
れとは逆の正味荷電を有するタンパク質または有機高分
子イオンの溶液に浸漬し表面荷電の中和および過剰荷電
の飽和による表面荷電の逆転を行う過程を、タンパク質
の複数の溶液と1種以上の有機高分子イオンの溶液の各
々を交互に用いて所要回数繰り返し、複数種のタンパク
質層を含んだ超格子薄膜を得ることを特徴とするタンパ
ク質超格子の作成方法(請求項2)、並びに請求項1ま
たは2の方法において、無機高分子イオン溶液にも固体
基板を所要の過程で浸漬し、複数種のタンパク質層が無
機高分子イオン層並びに有機高分子イオン層とともに積
層された超格子薄膜を得ることを特徴とするタンパク質
超格子の作成方法(請求項3)をも提供する。
【0011】さらに、この発明ではタンパク質以外の機
能性分子も固定化され、タンパク質、有機高分子イオ
ン、機能性分子の様な多岐にわたる超格子構造を作成す
ることも可能としている。
【0012】
【作用】この発明では、分子レベルの膜厚をもち、しか
も活性を保持したタンパク質超薄膜が形成され、複数の
タンパク質分子の積層順序をコントロールすることによ
って、種々のタンパク質が任意に組み合わされたタンパ
ク質超格子構造が作成される。
【0013】このタンパク質超格子薄膜が形成されるの
は、以下のような原理に基づいている。すなわち、まず
荷電を有する固体基板表面をタンパク質の水溶液に浸漬
させると、静電相互作用によってタンパク質が吸着す
る。その際に、タンパク質は基板表面上の荷電を中和す
るのみならず、過剰に吸着して、表面には新たな荷電が
現れる。これをタンパク質とは反対の荷電を持つ有機高
分子イオンの水溶液中に浸漬させると、有機高分子イオ
ンによる荷電の中和および過剰吸着によって、表面には
新たな反対荷電が現れる。この過程を繰り返すことによ
って、タンパク質と有機高分子イオンの交互吸着が実質
上無限に繰り返される。この過程は様々なタンパク質に
対して共通しているため、浸漬するタンパク質溶液の順
序を制御することによって、複数種のタンパク質を任意
の順序で積層することができる。なお、それぞれのステ
ップにおける過剰吸着量は、荷電の飽和によって制限さ
れ、各回一定量のタンパク質および有機高分子イオンが
固定化されることとなる。
【0014】以上の作成原理からわかるように、この発
明の方法ではタンパク質の水溶液をそのまま用いること
ができるため、タンパク質の変性を避けることができ
る。また、タンパク質の吸着が静電的な相互作用に基づ
いており、あらゆるタンパク質がなんらかの表面荷電を
有していることを考えると、この発明の方法は水溶性の
タンパク質に広く応用される手法であるといえる。この
ようなタンパク質の表面荷電は溶液中のpHによって制
御することができ、タンパク質水溶液のpHや相手の有
機高分子イオンを選ぶことによって、様々な荷電状態の
タンパク質が固定化され、場合によっては、一つの超格
子構造のなかに一種のタンパク質を異なる荷電状態で固
定化することもできる。
【0015】また、この発明の方法では、タンパク質の
形状に応じて自由にコンフォメーションを変えることの
できる柔軟な有機高分子イオンをタンパク質の固定化に
用いているため、ジルコニウムフォスフェートや両頭性
の脂質(bolaamphiphiles)などの剛直な成分を用いた場
合に比して、広い範囲のタンパク質に適用され、また、
何層にもわたって積層することが可能である。この特徴
は、様々な種類のタンパク質を任意の順序で積層しなけ
ればならないタンパク質超格子作成において必要不可欠
となる。
【0016】しかも、この発明の方法は基板をタンパク
質水溶液や有機高分子イオン水溶液に浸けるだけとい
う、極めて簡便な手法で短時間に行われ、特別な設備を
ほとんど必要としない。つまり、本方法において複数の
タンパク質を積層する場合には各タンパク質の溶液を作
成するだけでよいということであり、たとえば、LB法
などで異なる分子層を積層する場合に時間のかかる様々
なプロセスを特殊な装置を用いて行うことを考えると、
この発明の方法は生産性の面で大きな利点をもつと言え
る。
【0017】さらに詳しくこの発明の構成そして作用に
ついて説明すると、この発明で使用する有機高分子イオ
ンは、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分
子のことをいう。この場合のポリアニオンとしては、一
般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負荷電を帯
びることのできる官能基を有するものであり、たとえ
ば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫
酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫
酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(P
MA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸などが用いられ
る。また、ポリカチオンとしては、一般に、4級アンモ
ニウム基、アミノ基などの正荷電を帯びることのできる
官能基を有するもの、たとえば、ポリエチレンイミン
(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリ
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、
ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジンなどを用い
ることができる。これらの有機高分子イオンは、いずれ
も水溶性あるいは水と有機溶媒との混合液に可溶なもの
である。さらにまた、導電性高分子、ポリ(アニリン−
N−プロパンスルホン酸)(PAN)などの機能性高分
子イオン、種々のデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核
酸(RNA)、ペクチンなどの荷電を有する多糖類など
の荷電を持つ生体高分子を用いることもできる。タンパ
ク質は水溶性であれば一般的に表面に荷電を有するの
で、種類を問わず用いることができる。たとえば、チト
クローム(Cyt;分子量12400、等電点10.
1)、リゾチーム(Lys;分子量14000、等電点
11)、ヒストンf3(His;分子量15300、等
電点11)、ミオグロビン(Mb;分子量17800、
等電点7.0)、ヘモグロビン(Hb;分子量6400
0、等電点6.8)、グルコースオキシダーゼ(GO
D;分子量186000、等電点4.2)、グルコアミ
ラーゼ(GA;分子量100000、等電点4.2)、
アルコール脱水素酵素(ADH;分子量100000、
等電点9)、ジアホラーゼ(DA;分子量70000
0、等電点4)などが例としてあげられる。固体基板と
しては、銀(表面アニオン性)、ガラスや石英(表面ア
ニオン性)、表面荷電を持つポリマーフィルムなどのよ
うに表面に荷電のあるもの、あるいは、金(表面には、
メルカプトプロピオン酸などの吸着により荷電を導入す
ることができる)や種々の電極などのように荷電を導入
することができるものであればどのようなものでも用い
ることができる。
【0018】タンパク質および有機高分子イオンは基本
的に水溶液とするが、溶解性に応じて有機溶媒を混合さ
せることもできる。それぞれの溶液濃度はタンパク質や
有機高分子イオンの溶解性に依存するが、吸着過程が固
定化されている荷電の中和および再飽和に基づいている
ので、特に厳密な濃度設定は必要としない。標準的な濃
度例としては、タンパク質溶液が1mg/ml、有機高
分子イオンは1−3mg/mlが挙げられるが、この濃
度範囲に限定されるものではない。また、必要に応じて
酸やアルカリの添加あるいは緩衝液の使用によって溶液
のpHを調整し、タンパク質および有機高分子イオンが
充分に荷電を持つようにする。
【0019】この発明の方法をその操作手順として説明
すると、まず、表面に荷電を有する固体基板を複数種類
の有機高分子イオン溶液(ポリカチオンとポリアニオ
ン)に交互に浸し、柔軟な有機高分子イオンの薄膜を固
体基板上に作成する。最終的に目的とするタンパク質と
は反対荷電を有する有機高分子イオンを最外層に固定化
する。その後、タンパク質水溶液への浸漬、水による洗
浄、有機高分子イオン水溶液への浸漬、水による洗浄、
の過程を繰り返すことによって、タンパク質の多層超薄
膜を作成する。この時に、浸漬するタンパク質および有
機高分子イオンの溶液を適当に選んで順次積層すること
によって、所望の構造を持ったタンパク質超格子構造を
得ることができる。また、タンパク質の代わりにモンモ
リロナイト(Mont)などの粘土化合物の層を複合化
して積層することもできる。さらに、有機高分子イオン
やタンパク質の溶液としては同荷電のものを混合した溶
液を用い、それらを複合化させた薄膜を積層することも
できる。
【0020】以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発
明の方法について説明する。
【0021】
【実施例】参考例1−2 この発明の方法では、タンパク質層が繰り返し、一定量
ずつ固定化していることを示すため、銀電極で被覆した
水晶発振子上への固定化を行った。水晶発振子はマイク
ロバランスとして知られ、振動数変化よりその表面上に
固定化された物質量を10-9gの精度で測定することが
できるデバイスである。銀電極(面積約0.2cm2
の表面は部分的な酸化のためアニオン性となっている。
操作法は、タンパク質に対してほぼ共通であるので、L
ys(リゾチーム)とMb(ミオグロビン)を例とし
た。
【0022】まず、銀電極水晶発振子をポリカオチンで
ある1.5mg/mlPEI(ポリエチレンイミン)水
溶液中に浸漬し、カチオン性の有機高分子イオンを吸着
させた。水洗浄後、3mg/mlPSS(ポリスチレン
スルホン酸)水溶液に基板を浸し、基板表面をアニオン
性の柔軟な有機高分子イオンで覆った。次に、この基板
をHClでpH4ないし5に調整した1mg/mlのカ
チオン性Lys、Mbの各々の水溶液と3mg/mlP
SS水溶液に水による洗浄過程をはさんで交互に浸し、
この過程を繰り返すことによりLysとPSSの交互積
層膜を得た。また、同様にしてMbとPSSの交互積層
膜を得た。
【0023】図1は、参考例1としてのLysとPSS
の交互積層膜を、図2は、参考例2としてのMbとPS
Sの交互積層膜を水晶発振子上に作成した場合の積層構
造の成長の様子を示したものである。毎回一定量のタン
パク質が固定されていることがわかる。また、吸着量は
直線的に増加し、吸着過程が何回でも繰り返せることが
わかる。一回の吸着におけるタンパク質層の吸着厚みを
換算したところ、たとえばMbの場合には約4.8nm
であり密にパッキングしたMbの単分子膜の厚みに匹敵
することがわかった。なお、一回の吸着過程に要する時
間は10−20分程度であり、ビーカーなど通常の実験
機器以外には特別な設備は必要とされない。実施例1−2 参考例1−2と同様にして、LysとMbとPSSの3
成分からなる超格子薄膜を作成した。基板は、水晶発振
子(実施例1)および石英基板(実施例2)とした。
【0024】まず、水晶発振子基板上にPEIとPSS
の交互積層膜を作成し、その上にMbとPSSの薄膜を
2層積層した。さらに、この基板を、Mb、PSS、L
ys、PSSの水溶液に順次浸漬することにより、PS
SをはさんでMbとLysが交互に積層された薄膜を4
回積層した。この時の膜成長の様子を示したものが図3
である。Mb、PSS、Lysの積層に基づく振動数変
化が独立に再現性よく現れている。これは、ある成分の
積層が他の成分の積層過程に影響を与えることなく、独
立に繰り返し行われることを示している。この特性によ
って、この発明の方法では複数種のタンパク質が自由な
組み合わせで積層されることになる。
【0025】同様なタンパク質超格子を石英基板上に作
成した。図3に積層時の振動数変化とあわせて409n
mにおけるUV吸収強度を積層数に付してプロットした
ものを示した。Mb特有の409nmにおけるUV吸収
強度増加がMb積層の場合にのみ積層数に応じて再現性
よく観測された。この吸収ピークはMbの活性中心に存
在するボルフィリンのSoret 吸収帯である。この吸収ピ
ークはMbが活性であることを反映したものであるが、
層数に比例して吸収強度が増加している。これは、積層
膜中でMbの活性が保持されていることを証明するもの
である。実施例3−4 実施例3として、異なるpHで異なる荷電状態にHbを
連続して積層した(図4)。初めの5層はpH4.5に
おいてカチオン性のHbをPSSとともに交互積層し、
それ以降の層はpH9.2においてアニオン性のHbを
PEIとともに交互積層した。いずれのpHにおいても
再現性のよい積層が行われ、この発明の方法によって、
荷電状態のことなるタンパク質が同一膜内に固定化され
ることがわかった。
【0026】実施例4として、中性pHにおいてはカチ
オン性のLysとアニオン性のGODの層をあわせ持つ
タンパク質超格子を作成した。まず、基板(水晶発振
子)上にPEI/PSSの交互積層膜を作成し、その上
にPSS/Lysの交互積層膜を作った。さらにPSS
/PEIの交互積層膜を一層作成して有機高分子イオン
の荷電をアニオン性からカチオン性に変換した後、GO
D/PEIの交互積層を行った。その結果、300Hz
の再現性の良いMbの積層と340Hzの再現性の良い
GODの積層が観測された。これらの膜成長過程は、単
独のタンパク質を用いて積層した場合と同様であり、こ
のタンパク質超格子構造においても各タンパク質層の成
長は独立に起こっていることを示している。
【0027】これらの実施例は、溶液のpHや有機高分
子イオンを適当に選ぶことによって任意のタンパク質が
積層化されることを示すものである。実施例5−6 実施例5として、タンパク質、有機高分子イオン、無機
高分子イオンモンモリロナイト(Mont)層の3成分
を交互積層した(図5)。Mont/PEI/GOD/
PEIの単位ユニットが、繰り返し安定に積層されてい
る。このことは、この発明の方法ではタンパク質を固定
化する際、有機高分子イオンの他に無機高分子イオンの
成分を一部使用できることを示す。
【0028】実施例6として、生体高分子であるDNA
を含んだタンパク質超格子構造を水晶発振子上に作成し
た。まず、His/PSSを数層作成し、最外層に残っ
たHis層にDNA層を吸着させた。この例では、Hi
s層に対して140Hz、DNA層に対して260Hz
の振動数変化が観測された。これらの例は、この発明の
方法を用いれば、タンパク質や有機高分子イオンの他
に、無機高分子やタンパク質以外の生体高分子などの機
能性分子を超格子構造の中に含めることができることを
示している。実施例7 実施例7として、複数タンパク質による連続反応を検討
した。石英基板上にカチオン性有機高分子ポリジアリル
ジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)を吸着さ
せ、その上に、PDDAをはさんでGODとGAの層を
持つ超格子構造を作成した。この膜を、デンプン、phen
azine methylsulfate 、iodonitrotetrazolium violet
を含む溶液中に浸漬したところ、膜がiodonitroformaza
neに基づく紫色に着色されるのが観測された。この系に
おいては、デンプンがGAによってグルコースに分解さ
れ生成したグルコースがGODによって酸化される過程
に伴って着色反応がおこるので、GAやGOD単独では
着色反応を起こすことができない。この結果は、タンパ
ク質超格子構造中に存在する複数種のタンパク質が同時
に機能して、協同的に作用することをしてしている。図
6は、薄膜のUVスペクトルを示したものである。実施例8 実施例8として、MbとPSSの交互積層超薄膜を金電
極上に作成し、薄膜中におけるMbの活性を電気化学的
に検証した。金表面には荷電が存在しないため、金基板
を1mMのメルカプトプロピオン酸/エタノール溶液に
3時間浸漬し金表面にアニオン性基を導入した後、実施
例2と同様な条件でMbとPSSの交互積層膜を作成し
た。図7には、この薄膜の電気化学応答を示した。鉄イ
オンの酸化還元ピークが観測され、薄膜中のMbの活性
が示された。本方法で得られたタンパク質超薄膜を、デ
バイス化する場合には、各種の電極を固定化基板として
用いることが必要となる。この実施例のように電極上に
おいてタンパク質活性の保持が確認されたことは、この
発明の方法で得られるタンパク超薄膜が分子デバイスな
どに応用されうることを示す。
【0029】
【発明の効果】以上に詳しく説明したように、この発明
においては、有機高分子イオンを用いる交互吸着によっ
て、様々なタンパク質超格子が、任意の層数、任意の組
み合わせ、任意の順序で変性を伴わずに、作成される。
この方法で作成されたタンパク質超格子は、複数タンパ
ク質のリレー反応による生体類似の高機能を有するセン
サーなどの開発や、超格子構造を適切に設計することに
より電子や物質、エネルギーのベクトル的な伝達などを
利用した分子素子の開発に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1で作成された薄膜の水晶発振子振動数
変化を示した図である。
【図2】参考例2で作成された薄膜の水晶発振子振動数
変化を示した図である。
【図3】実施例1で作成された薄膜の水晶発振子振動数
変化と実施例2で作成された薄膜のUVスペクトルを示
した図である。
【図4】実施例3で作成された薄膜の水晶発振子振動数
変化を示した図である。
【図5】実施例5で作成された薄膜の水晶発振子振動数
変化を示した図である。
【図6】実施例7で得られたUVスペクトルを示した図
である。
【図7】実施例8で作成された薄膜の電気化学応答を示
した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−245815(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/00 - 5/24 B01J 19/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンパク質の複数の溶液とこのタンパク
    質とは反対の荷電を有する少くとも1種以上の有機高分
    子イオンの溶液の各々に固体基板を交互に浸漬し、固体
    基板上に分子レベルで構造制御された複数種のタンパク
    質層を含んだ超格子薄膜を得ることを特徴とするタンパ
    ク質超格子の作成法。
  2. 【請求項2】 荷電を有するか、あるいは荷電を固定化
    した固体基板を、固体基板とは正味の反対荷電を有する
    有機高分子イオンまたはタンパク質の溶液に浸漬し固体
    基板上の荷電の中和および過剰荷電の飽和による表面荷
    電の逆転を行い、さらに、それとは逆の正味荷電を有す
    るタンパク質または有機高分子イオンの溶液に浸漬し表
    面荷電の中和および過剰荷電の飽和による表面荷電の逆
    転を行う過程を、タンパク質の複数の溶液と1種以上の
    有機高分子イオンの溶液の各々を交互に用いて所要回数
    繰り返し、複数種のタンパク質層を含んだ超格子薄膜を
    得ることを特徴とするタンパク質超格子の作成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の方法において、無機
    高分子イオン溶液にも固体基板を所要の過程で浸漬し、
    複数種のタンパク質層が無機高分子イオン層並びに有機
    高分子イオン層とともに積層された超格子薄膜を得るこ
    とを特徴とするタンパク質超格子の作成方法。
JP7052172A 1995-03-13 1995-03-13 タンパク質超格子の作成方法 Expired - Fee Related JP3020427B2 (ja)

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