JP2905157B2 - 高周波溶接鋼管の検査方法及びその製造装置 - Google Patents

高周波溶接鋼管の検査方法及びその製造装置

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  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Ultrasonic Waves (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Magnetic Means (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波溶接鋼管の検
査方法及びその製造装置に関し、特にステンレス鋼高周
波溶接管の分野における溶接欠陥の検出及び品質保証を
同時に行いつつステンレス鋼高周波溶接管(以下ステン
レス電縫管と称す)を製造する場合に用いて有用なもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、ステンレス電縫管を含む高周波溶
接鋼管(以下電縫管と称す)の検査方法としては、抜き
取りによる確性検査及びインライン若しくはオフライン
での渦流探傷法,超音波探傷法等による検査が知られて
いる。これらのうち確性検査とは、抜き取った電縫管に
所定の偏平率の偏平歪みを与え、この状態で溶接部を目
視することによりその良否を検査する方法である。一
方、渦流探傷法は溶接部に流す渦電流の変化を検出する
ことにより、また超音波探傷法は溶接部に入射させる超
音波の反射状態を検出することによりそれぞれ溶接部の
良否を検査する方法である。これら渦流探傷法,超音波
探傷法では電縫管に偏平歪みは与えていない。
【0003】また、特開昭63−249050号公報に
おいては、溶接部に対して垂直方向に25%以下の偏平
歪みを付加した後真円に戻し、溶接部の非破壊検査を行
なう検査方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述の如き渦流探傷法
及び超音波探傷法では、高周波溶接鋼管特有の冷接欠陥
(コールドウエルド)、ペネトレイト欠陥は検出が難し
く、通常は抜き取りによる確性検査によって確認され
る。
【0005】ところが、確性検査は抜き取りで行うので
電縫管の全長を検査することはできず、検査方法として
は信頼性に欠ける一面がある。すなわち、100%品質
保証された電縫管を製造するには、その全長を対象とし
た、より確実な検査方法を確立する必要がある。
【0006】また、溶接部に対して垂直方向に管径の2
5%以下の偏平歪みを付加する特開昭63−24905
0号公報に開示する検査方法では、与える偏平歪みの量
がステンレス電縫管に対しては不十分であるばかりでな
く、特にフェライト系ステンレス鋼を用いたステンレス
電縫管では溶接部の脆性遷移温度を考慮する必要があ
り、偏平歪みを与える時の温度を制御する必要がある。
【0007】本発明は、上記従来技術に鑑み、電縫管の
溶接欠陥をインラインで検出し、製品の溶接部の品質を
100%保証することができる高周波溶接鋼管の検査方
法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は次の各種の実験に基づく知見を基礎するものであ
る。
【0009】ペネトレータ・コールドウエルド等、溶接
欠陥を内在する溶接部は引張りの歪を与えることにより
溶接欠陥から開口して破壊に至る。造管ラインにおいて
電縫管の溶接部に対し引張歪を与えるためには、溶接部
に対し90度方向から圧縮偏平加工を施せば溶接部に十
分な引張歪を付与することができる。かくして、ステン
レス電縫管の溶接欠陥率と偏平率との関係について調査
を行なった結果、溶接欠陥率と偏平率との関係を明らか
にすることができた。
【0010】ここで溶接欠陥率は、図2に示す網点領域
であるコールドウエルド域の面積をs、突き合わせ部の
面積(肉厚t×長さL)をSとするとき、次式(1)で
表される。 溶接欠陥率=(s/S)×100 (%)・・・・・・・・(1)
【0011】また偏平率は、図3(a)に示すように偏
平歪みを与える前のステンレス電縫管の外径D1 と、図
3(b)に示すように偏平歪みを与えた後のステンレス
電縫管の短径側の外径D2 とを用いて次式(2)で表さ
れる。 偏平率=(D1 −D2 )/D1 ×100 (%)・・・・・(2)
【0012】調査は次のような態様で行った。先ず、試
料となる多数のステンレス電縫管のそれぞれに、溶接部
から左右に90度の位置でこのステンレス電縫管を挟ん
で径方向中心に向かう力に基づく偏平歪みを徐徐に付与
する。これを溶接部の割れが目視により確認できる時点
まで継続する。このようにして溶接部に割れを生起した
時点の式(2)で定義される偏平率を記録しておく。そ
の後試料を完全に潰し、溶接部を開いて顕微鏡で観察す
ることにより式(1)で定義される溶接欠陥率を求め
る。
【0013】上述の如き調査により求めた溶接欠陥率と
偏平率との関係を図4に示す。同図に示す結果から、溶
接欠陥率が2〜3%でも偏平率が30%までは溶接部の
割れを目視できない試料があることが分かる(図4の試
料参照)。すなわち偏平率が25%だと溶接欠陥があ
っても溶接部が割れない場合がある。この逆に、偏平率
が30%以上の偏平歪みを与えれば、溶接欠陥を内在し
た溶接部は全て割れが生じることを確認した。一方、J
IS規格では溶接欠陥率の如何にかかわらず偏平率が5
7%までは割れを生起しないことを要求している。した
がって、偏平率が30%乃至60%の偏平歪みを付与し
て割れが検出されない場合、実用上溶接欠陥のない良品
であると判断することができる。
【0014】かかる知見に基づく本発明の前提となる
成は次の点を特徴とする。
【0015】1) 高周波溶接鋼管の製造ライン内にお
いて、高周波溶接鋼管の溶接部から左右に90度の位置
でこの高周波溶接鋼管を挟んで径方向中心に向かう力を
付与することによりこの高周波溶接鋼管に偏平率30%
乃至60%の偏平歪みを与え、その後矯正ロールにより
真円に戻し、渦流探傷若しくは超音波探傷により溶接部
の割れを検出すること。
【0016】2) アンコイラーから巻き戻した鋼板を
管状に成形するとともに突合せ部を高周波溶接し、その
後冷却することにより高周波溶接鋼管を得る高周波溶接
鋼管の製造装置において、冷却した高周波溶接鋼管にそ
の溶接部から左右に90度の位置でこの高周波溶接鋼管
を挟んで径方向中心に向かう力を付与することによりこ
の高周波溶接鋼管に偏平率30%乃至60%の偏平歪み
を与える歪付与手段と、偏平歪みを付与した高周波溶接
鋼管を元の真円に戻す矯正手段と、真円に戻した高周波
溶接鋼管の溶接部の割れを検出する検査手段とを有する
こと。
【0017】フェライト系ステンレス鋼は溶接部の脆性
遷移温度を考慮する必要があり、偏平歪みを与える時の
温度を制御する必要がある。この点を明らかにするため
に健全な溶接部、すなわち上述の如き偏平試験により割
れを生起しなかった溶接部にメカニカルにノッチを形成
し、かかる溶接部を有する試料を恒温室で種々の温度に
保持し、この状態で各試料に対するシャルビー衝撃試験
を行った。この結果を図6に示す。同図に示すように、
温度が110℃以上では常に大きな衝撃を与えなければ
割れが進展しないことが分かった。すなわち温度が11
0℃以上では溶接欠陥を含んでいても延性を示す(11
0℃近傍に脆性遷移温度がある)ので、インラインで偏
平歪みを付与する時には溶接部の温度を110℃以下に
制御する必要があることが明らかとなった。
【0018】かかる知見に基づく本発明の構成は次の点
を特徴とする。
【0019】1) 高周波溶接鋼管の製造ラインにおい
て、 高周波溶接鋼管の溶接部から左右に90度の位置で
この高周波溶接鋼管を挟んで径方向中心に向かう力を付
与することによりこの高周波溶接鋼管に偏平率30%乃
至60%の偏平歪みを与え、その後矯正ロールにより真
円に戻し、渦流探傷若しくは超音波探傷により溶接部の
割れを検出する場合、前記高周波溶接鋼管がフェライト
系ステンレス鋼である場合において、この高周波溶接鋼
管が110℃以下になるように温度制御をした後、高周
波溶接鋼管に偏平歪みを付与するようにしたこと。
【0020】2) アンコイラーから巻き戻した鋼板を
管状に成形するとともに突合せ部を高周波溶接し、その
後冷却することにより高周波溶接鋼管を得る高周波溶接
鋼管の製造装置において、 冷却した高周波溶接鋼管にそ
の溶接部から左右に90度の位置でこの高周波溶接鋼管
を挟んで径方向中心に向かう力を付与することによりこ
の高周波溶接鋼管に偏平率30%乃至60%の偏平歪み
を与える歪付与手段と、偏平歪みを付与した高周波溶接
鋼管を元の真円に戻す矯正手段と、真円に戻した高周波
溶接鋼管の溶接部の割れを検出する検査手段とを有する
とともに、前記歪付与手段に供給する高周波溶接鋼管の
温度制御を行いその温度が110℃以下になるように冷
却する冷却手段を歪付与手段の前段に配設したこと。
【0021】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に
基づき詳細に説明する。
【0022】図1は本発明の実施の形態に係る高周波溶
接鋼管の製造装置を示す概略構成図である。本形態に係
る装置はステンレス電縫管の場合について説明するが、
これに限定するものではない。一般に電縫管の製造装置
として適用し得る。図1に示すように、本製造装置は、
アンコイラー1、成形ロール2、高周波溶接機3、クー
リング装置4、偏平ロール5、矯正ロール6、超音波探
傷装置7、走行切断機8及びランナアウトテーブル9を
有し、アンコイラー1から巻き戻したステンレス鋼板を
成形ロール2で成形して管状部材とし、その後高周波溶
接機3で突き合わせ部を高周波溶接してステンレス電縫
管を形成する。クーリング装置4は高周波溶接直後のス
テンレス電縫管を冷却するものであり、本形態ではこの
クーリング装置4の出口におけるステンレス電縫管の温
度が110℃以下になるように冷却する。このときの温
度は110℃以下であれば何度でもよいが、冷却効率及
び脆性遷移温度を併せて考慮すれば110℃以下でこの
近傍の温度が好適である。
【0023】歪付与手段である偏平ロール5は、特にこ
の部分を抽出・拡大して図2に示すように、垂直軸5
a、5b回りに回転可能に形成した相対向するオーバル
ロール5c、5d間に冷却したステンレス電縫管を通
し、その溶接部から左右に90度の位置でこのステンレ
ス電縫管を挟んで径方向中心に向かう力を付与すること
によりこのステンレス電縫管に偏平率30%の偏平歪み
を与えるものである。本形態では二段で所定の歪を付与
しているが、この段数に特別な制限はない。
【0024】矯正ロール6は偏平歪みを付与したステン
レス電縫管を元の形状に戻すとともに真円に成形するも
のである。超音波探傷装置7は真円に戻したステンレス
電縫管の溶接部の割れを検出する検査手段である。これ
は渦電流探傷装置であっても勿論良い。超音波探傷装置
7で所定の検査を終えたステンレス電縫管は走行切断機
8で所定寸法に切断してランナアウトテーブル9に搬入
する。ランナアウトテーブル9では超音波探傷装置7に
よる検査の結果を受けてステンレス電縫管の良品と不良
品の仕分けも行う。
【0025】図3は本形態の効果を確認するための試験
の結果を示す特性図である。図3中、黒丸のプロット点
は本実施の形態にかかる方法、すなわち所定のインライ
ン偏平歪みを付与した場合に超音波探傷装置7の探傷値
と溶接欠陥率との関係を調べたものである。同図中、白
丸のプロット点は他の条件は同じで、インライン偏平歪
みを付与しなかった場合に超音波探傷装置7の探傷値と
溶接欠陥率との関係を調べたものである。この試験はそ
れぞれの場合に探傷値を記録しておき、その後試料であ
る各ステンレス電縫管を完全に潰し、溶接部を開いて顕
微鏡で観察することにより上記式(1)で定義される溶
接欠陥率を求め、探傷値と対応させてプロットしたもの
である。この場合、探傷値が80%とは出射した超音波
の80%が透過して受信部で受信されたことを表してお
り、良品であると判定し得る。一方、探傷値が40%以
下の場合は不良品であると判定する。この基準に依る場
合、インライン偏平歪みを付与しなかった場合には溶接
欠陥率が15%程度でも探傷値は80%(良品)となる
場合があり(試料参照)、溶接部の100%の品質保
証はできないのに対し、本形態の如く所定のインライン
偏平歪みを付与した場合には溶接欠陥率が数%でも探傷
値は20%程度(不良品)となり(試料参照)、溶接
部の100%の品質保証が可能となることが分かる。
【0026】なお、インライン偏平歪みを付与しなかっ
た場合でも試料、の如く探傷値が小さい、すなわち
不良品であると判定し得る領域にプロットされる場合も
あるが、これは矯正ロール6による矯正時に付与される
矯正歪みにより溶接部に割れを生起したものであると考
えられる。このように不良品であると判定される場合は
問題はないが、試料の如く溶接欠陥が内在するにもか
かわらず、超音波探傷では不良品であることを検出し得
ない場合が問題である。品質保証の精度が劣るからであ
る。
【0027】
【発明の効果】以上実施の形態とともに詳細に説明した
通り、本発明によれば電縫管の製造中にインラインでそ
の溶接部の良否を完全に検出することができ、電縫管の
完全な品質保証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る高周波溶接鋼管の製
造装置を示す概略構成図
【図2】図1の偏平ロール5の部分を抽出・拡大して示
す構成図。
【図3】本発明の実施の形態の効果を確認するための試
験の結果を示す特性図。
【図4】溶接欠陥率の定義を説明するための説明図。
【図5】偏平率の定義を説明するための説明図。
【図6】溶接欠陥率と偏平率との関係を示す特性図。
【図7】フェライト系ステンレス鋼の溶接部の脆性遷移
温度を示す特性図。
【符号の説明】
1 アンコイラー 2 成形ロール 3 高周波溶接機 4 クーリング装置 5 偏平ロール 6 矯正ロール 7 超音波探傷装置
フロントページの続き (72)発明者 梅花 賢一郎 神奈川県相模原市大山町1番30号 日本 金属工業株式会社 相模原製造所内 (72)発明者 一戸 崇雄 神奈川県相模原市大山町1番30号 日本 金属工業株式会社 相模原製造所内 (72)発明者 西野 正保 大阪府松原市丹南1丁目410番地 日金 工鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−249050(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 29/00 - 29/28 G01N 27/72 - 27/90 B21C 37/08 B23K 20/00 B23K 31/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高周波溶接鋼管の製造ラインにおいて、 高周波溶接鋼管の溶接部から左右に90度の位置でこの
    高周波溶接鋼管を挟んで径方向中心に向かう力を付与す
    ることによりこの高周波溶接鋼管に偏平率30%乃至6
    0%の偏平歪みを与え、その後矯正ロールにより真円に
    戻し、渦流探傷若しくは超音波探傷により溶接部の割れ
    を検出する場合、 前記高周波溶接鋼管がフェライト系ステンレス鋼である
    場合において、この高周波溶接鋼管が110℃以下にな
    るように温度制御をした後、高周波溶接鋼管に偏平歪み
    を付与するようにしたことを 特徴とする高周波溶接鋼管
    の検査方法。
  2. 【請求項2】 アンコイラーから巻き戻した鋼板を管状
    に成形するとともに突合せ部を高周波溶接し、その後冷
    却することにより高周波溶接鋼管を得る高周波溶接鋼管
    の製造装置において、 冷却した高周波溶接鋼管にその溶接部から左右に90度
    の位置でこの高周波溶接鋼管を挟んで径方向中心に向か
    う力を付与することによりこの高周波溶接鋼管に偏平率
    30%乃至60%の偏平歪みを与える歪付与手段と、偏
    平歪みを付与した高周波溶接鋼管を元の真円に戻す矯正
    手段と、真円に戻した高周波溶接鋼管の溶接部の割れを
    検出する検査手段とを有するとともに、 前記歪付与手段に供給する高周波溶接鋼管の温度制御を
    行いその温度が110℃以下になるように冷却する冷却
    手段を歪付与手段の前段に配設したことを 特徴とする高
    周波溶接鋼管の製造装置。
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