JP2902751B2 - アルカリ蓄電池用カドミウム負極の製造法 - Google Patents

アルカリ蓄電池用カドミウム負極の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (イ)産業上の利用分野 本発明は、アルカリ蓄電池用のペースト式カドミウム
負極の製造法に関するものである。
(ロ)従来の技術 一般に、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ
蓄電池に用いられるカドミウム負極は、多孔性ニッケル
焼結基板に活物質を含浸する焼結式或いは、工程が簡単
で、製造コストの安いペースト式のものが工業的に広く
用いられている。ここで、ペースト式カドミウム負極
は、酸化カドミウムや水酸化カドミウムなどの活物質粉
末に、極板強度をもたせるための補強繊維や、これらを
結着させるためのポリビニルアルコールの如き結着剤な
どを、水などの適当な溶媒と共に混練して活物質ペース
トを作り、この活物質ペーストを導電性芯体の表面に塗
着し乾燥した後、ローラプレスによって活物質粒子間隔
を狭めることで、高密度化を行いアルカリ水溶液中で化
成もしくは水和した後、水洗、乾燥して余分な糊料等を
排除して極板を得ていた。
しかしながら、通常ペースト式カドミウム負極に使用
される酸化カドミウムは粒径が1μm以下の微粒子であ
るために、ローラプレスを行う場合、極板全体が均一に
加圧されにくく、極板の表面のみが緻密になり易い。こ
の表面の緻密な活物質層は、電解液の拡散を阻害し、極
板の充放電性能の低下、特に活物質の利用率低下の原因
となる。
上記問題点を解決するため、特開平1-304662号公報で
は、粒径が異なる2種類以上の活物質粉末を用いること
を提案し、特開平2-10658号公報では、粒度分布が比較
的に広い範囲の酸化カドミウム粉末を用いる方法を提案
している。
しかしながら、上記方法では、粒径の大きな粉末のた
め、比表面積が低下し利用率が低下する問題が生じる。
又、特開平2-139856号公報では、ペースト式負極板に
水和処理を行う方法を提案している。
しかしながら、上記方法では、電極特性は向上する
が、水和処理後、極板の厚みが大きくなり、かつ堅固と
なるために、活物質の高密度化を達成することが困難で
ある。
(ハ)発明が解決しようとする課題 本発明は、上述の如き問題を解決し、充放電性能の優
れた高密度ペースト式カドミウム負極の製造法を提供す
るものである。
(ニ)課題を解決するための手段 本発明のアルカリ蓄電池用カドミウム負極の製造法
は、酸化カドミウムを主とするペースト状活物質を導電
性芯体に塗着、乾燥して極板を形成し、この極板の厚み
を10〜35%圧縮する第1工程、上記圧縮極板を50〜100
℃の温度のアルカリ水溶液に浸漬し、水和させ、水洗、
乾燥する第2工程と、上記極板の厚さを圧縮する第3工
程とを含むことを特徴とするものである。
(ホ)作用 通常、ペースト式カドミウム負極は、導電性芯体に塗
着し、乾燥した後、ローラプレスにて、所定の厚さまで
圧縮することにより、活物質密度を高め、化成もしくは
水和を行って、余分な糊料等を排除して得られる。高充
填密度の極板を得るためには、化成もしくは水和前の圧
縮を増加させる必要があるが、主たる活物質である酸化
カドミウムの粒径は1μm前後の微粉末であるため、ロ
ーラプレスの加圧力は主に極板表面に作用し、表面近傍
に緻密な活物質層を形成する一方で、内部では、活物質
密度がほとんど変化せず、活物質密度の不均一をもたら
す。この様な極板では、特に表面付近の緻密な活物質に
より、電解液の拡散が阻害されるため充放電性能が低下
し、特に活物質の利用率が著しく低下する。
又、化成もしくは水和処理が行われるが、このとき極
板の厚みが約10%程度増加する。かつ極板自体が非常に
堅固となるため、ローラープレスはほとんど不可能であ
る。ローラープレスの加圧力を上げれば、極板変形、活
物質脱落等の不良が増加するだけであり、最終的な極板
の正味の圧縮量は約25%が限界であった。
本発明では、化成もしくは水和前のローラプレスで
は、極板の厚さを10〜35%圧縮する。これ以上の圧縮
は、極板性能上悪影響が多く、これ以下では高密度充填
に対して不利となる。
次に、50〜100℃の高温アルカリ水溶液中で水和を行
う。100℃以上では、アルカリ水溶液の沸騰及び負極内
部の合成繊維の分解等による極板破壊の危険が増すため
に好ましくない。このとき、酸化カドミウムより転化し
て生成する水酸化カドミウム粒子は、5〜20μmとな
り、かつ粒子相互のすべりも良くなるため、低温で水和
を行ったものより極板は非常に柔軟性に富んだものとな
る。ゆえに、その後のローラプレス工程において、容易
に圧縮を行うことができ、最大20%まで圧縮可能であ
る。
さらに、粒径が5〜20μmと大きくなるため、ローラ
ーによる加圧力は極板内部まで及ぶので、活物質充填密
度を均一に高めることが可能となる。
本発明の製造法によれば、容易に高密度化が可能とな
り、かつ充放電性能の優れたペースト式カドミウム負極
を得ることができる。
(ヘ)実施例 [実施例1] 主活物質としての酸化カドミウム粉末800gと予備充電
活物質としての金属カドミウム粉末200gと、メチルセル
ロース溶液とナイロン繊維を混練しペースト状として、
厚さ0.08mmの導電性芯体に厚さ0.3mmに塗着、乾燥し、
所定の寸法に切断してペースト式カドミウム極板aを得
る。
次いで、この極板aをローラプレスにて、極板の厚さ
を10〜35%の範囲で圧縮(第1工程)した後、比重1.2
8、50℃の温度の水酸化ナトリウム水溶液中に0.5時間浸
漬し、水洗、乾燥(第2工程)して、ペースト式カドミ
ウム負極板Aを得た。
第1図は、この負極板Aの理論容量の0.1Cの電流で16
時間充電し、0.2Cの電流で放電した時の活物質利用率を
示す。
第1図より、本発明法による実線部では、活物質利用
率が高いが、破線部、特に極板圧縮量が35%以上では、
活物質利用率が大きく低下していることが明らかであ
る。
[実施例2] 実施例1におけるペースト式カドミウム極板aを本発
明法による第1工程で、極板圧縮量を30%としたものを
使用し、比重1.28の水酸化ナトリウム水溶液中におい
て、温度を50℃、70℃、100℃及び室温でそれぞれ30
分、20分、15分及び1.5時間で水和し、水洗、乾燥(第
2工程)して得た負極板を各々B、C、D及びEとす
る。又、前記ペースト式カドミウム極板aを比重1.23の
水酸化カリウム水溶液中で化成し、水洗、乾燥して得た
負極板をFとする。
ついで、これらペースト式カドミウム負極板B乃至F
をローラープレスで所定最終厚みに圧縮(第3工程)
し、極板の変形及び活物質の脱落のない範囲における最
大の圧縮量とそのときの活物質の利用率を下表に示す。
上表より、50〜100℃の温度で水和を行ったものは、
室温で水和もしくは化成を行ったものより、ローラプレ
スによる圧縮が容易である。化成を行うとカドミウムの
導電マトリックスができ、極板がかたくなり圧縮するこ
とは難しくなる。50〜100℃の温度で水和を行うと、室
温で水和あるいは化成を行うのに比してさらに10〜15%
の圧縮が可能であり高密度化できる。さらに、利用率の
低下も無く充放電性能は良好であることがわかる。
(ト)発明の効果 本発明によれば、上述のように極板の充放電性能、特
に活物質の利用率を低下させることなく容易に活物質を
高密度充填することが可能であり、その工業的価値は極
めて大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明法によるペースト式カドミウム負極板
の圧縮量の変化に対する活物質利用率の変化を示す図で
ある。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化カドミウムを主とするペースト状活物
    質を導電性芯体に塗着、乾燥して極板を形成し、この極
    板の厚みを10〜35%圧縮する第1工程と、 上記圧縮極板を50〜100℃の温度のアルカリ水溶液に浸
    漬して、水和させ、水洗、乾燥する第2工程と、 上記極板の厚さを圧縮する第3工程とを含むことを特徴
    とするアルカリ蓄電池用カドミウム負極の製造法。
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