JP2899463B2 - 腹起こし材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、地盤を根切りして矢板
で山留めする際に、土の崩壊を防止するために前記矢板
を支持する横架材である腹起こし材に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、山留めにおける腹起こし材は図６
に示すように、Ｈ型鋼２０を用いていた。そして根切り
をした地下部に構造物のコンクリート躯体を構築後に、
前記腹起こし材２０や切梁２１を盛り替えていた。ま
た、山留めの矢板２２と地下構造物の外壁との間（腹起
こし材分の空間）をコンクリート等を流し込んで埋戻し
を行っていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
山留め工法では、腹起こし材や切梁の盛り替えを行うの
で施工が複雑で手間が掛かり、また、腹起こし材を盛り
替えた後に矢板と地下構造物の外壁との間の埋め戻しに
手間と費用が掛かると言った問題がある。更に、腹起こ
し材を設けるための空間が必要なので、その分だけ構造
物用の敷地が狭められ特に都市においては敷地が限られ
ており有効に活用できないと言った欠点が存在した。

【０００４】本発明は、上記の課題に鑑みてなされたも
ので、腹起こし材や切梁の盛り替えの手間を省き工期の
短縮とコストの低減を図る腹起こし材を提供することを
目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の上記課題を解決
し上記目的を達成するための要旨は、山留めの支保工と
しての横架材である腹起こし材において、腹起こし材の
本体をプレキャストコンクリートで形成するとともに、
当該本体内に構築すべき地下構造物用の補強鉄筋を埋設
し、前記本体の上下面から継手用鉄筋を所定長さで突出
させ、前記本体の上下面に貫通する空気抜き用の貫通孔
を穿設し、当該本体の下面をコンクリート打設時のコン
クリート充填能率向上のために傾斜させ、更に本体の上
下面に止水板を突設させたことに存する。

【０００６】更に、腹起こし材の本体の側壁に仮設足場
固定用のインサート金物を埋設したことである。

【０００７】

【作用】本発明の腹起こし材は、プレキャストコンクリ
ート製としたので、地下構造物の外壁の一部として該地
下構造と一体化させることができる。これにより、腹起
こし材の盛り替えが不要となる。

【０００８】また、本発明の腹起こし材を地下構造物の
外壁の一部としてコンクリートを打設する際に、腹起こ
し材の本体に空気抜き用の貫通孔および当該本体の下面
を傾斜させたことにより、前記本体の下面と打設するコ
ンクリート上面との間の空気が前記貫通孔から上方へと
抜かれて残留せずコンクリートの充填具合いが良好とな
る。また、止水板を前記本体の上下面に突出させて設け
ることで地下水の地下構造物内に浸入するのが防止され
る。更に、仮設足場を取り付けるためのインサート金物
を本体に埋設させておけば、容易に仮設足場を取り付け
ることが可能となる。

【０００９】

【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明す
る。図１は、本発明の腹起こし材の使用状態を示す拡大
した縦断面図である。図２と図３は同じく正面図と平面
図である。図において符号１は腹起こし材、２は本体、
３は補強鉄筋、４は継手用鉄筋、５はインサート金物、
６は矢板、７は地盤、８は仮設足場、９はボルト、１０
はナット、１１は切梁、１２は貫通孔を各々示してい
る。

【００１０】図１に最良の一実施例を示すように、本発
明に係る腹起こし材１は、腹起こし材の本体２がプレキ
ャストコンクリートで形成される。この際に、構築すべ
き地下構造物用の外壁として必要となる補強鉄筋３を埋
設しておく。

【００１１】そして、前記本体２の上下面２ａ，２ｂか
ら継手用鉄筋４を所定長さで突出させて設け、該本体の
上下面２ａ，２ｂに貫通する空気抜き用の貫通孔１２を
穿設するとともに、当該本体２の下面２ｂをコンクリー
ト打設時のコンクリート充填能率向上のために傾斜（矢
板６側から内側に向けて立ち上がる）させてある。

【００１２】更に、腹起こし材１の本体２の側壁２ｃ
に、仮設足場８固定用のインサート金物５を当該本体２
内に埋設する。なお、前記本体２の上下面２ａ，２ｂか
ら突設させてある止水板１３，１３は地盤７からの地下
水が地下構造物内に浸入するのを防止するためにある。

【００１３】このようにして構成される腹起こし材１を
使用すると、図２乃至図３に示すように、地盤７を根切
りして切梁１１と腹起こし材１とで矢板６を支持する。
そして、図１に示すように、本体２の側壁２ｃ側に埋設
してあるインサート金物５にボルト９，ナット１０で仮
設足場８を固定する。こうして腹起こし材１から突出さ
せてある継手用鉄筋４に地下構造物用の鉄筋をカプラー
等の連結手段で連結して配筋する。

【００１４】次に、矢板６を一方の型枠となし、他方に
型枠を組み立てて、図２に示す空間１４にコンクリート
を打設する。この地下構造物の外壁を構築するコンクリ
ートを打設すると、前記空間１４に充填されるコンクリ
ートの上端面が腹起こし材１の下面２ｂに当接し、該下
面２ｂが傾斜しているので、打設中のコンクリートの上
端面と前記下面２ｂとの間の空気が貫通孔１２から上方
へと抜かれ、空隙が発生せず良好にコンクリートを空間
１４に充填できる。

【００１５】前記打設したコンクリートが所定の強度を
発現した後、型枠を解体し、更に一方の型枠として利用
した矢板６を引き抜きこれを他の場所に転用する。こう
して地下構造物の外壁が形成される。

【００１６】前記腹起こし材１の本体２に継手鉄筋４を
設ける方法としては、図１に示すような方法以外にも、
図４乃至図５に示す方法がある。即ち、前記本体２に上
下方向に円筒状の鋳鉄製スリーブ１５を埋設し、その両
端部を開口させておく。そして、該スリーブ１５の上下
両方向から縦筋１６をスリーブ１５内に差し込んで突合
せにし、高強度グラウト材で固める。なお、符号１７は
仮設用のブラケットを示している。

【００１７】また、図５に示すように、本体２にスリー
ブ１８を両端開口させて埋設させ、該スリーブ１８に縦
筋１９を挿通させて所定長さを本体２から突出させて、
その後グラウトを充填させて固着するようにしてもよ
い。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の腹起こし
材は、山留めの支保工としての横架材である腹起こし材
において、腹起こし材の本体をプレキャストコンクリー
トで形成するとともに、当該本体内に構築すべき地下構
造物用の補強鉄筋を埋設し、前記本体の上下面から継手
用鉄筋を所定長さで突出させ、前記本体の上下面に貫通
する空気抜き用の貫通孔を穿設し、当該本体の下面をコ
ンクリート打設時のコンクリート充填能率向上のために
傾斜させ、更に本体の上下面に止水板を突設させたの
で、予め工場で製作した高強度で高密度な腹起こし材を
地下構造物の一部とすることができることになり、腹起
こし材の盛り替えが不要となる。更に、コンクリート等
の埋め戻し作業も不要となって、コストの低減と工期の
短縮となる。前記継手用鉄筋により地下外壁施工時の縦
筋との連続性を確保できることや、止水板も予め腹起こ
し材に突設されているので、地下水の地下構造物内への
浸入が阻止されると共に施工が容易となり工期短縮とな
るという優れた効果を奏するものである。

【００１９】また、空気抜き用の貫通孔が設けられ当該
本体の下面が傾斜せしめられているので、コンクリート
の充填具合いが良好となる。

【００２０】また、請求項２に記載のようにすれば、仮
設足場を腹起こし材の側壁に容易に固定することができ
足場組立の作業能率の向上となり、工期の短縮ともな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の腹起こし材の使用状態を示す一部を拡
大した縦断面図である。

【図２】本発明の腹起こし材の使用状態を示す正面図で
ある。

【図３】同じく平面図である。

【図４】他の実施例を示す説明図である。

【図５】同じく他の実施例を示す説明図である。

【図６】従来例に係る腹起こし材の使用状態を示す正面
図である。

【符号の説明】

１ 腹起こし材、２ 本体、３ 補強鉄筋、４ 継手用
鉄筋、５ インサート金物、６ 矢板、７ 地盤、８
仮設足場、９ ボルト、１０ ナット、１１ 切梁、１
２ 貫通孔。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 山留めの支保工としての横架材である腹
   起こし材において、腹起こし材の本体をプレキャストコ
   ンクリートで形成するとともに、当該本体内に構築すべ
   き地下構造物用の補強鉄筋を埋設し、前記本体の上下面
   から継手用鉄筋を所定長さで突出させ、前記本体の上下
   面に貫通する空気抜き用の貫通孔を穿設し、当該本体の
   下面をコンクリート打設時のコンクリート充填能率向上
   のために傾斜させ、更に本体の上下面に止水板を突設さ
   せたことを特徴としてなる腹起こし材。
2. 【請求項２】 腹起こし材の本体の側壁に仮設足場固定
   用のインサート金物を埋設したことを特徴としてなる請
   求項１に記載の腹起こし材。