JP2892417B2 - 安全ベルト用ウェビング - Google Patents

安全ベルト用ウェビング

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、自動車等の車両に使用されているシートベ
ルトや高所での作業時に使用される作業員保護ベルト等
の安全ベルトのためのウェビングに関するものである。
[従来の技術] 自動車の座席に付設されるシートベルトは、車両衝突
時などの緊急時において、乗員を拘束して、車体に衝突
することによる負傷等から乗員を保護する機能を有して
いる。また、作業員保護ベルトはビル建築現場等の高所
での作業時に、作業員が高所から落ちることを防止し、
落下事故から作業員を保護する機能を有している。
このようなシートベルトや作業員保護ベルト等の安全
ベルトのウェビングは、衝撃力が加えられるので、ある
程度以上の強度を確保する必要がある。
[発明が解決しようとする課題] ところで、このような所定以上の強度を有するウェビ
ングを形成しようとした場合、次のような問題がある。
例えば幅が約50mmでかつ強度が3000kgf以上のウェビ
ングを2/2斜文織からなる織布により形成しようとする
と、たて糸の総デニール数が約42万デニール以上となっ
て糸の使用量がきわめて多くなってしまう。このため、
ウェビングの製造コストが高くなる。しかも、たて糸が
増えると強度利用率が下がる。その原因として次のこと
が考えられる。すなわち、たて糸2の使用量が多いの
で、第3図(a)に示すようにウェビング1が引っ張ら
れない通常時にはたて糸2はクリンプされるように織ら
れ、かつよこ糸3がまっすぐとなっている。しかし、同
図(b)に示すようにウェビング1が引っ張られたとき
にはたて糸2がまっすぐとなるので、逆によこ糸3がク
リンプしながら引っ張られる。このため、先によこ糸3
が切れ、その場所のたて糸と他の場所のたて糸とがそれ
ぞれ負担する引張力にアンバランスが生じてしまい、そ
の結果たて糸2が切れることにより強度が低下すると考
えられる。
また、ウェビング1の強度を大きくするために、たて
糸2の数を単に多くしても、第4図に示すように約42万
デニールあたりまでは強度が直線的に上昇するが、これ
を超えると強度の上昇カーブはにぶってしまう。したが
って、糸を多くしても強度を効果的に上昇させることは
できない。
一方、柄物の織布によりウェビング1を形成しようと
すると、柄物でないウェビングに比べ、ウェビング1の
強度が低下してしまう。この原因として次のことが考え
られる。すなわち、第5図に示すようにA点で飛斜文に
なっている変化斜文織で形成されているとすると、たて
方向に引っ張った場合、たて糸2の出ている の部分は下に沈み、またたて糸2の沈んでいる□の部分
は上に上がってくる。そしてA点上の太枠に注目する
と、よこ糸3はたて糸2a,2bによってそれぞれ反対側に
出されるので、よこ糸3は他のどの部分よりもA点でク
リンプが大きく生じる。このため、前述と同様にまずよ
こ糸3が切れ、次いでたて糸2が切れるので強度が低下
すると考えられる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであっ
て、その目的は、強度を向上させることができ、しかも
糸の使用量を少なくすることのできる安全ベルト用ウェ
ビングを提供することである。
[課題を解決するための手段] 前述の課題を解決するために、本発明は、通常時クリ
ンプ状態にあるたて糸とよこ糸とからなる織布によって
形成されている安全ベルト用ウェビングにおいて、すべ
ての前記よこ糸は、少なくともその切断伸度が30%以上
であることを特徴としている。
[作用] このような構成をした本発明に係る安全ベルト用ウェ
ビングにおいては、すべてのよこ糸の切断伸度が30%以
上と大きく設定されているので、通常時クリンプ状態に
あるたて糸が引っ張られたとき、よこ糸が比較的容易に
かつ大きく伸びる。したがって、よこ糸が切れることは
ほとんどなくなり、その結果たて糸が切断することもな
い。これにより、ウェビングの強度が向上する。
[実施例] 以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
第1図は本発明に係る安全ベルト用ウェビングの一実
施例における織物組織図である。なお、前述の第3図及
び第5図に示すものと同じ構成要素には同じ符号を付す
ことにより、その説明は省略する。
第1図に示すウェビング1は、たて糸2が1500D(デ
ニール)の糸を290本およびよこ糸3が500Dの糸を16.75
本/25mmにより織られて形成されたものであり、その織
組織は飛び斜文織と変化たてうね織との組合せからなる
柄織となっている。その場合、よこ糸3の切断伸度が3
3.8%に設定されている。
この実施例のウェビング1を3本作って実際に強度試
験を行った結果、それぞれ強度は3460kg,3500kg,3480kg
であった この実施例の強度を切断伸度が24.92%であるよこ糸
3を使用したウェビングの強度と比較するために、同よ
こ糸を用いたウェビング1であって第1図に示す織組織
に織ったウェビング1(以下、「比較用ウェビング」と
いうことがある)を3本作り強度試験を行った結果、そ
れぞれ強度は3260kg,3260kg,3280kgであった。
これらの試験結果を比較すると、本実施例のウェビン
グにおいては比較用ウェビングに比べ強度が約200kgア
ップすることがわかる。これは本実施例のウェビングに
おいては、よこ糸3の切断伸度が大きく設定されている
ので、たて糸2が引っ張られたとき、よこ糸3が比較的
容易にかつ大きく伸びる。このため、よこ糸3のクリン
プが発生してもその伸びによって吸収され、よこ糸3が
切れることはほとんどない。この結果たて糸2が切断す
ることもなくなるので、ウェビング1の強度が向上する
ものと考えられる。このように本実施例のウェビングは
強度が向上するものとなるので、その品質も向上する。
また観点を変えれば、この試験結果から、たて糸2を
少なくしてもウェビング1の強度をアップできることが
わかる。したがって、糸の使用量を削減できることにな
り、ウェビング1の製造コストが低減する。
第2図は本発明の他の実施例を示し、(a)はこの実
施例の織組織図であり、(b)はこの実施例の耳部の部
分拡大図である。なお、前述の実施例と同じ構成要素に
は同じ符号を付すことによりその説明は省略する。
同図(b)に示すように、この実施例ではよこ糸3,絡
糸4および補助絡糸5により耳部の縁を形成している。
その場合、例えばたて糸2として1500Dのポリエステル
の糸、よこ糸3として500Dのポリエステルの糸、および
絡糸4として250Dのポリエステルの糸が用いられ、同図
(a)に示す織組織、すなわち地が2/2/\/\/\/の
1枚両面斜文織に、耳部が2/2たてうね織に織られてい
る。そして、よこ糸3及び絡糸4の前述の実施例と同様
に比較的高い切断伸度に設定している。
この実施例によれば、たて糸2が引っ張られたときよ
こ糸3の切断が防止されると共に、絡糸4の切断も防止
される。したがって、この実施例におけるウェビング1
の強度も向上する。
[発明の効果] 以上の説明から明らかなように、本発明によれば、通
常時クリンプ状態にあるたて糸とよこ糸とからなる織布
によって形成されている安全ベルト用ウェビングにおい
て、すべてのよこ糸の切断伸度が30%以上と大きく設定
されている。これにより、よこ糸がほとんど切れなくな
るのでたて糸も切れなくなり、ウェビングの強度が向上
すると共に、ウェビングの品質が向上する。
また、ウェビングの強度が向上することにより、糸の
使用量を削減できるようになるので、ウェビングの製造
コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る安全ベルト用ウェビングの一実
施例の織組織を示す織物組織図、第2図は本発明の他の
実施例を示し、(a)はその実施例の織物組織図、
(b)はその実施例の部分拡大図、第3図は従来のウェ
ビングを引っ張ったときにおける糸の挙動を示し、
(a)はウェビングを引っ張らないときの状態を示す
図、(b)はウェビングを引っ張ったときの状態を示す
図、第4図はたて糸の数と強度との関係を示す図、第5
図は柄物の強度に関する説明図である。 1……ウェビング、2……たて糸、3……よこ糸、4…
…絡糸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D03D 1/00 A62B 35/00 B60R 22/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】通常時クリンプ状態にあるたて糸とよこ糸
    とからなる織布によって形成されている安全ベルト用ウ
    ェビングにおいて、 すべての前記よこ糸は、少なくともその切断伸度が30%
    以上であることを特徴とする安全ベルト用ウェビング。
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