JP2886411B2 - シリコンウエハのエッチング液およびその方法 - Google Patents

シリコンウエハのエッチング液およびその方法

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伸二 垂永
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シリコン半導体ウエハ
製造のためのウエハの化学エッチング液およびその液を
使用するエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】シリコン半導体ウエハはシリコン結晶イ
ンゴットを引き上げ、そのインゴットを切断して得た薄
円板をラッピング、エッチング、ポリッシングの順に加
工される。近年、デバイスの集積度が向上するにつれ
て、超LSI用ウエハに極めて高い形状精度が要求され
るようになった。
【0003】ところで、エッチング工程は両面同時ラッ
ピングで平坦度、板厚ともに精度高く加工したウエハに
対して、残留砥粒と加工変質層を除く目的で、40〜5
0μm程度化学的に除去するために行われるが、形状の
制御性が非常に難しい。
【0004】通常、ウエハのエッチングには選択エッチ
ング性がなく、表面荒さが小さく、かつエッチング能率
の高い、弗酸、硝酸、酢酸および水の混合液が用いられ
ている。特開昭59−219476号公報に開示されて
いるように、従来、弗酸(約50重量%):硝酸(約7
0重量%):酢酸(約100重量%)=3:5:3(容
量比)の混合比に代表される硝酸濃度の高い混合液が利
用されてきた。同公報において詳しく説明されているよ
うに前記のエッチング液では、拡散律速の条件によって
エッチングが進行する。拡散律速の条件下では、結晶表
面の面方位、結晶欠陥等に反応速度は依存せず、結晶表
面における拡散が主たる効果を持つため、シリコンウエ
ハ表面の面荒さが平坦化し、ミクロな形状が向上すると
いう利点がある。しかしながら、エッチングの進行とと
もに、ウエハ外周部がだれて、マクロな形状は平坦性が
損なわれるという欠点がある。弗酸濃度が高いエッチン
グ液の場合には、エッチング速度が大きくなったり、ウ
エハ表面のミクロな形状が悪くなり、光沢度が低下する
等の問題があり、実用には至っていない。
【0005】このため、従来のエッチング工程において
は、前記特開昭59−219476号公報に代表される
ように、硝酸濃度の高い拡散律速の条件下でエッチング
液の流れを制御することによって、ウエハのマクロな形
状の劣化を抑制する努力が続けられてきた。
【0006】シリコン半導体ウエハをエッチングするに
際し、もう一つの考慮すべきこととしてエッチングむら
があげられる。シリコンウエハをエッチングした後、エ
ッチングウエハを純水に浸漬し、ウエハを引き上げ、ウ
エハ表面を観察すると、蛍光灯下でむらとして観察され
る場合がある(以下、このむらをエッチむら1と称す
る。)。次に、ウエハ最表面に何らかの薄膜が形成さ
れ、集光灯(10〜30万ルクス程度の光を照射する装
置)下において色むらとして観察される場合がある(以
下、このむらをエッチむら2と称する。)。
【0007】前記硝酸濃度が高い拡散律速の条件下では
エッチむら1は発生しないが、このエッチむら2が発生
し易い。このため、従来のエッチング後工程においては
このエッチむら2を除去するためにアルカリ性の溶液を
用いて、エッチングを行い、エッチむら2を除去するこ
とが行われてきた。軽微なエッチむら2はこのアルカリ
性エッチングにより除去できるが、このエッチむら2の
程度がひどい場合には完全には除去できないという問題
があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ラッピングウエハのエ
ッチング液としては、例えば弗酸(約50%):硝酸
(約70%):酢酸(約100%)=3:5:3(容量
比)で代表されるように拡散律速の条件下で化学エッチ
ングされていた。あるいは、特開平3−1537号公報
に開示されているように、エッチング溶液中の水分に注
目し、発煙硝酸を用いて溶液中の水分量を減少させた拡
散律速系のエッチング液にて、化学エッチングされてい
た。いずれの場合も、拡散律速系のエッチング液であ
り、形状精度の面において、エッチングを行ったウエハ
はウエハ周縁はウエハ面内に比べ、拡散層が薄くなるた
め、角が丸くなり、ウエハの最エッジはだれてしまって
いた。また、エッチむら1は発生しにくいが、エッチむ
ら2は発生し易いという欠点を有していた。一方、反応
律速系のエッチング液はエッチむら2は発生しにくい
が、エッチむら1が発生し易いという欠点があった。
【0009】本発明は、弗酸、硝酸、酢酸および水から
なるエッチング液の主に弗酸と硝酸濃度を変化させ、エ
ッチング反応は拡散律速で進行するにも拘らず、前記問
題点を解消し、ウエハ表面のミクロな形状を向上し、ウ
エハの最エッジ部分のだれも少なく、さらにはエッチむ
ら1、2も発生しないエッチング方法を提供するもので
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量%比で、 HF/HNO=0.30〜0.40 (HF+HNO)/CHCOOH=0.80〜3.
00 (HF+HNO)/HO=0.80〜2.90、 の組成を有する溶液にシリコンを0.36〜0.80m
ol/リットル溶解したことを特徴とするシリコン半導
体ウエハのエッチング液に関するものである。
【0011】さらに、前記のエッチング液を用い、該エ
ッチング液の温度を20〜60℃、の温度に調整し、ウ
エハを揺動させながら該エッチング液に浸漬することを
特徴とするシリコン半導体ウエハのエッチング方法に関
する。
【0012】
【作用】以下、本発明の作用を詳細に説明する。
【0013】本発明では、ラッピングウエハを弗酸、硝
酸、酢酸および水の4成分からなるエッチング液中に浸
漬し、エッチングする方法として、その初期組成を重量
%で、 HF/HNO=0.30〜0.40 (HF+HNO)/CHCOOH=0.80〜3.
00、好ましくは1.50〜2.50,(HF+HNO
)/HO=0.80〜2.90、好ましくは1.4
0〜2.00の組成を有する溶液にシリコンを0.36
〜0.80,好ましくは0.46〜0.64mol/リ
ットル(mol/dm)溶解したものをエッチング溶
液として用い、該エッチング時の温度を20〜60、好
ましくは30〜45℃とする。HF/HNOの濃度比
が低く、(HF+HNO)/HOの比率が高いこと
が従来のエッチング液と大きな違いである。また、エッ
チングに最適な温度範囲があることも大きな特徴であ
る。
【0014】シリコンが溶解するときには次の式で表さ
れる化学反応が起こる。
【0015】 3Si+4HNO+18HF→3HSiF+4NO↑+8HO(1) シリコンが溶解するときには、弗酸と硝酸が消費され、
反応生成物としてヘキサフルオロケイ酸(HSi
)、一酸化窒素(NO)、水(HO)が生成す
る。したがって、上式により初期組成と溶解シリコン濃
度とからエッチング時の液組成を計算することができ
る。
【0016】HF/HNOの重量%比率を規定したの
はHF/HNOの比率がエッチングの特性を決定する
第1の因子であり、主にエッチング速度、ウエハ表面状
態、ウエハ表面のミクロな形状等を決定するためであ
る。特に、エッチむら2は主にHF/HNOの比率に
ほぼ支配されており、HF/HNOの比率が低くなる
と発生し易くなる。このエッチむら2はシリコンウエハ
表面に何らかの薄膜あるいは多孔質の薄膜が形成され、
それが集光灯下で色むらとして観察される。
【0017】本発明において、HF/HNOの比率の
下限を0.30と規定したのは、0.30以下になると
前述のエッチむら2が発生し易くなるためである。ま
た、上限を0.40と規定したのは、0.40以上にな
ると反応律速系のエッチング液となるためである。
【0018】酢酸はシリコンの溶解には直接関与してい
ないが、エッチング速度を減少させるインヒビターとし
て働く。また、ウエハ表面のミクロな形状を改善すると
いう働きがある。
【0019】本発明において、(HF+HNO)/C
COOHの比率の下限として0.80と規定したの
は、前記比率が0.8以下になると、インヒビターとし
ての働きが過度に強くなって、エッチング反応が不均一
に進行し易くなり、その結果、前述のエッチむら1が発
生するためである。上限として3.00を規定した理由
は、前記HF/HNOの比率の範囲において、(HF
+HNO)/CHCOOHが3.00以上になる
と、エッチング速度が大きくなり過ぎて、エッチング後
のウエハの厚みを制御することが困難となるためであ
る。
【0020】エッチング液の成分である水も、酢酸と同
様にインヒビターとしての働きがある。本発明において
(HF+HNO)/HOの比率の下限として0.8
0を規定したのは、0.80以下になると、エッチむら
1が発生し易くなり、ウエハの外観が悪くなるためであ
る。また、また、上限として2.90を規定したのは、
2.90以上になるとエッチング液を調合するのが困難
になり、エッチング速度が大きくなり過ぎて、エッチン
グウエハの厚みを制御することが困難になるためであ
る。市販されている薬品を用いてエッチング液を調合す
る場合、半導体仕様薬品としては50重量%弗酸、70
重量%硝酸が多いため、エッチング液中の水成分が必然
的に多くなることが避けられない。このため、(HF+
HNO)/HOの比率を下げることは、非常に困難
であり、特開平3−1573の明細書に記載されている
ように、発煙硝酸等の薬品を使用しないと調合できな
い。このような理由のため、前記比率が2.9以上にな
るとエッチング液の調合が困難となるのである。
【0021】エッチングを工業的に行う場合には、消費
される弗酸量、硝酸量、増加するシリコン量、水の量は
無視することができない。そこで、シリコンをエッチン
グした後、シリコン量、弗酸量、硝酸量、酢酸量、水量
を調節するため、エッチング液の一部を抜き取り、所定
量の弗酸、硝酸、酢酸および水を入れ、エッチング溶液
の組成を元の状態に戻るように調合し、繰り返し用いら
れる。
【0022】溶解シリコン量の下限として、0.36m
ol/リットルを規定したのは、0.36mol/リッ
トル以下になると、エッチング液を元のエッチング液組
成、特に溶解シリコン量を元の状態に戻すためには、多
量のエッチング液を抜く必要があり、工業的には行えな
い。溶解シリコン量の上限として0.80mol/リッ
トルを規定したのは、0.80mol/リットル以上に
なると、シリコンの溶解によりエッチング液中の水の成
分が多くなり、結果として、前述のエッチむら1が発生
し易くなり、また、光沢度が低下するためである。
【0023】本発明において温度範囲を規定した理由
は、エッチング液温度がウエハ表面状態およびエッチン
グ後のウエハ形状に大きく作用する重要な因子であるた
めである。下限として20℃を規定したのは、この温度
以下になるとエッチむら1が生じ易くなるためである。
上限として、60℃を規定したのは、この温度を越える
とエッチング液の成分が一部蒸発することによって組成
変動が起こるためである。 実施例1に示されているよ
うに、本発明のエッチング液ではウエハ回転数によりエ
ッチング速度が異なっており、ウエハ回転数依存性があ
る。これはラップウエハがエッチングされるときの反応
が拡散律速で進行していることを示している。本発明の
方法においてラッピングウエハをエッチングすると、ウ
エハ表面にミクロな形状を向上し、エッチむら1および
2も生じない。
【0024】
【実施例】直径6インチ、8〜12Ωcmのシリコンの
単結晶をスライスし、ベベリングし、その後両面をラッ
ピングし、ラッピングウエハを作成した。エッチングに
はラッピングウエハを洗浄、乾燥して用いた。
【0025】エッチング液は所定の初期組成の弗酸、硝
酸、酢酸および水を含む溶液にシリコンを溶解させて、
エッチング液を調合した。シリコンを溶解させるときに
は多量のNOxが発生するため、エッチングは所定濃度
のエッチング液を調合した後、1時間経過した後に行っ
た。図1に示すエッチング槽1に所定の濃度のエッチン
グ液2を入れ、ラッピングウエハ3を回転、上下、左右
運動等の揺動を加えたり、全く揺動を加えないようにし
てエッチングを行った。エッチング代は両面を合わせて
35〜40μmとした。
【0026】
【表1】
【0027】表1に本発明と従来の方法におけるエッチ
ング液組成とエッチング特性を示す。本発明のエッチン
グ液はウエハの回転数によりエッチング速度が異なって
おり、ウエハの回転数依存性がある。これはラップウエ
ハをエッチングするときの反応が拡散律速で進行してい
ると思われる。一方、HF/HNO濃度比が0.40
以上ではウエハの回転数依存性が見られず、ラップウエ
ハをエッチングするときの反応が反応律速で進行してい
ると思われる。
【0028】揺動がある条件下においては、従来のエッ
チング液ではエッチむら1あるいはエッチむら2が観察
されたが、本発明のエッチング液では全く観察されなか
った。また、本発明のエッチング液を用いて、揺動を加
えた場合はエッチむら1および2は発生しないが、揺動
がない場合はエッチむら1がやや観察された。
【0029】
【発明の効果】本発明は、従来のエッチング液の組成比
の中で、HF濃度が高い領域において、拡散律速のエッ
チング液を実現し、酢酸濃度、水濃度を高めたところに
特徴があり、エッチングウエハのマクロな形状が優れ、
さらにはミクロな形状も良く、エッチむらの生じないウ
エハを提供できる。さらには、後工程であるポリッシン
グ工程で表面形状精度の高いウエハを得ることができる
エッチングウエハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に使用するエッチング槽を示す概略図
である。
【符号の説明】
1:エッチング槽 2:シリコン半導体ウエハ 3:エッチング液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三浦 晃 山口県光市島田3434番地 新日本製鐵株 式会社 光製鐵所内 (72)発明者 垂永 伸二 山口県光市島田3434番地 ニッテツ電子 株式会社内 (72)発明者 畑中 裕行 山口県光市島田3434番地 ニッテツ電子 株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−1537(JP,A) 特開 平5−291238(JP,A) 特開 平6−45314(JP,A) 特開 昭56−55054(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 21/306 H01L 21/308

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%比で、 HF/HNO=0.30〜0.40 (HF+HNO)/CHCOOH=0.80〜3.
    00 (HF+HNO)/HO=0.80〜2.90 の組成を有する溶液にシリコンを0.36〜0.80m
    ol/リットル溶解したことを特徴とするシリコン半導
    体ウエハのエッチング液。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のエッチング液を用い、該
    エッチング液の温度を20〜60℃の温度に調整し、ウ
    エハを揺動させながら該エッチング液に浸漬することを
    特徴とするシリコン半導体ウエハのエッチング方法。
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JP5178175B2 (ja) * 2007-12-17 2013-04-10 キヤノン株式会社 揺動体装置の製造方法

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