JP2880164B2 - 酸化物超電導材料 - Google Patents

酸化物超電導材料

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、酸化物超電導材料及びその製法に係り、特
に高い超電導転移温度を有するに好適な酸化物超電導材
料及びその製法に関する。 〔従来の技術〕 従来、酸化物系の超電導材料及びその製法について
は、ツァイト シュリフト フューアフィジーク B64
(1987年)第189頁から第193頁(Zeitschfti fur Physi
k B64(1986)pp189−193)、サイエンス235(1987年)
第567頁から第569頁(Science,235(1987)pp567−56
9)、及びフィジカル レヴュー レターズ 58(1987
年)第908頁から第910頁(Physical Review Lerrers58
(1987)pp(908−910)などにおいて論じられている。 〔発明が解決しようとする問題点〕 上記従来技術は、100K以上の超電導転移温度を有する
酸化物超電導材料及びその製法について配慮がなされて
おらず、これらの材料を超電導状態で使用する場合に
は、液体窒素温度(78K)レベルに冷却しなければなら
ないという問題があった。 本発明の目的は150K以上の超電導転移温度を有する酸
化物超電導材料及びその製法を得ることにある。 〔問題点を解決するための手段〕 上記目的は、下式で示されるペロブスカイト状結晶構
造を有し、式中のL元素は、スカンジウム(Sc)、イッ
トリウム(Y)、ランタノイド元素及びI a族金属元素
の群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、式中の
A元素はバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カル
シウム(Ca)などのアルカリ土類金属元素の群から選ば
れた少なくとも一つの元素であり、さらに酸素(O)及
び酸素空孔により形成される八面体結晶構造の中心部に
位置する式中のM元素は元素周期表のV a族元素である
バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)の群
から選ばれた少なくとも一つの元素とすることにより達
成される。 (LxA1-xiMOy ……(1) 但し、この式で、 Xは、0<x<1であり、 iは、i=1,3/2,または2であり、 yは、i=1のとき、0<y≦3 i=3/2または2のとき、0<y≦4 〔作用〕 上記ペロブスカイト状結晶構造を有する本発明の酸化
物超電導材料は、M元素であるV a族元素(あるいはIV
a族元素の原子を使用してもよい)をその中心にもつ、
6個の酸素原子の八面体構造を基本構成とするもので、
この材料は前記八面体を構成する酸素の欠損、即ち酸素
空孔が1つあるいは複数個存在するので、その酸素の欠
損により、温度150K以上においても超電導電子対を形成
するに必要な強い引力相互作用が発生しているものと予
想される。 また、本発明によれば、L元素,A元素及びM元素を所
定の化学量論組成比で含む混合物を真空中、還元性ある
いは酸化性雰囲気中で高温加熱し、反応させることによ
り、前記混合物の非晶質または多結晶質の酸化物の粉末
を得、これを成形し、焼結することにより前記酸化物の
多結晶質あるいは結晶質の上記(1)または(5)式に
示すような酸化物超電導材料が得られる。 〔実施例〕 以上説明した本発明は以下の実施例にて詳細が明らか
になる。但し、比較参考のため他の例も併記してある。 本発明の酸化物超電導材料は第1図に示すようなペロ
ブスカイト状結晶構造を有している。この図は単位格子
を示しており、その化学式は、 (LxA1-xiMOy ……(1) で表わせる。この式で、xは0<x<1であり、iは または2であり、yは、i=1のとき0<y≦3, または2のとき0<y≦4である。また、(1)式中の
L元素はスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ま
たはランタン(La)などのランタノイド元素或いはリチ
ウム(Li)などのI a族金属元素の中から選ばれた少な
くとも一つの元素であり、式中のA元素はバリウム(B
a)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)などの
アルカリ土類金属元素の中から選ばれた少なくとも一つ
の元素であり、さらに酸素(O)及び酸素空孔により形
成される八面体結晶構造の中心部に位置する式中のM元
素は元素周期表のV a族元素であるバナジウム(V)、
ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、またはIV a族元素であ
るチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(H
f)の中から選ばれた少なくとも一つの元素である。
(1)式中のMには6個の酸素が図に示すように八面体
形に配位している。この6個の酸素のうち1個あるいは
2個が抜けることにより、Mをその面心にもつ4個の酸
素の四角い面、あるいは2個の酸素と2個の酸素空孔を
作る四角い面が複数層現われ、これらは2次元的に結晶
体中でつながっている。この2次元的に連続した四角い
面の発生に伴い、超電導電子対を形成するに必要な強い
引力相互作用が発生し、こうして発生した超電導電子対
は、前記2次元的に連続した四角い面に沿って流れるも
のと予想される。ここで、M元素として、V a族のバナ
ジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)あるいは
IV a族のチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウ
ム(Hf)の群から選ばれた1個あるいは複数の元素を含
むようにする。これによって、前記酸素の抜け、即ち酸
素空孔の形成が促進され、前記M元素をその面心にもつ
酸素の2次元的な四角い連続面が形成される。 (1)式中のM元素が二元系元素、即ち(M′1-zM″
)(但しこの式で0≦z<1)で表わせる酸化物超電
導材料としてもよい。この場合、M′元素は、元素周期
表のV a族元素であるバナジウム、ニオブ、タンタル、
またはIV a族元素でありチタン、ジルコニウム、ハフニ
ウムの中から選ばれた一つの元素である、M″元素は、
前記V a族元素またはIV a族元素の他に銅(Cu)を選択
することも可能である。 また、(1)式中のA元素が二元系元素、即ち(A′
1-dA″d)(但し、この式で、0≦d<0)で表わせる
酸化物超電導材料としてもよい。この場合、A′または
A″元素はそれぞれバリウム、ストロンチウム、カルシ
ウムなどのアルカリ土類金属元素の中から選ばれた一つ
の元素である。 上述した本発明の酸化物超電導材料の好適な例として
は次の(2),(3),(4)式で表わせるものがあげ
られる。 (LaxSr1-x2M′1-zCuzOy ……(2) (LaxSr1-x)M′1-zCuzOy ……(3) (YxBa1-x)M′1-zCuzOy ……(4) これら(2)〜(4)式でxは、0.4≦x≦0.6である
ことが望ましく、特にx≒0.5が良い。 次に、本発明の酸化物超電導材料の製法についての実
施例を説明する。 (LaxSr1-x2NbOyで表わせるペロブスカイト状結晶
構造を有する酸化物超電導材料の製法について説明す
る。酸化ランタン(La2O3)粉末、炭酸ストロンチウム
(SrCO3)粉末、および酸化ニオブ(NbO)または純金属
のニオブ(Nb)の粉末を所定の化学量論組成に秤量し、
その混合粉末を酸化性雰囲気中で約900〜1500℃で数時
間加熱して反応させる。この時、Nb2O5を使用する場合
は1300〜1500℃、Nbを使用する場合は900〜1100℃が好
ましい。次に、その混合反応物を粉砕し、これを適当な
形状にプレス成形し、前記反応温度よりもやや高い温度
で、焼結することによって、所望の形状の酸化物超電導
材料を得ることができる。 なお、本実施例により製造された焼結体をX線回折法
で測定したところ、2θが24.6゜、31.1゜、33.6゜、4
3.2゜、47.9゜、54.6゜、55.4゜、65.4゜などにピーク
を示し、結晶質化しており、かつ焼結体の色調は黒色に
近かった。 本発明者の確認によれば、本発明系統の材料の2θは
上記(1)式がi=2の場合(いわゆる(L・A):M=
2:1の場合)は上記(LaxSr1-x2NbOyと同様の2θが出
る。 (LaxSr1-x)NbOyで表わせるペロブスカイト状結晶構
造を有する酸化物超電導材料の製法についても、上記と
同様に実施できる。一例としてこの製法で得られたLaSr
NbOy(yは4と推定される)のEPMA分析の結果を第2図
に示す。所定の2θ、後述の超電導特性、並びに第2図
の分析値より、本実施例に係る酸化物が上記組成のペロ
ブスカイト型超電導材であることが同定される。尚、図
中の(1)はLaLβ2.4583Å、(2)はLaLα2.6851Å、
(3)はLaLβ2.4583Å、(4)はNbLβ5.4914Å、
(5)はNbLα5.7235Å、(6)はSrLβ6.6234Å、
(7)はSrLα6.8624Å、(8)はLaLα2.6651Åを示
す。 このLaSrNbO4を例にとれば焼成直後の特性は第3図の
通りであり、第3図の測定の為一旦200Kまで試料温度を
下げたものを再度抵抗測定すれば第4図の通りとなり、
再現性もあり、かつ比較的安定となる。第4図が示す通
り本実施例品は315Kで電気抵抗が下がり始め、300Kで電
気抵抗がゼロとなり、測定上の若干のノイズ域をはずし
ても255Kで完全に抵抗ゼロとなる。一方各図にχ(%)
で示した通り、マイスナ効果も確認された。χは帯磁率
であり、完全超電導(Nb4.2K)基準に対する帯磁性の比
率であって、これが負を示せばすなわちマイスナ効果を
具備することになる。尚、電流条件は3mA/cm2である。 尚、このように温度サイクスをかけることにより所定
の超電導特性を得るよう調整することも可能である。更
に所定の特性を示す温度域を限定して超電導応用機器を
使用することも可能であり、第4図の300Kの位置のよう
に完全抵抗ゼロに一時的にでもなる領域があればこの領
域での使用、あるいはこの領域を利用して(上温域・下
温域にて抵抗が変化することから)スイッチング材とし
ての使用も好ましい。 (YxBa1-x)NbOyで表わせるペロブスカイト状結晶構
造を有する酸化物超電導材料の製法の場合には、出発原
料粉末として酸化イットリウム(Y2O3)、炭酸バリウム
(BaCO3)、酸化ニオブ(Nb2O5)または純金属のニオブ
(Nb)を所定の組成に秤量し、これを混合後、高温で反
応熱処理を行う。こうして得られた反応混合物の粉末を
成形し、焼結することによって、酸化物超電導材料を得
ることができる。 本実施例により製造された焼結体をX線回折法で測定
したところ、2θは32.6゜、38.5゜、40.4゜、47.0゜、
58.5゜などにピークを示し、結晶化しており、かつ焼結
体の色調は黒色に近かった。 本発明者の確認によれば、本実施例系統の材料の2θ
(上記(1)式のi=1の場合)は上記(YxBa1-x)NbO
yと同様の2θが出る。 L元素に2種以上用いても本発明のものが得られる。
例えば((ScaY1-abBa1-b)NbOx(xは7と推定)で
ある。ここでa,bは夫々0<a,b<1である。原料粉末は
この場合、Sc2O3,Y2O3,BaCO3、並びにNbO或いは純Nb
(純Nbなら還元雰囲気での処理を要す)である。i=1
の場合の2θが得られる。 L元素にI a族の代表例としてLiを用いるにはLi相当
の原料粉末はLi2Oとすべきである。こうして得られたペ
ロブスカイトの代表例は、(LiaBa1-a)NbOであり、2
θはi=1の系と同様である。 (LaxSr1-x)ZrOyで表わせるペロブスカイト状結晶構
造を有する酸化物超電導材料の製法の場合には、出発原
料粉末として、La2O3,SrCO3,酸化ジルコニウム(ZrO2
または純金属のジルコニウム(Zr)を所定の組成に秤量
し、これを混合後、高温で反応熱処理を行う。こうして
得られた反応混合物の粉末を形成し、焼結することによ
って、酸化物超電導材料を得ることができる。 (YxBa1-x)ZrOyで表わせるペロブスカイト状結晶構
造を有する酸化物超電導材料の製法の場合には出発原料
粉末としてY2O3、BaCO3、ZrO2またはZrを所定の組成に
秤量し、これを混合後、高温で反応熱処理を行う、こう
して得られた反応混合物の粉末を成形し、焼結すること
によって、酸化物超電導材料を得ることができる。 (LaxSr1-x)TaOyで表わせるペロブスカイト状結晶構
造を有する酸化物超電導材料の製法の場合には、出発原
料粉末としてLa2O3、SrCO3、酸化タンタル(Ta2O5)ま
たは純金属のタンタル(Ta)を所定の組成に秤量し、こ
れを混合後、高温で反応熱処理を行う。こうして得られ
た反応混合物の粉末を成形し、焼結することによって、
酸化物超電導材料を得ることができる。 (YxBa1-x)TaOyで表わせるペロブスカイト状結晶構
造を有する酸化物超電導材料の製法の場合には、Y2O3
BaCO3、Ta2O5またはTaの組合せで同様に製造できる。 以上説明したことから、(LxA1-xiMOyで表わされる
ペロブスカイト状結晶構造を有する酸化物超電導材料の
製法においては、上述した実施例のように、L元素とし
てその酸化物(Y2O3,La2O3,Sc2O3,Yb2O3,Er2O3,HO2O3,D
y2O3)を用い、A元素としてその炭酸化物(BaCO3,SrCO
3,CaCO3)を、そしてM元素としては、その酸化物(V2O
5,Nb2O5,Ta2O5,TiO2,ZrO2,HfO2)あるいはその純金属粉
末(V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf)を使用することにより製造でき
る。 (Lx(A′1-dA″d)i-xiMOy(但し、0≦d<
1)で表わされるペロブスカイト状結晶構造において
は、前述した(LxA1-xiMOyの中のA素を2元素系とす
るもので、例えば、(Lax(Sr1-dCad)i-x)MOyの場合
は、La2O3,SrCO3,CaCO3の粉末、及びM元素の酸化物ま
たは純金属の粉末を所定の組成に秤量し、これと混合
後、高温で反応熱処理を行う。こうして得られた反応混
合物を成形し、焼結することにより酸化物超電導材料を
得ることができる。 (LxA1-x)M′1-zM″zOyで表わされるペロブスカイ
ト状結晶構造においては、前述した(LxA1-xiMOyの中
のM元素を2元素系とするもので、例えば(LxA1-x)Nb
1-zZrzOyの場合は、L元素の酸化物の粉末、A元素の炭
酸化物の粉末、及びNb2O5,ZrO2(あるいはNb,Zr)の粉
末を所定の組成に秤量・混合し、これを高温で反応熱処
理を行う)。こうして、得られた反応混合物を成形し、
焼結することにより酸化物超電導材料を得ることができ
る。 ところで、原料混合粉末の反応温度、反応時間などの
反応雰囲気条件、その後の焼結条件は、使用元素の違
い、組成比の違い、粉末の状態などによって変化するの
で、適宜選択されなければならないことは言うまでもな
い。特に、M元素の純金属粉末を使用する場合、酸化性
雰囲気ではその反応が急激であるため、還元性雰囲気で
熱処理することが望ましい。 上記の製法により得られた(LaxSr-x2NbOy,(ここ
で、0<y≦4,x=0.5)、及び(YxBa1-x)NbOy,(ここ
で、x=0.5,0<y≦3)の焼結体の電気抵抗の温度特
性を第5図に示す。これらの特性は、化学量論組成比熱
処理条件(焼成温度パターン、焼成時の雰囲気、アニー
ル熱処理条件など)により大きく変化するので、第5図
は単なる例示にすぎない。電気抵抗は温度の減少に従
い、約280Kより急激に減少し、完全に電気抵抗が零にな
るのは約250Kである。即ち、約280Kから超電導状態にな
り始め、約250Kで完全に超電導状態へ転移したことにな
る。この場合、転移幅は30Kと非常に大きいが、焼結時
の熱処理条件や、焼結後のアニール熱処理により、さら
に転移幅を小さくすることができる。 原料混合粉末の反応温度や焼結時の熱処理温度は、
(LxA1-xiM1-zCuzOy(但し、0<z<1)のように、
M元素をCuで置換することにより、低減できる。このと
き、超電導特性に大きな劣化はない。 前記、Cuを含む材料の具体的な製造方法のプロセスの
1例を第6図で説明する。L元素の酸化物粉末、A元素
の炭酸化物粉末及び第2酸化銅CuO粉末を所定の組成と
なるように秤量し、この混合粉末を酸化性雰囲気中にお
いて900〜1000℃で加熱反応させる。この反応混合粉末
に、M元素であるV a族元素(V,Nb,Ta)あるいはIV a族
元素(Ti,Zr,Hf)の中より選ばれた1つまたは複数の純
金属粉末を所望の化学量論的な量を秤量し、混合する。
このようにして得た前工程混合粉末を再度、真空中、還
元性あるいは酸化性雰囲気中で加熱反応処理を行うこと
により、(LxA1-xiM1-zCuzOyの粉末を得ることができ
る。こうして得られた最終反応粉末をプレス成形し、焼
結することにより、適当な形状を有する酸化物超電導材
料を製造できる。また、上記の前工程反応混合粉末ある
いは最終反応粉末を銅などの金属管へ充填したり、金属
テープに膜として付着させて、反応焼結することによ
り、本発明の酸化物超電導材料で製作した超電導線を製
造できる。 次に、本発明の酸化物超電材料の薄膜の形成法の具体
的な一例を説明する。上記の焼結法により得られた磁器
をターゲツトとして用い、アルゴンガス雰囲気中あるい
は適当な酸素分圧をもつアルゴンガス雰囲気中でのスパ
ッタリングによって、Si単結晶、Al2O3単結晶、SiO2
結晶、MgO単結晶、ZrO2単結晶、あるいはこれらの多結
晶体の基板上に本発明の酸化物超電導薄膜を直接、所望
の形状及び厚みの膜を堆積できる。また、微妙な膜厚調
整、化学量論組成比の調整が必要な場合には、分子線エ
ピタキシー法により膜を堆積できる。その他、膜形成法
として従来から知られている物理的方法、化学的方法も
利用できることは言うまでもない。いずれの場合におい
ても、膜成長条件を最適化することにより、第3図〜第
5図で示したような超電導特性を得ることができる。 以上説明したような基板上に直接所望の化学量論組成
をもつ酸化物超電導薄膜を形成する方法以外に、第7図
に示すようにAl2O3単結晶などの基板1に先ずM元素の
金属薄膜2を成長させ、次にL元素及びA元素の適当な
化学量論組成比をもつ膜3を堆積させ、その後熱処理に
より金属薄膜2と膜3を反応させ、この膜2,3の部分の
一部または全部を本発明に係わる酸化物超電導薄膜4に
転化することができる。このとき、先にL元素及びA元
素の膜3を堆積し、次にM金属薄膜2を成長させて、熱
処理しても同様の効果が得られる。 基板上の電気配線に本発明の超電導材料の薄膜を使用
する場合、電気絶縁性のセラミクス基板の上に所望のパ
ターン形状の膜をスクリーン印刷し、これを焼付けるこ
とも可能である。同様に、多層配線されたセラミクス基
板を製作することもできる。 テープ状の酸化物超電導材料を製造する場合には、M
元素(V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf)の金属テープ上に、L元素
(ランタノイド元素の群から選ばれた一つの元素)及び
A元素(Ba,Sr,Ca)の適当な化学量論組成LxA1-x,但
し、(0<x<1)の膜を、スパッタ法などの従来から
知られた膜堆積法や粉末塗布焼付法などで付着させ、そ
の後の熱処理工程により、M元素の金属テープの一部あ
るいは全部と拡散反応させる方法がよい。第3図,第4
図のデータはこの方法によっている。この場合、銅,銅
合金あるいはステンレス鋼などの金属線をベース材料と
して、まずLxA1-xの膜をその表面に形成し、その上にM
元素の金属膜を堆積し、その後の熱処理工程により、拡
散反応させることにより、本発明の酸化物超電導線を製
造できる。このとき、LxA1-x膜とM元素の金属膜を交互
に複数層形成することにより、熱処理時の反応性を著し
く向上させることができる。 (LxA1-xiM1-zCuzOyで表わせるペロブスカイト状結
晶構造を有する酸化物超電導薄膜を形成する場合には、
Al2O3単結晶などの基板上に、先ずM元素の金属膜を形
成し、この上に(LxA1-xiCuOyの膜を不活性雰囲気中
で堆積し、その後真空中、還元性あるいは酸化物雰囲気
中で熱処理することによつて得ることができる。この場
合の反応は熱処理により、M原子の金属原子が拡散し、
Cu原子と置換する過程により達成される。そのため、前
記2種類の膜、即ちM元素の金属膜と(LxA1-xiCuOy
の酸化物の膜を交互に複数層形成した後に、熱処理によ
り、Cu原子とM元素の原子の置換を高めることができ
る。また、(LxA1-xiCuOyの酸化物セラミクスを基板
として、M元素の金属膜を形成し、熱処理するなど、い
ろいろな手法であることは言うまでもない。 本発明によれば、いずれの実施例においても、超電導
転移温度が150K以上の酸化物超電導材料を得ることは容
易であり、200K以上の転移温度を示すもの、更には第3
図〜第5図に示すように250K以上の転移温度を示す酸化
物超電導材料を容易に得ることができる。 〔発明の効果〕 本発明によれば、超電導転移温度を150K以上とするこ
とができる酸化物超電導材料が得られるので、超電導状
態を保つのに、液体窒素温度レベルなどの極低温環境を
必要としない超電導材料が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の酸化物超電導材料の結晶構造を示す
図、第2図は本発明の酸化物超電導材料の一例のEPMA分
析のデータを示す特性図、第3図、第4図、第5図は夫
々本発明の酸化物超電導材料の実施例による電気抵抗〜
温度関係の特性図、第6図、第7図は夫々本発明の製法
例を示す工程図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01B 13/00 HCU H01L 39/12 ZAAC H01L 39/12 ZAA 39/24 ZAAZ 39/24 ZAA C04B 35/00 ZAA (56)参考文献 特開 昭64−3015(JP,A) 特開 昭63−236748(JP,A) 特開 昭64−3061(JP,A) 特開 昭61−55804(JP,A) 日経超電導(1992.9.28−日経BP 社発行)p.6−20 化学 第48巻2号(1993)p.78−81

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.下式で示されるペロブスカイト状結晶構造を有し、
    式中のL元素、スカンジウム(Sc)、イットリウム
    (Y)、ランタノイド元素及びI a族金属元素の群から
    選ばれた少なくとも一つの元素であり、式中のA元素は
    バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム
    (Ca)などのアルカリ土類金属元素の群から選ばれた少
    なくとも一つの元素であり、さらに酸素(O)及び酸素
    空孔により形成される八面体結晶構造の中心部に位置す
    る式中のM元素は元素周期表のV a族元素であるバナジ
    ウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)の群から選
    ばれた少なくとも一つの元素であることを特徴とする酸
    化物超電導材料。 (LxA1-xiMOy ……(1) 但し、この式で、 xは、0<x<1であり、 iは、i=1,3/2,または2であり、 yは、i=1のとき、0<y≦3 i=3/2または2のとき、0<y≦4 である。 2.請求項1において、(1)式中のMは(M′1-zM″
    )(但し、この式で、0≦z<1)で表わされ、M′
    元素は、元素周期表のV a族元素であるバナジウム、ニ
    オブ、タンタルの群から選ばれた一つの元素であり、
    M″元素は、前記V a族元素、またはIV a族元素である
    チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれた少
    なくとも一つの元素である酸化物超電導材料。
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