JP2879111B2 - 耐熱性繊維集合体 - Google Patents

耐熱性繊維集合体

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JP2879111B2 JP33011289A JP33011289A JP2879111B2 JP 2879111 B2 JP2879111 B2 JP 2879111B2 JP 33011289 A JP33011289 A JP 33011289A JP 33011289 A JP33011289 A JP 33011289A JP 2879111 B2 JP2879111 B2 JP 2879111B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、高分子物質の軟化、溶融、重合などを伴
う平板状物質の成型工程に利用される耐熱性繊維集合体
に関するものである。
〔従来の技術〕
高分子物質の軟化、溶融、重合などを伴う平板状物質
の成型は、ベニヤ合板、塩化ビニル板、プリント配線基
板、メラミン化粧板等をはじめとするラミネート板、合
成樹脂板、強化樹脂板などの成形加工に広く普及してい
る。
一般に、高分子物質の成型は、 樹脂分の加熱・可塑化 樹脂分の流動・賦形 樹脂分の固化(熱硬化性樹脂を成型する場合には硬
化) という3段階を順に経て初めて可能となる。これは平板
状の成型体を得る場合も同様である。
ところで、平板状成型体を工業的に製造する場合、オ
ープン式や真空減圧式の平板プレス機が常用されてい
る。例えば、オープン式平板プレス機は、加熱・冷却機
能を持つ上下一対、ないしは多段の平板を備え、一方の
平板を油圧などにより上下させるとともに圧縮力を制御
する機能を備えた機械装置である。加熱・冷却機能は、
上記した、樹脂分の熱による可塑化()と固化・硬化
()を制御する。そして、平板を上下動させ、機械的
圧力を与えることにより樹脂分の流動・賦形()を制
御することができる。これらの機能により熱可塑性樹
脂、熱硬化性樹脂を含む平板状製品の成型が行われてい
る。
前述の成型における3段階は密接な関わり合いを持
ち、製品品質に大きく影響する。即ち、樹脂分の加熱が
不適切あるいは不均一であると、良好な樹脂の可塑化
(粘度低下)を得ることができない。また、樹脂の可塑
化が不良であったり、成型機に与える圧力が不適切・不
均一であったりしても、所望の樹脂流動や賦形を得るこ
とができず、例えば寸法不良、成型材間の空隙の残留
(いわゆるボイド)による機械的強度の低下などさまざ
まな成型不良が発生する。
また、成型物の加熱、冷却が不適切・不均一であれ
ば、成型材の望ましい個化、硬化は得られない。これ
は、成型材の熱履歴が不適切となって、成型材の結晶化
や硬化反応が不適当となるためで、その結果、成型体は
引っ張り強度などにおいて所望の物性を実現することが
できず、成型不良となる。
従って、良質の成型体を得るには、成型材に与える熱
と圧力の十分な管理を行うよう、適切な成型条件にプロ
グラム設定することが重要である。
しかしながら、今日の平板プレス機では、良質の平板
状成型体が得られないことも多い。これは、プレス機の
平板の精度が不十分であったり、加圧状態でのプレス機
の平板の撓み発生、成型材の厚みのバラツキに起因する
不均一な加圧などが原因となっている。さらに、温度制
御の精度不足による不均一な加熱や冷却も、成型不良の
原因となる。だが、現在の技術では、平板プレス機側か
らの対応だけでこれらの問題を解決することは不可能で
ある。
そこで、この問題を解決するために、プレス機の平板
と成型材の間に繊維集合体からなる耐熱材を介装し、熱
や圧力の緩衝材とする方法が用いられる。この耐熱性繊
維集合体を利用すると、次のような重要効果が生じる。
(a)成型材に与える圧力の均一化 これは、繊維集合体の圧縮弾性率が小さいこと、即
ち、繊維集合体が圧縮された場合、比較的小さな力で変
形する性質から得られる効果である。これにより、先に
示した平板の凹凸、撓み、成型材の厚みのばらつきによ
る圧力のばらつきを均一化し、成型不良の発生を抑える
効果が得られる。
(b)成型材に与える熱の制御と均一化 これは、繊維集合体が空隙を多く含み、断熱性が高い
ことによる効果であり、プレス機からの熱を制御し、プ
レス機側平板内部の熱源からの距離の差による温度の不
均一な分布などを均一化し、成型不良の発生を抑える効
果が得られる。
従来、こうした目的の平板体成型用の緩衝材として各
種の繊維集合体が利用されてきたが、特に、クラフトペ
ーパーは歴史的に長い実績がある。クラフトペーパーの
長所は、比較的安価で、空隙を多く含み、上記(a)、
(b)の効果が十分得られることにある。
しかしながら、紙を構成する繊維は非常に短く、繊維
相互の結束が弱いため、一部繊維が作業中に結束が解か
れ、空気中を浮遊することがある。この浮遊繊維は、作
業環境を悪化するだけでなく、成型品を汚染して品質を
低下させる恐れがある。そして、紙を構成する繊維の長
さが非常に短いという特徴は、その製造技術面から見て
不可避であり、特に紙の地合い(重量分布)を良好にす
るには、比較的短い繊維で抄紙することが必要であると
いわれている。このため、湿式抄紙法を利用して形成さ
れた繊維集合体を平板成型に利用する限り、粉塵発生は
本質的に避けられない。
また、クラフト紙の原料である木材パルプは、安価で
大量に入手できる点で優れている。しかし、木材パルプ
を構成するセルロース分は、熱に対する安定性が悪く、
140℃以上で分解を始め、水分の存在する条件下ではさ
らに低い温度で分解が開始する。すなわち、クラフト紙
を利用して平板プレス機で平板体を成型すると、多かれ
少なかれ紙は熱による分解を受ける。このため、クラフ
ト紙は反復使用するに従い脆化し、粉塵を発生しやすく
なる欠点があり、繰り返し利用に不向きである。
従って、平板体を工業的に大量生産するには、大量の
紙を在庫する必要があり、そのためのスペース確保が必
要となる。また、原料のセルロースは親水性が強く、紙
の保管条件により、その含水量が大きく変化する。
このため、紙の昇温特性も変化しやすく、場合によっ
ては、樹脂分の加熱・可塑化(前述)の再現性に影響
を与える。これを避けるため、紙の保管場所の空気調和
を図る必要がある。さらに、この用途に利用される紙は
秤量が190g/m2程度と低く、単独では十分な緩衝効果を
得ることができない。このため通常、クラフト紙を十数
枚重ねて平板プレス機に積載せねばならず、この作業に
大きな手間がかかる。
このように、クラフト紙を平板成型に利用する場合は
管理面や作業性の面で難点があり、決して満足できるも
のではなかった。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記クラスフト紙のほかに、無機繊維混抄合成紙積層
体が利用される場合がある。これは、無機繊維を多く利
用しているため熱安定性に優れ、反復使用が可能であ
る。また、無機繊維は吸湿量が低いため、保管時に空気
調和する必要もない。さらに、一体物であるため作業性
も良いという長所を持っている。
しかしながら、この無機繊維混抄合成紙積層体も抄造
法で製造されるため、繊維長を短くせざるを得ず、繊維
相互の拘束力が弱いという特性を持つことは避けられな
い。このため、粉塵が発生しやすい本質的な欠点を有す
る。また、無機物質が主原料であるため柔軟性に欠け
る。これは、繊維長が短い点と相まって繊維集合体とし
ては脆いものとなる。
こうした無機繊維混抄合成紙積層体を平板プレス機に
積載する際、該積層体とプレス機の衝突が頻繁に発生す
る。無機繊維混抄合成紙積層体は脆いためひび割れや欠
けが発生し、熱と圧力の均一化が得られないなどの不具
合を引き起こす。これらの傾向は使用回数が増えるにつ
れ顕著となり、耐久性に劣る。これらの問題のうち、粉
塵の発生を抑える考案(実開昭61−61839)も見られる
が、未だ充分とは言えない。
また、強化ゴムと不織布の積層体も平板体の成型に利
用されている。しかしながら、ゴム部が空隙を含まない
ために重く、平板プレス機に積載する際の作業性に難が
ある。また、熱と圧力によるゴム部の劣化が激しく、成
型に高い温度を必要とする場合には、使用されていな
い。さらに、その構造が複雑であるため、製造工程も複
雑になる。不織布製造工程、強化ゴムシート成型工程、
不織布と強化ゴムシートの一体化工程が必要となり、生
産性に劣るばかりか多くの製造設備を必要とする。
これに対し、不織布単独でこの用途に対応できる繊維
集合体を得ようとする考案(実開昭53−263861号)が見
られる。しかしながら、この考案の請求の範囲に基づく
繊維集合体ではこの用途に耐えるものは得られない。繊
維集合体の素材と機能の関係が具体的に示されておら
ず、あらゆる無機および有機繊維をその素材としてい
る。
しかし、通常、無機繊維には捲縮がないため、この考
案のなかの不織布製造方法に関する記述に示されたよう
な無機繊維からなるシート状の繊維塊を作成する事は、
甚だ困難である。さらに、ニードリングによりウエッブ
同士を一体化する場合、繊維間の拘束力が弱く、充分な
形態保持性を備えた繊維集合体は得られない。また、こ
の考案で望ましい素材として挙げられている有機繊維か
らは、この用途に耐える繊維集合体は得られない。これ
は、この考案中に示された有機繊維のガラス転移温度や
分解開始温度が低いためで、これらの素材から成る繊維
集合体は、実際の平板成型のための熱と圧力を受けた場
合、永久圧縮変形を受け、繊維集合体に含まれる空隙が
減少し、圧縮変形する際の弾性率が著しく向上し、成型
体にボイド等の成型不良が発生する。また、繊維が熱分
解を受けるため脆化して反復使用できない。これらの問
題点から、この考案に基づく繊維集合体は実際には利用
されていない。
実開昭57−121526、同57−121527には、平板成型用に
繊維集合体の表面層に芳香族ポリアミド繊維を用いた考
案が見られる。芳香族ポリアミド繊維は熱安定性に優れ
ており、この用途に適した素材である。しかし、これら
考案の内容を見ると、芳香族ポリアミド繊維と芳香族ポ
リアミド繊維より溶融温度の低い熱可塑性繊維(ナイロ
ン、ポリエステル等)を一体化した後、低融点繊維を熱
溶融させるとともに機械的に圧縮することにより、芳香
族ポリアミド繊維層と低融点繊維層をより強固に固着
し、両者の剥離、脱毛等の問題を解決できると述べてい
る。しかしながら、本願発明者らがこの点について検討
したところ、耐剥離性等の耐久性は確かに向上するもの
の、これとは別の問題が発生することが判明した。
これらの考案では、低融点繊維にもある程度の耐熱性
が必要なため、その望ましい素材として66ナイロンやポ
リエステルを挙げている。これら素材の融点は250〜260
℃であり、熱溶融させるには最低でもこれ以上の温度を
必要とする。事実、この考案の説明でも375〜415℃の温
度で圧力を加える必要があると述べている。しかしなが
ら、このような高温条件で処理された場合、実際には低
融点繊維分のみならず、芳香族ポリアミド繊維層も永久
変形を発生し、さらに熱分解をも受けてしまう。このよ
うに、永久的な圧縮変形が発生すると、繊維集合体に含
まれる空隙が減少し、圧縮変形する際の弾性率も極端に
高いものとなり、繊維集合体の耐久性よりも重要な要素
である加圧や加熱の均一化の効果が得られない。こうし
た重大欠陥を持つため、これらの考案にもとづく繊維集
合体では良好な平板状成型体を得ることはできず、実際
に平板成型に利用された例も見られない。
また、実開昭58−7648にも、芳香族ポリアミド繊維を
利用した平板体成型用シート状物質に関する考案が見ら
れる。この考案は、繊維集合体の表面に、四フッ化エチ
レン−エチレン共重合体または、六フッ化プロピレン−
エチレン共重合体からなるフィルムを熱融着させ、耐久
性のある被覆層を形成し、平板体を成型する際、成型体
との離型性を向上させる事を特徴とする考案である。と
ころが、この場合、以下の問題点が発生する。
四フッ化エチレン−エチレン共重合体の融点は約270
℃、六フッ化プロピレン−エチレン共重合体の融点は約
295℃である。従って、フッ素樹脂からなるフィルムを
他者に熱融着させるには最低でもフッ素フィルムの融点
以上の温度条件下で加圧する必要がある。しかし、この
ような高温域、あるいはこの温度域のやや下で加圧した
場合も、基材である芳香族ポリアミド繊維からなる不織
布に影響が現れる。
即ち、実施例に見られるように、四フッ化エチレン−
エチレン共重合体フィルム(商品名アフレックス)と芳
香族ポリアミド繊維(商品名コーネックス)からなる不
織布を重ね、 ・温度=280℃ ・圧力=10kg/cm2 ・時間=2分間 の条件で圧縮すると、不織布量は熱による可塑性によっ
て永久変形を生じ、平板体を成型する場合、圧縮変形す
る際の弾性率が極端に高くなって、成型圧力の均一化効
果を充分に得ることができなくなる。このため、このシ
ート状物質を利用して平板体の成型を試みても、ボイド
等の成型不良が発生する。
また、この考案(実開昭58−7648)に別に示されてい
る「成型直後のフッ素フィルムと芳香族ポリアミド繊維
からなる不織布をラミネートする」方法でも不織布側に
永久変形が生じるばかりか、フィルム成型直後にラミネ
ート加工しなければならないという製造上の制約のた
め、生産性、製造設備面での問題も生じる。こうした問
題からこの考案にもとづくシート状物質も実際には利用
されていない。
この発明は上記の点に鑑み、高分子物質の軟化、溶
融、硬化を伴う平板体の成型において、加圧力の均一化
と加熱の均一化を実現して良好な成型体を与えることが
でき、しかも優れた耐久性を備えた耐熱性繊維集合体及
びその複合体を提供することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成するため、この発明は、溶融温度と
分解開始温度が200℃以上の繊維からなるウエッブ及び
基布を、所定のかさ高性を実現する密度にて積層一体化
し、かつ前記基布が重量分率で全体の35%以下であり、
前記ウエッブの60%以上を、130℃以上でガラス転移現
象を呈する繊維状物質で構成し、しかも該繊維状物質の
主要繊維成分を、所定の外部構造特性、捲縮特性、及び
強伸度特性を有する繊維で構成し、適度なクッション
性、熱・圧力の均一化、耐へたり性の向上などを実現で
きるようにしたものである。
また、前記主要繊維成分が、 繊度=1.0〜13.5d 引張切断強度=3〜10gf/d 引張弾性率=400〜1800kg/mm2 であり、かつ 捲縮数=5〜20ヶ/インチ 捲縮率=5〜25% 捲縮残留率=5〜25% のいずれかを満たすようにして、その強度とクッション
性をより望ましいものにできる。
さらに、前記かさ高性を実現する密度は、 0.1〜0.5g/cm3 の範囲がより望ましい。
尚、この耐熱繊維集合体に、高分子フィルム、ゴムシ
ート等のシート状体を積層一体化し複合体としてもよ
い。また、上記耐熱性繊維集合体及びその複合体を、前
記主要繊維成分や混合繊維成分のガラス転移温度以下で
機械的圧力を加え、圧縮してもよい。
このような構成の耐熱性繊維集合体により、前述し
た、圧力の均一化(a)と熱の制御と均一化(b)を実
現し、かつ耐久性に優れた繊維集合体及び複合体を提供
できるようにしたものである。
<繊維集合体が備えるべき特性> 前述のように、平板体成型用繊維集合体の基本的な役
割は、平板プレス機から成型材へ与えられる熱の制御及
び熱と圧力の均一化(前述a、b)である。この基本的
役割を果たすため、繊維集合体が備えるべき特性として
以下の14項目を挙げることができる。
(ア)適度な熱移動特性 この性質は平板プレス機からの熱を制御し、均一化す
るために必要な性質である。熱移動速度が大きすぎる
と、熱を均一化する能力が不十分となる。逆に小さすぎ
ると熱源からの熱による樹脂の可塑化、硬化の応答が鈍
くなり、その制御が困難となる。また、繊維集合体自身
が熱による分解、発熱、吸熱現象を発生しても、樹脂の
可塑化、硬化の制御が困難となる。
(イ)圧縮変形する際の弾性率が低いこと この性質は平板からの圧力を均一化するために必要な
性質である。平板の撓み、成型材の厚みむらを、繊維集
合体が、圧縮歪みのむらとして受け入れる。その際、繊
維集合体に圧縮歪みに反発する応力が発生する。
ここで、繊維集合体の弾性率が高ければ、歪み量の変
化による応力の変化は敏感となり、歪みのむらは大きな
応力のむらを発生する。逆に、弾性率が低ければ、歪み
量の変化による応力の変化が鈍くなり、歪みむらはより
小さな応力のむらとなる。つまり、平板からの圧力のむ
らをより均一化することができる。即ち、変形しにくい
プレス機の平板に代わり、繊維集合体が変形し、圧力を
均一化させる働きをする。
<副次的特性> 以下、このほかの副次的な特性を列挙する。
(ウ)耐へたり性 この性質は、繊維集合体を反復利用する際、前述の
(ア)、(イ)の性質を繊維するために必要な性質であ
る。平板プレス機からの圧力により発生した繊維集合体
の圧縮歪みを回復することにより、再び圧力を受ける時
に圧力むらを均一化する十分な変形量が確保できるから
である。反復圧縮を受けた後にも、繊維集合体が初期の
かさを密度を繊維する性質(耐へたり性)を備えて、初
めて反復使用が可能となる。クラフトペーパーのような
使い捨て型の繊維集合体には、耐へたり性は必要ない。
しかし、この場合、大量のクラフトペーパーを在庫せね
ばならず、実用上の大きな欠点となる。
(エ)非汚染性、疎水性 非汚染性とは、平板体を成型する際、粉塵等で成型体
を汚染しない性質のことである。前述したように湿式抄
紙法で製造される繊維集合体は、その繊維長が短いため
粉塵を発生しやすく、成型体を汚染しやすいなどの欠点
を持つ。また、繊維集合体が帯電して空気中の粉塵を吸
着し、その一部が成型体を汚染する場合もある。
また、クラフトペーパーのように親水性の強い繊維集
合体は、含水率が変動しやすい。これを避けるため、 ・疎水性の強い素材を多く利用する。
・繊維集合体にフィルムを貼る。
・シリコン樹脂などで繊維集合体を撥水加工する。
などの対策が必要となる。
(オ)形態保持性 この性質は、繊維集合体を反復利用する上で、割れ、
欠け、剥離、伸び縮みを抑え、より長期の使用を可能と
する性質である。前述のように無機繊維混抄合成紙は脆
く、割れ・欠けが発生しやすい。また、繊維集合体が熱
分解により脆化しない事も必要である。さらに、平板体
の成型を終了し、平板プレス機から成型体をとり出す
時、成型体と繊維集合体との離型性が悪いと、これを無
理にはがすことにより、繊維集合体の繊維の一部が脱毛
剥離し、繊維集合体の再利用が不可能となることがあ
る。
(カ)良好な作業性 繊維集合体からなる耐熱クッション材は、平板プレス
機への積載が容易であることが望ましい。即ち、繊維集
合体は軽く、一体物である事が望ましい。理想的な平板
体成型用耐熱性繊維集合体は、(ウ)〜(カ)の特性を
全て備える必要がある。
<素材面の条件> 次に、望ましい平板体成型用耐熱性繊維集合体を得る
ための素材面の条件を挙げる。
(キ)熱による分解、溶融などを起こしにくいこと 反復使用につれて、繊維集合体の素材が分解・溶融す
ると、その熱移動特性(分解、溶融などによる発熱や吸
熱)や力学的特性(加圧時の変形量等)が変化し、成型
体の品質がばらつくことになる。また、繊維集合体の熱
分解による有毒ガスや粉塵の発生等による作業環境の悪
化、成型体の品質低下などきたす。
本願発明者らの研究では、こうした問題の発生を防ぐ
には、繊維集合体の製造工程で受ける熱、及び平板体成
型の際に繰り返し受ける熱に安定であるべきであり、具
体的には、溶融温度と分解開始温度が最低でも200℃以
上である事が必要である。ウエッブ(シート状繊維塊)
と基布の固着を強化するために樹脂加工する場合(ある
いは制電性、撥水性など種々の機能を付与する場合
も)、樹脂の溶融・分解開始温度は200℃以上でなけれ
ばならない。
(カ)ガラス転移温度が高い繊維を主体とすること この条件は、前述の耐へたり性(ウ)、を得るうえで
必要な条件である。ガラス転移温度の高い素材を利用す
ることにより、繊維集合体の可塑化による永久変形や、
圧縮変形する際の弾性率の著しい上昇を防ぐことができ
る。この用途に使用される繊維集合体を構成する素材の
条件として、平板成型時の最高温度よりも高い温度でガ
ラス転移現象を示す繊維状物質を含むことが必要であ
る。平板成型の温度条件は成型材の材質などにより異な
るが、最低でも130℃以上の温度で成型される。硬化温
度が130℃以下の樹脂は、硬化するに必要な時間が長
く、生産性が悪いため、平板プレス機で工業的に大量製
造する場合には、成型材として採用されることはない。
このため、この用途に利用される繊維集合体は、130℃
以上の高温域でガラス転移現象を示す繊維状物質を含む
事が必要である。繊維状物質のガラス転移温度が高いほ
ど、より高い温度で繊維集合体を利用できる。
本願発明者らの研究では、この用途に利用される繊維
集合体は、そのウエッブ部分に130℃以上でガラス転移
現象を示す繊維状物質を含むことが望ましく、より具体
的には、重量分率にして、全体の60%以上含む事が望ま
しいという結果を得た。ウエッブ部分に130℃未満の低
い温度でガラス転移現象を示す繊維状物質が含まれ、こ
の成分が塑性変形した場合でも、共存する高いガラス転
移点を持つ繊維成分が圧縮歪みを回復するため、繊維集
合体全体としては大きなへたりを生じない。また、ガラ
ス転移温度の低い繊維を混紡することにより、ガラス転
移温度の高い繊維のみでは得られない機能を備えること
ができる。例えば、導電性を付与したナイロン系、ポリ
エステル系、アクリル系繊維などを混紡し、繊維集合体
が帯電しにくい性質(制電性)を与え、大気中の粉塵が
帯電して繊維集合体や成型材に付着し、成型体を汚染す
る現象を抑止することもできる。
また、複合紡糸された繊維を混紡し、その中の低融点
成分(但し融点は200℃以上)を溶融し、繊維間の凝縮
力を向上させ、繊維集合体の形態保持性等を向上する効
果も得ることができる。しかし、ガラス転移温度の低い
成分の割合が増大すると、良好な圧縮歪みの回復は得ら
れない。また、成型を終了し、成型体を平板プレス機か
ら降ろす際、繊維集合体と成型体の離型性が悪化すると
いう問題も生じる。これは、ガラス転移温度の低い繊維
が熱と圧力により断面形状が変化し、成型体等と接触す
る面積が増加するためと考えられる。この意味からも、
ガラス転移温度の低い繊維の割合が過大となることは好
ましくない。
(ケ)かさ高いこと この条件は、繊維集合体がかさ高ければ、圧縮変形を
受けた後も歪みをよく回復し、空隙を多く含むことによ
り、前述(イ)の性質である圧縮変形時の低い弾性率を
得るための条件であり、重要である。ところで、繊維の
かさ高性・歪み回復性は、繊維の曲げモーメントと捲縮
特性が影響する。試料断面が円形の場合、曲げモーメン
トは次式で表される。
M :曲げモーメント(試料を曲率半径γに曲げた時発
生するもの) E :引っ張り弾性率 d :試料断面の半径 γ :曲率半径 上式からもわかる通り、繊維を一定の曲率半径に変形
させた場合、曲げモーメントは、繊維径と繊維の引っ張
り弾性率に依存する。そこで、本願発明者らは、平板体
成型用繊維集合体の素材として望ましい繊維径と引っ張
り弾性率について検討した(繊維の径を表記する場合、
繊度を用いる場合が多いので、以下の記述ではこれに従
った)。
この結果、 ・繊度=1.0〜13.5〔d〕 ・引っ張り弾性率=400〜1,800〔kg/mm2〕 の範囲内にある場合、良好なかさ高性、及び歪み回復性
を示すことが明らかとなった。これは次の理由による。
一定の曲率で繊維を変形した場合、繊維径が増大すれ
ば、繊維の外層に与えられる歪みが増大し、変形に反発
する力も当然増大して歪みが回復しやすくなる。しか
し、繊維径が過度に大きいと、繊維の外層に与えられる
歪みが繊維の弾性限界を超えて塑性変形し、歪みを回復
する性質が減退してしまう。また引っ張り弾性率の増加
に伴い、変形に反発する力も増大する。しかし、引っ張
り弾性率の高い繊維は、内部構造として、高結晶化度、
高配向性の構造をとる。高結晶、高配向性の繊維は繰り
返し変形を受けると疲労しやすく、繊維集合体として反
復圧縮を受けた場合、徐々に歪みの回復性が弱くなる。
この結果、前述の熱移動特性(ア)と圧縮変形する際の
弾性率(イ)の変化も大きく、得られた成型体の品質も
ばらつきが大きいものとなる。このため繊維の引っ張り
弾性率が過度に大きい事も望ましくない。
また、本願発明者らは、捲縮特性とかさ高性の関連に
ついても研究・検討した(一般に、繊維の捲縮特性は、
捲縮数、捲縮率、捲縮残留率などの値から総合的に評価
する場合が多いため、これに従う)。その結果、平板成
型用繊維集合体の素材として望ましい繊維は、 ・捲縮数=5〜20ヶ/インチ ・捲縮率=5〜25% ・捲縮残留率=5〜25% のいずれかの範囲にあることが好適であることが分かっ
た。
本願発明者らの実験では、捲縮特性が上記条件の下限
に満たない場合、所定のかさ高さを有する繊維集合体を
得ることが著しく困難となる。一方、繊維に捲縮を付与
する際、上記条件の上限を越えるような過度に強い捲縮
を与えてしまうと、繊維の強伸度特性を損なう場合が多
く、これも望ましくない。
(コ)適当な強伸度特性を持つ繊維であること この条件は、前出条件「かさ高いこと」(ケ)が持つ
意味と重なる部分もあるが、繊維集合体を製造する際の
加工性に与える影響に鑑み、130℃以上でガラス転移現
象を示す繊維の強度が3gf/d以上であることが望まし
い。特に、基布部分とウエッブ部分を一体化する手法と
してニードリングを利用する場合、強度が小さい繊維の
損傷が多くなり、脱毛を生じやすい。一方、強度が大き
いと、繊維の内部構造が高結晶、高配向となり疲労しや
すい。このため、130℃以上でガラス転移現象を示す繊
維は、3〜10gf/dの強度を持つことが望ましい。
即ち、130℃以上でガラス転移現象を示す繊維のうち
主要繊維成分が、 繊度=1.0〜13.5d 引張切断強度=3〜10gf/d 引張弾性率=400〜1800kg/mm2 なる外部構造特性と強伸度特性を備え、かつ 捲縮数=5〜20ヶ/インチ 捲縮率=5〜25% 捲縮残留率=5〜25% のいずれかを満たすようであれば、上に示した理由でか
さ高く、歪みの回復にも優れることが明らかである。
この繊維成分は、単独の繊維で構成される必要はな
く、複数の繊維、または外部構造構造特性、強伸度特
性、捲縮特性などの異なる繊維成分を複合してウエッブ
を構成してもよい。
だが、本願発明者らがさらに検討したところ、ガラス
転移温度が高く、かさ高い繊維からなる繊維集合体は、
変形に反発する性質が強いがゆえに毛羽を発生しやすい
欠点があることが明らかとなった。繊維集合体の表面に
毛羽が多いと、他の物体との摩擦による毛羽の切断・滑
脱を誘発し、成型体を汚染してその品質を低下させる。
本願発明者らは、この毛羽発生を避ける効果的方法と
して、130℃以上でガラス転移現象を示し、かつ前記外
部構造構造特性、強伸度特性、捲縮特性の範囲外にある
ような特性を有する繊維成分を繊維集合体の内部または
表面に一部混合する方法を見いだした。
即ち、該繊維成分をウエッブに混入するか、あるいは
繊維集合体の表面層に集中的に配置し、一体化するので
ある。これにより、繊維集合体表面の毛羽を抑えること
ができる。また、ガラス転移温度の高い繊維成分をウエ
ッブに混合することにより、繊維集合体と成型体の離型
性の悪化防止を図ることもできる。
また、繊維集合体表面の毛羽を抑えるために、繊維集
合体の表面を毛焼きしてもよい。ただし、この場合、ウ
エッブの主要繊維成分及び混合繊維成分のガラス転移温
度以上の温度にさらされる部位が生じるため、この部分
に機械的圧力を加えると繊維集合体が永久変形してしま
う恐れがある。このため、毛焼きする際にローラなどで
機械的圧力を与えることは避けねばならない。
従来の考案(実開昭57−121526、実開昭57−121527)
では、この点に関する検討がなされておらず、ガラス転
移温度、分解開始温度以上の温度にて繊維集合体に機械
的圧力を与えるため、繊維集合体が永久変形、熱分解を
生じる。この結果、平板体を成型する際、熱板の歪みな
どを緩衝する作用が十分得られず、成型体にボイドが発
生する等の成型不良が生じる。
(サ)適当な繊維長を持つ繊維であること この条件は、前出の湿式抄造法による繊維集合体のよ
うに、繊維長の短い繊維で構成された繊維集合体の場
合、繊維間の拘束力が弱いために粉塵が発生し、成型体
を汚染する恐れを避ける意味がある。また、繊維集合体
を製造する際の加工性の面、例えばカーディングマシン
などを利用してウエッブを作成する際に繊維長が極端に
短いか、極端に長い繊維は不適当である。この場合は、
ウエッブ部分を構成する繊維の繊維長は30〜160mmの範
囲内にある事が望ましい。但し、長繊維からウエッブを
作成する装置を利用する場合にはこの限りでない。
本願平板体成型用耐熱繊維集合体として望ましい素材
は、例えば、前述のウエッブの主要繊維成分及び混合繊
維成分として、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイ
ミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリエステルなどから
なる繊維を、単独もしくは複数の種類を合わせて利用す
る場合を挙げることができる。また、前述の溶融または
分解開始温度が200℃以上で、ガラス転移温度が130℃以
下の繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト、ナイロン6、ナイロン66等からなる繊維を挙げるこ
とがきる。さらに前述した通り、制電性を付与した繊
維、複合紡糸した繊維などを利用してもよい。繊維集合
体を樹脂加工する場合、望ましい素材として、エポキシ
樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
<構造的条件> 以下、望ましい平板体成型用耐熱繊維集合体の構造面
の条件を次に示す。
(シ)基布部分の重量分率が35%以下であること この条件は、平板成型用繊維集合体は縦横の寸法変化
が小さい事が望ましいことと関係する。
繊維集合体を繰り返し利用する際、繊維集合体が縦横
の寸法変化を生じると、繊維集合体の厚み、密度等が変
化し、前述した ・適度な熱移動特性(ア) ・圧縮変形する際の弾性率が低いこと(イ) の性質が変化し、得られる成型体の品質が安定しない。
この問題を避けるため繊維集合体に基布を利用し、形態
保持性を向上(寸法変化減少)させる必要がある。基布
は、繊維が縦横に強く配向しているため、この方法の強
度、弾性率が非常に大きい。このため、基布も強度およ
び弾性率が高く、熱に対して安定で、繊維集合体の製造
工程や平板体成型の際に受ける熱により、溶融、分解し
ないことが必要である。ガラス転移温度が高く、熱と力
を同時に受けても伸び、縮みの量が小さい事が望まし
い。
本願発明者らが検討した結果、 ・標準状態での基布の縦方向と横方向の強力が、50kg/5
cm、 ・5%伸度時強力10kg/5cm以上 で、さらに、200゜以下では溶融も分解も起こさない素
材のみから構成されていることが必要で、加えて、130
℃以上でガラス転移現象を示す繊維状物質を素材とする
ことが望ましい。しかし、基布は、空隙が少ないため圧
縮変形し難く、成型圧力を均一化する効果は少ない、逆
に織目マークにより圧力を不均一化する傾向がある。ま
た基布は、原綿に比べ加工度が高いため、繊維集合体に
基布を多く利用すると製造コストが高くなる。この点か
らも基布を多く利用する事は好ましくない。このため、
基布部分の重量比率は繊維集合体全体に対し35%以下で
ある事が望ましく、さらに好ましくは2〜20%の範囲内
とすべきである。尚、この範囲内であれば、繊維集合体
に含まれる基布層の数は任意である(第2、4、5
図)。
(ス)基布とウエッブの一体化を終了した段階での繊維
集合体のかさ密度が0.1〜0.5g/cm2であること この条件について述べる。本願発明の繊維集合体のウ
エッブ部分の素材は、ガラス転移温度が高く、かさ高い
繊維状物質を主体とするため、圧縮変形を受けても歪み
を良く回復する性質を持つ。この素材の性質を保持した
まま繊維集合体へと加工する事が次の問題となる。ウエ
ッブと基布から繊維集合体を得るためには、両者を一体
化する必要がある。
この一体化の方法は、ニードリング、樹脂加工、また
はニードリングと樹脂加工の併用のいずれかの方法が望
ましい。これは、これらの方法が比較的秤量の大きい繊
維集合体を加工でき、一体化した後の繊維集合体の物性
を制御する事が容易なためである。これらの手法を活用
して繊維集合体を製造する際、注意しなければならない
点は、先述のように、素材の持つかさ高性や歪み回復性
を損なう事なく、強い繊維間拘束力を与える点にある。
このため、ウエッブと基布を一体化する際、得られる
繊維集合体のかさ密度に注目する必要がある。即ち、ニ
ードリングによりウエッブと基布を一体化する場合、基
布の上に重ねられたシート状のウエッブは、各々の繊維
が多くの他の繊維と接触し、その摩擦力による弱い繊維
間の拘束力(凝集力)で結ばれている。この状態のウエ
ッブに、上方から下方に配向した多数の針を鉛直に下降
させて、ウエッブ、基布層を刺し貫く。この時、針に設
けられた下向きの爪(バーブ)がウエッブの上層の繊維
の一部をくわえ、下方にひきずりこむ。この作用によ
り、表層部と内層部の繊維や基布が交絡し、これらの間
により強い拘束力が発生する。
この時、爪にくわえられた繊維は周囲の他の繊維との
摩擦力により、下方にひきずり込まれる力に抵抗しつ
つ、周囲の繊維とともに、ウエッブ部分の占める体積が
減少する。つまり、繊維間の交絡の増加と、ウエッブの
体積の減少が同時に発生するのである。そして、このウ
エッブが占める体積の減少は、永久に回復されることが
ない。また、爪(バーブ)にくわえられた繊維は、下方
へひきずり込む力と、それに対する周囲からの摩擦力に
より伸長され塑性変形を生じ、持っていた捲縮を消失し
てしまう。
これらの現象は現在の技術では避けることができな
い。つまり、繊維間の交絡が増加するに従い、ウエッブ
の本来のかさ高性や歪み回復性を失うことになる。この
ため、ニードリングによってウエッブと基布を一体化す
る場合は、繊維間の拘束力と、かさ高性、歪み回復性を
妥協する範囲内にとどめる必要がある。また樹脂加工に
よる一体化、針刺しと樹脂加工を併用した方法による一
体化の場合でも同様で、樹脂の付着量が少なければ繊維
間の拘束力が不足し、逆に、樹脂の付着量が多ければ繊
維間の空隙を樹脂が埋めることにより、繊維集合体に含
まれる空隙が減少し、繊維集合体が圧縮変形する際の弾
性率が増大するという問題が発生する。このほか、制電
性など種々の機能を付与するための樹脂加工についても
同様なことがいえる。
本願発明者らの研究では、ウエッブと基布の一体化を
終了した段階での繊維集合体のかさ密度は、 0.1〜0.5〔g/cm3〕 なる範囲内にあることが望ましい。この範囲未満の場合
は、繊維間の拘束力が弱いため脱毛が多く、成型体を汚
染する。また、上記の範囲を上回る場合は、成型体に対
する圧力の均一化効果が得られない。これは前述の通り
である。
(セ)繊維集合体が一体品であり、目付けが500〜5,000
g/m2であること この条件は、前述のように、クラフトペーパーのよう
な薄い繊維集合体を数枚から数十枚重ねて使用する場
合、また繊維集合体があまりに多い場合、繊維集合体を
平板プレス機に積載する際の作業性が良くない。この種
の問題を避けるため、繊維集合体は軽い一体品とすべき
である。しかし、繊維集合体の目付け(平方メートル当
たりの重量)があまりに軽いと、前述の ・成型材に与える圧力の均一化(a) ・成型材に与える熱の制御と均一化(b) の効果が十分に得られない。このため、繊維集合体の目
付けは 500〜5000g/m2 の範囲内にあることが望ましい。
これまでに挙げた条件を全て満たして得られた繊維集
合体を利用した場合、良好な平板状成型体を得ることが
できる。
また上記の条件以外に、以下のような条件を備えても
よい。
例えば、上記(キ)〜(セ)の条件を全て満たす繊維
集合体の表面にフィルム、ゴムシート、酸化ゴムシー
ト、樹脂板、強化樹脂板、金属板などのシート状物質を
積層接着し、成型体との離型性を改良してもよい。シー
ト状物質の材質は、成型時の最高温度より高い温度でガ
ラス転移現象を示す。または、フッ素系樹脂からなるフ
ィルムを固着すると離型性の改善に効果がある。固着の
方法は、前述主要繊維及び副次繊維成分のガラス転移温
度以上で、加圧する方法(熱融着など)は避けるべき
で、ガラス転移温度以下の温度で加圧し、熱融着する方
法や、接着剤層を介してシート状物質と繊維集合体を接
着する方法が望ましい。加熱、加圧する方法は、平板プ
レスあるいは熱ロールプレスによる方法でよい。
ニードリングのみによる繊維集合体の高密度化は、一
部の繊維に負荷が集中し、その捲縮が消失するため、得
られる繊維集合体の圧縮歪みの回復性は良くない。しか
し、平板プレス、熱ロールプレス等による繊維集合体の
高密度化では、負荷が繊維集合体または複合体全体に分
散するため繊維の捲縮が消失せず、得られる繊維集合体
または複合体の圧縮歪みの回復性は良好である。ただ
し、ニードリングなしで平板プレス、熱ロールプレスの
みによって高密度化すると、繊維間の交絡は発生しない
ため、繊維集合体または複合体の一体化はできない。こ
のような方法で繊維集合体または複合体を高密度化する
ことにより、繊維集合体または複合体を平板成型に反復
利用する際の初期の繊維集合体または複合体の厚み変化
(へたり)の絶対量をより小さいものにすることができ
る。
(実施例) 上記のような条件を満たす耐熱性繊維集合体と、上記
条件を満たさない耐熱性繊維集合体を各々2種類製作
し、その性能比較を行った。
以下、この発明を添付図面に示す一実施例に基づいて
説明する。
第1図は本願耐熱性繊維集合体の構成を示す断面図、
第2図は表面シート状物質を設け、離型性を改善した複
合体の断面図、第3図は2層の織布層を含む繊維集合体
の断面図、第4図は基布と一体化された繊維層が、複数
種の繊維が混合されてなる繊維集合体の断面図、第5図
は実験例2と同様に、繊維集合体に内層のウエッブ部分
とは異なる物性を持つ繊維からなる表面層を設けた例の
断面図、第6図は本願耐熱性繊維集合体の2つの実施例
と2つの比較例における、繰り返し荷重に対する圧縮率
の変化を示す図である。
図において、1は織布からなる基布、Wは該基布1に
ニードリング接結するウエッブ、2、2′は該ウエッブ
Wの表面に形成した表面層(ないしはフィルム)であ
る。
(実施例1) 基布1は、 材質=芳香族ポリアミド繊維(商品名コーネックス) 組織=平織 目付け=100g/m2 なる条件の織布で構成する。
一方、ウエッブWは、130℃以上のガラス転移点を有
する繊維で、 材質=芳香族ポリアミド短繊維(商品名コーネクス) 繊度=5d 繊維長=76mm 強度=5gf/d 引っ張り弾性率=800kg/mm2 なる特性に加え、 捲縮数=10〜12ヶ/インチ 捲縮率=10〜15% 捲縮残留率=10〜15% のいずれかの捲縮性を持つ繊維をカーディングマシン及
びクロスラッパにより、 目付け=150g/m2 なるシート状ウエッブを構成する。
次に前記基布1上に、該ウエッブWを、 密度=220本/平方インチ にてニードリングで一体化し、さらに反転して、別のウ
エッブWをニードリングして繊維集合体を構成する。そ
して、この操作を繰り返すことにより、 目付け=3000g/m2 かさ密度=0.18g/cm3 厚み=16.5mm なる実施例1の耐熱性繊維集合体を構成した。
しかして、この耐熱性繊維集合体を、塩化ビニル板の
製造工程において反復使用した結果を第6図に示す。
但し、塩化ビニル板の成形条件は、 温度=180℃ 圧力=80kg/cm2 加熱時間=40分間 冷却時間=20分間 であった。
(実施例2) 芳香族ポリアミドからなる基布1は、 材質=芳香族ポリアミド短繊維(商品名コーネックス 組織=平織り 目付け=100g/m2 にて構成し、ウエッブWは、 材質=芳香族ポリアミド繊維(商品名コーネックス 繊度=5d 繊維長=76mm 強度=5g/d 引っ張り弾性率=800kg/mm2 なる特性に加え、 捲縮数10〜12ケ/インチ 捲縮度10〜15% 捲縮残留率10〜15% のいずれかの捲縮特性を有する繊維からなり、実施例1
と同様な方法で、 目付け=2700g/m2 かさ密度=0.18g/cm3 厚み=15.0mm なる繊維集合体を構成する。
さらに、 材質=芳香族ポリイ短繊維(商品名P−84) 繊度=3d 繊維長=60mm 強度=4gf/d 引っ張り弾性率=310kg/mm2 捲縮数=6〜14ヶ/インチ 捲縮率=10〜20% 捲縮残留率=10〜20% なる条件の繊維をカーディングマシン及びクロスラッパ
により、 目付け=150g/m2 なるシート状ウエッブを構成し、これを前記繊維集合体
の上面(2′)と下面(2)に重ねて、それぞれ、 密度=220本/平方インチ なる条件でニードリング接結して一体化する。
このようにして得られた繊維集合体を 温度=250℃ 圧力=30kg/cm2 時間=5分 なる条件で、平板プレス機にて圧縮し、実施例2の繊維
集合体を構成した。
そして、実施例1と同じ方法で評価した結果を第6図
に示す。
(比較例1) 実施例1と同じ基布上に、 材質=芳香族ポリアミド繊維(商品名コーネックス) 繊度=3d 繊維長=38mm 強度=1.0gf/d 引っ張り弾性率=200kg/mm2 捲縮数=10ヶ/インチ 捲縮率=13% 捲縮残留率=5% なる条件の繊維で構成した状ウエッブをニードリング
し、 目付け=3000g/m2 厚み=10mm 密度=0.3g/cm3 なる耐熱性繊維集合体を構成した(第4図)。ウエッブ
構成条件とニードリング条件は実施例1と同じである。
この繊維集合体を比較例1として実施例1、2の評価に
用いた(第6図)。
(比較例2) 実施例1と同じ基布上に、 材質=芳香族ポリアミド繊維(商品名コーネクス) 繊度=5d 繊維長=76mm 強度=5gf/d 引っ張り弾性率=800kg/mm2 捲縮数=10〜12ヶ/インチ 捲縮率=15〜20% 捲縮残留率=15〜20% なる条件の繊維と 材質=ポリアミド繊維(商品名レオナ66) 繊度=6d 繊維長=83mm 強度=9.0gf/d 引っ張り弾性率=400kg/mm2 であり、しかも 捲縮数=15ヶ/インチ 捲縮率=15% 捲縮残留率=15% のいずれかの条件を満たす繊維を 重量比=5:5 にて混合したウエッブを、前記基布にニードリングして
一体化し、 かさ密度=0.18g/cm3 厚み=16.5mm 目付け=3000g/m2 なる耐熱性繊維集合体を得た。
この繊維集合体を比較例2として実施例1で示した方
法で評価した。
この結果、第6図示のように、本願繊維集合体の実施
例1、2は、比較例1、2に比して、圧縮率が7〜8%
の範囲内で接続され、その反復安定性が格段に優れてい
ることが分かった。
実施例1、2の繊維集合体を利用した場合は、緩衝作
用が良好で、得られた成型体は成型不良がなく、反復数
400を越えても初期とほぼ同一の品質の成型体が得られ
た。これに対し、比較例1の繊維集合体では2回目から
緩衝作用の不足が認められ、成型体にボイド残留などの
成型不良が発生して使用に耐えなかった。また、比較例
2の繊維集合体を利用した場合は、反復数30回頃から成
型体にボイド残留が認められるようになり、使用に耐え
なかった。
〔発明の効果〕
上記のようにこの発明の耐熱性繊維集合体は、溶融温
度と分解開始温度が200℃以上の繊維からなるウエッブ
及び基布を、所定のかさ高性を実現する密度にて積層一
体化し、かつ前記基布が重量分率で全体の35%以下であ
り、前記ウエッブの60%以上を、130℃以上でガラス転
移現象を呈する繊維状物質で構成し、しかも該繊維状物
質の主要繊維成分を、所定の外部構造特性、捲縮特性、
及び強伸度特性を有する繊維で構成したことを特徴とし
ているので、適度な熱移動特性と圧縮時の低弾性を有し
ながら、へたりが無く、良好な耐久性とクッション性を
呈する耐熱性繊維集合体を実現することができる。
また、前記所定の捲縮と強度を有する繊維が、 繊度=1.0〜13.5d 引張切断強度=3〜10gf/d 引張弾性率=400〜1800kg/mm2 なる特性を備え、かつ 捲縮数=5〜20ヶ/インチ 捲縮率=5〜25% 捲縮残留率=5〜25% のいずれかを満たすようにすることで、耐久性とクッシ
ョン性をより確かなものにすることができる。
さらに、前記かさ高性を実現する密度が、 0.1〜0.5g/cm3 とすることにより、へたりが無く、より安定したクッシ
ョン性を実現することができる。
この結果、平板体成型工程における品質向上と作業性
の改善に寄与するところ大であり、ひいては生産性向上
をもたらすという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本願耐熱性繊維集合体の構成を示す断面図、第
2図は表面にシート状物質を設け、離型性を改善した複
合体の断面図、第3図は2層の織布層を含む繊維集合体
の断面図、第4図は基布と一体化された繊維層が、複数
種の繊維が混合されてなる繊維集合体の断面図、第5図
は実験例2と同様に、繊維集合体に内層のウエッブ部分
とは異なる物性を持つ繊維からなる表面層を設けた例の
断面図、第6図は本願耐熱性繊維集合体の2つの実施例
と2つの比較例における、繰り返し荷重に対する圧縮率
の変化を示す図である。 1……基布 2……表面層(下面) 2′……表面層(上面) W……ウエッブ

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶融温度と分解開始温度が200℃以上の繊
    維からなるウエッブ及び基布を、所定のかさ高性を実現
    する密度にて積層一体化し、かつ前記基布が重量分率で
    全体の35%以下であり、前記ウエッブの60%以上を、13
    0℃以上でガラス転移現象を呈する繊維状物質で構成
    し、しかも該繊維状物質の主要繊維成分を、所定の外部
    構造特性、捲縮特性、及び強伸度特性を有する繊維で構
    成したことを特徴とする耐熱性繊維集合体。
  2. 【請求項2】前記主要繊維成分が、 繊度=1.0〜13.5d 引張切断強度=3〜10gf/d 引張弾性率=400〜1800kg/mm2 なる外部構造特性と強伸度特性を備え、かつ 捲縮数=5〜20ヶ/インチ 捲縮率=5〜25% 捲縮残留率=5〜25% のいずれかを満たすものであり、しかも前記130℃以上
    でガラス転移現象を呈する繊維状物質のうち60%以上を
    占めるものである特許請求の範囲第1項記載の耐熱性繊
    維集合体。
  3. 【請求項3】前記かさ高性を実現する密度が、 0.1〜0.5g/cm3 である特許請求の範囲第1項または2項記載の耐熱性繊
    維集合体。
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