JP2877027B2 - アーク式蒸発源 - Google Patents

アーク式蒸発源

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JP2877027B2 JP7108251A JP10825195A JP2877027B2 JP 2877027 B2 JP2877027 B2 JP 2877027B2 JP 7108251 A JP7108251 A JP 7108251A JP 10825195 A JP10825195 A JP 10825195A JP 2877027 B2 JP2877027 B2 JP 2877027B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば基材(被処理
物)に陰極(カソード)物質を被着して薄膜を形成する
薄膜形成装置や、基材に対する陰極物質の被着とイオン
照射とを併用して薄膜を形成する薄膜形成装置等に用い
られるものであって、陰極におけるアーク放電を利用し
て陰極物質を蒸発させるアーク式蒸発源に関する。
【0002】
【先行技術】この種のアーク式蒸発源を用いて、バイア
ス電圧を印加した基材の表面に薄膜を形成する方法は、
アーク式イオンプレーティング法と呼ばれ、膜の密着
性、膜の生産性等に優れた薄膜形成方法である。この方
法を用いる薄膜形成装置(アークイオンプレーティング
装置)の一例を図10に示す。
【0003】図示しない真空ポンプによって真空排気口
18を経由して真空排気される真空容器16内に、基材
22を保持するホルダ20が設けられおり、このホルダ
20上の基材22に向くように、真空容器16の側面部
に従来のアーク式蒸発源10が取り付けられている。
【0004】アーク式蒸発源10は、所望の材料(例え
ば金属、合金、カーボン等)から成る陰極2、それを支
持するものであって非磁性材から成るフランジ6、その
後方近傍に配置された環状の永久磁石8を備えており、
絶縁物12を介して真空容器16に取り付けられてい
る。尚、トリガ電極も通常は備えているが、ここではそ
の図示を省略している(他の例においても同様)。
【0005】この例では真空容器16が陽極を兼ねてお
り、それとフランジ6ひいては陰極2との間には、陰極
2側を負側にして、直流のアーク電源14が接続されて
おり、これによって陰極2と真空容器16間に、例えば
数十V〜数百V程度のアーク放電電圧を印加することが
できる。
【0006】ホルダ20には直流のバイアス電源24の
負側が接続されており、これによって、ホルダ20上の
基材22に例えば数百V程度の負のバイアス電圧を印加
することができる。23は絶縁物である。このホルダ2
0および基材22は、矢印Aのように回転させる場合も
ある。
【0007】真空容器16内には、その壁面に設けられ
たガス導入口26を経由して、図示しないガス源から反
応性ガス28が導入されるよう構成されている。反応性
ガス28は、陰極2を構成する物質と反応して化合物を
作るガスである。
【0008】薄膜形成に際しては、真空容器16内を十
分に(例えば10-5Torr台程度に)真空排気した
後、反応性ガス28を導入して真空容器16内を所定の
圧力(例えば10-2〜10-1Torr台)に保ち、かつ
基材22にバイアス電源24から前述したような負のバ
イアス電圧を印加した状態で、アーク式蒸発源10を動
作させる。
【0009】即ち、陰極2と真空容器16間にアーク電
源14から前述したようなアーク放電電圧を印加した状
態で、図示しないトリガ電極を用いる等して陰極2の前
面2a近傍で最初の火花を発生させると、それが引き金
となって、陰極前面2aと真空容器16間にアーク放電
が生じる。
【0010】このアーク放電によって、陰極前面2aが
局所的に高温に加熱され、陰極前面2aが局所的に溶融
してそこから原子状およびそれよりも大きい粒子状の陰
極物質4が蒸発し、これが基材22に到達して堆積し
て、基材22の表面に薄膜が形成される。その場合、真
空容器16内に反応性ガス28を導入しておくと、それ
と陰極物質4とが反応して化合物が形成され、基材22
の表面に化合物薄膜が形成される。
【0011】ところが、上記のような従来のアーク式蒸
発源10では、陰極前面2aの溶融部が大きくなり易
く、そのため、陰極前面2aから細かい陰極物質4と共
に大きな塊の陰極物質4も同時に蒸発し、これが基材2
2の表面に堆積して薄膜表面の面粗度を悪化させる(即
ち、薄膜表面の局所的な平滑性を悪化させる)という問
題がある。
【0012】そこで、面粗度の良好な薄膜を形成するこ
とができるよう改善したアーク式蒸発源が、同一出願人
によって先に提案されている(特願平7−27524
号)。
【0013】このアーク式蒸発源30は、図11に示す
ように、陰極構成物質と反応する反応性ガス34を、陰
極2から離れた所から陰極前面2aに吹き付けるガス吹
付け機構32を、陰極2の近傍に備えている。ガス吹付
け機構32は、この例ではガス供給パイプ33である。
この反応性ガス34と、真空容器16内に導入される前
記反応性ガス28とは、通常は同種のガスである。
【0014】このガス吹付け機構32から陰極前面2a
に反応性ガス34を吹き付けながらアーク放電させる
と、アーク放電の陰極点が陰極前面2aに多数生じて
陰極近傍でアーク分岐が生じる、陰極表面に元の陰極
構成物質よりも高融点の化合物が形成されてそれが溶融
部の広がりを抑える、等の作用によって、陰極前面2a
での粗大な溶融部の形成が抑制される。その結果、大き
な塊の陰極物質4が発生するのを防止することができ、
それによって、基材22上に形成される薄膜の面粗度を
改善することができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようなアーク式蒸発源30でも、形成される薄膜の面粗
度の改善に限界があり、時として、薄膜中に若干の粗大
粒子が混入することが避けられない、という点になお改
善の余地がある。
【0016】そこでこの発明は、陰極から粗大な粒子が
飛散することを確実に防止して、面粗度の極めて良好な
薄膜を形成することができるアーク式蒸発源を提供する
ことを主たる目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明のアーク式蒸発源は、前述したようなガス
吹付け機構を備えており、しかもその陰極の後面の後方
近傍に、互いに極性の異なる複数の磁極を、陰極後面に
対向させて配置していることを特徴としている。
【0018】
【作用】上記構成によれば、陰極前面近傍においてマル
チポール(多極)磁界が形成されるので、単一磁界の場
合に比べて、陰極前面近傍における電子の運動が複雑に
なって陰極前面近傍における電子密度が高くなり、それ
によって、当該電子と、陰極前面にガス吹付け機構から
吹き付けられる反応性ガス分子との衝突確率が高くなっ
て、反応性ガスの分解、電離、励起等が促進される。そ
の結果、反応性ガスと陰極構成物質との反応が促進さ
れ、陰極前面での高融点化合物の形成が促進され、それ
によって、陰極前面におけるアークによる溶融部の広が
りが強く抑制される。
【0019】それと同時に、陰極前面近傍におけるJ×
B効果(Jはアークを流れる電流、Bは磁界)によるロ
ーレンツ力によって、アーク放電位置のドリフトが促進
される。しかもマルチポール磁界が形成されているの
で、このドリフトは、単一磁界の場合よりも複雑な運動
となり、それによって陰極前面でのアークによる粗大溶
融部の形成が強く抑制される。
【0020】上記二つの作用が相俟って、陰極前面での
アークによる粗大溶融部の形成が、より効果的かつ徹底
的に抑制される。その結果、陰極から粗大な粒子が飛散
することを確実に防止して、面粗度の極めて良好な薄膜
を形成することができる。
【0021】
【実施例】図1は、実施例に係るアーク式蒸発源を備え
る薄膜形成装置の一例を示す概略図である。図10の従
来例および図11の先行例と同一または相当する部分に
は同一符号を付し、以下においてはそれらとの相違点を
主に説明する。
【0022】この実施例のアーク式蒸発源40は、図1
1に示したアーク式蒸発源30の場合と同様、陰極2を
構成する物質と反応する反応性ガス34を、陰極2から
離れた所から陰極前面2aに吹き付けるガス吹付け機構
32を、陰極2の近傍に備えている。ガス吹付け機構3
2は、この例ではガス供給パイプ33である。この反応
性ガス34と、真空容器16内に導入される前記反応性
ガス28とは、通常は同種のガスである。
【0023】更にこのアーク式蒸発源40は、複数の棒
状の永久磁石42を、各々の一方の磁極がフランジ6の
後面ひいては陰極2の後面2bに対向するように配置し
ており、それによって、陰極後面2bの後方近傍に、互
いに極性の異なる複数の磁極を形成している。
【0024】この永久磁石42の配置の詳細例を図2に
示す。この例では、複数の棒状の永久磁石42を、各々
の一方の磁極が陰極後面2bに対向するように、かつN
極とS極とが交互に並ぶように配置している。44は非
磁性材から成り各永久磁石42を支持する支持部材であ
る。
【0025】このような磁石配置によれば、陰極前面2
aの近傍において、多数の磁極によるマルチポール磁界
が形成される。これを詳述すると、陰極前面2aの近傍
には、図6に示し、かつその一部を拡大して図7に示す
ように、陰極前面2aに沿っていて多数の方向に向いた
磁界B、即ちマルチポール磁界が形成される。
【0026】これに対して、従来例または先行例のアー
ク式蒸発源10、30に用いる単なる環状の永久磁石8
による場合は、図5に示すように、陰極前面2aに沿っ
ているけれども単なる放射状の磁界B、即ち単一磁界が
形成される。
【0027】図5に示すような単一磁界の場合は、陰極
前面2aの近傍における電子(これはアーク放電によっ
て生じたものである)の運動はあまり複雑にはならない
ため、陰極前面2aにガス吹付け機構32から反応性ガ
ス34を吹き付けてもその分子と子との衝突確率はあ
まり大きくならず、従って反応性ガス34のイオン化が
あまり促進されず、陰極前面2aでの化合物形成はあま
り促進されない。
【0028】また、図5に示すような単一磁界の場合
は、陰極前面2aの近傍におけるJ×B効果(Jはアー
クを流れる電流、Bは磁界)によるローレンツ力Fは、
アーク放電位置を単純な円58を描くように移動(ドリ
フト)させるだけであるので、そのドリフト効果は、陰
極前面2aでの粗大溶融部の形成を阻止するには十分な
作用をしない。36はアークの一状態を示す。
【0029】これに対して、例えば図6および図7に示
したようなマルチポール磁界の場合は、単一磁界の場合
に比べて、陰極前面2aの近傍における電子の運動が複
雑になって陰極前面近傍における電子密度が高くなり、
それによって、当該電子と、陰極前面2aにガス吹付け
機構32から吹き付けられる反応性ガス34の分子との
衝突確率が高くなって、反応性ガス34の分解、電離、
励起等が促進される。その結果、反応性ガス34と陰極
構成物質との反応が促進され、陰極前面2aでの高融点
化合物(これは、元の陰極材料よりも融点の高い化合物
のことである。以下同じ)の形成が促進され、それによ
って、陰極前面2aにおけるアークによる溶融部の広が
りが強く抑制される。
【0030】これは、陰極前面2aの近傍における一種
のマグネトロン放電を利用しものであるということが
でき、陰極前面2aにおける化合物の形成を促進するの
に大きな効果があるが、マルチポール磁界を利用すれ
ば、上記のような理由から、その効果が著しい。
【0031】また、マルチポール磁界の場合は、陰極前
面2aの近傍におけるJ×B効果によるローレンツ力F
は、単なる円状ではなく、例えば図6ないし図8に示す
ように、多数の小さな円状であってしかも互いに近接し
た、あるいは部分的に重なった円状に働く。その結果、
ローレンツ力Fによるアーク放電位置のドリフトは、単
なる円状ではなく、例えば図8中にその軌跡59を示す
ように、トロコイド状でしかも全体として大きな円状を
描く等の複雑な運動となる。その結果、陰極前面2aで
のアークによる粗大溶融部の形成が強く抑制される。
【0032】上記二つの作用が相俟って、陰極前面2a
でのアークによる粗大溶融部の形成が、より効果的かつ
徹底的に抑制される。その結果、陰極2から粗大な粒子
が飛散することを確実に防止して、面粗度の極めて良好
な薄膜を基材22の表面に形成することができる。
【0033】その結果例えば、従来適用できなかった鏡
面仕上げを必要とする製品、例えばレンズ成形金型、コ
ンパクトディスク成形型等にも、この発明に係るアーク
式蒸発源を用いた薄膜形成を適用することができるよう
になる。
【0034】また、従来のアーク式蒸発源を用いる場合
は、成膜速度を上げると膜の面粗度が悪化し、また蒸発
速度の低い陰極材料(例えばカーボン、チタン等)では
堆積膜の面粗度は比較的良いが、成膜速度が低く生産性
が悪いという問題があったけれども、この発明に係るア
ーク式蒸発源を用いれば、どのような材料の陰極を用い
ても、高速でかつ面粗度の非常に優れた薄膜の形成を行
うことができる。
【0035】尚、上記各永久磁石42は、それらからの
磁力線が効果的に陰極前面2aにまでに達するようにす
るために、できるだけ陰極後面2bに近づけて配置する
のが好ましい。近づけない場合は、永久磁石42の数を
減らして磁石間の間隔を大きくしても良い。これは以下
に説明する他の例においても同様である。
【0036】上記複数の永久磁石42は、図2の例のよ
うにN極とS極とが交互に並ぶように配置する代わり
に、N極とS極とが無秩序に並ぶように配置しても良
く、その場合でも、陰極前面2aの近傍にマルチポール
磁界が形成されるので、図2の例の場合とほぼ同様の作
用効果が得られる。
【0037】また、図3に示す例のように、中心となる
永久磁石46の周りに1以上の環状の永久磁石48を同
心状に、かつ各々の一方の磁極が陰極後面2bに対向す
るように、かつ環の内外方向においてN極とS極とが交
互に存在するように配置することによって、前述した極
性の異なる複数の磁極を形成しても良い。ここで言う環
状とは、図示例のような円環状以外に、方形環状等を含
む広い概念である。また、中心の永久磁石46も環状に
しても良い。
【0038】この例の場合も、陰極前面2aの近傍にマ
ルチポール磁界が形成され、それによって陰極前面2a
での高融点化合物の形成が促進されると共に、ローレン
ツ力によるアーク放電位置のドリフトがトロコイド状に
なる等の複雑な運動となるので、陰極前面2aでのアー
クによる粗大溶融部の形成を阻止する効果は著しい。
【0039】また、前述したような複数の棒状の永久磁
石42を、各々の一方の磁極が陰極後面2bに対向し、
かつ同極性のもの同士が同心環状に並び、かつ環の内外
方向においてN極群環とS極群環とが交互に存在するよ
うに配置しても良い。ここで言う環状とは、円環状、方
形環状等を含む広い概念である。つまり、複数の棒状の
永久磁石42で、図3に示す例とほぼ同様の磁極を形成
しても良い。この場合も、図3の例と同様の作用効果が
得られる。
【0040】また、図4に示す例のように、三つの電磁
石50を、各々の一方の磁極が陰極後面2bに対向する
ように、かつ所定の中心Oの周りに120度ごとに配置
し、それらに三相交流(即ち同一周波数で互いに120
度ずつ位相の異なる交流)を供給することによって、前
述した極性の異なる複数の磁極を形成しても良い。各電
磁石50は、この例では、棒状のコア52およびそれに
巻かれたコイル54を有している。
【0041】この例の場合、三つの電磁石50によって
形成される磁界は、陰極前面2aの面内において回転す
るので、アーク放電位置を、J×B効果によるローレン
ツ力によるだけでなく、磁界の回転によって強制的に回
転させることができる。その結果、陰極前面2aでのア
ークによる粗大溶融部の形成を効果的に抑制することが
できる。
【0042】上記電磁石50に供給する三相交流の周波
数は、あまり高いと磁界の回転にアークのドリフトが追
従できなくなるので、10Hz程度以下にするのが好ま
しく、その内でも1〜数Hz程度がより好ましい。
【0043】前述したガス吹付け機構32は、例えば図
9に示す例のように、ガス供給パイプ33の先端部に、
陰極2の前面2a付近の側方の周囲を取り囲むリング状
部60を設け、このリング状部60に、複数のガス吹出
し口62を分散配置、より好ましくはほぼ均等に分散配
置した構造にしても良い。そのようにすれば、陰極2の
前面2aに反応性ガス34をより均一に吹き付けること
ができるので、陰極前面2aにおいてアーク放電の陰極
点をより多数に分散させたり、陰極前面2aに高融点化
合物をより均一に形成したりすることができ、それによ
って陰極前面2aでの粗大溶融部の形成を一層効果的に
抑制することができる。
【0044】尚、陰極2がカーボン(黒鉛)の場合、カ
ーボンはアークによって溶融させられるのではなく、昇
華させられる。その際、従来のアーク式蒸発源10で
は、カーボンが昇華する時にパチンと弾けて大きな塊が
飛び散り(これを突沸という)、これが基材22の表面
に形成される薄膜の面粗度を悪化させる。これに対し
て、この発明のアーク式蒸発源40では、ガス吹付け機
構32から反応性ガス34として水素ガスを陰極前面2
aに吹き付けることにより、陰極前面2aに、気化性を
有する炭化水素系の化合物を形成させてその状態で蒸発
させることができるので、粗大粒子の飛散を防止するこ
とができる。尚、基材22に到達した化合物中から水素
はガスとして放出されるので、基材表面には炭素が堆積
される。
【0045】このような炭化水素系化合物の形成作用
は、図11に示した先行例のアーク式蒸発源30におい
ても得られるが、それの単一磁界による場合よりも、こ
の発明のアーク式蒸発源40のようにマルチポール磁界
による方が、前述したように、反応性ガス34の分解、
電離、励起等をより促進することができるので、炭化水
素系の化合物をより効果的に形成することができ、その
結果、粗大粒子の飛散をより効果的に抑制することがで
きる(後述する実施例5参照)。
【0046】次に、より具体的な実施例を幾つか説明す
る。
【0047】<実施例1>図2に示す磁石配置をしたア
ーク式蒸発源40を用いて、図1に示す装置において、
真空容器16内を1×10-5Torr以下まで十分に排
気した後に薄膜の形成を行った。陰極2の材料には純度
3Nのチタン(Ti)を用い、反応性ガスに窒素ガス
(N2 )を用い、陰極2に反応性ガス34として窒素ガ
スを吹き付けると共に、真空容器16内にも反応性ガス
28として窒素ガスを導入して、TiN膜を基材22の
表面に形成した。
【0048】図11に示した先行例のアーク式蒸発源3
0を用いた場合でも、比較的平滑なTiN膜が形成され
るが、この発明に係るアーク式蒸発源40による場合と
比べると、膜表面の平滑度が劣っていた。即ち鏡面に仕
上げた基材22の表面にTiN膜を形成した場合、先行
例のアーク式蒸発源30ではTiN膜のRa(最大表面
粗さ)が0.05ミクロンで、膜表面には局所的に数ミ
クロンの半球状突起の存在が認められたが、この発明に
係るアーク式蒸発源40を用いた場合ではRaは0.0
2ミクロンが得られ、また突起物の存在は全く認められ
なかった。
【0049】このようにこの発明に係るアーク式蒸発源
40を使用すると、基材22の面粗度を殆ど劣化させず
に薄膜形成が行えることが確認できた。
【0050】<実施例2>図3に示す磁石配置をしたア
ーク式蒸発源40を用いて、図1に示す装置において、
真空容器16内を1×10-5Torr以下まで十分に排
気した後に薄膜の形成を行った。陰極2の材料には純度
3Nのチタン(Ti)を用い、反応性ガスに窒素ガス
(N2 )とメタンガス(CH4 )を用い、陰極2に反応
性ガス34として窒素ガスを吹き付けると共に、真空容
器16内にも反応性ガス28として窒素ガスとメタンガ
スを導入して、TiCN膜を基材22の表面に形成し
た。
【0051】図2に示した従来のアーク式蒸発源10ま
たは図11に示した先行例のアーク式蒸発源30を用い
た場合においても、TiCN膜が形成できるが、この発
明に係るアーク式蒸発源40による場合と比べると、膜
表面の平滑度は大幅に劣っていた。即ち、鏡面に仕上げ
た基材22の表面にTiCNを形成した場合、従来例等
のアーク式蒸発源10、30では、Ra(最大表面粗
さ)が0.09ミクロンであったが、この発明に係るア
ーク式蒸発源40を用いた場合では、Raは0.02ミ
クロンであった。また前者の膜では表面の所々に数ミク
ロンの半球状の突起物の存在が認められたが、後者の蒸
発源40で形成した膜の表面にはそのような突起物の存
在は全く認められなかった。
【0052】このようにこの発明に係るアーク式蒸発源
40を使用すると、実施例1の場合と同様、基材22の
面粗度を殆ど劣化させずに薄膜形成が行えることが確認
できた。
【0053】<実施例3>図4に示す磁石配置をしたア
ーク式蒸発源40を用いて、図1に示す装置において、
真空容器16内を1×10-5Torr以下まで十分に排
気した後に薄膜の形成を行った。陰極2の材料には純度
3Nのクロム(Cr)を用い、反応性ガスに窒素ガス
(N2 )とメタンガス(CH4 )を用い、陰極2に反応
性ガス34として窒素ガスを吹き付けると共に、真空容
器16内にも反応性ガス28として窒素ガスとメタンガ
スを導入して、CrCN膜を基材22の表面に形成し
た。電磁石50に供給する三相交流の周波数は2Hzに
した。
【0054】従来例等のアーク式蒸発源10または30
を用いた場合でもCrCN膜が形成されるが、この発明
に係るアーク式蒸発源40による場合と比べると、膜表
面の平滑度は劣っていた。即ち、鏡面に仕上げた基材2
2の表面にCrCN膜を形成した場合、従来例等のアー
ク式蒸発源10、30ではRa(最大表面粗さ)が0.
07ミクロンであったが、この発明に係るアーク式蒸発
源40を用いた場合は、Raは0.01ミクロンであっ
た。また前者の膜では表面の所々に数ミクロンの半球状
の突起物の存在が認められたが、後者の蒸発源40で形
成した膜の表面にはそのような突起物の存在は全く認め
られなかった。
【0055】このようにこの発明に係るアーク式蒸発源
40を使用すると、上記の実施例と同様、基材22の面
粗度を殆ど損なわずに薄膜形成が行えることが確認でき
た。
【0056】<実施例4>図3に示す磁石配置をしたア
ーク式蒸発源40を用いて、図1に示す装置において、
真空容器16内を1×10-5Torr以下まで十分に排
気した後に薄膜の形成を行った。陰極2の材料には純度
3Nのチタンアルミニウム合金(TiAl)を用い、反
応性ガスに窒素ガス(N2 )を用い、陰極2に反応性ガ
ス34として窒素ガスを吹き付けると共に、真空容器1
6内にも反応性ガス28として窒素ガスを導入して、T
iAlN膜を基材22の表面に形成した。
【0057】従来例等のアーク式蒸発源10または30
を用いた場合でもTiAlN膜が形成されるが、この発
明に係るアーク式蒸発源40による場合と比べると、膜
表面の平滑度は劣っていた。即ち、鏡面に仕上げた基材
22の表面にTiAlN膜を形成した場合、従来例等の
アーク式蒸発源10、30ではRa(最大表面粗さ)が
0.13ミクロンであったが、この発明に係るアーク式
蒸発源40を用いた場合ではRaは0.02ミクロンが
得られた。また前者の膜では表面の所々に数ミクロンの
半球状の突起物の存在が認められたが、後者の蒸発源4
0で形成した膜の表面にはそのような突起物の存在は全
く認められなかった。
【0058】このようにこの発明に係るアーク式蒸発源
40を使用すると、合金の陰極2を使用した場合でも、
基材22の面粗度を殆ど損なわずに合金化合物の薄膜形
成が行えることが確認できた。
【0059】<実施例5>図2に示す磁石配置をしたア
ーク式蒸発源40を用いて、図1に示す装置において、
真空容器16内を1×10-5Torr以下まで十分に排
気した後に、陰極2に黒鉛を用い、陰極2に吹き付ける
反応性ガス34を水素として、基材22の表面にダイヤ
モンド状カーボンを蒸着した。
【0060】先行例のアーク式蒸発源30を用いた場合
でもダイヤモンド状カーボン(DLC)膜が形成される
が、この発明に係るアーク式蒸発源40による場合と比
べると、膜表面の平滑度は劣っていた。即ち、鏡面に仕
上げた基材22の表面にDLC膜を形成した場合、先行
例のアーク式蒸発源30ではRa(最大表面粗さ)が
0.09ミクロンであったが、この発明に係るアーク式
蒸発源40を用いた場合ではRaは0.01ミクロンが
得られた。また前者の膜では表面の所々にサブミクロン
の突起物の存在が認められたが、後者の蒸発源40で形
成した膜の表面にはそのような突起物の存在は全く認め
られなかった。
【0061】このようにこの発明に係るアーク式蒸発源
40を使用すると、炭素の陰極2を使用した場合でも、
極めて平滑なDLC膜の形成が行えることが確認でき
た。
【0062】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、陰極前
面近傍においてマルチポール磁界が形成され、それによ
って、陰極前面にガス吹付け機構から吹き付けられる反
応性ガス分子と電子との衝突確率が高くなって、陰極前
面近傍における反応性ガスと陰極構成物質との反応が促
進され、陰極前面において、元の陰極材料よりも高融点
の化合物の形成が促進されて陰極前面におけるアークに
よる溶融部の広がりが強く抑制されるので、またカーボ
ン陰極の場合の炭化水素系化合物の形成が促進されるの
で、陰極からの粗大粒子の溶融・飛散が強く抑制され
る。しかも、上記磁界とアーク電流とのローレンツカ等
によって、アーク放電位置のドリフトが強く促進される
ので、陰極前面でのアークによる粗大溶融部の形成が強
く抑制される。これらの作用が相俟って、この発明によ
れば、陰極から粗大な粒子が飛散することを確実に防止
して、面粗度の極めて良好な薄膜を形成することができ
る。
【0063】その結果例えば、従来適用出来なかった鏡
面仕上げを必要とする製品にも、この発明に係るアーク
式蒸発源を用いた薄膜形成を適用することができるよう
になる。また、従来のアーク式蒸発源を用いる場合は、
成膜速度を上げると膜の面粗度が悪化し、また蒸発速度
の低い陰極材料では堆積膜の面粗度は比較的良いが成膜
速度が低く生産性が悪いという問題があったけれども、
この発明に係るアーク式蒸発源を用いれば、どのような
材料の陰極を用いても、高速でかつ面粗度の非常に優れ
た薄膜の形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るアーク式蒸発源を備える薄膜形成
装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例に係るアーク式蒸発源における磁石配置
の一例を示すものであり、Aは断面図、Bはそのb−b
方向に見た正面図である。
【図3】実施例に係るアーク式蒸発源における磁石配置
の他の例を示すものであり、Aは断面図、Bはそのb−
b方向に見た正面図である。
【図4】実施例に係るアーク式蒸発源における磁石配置
の更に他の例を示すものであり、Aは断面図、Bはその
b−b方向に見た正面図である。
【図5】従来の単一磁界の場合のアークの振舞いを説明
する図である。
【図6】実施例に係るマルチポール磁界の場合のアーク
の振舞いを説明する図である。
【図7】図6中の磁界の一部を拡大して示す図である。
【図8】図6中のアーク放電位置の軌跡の一例を拡大し
て示す図である。
【図9】ガス吹付け機構の他の例を示す正面図である。
【図10】従来のアーク式蒸発源を備える薄膜形成装置
の一例を示す概略図である。
【図11】先願に係るアーク式蒸発源を備える薄膜形成
装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
2 陰極 2a 陰極前面 2b 陰極後面 4 陰極物質 14 アーク電源 16 真空容器 22 基材(被処理物) 32 ガス吹付け機構 34 反応性ガス 40 アーク式蒸発源 42,46,48 永久磁石 50 電磁石

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陰極におけるアーク放電を利用して陰極
    物質を蒸発させるアーク式蒸発源であって、陰極構成物
    質と反応する反応性ガスを陰極前面に吹き付けるガス吹
    付け機構を備えるものにおいて、前記陰極の後面の後方
    近傍に、互いに極性の異なる複数の磁極を、陰極後面に
    対向させて配置していることを特徴とするアーク式蒸発
    源。
  2. 【請求項2】 複数の棒状の永久磁石を、各々の一方の
    磁極が前記陰極後面に対向するように、かつN極とS極
    とが交互に並ぶように配置することによって、前記極性
    の異なる複数の磁極を形成している請求項1記載のアー
    ク式蒸発源。
  3. 【請求項3】 複数の棒状の永久磁石を、各々の一方の
    磁極が前記陰極後面に対向するように、かつN極とS極
    とが無秩序に並ぶように配置することによって、前記極
    性の異なる複数の磁極を形成している請求項1記載のア
    ーク式蒸発源。
  4. 【請求項4】 複数の棒状の永久磁石を、各々の一方の
    磁極が前記陰極後面に対向し、かつ同極性のもの同士が
    同心環状に並び、かつ環の内外方向においてN極群環と
    S極群環とが交互に存在するように配置することによっ
    て、前記極性の異なる複数の磁極を形成している請求項
    1記載のアーク式蒸発源。
  5. 【請求項5】 中心となる永久磁石の周りに1以上の環
    状の永久磁石を同心状に、かつ各々の一方の磁極が前記
    陰極後面に対向するように、かつ環の内外方向において
    N極とS極とが交互に存在するように配置することによ
    って、前記極性の異なる複数の磁極を形成している請求
    項1記載のアーク式蒸発源。
  6. 【請求項6】 三つの電磁石を、各々の一方の磁極が前
    記陰極後面に対向するように、かつ所定の中心の周りに
    120度ごとに配置し、それらに三相交流を供給するこ
    とによって、前記極性の異なる複数の磁極を形成する請
    求項1記載のアーク式蒸発源。
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