JP2872543B2 - 熱接着不織布及びその製造方法 - Google Patents

熱接着不織布及びその製造方法

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JP2872543B2
JP2872543B2 JP5214706A JP21470693A JP2872543B2 JP 2872543 B2 JP2872543 B2 JP 2872543B2 JP 5214706 A JP5214706 A JP 5214706A JP 21470693 A JP21470693 A JP 21470693A JP 2872543 B2 JP2872543 B2 JP 2872543B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリオレフィン系の細
繊度で芯鞘型の複合短繊維からなる熱接着不織布及びそ
の製造方法に関するものである。この不織布は、強力が
高く、嵩高で保水性が極めて優れており、しかもポリエ
チレン独特のヌメリ感を持たず、非常に地合いが良く、
良好な肌ざわりを持っている。このため、使い捨ておむ
つ、生理用ナプキン等の医療衛生材用途に特に適してい
る。また耐薬品性を持ちしかも保水性に優れているた
め、乾電池セパレ−タとしても特に適したものとなる。
そのほかには、農芸園芸資材、生活関連資材としての包
装材やフィルタ−等、広範囲の用途に好適に用いること
ができるものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、熱接着短繊維不織布は、衣料
用、産業資材用、土木建築資材用、農芸園芸資材用、生
活関連資材用、医療衛生材用等、種々の用途に使用され
ている。
【0003】近年急激に需要量が増大している使い捨て
おむつや生理用吸収体の被覆紙等の医療衛生材用不織布
においては、肌ざわりのよいソフトな風合いが要求され
る。また、電気電子関連機器に不織布の需要が拡大して
おり、この分野では、不織布に耐薬品性が良好でかつ保
水性が優れていることも要求される。これらの要求品質
をできる限り満足させるために、主として、サ−マルス
ル−タイプやエンボスタイプの熱接着法による不織布の
生産方式が取られている。
【0004】これらの不織布は、融点を異にする繊維形
成性重合体を複合成分とする複合繊維を用いて得られ、
特公昭42−21318号公報、特公昭44−2254
7号公報、特公昭52−12830号公報、特公昭61
−10583号公報等において公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来から用いられてい
る不織布用複合型熱接着繊維の低融点成分には、通常、
ポリエステルや、ポリエチレンが用いられている。ポリ
エチレンを低融点成分とする複合型熱接着繊維からなる
不織布においては、ポリエチレン独特のヌメリ感が発生
し、人によっては違和感を持つといった問題や、ポリエ
チレン自体が曳糸性が劣っているため細繊度の繊維が得
られないという問題点があった。
【0006】また、本発明者らは、先に特開平03−1
93958号において、極細のポリオレフィン系の芯鞘
型複合短繊維からなるスパンレ−ス不織布を提案した。
該不織布は、スパンレ−ス法で処理されるため柔らかさ
は損なわれないが、穴あきの不織布となるため、乾電池
セパレ−タ−やその他の用途で不適となるなど用途が限
定される問題点があった。
【0007】本発明の目的は、上記問題点を解決し、極
めて地合いが良く、肌ざわりの良好な不織布であって、
しかも実用的な性能を有し、かつ耐薬品性、保水性のす
ぐれたポリオレフィン系の熱接着不織布を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明に到達したも
のである。すなわち、本発明は、 (1) エチレン系重合体とプロピレン系重合体とのブ
レンド構造体にて形成された鞘部と、プロピレン系重合
体の芯部とを有して、単糸繊度が0.2〜1デニ−ルの
芯鞘型複合短繊維からなり、繊維どうしの接触点で接着
されていることを特徴とする熱接着不織布と、 (2) プロピレンが共重合されたエチレン系重合体に
て形成された鞘部と、プロピレン系重合体の芯部とを有
して、単糸繊度が0.2〜1デニ−ルの芯鞘型複合短繊
維からなり、繊維どうしの接触点で接着されていること
を特徴とする熱接着不織布と、 (3) エチレン系重合体とプロピレン系重合体とのブ
レンド構造体にて形成された鞘部と、プロピレン系重合
体の芯部とを有して、単糸繊度が0.2〜1デニ−ルの
芯鞘型複合短繊維から構成されたカードウェブを、下式
を満足するように熱風により熱処理して、繊維どうしの
接触点で接着させることを特徴とする熱接着不織布の製
造方法と、 熱処理温度T(℃) Tm1≦T<Tm2−10 熱処理時間t(分) 0.1≦L/v、 L/v=t Tm1:鞘部のエチレン系重合体の融点(℃) Tm2:芯部のプロピレン系重合体の融点(℃) L :熱処理ゾ−ン長さ(m) v :熱処理速度(m/分) (4) プロピレンが共重合されたエチレン系重合体に
て形成された鞘部と、プロピレン系重合体の芯部とを有
して、単糸繊度が0.2〜1デニ−ルの芯鞘型複合短繊
維から構成されたカードウェブを、下式を満足するよう
に熱風により熱処理して、繊維どうしの接触点で接着さ
せることを特徴とする熱接着不織布の製造方法 熱処理温度T(℃) Tm1≦T<Tm2−10 熱処理時間t(分) 0.1≦L/v、 L/v=t Tm1:鞘部のエチレン系重合体の融点(℃) Tm2:芯部のプロピレン系重合体の融点(℃) L :熱処理ゾ−ン長さ(m) v :熱処理速度(m/分) とを要旨とするものである。
【0009】次に、本発明を詳細に説明する。まず、本
発明の不織布を構成する芯鞘型複合短繊維に関して説明
する。この芯鞘型複合短繊維の鞘部は、エチレン系重合
体を主成分とするものであり、具体的には、エチレン系
重合体とプロピレン系重合体とのブレンド構造体か、あ
るいはプロピレンを共重合されたエチレン系の共重合体
にて構成される。
【0010】例えば低密度ポリエチレンの単一成分で鞘
部を構成した場合には、不織布にヌメリ感が発生して問
題となる。また高密度ポリエチレンの単一成分で鞘部を
構成した場合には、曳糸性が低下して細繊度の繊維を得
ることができにくくなる。これに対し本発明のようにブ
レンド構造あるいは共重合構造とすることにより、低密
度ポリエチレンを適用してもポリプロピレンの影響でヌ
メリ感の発生を防止することができ、また、高密度ポリ
エチレンを適用しても曳糸性を向上することができるた
め細繊度の繊維を得ることができるのである。
【0011】一般にエチレン系重合体は、同一紡糸速度
の場合、プロピレン系重合体よりも伸長特性が低い。し
たがって、プロピレン系重合体を芯部に配するとともに
エチレン系重合体を鞘部に配した芯鞘構造の複合繊維を
紡糸延伸する場合には、鞘部が芯部における紡糸延伸応
力に追従しにくく、このため芯鞘層の剥離が発生しやす
く、それを原因とした糸切れが発生しやすいため、曳糸
性が良くない。このような事情のもとで、本発明におい
て鞘部がブレンド構造である場合には、鞘部のエチレン
系重合体にプロピレン系重合体をミクロにブレンド分散
することで、芯部に紡糸延伸応力が発生しているときの
鞘部の伸長特性が改善され、その結果、芯鞘層の剥離を
解消できて、しかも曳糸性を向上でき、このため細繊度
の繊維からなる不織布を得ることができる。
【0012】エチレン系重合体としては、線状低密度ポ
リエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレ
ン、高密度ポリエチレン、あるいはエチレンを主体とす
る共重合エチレン等が挙げられる。
【0013】プロピレン系重合体としては、ポリプロピ
レン、あるいはプロピレンを主体とする共重合プロピレ
ン等が挙げられる。前記ブレンド物のエチレン系重合体
(aとする)とプロピレン系重合体(bとする)との混
合比(重量比)すなわちブレンド比a/bは、99.5
/0.5〜75/25が好ましい。プロピレン系の重量
割合が高くなるとプロピレン系重合体の特質が強くなっ
てしまうことと曳糸性が低下することのためよくない。
一方プロピレン系重合体が上記範囲よりも少なくなる
と、均一な混合が困難となり、曳糸性が向上せず細繊度
糸を得ることが困難になるばかりでなく、芯部との剥離
が生じたり、ポリエチレン独特のヌメリ感が現れて用途
が限定されるためよくない。したがって、この混合比は
95/5〜80/20がより好ましい。
【0014】鞘部が共重合体である場合は、共重合に際
しては、いわゆるランダム共重合とするのが曳糸性向上
の点で好ましい。この共重合体の場合は、曳糸性が向上
する理由は定かでないが、プロピレンが共重合されてい
ることにより、重合体自身の紡糸延伸時の伸長特性が改
善されるためと考えられる。また鞘部とプロピレン系重
合体の芯部との界面においてこれら鞘部と芯部との親和
性が向上し、それによって芯鞘層の剥離が解消できる。
その結果、曳糸性を向上することができ、細繊度の繊維
を得ることができるのである。
【0015】このエチレン系共重合体は、プロピレン
0.2重量%以上を共重合させればよい。プロピレンの
共重合量が余り多くなると、曳糸性が低下したり、ポリ
プロピレンの特性が強くなり過ぎたり、また融点が大き
く低下するため、好ましくない。またプロピレンの共重
合量が少なくなり過ぎると、ポリエチレンの特性が強く
なってヌメリ感が現れたり、鞘部と芯部の層間が剥離を
生じるため、好ましくない。したがって、好ましくは
0.5〜5重量%とするのがよい。
【0016】一方、鞘部がブレンド構造体と共重合体と
のいずれの場合についても、芯部を構成するプロピレン
系重合体としては、ポリプロピレン、あるいはプロピレ
ンを主体とする共重合プロピレン等が挙げられる。
【0017】芯鞘型複合繊維の複合比(重量比)は、鞘
部/芯部=3/1〜1/3が必要である。鞘部の重量比
が大きくなると、熱接着成分が多くなって繊維強度が低
くなり、また熱接着不織布に展開した場合に、風合いが
硬くなったり嵩高性に欠けたりするので好ましくない。
また、芯部の重量比が大きくなると、繊維強度は高くな
るが、熱接着不織布に展開した場合に繊維間の接着不足
が生じ、不織布強力が低下する問題が発生するので好ま
しくない。複合形態は、一般的な同心円型芯鞘構造、偏
心円型芯鞘構造あるいは異形断面型であってもよい。
【0018】本発明に係る繊維の単糸繊度は、1デニ−
ル以下であることが必要である。これは、単糸繊度を小
さくするほど、構成不織布あたりの繊維本数が増加し
て、嵩高性と柔軟性を向上することができるためであ
る。下限としては、現状の紡糸口金精度から0.2デニ
−ル程度である。
【0019】また、芯鞘型複合繊維は、鞘部と芯部の複
屈折が共に0.030以上であり、繊維の最大熱収縮応
力が0.015g/デニール以下であることが好まし
い。繊維の複屈折は、繊維自体の結晶配向度合いを意味
し、値が大きいほど高配向であることを示す。鞘部およ
び芯部ともに、複屈折が0.030未満となると繊維の
配向が少なくなるため、繊維強度や繊維モデュラスが低
下して、嵩高でかつ強力の高い熱接着不織布が得られな
くなる。このことから複屈折が0.035以上であると
更に好ましい。なおここでいう複屈折は、カ−ルツァイ
スイエナ干渉顕微鏡を用い、封入剤として流動パラフィ
ンとα−ブロムナフタリンとの混合液を用いて処理を行
い、複合繊維の鞘部の重合体成分と芯部の重合体成分と
のそれぞれの複屈折を測定したものである。
【0020】次に繊維の最大熱収縮応力は、熱処理時の
収縮力の指標となるもので、値が大きいほど繊維の収縮
が高いことを意味する。特に熱接着不織布用の繊維は、
熱接着時に収縮力が高いと得られる不織布の地合い、厚
み、幅が変動するため問題となる。したがって、最大熱
収縮応力が小さいほど安定した品質の良い不織布が得ら
れることになる。このことから、より好ましくは0.0
10g/デニール以下とするのがよい。
【0021】次に上記芯鞘型複合繊維の製造方法を説明
する。この繊維は溶融複合紡糸にて製造することがで
き、この溶融複合紡糸は、通常の複合紡糸装置を用いて
行うことができる。溶融複合紡糸に際しては、芯鞘型の
紡糸口金を用い、一般的には200℃〜280℃の紡糸
温度で複合紡糸を行えばよい。
【0022】鞘部がブレンド構造体である場合におい
て、鞘成分である前記ブレンド物の一成分のエチレン系
重合体(a)としては、前記したごとく線状低密度ポリ
エチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、
高密度ポリエチレン、あるいはエチレンを主体とする共
重合エチレン等が挙げられる。このエチレン系重合体
(a)のメルトインデックス値は、10〜50g/10
分であることが必要である。10g/10分未満である
と、溶融粘度が高すぎるため曳糸性が低下する。また、
紡糸温度を上げて見掛けの溶融粘度を低下させる手段に
おいては、煙が多量に発生し、作業環境が悪くなるので
好ましくない。更にまた、プロピレン系重合体とブレン
ドする時にミクロ分散できなくなる問題が生じる。一
方、メルトインデックス値が50g/10分を超える
と、溶融粘度が低過ぎることになり、繊維の強度低下を
生じたり、曳糸性が低下するため問題となる。
【0023】また、前記鞘成分のブレンド物としてのも
う一方の成分であるプロピレン系重合体(b)として
は、前記したごとくポリプロピレン、あるいはプロピレ
ンを主体とする共重合プロピレン等が挙げられる。この
プロピレン系重合体(b)のメルトフロ−レ−ト値は、
5〜45g/10分であることが必要である。この範囲
でないとエチレン系重合体との均一なミクロブレンド構
造体とならない。すなわち、メルトフロ−レ−ト値が5
g/10分未満であるとエチレン系重合体中への分散性
が低下する。また、45g/10分を超えるとプロピレ
ン系重合体中へのエチレン系重合体の分散性が低下す
る。これは要するに互いに相溶性のない重合体の組み合
わせであるからである。したがって、5〜45g/10
分とするが、より好ましくは10〜40g/10分がよ
い。
【0024】前記鞘成分のブレンド物のエチレン系重合
体(a)とプロピレン系重合体(b)との混合比(重量
比)a/bは、前述の繊維自体の場合と同様に99.5
/0.5〜75/25が好ましく、95/5〜80/2
0がより好ましい。
【0025】鞘部が共重合体の場合には、鞘成分である
エチレン系共重合体としては、前記したごとくプロピレ
ンが共重合されたエチレン系共重合体を用いることが必
要である。すなわち、ポリエチレンのヌメリ感を防止し
て、曳糸性を向上させるために、プロピレンの共重合が
必要である。曳糸性を向上することができるため、より
細繊度の繊維を得ることができるのである。また、鞘成
分のエチレン系重合体と芯成分のプロピレン系重合体と
は互いに相溶性がない成分の組み合わせであるが、プロ
ピレンを共重合することにより、親和力が付与され、芯
成分との間すなわち芯鞘層間の剥離が解消できるため、
複合繊維としての曳糸性及び物性を向上できる。
【0026】このエチレン系共重合体は、上記繊維自体
の場合と同様に、プロピレン0.2重量%以上を共重合
させればよく、より好ましくは0.5〜5重量%とする
のがよい。このプロピレンの他に、ブテン、ペンテン、
ヘキセン、オクテン等を本発明を疎外しない範囲内で共
重合してもよい。
【0027】またこの鞘成分のエチレン系共重合体の密
度は、特に限定しないが、0.92〜0.96g/cm
3 であればよい。この鞘成分のエチレン系重合体のメル
トインデックス値は、10〜50g/10分であること
が必要である。10g/10分未満であると、溶融粘度
が高すぎるため曳糸性が低下する。また、紡糸温度を上
げて見掛けの溶融粘度を低下させる手段においては、煙
が多量に発生し、作業環境が悪くなるので好ましくな
い。一方、メルトインデックス値が50g/10分を超
えると、溶融粘度が低過ぎるため、繊維の強度低下が生
じたり、曳糸性が低下するため問題となる。
【0028】一方、芯成分としては、鞘部がブレンド構
造体と共重合体とのいずれの場合についても、前記プロ
ピレン系重合体を適用すればよい。すなわち、適用する
重合体としては、ポリプロピレン、あるいはプロピレン
を主体とする共重合プロピレン等が挙げられる。このプ
ロピレン系重合体のメルトフロ−レ−ト値は、5〜45
g/10分であることが必要である。
【0029】この範囲以外では、繊維の鞘部と芯部との
層間でバラス効果の違いによって曳糸性が低下するとい
った問題が生じる。すなわち、メルトフロ−レ−ト値
が、5g/10分未満であると、溶融粘度が極めて高く
なるため曳糸性が低下する。紡糸温度を高めて見掛け上
の溶融粘度を低下させても、鞘部の溶融粘度も大きく低
下するため同じことが言え、しかも発煙性が増加し、紡
糸室の環境を悪化させたりするので問題となる。また、
45g/10分を超えると、繊維のモデュラスが低下し
て腰のない繊維しか得られない。また熱接着不織布に適
用した場合には嵩高性が大きく低下する問題がある。し
たがって、5〜45g/10分とするのがよく、10〜
40g/10分とするのがより好ましい。
【0030】また、複合紡糸に際しては、前記鞘成分の
エチレン系重合体成分(a)の溶融後のQ値(重量平均
分子量/数平均分子量)を8以下とすることが好まし
い。このQ値とは、ゲルパーミエイションクロマトグラ
フ法により求められる重合体の重量平均分子量と数平均
分子量の比のことであり、個別に溶融計量された重合体
を複合紡糸する前に個別に採取し、冷却した重合体を試
料として測定した値である。熱可塑性重合体は溶融紡糸
時に受ける熱及び剪断力の影響で劣化しやすく、溶融紡
糸後のQ値は紡糸前のそれに比べ低下することが知られ
ている。Q値は分子量分布の幅を示すものであり、複合
繊維の製造適正と加工適正に大きく影響するものであ
る。すなわち、Q値が大きく分子量分布の幅が広いと、
安定した複合繊維を得ることができ、しかも熱接着不織
布用途に展開した場合には熱処理温度領域が広くなり、
品質の安定した不織布を得ることができる。しかしなが
ら、Q値が大きくなって分子量分布の幅が広くなりすぎ
ると、溶融紡糸時の糸条冷却が悪くなって曳糸性が低下
する。したがって、このQ値は8以下が好ましく、7.
0以下がより好ましい。
【0031】一方、前記鞘成分および芯成分のプロピレ
ン系重合体成分の溶融後のQ値(重量平均分子量/数平
均分子量)は、2以上かつ8以下とすることが好まし
い。このQ値は、前述したように、分子量分布の幅を示
すものであり、複合繊維の製造適正と加工適正に大きく
影響するものである。特に、このプロピレン系重合体成
分は、複合繊維の高融点成分であって繊維モジュラスを
代表するものであり、分子量分布の幅が特に重要であ
る。すなわち、Q値が2未満であると、分子量分布が狭
くなって複合繊維の収縮率が低下するため好ましい方向
であるが、複合繊維に捲縮を付与する場合の捲縮保持性
が低下して、ウェブ形成に最も一般的に用いられるカ−
ド工程を良好に通過させることが困難となる。また、カ
−ド工程通過後の不織ウェブあるいは不織布にエンボス
ロ−ラ−や熱風乾燥機等の熱処理装置を用いて熱処理を
施して繊維を熱接着させる場合の熱処理温度領域が狭く
なり、嵩高性を有し、かつ品位の高い不織布を安定して
得ることが出来ない。さらに、複合繊維のタフネスが低
下するため、嵩高性及び柔軟性に優れた不織布を得るこ
とができない。一方、Q値が8を超えると、重合体の分
子量分布の幅が広くなりすぎて、溶融紡糸時の糸条冷却
が悪くなって曳糸性が低下し、細繊度の複合繊維を得る
ことが困難となる。したがって、このQ値は、2以上8
以下とし、好ましくは3以上7以下とすることがよい。
【0032】芯鞘型複合繊維を製造する時の鞘/芯複合
比(重量比)は、芯鞘複合型繊維自体の場合と同様に、
3/1〜1/3が必要である。さらに、溶融複合紡糸に
際しては、鞘成分におけるエチレン系重合体成分とプロ
ピレン系重合体成分との吐出線速度を、1.7〜5.8
m/分/デニ−ルとすることが好ましい。ここでいう吐
出線速度とは、溶融重合体の単孔吐出量Q(g/分)、
同重合体の溶融密度ρ(g/cm3 )、紡糸孔径d(m
m)、及び目標単糸繊度D(デニ−ル)を用いて次式
(i)により算出されたものである。 なお、上記溶融密
度ρは、東洋精機株式会社製メルトインデクサーを用
い、芯成分重合体または鞘成分重合体を試料とし、温度
条件を適用する紡糸温度に設定して前記両試料ごとに芯
成分重合体の溶融密度と鞘成分重合体の溶融密度とを次
式(ii)によりそれぞれ求め、得られた各試料ごとの
溶融密度を加重平均して求められたものである。
【0033】 吐出線速度(m/分/デニ−ル)=4 Q/(πρd2)/D ………(i) 溶融密度(g/cm3 )=FR×t/s×L ………(ii) FR:紡糸温度で溶融した重合体を試料とし、印加荷重
2160gの条件で測定したときのフローレート値(g/10
分) s :ピストンとシリンダーの平均断面積×600 (c
m2 ) L :ピストンの移動距離(cm) t :ピストンが距離Lを移動するに要する時間(秒) 通常、異種の重合体からなる複合繊維を溶融紡糸するに
際しては、組み合わせる重合体間のメルトフロ−レ−ト
差による可紡域の差と高粘度成分により限定される溶融
温度とにより曳糸性が大きく左右され、重合体の種類に
応じて適当な吐出線速度を選択する必要がある。したが
つて、良好な曳糸性を得るために吐出線速度を1.7〜
5.8m/分/デニ−ルとすることが好ましく、細繊度
の繊維を得る際には、吐出線速度がこの範囲外では曳糸
性が低下する傾向にある。すなわち、1.7m/分/デ
ニ−ル未満では糸切れが発生しやすい。また、5.8m
/分/デニ−ルを超えると、ノズル口金面に汚れが発生
することや、紡糸張力が低下して均一な冷却がしにくく
なることから、曳糸性が低下する。したがって好ましく
は2.0〜5.0m/分/デニ−ル、特に好ましくは
2.5〜4.0m/分/デニ−ルとするのがよい。
【0034】なお、前記鞘と芯の両成分には、通常、繊
維に用いられる艶消し剤、耐光剤、耐熱剤あるいは顔料
等を、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、添加
することができる。
【0035】次に、溶融複合紡糸して得られた未延伸複
合繊維を、50℃以上かつ繊維相互が融着しない温度で
熱延伸する。熱延伸は、通常の熱延伸装置を用いて行な
うことができる。通常、熱可塑性合成繊維を延伸する場
合、ガラス転移温度以上で加熱延伸をすることが知られ
ているが、ここではガラス転移温度より相当高い50℃
以上の温度で熱延伸する。延伸温度が50℃未満である
と、延伸張力が高くなりすぎて延伸性が低下する。また
延伸温度は、高くとも繊維相互が融着し始める温度未満
とする。延伸温度が高くなりすぎて繊維相互が融着し始
めると、延伸工程で糸切れが発生して操業性が低下した
り、製品の均一性が低下することによって品位が低下し
たりするので好ましくない。したがって、この延伸温度
は50℃以上かつ繊維相互が融着しない温度とし、好ま
しくは60〜100℃とするのがよい。
【0036】次いで、得られた延伸複合繊維に捲縮付与
処理を施す場合には、通常スタッファ型捲縮付与装置等
の捲縮付与装置を用いる。この捲縮付与処理に引き続
き、繊維に仕上油剤を付与し、乾燥した後、所定長さに
切断して短繊維とする。この場合の繊維長は通常32〜
76mmの範囲が適用される。
【0037】この繊維を製造するためには、複合短繊維
の単繊維繊度を1デニ−ル以下としなければならない。
単繊維繊度が1デニ−ルを超えると、不織布としたとき
に柔軟性が低下したり、あるいは溶融紡糸に際し、エチ
レン系、プロピレン系溶融重合体の冷却が不充分とな
り、フィラメント間に融着が生じて曳糸性が低下したり
するため好ましくない。
【0038】本発明の熱接着不織布は、前記複合繊維が
延伸配向された集合体からなる必要がある。複合繊維が
延伸配向されることにより、不織布製造工程での熱処理
による複合繊維の脆化が少なくなり、不織布の品質安定
性につながるからである。
【0039】また、本発明に係る不織布は、繊維どうし
の接着点で接着されていることが必要である。このこと
は不織布の形態保持の関係から必要であり、前記複合繊
維からなるウェブ集積体の繊維どうしの接着点で融着に
よって接着されているようにするものである。すなわち
芯鞘型複合繊維の鞘成分が、繊維間の接触点で溶融接着
された構成となる。しかも鞘成分が芯部との親和性を有
するため芯鞘成分間で剥離が生じないこと、及び、極細
繊維から構成されるため構成繊維が多くなり、繊維の接
触点での溶融接着部が多くなることによって、不織布形
態は強固に保持され、強力が高く、嵩高で特徴のある不
織布となるのである。
【0040】次に、本発明に係る熱接着不織布の物性に
ついて説明する。まず、不織布強力について説明する。
本発明の不織布は、前記極細の複合繊維から構成される
ため、単位目付あたりの構成繊維本数が従来の繊度のも
のよりも多くなった状態で、繊維どうしの接触点が接着
される。しかも芯部と鞘部との剥離がないため、鞘部の
バインダー成分が繊維間の接着に十分作用し、不織布強
力が大きくなることが特徴である。したがって本発明で
は強力が5kg/2.5cm幅以上とするのがよいが、さら
に好ましくは、6kg/2.5cm幅以上とするのがよい。
これは実用的なことから規制したものであり、5kg/
2.5cm幅未満であると汎用的な用途に支障が出るため
である。
【0041】次に嵩高度であるが、これは不織布の嵩高
性を示すものであり、値が小さいほど嵩高いことを示
す。本発明に係る不織布においては、嵩密度は0.03
〜0.06g/cm3 が好ましい。嵩密度が0.06g/
cm3 を超えると、不織布は嵩高であるとは言えるもので
なくなり、極細繊維の良さが生かされなくなる。嵩密度
は小さい程嵩高でよいが、極細繊維となればなる程、単
繊維自体のヤングモデュラスも低下するため、嵩密度は
逆に増加する傾向がある。したがって、0.03g/cm
3 未満の不織布は、現段階の状態から製造することが難
しい。
【0042】通気度は、気体を通過させる度合いであ
り、値が小さくなる程その度合いが小さくなることを示
す。本発明に係る不織布の通気度は、45cc/cm2 ・s
以下が好ましい。通気度が45cc/cm2 ・sを超える
と、気体を通過させる度合いが高くなって、保温効果が
低下したり、除塵性能が低下する等の用途面での制約が
現れるため好ましくない。
【0043】次に不織布の摩擦係数(MIU)である
が、本発明に係る不織布のMIUは、0.18以上が好
ましい。MIUが0.18未満であると、不織布がすべ
り易くなって、いろいろな面で弊害が出てくる。例え
ば、コースターや簡易な敷物として適用した場合には、
触れただけで不織布等が移動し、器物の破損等の問題が
生じ易い。
【0044】最後に、保水性であるが、これは水分を保
持する性能であり、値が高いほど水分を良く保持するこ
とを意味するものである。本発明に係る不織布において
は、保水性が200%以上であることが好ましい。保水
性が200%未満であると保水性が良いとは言えず、例
えば、乾電池セパレーターに適用した場合には電解液の
保持性能が低下し、問題を起こす。
【0045】本発明に係る不織布の目付は、特に規定し
ないが、医療衛生材として用いる場合には150g/m
2 以下、乾電池セパレーターとして用いる場合には10
0g/m2 以下が通常適用される。
【0046】次に、本発明に係る不織布の製造方法につ
いて説明する。まず、前記短繊維を準備し、この短繊維
を開繊、計量してカード機に通し、カードウェブを作成
する。カード機は、ファインデニール用のフラットカー
ド機が望ましい。一般的な針ゲージの荒いカード機で
は、ネップが多く発生し、ウェブの品位が低下するため
である。次にこの繊維ウェブを繊維どうしの接触点で接
着し、不織布を作成する。この繊維ウェブを繊維どうし
の接触点で接着させる方法としては、例えば、熱循環式
熱処理機や熱風乾燥機等の熱風とその制圧によって構成
繊維の鞘成分を溶融接着させ、それによって、繊維の接
触点で接着させる方法を用いることが出来る。この熱処
理条件としては、ウェブを構成する繊維の鞘成分の溶融
接着をするために熱風の最低の制圧が必要であるが、本
発明では、熱循環式熱処理機の場合、下記の条件が不可
欠である。
【0047】 熱処理温度T(℃) Tm1≦T≦Tm2−10 熱処理時間t(分) 0.1≦L/v、 L/v
=t Tm1:鞘部のエチレン系重合体の融点(℃) Tm2:芯部のプロピレン系重合体の融点(℃) L:熱処理ゾーンの長さ(m) 熱処理温度Tが、鞘部のエチレン系重合体の融点未満で
あると、エチレン系重合体が溶融せず、繊維どうしの接
着が生じないため、不織布の形態保持ができなくなる。
また、熱処理温度Tが、芯部のプロピレン系重合体の融
点から10℃低い温度を超えると、この芯部のプロピレ
ン系重合体が軟化すると共に、構成繊維自体の熱収縮が
大きくなり、また、風合いの硬い不織布となり、極細繊
維を使用した本発明の効果が見られなくなる。従ってよ
り好ましい熱処理温度T(℃)は、Tm1−5≦T≦T
m2−14であり、最も好ましくは、Tm1−10≦T
≦Tm2−18である。
【0048】熱処理時間tが0.1分未満であると、繊
維ウェブの鞘成分の溶融が均一でなくなり、接着斑が生
じるため、均一でかつ不織布強力の高い不織布が得られ
なくなる。
【0049】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに詳しく
説明する。なお、下記の実施例中に示した物性値の測定
方法は次のとおりである。 (1)メルトインデックス値(以下単にMI値と略
す。) ASTM D1238 (E) に記載の方法により測
定した。 (2)繊維の引張強伸度 東洋ボ−ルドウイン社製テンシロンUTM− 4−1−10
0 を用い、試料長20mmの試料を引張速度20mm/分の条件
で測定した。 (3)不織布の引張強力 JIS L−1096に記載のスリップ法に準じ、幅
2.5cm、試料長10cmの試験片を10個準備し、
引張速度10cm/分の条件で最大強力を個々に測定
し、その平均値を引張強力とした。 (4)不織布の引張伸度 上記方法で測定した最大引張強力時の伸度を引張伸度と
した。 (5)不織布の嵩密度 試料幅10cm,試料長10cmの試料片を計5個準備
し、各試料片ごとに目付(g/m2 )を測定した後、大
栄科学精機製作所製の厚さ測定器を用いて、4.5g/
cm2 の荷重を印加し、10秒放置した後の厚さ(m
m)を測定し、 次式により嵩密度を算出して、 その平均
値を不織布の嵩密度とした。
【0050】 嵩密度(g/cm3 )=(目付)/(厚さ)/1000 (6)不織布の通気度 JIS−1096に記載の方法で、フラジ−ル型試験機
を用いて、試験片を通過する空気量(cc/cm2/sec) を求
め、5枚の試験片の平均値で表示した。 (7)不織布のMIU 摩擦感テスタ−、KES−SE(カト−テック製)を使
用し、0.5mm径のピアノ線をコの字型に曲げたもの
を10本並べた接触子に重錘によって50gの力を与
え、その接触面を試料不織布に圧接させた。この試料不
織布を、0.1cm/秒の一定速度で水平方向に2cm
移動させ、移動領域の摩擦係数を縦方向と横方向につい
て各々5個測定し、その平均値を求めてMIUとした。 (8)不織布の保水性 25cm×25cmの試料片を3枚あらかじめ準備し、
この試料片の重量(W0 )を測定した後、蒸留水中に3
時間浸漬した。その後、その試料片を取り出し、1枚ず
つガラス棒により軽くしごき、再び重量(W1 )を測定
した。そして下式に従って保水率を算出し、試料片3枚
の平均値で保水率を表示した。
【0051】 保水率(%)=100(W1 −W0 )/W0 (実施例)芯鞘型複合短繊維Aとして、予め次のA−1
〜A−8の繊維を準備した。
【0052】A−1 密度0.951g/cm3 、融点129℃、Q値4、メ
ルトインデックス値25g/10分であり、プロピレン
が1.5重量%ランダム共重合されたエチレン系共重合
体を鞘成分とし、密度0.920g/cm3 、融点16
2℃、Q値6.5、メルトフロ−レ−ト値30g/10
分であるプロピレン系重合体を芯成分とし、通常のエク
ストル−ダ−型押し出機で溶融した。その後、紡糸孔径
が0.5mm、孔数が390の芯鞘型複合紡糸口金を用
い、単孔吐出量を各々0.11g/分すなわち芯成分と
鞘成分の比(重量比)を1/1として230℃の紡糸温
度で溶融紡糸し、引き取り速度1100m/分で引き取
って、芯鞘型複合フィラメント糸の未延伸糸条を得た。
得られた未延伸糸条を数十本収束してトウとして、熱延
伸をした。延伸に際しては、2段熱ロ−ラ−延伸機を用
い、延伸条件を、延伸速度100m/分、第1ロ−ラ−
温度65℃、第2ロ−ラ−温度90℃,第3ロ−ラ−温
度25℃として、最大延伸倍率の90%の延伸倍率で延
伸を行った。延伸に連続して、延伸トウをスタッファボ
ックスに供給して14個/25mmの捲縮を付与した
後、仕上げ油剤を付与し温度70℃で乾燥して、単繊維
繊度0.6デニ−ル、繊維長38mmの芯鞘型複合短繊
維の原綿を得た。また得られた原綿の強伸度は3.8g
/デニール、88%であった。
【0053】A−2 単孔吐出量を各々0.08g/分とした以外はA−1と
同じ条件で紡糸延伸を行い、単繊維繊度0.4デニ−
ル、繊維長32mmの芯鞘型複合短繊維の原綿を得た。
得られた原綿の強伸度は3.6g/デニール、89%で
あった。
【0054】A−3 単孔吐出量を各々0.23g/分とした以外はA−1と
同じ条件で紡糸延伸を行い、単繊維繊度1.0デニ−
ル、繊維長38mmの芯鞘型複合短繊維の原綿を得た。
得られた原綿の強伸度は4.5g/デニール、88%で
あった。
【0055】A−4 密度0.936g/cm3 、融点125℃、Q値3、メ
ルトインデックス値43の線状低密度ポリエチレンと、
密度0.919g/cm3 、融点163℃、Q値6.
0、メルトフロ−レ−ト値15g/分のプロピレン系重
合体とを重量比で90/10でブレンドしたものを鞘成
分とし、密度0.920g/cm3 、融点163℃、Q
値6.0、メルトフロ−レ−ト値30g/分であるプロ
ピレン系重合体を芯成分とした。これらを、通常のエク
ストル−ダ−型押し出機で溶融した後、紡糸孔径が0.
5mm、孔数が300の芯鞘型複合紡糸口金を用い、単
孔吐出量を各々0.11g/分すなわち芯成分と鞘成分
の複合比(重合比)を1/1として、230℃の紡糸温
度で溶融紡糸し、引き取り速度1100m/分で引き取
って芯鞘型複合フィラメント糸の未延伸糸条を得た。得
られた未延伸糸条を数十本収束してトウとし、A−1原
綿の方法と同じ方法で熱延伸をし、温度70℃で乾燥し
て、後単繊維繊度0.6デニ−ル、繊維長38mmの芯
鞘型複合短繊維の原綿を得た。得られた原綿の強伸度は
3.7g/デニール、90%であった。
【0056】A−5 密度0.961g/cm3 、融点136℃、Q値4、メ
ルトインデックス値20の高密度ポリエチレンを鞘成分
とし、密度0.920g/cm3 、融点163℃、Q値
6.0、メルトフロ−レ−ト値30g/分であるプロピ
レン系重合体を芯成分とした。これらを、通常のエクス
トル−ダ−型押し出機で溶融した後、紡糸孔径が0.5
mm、孔数が390の芯鞘型複合紡糸口金を用い、単孔
吐出量を各々0.5g/分すなわち芯成分と鞘成分の複
合比(重合比)を1/1として、230℃の紡糸温度で
溶融紡糸し、引き取り速度1100m/分で引き取って
芯鞘型複合フィラメント糸の未延伸糸条を得た。得られ
た未延伸糸条を数十本収束してトウとし、A−1原綿の
方法と同じ方法で熱延伸をし、温度70℃で乾燥して、
単繊維繊度2デニ−ル、繊維長51mmの芯鞘型複合短
繊維の原綿を得た。得られた原綿の強伸度は4.7g/
デニール、91%であった。
【0057】A−6 密度0.936g/cm3 、融点126℃、Q値4、メ
ルトインデックス値43g/10分であるエチレン系重
合体と、密度0.920g/cm3 、融点162℃、Q
値6.5、メルトフロ−レ−ト値15g/10分である
プロピレン系重合体とを重量比で90/10の割合でブ
レンドした成分を鞘成分とした。また、密度0.920
g/cm3 、融点162℃、Q値6.5、メルトフロ−
レ−ト値30g/10分であるプロピレン系重合体を芯
成分とした。これらを通常のエクストル−ダ−型押し出
機で溶融した後、A−1原綿と同じ紡糸条件で芯鞘型複
合未延伸糸を採取した。引き続きA−1原綿に準じて延
伸を行って、単繊維繊度0.6デニ−ル、繊維長38m
mの芯鞘型複合短繊維の原綿を得た。この得られた原綿
の強伸度は3.9g/デニール、89%であった。
【0058】A−7 密度0.936g/cm3 、融点126℃、Q値4、メ
ルトインデックス値43g/10分であるエチレン系重
合体と、密度0.920g/cm3 、融点162℃、Q
値6.5、メルトフロ−レ−ト値15g/10分である
プロピレン系重合体とを重量比で98/2の割合でブレ
ンドした成分を鞘成分とした以外はA−6原綿を製造し
た条件を用いて、単繊維繊度0.6デニ−ル、繊維長3
8mmの芯鞘型複合短繊維の原綿を得た。この得られた
原綿の強伸度は3.8g/デニールd、88%であっ
た。
【0059】A−8 密度0.951g/cm3 、融点135℃、Q値4、メ
ルトインデックス値25g/10分であり、プロピレン
が0.2重量%ランダム共重合されたエチレン系重合体
を鞘成分とした以外は、A−3原綿を製造した条件を適
用して、単繊維繊度1.0デニール、繊維長38mmの
芯鞘型複合短繊維の原綿を得た。この得られた原綿の強
伸度は3.5g/デニール92%であった。
【0060】実施例1〜4、比較例1 芯鞘型複合短繊維としてA−1〜A−5を用い、これら
を池上機械製のカ−ド機(60−32型)に供給し開繊
して、目付50g/m2 カ−ドウェブを作成した。この
カ−ドウェブを、辻井染機工業製の連続熱処理機(熱処
理ゾーン160cm)で、熱風による熱処理温度140
℃,熱風風量100m3 /分、熱処理時間25秒の条件
で熱処理加工した。得られた不織布の物性を表1に示
す。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、特定のエチレン系重合
体、すなわちエチレン系重合体とプロピレン系重合体と
のブレンド構造体またはプロピレンが共重合されたエチ
レン系重合体で鞘部を構成したため、これらブレンド構
造体および共重合体においては鞘部の紡糸延伸時の伸長
特性が改善され、一方共重合体の場合はさらに鞘部に芯
部のプロピレン系重合体との親和性が付与されて、芯鞘
層の剥離が解消され、このため曳糸性が向上することに
なって細繊度の繊維からなる不織布を得ることができ
る。すなわち本発明の熱接着不織布は、ポリオレフィン
系の極細芯鞘型複合短繊維から構成され、このため不織
布強力が高く、柔軟性が極めて優れており、また嵩高で
保水性が極めて優れている。またエチレン系重合体とプ
ロピレン系重合体とのブレンド構造体またはプロピレン
が共重合されたエチレン系重合体で鞘部を構成した繊維
を用いているので、ポリエチレン独特のヌメリ感を持た
ず、非常に地合いが良く、良好な肌ざわりを持ってい
る。このため、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の医
療衛生材用途に特に適している。また耐薬品性を持ちし
かも保水性に優れているため、乾電池セパレ−タとして
も特に適したものとなる。そのほかには、農芸園芸資
材、生活関連資材としての包装材やフィルタ−等、広範
囲の用途に適用できるものである。
【0062】表1から明らかなように、実施例1〜4に
おいては、単繊維繊度が小さくなるほど、強力が高く、
保水性に優れた不織布が得られることが分かる。比較例
1では、単繊維繊度が大きいため、不織布を構成する繊
維本数が少なくなることにより、通気度が高く、保水性
に劣る不織布であった。
【0063】実施例5、6、比較例2〜4 実施例1と同じ様にしてカ−ドウェブを作成した後、熱
処理温度、熱処理時間を表2の如く変更した以外は実施
例1と同じ条件で不織布を作成した。得られた結果を表
2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】表2から明らかなように、実施例5のもの
は強力が高く、保水性に優れた不織布であることが分か
る。実施例6では、熱処理時間が長いため生産性の観点
からは問題があるが、得られた不織布は強力が高く、保
水性に優れていることが分かる。
【0066】比較例2では、熱処理温度が高過ぎるた
め、繊維を構成する芯成分も軟化し、ウェブの収縮がひ
どく、風合いも非常に硬いもので、不織布といえるもの
ではなかった。比較例3では、熱処理温度が低過ぎるた
め、繊維の接触点で全体が融着せず、不織布強力の高い
ものが得られなかった。比較例4では、熱処理時間が少
なくウェブの表面は繊維の接触点で融着しているが、裏
面では融着せず、毛羽立ちのあるものしか得られなかっ
た。 実施例7 芯鞘型複合短繊維の原綿A−6を用いて実施例1と全く
同じ条件でウェブを作成した後、不織布を作成した。そ
の不織布性能を下記に示す。実施例7のものは明らかに
強力が高く、保水性に優れた不織布であることが分か
る。また不織布の地合いも非常に優れており、肌ざわり
の良好なものであった。
【0067】記 目付 50 g/m2 引張強力 11.4 kg/2.5cm 引張伸度 39 % 嵩密度 0.042 g/cm3 MIU 0.20 通気度 20 cc/cm2・s 保水性 760 % 実施例8 芯鞘型複合短繊維の原綿A−7を用いて実施例1と全く
同じ条件でウェブを作成した後、不織布を作成した。そ
の不織布性能を下記に示す。実施例8のものは明らかに
強力が高く、保水性に優れた不織布であることが分か
る。また不織布の地合いも非常に優れており、肌ざわり
の良好なものであった。
【0068】記 目付 49 g/m2 引張強力 11.6 kg/2.5cm 引張伸度 38 % 嵩密度 0.045 g/cm3 MIU 0.35 通気度 21 cc/cm2・s 保水性 765 % 実施例9 芯鞘型複合短繊維の原綿A−8を用いて実施例1と全く
同じ条件でウェブを作成した後、不織布を作成した。そ
の不織布性能を下記に示す。実施例9のものは明らかに
強力が高く、保水性に優れた不織布であることが分か
る。また不織布の地合いも非常に優れており、肌ざわり
の良好なものであった。
【0069】記 目付 49 g/m2 引張強力 9.2 kg/2.5cm 引張伸度 37 % 嵩密度 0.032 g/cm3 MIU 0.20 通気度 25 cc/cm2・s 保水性 545 %
【0070】
【発明の効果】本発明による熱接着不織布は、ポリオレ
フィン系の細繊度の芯鞘型複合短繊維から構成されてい
るため、不織布強力が高く、嵩高で保水性が極めて優れ
ている。また特定のエチレン系重合体を鞘成分とした繊
維を用いているので、ポリエチレン独特のヌメリ感を持
たず、非常に地合いが良く、良好な肌ざわりを持ってい
る。このため、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の医
療衛生材用途に特に適している。また耐薬品性を持ちし
かも保水性に優れているため、乾電池セパレ−タとして
も特に適したものとなる。そのほかには、農芸園芸資
材、生活関連資材としての包装材やフィルタ−等、広範
囲の用途に適用できるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野口 信夫 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ 株式会社 中央研究所内 (56)参考文献 特表 平5−505856(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D04H 1/54 D01D 5/34 D01F 8/06

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン系重合体とプロピレン系重合体
    とのブレンド構造体にて形成された鞘部と、プロピレン
    系重合体の芯部とを有して、単糸繊度が0.2〜1デニ
    −ルの芯鞘型複合短繊維からなり、繊維どうしの接触点
    で接着されていることを特徴とする熱接着不織布。
  2. 【請求項2】 鞘部のエチレン系重合体とプロピレン系
    重合体との混合比が、重量比で、エチレン系重合体/プ
    ロピレン系重合体=99.5/0.5〜75/25であ
    ることを特徴とする請求項1記載の熱接着不織布。
  3. 【請求項3】 プロピレンが共重合されたエチレン系重
    合体にて形成された鞘部と、プロピレン系重合体の芯部
    とを有して、単糸繊度が0.2〜1デニ−ルの芯鞘型複
    合短繊維からなり、繊維どうしの接触点で接着されてい
    ることを特徴とする熱接着不織布。
  4. 【請求項4】 鞘部の共重合体におけるプロピレンの共
    重合比が0.2重量%以上かつ5重量%以下であり、ま
    たエチレン系重合体の共重合比が99.8重量%以下か
    つ95重量%以上であることを特徴とする請求項3記載
    の熱接着不織布。
  5. 【請求項5】 強力が5kg/2.5cm幅以上、嵩密
    度が0.03〜0.06g/cm3 、通気度が45cc
    /cm2 ・s以下、摩擦係数(MIU)が0.18以
    上、保水性が200%以上であることを特徴とする請求
    項1から4までのいずれか1項記載の熱接着不織布。
  6. 【請求項6】 エチレン系重合体とプロピレン系重合体
    とのブレンド構造体にて形成された鞘部と、プロピレン
    系重合体の芯部とを有して、単糸繊度が0.2〜1デニ
    −ルの芯鞘型複合短繊維から構成されたカードウェブ
    を、下式を満足するように熱風により熱処理して、繊維
    どうしの接触点で接着させることを特徴とする熱接着不
    織布の製造方法。 熱処理温度T(℃) Tm1≦T<Tm2−10 熱処理時間t(分) 0.1≦L/v、 L/v=t Tm1:鞘部のエチレン系重合体の融点(℃) Tm2:芯部のプロピレン系重合体の融点(℃) L :熱処理ゾ−ン長さ(m) v :熱処理速度(m/分)
  7. 【請求項7】 プロピレンが共重合されたエチレン系重
    合体にて形成された鞘部と、プロピレン系重合体の芯部
    とを有して、単糸繊度が0.2〜1デニ−ルの芯鞘型複
    合短繊維から構成されたカードウェブを、下式を満足す
    るように熱風により熱処理して、繊維どうしの接触点で
    接着させることを特徴とする熱接着不織布の製造方法。 熱処理温度T(℃) Tm1≦T<Tm2−10 熱処理時間t(分) 0.1≦L/v、 L/v=t Tm1:鞘部のエチレン系重合体の融点(℃) Tm2:芯部のプロピレン系重合体の融点(℃) L :熱処理ゾ−ン長さ(m) v :熱処理速度(m/分)
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