JP2870606B2 - マグネシウム合金製部材の成形方法及び装置 - Google Patents

マグネシウム合金製部材の成形方法及び装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マグネシウム合金から
なるディスクホイール等のワークを鍛造成形するための
方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、製品重量の軽減等を目的としてデ
ィスクホイール等にマグネシウム合金を使用することが
活発に行われている(例えば特開昭59−67102号
公報参照)。
【0003】例として、ディスクホイールをマグネシウ
ム合金で成形する場合には、次のような方法が行われ
る。まず、鍛造による塑性加工により、ワークの中心部
分(ディスク部分)を成形する。この際、上記鍛造によ
る加工硬化でディスク部分は強靱となる。次いで、この
部材をスピンフォージ(回転鍛造)することにより、回
転部分(リム部分)を形成するが、この際にも上記加工
硬化によってリム部分の強度が向上することとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記方法において、ス
ピンフォージによる成形を良好に行うためには、リム部
分をなるべく高温に加熱することが望ましい。ところ
が、この加熱による熱が上記ディスク部分に伝えられ、
このディスク部分が昇温すると、該部分において上記塑
性加工により得られていた強靱性が消失してしまう不都
合が生じる。
【0005】本発明は、このような事情に鑑み、加工硬
化による強靱性を消失することなく、良好な成形性を得
ることができるマグネシウム合金製部材の製造方法及び
装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ワークにおい
て加工しない部分を治具により把持し、この把持部分を
冷却しながら加工すべき部分を加熱して鍛造成形するも
のである(請求項1)。
【0007】具体的には、上記ワークを円板状とし、こ
のワークの中央部分を把持して同ワークを回転させなが
らその周縁部を鍛造成形するもの(請求項2)等に適用
でき、特に、ディスクホイールの成形には好適である
(請求項3)。
【0008】また、上記方法を実現するための装置とし
ては、ワークを把持する治具と、この治具により把持さ
れない部分を加熱し鍛造する鍛造成形手段とを備え、上
記治具に、この治具に把持されている部分を冷却する冷
却部を設けたものが好ましい(請求項4)。ここで、上
記請求項2記載の方法を実施するには、上記治具を自軸
回りに回転可能としたものがよい(請求項5)。
【0009】
【作用】上記構成によれば、治具で保持されていない部
分が加熱されることにより、良好な鍛造成形が行われ、
その強度が向上する。一方、治具で保持されている部分
は上記加工中に冷却されるので、この部分の強度が上記
加熱により低下することが防がれる。
【0010】
【実施例】本発明方法に基づくマグネシウム合金製ディ
スクホイールの製造工程を図1に基づいて説明する。
【0011】まず、同図左上に示されるようなマグネシ
ウム合金からなるブロック状のワーク10を成形し、こ
れを加熱しながら鍛造の荒地となる形状にする(工程P
1)。この工程P1は省略される場合もある。次に、こ
のワーク10を加熱鍛造してその中央部分(ディスク部
分)を成形する(工程P2)。この際、上記鍛造によっ
て加工硬化が生じ、ディスク部分の強靱性が高められ
る。
【0012】次いで、このワーク10を図2に示される
ようなスピニングマシンにセットし、その周縁部(リム
部分)の成形を行う(図1工程P3)。
【0013】この装置(スピニングマシン)は、メイン
モータ14で回転駆動される主軸12を備え、この主軸
12の先端部にマンドレル16が設けられている。ま
た、この主軸12と同軸の位置には心押し棒18が設け
られ、この心押し棒18の先端部に、上記マンドレル1
6と対向するディスク押え20が設けられており、両者
は自軸回りに回転駆動されるようになっている。さら
に、この装置の特徴として、上記ディスク押え20には
図1,3に示されるような不活性ガス導入穴(冷却部)
30が周方向に複数個並設されている。
【0014】このディスク押え20及び上記マンドレル
16の左右には、一次加工用サドル22及び二次加工用
サドル24が配置されている。各サドル22,24は、
所定の運動軌跡を得るための倣い装置26を備えるとと
もに、リム成形用ローラ28を回転可能に支持してい
る。
【0015】また、上記ディスク押え20及びマンドレ
ル16の近傍には、加熱用バーナ32が配置されてい
る。
【0016】この装置による鍛造の手順としては、まず
上記ワーク10を図1に示されるようにマンドレル16
にセットし、このワーク10の中央部分(ディスク部
分)に反対側からディスク押え20を圧接させる。そし
て、この状態で上記マンドレル16、ディスク押え2
0、心押し棒18、及びワーク10を一体に回転させ、
かつ上記ワークの周縁部分(リム部分)をバーナ32で
加熱しながら、この周縁部分に一次加工用サドル22に
おけるローラ28を当てて一次鍛造加工を行い、大まか
な形を形成した後、同様にして二次加工用サドル24の
ローラ28を当てて二次鍛造加工を行い、最終の形にま
で成形する。このような鍛造成形によって、リム部分に
も加工硬化が生じ、その強度が向上することとなる。
【0017】一方、上記成形の際、ディスク押え20に
設けられた不活性ガス導入穴30から窒素ガスやアルゴ
ンガス等の不活性ガスを導入することにより、上記ディ
スク押え20による把持部分(すなわちディスク部分)
を冷却する。これにより、上記リム部分で加熱鍛造が行
われる際のディスク部分の昇温が抑えられ、この昇温に
起因するディスク部分での強靱性の消失が防がれる。
【0018】このような方法及び装置によれば、ディス
ク部分の強靱性を十分に保持しながら、リム部分の鍛造
加工を不都合なくスムーズに進行させることができる。
【0019】なお、このリム部分での加熱温度は、具体
的な材質に応じて適宜設定すればよいが、ここでは、マ
グネシウム合金の代表例としてZK60及びAZ80を
用いた場合の好適温度を説明する。
【0020】(a) ZK60(Al:7.8〜9.2%、Zn:0.2〜
0.8%、Mn:0.12%以上) 図4は、ZK60からなる部材の温度に対する硬さ(ビ
ッカース硬さ)及び限界据え込み率を示したものであ
る。ここで限界据え込み率とは、図6Aに示されるよう
な変形前の部材の軸方向寸法をLo、同図Bに示される
ようにひび34が入る限界まで圧縮された後の上記方向
の寸法をLとしたとき、(L−Lo)/Lで表されるも
のであり、成形良好性の目安となるものである。
【0021】この図に示されるように、温度の上昇とと
もに限界据え込み率は上昇するが、硬さは減少するの
で、双方を加味した温度設定が必要である。具体的に、
このZK60では、温度T1(330℃)以上で限界据
え込み率が40%以上となり、鍛造成形性が良好となり
始めるが、温度T2(430℃)以上で酸化(いわゆる
高温酸化)し易くなり始めるため、両温度の間の領域に
加熱温度を設定することが望ましい。
【0022】(b) AZ80(Zn:4.8〜6.2%、Zr:0.45
%以上) 図5は、ZK60からなる部材の温度に対する硬さ(ビ
ッカース硬さ)及び限界据え込み率を示したものであ
る。この図に示されるように、AZ80からなる部材に
おいても、温度の上昇とともに限界据え込み率の上昇及
び硬さの減少が見られる。具体的に、温度T3(370
℃)以上で鍛造成形性が良好となり始めるが、420℃
以上で酸化し易くなるため、両温度の間の領域に加熱温
度を設定することが望ましい。
【0023】なお、上記実施例では、ワーク10がディ
スクホイールである例を示したが、本発明はこれに限ら
ず、治具で一部が把持され、他の部分が加熱鍛造成形さ
れる種々の製品について適用することが可能である。
【0024】また、本発明では、冷却手段の具体的な構
成を問わず、例えば上記ディスク押え20内に冷却水を
通してディスク押え20を冷却するようにしてもよい。
ただし、ワークに直接冷却媒体を吹き付けるようにする
場合には、高温のマグネシウム合金が酸化しないように
上記のような不活性ガスを用いることが極めて好まし
い。
【0025】
【発明の効果】以上のように本発明は、ワークにおいて
加工しない部分を治具により把持し、この把持部分を冷
却しながら加工すべき部分を加熱して鍛造成形するもの
てあるので、上記冷却によって、治具による把持部分の
強靱性を十分に保ちながら、他の部分を加熱して良好な
鍛造成形を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるディスクホイールの
製造方法を示す工程図である。
【図2】同方法において用いられるスピニングマシンの
一部断面平面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】マグネシウム合金ZK60における温度と硬さ
及び限界据え込み率との関係を示すグラフである。
【図5】マグネシウム合金AZ80における温度と硬さ
及び限界据え込み率との関係を示すグラフである。
【図6】A,Bは限界据え込み率を説明するための説明
図である。
【符号の説明】
10 ワーク 12 主軸(治具) 16 マンドレル(治具) 18 心押し棒(治具) 20 ディスク押え(治具) 26 ローラ(鍛造成形手段) 30 不活性ガス導入穴(冷却部) 32 バーナ(鍛造成形手段)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワークにおいて加工しない部分を治具に
    より把持し、この把持部分を冷却しながら加工すべき部
    分を加熱して鍛造成形することを特徴とするマグネシウ
    ム合金製部材の成形方法。
  2. 【請求項2】 上記ワークは円板状であり、このワーク
    の中央部分を把持して同ワークを回転させながらその周
    縁部を鍛造成形することを特徴とする請求項1記載のマ
    グネシウム合金製部材の成形方法。
  3. 【請求項3】 上記ワークがディスクホイールであるこ
    とを特徴とする請求項2記載のマグネシウム合金製部材
    の成形方法。
  4. 【請求項4】 ワークを把持する治具と、この治具によ
    り把持されない部分を加熱し鍛造する鍛造成形手段とを
    備え、上記治具に、この治具に把持されている部分を冷
    却する冷却部を設けたことを特徴とするマグネシウム合
    金製部材の成形装置。
  5. 【請求項5】 上記治具が自軸回りに回転可能であるこ
    とを特徴とする請求項4記載のマグネシウム合金製部材
    の成形装置。
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