JP2865377B2 - セラミックス製品の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明はセラミックススラリの脱泡を行うセラミック
ス製品の製追方法に関する。

（従来の技術） セラミックスはその熱的性質、電気的性質、機械的性
質が優れているために、各種炉用部品、機械部品、ICパ
ッケージなどの広い分野に使用されている。

このセラミックス製品は初めセラミックス成形体を成
形し、次いでこの成形体を焼結して製造しているが、こ
のセラミックス成形体を成形する方法として、セラミッ
クス粉末に液体分を添加混合してスラリとし、このスラ
リを材料として成形体を成形する方法がある。

このスラリを使用する分野の成形方法には、スリッブ
キャスト成形法、カレンダー成形法、ドクタブレード成
形法、押し出し成形法、射出成形法などが挙げられる。

しかして、このようなスラリを使用する成形方法にお
いて注意すべきことは、スラリにおける気泡の存在であ
り、気泡が存在するままでスラリを成形して焼結する
と、焼結体に気泡が残り、これが製品の欠陥となり健全
な製品が得られなくなる。このため、成形体における気
泡の存在には注意して極力多くの気泡をスラリから取り
除く必要かある。このため、スラリを使用して成形体を
成形する方法では、従来からスラリを成形する前の段階
でスラリから気泡を取り除く脱泡処理が行われている。

（発明が解決しようとする課題） しかしながら、従来からスラリの脱泡処理を行うため
に種々の方法が採用されているが、いずれも処理能率が
低かった。例えば、スリップキャスト成形法において
は、スラリを真空容器に入れ、真空容器に設けた回転羽
根によりスラリを撹拌することにより脱泡を行うバッチ
式の方法が採用されている。しかし、この方法でも良好
に脱泡を行うことが困難であった。

本発明は前記事情に基づいてなされたもので、セラミ
ックススラリに対する脱泡処理を能率良く行うことがで
きるセラミックス製品の製造方法を提供することを目的
とする。

［発明の構成］ （課題を解決するための手段と作用） 本発明の発明者はセラミックススラリに対する脱泡作
用の方法について種々研究を重ねてきた。この結果、従
来の脱泡処理方法はいずれもセラミックススラリの表面
積、すなわち外気と接触する面積が小さく、このためス
ラリに含まれる気泡がセラミックススラリ内部からスラ
リ表面に到達する時間が係り、脱泡処理の能率が低いこ
とがわかった。

例えばスリッブキャスト成形法において採用されてい
るバッチ攪拌式の脱泡処理方法では、容器に溜められた
スラリが外気と接触する表面部分が狭く、スラリの内部
に含まれる気泡が外気中に脱出することが可能なスラリ
の表面部分が液面部分に限定されているために、気泡が
液面まで到達して外気中に脱出するのに要する時間が長
くなる。特に細かい気泡はスラリの液面に到達する時間
が多くかかる。このため、一定時間内で脱泡される気泡
の数に限界があり、スラリに残存する気泡の数が多く処
理能率が低かった。

本発明はこの知見に基づいてなされたものである。

本発明のセラミックスの製造方法は、セラミックス粉
末を含むスラリを作製し、このスラリを噴霧状態にする
ことにより、そのスラリをその表面積を大きくした状態
で脱泡処理することを特徴とするものである。

また、スラリの粘度は2500CPS以下が好ましい。

すなわち、本発明のセラミックス製品の製造方法で
は、スラリの表面積すなわちスラリが外気と接触する面
積を大きくすることにより、スラリに含まれる気泡が外
気中に脱出する表面部分が大きくなるために、気泡がス
ラリ内部からスラリ表面に到達して外気中に脱出する時
間が短く、一定の時間内に多くの気泡が脱出することが
できる。特に細かい気泡も容易に外気中に脱出させるこ
とができる。

本発明の製造方法は、スラリを使用して成形体を成形
する方法に適用できる。この成形方法としては、スリッ
プキャスト成形法、ドクターブレード成形法、カレンダ
成形法、押し出し成形法、射出成形法などが挙げられ
る。

本発明の製造方法を実施するに際しては、まず所定の
セラミックス粉末に所定の液体成分を添加混合してスラ
リを作製する。セラミックス粉末は炭化けい素、窒化け
い素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ほう
素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。セラミックス
粉末に添加する成分は各成形方法に応じて選択する。次
に作成したスラリに対して脱泡処理を行う。

具体的な脱泡処理の方法は、スラリを噴霧状態にして
流す手段である。そしてこのスラリを噴霧状態にして流
す方法は、スラリをノズルより噴霧することにより得ら
れ、表面積が大きいものが得られ且つ効率が良い利点が
ある。

脱泡処理を実施するに際しては、次に述べる雰囲気の
条件で行う。真空度は10torr以上、100torr以下の真空
度が望ましい。これは真空度が10torr未満であると、ス
ラリからの水分の蒸発が多くなり、スラリの粘性が高く
なる。20torr以上であることが好ましい。また、100tor
rを越えると脱泡能力が低下して良好な脱泡が期待でき
ない。スラリの温度はスラリからの水分の蒸発を押さえ
るために５℃程度にする。スラリの粘度は、2500センチ
・ポイズ（CPS）以下が好ましい。これ以上粘度が高い
と霧状にすることが困難になる。スラリを噴霧した霧状
物の大きさが10μｍ以下であると蒸発量が多く粘性が上
がってしまい、500μｍ以上であると良好な脱泡が期待
できない。

（実施例） 以下に述べる実施例はスリップキャスト法により成形
体を成形する製造方法に適用したものである。

実施例１ スラリを噴霧状態にして脱泡処理する実施例について
説明する。

SiC900gと水1500cc、焼結助剤としてB₄C、カーボンブ
ラックを含んだ粉末をボールミルで48時間混合してスラ
リを得た。

次いで、第１図に示す装置を用いて前記スラリを噴霧
して脱泡を行った。この噴霧脱泡装置は、真空容器11
と、スラリ導入パイブ12と、スプレーノズル13と、スラ
リ取出しパイプ14および真空引きパイブ15を備えたもの
である。セラミックススラリＳはスラリ導入パイプ12か
ら導入してスプレーノズル13から真空容器11の内部に噴
霧する。噴霧したスラリＳは容器11内部に溜めてスラリ
取出しパイブ14から取出す。スラリＳは噴霧されて細か
く分散した状態になると、外気に触れる表面積が大きい
ために、スラリに含まれる気泡が近くのスラリ表面に迅
速に到達して脱出し、良好に脱泡が行える。従って、短
時間で残留気泡がほとんど無いスラリを得ることができ
る。

次いで、このスラリを石膏型に鋳込んで50mm×50mm×
7mmの成形体を成形し、この成形体を2100℃、４時間の
条件で焼結した。そして、この焼結体をＸ線検査、蛍光
探傷検査を行い100μｍ以上の気泡の数を調べた。この
結果、脱泡時間２分、Ｘ線検査により発見した気泡の数
１個、蛍光検査により発見した気泡の数０個であった。

従来例として、本発明例と同じ材料でスラリを作製
し、このスラリをバッチ撹拌式の脱泡を行い、その後ス
ラリを本発明例と同じ条件で成形体を成形し、この成形
体を焼結して焼結体を作製した。そして、この焼結体を
Ｘ線検査、蛍光探傷検査を行い100μｍ以上の気泡の数
を調べた。この結果、脱泡時間60分、Ｘ線検査により発
見した気泡の数８個、蛍光検査により発見した気泡の数
６個であった。この結果を本発明例製品の検査結果と比
較すると、製品における気泡の数が少なく、また脱泡時
間も大幅に短縮されていることがわかる。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明のセラミックス製品の製造
方法によれば、スラリに含有される気泡を能率良く脱出
させ、含有気泡が少ない良質な成形体を生産性良く作製
することができる。そして、スラリの表面積を大きくす
る手段として、スラリを噴霧状態にする手段を採用する
ことにより、スラリの表面積を良好に大きくすることが
できる。さらに、スラリの粘度は2500CPS以下とする
と、さらに良好にスラリの表面積を大きくすることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の製造方法の実施例を説明する図であ
る。 11…容器、13…スブレーノズル。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】セラミックス粉末を含むスラリを作製し、
   このスラリを噴霧状態にすることにより、その表面積を
   大きくした状態で脱泡処理することを特徴とするセラミ
   ックス製品の製造方法。
2. 【請求項２】スラリの粘度が2500CPS以下である請求項
   １に記載のセラミックス製品の製造方法。