JP2862037B2 - 低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザ及びその製造方法 - Google Patents

低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザ及びその製造方法

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JP2862037B2
JP2862037B2 JP8350392A JP8350392A JP2862037B2 JP 2862037 B2 JP2862037 B2 JP 2862037B2 JP 8350392 A JP8350392 A JP 8350392A JP 8350392 A JP8350392 A JP 8350392A JP 2862037 B2 JP2862037 B2 JP 2862037B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、夫々異なる波長のレ
ーザ光線を出射する複数の発光領域を有する共振器端面
に低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザ及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】上記従来の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザは、図8(b)に示すように、互いに平行
する導波路4、5を有する共振器1を具備し、この共振
器1の発光領域18、19側の端面(図の上面)に略均
一な厚みの低反射率膜3が形成されている。この低反射
率膜3は、SiN膜(Si窒化膜)であり、波長の異な
るレーザ光線が対応する各導波路4、5を通り夫々の発
光領域18、19から出射する際に、発光領域18、1
9の端面での反射を減らし、この端面における透過率を
増加させて、高い光出力を得ることができるようにする
ための膜である。この発光領域18、19の端面におけ
る反射率と膜厚dとの関係を図9に示す。そして、低反
射率膜3の条件は、その屈折率n、厚さd、出射するレ
ーザ光線の波長λ1 とすれば、膜厚d1 =λ1 /4nの
ときに、反射率が最も小さくなる。ただし、図8(b)
に示すように、2つの各発光領域から異なる波長のレー
ザ光線を出射する共振器1では、その端面に例えば膜厚
15=(d1 +d2 )/2の低反射率膜3を形成するこ
とにより、夫々の発光領域の端面における反射率を比較
的小さくしている。なお、d1 =λ1 /4n、d2 =λ
2 /4n、λ1 は発光領域18から出射するレーザ光線
の波長、λ2 は発光領域19から出射するレーザ光線の
波長である。
【0003】次に、上記多波長の半導体レーザに低反射
率膜3を形成する手順を図8を参照して説明する。ま
ず、図8(a)に示すように、互いに平行する導波路
4、5を有する共振器1を製造する。次に、この共振器
1の発光領域18、19側の端面に例えば光CVD法
(光気相成長法)により膜厚d15の低反射率膜3を形成
する(図8(b)参照)。なお、光CVD法によりSi
N膜を形成するときは、原料となるシランやアンモニア
等のガスを上記端面側に流し、レーザ光線を所定時間照
射することにより、この端面に一定の膜厚d15の低反射
率膜3を形成することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図8(b)に
示す低反射率膜3を設けた多波長の半導体レーザでは、
各発光領域18、19の表面に形成されている低反射率
膜3の膜厚がd3 =(d1 +d2 )/2であり、発光領
域18、19の各端面の反射率を最も小さくすることが
できるd1 =λ1 /4n、d2 =λ2 /4nの膜厚とな
っていない。この為に、各発光領域18、19の端面に
おける反射率が最小とならず、それら各発光領域18、
19から効率的にレーザ光線を出射させることができな
いという問題がある。
【0005】本発明は、多波長の半導体レーザの各発光
領域から効果的にレーザ光線を出射させることができる
低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザ及びその製造
方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明の低反射率膜
を設けた多波長の半導体レーザは、端面にN(Nは複
数)個のレーザ光線発光領域を有しこれらの発光領域か
らそれぞれ異なる波長(λ1、λ2、・・、λN)のレ
ーザ光線を出射する共振器と、上記共振器の端面におけ
るレーザ光線のそれぞれの反射率が小さくなるように各
発光領域の表面に形成されている低反射率膜と、を具備
する低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザにおい
て、上記低反射率膜の各発光領域の表面部分の膜厚が、
その膜が形成されている上記発光領域から出射するレー
ザ光線の波長がλ1、λ2、・・、λN、上記低反射率
膜の屈折率がnであるとき、実質的にλ1/(4n)、
λ2/(4n)、・・、λN/(4n)に形成されてい
ることを特徴とするものである。
【0007】第2の発明の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザの製造方法は、端面に複数のレーザ光線発
光領域を有しこれら発光領域のうち少なくとも2以上の
発光領域から夫々異なる波長のレーザ光線を出射する共
振器を製造する段階と、上記2以上の各発光領域の表面
に各表面から出射する各レーザ光線の波長λの長さと略
比例する厚みλ/(4n)(ただし、nは低反射率膜の
屈折率。)又はそれに近い厚みの低反射率膜を光CVD
法により形成する段階と、を有する低反射率膜を設けた
多波長の半導体レーザの製造方法において、上記低反射
率膜を光CVD法により形成する段階が、上記2以上の
各発光領域の表面に各表面から出射する夫々のレーザ光
線の波長λの長さと略比例する強さの光が照射されるよ
うに透過率の異なる2以上の領域を有するNDフィルタ
を介して光源から光を照射することを特徴とする方法で
ある。
【0008】第3の発明の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザの製造方法は、端面に複数のレーザ光線発
光領域を有しこれら発光領域のうち少なくとも2以上の
発光領域から夫々異なる波長のレーザ光線を出射する共
振器を製造する段階と、上記共振器の上記端面に光学薄
膜を形成する段階と、上記光学薄膜をフォトケミカルエ
ッチング法によってエッチングすることにより上記2以
上の各発光領域の表面に各表面から出射する各レーザ光
線の波長λの長さと略比例する厚みλ/(4n)(ただ
し、nは低反射率膜の屈折率。)又はそれに近い厚みの
低反射率膜を形成する段階と、を有する低反射率膜を設
けた多波長の半導体レーザの製造方法において、上記光
学薄膜をフォトケミカルエッチング法によりエッチング
することにより上記低反射率膜を形成する段階が、上記
2以上の各発光領域に形成された上記光学薄膜の対応す
る表面部分に各表面部分から出射する夫々のレーザ光線
の波長の長さと略反比例する強さの光が照射されるよう
に透過率の異なる2以上の領域を有するNDフィルタを
介して光源から光を照射することを特徴とする方法であ
る。
【0009】
【作用】第1の発明の低反射率膜を設けた多波長の半導
体レーザによると、共振器の各発光領域の表面に形成さ
れている低反射率膜の各膜厚が、その膜が形成されてい
る発光領域の表面から出射するレーザ光線の波長がλ
1、λ2、・・、λNで、低反射率膜の屈折率がnであ
るとき、実質的にλ1/(4n)、λ2/(4n)、・
・λN/(4n)に形成されているので、各発光領域の
端面でのレーザ光線の反射率を最も小さく又は比較的小
さくすることができる。
【0010】第2の発明の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザの製造方法によると、低反射率膜を光CV
D法により形成する段階が、夫々異なる波長のレーザ光
線を出射する各発光領域の表面に、各表面から出射する
夫々のレーザ光線の波長の長さと略比例する強さの光が
照射されるように透過率の異なる2以上の領域を有する
NDフィルタを介して光源から光を照射しているので、
各発光領域の表面に形成される低反射率膜の成長スピー
ドを、対応する各発光領域から出射するレーザ光線の波
長の長さに略比例させることができる。従って、光を各
発光領域に照射する時間を適切に選ぶことにより、例え
ば波長λ1 、波長λ2 のレーザ光線を出射する各発光領
域の表面に夫々λ1 /(4n)、λ2 /(4n)の膜
厚、又はそれに近い膜厚の低反射率膜を同時に形成する
ことができる。ただし、nは低反射率膜の屈折率であ
る。
【0011】第3の発明の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザの製造方法によると、予め共振器の端面に
形成した光学薄膜をフォトケミカルエッチング法によっ
てエッチングすることにより各発光領域の表面に低反射
率膜を形成する段階が、各発光領域に形成された光学薄
膜の対応する表面部分に、各表面部分から出射する夫々
のレーザ光線の波長の長さと略反比例する強さの光が照
射されるように、透過率の異なる複数の領域を有するN
Dフィルタを介して光源から光を照射している。これに
より、光学薄膜の各発光領域と対応する表面部分をエッ
チングするスピードを、対応する各発光領域から出射す
るレーザ光線の波長の長さに略反比例させることができ
る。従って、光学薄膜に光を照射する時間を適切に選ぶ
ことにより、例えば波長λ1 、波長λ2 のレーザ光線を
出射する各発光領域の表面に夫々λ1 /(4n)、λ2
/(4n)の膜厚、又はそれに近い膜厚の低反射率膜を
同時に形成することができる。ただし、nは低反射率膜
(光学薄膜)の屈折率である。
【0012】
【実施例】本発明の低反射率膜を設けた多波長の半導体
レーザの第1実施例を図1を参照して説明する。図1に
示す1は、半導体レーザの共振器である。この共振器1
には、互いに平行し、図1の上下方向に伸延する導波路
4、5が設けられている。この2つの導波路4、5の各
上端面にはレーザ光線発光領域18、19が形成されて
いる。そして、図1の左側の発光領域18からは波長λ
1 のレーザ光線が図1の上方に向かって出射され、右側
の発光領域19からは波長λ2 のレーザ光線が図1の上
方に向かって出射される。そして、図1に示すように、
発光領域18の上面には膜厚λ1 /(4n)=d1 の低
反射率膜6、即ち、SiN膜6(Si3 4 )を設けて
あり、発光領域19の上面には膜厚λ2 /(4n)=d
2 の同SiN膜7(Si3 4 )を設けてある。ただ
し、nは、SiN膜6、7(Si3 4 )の屈折率であ
る。
【0013】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザによると、共振器1の各発光領域18、19の表面
に形成されている低反射率膜6、7の各膜厚がd1 、d
2 であるので、各発光領域18、19の端面におけるレ
ーザ光線の反射率を最小にすることができる。即ち、図
1の左側に示す導波路4内で発振する波長λ1 のレーザ
光線を効率的にその発光領域18から出射させることが
できるし、図1の右側に示す導波路内5で発振する波長
λ2 のレーザ光線を効率的にその発光領域19から出射
させることができる。
【0014】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザの製造方法を図1を参照して説明する。まず、この
半導体レーザの共振器1を製造する。次に、シラン化合
物(例えばSiH4 )とNH3 ガスが供給されている反
応管(図示せず)内に共振器1を配置する。そして、図
1に示すように、共振器1の発光領域18、19側の面
の上方位置にNDフィルタ8を配置し、このNDフィル
タ8を介して150nm以下の短波長のレーザ光線を各
発光領域18、19とその周辺部に照射する。ただし、
NDフィルタ8は、図1に示すように、透過率の異なる
3つの領域8a、8b、8cを有している。即ち、発光
領域18とその周辺部の面積と略等しい面積の領域8a
と、発光領域19とその周辺部の面積と略等しい面積の
領域8bと、それ以外の領域8cとを有している。領域
8aの透過率aと領域8bの透過率bとの比a/bは、
各発光領域18、19から出射するレーザ光線の波長の
比λ1 /λ2 と略一致するように各領域を形成してい
る。なお、領域8cの透過率は、略0である。これによ
り、各発光領域18、19とその周辺部には、波長
λ1 、λ2 と比例するレーザ光線を照射することができ
る。従って、NDフィルタ(部分によって透過率が異な
るフィルタ)8を介してレーザ光線を各発光領域等に所
定時間照射することにより、発光領域18等の表面に膜
厚d1 =λ1 /(4n)の低反射率膜6、即ち、SiN
膜(Si3 4 )を形成することができると共に、発光
領域19等の表面に膜厚d2 =λ2 /(4n)の同Si
N膜7(Si3 4 )を形成することができる。なお、
シラン化合物(例えばSiH4 )とNH3 ガスが供給さ
れている反応管内に共振器1を配置して、共振器1の各
発光領域18、19等にレーザ光線を照射して各発光領
域18、19等の表面にSiN膜6、7(Si3 4
を形成する方法は、光CVD法に基づくものである。
【0015】第2実施例を図2を参照して説明する。こ
の実施例の低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザと
第1実施例のものと相違するところは、第1実施例の低
反射率膜6、7が平板状の2つの薄膜からなっているの
に対して、第2実施例の低反射率膜11(SiN膜(S
3 4 ))が図2に示すように、1枚の薄膜からなっ
ており、この低反射率膜11の上面が傾斜面に形成され
ているところである。ただし、その他の部分は第1実施
例と同等である。そして、第2実施例の低反射率膜11
の各発光領域の表面の膜厚は、第1実施例と同様にd1
=λ1 /(4n)とd2 =λ2 /(4n)に形成してあ
るので、第1実施例と同様に、各発光領域18、19の
端面におけるレーザ光線の反射率を最小にすることがで
き、これにより、各導波路4、5内で発振する波長
λ1 、λ2 の各レーザ光線を効率的に対応する各発光領
域18、19から出射させることができる。
【0016】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザの製造方法を図2を参照して説明する。第2実施例
の製造方法と第1実施例の製造方法とが相違するところ
は、NDフィルタが相違しているところである。第2実
施例のNDフィルタ9は、図2に示すように、2つの発
光領域18、19を覆う領域9aと、この領域9aの両
側の領域9bとを有している。領域9aのレーザ光線の
透過率は、同図に示すように、発光領域18、19の夫
々の上方位置の部分でa、bとなるように、発光領域1
8側から19側に向かうに従って徐々に透過率が小さく
なっている。そして、領域9bの透過率は略0となって
いる。従って、このNDフィルタ9を使用することによ
り、第1実施例と同様の製造方法によって図2の低反射
率膜11を設けた多波長の半導体レーザを製造すること
ができる。
【0017】第3実施例を図3を参照して説明する。こ
の実施例の低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザと
第1実施例のものと相違するところは、第1実施例の共
振器1が2つの発光領域を有しているのに対して、第3
の実施例の共振器2が5つの各導波路20〜24ごとに
形成されている5つの発光領域25〜29を有している
ことと、第1実施例の低反射率膜6、7が平板状の2つ
の薄膜からなっているのに対して、第3実施例の低反射
率膜31(SiN膜(Si3 4 ))が図3に示すよう
に、1枚の薄膜からなっており、この薄膜の上面が上に
凸状の屈曲面に形成されているところである。ただし、
その他の部分は第1実施例と同等である。そして、第3
実施例の低反射率膜31の各発光領域25〜29の表面
の膜厚d3 〜d7 は、d3 =λ3 /(4n)、d4 =λ
4 /(4n)、・・・・、d7 =λ7 /(4n)に形成
してあるので、第1実施例と同様に、各発光領域25〜
29の端面におけるレーザ光線の反射率を最小にするこ
とができ、これにより、各導波路20〜24内で発振す
る波長λ3 、λ4 、・・・・、λ7 の各レーザ光線を効
率的に対応する各発光領域25〜29から出射させるこ
とができる。
【0018】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザの製造方法を図3を参照して説明する。第3実施例
の製造方法と第1実施例の製造方法とが相違するところ
は、NDフィルタが相違しているところである。第3実
施例のNDフィルタ30は、図3に示すように、5つの
発光領域25〜29を覆う領域30aと、この領域30
aの両側の領域30bとを有している。領域30aのレ
ーザ光線の透過率は、同図に示すように、発光領域25
〜29の夫々の上方位置の部分でc〜gとなるように、
領域30aの中央部から両端側に向かうに従って徐々に
透過率が小さくなっている。そして、領域30bの透過
率は略0となっている。従って、このNDフィルタ30
を使用することにより、第1実施例と同様の製造方法に
よって図3の低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザ
を製造することができる。
【0019】第4実施例を図4及び図5を参照して説明
する。この実施例の低反射率膜を設けた多波長の半導体
レーザの共振器1は、第1実施例と同等のものである。
そして、図5に示すように、発光領域18、19の上面
には低反射率膜32(SiO2 膜)を設けてある。そし
て、発光領域18の表面の膜厚は、λ1 /(4m)=d
8 であり、発光領域19の表面のは膜厚はλ2 /(4
m)=d9 である。ただし、mは、SiO2 膜の屈折率
である。そして、図5に示すように、この2つの発光領
域18、19及びその周辺部以外の部分の膜厚は、d0
(d0 >d8 >d9 )である。
【0020】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザによると、共振器1の各発光領域18、19の表面
における低反射率膜32の各膜厚がd8 、d9 であるの
で、第1実施例と同様に、各発光領域18、19の端面
におけるレーザ光線の反射率を最小にすることができ、
これにより、各導波路4、5内で発振する波長λ1 、λ
2 の夫々のレーザ光線を効率的に各発光領域18、19
から出射させることができる。
【0021】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザの製造方法を図4及び図5を参照して説明する。ま
ず、この半導体レーザの共振器1を製造する。そして、
図4に示すように、共振器1の発光領域18、19側の
端面に膜厚d0 の光学薄膜34(SiO2 膜)を例えば
蒸着、スパッタリング等の方法により形成する。次に、
フッ素化合物(例えばCF3 Br)のガスが供給されて
いる反応管(図示せず)内に共振器1を配置する。そし
て、図5に示すように、共振器1の発光領域18、19
側の面の上方位置にNDフィルタ33を配置し、このN
Dフィルタ33を介して150nm以下の短波長のレー
ザ光線を各発光領域18、19とその周辺部に照射す
る。ただし、NDフィルタ33は、図5に示すように、
透過率の異なる3つの領域33a〜33cを有してい
る。即ち、発光領域18とその周辺部の面積と略等しい
面積の領域33aと、発光領域19とその周辺部の面積
と略等しい面積の領域33bと、それ以外の領域33c
とを有している。領域33aの透過率hと領域33bの
透過率iとの比h/iは、各発光領域18、19から出
射するレーザ光線の波長の比λ1 /λ2 に対して略反比
例するように形成している。なお、領域33cの透過率
は、略0である。これにより、各発光領域18、19と
その周辺部には、波長λ1 、λ2 と略反比例する強さの
レーザ光線を照射することができる。従って、NDフィ
ルタ33を介してレーザ光線を各発光領域18、19等
の表面に形成されている光学薄膜34の上面に所定時間
照射して、各発光領域18、19等の上面の光学薄膜3
4(SiO2 膜)の表面をエッチングすることにより、
発光領域18等の表面に膜厚d8 =λ1 /(4m)の低
反射率膜を形成することができると共に、発光領域19
等の表面に膜厚d9 =λ2 /(4)の低反射率膜32
を形成することができる。なお、フッ素化合物(例えば
CF3 Br)が供給されている反応管内に光学薄膜34
を形成した共振器1を配置して、光学薄膜34の各発光
領域18、19等に対応する表面部分にレーザ光線を照
射して、各発光領域18、19等の表面部分の光学薄膜
34をエッチングする方法は、フォトケミカルエッチン
グ法に基づくものである。
【0022】第5実施例を図6を参照して説明する。こ
の実施例の低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザと
第4実施例のものと相違するところは、第4実施例の低
反射率膜32の各発光領域18、19とその周辺部分と
対応する各部分の膜厚がd8、d9 となっているのに対
して、第5実施例の低反射率膜35(SiO2 膜)が図
6に示すように、その薄膜35の上面が傾斜面に形成さ
れているところである。ただし、その他の部分は第4実
施例と同等である。そして、第5実施例の低反射率膜3
5の各発光領域18、19の表面の膜厚d8 、d9 は、
第4実施例と同様にd8 =λ1 /(4m)、d9 =λ2
/(4m)に形成してあるので、第4実施例と同様に、
各発光領域18、19の端面におけるレーザ光線の反射
率を最小にすることができ、これにより、各導波路4、
5内で発振する波長λ1 、λ2 の各レーザ光線を効率的
に対応する各発光領域18、19から出射させることが
できる。
【0023】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザの製造方法を図6を参照して説明する。第5実施例
の製造方法と第4実施例の製造方法とが相違するところ
は、NDフィルタが相違しているところである。第5実
施例のNDフィルタ36は、図6に示すように、2つの
発光領域18、19とその周辺部分を覆う領域36a
と、この領域36aの両側の領域36bとを有してい
る。領域36aのレーザ光線の透過率は、同図に示すよ
うに、発光領域18、19の夫々の上方位置の部分で
h、iとなるように、発光領域18側から19側に向か
うに従って徐々に透過率が大きくなっている。そして、
領域36bの透過率は略0となっている。従って、この
NDフィルタ36を使用することにより、第4実施例と
同様の製造方法によって図6の低反射率膜35を設けた
多波長の半導体レーザを製造することができる。
【0024】第6実施例を図7を参照して説明する。こ
の実施例の低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザと
第4実施例のものと相違するところは、第4実施例の共
振器1が2つの発光領域18、19を有しているのに対
して、第6の実施例の共振器2が5つの各導波路20〜
24ごとに形成されている5つの発光領域25〜29を
有していることと、第4実施例の図5に示す低反射率膜
32の各発光領域18、19とその周辺部分と対応する
各部分の膜厚がd8 、d9 となっているのに対して、第
6実施例の低反射率膜37(SiO2 膜)が図7に示す
ように、その薄膜37の上面が上に凸状の滑らかな屈曲
面に形成されているところである。ただし、その他の部
分は第4実施例と同等である。そして、第6実施例の低
反射率膜37の各発光領域25〜29の表面の膜厚d10
〜d14は、d10=λ3 /(4m)、d11=λ4 /(4
m)、・・・・、d14=λ7 /(4m)に形成してある
ので、第4実施例と同様に、各発光領域25〜29の端
面におけるレーザ光線の反射率を最小にすることがで
き、これにより、各導波路20〜24内で発振する波長
λ3 、λ4 、・・・・、λ7 の各レーザ光線を効率的に
対応する各発光領域25〜29から出射させることがで
きる。
【0025】上記低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
ーザの製造方法を図7を参照して説明する。第6実施例
の製造方法と第4実施例の製造方法とが相違するところ
は、NDフィルタが相違しているところである。第6実
施例のNDフィルタ38は、図7に示すように、5つの
発光領域25〜29とその周辺部分を覆う領域38a
と、この領域38aの両側の領域38bとを有してい
る。領域38aのレーザ光線の透過率は、同図に示すよ
うに、発光領域25〜29の夫々の上方位置の部分でp
〜tとなるように、領域38aの中央部から両端側に向
かうに従って徐々に透過率が大きくなっている。そし
て、領域38bの透過率は略1となっている。従って、
このNDフィルタ38を使用することにより、第4実施
例と同様の製造方法によって図7の低反射率膜37を設
けた多波長の半導体レーザを製造することができる。
【0026】ただし、上記各実施例の低反射率膜を設け
た多波長の半導体レーザにおいて、夫々の各発光領域の
表面にλ/(4n)又はλ/(4m)の膜厚の低反射率
膜を形成したが、夫々の膜厚をλ/(4n)又はλ/
(4m)とせずに、それに近い膜厚とすることができ
る。この膜厚の低反射率膜によっても各発光領域の端面
における反射率を比較的小さくすることができる。な
お、λは、各発光領域から出射するレーザ光線の波長で
ある。また、各発光領域の表面にλ/(4n)又はλ/
(4m)の膜厚の低反射率膜を形成することにより、各
発光領域の反射率を最も小さくしたが、各発光領域の反
射率が一定となるように各発光領域におけるこの低反射
率膜の膜厚を形成することができる。そして、この膜厚
の低反射率膜を形成するときは、その膜厚を形成するこ
とができるようにNDフィルタの透過率を定めることが
必要である。
【0027】そして、第1乃至第3実施例の低反射率膜
の材質をSiN膜(Si3 4 )としたが、SiO2
又はアルミナ膜(Al2 3 )とすることができる。
【0028】また、第4乃至第6実施例の低反射率膜の
材質をSiO2 膜としたが、アルミナ膜(Al2 3
とすることができる。
【0029】更に、第1乃至第6実施例において、共振
器の各図の上面に形成されている発光領域側に低反射率
膜を形成したが、共振器の上面と下面に発光領域が形成
されている場合は、その共振器の上面と下面に低反射率
膜を形成することができる。
【0030】
【発明の効果】第1の発明の低反射率膜を設けた多波長
の半導体レーザによると、例えば図1に示す共振器の各
発光領域の表面に形成されている低反射率膜の夫々の膜
厚を、各発光領域から出射するレーザ光線の波長λ1
λ2 と比例するλ1 /(4n)、λ2 /(4n)として
いるので、各発光領域の端面における夫々の反射率を最
も小さくすることができ、これにより、この多波長の半
導体レーザが発振するレーザ光線を最も効果的に各発光
領域から出射させることができるという効果がある。
【0031】第2の発明の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザの製造方法によると、光CVD法により共
振器の各発光領域の表面に低反射率膜を形成する段階に
おいて、透過率の異なる複数の領域を有するNDフィル
タを介して各発光領域の表面に光を照射することによ
り、各発光領域の表面に、各表面から出射するレーザ光
線の例えば波長λ1 、λ2 と比例するλ1 /(4n)、
λ2 /(4n)の層厚の低反射率膜を形成することがで
きる。従って、この方法によると、従来の光CVD法に
より共振器の各発光領域の表面に一定の層厚の低反射率
膜を形成する方法と比較して、光源と各発光領域との間
にNDフィルタを介在させるだけでよく、これにより、
従来と略同程度の手間で第1の発明の低反射率膜を設け
た多波長の半導体レーザを製造することができるという
効果がある。
【0032】第3の発明の低反射率膜を設けた多波長の
半導体レーザの製造方法によると、フォトケミカルエッ
チング法において、光源と各発光領域との間にNDフィ
ルタを介在させるだけで、各発光領域の表面に、各表面
から出射するレーザ光線の例えば波長λ1 、λ2 と比例
するλ1 /(4n)、λ2 /(4n)の層厚の低反射率
膜をエッチングにより形成することができる。従って、
第2の発明と同様に、従来のフォトケミカルエッチング
法と同程度の手間で第1の発明の低反射率膜を設けた多
波長の半導体レーザを製造することができるという効果
がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例に係る低反射率膜を設け
た多波長の半導体レーザの断面図及びNDフィルタの透
過率を示す図である。
【図2】同発明の第2実施例に係る低反射率膜を設けた
多波長の半導体レーザの断面図及びNDフィルタの透過
率を示す図である。
【図3】同発明の第3実施例に係る低反射率膜を設けた
多波長の半導体レーザの断面図及びNDフィルタの透過
率を示す図である。
【図4】同発明の第4実施例の共振器に光学薄膜を形成
した状態を示す断面図である。
【図5】同発明の第4実施例に係る低反射率膜を設けた
多波長の半導体レーザの断面図及びNDフィルタの透過
率を示す図である。
【図6】同発明の第5実施例に係る低反射率膜を設けた
多波長の半導体レーザの断面図及びNDフィルタの透過
率を示す図である。
【図7】同発明の第6実施例に係る低反射率膜を設けた
多波長の半導体レーザの断面図及びNDフィルタの透過
率を示す図である。
【図8】(a)は従来の共振器の断面図であり、(b)
は従来の低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザの断
面図である。
【図9】発光領域の端面における反射率と低反射率膜の
膜厚との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 共振器 2 共振器 6 低反射率膜 7 低反射率膜 8 NDフィルタ 9 NDフィルタ 11 低反射率膜 30 NDフィルタ 31 低反射率膜 32 低反射率膜 33 NDフィルタ 35 低反射率膜 36 NDフィルタ 37 低反射率膜 38 NDフィルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−234388(JP,A) 特開 平2−111091(JP,A) 特開 平5−102613(JP,A) 特開 平3−9589(JP,A) 特開 平3−123092(JP,A) 特開 平2−246184(JP,A) 特開 昭62−102584(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/18

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 端面にN(Nは複数)個のレーザ光線発
    光領域を有しこれらの発光領域からそれぞれ異なる波長
    (λ1、λ2、・・、λN)のレーザ光線を出射する共
    振器と、上記共振器の端面におけるレーザ光線のそれぞ
    れの反射率が小さくなるように各発光領域の表面に形成
    されている低反射率膜と、を具備する低反射率膜を設け
    た多波長の半導体レーザにおいて、上記低反射率膜の各
    発光領域の表面部分の膜厚が、その膜が形成されている
    上記発光領域から出射するレーザ光線の波長がλ1、λ
    2、・・、λN、上記低反射率膜の屈折率がnであると
    き、実質的にλ1/(4n)、λ2/(4n)、・・、
    λN/(4n)に形成されていることを特徴とする低反
    射率膜を設けた多波長の半導体レーザ。
  2. 【請求項2】 端面に複数のレーザ光線発光領域を有し
    これら発光領域のうち少なくとも2以上の発光領域から
    夫々異なる波長のレーザ光線を出射する共振器を製造す
    る段階と、上記2以上の各発光領域の表面に各表面から
    出射する各レーザ光線の波長λの長さと略比例する厚み
    λ/(4n)(ただし、nは低反射率膜の屈折率。)又
    はそれに近い厚みの低反射率膜を光CVD法により形成
    する段階と、を有する低反射率膜を設けた多波長の半導
    体レーザの製造方法において、上記低反射率膜を光CV
    D法により形成する段階が、上記2以上の各発光領域の
    表面に各表面から出射する夫々のレーザ光線の波長λの
    長さと略比例する強さの光が照射されるように透過率の
    異なる2以上の領域を有するNDフィルタを介して光源
    から光を照射することを特徴とする低反射率膜を設けた
    多波長の半導体レーザの製造方法。
  3. 【請求項3】 端面に少なくとも1列に並ぶ複数のレー
    ザ光線発光領域を有しこれら複数の発光領域から出射す
    るレーザ光線の夫々の波長が上記複数の発光領域の一端
    側から他端側になるに従って短くなる共振器を製造する
    段階と、上記夫々の発光領域の表面において各表面から
    出射する各レーザ光線の波長λの長さと略比例する厚み
    λ/(4n)(ただし、nは低反射率膜の屈折率。)又
    はそれに近い厚みとなるように形成した傾斜表面を有す
    る低反射率膜を光CVD法により上記端面に形成する段
    階と、を有する低反射率膜を設けた多波長の半導体レー
    ザの製造方法において、上記低反射率膜を光CVD法に
    より上記端面に形成する段階が、上記各発光領域の表面
    に各表面から出射する各レーザ光線の波長λの長さと略
    比例する強さの光が照射されるように所定の位置を原点
    としこの原点から離隔するに従って透過率の小さいND
    フィルタを介して光源から上記共振器の端面に光を照射
    することを特徴とする低反射率膜を設けた多波長の半導
    体レーザの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の低反射率膜を設けた多
    波長の半導体レーザの製造方法において、上記各発光領
    域の表面に形成される低反射率膜が互いに結合するよう
    に上記NDフィルタの透過率を定めたことを特徴とする
    低反射率膜を設けた多波長の半導体レーザの製造方法。
  5. 【請求項5】 端面に複数のレーザ光線発光領域を有し
    これら発光領域のうち少なくとも2以上の発光領域から
    夫々異なる波長のレーザ光線を出射する共振器を製造す
    る段階と、上記共振器の上記端面に光学薄膜を形成する
    段階と、上記光学薄膜をフォトケミカルエッチング法に
    よってエッチングすることにより上記2以上の各発光領
    域の表面に各表面から出射する各レーザ光線の波長λの
    長さと略比例する厚みλ/(4n)(ただし、nは低反
    射率膜の屈折率。)又はそれに近い厚みの低反射率膜を
    形成する段階と、を有する低反射率膜を設けた多波長の
    半導体レーザの製造方法において、上記光学薄膜をフォ
    トケミカルエッチング法によりエッチングすることによ
    り上記低反射率膜を形成する段階が、上記2以上の各発
    光領域に形成された上記光学薄膜の対応する表面部分に
    各表面部分から出射する夫々のレーザ光線の波長の長さ
    と略反比例する強さの光が照射されるように透過率の異
    なる2以上の領域を有するNDフィルタを介して光源か
    ら光を照射することを特徴とする低反射率膜を設けた多
    波長の半導体レーザの製造方法。
  6. 【請求項6】 端面に少なくとも1列に並ぶ複数のレー
    ザ光線発光領域を有しこれら複数の発光領域から出射す
    るレーザ光線の夫々の波長が上記複数の発光領域の一端
    側から他端側になるに従って短くなる共振器を製造する
    段階と、上記共振器の上記端面に光学薄膜を形成する段
    階と、上記光学薄膜をフォトケミカルエッチング法によ
    りエッチングすることにより上記夫々の発光領域の表面
    において各表面から出射する各レーザ光線の波長λの長
    さと略比例する厚みλ/(4n)(ただし、nは低反射
    率膜の屈折率。)又はそれに近い厚みとなるように形成
    した傾斜表面を有する低反射率膜を上記端面に形成する
    段階と、を有する低反射率膜を設けた多波長の半導体レ
    ーザの製造方法において、上記光学薄膜をフォトケミカ
    ルエッチング法によってエッチングすることにより上記
    低反射率膜を上記端面に形成する段階が、上記各発光領
    域に形成された上記光学薄膜の表面部分に各表面部分か
    ら出射する各レーザ光線の波長の長さと略反比例する強
    さの光が照射されるように所定の位置を原点としこの原
    点から離隔するに従って透過率の大きいNDフィルタを
    介して光源から光を照射することを特徴とする低反射率
    膜を設けた多波長の半導体レーザの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の低反射率膜を設けた多
    波長の半導体レーザの製造方法において、上記各発光領
    域の表面に形成されている低反射率膜の表面が滑らかに
    屈曲した面に形成されるように上記NDフィルタの透過
    率を定めたことを特徴とする低反射率膜を設けた多波長
    の半導体レーザの製造方法。
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