JP2861501B2 - インクジェット記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェット記録ヘッドの製造方法

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悟 山下
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、キャビティ板と振動
板との接合前におこなわれる洗浄工程について時間短縮
と歩留まり率向上とが図れ、またキャビティ板と振動板
との接合後におこなわれるノズル端面の研摩工程につい
て歩留まり率向上が図れるインクジェット記録ヘッドの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、微細なノズル孔よりインクを噴射
して紙などの記録媒体上に付着させて記録を行う方法
は、インクジェット記録方法として知られている。そし
て、その原理の一つとしてオン・デマンド型インクジェ
ット記録ヘッドがある。この方式の両面形インクジェッ
ト記録ヘッドは、高解像度を得るため両面にインク噴射
用ノズルを千鳥状に配置するもので、一般的にはキャビ
ティ板の溝側から見た平面図である図2と、断面図であ
る図1とに示すように、シリコン,ガラスまたは金属板
などの板部材の両面に、エッチングや機械加工等により
複数のインク噴射用ノズル2,噴射流路3,インク加圧
室5,インク供給路6および共通なインク溜め7を形成
したキャビティ板1と、振動板9とを積層,一体化した
のち、振動板9の外側面のインク加圧室5に対向する位
置に電気機械変換素子としての圧電素子10が導電性膜11
を介して接合される構造をとっている。さらに、インク
供給路6とインク溜め7とを連結する部分に、ノズル2
とほぼ同一の深さ,幅のフィルタ流路8が設けてあり、
インク加圧室5の入口と出口にインクの流れを円滑にす
るため、および振動板9のだれ込みを防止するために島
状突起4が設けてある。なお、第1図,第2図は適用例
にも対応する。
【0003】加えて、図1の右端部に(図2では上側部
に二点鎖線表示したように)、コ字状のゴム成形品また
はプラスチック成形品である供給治具32が密閉的に嵌め
込まれ、接着される。供給治具32には、図示してないイ
ンクチューブが接続される孔33があけられ、これに連通
する前置空間35がインク溜め7につながる形で設けられ
る。この前置空間35は、文字どおりインク溜め7の前段
に設置され、孔33から流入,供給されるインクに対して
緩衝機能、つまりインクの勢いを緩和する機能をもつも
のである。
【0004】このような構造において、圧電素子10に電
気信号としての電圧を印加すると、振動板9がインク加
圧室5の内側に変位してインク加圧室5の容積を急激に
減少させ、その容積分に相当するインクがノズル2から
噴射され、それがインク滴となって、対向する記録紙に
点着して印字される。
【0005】ところで、キャビティ板と振動板との静電
接合を歩留まり良くおこなうには、接合前の洗浄、とく
にキャビティ板の洗浄が重要な因子となる。そこで、 (1) 溝側表面に対し純水のウォータジェットで洗浄する (2) 第1回目の約5分間のアルコール超音波洗浄をする (3) 第2回目の約5分間のアルコール超音波洗浄をする (4) 自然乾燥をする のような洗浄工程をとる。
【0006】また、ノズルからのインク噴射によって良
好な印字品質を得るには、ノズル形状が正確,均一であ
るとともに、ノズル端面が正確に平面であること、およ
びノズル内部に異物の残留がないことが要求される。そ
のため、とくに後者のノズルに係る研摩として、ノズル
端面に対して水を滴下させながらバフ研摩がおこなわれ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のキャビティ板に
係る接合前の洗浄では、キャビティ板自体の清浄化に対
しては有効であるが、多数個取りの材料から個々のキャ
ビティ板を切断する時などに付着した種々な屑を完全に
除去することは困難で、そのため歩留まり率が低下し
た。加えて、従来の洗浄では2回にわたって超音波洗浄
が用いられるため、洗浄時間が長くなる欠点があった。
【0008】また、バフ研摩によって、ノズル端面の平
坦度は出せるが、ノズル内部の壁面に付着した研摩屑の
完全な除去は困難で、そのため歩留まり率が低下し、イ
ンク噴射に係る特性にバラツキを生じ、ひいては印字品
質を低下させた。
【0009】この発明の課題は、従来の技術がもつ以上
の問題点を解消し、キャビティ板と振動板との接合前に
おこなわれる洗浄工程について時間短縮と歩留まり率向
上とが図れ、またキャビティ板と振動板との接合後にお
こなわれるノズル端面の研摩工程について歩留まり率向
上が図れるインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に係るインクジ
ェット記録ヘッドの製造方法は、接合の前処理として、
キャビティ板に対してとられる、中性洗剤溶液中に浸漬
する第1の工程と;溝側表面を純水のウォータジェット
によって洗浄する第2の工程と;純水とアルコールとの
溶液に浸漬する第3の工程と;自然乾燥する第4の工程
と;を備える。
【0011】請求項2に係るインクジェット記録ヘッド
の製造方法は、接合の後、キャビティ板のノズル端面を
研摩する前に、溝の少なくともノズル部分に中性洗剤を
注入しておくこと、および前記研摩は中性洗剤と水との
混合液を滴下しながらおこなうことである。
【0012】
【作用】請求項1に係るインクジェット記録ヘッドの製
造方法では、第1工程によってキャビティ板、とくにそ
の溝に対する油性成分の付着力が弱まり、第2工程によ
って付着力の弱まった付着物が物理的に除去され、第3
工程によって洗浄され、第4工程によって乾燥される。
【0013】請求項2に係るインクジェット記録ヘッド
の製造方法では、キャビティ板のノズル端面を研摩する
前に、溝の少なくともノズル部分に中性洗剤が注入され
ているから、研摩屑がノズル内部に侵入し難い、ないし
は侵入できず、かつ研摩屑の周囲に中性洗剤の被膜が生
成するから、ノズル内部への侵入と、内壁面への付着と
が抑制される。
【0014】
【実施例】まず、請求項1に係るインクジェット記録ヘ
ッドの製造方法の適用例について以下に説明する。適用
例のインクジェット記録ヘッドについては、従来例にお
けるのと同じで、第1図,第2図はそのまま対応するか
ら、説明は省略する。図1,図2におけるキャビティ板
1と振動板9とを静電接合する前に、キャビティ板1に
対してとられる洗浄処理は次の工程によっておこなわれ
る。 (1) 中性洗剤溶液中に浸漬する。この中性洗剤は、たと
えば昭光通商(株)の商品名がクリーンエースSの5%
濃度の溶液である。この工程によってキャビティ板、と
くにその溝に対する油性成分の付着力を弱めることがで
きる。 (2) 溝側表面を純水のウォータジェットによって洗浄す
る。この工程によって、付着力の弱まった付着物が物理
的に除去される。 (3) 純水とアルコールとの溶液に浸漬する。この工程
で、付着物の除去がおこなわれる。とくにアルコールに
よって、次の工程での自然乾燥時間が短縮され、乾燥過
程での塵埃付着の防止が支援される。 (4) 最終工程として、自然乾燥する。
【0015】適用例によれば、従来の洗浄方法に比べ
て、洗浄時間は半分に短縮することができ、しかも、洗
浄が完全におこなわれる結果、歩留まり率を、従来の洗
浄方法によるときの85%から、98%に著しく向上さ
せることができた。
【0016】次に、請求項2に係るインクジェット記録
ヘッドの製造方法の適用例について以下に説明する。図
1,図2におけるキャビティ板1と振動板9とを静電接
合の後、キャビティ板1のノズル端面を研摩する前に、
予め溝の少なくともノズル部分に中性洗剤を注入してお
く。研摩方法は、従来例で水を滴下させながらバフ研摩
したのと異なって、中性洗剤と水との混合液を滴下しな
がらバフ研摩する。この方法によれば、溝の少なくとも
ノズル部分に中性洗剤が注入されているから、研摩屑が
ノズル内部に侵入し難い、ないしは侵入できない。ま
た、研摩屑の周囲に中性洗剤の被膜が生成するから、ノ
ズル内部への侵入と、内壁面への付着とが抑制される。
その結果、研摩屑に対する除去および洗浄が確実におこ
なわれて歩留まり率の向上が図れる。適用例では、ノズ
ル詰まりが皆無となり、しかもインク噴射の曲がり不良
も認められず、すべて良好な印字品質が得られた。これ
は従来例における歩留まり率90%を大きく上回る結果
である。
【0017】
【発明の効果】請求項1に係るインクジェット記録ヘッ
ドの製造方法では、第1工程によってキャビティ板、と
くにその溝に対する油性成分の付着力が弱まり、第2工
程によって付着力の弱まった付着物が物理的に除去さ
れ、第3工程によって洗浄され、第4工程によって乾燥
される。したがって、従来方法で必要であった超音波洗
浄工程が省けることとあいまって、洗浄時間の短縮が図
れ、かつ洗浄が確実におこなわれて歩留まり率の向上が
図れる。
【0018】請求項2に係るインクジェット記録ヘッド
の製造方法では、キャビティ板のノズル端面を研摩する
前に、溝の少なくともノズル部分に中性洗剤が注入され
ているから、研摩屑がノズル内部に侵入し難い、ないし
は侵入できず、かつ研摩屑の周囲に中性洗剤の被膜が生
成するから、ノズル内部への侵入と、内壁面への付着と
が抑制される。したがって、研摩屑に対する除去および
洗浄が確実におこなわれて歩留まり率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明方法と従来方法とに係る共通な適用例であ
る記録ヘッドの断面図
【図2】同じくそのキャビティ板の平面図
【符号の説明】
1 キャビティ板 2 ノズル 3 噴射流路 5 インク加圧室 6 インク供給路 7 インク溜め 9 振動板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 浩造 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−89649(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41J 2/16 B41J 2/045 B41J 2/055 H01L 21/304 341

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】共通なインク溜めと、加圧室およびインク
    噴射用ノズルとが溝として形成されるキャビティ板に、
    その溝側の表面において振動板が接合される記録ヘッド
    の製造方法において、前記接合の前処理として、前記キ
    ャビティ板に対してとられる、中性洗剤溶液中に浸漬す
    る第1の工程と;前記溝側表面を純水のウォータジェッ
    トによって洗浄する第2の工程と;純水とアルコールと
    の溶液に浸漬する第3の工程と;自然乾燥する第4の工
    程と;を備えることを特徴とするインクジェット記録ヘ
    ッドの製造方法。
  2. 【請求項2】共通なインク溜めと、加圧室およびインク
    噴射用ノズルとが溝として形成されるキャビティ板に、
    その溝側の表面において振動板が接合される記録ヘッド
    の製造方法において、前記接合の後、前記キャビティ板
    のノズル端面を研摩する前に、前記溝の少なくともノズ
    ル部分に中性洗剤を注入しておくこと、および前記研摩
    は中性洗剤と水との混合液を滴下しながらおこなうこと
    を特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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