JP2854706B2 - 化学除染廃液の処理方法 - Google Patents

化学除染廃液の処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は原子力発電設備及び核燃料サイクル関連施設
等で使用される有機酸またはキレート剤及びこれら混合
溶液からなる除染液で除染した後に発生する使用済み化
学除染廃液(以下、キレート除染廃液と記す)の廃液処
理方法に関する。
(従来の技術) 一般に原子力施設においては、運転利用中のプラント
機器の保守・点検や補修作業時の放射線被曝量の低減
と、作業し易い作業環境を確保するために、系統構成機
器,配管ライン等の除染にキレート除染剤が使用され
る。この除染方法は除染能力が比較的高く、しかも除染
後機器は十分な健全性を維持することができる。
従来、この除染廃液の処理は、キレート剤に吸着され
た放射能及び金属イオンをイオン交換樹脂により脱塩
し、キレート剤及びイオン交換樹脂は固化して保管して
いた。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、上述した除染廃液の処理方法は次のよ
うな課題を有していた。
(1) キレート除染廃液は、イオン交換樹脂により脱
塩処理していたため、使用済みイオン交換樹脂が二次廃
棄物として発生する。
(2) 脱塩処理したキレート除染廃液は、乾燥−固化
していたためキレート剤が廃棄物として発生する。
(3) キレート剤及びイオン交換樹脂に吸着された放
射能は、廃棄物として貯蔵または処分された際、放射能
が土壌中に放出される可能性がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、
キレート除染廃液を酸化剤により分解し、二次廃棄物の
発生量を低減することができる化学除染廃液の処理方法
を提供することにある。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明は原子力施設から発生する放射能で汚染された
廃棄物を、有機酸またはキレート剤及びこれら混合溶液
からなる除染液で除染した後に発生する使用済み化学除
染廃液の処理方法において、前記キレート除染廃液をCe
4+−Ce3+−酸性溶液中に注入し、不活性金属からなる陽
極と不活性金属からなる陰極とを浸漬して前記両電極間
に直流電圧を印加して前記陽極でCe3+を酸化してCe4+
生成し、放射能及び金属イオンを吸着したキレート剤を
Ce4+の酸化力により分解することを特徴とする。また、
前記キレート除染廃液の分解終了後に残留するCe4+をCe
3+に還元し、中和剤により中和し、濃縮乾燥して固化す
ることを特徴とする。
(作 用) キレート除染廃液はキレート剤(M)と放射能及び金
属イオン(M)とキレート化合物(MY)を形成してい
る。Ce4+−Ce3+−酸性溶液中にキレート除染廃液を注入
すると、Ce4+の酸化力によりキレート剤(Y)はCO2,NH
3,H2O等に分解するため、無機の化学除染廃液として取
り扱うことができる。還元されたCe3+は不活性金属から
なる陽極と不活性金属からなる陰極との間に直流電圧を
印加して陽極でCe4+に再生することができるため、Ce4+
は分解剤として繰り返し使用することができる。キレー
ト除染廃液の分解処理後は酸化剤であるCe4+が残留する
ため、電解還元により安定なCe3+に還元する。還元処理
した後の無機の化学除染廃液は、酸性であるため中和剤
を添加して中和し、濃縮/乾燥/固化して安定な状態で
保管することができる。
(実施例) 本発明に係る化学除染廃液の処理方法の実施例を第1
図を参照しながら説明する。
第1図は本発明方法を説明するためのキレート廃液の
分解装置の一例を示した断面図であり、図中符号1はキ
レート除染廃液貯留槽、2は電解槽である。この電解槽
2には分解剤であるCe3+−酸性溶液3が貯留されてい
る。電解槽2内のCe3+−酸性溶液3は循環ポンプ4によ
り電解槽内を循環する。また、電解槽2には不活性金属
からなる陽極5と陰極6,ヒーター7が浸漬されている。
電解槽2の上部にはCe3+−酸性溶液3から発生する蒸
気,ガスを処理するための排ガス処理系8が接続されて
いる。
前記不活性金属からなる陽極5は白金と同等か若しく
は白金より酸素過電圧の高い金属または金属酸化物陽極
で、前記Ce4+−Ce3+酸性溶液中に溶け出さないことが必
要である。
前記不活性金属からなる陽極6は白金と同等か若しく
は白金より水素過電圧の低い金属または金属酸化物陰極
で、前記Ce4+−Ce3+−酸性溶液中に溶け出さないことが
必要である。
次に第1図に示したキレート廃液の分解装置を使用し
て本発明に係る化学除染廃液の処理方法の第1の実施例
について説明する。
第1の実施例は分解剤としてCe3+−硝酸溶液を選択
し、キレート除染廃液としてEDTA(エチレンジアミン四
酢酸)除染廃液を処理する。EDTA除染廃液はEDTA(Y)
に放射能及び金属イオン(M)が吸着したキレート化合
物(MY)を形成している。
電解槽にCe3+−硝酸溶液を貯留し、加熱用ヒーターで
Ce3+−硝酸溶液を80℃に昇温する。次に、EDTA除染廃液
を電解槽2に注入すると共に前記不活性陽極5と不活性
陰極6の間に所定の電流密度の直流電圧を印加すると、
前記陽極5で以下に示す反応が起こる。
Ce3+→Ce4++e ……(1) 上記(1)式により生成したCe4+は極めて酸化力が強
いため、電解槽2に注入したEDTA除染廃液(MY)とCe4+
とは以下に示す反応が起こる。
Ce4++MY→ Ce3++Mn++CO2+NH3+H2O ……(2) EDTAの分解により発生するCO2及びNH3ガス、または蒸
気は排ガス処理系8で処理される。一方、上記(2)式
の反応により還元されたCe3+は前記不活性陽極5と不活
性陽極6の間に所定の電流密度の直流電圧を印加してい
るため、(1)式の反応が生起し陽極5でCe4+に再生さ
れる。
上記(1)式と(2)式の反応を確認するために、ED
TA除染廃液の濃度0.04mol/,Ce3+濃度0.1mol/,硝酸
濃度1.0mol/の混合溶液を電流密度0.3A/cm2で電解し
た結果を第2図によって説明する。第2図中の縦軸は電
解によって陽極で生成されるCe4+濃度は、横軸は電解時
間を示す。また、曲線aはCe3+−硝酸単独溶液を電解し
た場合、曲線bはEDTA除染廃液とCe3+−硝酸混合溶液を
電解した場合を示す。Ce3+−硝酸単独溶液を電解した場
合は、ほぼ電解時間に比例してCe4+濃度は増加するが、
EDTA除染廃液とCe3+−硝酸溶液との混合溶液を電解した
場合は、(2)式の分解反応が起こり、Ce4+はCe3+に還
元される。混合溶液中のEDTAが全量分解した時点Ce4+
度は増加する。
このようにEDTA除染廃液を分解剤であるCe4+によりCO
2,NH3,H2Oに分解でき、また分解剤であるCe4+は、電解
により再生して再使用することができるため二次廃棄物
量を低減することができる。
次に本発明の効果を確認するために行った従来例と、
本発明に係る化学除染廃液の処理方法の第1の実施例に
ついて説明する。第1の実施例として前記濃度のEDTA除
染廃液10m3をCe3+−硝酸溶液で処理した場合の廃棄物発
生量を求める。EDTA除染廃液はEDTAにFeが吸着している
ものとする。本発明に係る処理方法ではEDTAを分解して
ガス化できるためFeのみが廃棄物として発生する。
Fe=0.01mol/×104×56g/mol/1000 =5.6kg 次に従来例のEDTA除染廃液を廃棄する場合の廃棄物発
生量を求める。従来例ではEDTAとFeが廃棄物として発生
する。
EDTA=0.01mol/×104×290g/mol/1000 =29.0kg Fe=0.01mol/×104×56g/mol/1000 =5.6kg 合計=34.6kg 第1表に本発明に係る実施例と従来例のEDTA除染廃液
を廃棄する場合の処理方法に伴う廃棄物発生量を検討し
た結果を比較して示す。
第1表から明らかなように、除染廃液を10m3を廃棄処
理した場合の廃棄物発生量は、本発明の実施例の場合は
5.6kg、従来例の場合は34.6kgとなることが認められ
た。また従来例の場合は、キレート除染廃液をイオン交
換樹脂で脱塩処理するため、さらに使用済みイオン交換
樹脂が廃棄物として発生する。
次に本発明に係る化学除染廃液の処理方法の第2の実
施例について説明する。
第2の実施例は分解剤としてCe3+−硫酸溶液を選択
し、キレート除染廃液としてシュウ酸(H2C2O4)除染廃
液を処理する。シュウ酸除染廃液はシュウ酸(Y)に放
射能及び金属イオン(M)が吸着しキレート化合物(M
Y)を形成している。
電解槽にCe3+−硫酸溶液を貯留し、加熱用ヒーターで
Ce3+−硫酸溶液を80℃に昇温する。次にシュウ酸除染廃
液を電解槽に注入すると共に前記不活性陽極と不活性陰
極の間に所定の電流密度の直流電圧を印加すると前記陽
極で前記(1)式に示す反応が起こる。
前記(1)式により生成したCe4+は極めて酸化力が強
いため、電解槽に注入したシュウ酸除染廃液(MY)とCe
4+とは以下に示す反応が起こる。
Ce4++MY→Ce3++Mn+CO2+H2O ……(3) シュウ酸の分解により発生するCO2ガスまたは蒸気は
排ガス処理系で処理される。一方、上記(3)式の反応
により還元されたCe3+は前記不活性陽極と不活性陰極の
間に所定の電流密度の直流電圧を印加しているため、前
記(1)式の反応が生成し陽極でCe4+に再生される。
上記(1)式と(3)式の反応を確認するためにシュ
ウ酸除染廃液濃度0.4mol/,Ce3+濃度0.1mol/,硫酸
濃度0.5mol/の混合溶液を電流密度0.3A/cm2で電解し
た結果を第2図によって説明する。第2図中の縦軸は電
解によって陽極で生成されるCe4+濃度、横軸は電解時間
を示す。また曲線aはCe3+−硫酸単独溶液を電解した場
合、曲線bはシュウ酸除染廃液とCe3+−硫酸溶液との混
合溶液を電解した場合を示す。Ce3+−硫酸単独溶液を電
解した場合は、ほぼ電解時間に比例してCe4+濃度は増加
するが、シュウ酸除染廃液とCe3+−硫酸溶液との混合溶
液を電解した場合は、(3)式の分解反応が起こり、Ce
4+はCe3+に還元される。混合溶液中のシュウ酸が全量分
解した時点でCe4+濃度は増加する。
このようにシュウ酸除染廃液を分解剤であるCe4+によ
りCO2,H2Oに分解でき、また分解剤であるCe4+は、電解
により再生して再使用することができるため二次廃棄物
の発生量を低減することができる。
次に本発明の効果を確認するために行った従来例と、
本発明に係る化学除染廃液の処理方法の第2の実施例に
ついて説明する。第2の実施例として前記濃度のシュウ
酸除染廃液10m3をCe3+−硫酸溶液で処理した場合の廃棄
物発生量を求める。シュウ酸除染廃液はシュウ酸にFeが
吸着しているものとする。本発明に係る処理方法ではシ
ュウ酸を分解してガス化できるためFeのみが廃棄物とし
て発生する。
Fe=0.01mol/×104×56g/mol/1000 =5.6kg 次に従来例のシュウ酸除染廃液を廃棄する場合の廃棄
物発生量を求める。従来例ではシュウ酸とFeが廃棄物と
して発生する。
EDTA=0.01mol/×104×48g/mol/1000 =4.8kg Fe=0.01mol/×104×56g/mol/1000 =5.6kg 合計=10.4kg 第2表に本発明に係る実施例と従来例のシュウ酸除染
廃液を廃棄する場合の処理方法に伴う廃棄物発生量を検
討した結果を比較して示す。
第2表から明らかなように、除染廃液を10m3を廃棄処
理した場合の廃棄物発生量は、本発明の実施例の場合は
5.6kg、従来例の場合は10.4kgとなることが認められ
た。また従来例の場合は、キレート除染廃液をイオン交
換樹脂で脱塩処理するため、さら使用済みイオン交換樹
脂が廃棄物として発生する。
以上説明したように第1の実施例及び第2の実施例で
はキレート除染廃液をCe4+の酸化力によりキレート剤が
分解するため、放射能及び金属イオンのみが溶解した無
機の化学除染廃液とすることができる。従って、従来の
廃液処理方法と比較し、二次廃棄物の発生量を低減する
ことができる。
なお、第1の実施例及び第2の実施例において、前記
除染廃液はEDTA及びシュウ酸の代わりに、NTA(ニトロ
三酢酸),クエン酸,ギ酸等の一般に化学除染剤と使用
されているキレート剤または有機酸及びこれら混合溶液
でも処理可能である。また、これら除染廃液の濃度は0.
01mol/から飽和溶解度まで処理可能である。分解剤で
あるCe3+濃度は0.1mol/の代わりに0.01〜2.0mol/の
範囲で使用可能である。また、硝酸及び硫酸の酸濃度は
1.0mol/の代わりに0.01mol/〜10.0mol/の範囲で
使用可能である。キレート除染廃液の分解処理温度は80
℃に限らず、15〜90℃の範囲で処理可能である。前記陽
極としてチタンに白金コーティングを施したものの代わ
りに白金,チタン以外の金属に白金コーティングを施し
たものを用いることも可能である。前記陰極としてチタ
ンに白金コーティングを施したものの代わりに白金,チ
タン以外の金属に白金コーティングを施したものを用い
ることも可能である。前記陽極及び陰極の間に印加する
直流電圧の電流密度は、0.3A/cm2の代わりに0.05〜2.0A
/cm2でも使用可能である。
次に本発明に係る化学除染廃液の処理方法の第3の実
施例を第3図のブロックフロー図で説明する。廃液処理
手順としては、キレート除染廃液9を分解工程10でCe4+
−酸性溶液を電解再生しながら分解する。キレート除染
廃液の処理後は除染廃液中にCe4+−Ce3+,放射能及び金
属イオン(Mn+)が残留する。Ce4+は酸化力が強いた
め、そのままの状態で既設の廃液処理系で処理すると他
の機器に腐食を及ぼす危険がある。そこで電解還元工程
11で分解工程10の電解再生電極の極性を逆転して直流電
圧を印加する。陰極では以下に示す還元反応が起こり、
Ce4+はCe3+に還元される。
Ce4++e→Ce3+ Mn++e→M(n-1) M(n-1)+Ce4+→Mn++Ce3+ Ce4+の還元終了後は、無機の酸性化学除染廃液として
取り扱うことができるため、中和工程12で中和剤を添加
してCe及び放射能及び金属イオンを水酸化物としてスラ
ッジ化する。中和処理後は濃縮・乾燥工程13で除染廃液
を粉体化し、固化工程14でプラスチック固化またはセメ
ント固化して保管する。
以上説明したように本実施例によれば、キレート除染
廃液をCe4+を用いて分解し、無機の酸性化学除染廃液と
して既設の廃液処理系で処理するものである。従って、
従来の廃液処理方法であるキレート除染廃液をイオン交
換樹脂により脱塩処理し、イオン交換樹脂及び脱塩処理
したキレート除染廃液を固化する場合と比べ、二次廃棄
物の発生量を極端に低減することができると共に、固化
体の安定性も良い。
[発明の効果] 本発明によれば以下の効果がある。
(1) キレート除染廃液中のキレート剤をCe4+の酸化
力により分解でき、またCe4+は電解再生して繰り返し使
用できるため、二次廃棄物の発生量を低減することがで
きる。
(2) キレート除染廃液を分解処理した後の廃液は無
機の酸性化学除染廃液であるため、既設の廃液処理系で
処理可能である。
(3) 従来の廃液処理方法であるキレート除染廃液を
イオン交換樹脂により脱塩処理して固化する場合と比
べ、固化体の安定性は高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る化学除染廃液の処理方法における
キレート除染廃液の分解装置の一例を線図的に示す断面
図、第2図はキレート除染廃液の分解例を示したグラフ
図、第3図は本発明に係る化学除染廃液の処理方法を示
すブロックフロー図である。 1……キレート除染廃液貯留槽 2……電解槽、3……分解剤 4……循環ポンプ、5……陽極 6……陰極、7……ヒーター 8……排ガス処理系、9……除染廃液 10……分解工程、11……還元工程 12……中和工程、13……濃縮・乾燥工程 14……固化工程

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子力施設から発生する放射能で汚染され
    た廃棄物を、有機酸またはキレート剤及びこれら混合溶
    液からなる除染液で除染した後に発生する使用済み化学
    除染廃液の処理方法において、前記キレート除染廃液を
    Ce4+−Ce3+−酸性溶液中に注入し、不活性金属からなる
    陽極と不活性金属からなる陰極とを浸漬して前記両電極
    間に直流電圧を印加して前記陽極でCe3+を酸化してCe4+
    を生成し、放射能及び金属イオンを吸着したキレート剤
    をCe4+の酸化力により分解することを特徴とする化学除
    染廃液の処理方法。
  2. 【請求項2】前記キレート除染廃液の分解処理後に残留
    するCe4+をCe3+に還元し、中和剤により中和し、濃縮乾
    燥して固化することを特徴とする請求項1記載の化学除
    染廃液の処理方法。
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