JP2854626B2 - インクタンクおよびインクジェットカートリッジならびにインクジェット装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、インクタンクおよびインクジェットカート
リッジならびにこのインクジェットカートリッジが搭載
されるインクジェット装置に関する。

〔従来の技術〕

従来、インクジェット記録装置等の液体噴射記録装置
では、所定量のインクを有するインクカートリッジを交
換してインクを補充する方式のものが一般的であった
が、インクジェット記録ヘッド自体のコストが低い場合
には所定量のインクタンクとヘッドとを一体化したヘッ
ド・インクタンク一体型カートリッジ方式が採用されて
いる。こうした記録装置では、インクタンクとヘッドと
を一体化することにより所定の記録量ごとに確実かつ自
動的に記録ヘッドを更新できるので、常に良好な記録品
位を維持することが可能となる。また、万が一、記録品
位が低下するようなトラブルが生じても、心臓部である
インクジェット記録ヘッド自体を容易に交換できるの
で、記録装置のダウンタイムを短くすることが可能であ
る。更に、インク補給のさいに生ずる異物混入の危険も
回避できるというメリットがある。

ところで、このようなヘッドと一体型のインクカート
リッジでは、インクを貯蔵し吐出部にインクを供給する
インクタンクが設けられているが、インクタンクとして
は次の機能的条件が最低限必要である インクの漏洩を防止する。

インクの蒸発を防止する。

所定量のインクを貯蔵し吐出部に安定して供給する。

吐出部における吐出を阻害しない。

そこで、こうした機能的条件をほぼ満足するインクタ
ンクとして、インク袋方式のものや、インクタンク内部
にインク吸収体を設け、吐出部のインクに対して負圧を
生じさせておくようにした吸収体方式のものが知られて
いる。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、上述のインク袋方式ではの条件に関
して吐出部に対するインクの水頭圧による吐出阻害を避
ける為にヘッドとインクタンクとの相対位置関係等に構
成上の制約が生ずる他、取扱上の問題から、インク袋と
は別にそれを囲むケースが必要となるなど、コスト上の
問題がある。

一方、インクによる水頭圧が吐出の阻害を及ぼさない
ようにした吸収体方式のものでは、インクの消費にとも
なうインクタンク内のインクの減量や、インクタンク内
の空気の温度変化にともなうインクタンク内の圧力変化
等に対応するために外気とインクタンク内とを連通する
ための大気連通孔が設けられるのが一般的であるが、
の条件であるインクの蒸発が大気連通口から行なわれ易
く、この状態で長期間放置した場合には、インクタンク
の蒸発にともなう弊害が生ずる。

例えば、安全性の面で有利なことから多用されている
水系インクでは、その主成分が一般に水と染料と不揮発
性溶剤などで構成されているが、水等の揮発性成分が蒸
発減量してゆくと、インク自体の成分組成比率が大幅に
変化し、紙上での定着性能や濃度などの記録特性に影響
を及ぼし、さらには吐出部でのインクの粘度上昇などに
よる目詰まりが生じたりする。また、インクタンク自体
のインクの有効使用量が減少するので、経済上の不都合
も生ずる。特にこうした蒸発にともなう弊害は少容量の
インクタンクあるいはヘッド・インクタンク−体型カー
トリッジほど蒸発にともなう組成変化やインク自体の減
量の弊害が大きな問題となる。

本発明の目的は、上述したような従来の問題点に着目
し、その解決を図るべく、インクの蒸発を長期にわたっ
て抑制することができ、記録特性を安定して持続させる
ことのできるインクタンクおよびインクジェットカート
リッジならびにこのインクジェットカートリッジが搭載
されるインクジェット装置を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明の第１の形態は、インクが含浸されて負圧を発
生可能なインク吸収体と、このインク吸収体と大気とを
連通させるための大気連通路とを有するインクタンクで
あって、前記インク吸収体と前記大気連通路との間に前
記インク吸収体が介在しないバッファ室を具え、前記大
気連通路は、前記バッファ室に比べて内径が小さく、そ
の内径が0.7mm以下であって、長さが20mm以上であるこ
とを特徴とするものである。

ここで、バッファ室をインクタンクの中央部に形成し
てもよい。また、大気連通路は、インクタンクを形成す
る壁部と、この壁部に接合される通路形成部材とで構成
され、壁部および通路形成部材の少なくとも一方に大気
連通路を形成するための通路形成溝を設けるようにして
もよく、この場合、通路形成溝を壁部に設けるようにし
てもよい。さらに、大気連通路が蛇行していてもよく、
インク吸収体を多孔質材または繊維により構成してもよ
い。

本発明の第２の形態は、インクを吐出するために利用
されるエネルギーを発生するエネルギー発生体が設けら
れたインク路を有するインクジェットヘッドと、 このインクジェットヘッドが一体的に設けられ、前記
インク路に供給されるインクが含浸されて負圧を発生可
能なインク吸収体と、このインク吸収体と大気とを連通
させるための大気連通路とを有するインクタンクと を具えたインクジェットカートリッジであって、前記
インク吸収体と前記大気連通路との間に、前記インク吸
収体が介在しないバッファ室をさらに具え、前記大気連
通路は、前記バッファ室に比べて内径が小さく、その内
径が0.7mm以下であって、長さが20mm以上であることを
特徴とするものである。

ここで、エネルギー発生体は、エネルギーとして熱エ
ネルギーを発生する電気熱交換体であってもよい。

本発明による第３の形態は、インクを吐出するために
利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生体が設
けられたインク路を有するインクジェットヘッドと、 このインクジェットヘッドが一体的に設けられ、前記
インク路に供給されるインクが含浸されて負圧を発生可
能なインク吸収体と、このインク吸収体と大気とを連通
させるための大気連通路とを有するインクタンクと を具えたインクジェットカートリッジが装着されるカ
ートリッジ装着部を有するインクジェット装置であっ
て、前記インク吸収体と前記大気連通路との間に、前記
インク吸収体が介在しないバッファ室を有し、前記大気
連通路は、前記バッファ室に比べて内径が小さく、その
内径が0.7mm以下であって、長さが20mm以上であること
を特徴とするものである。

ここで、カートリッジ装着部は走査移動するキャリッ
ジであってもよく、エネルギー発生体は、エネルギーと
して熱エネルギーを発生する電気熱変換体であってもよ
い。

〔作 用〕

インクタンク内は、バッファ室および大気連通路を会
して大気圧状態に保持される。また、インクタンク内の
インクは、毛細管現象によってインク吸収体に保持され
た状態となっている。

急激な圧力低下や気温の上昇によって、インク吸収体
に保持されていたインクがインク吸収体からバッファ室
内に滲出するが、大気連通路の内径およびその長さが0.
7mm以下および20mm以上に設定されているため、この大
気連通路の通路抵抗によって、バッファ室内に滲出した
インクが大気連通路から外部に漏れ出すような不具合は
発生せず、バッファ室内に保持された状態となる。同様
に、インクタンク内のインクが外部に蒸発するのが妨げ
られ、その蒸発の抑制によって長期にわたり安定した良
好な記録特性を持続させることができる。

〔実施例〕

以下、第1A図，第1B図、第2A図，第2B図、第6A図，第
6B図および第９図に基づいて本発明の実施例を詳細かつ
具体的に説明する。

第1A図および第1B図は、本発明によるインクジェット
カートリッジの第１実施例を示す。本例はインクジェッ
ト記録装置のキャリッジに搭載可能なヘッド・インクタ
ンク一体型カートリッジ（インクジェットカートリッ
ジ）に適用した例で、これらの図において、100はカー
トリッジ101の記録ヘッドユニット、102はその記録ヘッ
ドユニット101のインク吐出機能にかかわる部材で構成
されている吐出部、103は吐出部102にインクを供給する
供給タンク部である。吐出部102はその吐出面104に配列
された複数の吐出口104Aと、各吐出口104Aにインクを導
く不図示の液路、液路に配設された電気熱変換体等の吐
出エネルギ発生素子、各液路に連通する供給液室を有す
る。

また、105はカートリッジ101に組込まれたインクタン
ク、106はその蓋部材、107はインクタンク105内に装填
されたインク吸収体であり、インク吸収体107は多孔質
材または繊維等で形成されており、インクが含浸され
る。更にまた、インクタンク105にはそのインク吸収体1
07内のほぼ中心部に中空部（以下でバッファ室という）
108が形成されていて、このバッファ室108と外部との間
に通気口109を具えた小径の大気連通管110が配設されて
いる。

第2A図はこのようなヘッド・インクタンク一体型カー
トリッジ、すなわち使い捨て型カートリッジによる記録
ヘッド（以下で単に記録ヘッドという）101を本発明に
よるインクジェットカートリッジと共に搭載可能な本発
明によるインクジェット記録装置の一例を示し、111は
記録ヘッド101を搭載したキャリッジ、112は記録ヘッド
101をキャリッジ111に位置決めした状態で固定するため
の押え部材、113はキャリッジ111上の不図示のコネクタ
に接続され、吐出部102に記録データに従って吐出信号
を供給するフレキシブルケーブルである。なお、キャリ
ッジ111に対する記録ヘッド101の位置決めは、例えば、
図示されてないが、記録ヘッド101に設けた係止孔をキ
ャリッジ111側の係止突起に係合させることにより実施
される。

このようにして記録ヘッド101を搭載したキャリッジ1
11は不図示の駆動手段により案内軸114に沿って移動さ
れ、その移動中にプラテン115によって保持される被記
録材（以下で記録シートという）116上に吐出部102の吐
出口104Aからインクが吐出されて記録が行われる。な
お、120は記録ヘッド101の吐出部102が第2A図で左方の
ホームポジション近傍に移動されてきたときに、吐出面
104に当接または近接して吸引ポンプ121によりインクを
吐出口104Aから吸引し、回復動作を行うキャップ部材で
ある。第2B図はこのようにして記録ヘッド101の吐出部1
02にキャップ部材120が当接され、回復動作が行われる
ときの状態を示す。

再び、第1A図および第1B図に戻り、周囲の温度変化等
環境によるインクの保存状態の変化によって吐出口やイ
ンクタンクの大気連通孔からインクが漏れないようにす
るために、バッファ室108や大気連通管110を設けたが、
いま、このように構成したインクタンク105において環
境温度が高温になったとすると、インク吸収体107に含
浸されているインクの体積が膨張するが、その膨張分の
インクはバッファ室108に滲出するだけで、大気連通路1
10を介して外部に導かれることなく、バッファ室108内
に貯留され、また、環境温度が平常温度に戻るに従って
滲出したインクは再度インク吸収体107に吸収される。

なお、本例ではバッファ室108をインク吸収体107のほ
ぼ中心部に形成することにより効果的に滲出、再吸収が
行われるようにしたが、インクの温度による膨張分を収
容する容積さえあれば、その形成位置は必ずしもインク
吸収体107の中心部に限られるものでないことはいうま
でもない。ただし、大気連通路110を配設するにあたっ
ては、第1B図等に示したように、バッファ室108に滲出
したインクが大気連通路110に導かれないよう大気連通
路110のバッファ室108側の開口をバッファ室108のほぼ
中央部近接にまで突出させることが望ましい。

本実施例のように、バッファ室108と外部側とを図示
のような細くしかも長い管、大気連通管110で連通させ
るようにしたことにより、タンク壁に直接連通孔を穿設
する従来例に比べてインクの蒸発が管の有する流体抵抗
によって抑制され、また、インク詰りが発生する虞が少
ない。

第３図に、本実施例による大気連通孔からの蒸発防止
効果について具体的な数値をもって示した。

同図においてインクの蒸発が促進される環境条件とし
て気温40℃湿度30％の環境下で第2B図に示したように吐
出部102をキャップ部材120で覆い、カートリッジのイン
クタンクにはタンク外壁に１φmmの大気連通孔を設けた
もの（比較例１）と本実施例のひとつとして大気連通管
に内径0.5φmm長さ40mmの管状のガラス管を用いたもの
（実施例１）との蒸発量を示した。

同図で明らかなように、実施例１では比較例１に較べ
て1/10以下の蒸発量にすることができインク蒸発にとも
なう不吐出などの障害を極力抑制することができた。な
お、本実施例に用いたインクは下記の組成による。

ジエチレングリコール（DEG）15％，エタノール５
％，黒染料３％，水77％ このインクは水及びエタノールが蒸発するが比較例１
のように過度に蒸発した場合は、DEGと染料の比率が増
大して、記録シート上での定着不良や濃度等の記録特性
に影響し、更には吐出部102でのインクの粘度上昇など
による目詰まり等の問題を生ずる。本実施例では、初期
インク量を40gとしており、若干の蒸発によるインクの
組成変動があっても実用上の問題は生ぜず、高品位の記
録特性が維持できた。又、インク有効使用量の減少によ
るランニングコスト上の不都合も少なくすることができ
た。

第４図および第５図は、本実施例の変形例として、そ
れぞれの大気連通管の内径および長さを変えた場合の蒸
発抑制効果を示すものである。

これらの実施例では、従来例のようにタンク壁の一部
に孔を用ける場合には成型上の制約やインクによる目詰
まりの制約のために実現できないような内径と長さを有
する大気連通管およびバッファ室を設けて構成すること
によりこれらの図に示すように、大気連通管の内径φが
0.7mm以下であって、長さｌが20mm以上とすることで、
インクの蒸発を抑制することができた。なお、これら一
連の実施例では大気連通管としてガラス管を用いている
が、樹脂製のチューブ等内径と長さに応じて選択するこ
とが可能であり、特にその形成材料を特定して限定する
必要はない。

第6A図および第6B図は、本発明によるインクジェット
カートリッジの第２実施例を示す。なお、本例もヘッド
・インクタンク一体型のカートリッジの例を示し、その
インクタンク部分の断面のみが示されている。これらの
図において、205はその一体型カートリッジ201のインク
タンク部、206はインクタンク部205の上部に設けた蓋部
材である。また、本例の場合はインク吸収体107に設け
る中空部、すなわちバッファ室208を図示のようにイン
ク吸収体107の上部中心に配設すると共に、このバッフ
ァ室208の中心に向けて、蓋部材206に沿った大気連通路
210を形成する。211は蓋部材206との間に大気連通路210
を形成するために樹脂系材料等で成形された通路成形部
材であり、一体型では難しい細くかつ長い連通路210を
このような部材を合せることによって容易に形成するこ
とができる。なお、209は通気孔である。

このように構成することにより、大気連通路を極めて
廉価かつ容易に形成することができる。なお、本実施例
ではインクタンク部205においてのその蓋部材206を利用
して大気連通路210を形成したが、他のタンク形成部材
との合わせや２つの部材による組合せでも良い。

第２実施例によるカートリッジ式記録ヘッドを第１実
施例と同様にしてインクジェット記録装置に装着し、放
置／記録テストを行ったところ、良好な画像が得られ
た。なおここで本実施例の比較例として使用した蓋部材
206に短かい大気連通路211を直接一体成型したものを第
7A図および第7B図に示した。

この比較実験では本実施例の大気連通路210を0.24mm
×0.24mmの口形で40mm長とし、比較例の大気連通路211
の方は成型上の制約からφ1.0mmの○形で長さ5mmとし
て、それぞれの蒸発量及び記録特性を比較した。インク
には第１実施例と同じ組成のものを用い、初期インク容
量を30ccとし、気温30℃、湿度20％の環境で各々１ヶ月
及び３ヶ月放置した例を表１に示す。

これらの結果からわかるように本実施例による試験結
果においては、ほとんどインクの蒸発もなく、組成比の
変化もなかった。当然、放置前の各種条件とのテスト比
較を行なった結果もほとんど変わらず良好なものであっ
た。

備考１…ここで反射濃度は、1cm角にベタ印字した際に
マクベス反射濃度計により測定したものである。

備考２…定着性は、あるタイプの紙（普通紙）に1cm角
のベタ印字を行ない、所定時間の後、シルボン紙を転写
紙として用い所定の圧により、こすった後の引きずり跡
の有無により判定した。

備考３…発一性とは、各吐出口104Aから吐出開始後次に
正常に吐出するまでの限界時間秒である。

備考４…固着性とは、15℃,10％の環境の元でカトリッ
ジから抽出した各インクをキャピラリー管の中に入れ、
60℃,5％のオーブンに放置し、流動性がなくなるまでの
時間（hrs.）である。

備考５…印字品位は各種パターンの入った印字記録を行
ないその際の品位を評価したものである。

備考６…不吐出発生率は、前記のパターンを、所定のモ
ードで印字耐久した際に、一枚中にちょっとした不吐出
の跡が確認された場合、それを一枚として発生率を調べ
たものである。

なお、上述した第１実施例および第２実施例ではバッ
ファ室をインクタンクの中央部に配設したので、細く長
い大気連通路をインクタンク内に収めることができた
が、さらに第１実施例の場合は大気連通管110を弾性チ
ューブで形成し、そのチューブをタンク内で蛇行引回す
ようになし、また第２実施例では、連通路形成部材211
の溝形状を蛇行させるなどしてさらに長くすることも可
能である。さらにまた、第２実施例の変形例として通路
形成溝を蓋部材206の側に設けるようにしてもよい。

第8A図および第8B図は、本発明によるインクジェット
カートリッジの第３実施例を示す。本例は、インクタン
クのみでも交換可能な形態のインクジェット記録装置に
適用するカートリッジ式タンクの例である。インクタン
ク305は第8A図に示すように記録装置本体に装着前では
記録ヘッドへのインク供給孔306を例えばアルミニウム
箔などのシール部材307で密封すると共にタンクの連通
口308からチューブ309で延在された連通路310先端の通
気310Aの方を同様のシール部材311で密封する。各シー
ル部材307および311はこの状態で保存環境の変動によっ
てタンク305内の液圧が変化しても破れない程度の強度
を有しており、又、バッファ室208が設けられているた
めに、連通路310がインクでぬれることはない。なお公
知インクジェット記録装置に装着する際には連通路310
の通気孔シール部材311を第8B図に示す如くはがすとと
もに、不図示の記録ヘッドに連結されているインク針32
0によってアルミニウム箔等で形成されているシール部
材307を突き破り、供給孔306に差し込むようにする。本
実施例によれば、インクタンク305の連通口308にチュー
ブ309を連通しただけの簡単な構成で、インクタンク開
封後のインクの蒸発を抑制することができる。

なお、本実施例ではインクタンク305の外部にチュー
ブ309による連通路310を設けるようにしたが、インクタ
ンクあるいはヘッド・インクタンク一体型カートリッジ
で大方はインクジェット記録装置本体に装着されている
のが常態と考えられる場合は、記録装置本体側にこのよ
うなチューブ等による大気連通路310を設けるようにし
てもよい。第９図はこのようにして本体に装着されるヘ
ッド・インクタンク一体型カートリッジの一例を示す。
本例では、そのカートリッジ405に第１実施例および第
２実施例の比較例で示したのとほぼ同形態の大気連通孔
211がタンク壁に直接設けてある。しかして、本例は非
記録時にホームポジションにおいてヘッド吐出面104だ
けでなくカートリッジ405に設けた大気連通孔211にも第
２キャップ部材420をキャップするようにしており、そ
のキャップ部材420に細長いチューブ状の連通路310を配
設して、その先端部を外気に開口させることによりイン
クタンクの内圧変化を連通路310を介して吸収すること
ができる。

なお、以上に述べた実施例では、何れもインクタンク
内にインク吸収体が装填されているものについてであっ
たが、本発明の適用は、このような形態のインクタンク
に限られるものではなく、要は大気連通孔を具え、所定
のインク収容量を有するインクタンクであれば、同様な
効果が得られるものである。

（その他） なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中で
もバブルジェット方式の記録ヘッド、記録装置において
優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば
記録の高密度化，高精細化が達成できるからである。

その代表的な構成や原理については、例えば、米国特
許第4723129号明細書，同第4740796号明細書に開示され
ている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この
方式は所謂オンデマンド型，コンティニュアス型のいず
れにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合
には、液体（インク）が保持されているシートや液路に
対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対
応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少な
くとも１つの駆動信号を印加することによって、電気熱
変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用
面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対
一で対応して液体（インク）内の気泡を形成できるので
有効である。この気泡の成長，収縮により吐出用開口を
介して液体（インク）を吐出させて、少なくとも１つの
滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即
時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に
優れた液体（インク）の吐出が達成でき、より好まし
い。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第44
63359号明細書，同第4345262号明細書に記載されている
ようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上
昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載
されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行う
ことができる。

記録ヘッドユニットの構成としては、上述の各明細書
に開示されているような吐出口，液路，電気熱変換体の
組合せ構成（直線状液流路または直角液流路）の他に熱
作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する
米国特許第4558333号明細書，米国特許第4459600号明細
書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加え
て、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを
電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−
123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開孔を吐
出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公
報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。

さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対
応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対
しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッ
ドとしては、複数記録ヘッドの組合せによってその長さ
を満たす構成や、一体的に形成された１個の記録ヘッド
としての構成のいずれでもよい。加えて、上例のような
シリアルタイプのものでも装置本体に装着されること
で、本実施例として述べた装置本体との電気的な接続や
装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチ
ップタイプの記録ヘッド，あるいは記録ヘッド自体に一
体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用
いた場合にも本発明は有効である。

また、本発明に記録装置の構成として設けられる、記
録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付
加することは本発明の効果を一層安定できるので、好ま
しいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッ
ドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加
圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素
子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録と
は別の吐出を行なう予備吐出モードを行なうことも安定
した記録を行なうために有効である。

また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数につい
ても、例えば単色のインクに対応して１個のみが設けら
れたものの他、記録色や濃度を異にする複数のインクに
対応して複数個数設けられるものであってもよい。

さらに加えて、本発明インクジェット記録装置の形態
としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端
末として用いられるものの他、リーダ等と組合せた複写
装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の
形態を採るものであってもよい。

〔発明の効果〕

本発明によると、インク吸収体と大気連通路との間に
インク吸収体が介在しないバッファ室を設け、大気連通
路の内径および長さをそれぞれ0.7mm以下および20mm以
上にすると共にバッファ室に比べて内径を小さくしたの
で、インクの蒸発を極力抑制することが可能となり記録
特性の維持及び、ランニングコストの低減を図ることが
できる。

【図面の簡単な説明】

第1A図および第1B図は、本発明によるインクジェットカ
ートリッジの第１実施例の構成を模式的に示す斜視図お
よび断面図、 第2A図および第2B図は、第１実施例によるインクタンク
を装着したインクジェット記録装置の記録状態およびキ
ャッピング状態をそれぞれ示す斜視図、 第３図、第４図および第５図はインクタンクのインク蒸
発特性にかかわるそれぞれ特性曲線図、 第6A図は、本発明によるインクジェットカートリッジの
第２実施例の構成図、 第6B図は第6A図の更にＡ−Ａ′線断面図、 第7A図は、第２実施例と比較するための従来型比較例の
構成図、 第7B図は第7A図の更にＡ−Ａ′線断面図、 第8A図および第8B図は、本発明によるインクジェットカ
ートリッジの第３実施例の構成を装着前と装着状態とで
それぞれ示す断面図、 第９図は本発明の更に他の形態の実施例を装着状態で示
すインクジェット記録装置の斜視図である。 100……記録ヘッドユニット、 101……カートリッジ、 102……吐出部、 103……供給タンク部、 104……吐出面、 104A……吐出口、 105……インクタンク、 106,206……蓋部材、 107……インク吸収体、 108,208……バッファ室、 109……通気口、 110……大気連通管、 120……キャップ部材、 205……インクタンク部、 210,310……大気連通路、 211……通路形成部材、 307……シール部材、 308……連通口、 309……チューブ、 311……通気口シール部材。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 春男 東京都大田区下丸子３丁目30番２号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−146768（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−53473（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B41J 2/175

Claims (11)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】インクが含浸されて負圧を発生可能なイン
   ク吸収体と、このインク吸収体と大気とを連通させるた
   めの大気連通路とを有するインクタンクであって、 前記インク吸収体と前記大気連通路との間に前記インク
   吸収体が介在しないバッファ室を具え、 前記大気連通路は、前記バッファ室に比べて内径が小さ
   く、その内径が0.7mm以下であって、長さが20mm以上で
   あることを特徴とするインクタンク。
2. 【請求項２】前記バッファ室は、前記インクタンクの中
   央部に形成されていることを特徴とする請求項１に記載
   のインクタンク。
3. 【請求項３】前記大気連通路は、前記インクタンクを形
   成する壁部と、この壁部に接合される通路形成部材とで
   構成され、前記壁部および前記通路形成部材の少なくと
   も一方に前記大気連通路を形成するための通路形成溝が
   設けられていることを特徴とする請求項１または請求項
   ２の何れかに記載のインクタンク。
4. 【請求項４】前記通路形成溝は、前記壁部に設けられて
   いることを特徴とする請求項３に記載のインクタンク。
5. 【請求項５】前記大気連通路が蛇行していることを特徴
   とする請求項１から請求項４の何れかに記載のインクタ
   ンク。
6. 【請求項６】前記インク吸収体は、多孔質材または繊維
   により構成されていることを特徴とする請求項１から請
   求項５の何れかに記載のインクタンク。
7. 【請求項７】インクを吐出するために利用されるエネル
   ギーを発生するエネルギー発生体が設けられたインク路
   を有するインクジェットヘッドと、 このインクジェットヘッドが一体的に設けられ、前記イ
   ンク路に供給されるインクが含浸されて負圧を発生可能
   なインク吸収体と、このインク吸収体と大気とを連通さ
   せるための大気連通路とを有するインクタンクと を具えたインクジェットカートリッジであって、 前記インク吸収体と前記大気連通路との間に前記インク
   吸収体が介在しないバッファ室をさらに具え、 前記大気連通路は、前記バッファ室に比べて内径が小さ
   く、その内径が0.7mm以下であって、長さが20mm以上で
   あることを特徴とするインクジェットカートリッジ。
8. 【請求項８】前記エネルギー発生体は、エネルギーとし
   て熱エネルギーを発生する電気熱交換体であることを特
   徴とする請求項７に記載のインクジェットカートリッ
   ジ。
9. 【請求項９】インクを吐出するために利用されるエネル
   ギーを発生するエネルギー発生体が設けられたインク路
   を有するインクジェットヘッドと、 このインクジェットヘッドが一体的に設けられ、前記イ
   ンク路に供給されるインクが含浸されて負圧を発生可能
   なインク吸収体と、このインク吸収体と大気とを連通さ
   せるための大気連通路とを有するインクタンクと を具えたインクジェットカートリッジが装着されるカー
   トリッジ装着部を有するインクジェット装置であって、 前記インク吸収体と前記大気連通路との間に前記インク
   吸収体が介在しないバッファ室をさらに具え、 前記大気連通路は、前記バッファ室に比べて内径が小さ
   く、その内径が0.7mm以下であって、長さが20mm以上で
   あることを特徴とするインクジェット装置。
10. 【請求項１０】前記カートリッジ装着部は、走査移動す
    るキャリッジであることを特徴とする請求項９に記載の
    インクジェット装置。
11. 【請求項１１】前記エネルギー発生体は、エネルギーと
    して熱エネルギーを発生する電気熱変換体であることを
    特徴とする請求項９または請求項10に記載のインクジェ
    ット装置。