JP2854478B2 - 連続式スパッタリング装置 - Google Patents

連続式スパッタリング装置

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JP2854478B2
JP2854478B2 JP33900892A JP33900892A JP2854478B2 JP 2854478 B2 JP2854478 B2 JP 2854478B2 JP 33900892 A JP33900892 A JP 33900892A JP 33900892 A JP33900892 A JP 33900892A JP 2854478 B2 JP2854478 B2 JP 2854478B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は導電帯状基体上に機能性
堆積膜を形成するスパッタリング装置に関し、特にアル
ミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニ
ウム−シリコン合金(Al−Si)等の金属膜、酸化亜
鉛(ZnO)、シリコン(Si)等の半導体膜、あるい
はITO,SnO2 等の透明導電膜を連続的に生産する
連続式スパッタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、スパッタリング技術は金属膜、半
導体膜、絶縁膜等の種々機能性堆積膜形成手段として欠
くことのできない技術である。殊に最近では、こうした
スパッタリングにより堆積する膜の応用範囲が広がり、
それに伴って需要が急増している。このような背景から
よりスループットの高い量産型のスパッタリング装置が
求められている。一方、スパッタリング装置において
は、堆積膜を高真空下で行うため、膜堆積用基体のスパ
ッタリング装置内への設置あるいは取り出し工程、装置
内を減圧とする工程、再び大気圧とする工程、さらには
装置内に設置した基体を所望温度まで加熱あるいは冷却
する工程に時間を要し、スループットを高めるには多大
な困難があった。
【0003】このような、いわゆるバッチ式のスパッタ
リング装置を使用した堆積膜形成工程を以下に簡略に述
べる。図5はこうした従来のバッチ式スパッタリング装
置を示す模式図である。図5において、真空容器601
には扉602が取り付けられ、真空容器601は全体が
接地されている。真空容器601には、その底部側か
ら、スパッタリングを生起するのに用いられる、例えば
Arガス等を導入する配管603が導かれており、配管
603にはバルブ604が設けられている。また、真空
容器601底部にはガス排気用の配管605が設けられ
ており、配管605は排気バルブ606を介して真空ポ
ンプ607に連通している。真空ポンプ607には、通
常スパッタリングを生じさせることが可能な圧力まで真
空容器601内を減圧できるポンプ、例えば拡散ポン
プ、ロータリーポンプ、それらの組み合わせ等が用いら
れる。さらに真空容器601内の底部近傍には、スパッ
タリング用のターゲット608を固定するバッキングプ
レート609が設けられている。バッキングプレート6
09には、スパッタリングを生じさせるための直流の電
源610が接続され、また、マグネトロンスパッタリン
グを生起するためのマグネット611が設けられてい
る。マグネット611は、電源610による放電を安定
化させ、また、より速い成膜速度を得るためのものであ
る。真空容器601内の上面には、堆積膜形成用の基体
612を支えるサセプター613が吊設されている。基
体612としては、通常、金属、ガラス、セラミック、
有機フィルム等が用いられる。サセプター613には、
基体加熱用のヒーター614が設けられており、電源6
15より電力が供給されると、基体612を所望の温度
まで加熱することができる。
【0004】次に、図5に示す装置を用いてスパッタリ
ングにより基体612に堆積膜を形成する方法の概略を
述べる。まず、排気バルブ606を閉じ、ガス供給バル
ブ604を開いて真空容器601内を大気圧にする。真
空容器601が大気圧となったならば、扉602を開い
て、基体612をサセプター613に設置する。基体の
設置が終ったならば扉602を閉じ、バルブ604を閉
じて真空容器601を密閉状態とする。次いで、真空ポ
ンプ607を起動し、また、排気バルブ606を開い
て、真空容器601内を減圧状態とする。真空容器60
1内が1×10-6torr程度以下の真空に達したなら
ば、バルブ604を開け、真空容器601にArガスを
導入する。このとき、不図示のガス流量調整器によりA
r流量を調節し、また、排気バルブ606の開度を変え
ることにより真空容器601内の圧力を所望のものとす
ることができる。引き続いて、電源615によりヒータ
ー614に電力を供給して、基体612を加熱する。基
体612が所望の温度となったならば成膜を開始する。
成膜は電源610によりスパッタリング用のターゲット
608およびプレート609に負の電位を印加すること
により開始する。このような状態を維持し、基体612
上に所望の厚さの膜が堆積した時点で電源610による
電力の印加を中止し、成膜を終了する。成膜を終了した
ならば加熱電源615を切り、基体612を冷却する。
基体612が常温近くまで冷却できたならば排気バルブ
606を閉じ、ガス導入口603より導入されるArガ
スにより真空容器601内を大気圧とする。真空容器6
01内が大気圧となったならば扉602を開け、膜堆積
を終えた基体612を容器601外に取り出す。所望の
膜の堆積した基体612は必要に応じて次の成膜プロセ
スあるいはエッチングプロセス等に供給されるか、ある
いは製品検査等が行われる。
【0005】以上のプロセスでスパッタリング法を用い
て、1回の成膜プロセスが終了するのであるが、この方
法には以下に述べる問題点があった。
【0006】第1の問題点として、成膜プロセスにおい
て、基体の設置、取り出し、真空引き、加熱、冷却、容
器リークに多大の時間がかかるということが挙げられ
る。こうしたバッチ式のスパッタリング装置において
は、真空容器の大きさに限界がある以上、量産といって
も上記プロセスを繰り返すこととなり、上記問題点がク
ローズアップされる。
【0007】第2の問題点として、ターゲットからスパ
ッタリングされた材料が目的とする成膜箇所以外の場
所、すなわち真空容器の内壁等に堆積してしまうことが
挙げられる。数回の成膜プロセスを経た後には、こうし
た膜は膜の応力等のために膜はがれを生じ、膜堆積に悪
影響を与える。こうした事態を防止するために、従来は
数回の成膜プロセスの後に真空容器内壁の清掃等を必要
としていた。
【0008】このような問題点を解決するためにいくつ
かの提案がされている。
【0009】その第1の方法として、いわゆるロード・
ロック法がある。ロード・ロック法は成膜室に加えて事
前真空引きおよび加熱を行う室と、冷却および取り出し
を行う室とを用い、成膜室と前記各々の室との間をゲー
ト・バルブ等のガス分離を可能とする手段および基体搬
送手段を介して基体をやり取りするものである。例え
ば、特公昭47−288号公報にそのような方法が開示
されている。この方法においてもゲート・バルブ等の何
らかのガス分離手段の開閉動作があるためにある程度の
ロス・タイムがあること、ならびに各室間がガス分離手
段で仕切られるために基体として例えばロールから繰り
出す長尺基体等は使えないという欠点がある。
【0010】また、第2の方法として、基体が大気から
数段の減圧室を連続的に通って成膜室に入りスパッタリ
ングにより膜を堆積した後、改めて排出側の数段の減圧
室を連続的に通って大気に搬出する方法が特公昭47−
13045号公報に開示されている。この方法において
は真空引き、大気リーク等に要する時間がないというこ
とからスループットに極めて優れるが、一方、成膜室へ
の大気の流入を完全に止めることができないために実際
にこの方法を適用できる材料が限られており、構造的に
敏感な例えば半導体膜の作成等に利用することは困難で
あった。
【0011】上述の問題点を克服し、特にロールから繰
り出す基体上に敏感な膜を大量に生産することを可能に
する方法として、膜堆積手段としてはスパッタリング法
ではないものの、米国特許第4514437号明細書に
その方法が提案されている。以下、この方法について図
6を参照して簡単に説明する。
【0012】図6は従来の連続式イオンビーム型蒸着機
による成膜装置を示す模式図である。成膜装置701
は、成膜が行われる成膜室711と、長尺基体704の
繰り出し室712と、長尺基体704の巻き取り室71
3と、スパッタリング生起用ガスの導入口702と、不
図示の真空ポンプに連通しているガス排出口703と、
長尺基体704を所望の温度まで加熱できるヒーター7
07と、蒸着源となる材料が満たされている坩堝708
と、蒸着のためのエネルギー源であるイオンビーム源7
09とを有している。長尺基体704は、繰り出し室7
12内の繰り出しロール705から繰り出され、成膜室
711を通って巻き取り室713内の巻き取りロール7
06に巻き取られる。
【0013】この成膜装置701による成膜方法につい
て説明する。まず、繰り出しロール705、巻き取りロ
ール706を各々送り出し室712および巻き取り室7
13に設置し、長尺基体704を成膜室711内に張っ
た状態とする。次いで不図示の真空ポンプを起動し、排
気口703を通じて成膜装置701内を減圧状態とす
る。成膜装置701内が充分真空となったならば、必要
に応じてガス導入口702を通じて成膜に利用するガス
を成膜室711内に導入する。引き続いてヒーター70
7に不図示の電源から電力を供給し、長尺基体704を
所望温度まで加熱する。以上のようにして準備が整った
ならば、蒸着用のイオンビ−ム709よりパワーを投入
し、坩堝708内の材料の蒸着を開始する。それと同時
に巻き取りロール706を回転させ、長尺基体704を
順次搬送して、長尺基体704上に連続的に堆積膜を形
成してゆく。必要とされる膜厚はイオンビーム源709
のエネルギーおよび巻き取りロール706の回転速度、
すなわち長尺基体704の搬送速度により制御される。
【0014】前述の成膜装置701においては、成膜方
法として蒸着法を用いたが、この方法をスパッタリング
式成膜装置に適用することは比較的容易に考えられる。
こうした成膜方法は、従来の問題点であった基体設置後
の真空引き、加熱、冷却、大気リークに要する時間が激
減し、極めて高いスループットで成膜を行うことがで
き、量産に適した方法である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうし
たいわゆるロール・ツー・ロールの成膜装置において
も、以下に記す問題点が残存している。
【0016】第1の問題点は、以下の事情による。すな
わちより高いスループットで膜堆積を行うときには長尺
基体の送り速度を速くすることが必要であり、そのとき
に所望の膜厚を得るにはターゲットを長尺化し、実効的
な成膜室長を長くする必要がある。また、長尺基体上に
連続的に種類の異なった膜を堆積するときには、種類の
異なったターゲットを成膜室内に長尺基体に沿って並べ
ることとなり、やはり、成膜室が長大化してしまう。こ
のような事情により成膜室が長大化したときに問題とな
るのが重力による長尺基体の垂れ下がりである。すなわ
ち、繰り出しロールと巻き取りロールの接触点を支点と
して、長尺基体が吊られた状態となり、長尺基体の中心
部分が下がったカテナリー曲線を描く。その垂れ下がり
量は、各ロールから長尺基体に与える張力等によって変
化するが、長尺基体に重量がある限り皆無とすることは
できない。こうした垂れ下がりは、ターゲットと基板間
の距離を変えてしまい、均一な放電および均質な膜堆積
を困難にする。
【0017】こうした垂れ下がりを防ぐための一案とし
て、長尺基体を何らかの手段で支えることが考えられ
る。この中で一番単純な方法は、長尺基体の下から回転
自在なローラーを押し当て、長尺基体を押し上げてやる
方法であるが、この方法は長尺基体の表面すなわち膜堆
積面へ他の部材をこすらせることとなり、膜特性上好ま
しくなく、極端な場合には膜に引っ掻き傷等を生じさせ
ることがある。一方、磁性体長尺基体を使った場合に
は、磁力を持った回転自在のローラー(以降「マグネッ
トローラ」と記す)を長尺基体の裏面に接触させ、両者
間の磁力により長尺基体を吊り下げる方法が考えられ
る。こうした考え方は米国特許第4440107号明細
書に開示されている。このマグネットローラーを用いた
技術は、化学堆積法(CVD法)に適用するものとして
提案されているものであり、この場合には成膜母体は中
性ラジカルであるから、膜堆積に及ぼす影響を考慮しな
くてもよい。しかし、スパッタリングのように荷電粒子
が成膜に対して主要な働きをしている方法においては、
マグネットローラの磁力が荷電粒子の挙動に変化を与
え、成膜への悪影響が懸念される。殊にマグネトロンス
パッターを用いている場合には、ターゲット下の放電用
マグネットとの相互干渉がある。また、この明細書(米
国特許第4440107号)においてはマグネットロー
ラーの好ましい設置場所については触れられていない。
【0018】第2の問題点として、目的とする堆積膜形
成箇所以外の箇所にも膜が堆積してしまうことが挙げら
れる。すなわち、成膜室を形作る壁、あるいはヒーター
等に膜が付着し、こうした膜が、ある膜厚以上になると
はがれ出し、ターゲット上に落ちてくるといった事態が
発生する。こうした事態を防ぐためには、一定期間毎に
壁の清掃を行わなくてはならないが、こうした清掃作業
は装置の稼動率を大幅に減じてしまう。さらに2種類以
上の材質の異なったターゲットを用いて膜堆積を行おう
としたときに、目的とする堆積膜形成箇所以外に膜が付
着することは、こうした材質の異なった膜間での界面形
成を困難にする。すなわち、例えば半導体接合形成等の
目的では2種類の膜が理想的な接合形成のための界面を
形成することが必要であるが、隣り合ったターゲットか
ら飛んでくる材質が同時に堆積されるために界面は2種
の材質の混晶となり、理想的な接合を形成することがで
きない。したがってこの方式においては2種類以上の材
質の積層にはその材質、目的に制約のあるものであっ
た。
【0019】本発明は、量産を目的とした連続式スパッ
タリング装置における上述の問題点、すなわち重力によ
る長尺基体の垂れ下がりおよびそれによる放電の非均一
化、また、目的とする膜堆積箇所以外に膜が付着するこ
とによる稼動率の低下および理想的な界面形成が困難で
あること等を克服し、量産性に富み、かつ特性の優れた
堆積膜を形成し得る連続式スパッタリング装置の提供を
目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の連続式スパッタ
リング装置は、ロール状に巻かれた導電性の長尺基体上
に連続的に機能性堆積膜を形成する連続式スパッタリン
グ装置において、前記長尺基体に磁性体が用いられるも
のであり、前記長尺基体の堆積膜形成面を鉛直下方に向
けるように前記長尺基体のロールが支持され、減圧状態
を作り得る外側チャンバーと、該外側チャンバー内部に
配置され、スパッタリング生起用のガスを導入でき、ス
パッタリング用のターゲットを内在させる少なくとも1
個の取り外し自在な内側チャンバーとを有する堆積膜形
成室を備え、回転自在なマグネットローラーに前記長尺
基体の堆積膜形成面の裏面が接触され、両者間の磁力に
より前記長尺基体が前記堆積膜形成室内において支持さ
れ、前記内側チャンバーは、前記長尺基体が前記内側チ
ャンバーの一壁面を形成する位置を通過するように配置
され、前記長尺基体が前記内側チャンバーの一壁面を形
成する位置と異なる位置に、前記マグネットローラーと
前記長尺基体との接触面があり、前記長尺基体の裏面側
を加熱するランプヒーターが、前記長尺基体が前記内側
チャンバーの一壁面を形成する位置の上部、並びに該位
置より前記長尺基体を繰り出す側に、各々1箇所以上設
けられていることを特徴とするものである。
【0021】
【作用】マグネットローラーがその磁力により長尺基体
を支持するので、長尺基体の垂れ下がりおよびそれによ
る放電の非均一化を防止できる。このマグネットローラ
ーは、長尺基体が内側チャンバーの壁面を形成する位置
とは異なる位置に設置される。すなわち、マグネットロ
ーラーは、膜堆積が行われない箇所に設置される。した
がって、マグネットローラーの持つ磁力が堆積する膜に
与える影響を排除でき、特性の優れた堆積膜を形成でき
る。
【0022】膜堆積は内側チャンバーの中のみで行われ
るので、スパッタリングリングされた材料が目的とする
膜堆積箇所以外に付着することがなく、外側チャンバー
の清掃の必要がなくなり、装置稼動率が向上する。内側
チャンバーには膜が付着するが、内側チャンバーは容易
に交換することができるので、装置稼動率に影響を与え
ることはない。さらに、スパッタリングされた材料が目
的とする膜堆積箇所以外、すなわち内側チャンバーの外
側へ付着することがないので、内側チャンバーを複数並
べて連続的に異なった種類の膜を積層しようとしたとき
に互いの干渉、すなわち混晶等を発生させることなく理
想的な接合面を形成することができる。
【0023】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照し
て説明するが、本発明は実施例により何ら制限されるも
のではない。
【0024】図1は本発明の連続式スッパタリング装置
の一実施例を示す模式図である。
【0025】連続式スパッタリング装置101の図示左
端には、長尺基体110の繰り出しロール111が設置
される繰り出し室121が設けられている。繰り出し室
121の上側には扉221が設けられている。連続式ス
パッタリング装置101の左右両端を除く大部分は外側
チャンバーである成膜室(堆積膜形成室)122となっ
ている。成膜室122の上側には2枚の扉222が設け
られている。連続式スパッタリング装置101の図示右
端には、長尺基体110の巻き取りロール112が設置
される巻き取り室123が設けられている。巻き取り室
123の上側には扉223が設けられている。成膜室1
22の下側には、成膜室122、繰り出し室121、巻
き取り室123を減圧状態にするための排気管102が
設けられており、排気管102は排気バルブ103を介
して真空ポンプ104に連通している。繰り出し室12
1と成膜室122との境、成膜室122の中心箇所、成
膜室122と巻き取り室123との境には、回転自在な
マグネットローラー113が各々配置されている。各マ
グネットローラー113は、長尺基体110をその重力
に逆らって一直線上に配置するよう吊り下げるための磁
力を有している。外側チャンバーである成膜室122内
には、各々その内部に成膜領域を有する内側チャンバー
130,230が取り外し自在に設置されている。内側
チャンバー130,230内にはスパッタリング用のタ
ーゲット131,231を固定するバッキングプレート
132,232が各々設けられており、バッキングプレ
ート132,232の内部にはマグネトロン・スパッタ
リングのための不図示の磁石が各々組み込まれている。
内側チャンバー130,230には各々ガス供給パイプ
133,233が連通している。そして、ガス流量コン
トローラー136,236、ガス供給バルブ135,2
35を介してこれらのガス供給パイプ133,233か
らスパッタリング生起のための例えばAr等のガスが各
々導入される。ガス供給パイプ133,233は各々カ
ップリング134,234によって容易に取り外し可能
である。スパッタリング生起用の電源137,237
は、各々ターゲット131,231およびバッキングプ
レート132,232に接続されている。さらに、成膜
室122内にはヒータ−138,139,238が設け
られている。ヒーター138,238は、各々内側チャ
ンバー130,230の上方に設けられ、長尺基体11
0を所望の温度まで加熱する。ヒーター139は、移動
する長尺基体110が内側チャンバー130の位置に到
達するときに長尺基体110が所望の温度に達するよう
事前加熱する。
【0026】次に、図1に示す連続式スパッタリング装
置を用いて堆積膜を形成する方法を簡単に述べる。
【0027】まず、排気バルブ103を閉じ、ガス供給
バルブ135,235を開け、スパッタリング装置10
1の繰り出し室121、成膜室122、巻き取り室12
3を大気圧とする。全ての室が大気圧となったならば所
望する材質のターゲットを設置した内側チャンバー13
0,230を成膜室122に取り付ける。このときター
ゲット131,231の材質は異なっていても同じであ
ってもよい。さらに数種類以上の膜を積層するときは、
こうした材料のターゲットを設置した内側チャンバーを
増設すればよい。内側チャンバー130,230の成膜
室122への取り付けが終了したならばカップリング1
34,234により内側チャンバー130,230をガ
ス供給パイプ133,233とつなぎ、内側チャンバー
130,230へのスパッタリング用ガスの導入を可能
とする。引き続いて繰り出し室121の扉221、巻き
取り室123の扉223を開き、各々の室の中に繰り出
しロール111、巻き取りロール112を据え付ける。
長尺基体110は繰り出しロール111から繰り出さ
れ、マグネットローラー113に接触して吊られるよう
にしながら、内側チャンバー130,230の一面を形
成するように張られ、巻き取りロール112に巻かれ
る。
【0028】以上の設置が完了したならば、扉221,
223を閉じ、ガス供給バルブ135,235を閉じ、
次いで真空ポンプ104を起動し、排気バルブ103を
開け、連続式スパッタリング装置101内を減圧する。
連続式スパッタリング装置101内が1×10-6tor
r程度以下の高真空となったならば、ガス供給バルブ1
35,235を開け、内側チャンバー130,230内
にスパッタリング用ガスを導入する。このときガスはガ
ス流量コントローラー136,236により所望の流量
に制御され、また、成膜室122内の圧力は排気バルブ
103の開度を調節することにより所望のものとするこ
とができる。次いで、ヒーター138,139,238
に不図示の電源より電力が供給され、長尺基体110を
加熱する。このときヒーター139は、ある一定速度で
移動する長尺基体110がその下部を通過する間に隣り
合う内側チャンバー130内での膜堆積温度に到達する
ように電力が予め調節されている。一方、ヒーター13
8,238は、各々の下部にある内側チャンバー13
0,230を長尺基体110が通過する間に長尺基体1
10が一定温度を保つように電力が予め調節されてい
る。次いで、電源137,237により電力を印加し、
ターゲット131,231と基体110との間にDCマ
グネトロン放電を生起させ、スパッタリングを開始す
る。それと同時に、巻き取りロール110を回転させて
長尺基体110を搬送し、所望の膜厚を持つ堆積膜をタ
ーゲット131の材質、231の材質の順に積層しなが
ら連続的に膜形成を行う。
【0029】この状態を繰り出しロール111に巻かれ
た長尺基体110が全て繰り出される直前まで保持し、
長尺基体110のほぼ全長上に所望の堆積膜を形成す
る。長尺基体110のほぼ全長上の成膜を終えたなら
ば、電源137,237の電力の供給を止め、スパッタ
リングを停止し、また、ヒーター138,139,23
8への電力の供給を止め、長尺基体110を冷却する。
長尺基体110が常温程度まで冷えたならば、ガス供給
バルブ135,235を開いたまま排気バルブ103を
閉じ、連続式スパッタリング装置101を大気圧とす
る。連続式スパッタリング装置101内が大気圧となっ
たならば扉221,223を開けて、繰り出しロール1
11、巻き取りロール112および長尺基体110を取
り出す。
【0030】以上のようにして膜堆積を終えた長尺基体
110は、さらに次の成膜工程に移る、あるいは製品検
査を受ける等の次ステップに供される。
【0031】次に、本実施例の連続式スパッタリング装
置101を構成する内側チャンバー130について説明
する。内側チャンバー230は内側チャンバー130と
同様の構成であるため、説明を省略する。
【0032】図2は内側チャンバー130の一例を一部
を破断して示す斜視図である。図2において、長尺基体
110は、内側チャンバー130の切り欠いた面(上
面)に沿うよう配置され、内側チャンバー130の壁面
の一部を形成する。底板303は、4箇所に開けられた
ボルト穴313によって図1における成膜室122に固
定される。内側チャンバー130は、底板303上に設
けられた位置決め治具304に当てがわれて底板303
に取り外し自在に設置される。内側チャンバー130内
にスパッタリング生起用ガスを供給するためのパイプ3
05は、その一端がカップリング306となっており、
図1のカップリング134に接続されてガス供給パイプ
133に連通する。内側チャンバー130の底面には絶
縁碍子309が設置されている。絶縁碍子309は、タ
ーゲット131およびバッキングプレート132に電力
を与える際に必要となるものである。内側チャンバー1
30の側壁にはスリット状のガス排気口310が形成さ
れている。ガス排気口310は、後述するガス排気口4
06(図3参照)同様、スパッタ材料が内側チャンバー
130から外側へ漏れることを防止するルーバー状の構
造となっている。
【0033】以上のように内側チャンバー130,23
0が構成されているため、スパッタリングされた材料が
目的とする膜堆積箇所以外に付着することがなく、成膜
室122等の清掃の必要がなくなり、装置稼動率が向上
する。また、長尺基体110そのものが内側チャンバー
130,230の一面となって放電空間を形成している
ために放電の安定性、ひいては均一なスパッタリングに
効果がある。内側チャンバー130,230には膜が付
着するが、内側チャンバー130,230は容易に交換
することができるので、装置稼動率に影響を与えること
はない。さらに、スパッタリングされた材料が目的とす
る膜堆積箇所以外、すなわちこの場合においては内側チ
ャンバー130,230の外側へ付着することがないの
で、内側チャンバー130,230を複数並べて連続的
に異なった種類の膜を積層しようとしたときに互いの干
渉、すなわち混晶等を発生させることなく、理想的な接
合面を形成することができる。
【0034】図3は内側チャンバーの他の例を示す斜視
図である。図3において、内側チャンバー401は、図
1、図2に示す内側チャンバー130,230に相当す
るものである。内側チャンバー401の上面には、長尺
基体110の側方の両端部を覆う覆板403が形成され
ている。内側チャンバー401は、図2の内側チャンバ
ー130同様に底板303に取り外し自在に設置され
る。パイプ405は図2のパイプ305と同等のもので
ある。ガス排気口406は、ルーバー状となっており、
不図示のターゲットからスパッタされた原子のうち、ガ
ス排気口406に向かうものはこのルーバーのひさしに
付着し、内側チャンバー401から外に出ない。さら
に、覆板403が長尺基体110を部分的に覆うため、
ターゲットからスパッタされた原子が長尺基体110と
内側チャンバー401との間を通って外側に出ることが
ない。また、効率的な加熱のためには内側チャンバー4
01上部が長尺基体110全体を覆うことは好ましくな
く、図3に示すように長尺基体110の端部のみを覆う
べきである。このような構成としたことにより、前述し
た内側チャンバー401を複数個並べて連続的に異なっ
た種類の膜を堆積しようとしたときに発生する互いの干
渉を極限まで減じることができる。なお、この内側チャ
ンバー401においてもその交換は容易であり、装置稼
動率に悪影響を与えないことは言うまでもない。
【0035】図1〜3において、複数の内側チャンバー
130,230,401各々がガス導入口であるパイプ
305,405を有することにより、各々の内側チャン
バー130,230,401が全てガス流路上の上流側
となり、スパッタリングに使われたガスは必ず内側チャ
ンバー130,230,401からガス排気口310,
406を通して成膜室122内に流れ出た後、真空ポン
プ104に引かれることとなる。したがって、ある内側
チャンバーがそれに隣り合う内側チャンバーで使われた
ガスの影響を受けることなく理想的に独立した成膜を行
うことが可能となる。
【0036】次に、本実施例の連続式スパッタリング装
置101を構成するマグネットローラー113について
説明する。
【0037】図4はマグネットローラー113の一例を
一部を破断して示す斜視図である。図4において、シャ
フト501は成膜室122内に適当なハウジング等によ
って固定される。ベアリング502は回転パイプ503
がシャフト501の回りを回転可能とする。そして、複
数のドーナツ状のマグネット504が回転パイプ503
の外側にシャフト501に沿って並べて配置されてい
る。
【0038】マグネットローラー113は、その磁力に
より磁性体である長尺基体110を引き付け、図1に示
すように吊り下げることが可能となる。また、その磁力
によりマグネットローラー113と長尺基体113間に
は摩擦力が生じ、長尺基体110の搬送にしたがってマ
グネット504および回転パイプ503はシャフト50
1の回りを回転する。
【0039】マグネットローラー113は、図1に示す
連続式スパッタリング装置101においては、繰り出し
室121と成膜室122の境、成膜室122の中心箇
所、成膜室122と巻き取り室123の境に各々設けら
れている。こうした例に示すように、マグネットローラ
ー113を設ける位置は長尺基体110の垂れ下がりを
防止することの可能な間隔をおいて設ければよいが、長
尺基体110が内側チャンバー130,230,401
の一面を形成している位置以外の箇所に設置することが
必要である。マグネットローラー113を長尺基体11
0が内側チャンバー130,230,401の一面を形
成している位置に設置した場合には、マグネットローラ
ー113の持つ磁力がスパッタリングに寄与する荷電粒
子の動きに影響を与え、堆積する膜の膜厚、膜質等に悪
影響を与えるからである。
【0040】従来の方法においては、内側チャンバーを
持つ二重構造ではなかったためスパッタされた膜が目的
とする膜堆積箇所以外にも付着することから、成膜室中
のいかなる位置にマグネットローラーを設置してもその
磁場が悪影響を及ぼすことを防止できなかった。
【0041】本発明の実施例においては、膜堆積は内側
チャンバー130,230,401の中でのみ行われる
ので実質的に膜堆積の皆無である箇所にマグネットロー
ラー113を設置することにより、マグネットローラー
113の持つ磁場が、堆積する膜に与える悪影響を完全
に排除することが可能となったものである。
【0042】マグネットローラー113の構成は、本例
にとどまらず、同様の機能を有するものであれば様々な
態様が考えられる。例えば、ベアリングをシャフトとパ
イプの間に設置するのではなく、シャフトを成膜室本体
に固定するハウジング内に設置し、シャフトごとマグネ
ットローラー全体が回転するタイプ、あるいは固定され
て回転不可能なシャフトの回りにマグネットを固定し、
さらにその外側に回転可能なローラーハウジングを設け
るタイプ等が考えられる。本発明を構成する機能を有す
るものであればいずれのタイプのマグネットローラーで
あっても使用可能である。
【0043】マグネットの材質は、アルニコ、フェライ
ト等どんな材質であってもよいが、真空中でのガス放出
が少ないこと、ある程度の高温で充分な磁力を有するこ
とが望ましい。必要な磁力については、長尺基体110
の厚さ、重量あるいはその材質の保磁力等により変わる
が、好ましくは10ガウス以上、さらに好ましくは10
0ガウス以上が望ましい。
【0044】次に、図1の実施例において、マグネット
ローラー113の好ましい設置間隔について説明する。
【0045】そのために、ある一定の長さ(以降「スパ
ン」と記す)の変形自在な長尺薄板をその両側からある
一定の張力(以降「テンション」と記す)で引っ張った
ときに、重力によって垂れ下がった長尺薄板の中心部
(すなわち、一番垂れ下がり量の大きい箇所)の最大垂
れ下がり量(δmax)を計算する。
【0046】最大下がり量δmaxは δmax=L2 /(8H/W) で与えられる。ここで、 H=(T2 −/V21/2 L:スパン T:テンション H:テンションの水平分力 V:テンションの垂直分力 W:薄板の単位当たり重量 である。
【0047】次に、以下の条件にて計算を行う。 o長尺薄板の厚さを0.2mmとする。 o長尺薄板はステンレス製であり、密度を8×10-6
g/mm3 とする。 o長尺薄板の幅は100mmおよび400mmの2種類
とする。 o長尺薄板のスパンは250,500,1000,20
00mmとする。 o長尺薄板に与えるテンションは5,10,20,40
kgとする。
【0048】これらの数値を既述の式に代入した結果得
られた最大垂れ下がり量δmaxの値を表1,2に示
す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】 これらの条件を実際に実験で作り出して最大垂れ下がり
量δmaxを測定したところ、測定値は表1,2中の各
々の条件において計算値より2割ないし3割大きかった
が基本的には計算値で示された傾向を再現していた。測
定値が実測値に比して大きいのは、マグネトロンスパッ
タ用マグネットの磁力の影響等によるものと考えられ
る。
【0051】次に、表1,2をもとにマグネットローラ
ーを持たない連続式スパッタリング装置について考察す
る。マグネットローラーを持たない連続式スパッタリン
グ装置においては、繰り出しロールと巻き取りロールと
の間隔がスパンとなる。例えば、長尺薄板の幅400m
m、テンション5kg、スパン2000mmのときには
最大垂れ下がり量δmaxは64mmである。一方、通
常スパッタリングにおいては、ターゲットと基体間の距
離(以降、「T−S間距離」と記す)は10mmないし
200mm、好ましくは30mmないし100mm程度
であり、こうした好ましいT−S間距離に対してδma
x=64mmの垂れ下がりの影響は極めて甚大であり、
実用に供することは不可能である。
【0052】一般的にT−S間距離の変動量は堆積した
膜厚および膜質の再現性を得るには1mm程度以内に納
めることが望ましい。
【0053】次に、上述した考察から図1の実施例にお
いて、マグネットローラー113の好ましい設置間隔に
ついて述べる。マグネットローラー113を設ける場合
には、隣り合うマグネットローラー113同志の間隔が
スパンとなる。例えば、長尺基体110の幅400m
m、テンション20kgのときには、スパンは500m
m以内としなければ最大垂れ下がり量δmaxを1mm
以内に納めることができない。スパンが同じであっても
テンションを強くしてゆけば最大垂れ下がり量δmax
は減少するが、連続式スパッタリング装置101の強
度、長尺基体110の引っ張り強度、あるいは巻き取り
ロール112の巻き上げ機構(不図示)の能力等から現
実的には数10kgfないし100kgf程度が上限だ
と考えられる。一方スパンを小さくしすぎるとターゲッ
ト131,231および内側チャンバー130,230
の1個当たりの大きさが小さいものとなり効率的でな
い。以上のような観点からマグネットローラー113同
志の間隔は500mm前後とし、長尺基体110の厚
さ、材質等に応じてテンションを調整することが望まし
い。本発明で使用される長尺基体は、磁性体であって変
形可能なものであればどんな材質であってもよいが、例
えば鉄、ステンレス、ニッケル系の合金等が望ましく、
さらにこれらの材料に表面処理を施したもの、絶縁物、
有機膜等をラミネートしたもの等も使用可能である。
【0054】本発明において、長尺基体を所望の温度ま
で加熱する手段としては、赤外線ランプヒーターが用い
られる。まず第1に本発明のような連続式スパッタリン
グ装置においては長尺基体自身を移動しながら成膜する
ため、接触式のブロックヒーターあるいはシーズヒータ
ーの類は長尺基体にこすれ等の損傷を与える可能性があ
り、使用には不適であり、遠隔から加熱手段が望まし
い。さらに、連続式スパッタリング装置のスループット
を高め、長尺基体の移動速度を速めるときには極めて短
時間で長尺基体を所望温度まで加熱する必要がある。以
上の点に照らし合わせて非接触で高効率の加熱手段とし
て赤外線ランプヒーターが最も好適なものである。
【0055】以上述べてきたように、本発明は、外側チ
ャンバー(成膜室)と内側チャンバーを持つ二重構造、
適切な位置に配置されたマグネットローラー、高効率加
熱手段等全てがあいまって良質な膜を極めて高い稼動率
と、極めて高いスループットで作製することを実現する
ものである。
【0056】本発明の連続式スパッタリング装置で作製
する膜は、スパッタリングによって作製する膜であれば
何でもよいが、例えば、アルミニウム、銀、銅、亜鉛、
チタン等の金属、あるいはシリコン等の半導体、上記金
属あるいは半導体の合金あるいは酸化物、さらにはIT
O等の透明導電膜、酸化物系セラミックス等の成膜に用
いることが可能である。
【0057】図1に示す連続式スパッタリング装置に上
記材質からなるターゲットを組み込むことにより、上記
材質の膜が成膜可能であるが、さらに3種類以上の材質
の異なった膜を積層するためには、内側チャンバーを3
個以上を設ける構造とすればよい。
【0058】以下、実験例により本発明の具体的適用例
を示す。
【0059】[実験例1]図1に示した連続式スパッタ
リング装置101を用いて透明導電膜(ITO)を作製
した。スパッタリング用のターゲット131,231と
してはITO(In23 −SnO2 ,200mm角、
密度85%、純度99.99%以上)ターゲットを用い
た。このITOターゲットを図1に示す連続式スパッタ
リング装置101の内側チャンバー130,230内の
規定箇所に設置した。
【0060】長尺基体110は厚さ0.15mmのステ
ンレス(SUS430、BA処理)で幅10cm長さ5
0mのものを用いた。この長尺基体110は所定の洗浄
工程を終えた後に、繰り出しロール111に巻かれてお
り、図1における繰り出し室121内に設置される。そ
の後、成膜室121を通した長尺基体110を巻き取り
室123内の巻き取りローラー112に巻き付ける。以
上の準備を終えたら、実際の成膜工程に移る。
【0061】成膜工程における実作業は既に記述した方
法と同一であるので、ここでは省略し、成膜時のパラメ
ーターのみを記す。
【0062】長尺基体110の搬送速度は10cm/分
とし、この搬送速度のときに長尺基体110の成膜温度
が200℃となるようにヒーター138,39,238
に加える電力を各々調節した。スパッタリング生起に用
いたガスはArであり、その流量は100sccmとし
た。成膜空間内の圧力は不図示の真空計でモニターし3
mtorrとなるように排気バルブ103の開度を調節
した。しかる後に電源137,237より600Wのパ
ワーを投入し、ITO膜の堆積を開始した。この状態を
5時間維持し30mの長さにわたってITO膜を堆積し
た。スパッタを止め、ヒーター138,139,238
による加熱を止め、常温程度まで冷却した後に巻き取り
ロール112ごとITO膜の堆積した長尺基体110を
取り出した。
【0063】ITO膜の堆積した長尺基体110を目視
にて観察したところ、30mの長さにわたって色むらの
ない均一な膜が堆積していた。さらにこの長尺基体11
0を長尺基体110の成膜開始から5m,15m,25
mの各距離の点において5cm角に切り出し、測定用サ
ンプルを作成した。以降各々のサンプルをS5m,S1
5m,S25mと呼ぶ。これらのサンプルS5m,S1
5m,S25mについて反射型分光光度計を用いて光の
干渉により膜厚を調べたところ、S5mは820オング
ストローム、S15mは815オングストローム、S2
5mは825オングストロ−ムと極めて均一な膜厚が得
られていた。
【0064】[実験例2および比較例]基本的には実験
例1と同様の図1に示す連続式スパッタリング装置を用
い、またITOターゲットを用いてITO膜の堆積を行
った。
【0065】ただし、本実験例においては長尺基体11
0の搬送を行わず、基体固定状態で膜堆積を行った。さ
らに、比較例としてマグネットローラーを図1と異な
り、長尺基体110が内側チャンバー130,230の
一壁面をなしている箇所に設置した。すなわち、実際に
成膜の行われている箇所の裏側に磁場が存在するよう配
置した。成膜の実作業は実験例1に記した通りであり、
ここでは省略する。なお、成膜時間は実験例2および比
較例とも、2分間である。さらに実験例2においては長
尺基体110上の内側チャンバー130,230に向か
う面に1インチ角の#7059ガラス基板を取り付けて
おき、ガラス基板上にも同時に膜堆積を行った。膜堆積
の後、長尺基体110を取り出し、評価を行った。
【0066】ITO膜堆積を終えた基体を目視にて観察
したところ、実験例2においては全く色むらのない均一
の膜が堆積していたが、比較例においてはマグネットロ
ーラーに対向する箇所で微小な色むらがあり、膜堆積に
磁場が影響を与えていたことが判明した。
【0067】次いで、実験例2で作成した#7059ガ
ラス基板上の膜を透過式分光光度計で測定したところ、
優れた透過率を有していることが判明した。さらに、こ
のサンプルの抵抗を4端子式抵抗測定器で測定したとこ
ろ、103Ω/□と優れた抵抗率を示していることが判
明した。
【0068】[実験例3]図1に示す連続式スパッタリ
ング装置101を用いてAl−Si膜の堆積を行った。
ターゲット131,231としてはAl−Si(Si
1%,200mm角、純度99.999以上)を用い
た。また、実験例3においては長尺基体110は厚は
0.2mmのものを用いた。
【0069】成膜の実作業は実験例1の方法と同一なの
でここでは省略し、本実験例の成膜パラメーターのみを
表3に記す。
【0070】
【表3】 以上の条件で作成した膜を評価したところ、堆積したA
l−Si膜の膜厚は約2000オングストロームであ
り、均一性に優れたものであった。
【0071】[実験例4]図1の連続式スパッタリング
装置101を用いてAgおよびZnO膜を連続的に積層
して堆積した。図1においてタゲット131にAgター
ゲット(200m角、純度99.99%以上)を用い、
ターゲット231にZnOターゲット(200m角、純
度99.99%以上)を用いた。AgターゲットZnO
ターゲット両者に同時にスパッタリング用電力を印加す
ること以外の成膜実作業は既述の方法と同一なのでここ
では省略し、固有の成膜パラメータのみを表4に記す。
【0072】
【表4】 以上の条件で30mにわたって膜堆積を行った。
【0073】得られた膜を目視にて観察したところ、成
膜面全面にわたって色むら等のない均一な膜であった。
【0074】次いで、得られた膜の成膜を開始した地点
から5m,15m,25mの各位置で5cm角に切断し
て評価用サンプルを作成した。これらのサンプルを各々
S5m,S15m,S25mと呼ぶ。各々のサンプルS
5m,S15m,S25mについて研磨粉を使って断面
研磨を行い、顕微鏡観察を行った。その結果、いずれの
サンプルS5m,S15m,S25mもAgとZnOの
界面が形成されていた。各々の層厚を表5に示す。
【0075】
【表5】 表5に示すように得られた膜は均一性に優れていた。
【0076】さらに、これらと同様のサンプルを切り出
し、このサンプルの上にCVD法によりアモルファスシ
リコンの太陽電池を作成した。得られた特性は良好なも
のであった。
【0077】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、外側チャ
ンバー内部に長尺基体が一壁面を形成する内側チャンバ
ーを設け、内側チャンバー以外の位置にマグネットロー
ラーを設けることにより、重力による長尺基体の垂れ下
がりおよびこれによる放電の非均一化を防止できる。加
えて本発明は、目的とする膜堆積箇所以外に膜が付着す
ることによる稼動率の低下を防止できる。さらに本発明
は、理想的な界面形成が可能である。そして本発明は、
量産性に富み、かつ特性の優れた堆積膜を形成できる効
果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連続式スパッタリング装置の一実施例
を示す模式図である。
【図2】図1の連続式スパッタリング装置を構成する内
側チャンバーの一例を一部を破断して示す斜視図であ
る。
【図3】図1の連続式スパッタリング装置を構成する内
側チャンバーの他の例を示す斜視図である。
【図4】図1の連続式スパッタリング装置を構成するマ
グネットローラーの例を一部を破断して示す斜視図であ
る。
【図5】従来のバッチ式スパッタリング装置を示す模式
図である。
【図6】従来の連続式イオンビーム型蒸着機による成膜
装置を示す模式図である。
【符号の説明】
101 連続式スパッタリング装置 102 排気管 103 排気バルブ 104 真空ポンプ 110 長尺基体 111 繰り出しロール 112 巻き取りロール 113 マグネットローラー 121 繰り出し室 122 成膜室 123 巻き取り室 130,230,401 内側チャンバー 131,231 ターゲット 132,232 バッキングプレート 133,233 ガス供給パイプ 134,234 カップリング 135,235 バルブ 136,236 ガス流量コントローラー 137,237 電源 138,139,238 ヒーター 221,222,223 扉 303 底板 304 位置決め治具 305,405 パイプ 306 カップリング 309 絶縁碍子 310,406 ガス排気口 403 覆板 501 シャフト 502 ベアリング 503 回転パイプ 504 マグネット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福岡 貴裕 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−24062(JP,A) 特開 平6−159523(JP,A) 特公 昭56−43311(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/56 C23C 14/34

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロール状に巻かれた導電性の長尺基体上
    に連続的に機能性堆積膜を形成する連続式スパッタリン
    グ装置において、 前記長尺基体に磁性体が用いられるものであり、 前記長尺基体の堆積膜形成面を鉛直下方に向けるように
    前記長尺基体のロールが支持され、 減圧状態を作り得る外側チャンバーと、該外側チャンバ
    ー内部に配置され、スパッタリング生起用のガスを導入
    でき、スパッタリング用のターゲットを内在させる少な
    くとも1個の取り外し自在な内側チャンバーとを有する
    堆積膜形成室を備え、 回転自在なマグネットローラーに前記長尺基体の堆積膜
    形成面の裏面が接触され、両者間の磁力により前記長尺
    基体が前記堆積膜形成室内において支持され、 前記内側チャンバーは、前記長尺基体が前記内側チャン
    バーの一壁面を形成する位置を通過するように配置さ
    れ、 前記長尺基体が前記内側チャンバーの一壁面を形成する
    位置と異なる位置に、前記マグネットローラーと前記長
    尺基体との接触面があり、 前記長尺基体の裏面側を加熱するランプヒーターが、前
    記長尺基体が前記内側チャンバーの一壁面を形成する位
    置の上部、並びに該位置より前記長尺基体を繰り出す側
    に、各々1箇所以上設けられていることを特徴とする連
    続式スパッタリング装置。
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