JP2851909B2 - 中空鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

中空鋳片の連続鋳造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、中空鋳片の連続鋳造方法に関する。
この発明は、比較的薄肉の鋼管などの製造に利用され
る。
[従来の技術] 連続鋳造により最終製品管に近い中空鋳片を得ること
ができれば、高合金のような圧延加工不良材を始めとす
る各種材質の金属管製造に大幅なコストダウンを期待す
ることができる。
このような中空鋳片を連続鋳造する方法は、従来より
広く検討されてきており、また種々の方法が提案されて
いる。
これらの方法の一つに、上方に向って広がるように開
口する湯溜りを貫通して鋳型に至るまで柱状中子を挿入
して鋳型と柱状中子との間に環状の空間を形成し、湯溜
りに溶融金属を注入しながら鋳型から中空鋳片を引き抜
き、中空鋳片を連続鋳造する方法がある。湯溜りを上方
に向って広がるように開口する形状としているのは、注
入された溶融金属の湯面変動の影響を小さくするととも
に、タンディッシュなどから湯溜りへの湯の供給を容易
にするためである。鋳型は湯溜りの下方に配置されてい
る。柱状中子は内部より冷却される。また、鋳片と鋳型
および柱状中子との焼付き防止、あるいは鋳片の引き抜
き抵抗を小さくするために、鋳型および柱状中子は上下
に振動される。このような方法に属するものとして、た
とえば特開平1−150433号公報あるいは特開平1−1504
34号公報の中空鋳片連続鋳造用モールド装置で開示され
た方法がある。
[発明が解決しようとする課題] 上記従来の中空鋳片の連続鋳造方法には、次のような
問題があった。
すなわち、中空鋳片の引抜き速度は比較的遅いので、
湯溜りに供給された溶融金属はある程度の時間湯溜りに
留まることになる。また、湯溜りは上方に向って広がる
ように開口する形状をしているので、溶湯表面からの放
熱量が大きく、湯溜り内の溶湯の温度が降下しやすい。
このため、湯溜りで溶融金属が凝固してしまい(ホット
マスの生成)、これは下方に引き抜かれることなく留ま
るため、作業上支障を来す。また、上記従来の装置では
湯溜り下にブレークリングを用い、凝固開始点の一定化
ならびに凝固開始点を湯面下に位置づけることによりオ
シレーションマークの低減が図られている。しかし、ブ
レークリングを用いることにより、コールドシャットク
ラックならびにホットティアが生じ、鋳片表面性状の欠
陥は解決されない。また、ブレークリングを用いること
により、鋳片の肉厚の最低値に制限が生じて好ましくな
い。
中空鋳片の場合、内面の手入れが困難であるため、後
処理不要な内面性状良好な鋳片の鋳造が必要となる。
そこでこの発明は、内外表面共表面欠陥を防止するこ
とができる中空鋳片の連続鋳造方法を提供しようとする
ものである。
[課題を解決するための手段] この発明の中空鋳片の連続鋳造方法は、上方に向って
広がるように開口する湯溜りを貫通して鋳型内に至るま
で柱状中子を挿入して鋳型と柱状中子との間に環状の空
間を形成し、湯溜りから鋳型に溶融金属を供給しながら
鋳型から中空鋳片を引き抜く中空鋳片の連続鋳造方法に
おいて、前記湯溜り内の溶融金属を加熱して溶融金属の
液相線温度以上に保持した状態で、前記柱状中子をこれ
の径方向に高周波振動させながら中空鋳片を鋳造する。
柱状中子の外壁と鋳片間の摩擦の低減を中子のオシレ
ーションとパウダーの潤滑にて図る際、オシレーション
マークならびに、パウダーの不均一流入により縦割れ等
の欠陥が生じやすい。そのため、オシレーションマーク
の抑制ならびにパウダーの均一流入を図るため、柱状中
子の径方向に高周波振動を加える。振動方向は、周方向
であってもよい。
柱状中子の振動の振幅は1μm以上、周波数は1kHz以
上であることが好ましい。加振装置としては通常の装
置、たとえば電歪型または磁歪型の振動子および高周波
発生電源とからなる装置が用いられる。
なお、湯溜りを構成する耐火材は、湯溜りを誘導加熱
するために導電性を要し、また湯溜りの壁厚を薄くし、
加熱誘導コイルを湯溜り内の溶融金属にできるだけ近づ
けるために高強度であることが望ましい。このような耐
火材として、アルミナグラファイトなどを用いることが
できる。
湯溜りの出側から冷却鋳型に至る間の内径は、鋳片の
外径と同径にすることが好ましい。この点、従来の連続
鋳造装置では湯溜りと冷却鋳型とを結ぶ湯道に内径方向
に突出するブレークリングなどが配置されている。ブレ
ークリングを用いることにより、凝固開始点の一定化な
らびに湯面下に位置づけることによりオシレーションマ
ークの低減は図られるが、コールドシャットクラックな
らびにホットティアを生じ、鋳片表面性状の欠陥は解決
されない。これに対し、この発明では湯溜りおよび溶融
金属をこれの液相線温度以上に加熱することにより、湯
溜りでの凝固を防止するとともに、凝固開始点を湯面下
にかつ非冷却鋳型内に制御することにより鋳片表面性状
の改善を図っている。
鋳片の凝固収縮に応じて、柱状中子は下方に向って先
細りとすることが好ましい。先細りのテーパーの大きさ
は0.5〜1.0%程度である。これにより、柱状中子からの
鋳片の分離がよくなり、凝固殻の割れ、スティッキング
あるいはブリードの発生が防止される。柱状中子は良熱
伝導性の材料、たとえば銅、銅合金などが用いられる。
また、銅の表面にニッケルやクロムをメッキしてもよ
い。
[作用] 湯溜りおよび溶融金属は加熱により溶融金属の液相線
温度以上に保持されるので、湯面よりも下方から凝固が
始まる。溶融金属を加熱して所要温度に積極的に保持す
るので、凝固開始点の制御は容易である。上方に向って
広がるように開口している、容積の大きな湯溜りで溶融
金属を加熱するので、湯溜り内の溶融金属の熱容量は大
きい。したがって、湯溜り内の溶融金属の温度変化は少
なく、溶融金属を所要温度に保持しやすい。
また、柱状中子がこれの径方向に高周波振動している
状態で鋳造が行われるのでパウダー流入が均一となり、
オシレーションマークの無い縦割れ等の表面欠陥の無い
鋳片の鋳造が可能となる。
[実施例] 連続鋳造装置は、主として湯溜り11、非冷却鋳型15、
冷却鋳型18、柱状中子24、および誘導加熱装置33から構
成されている。
湯溜り11は上方に向って広がるように開口しており、
アルミナグラファイトで作られている。湯溜り11の容量
は、8000cm3である。
非冷却鋳型15は円筒状をしており、湯溜り11と一体に
形成されている。非冷却鋳型15の内径は、中空鋳片Pの
外径つまり冷却鋳型18の内径に等しい。
冷却鋳型18は、溶鋼Mに接するグラファイト製の内筒
19と銅製の外筒20よりなっている。内筒19の上端が非冷
却鋳型15の下端に接続されている。また、非冷却鋳型15
と内筒との接続位置は、外筒20の上端より少くとも10mm
以上下側に位置させている。これは、凝固開始位置を必
ず接続位置よりも上方に位置づけ、接続部への溶鋼Mの
侵入を防止するためである。
柱状中子24の本体25は銅製の底付円筒よりなってお
り、本体25は長さが1mであり、溶鋼メニスカス位置にお
ける外径が100mmである。また、下端に向って先細りと
なるように0.4%の一定のテーパーが付けられている。
本体25は湯溜り11および非冷却鋳型15を貫通して冷却鋳
型18内に挿入されている。本体25には、2重管を形成す
るように内部には導水管27が挿入されている。導水管27
の頂部には冷却水供給管29が、また本体25の頂部のカバ
30ーには冷却水排出管31がそれぞれ接続されている。冷
却水は導水管27を通り下降して本体25下部に至り、つい
で本体25と導水管27の間を通って上昇する。冷却水は上
昇する際に本体25を冷却する。したがって、本体25は下
部になるほど強く冷却される。また、本体25は加振装置
36により高周波振動が与えられる。
誘導加熱装置33は、加熱コイル34が湯溜り11の外形に
沿うように配置されている。加熱コイル34には、定格出
力200kw、1.2kHzの高周波電源(図示しない)が接続さ
れている。
加振装置36は、本体25の頂部に周方向に等間隔に取り
付けられた四本の振動子37とこれに高周波電流を供給す
る高周波発生電源38からなる。振幅の谷底値をできるだ
け大きくするため、異なる周波数にて高周波振動が加え
られる。
タンディッシュ(図示しない)の底部に接続された浸
漬ノズル41が、湯溜り11に挿入されている。
上記湯溜り11、非冷却鋳型15、および冷却鋳型18は、
加振装置(図示しない)により上下振動が与えられる。
ここで、以上のように構成された装置により、管状鋼
鋳片を連続鋳造する方法について説明する。鋳造した中
空鋳片Pは、内径100mm、外径160mm(肉厚30mm)および
180mm(肉厚40mm)の2サイズであって、材質は高炭素
鋼(炭素濃度0.5%)であった。
まず、鋳造開始前に湯溜り11を加熱コイル34により溶
融Mの液相線温度以上に加熱した。この状態を保持しな
がら、湯溜り11、非冷却鋳型15および冷却鋳型18内に柱
状中子24を上方より挿入し、セットした。
ついで、タンディッシュ(図示しない)から浸漬ノズ
ル41を介し、溶鋼Mを湯溜り11に供給した。注湯開始か
ら20秒経過したのちに湯溜り11、非冷却鋳型15、および
冷却鋳型18を上下に振動振動させるとともに、柱状中子
24をこれの径方向に振動させた。湯溜り11などの上下振
動は、振幅が±4mmであり、振動数は100cpmであった。
また、柱状中子24の振動条件は、相対する2本の振動子
は18.5kHzにて加振され、他2本は18〜18.5kHz,18.5kHz
〜19kHzの間で振幅が最大となるように調整された。振
幅は2μmであった。30秒後に鋳片Pの引抜きを開始し
た。鋳片Pの引抜きはピンチロール(図示しない)によ
り、引抜き速度は0.4m/minであった。鋳造中、湯溜り11
および湯溜り内の溶鋼Mを加熱コイル34により、溶鋼M
の液相線温度以上に加熱保持した。凝固殻a,bの形成開
始位置は鋳片内径側では湯面下0mmであり、また外径側
では非冷却鋳型15内に制御することができ、非冷却鋳型
15と冷却鋳型18との接合部への溶鋼Mの侵入によるトラ
ブルなく鋳造することができた。
上記のようにして得られた鋳片は、2サイズとも外表
面性状についてはいずれもオシレーションマークの発生
がみられず、良好であった。また、内表面性状について
も100μm以下の軽微なオシレーションマークが見られ
るのみで良好であった。また、鋳片肉厚は、周方向およ
び鋳造方向ともに±1mmの範囲内で一様であった。
[発明の効果] この発明によれば、湯溜りおよび湯溜り内の溶融金属
を加熱して溶融金属の液相温度以上に積極的に保持する
ので、溶湯表面よりも下方から凝固が始まる。したがっ
て、鋳型の上下振動により発生する鋳片外周面のオシレ
ーションマークの形成を抑えることができ、表面性状良
好な中空鋳片の連続鋳造が可能となった。これにより、
鋳片表面の後処理が不要となった。また、柱状中子をこ
れの径方向に高周波振動を与えるので、パウダー流入量
が均一となり、オシレーションマークの無くかつ縦割れ
等の表面欠陥の無い鋳片の鋳造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の方法を実施する装置の一例を示すも
のであって、管状鋼鋳片の連続鋳造装置の縦断面図であ
る。 11……湯溜り、15……非冷却鋳型、18……冷却鋳型、24
……柱状中子、27……導水管、33……誘導加熱装置、34
……誘導加熱コイル、36……加振装置、41……浸漬ノズ
ル、M……溶鋼、P……中空鋳片、a,b……凝固殻。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−26731(JP,A) 特開 昭52−111825(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/00 B22D 11/04 111

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】上方に向って広がるように開口する湯溜り
    を貫通して鋳型内に至るまで柱状中子を挿入して鋳型と
    柱状中子との間に環状の空間を形成し、湯溜りから鋳型
    に溶融金属を供給しながら鋳型から中空鋳片を引き抜く
    中空鋳片の連続鋳造方法において、前記湯溜りおよび湯
    溜り内の溶融金属を加熱して溶融金属の液相線温度以上
    に保持した状態で、前記柱状中子をこれの径方向に高周
    波振動させながら中空鋳片を鋳造することを特徴とする
    中空鋳片の連続鋳造方法。
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