JP2843213B2 - 焼結性粉末射出成形用バインダおよび組成物 - Google Patents

焼結性粉末射出成形用バインダおよび組成物

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JP2843213B2
JP2843213B2 JP4214933A JP21493392A JP2843213B2 JP 2843213 B2 JP2843213 B2 JP 2843213B2 JP 4214933 A JP4214933 A JP 4214933A JP 21493392 A JP21493392 A JP 21493392A JP 2843213 B2 JP2843213 B2 JP 2843213B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、成形性と脱脂時の保形
性に優れる焼結性粉末射出成形用コンパウンドおよびそ
れに使われるバインダに関する。
【0002】
【従来の技術】金属粉末、セラミックス粉末またはサー
メット粉末(焼結性粉末)の粉末射出成形法は、微粉末
とバインダの混練物(組成物、コンパウンド)を、金型
内に射出成形し、得られた成形体を脱バインダ(脱脂)
し、焼結して製品にする技術で、小型複雑形状部品の大
量生産に適している。
【0003】焼結性粉末射出成形法に用いられるバイン
ダは、熱可塑性、熱硬化性に大別できるが、スプル、ラ
ンナ等の再生不能な熱硬化性バインダはあまり使用され
ていない。熱可塑性バインダとしては、熱可塑性樹脂、
ワックス、可塑剤、滑剤などが使われている。
【0004】ところで、焼結性粉末の表面は、事実上、
酸化物表面であり、通常は水を化学吸着および物理吸着
して、表面に高濃度の水酸基となって分布しているた
め、金属等の焼結性粉末は親水性であり、疎水性バイン
ダとは濡れ性が極めて悪い(Bull. Chem. Soc. Jpn.,
41, 1533(1968).)。例えば、バインダとして、ポリエチ
ン(PE)やポリプロピレン(PP)を使用する場合、
これらの樹脂は焼結性粉末と濡れが悪いために、粉末は
バインダ中に分散せず、粉末同志が凝集してしまい凝集
粉となる。このため、射出成形用コンパウンドは、流動
性が極めて悪く、射出成形が困難であったり、得られる
成形品の強度が低いなどの問題があった。
【0005】焼結性粉末とバインダの濡れを良くする方
法としては、焼結性粉末表面を処理して疎水性にする方
法と、水酸基でおおわれた焼結性粉末表面と水素結合す
るような官能基をバインダ成分中に導入する方法が公知
である。前者の具体例としては、シラン系カップリング
剤、チタネート系カップリング剤(特公昭59−419
49号公報)、アルミニウムキレート化合物(特開昭6
1−242947号公報)による焼結性粉末の表面処理
が知られており、後者の具体例としては、界面活性剤を
用いる例(特開昭59−182267号公報、特開昭5
9−35058号公報)や、カルボキシル基、エステ
ル、アミノ基、水酸基などの粉末表面と相互作用するよ
うな官能基などを導入したバインダ成分の使用、例えば
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(特開昭52
−117909号公報、特開昭58−135173号公
報)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EE
A)(特開昭59−121150号公報)アクリル酸系
共重合体(特開平2−283660号公報、特開平1−
261265号公報)、エチレン−ビニルアルコール共
重合体(特開昭63−25266号公報)、ステアリン
酸(特公昭36−7883号公報)、ベヘニン酸(特開
平2−267156号公報)などが知られている。この
ような方法を用いることにより、焼結性粉末とバインダ
の間の濡れ性は改善され、粉末はバインダ中に良好に分
散し、容易に射出成形可能となったうえに、良好な成形
体も得られるようになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、焼結性粉末を
表面処理する方法は、カップリング剤が高価であり、カ
ップリング処理の工程が一つ増える、カップリング剤の
チタンやシリコン元素が焼結時に不純物として取り込ま
れるなどの欠点がある。また、界面活性剤の添加や、水
素結合性官能基の導入(例えばEVA、EEA、EMM
A)は、バインダの軟化点の低下を招き、射出成形用コ
ンパウンドとして加熱脱脂を行う時に変形が起こりやす
く、膨れなどの欠陥も生じやすい。さらに、いずれの方
法を用いた場合でも、脱脂時間を短縮すると脱脂体が変
形する問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、焼結性粉
末との濡れ性が良好で、成形性も良く、脱脂時に変形を
起こしにくいバインダを鋭意探索した結果、オキサゾリ
ニル基を含有する樹脂または化合物を必須成分とするバ
インダを用いることにより目的を達成できることがわか
った。すなわち、本発明は、オキサゾリニル基を分子内
に1個以上有する樹脂または有機化合物を含有する焼結
性粉末射出成形用バインダを提供する。また、前記オキ
サゾリニル基を分子内に1個以上有する樹脂が、分子量
2,000を越えたものであり、さらに前記樹脂以外の樹脂
および分子量2,000 以下の有機化合物を含む焼結性粉末
射出成形用バインダを提供する。さらに、(a)分子量
2,000 を越え、かつオキサゾリニル基を分子内に1個以
上有する樹脂を3〜80重量%、および、(c)分子量
2,000 以下の有機化合物を20〜80重量%含む焼結性
粉末射出成形用バインダであるのが好ましく、また、
(a)分子量2,000 を越え、かつオキサゾリニル基を分
子内に1個以上有する樹脂を3〜80重量%、(b)上
記(a)以外の樹脂を70重量%以下、および、(c)
分子量2,000 以下の有機化合物を20〜80重量%含む
粉末射出成形用バインダであるのがよい。また、前記粉
末射出成形用バインダと金属粉末、セラミックス粉末ま
たはサーメット粉末とを含有する焼結性粉末射出成形用
組成物を提供する。さらに、前記金属粉末、セラミック
ス粉末またはサーメット粉末が、平均粒径0.1〜10
00μmである焼結性粉末射出成形用組成物であるのが
好ましい。
【0008】本発明のオキサゾリニル基を分子内に1個
以上有する樹脂または化合物とは、樹脂の場合、分子量
が2,000 超である場合を指し、化合物の場合、分子量が
2,000 以下である。
【0009】本発明の射出成形用バインダの成分では、
オキサゾリニル基を分子内に1個以上有する樹脂または
化合物が必須成分とする。オキサゾリニル基を分子内に
1個以上有する樹脂は、熱可塑性樹脂であるのが好まし
く、熱硬化性樹脂であってもよい。このような樹脂また
は化合物は、例えばオキサゾリニル基含有不飽和単量体
と、これと共重合可能なモノマーを共重合させる方法、
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂にラジカル発生剤を存
在させ、オキサゾリニル基含有不飽和単量体を、溶剤の
存在あるいは不存在下でグラフト反応させる方法、ある
いはカルボキシル基、フェノール性水酸基のような、オ
キサゾリニル基と簡単に反応して結合を作るような官能
基を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とオキサゾ
リニル基を分子内に2つ以上有する化合物の一つのオキ
サゾリニル基を反応させる方法で得ることができる。
【0010】オキサゾリニル基含有不飽和単量体は、一
般式
【化1】
【0011】
【化2】 で表わすことができる。このうち、好ましいものは、
【化3】 で表わされるビニルオキサゾリンである。
【0012】オキサゾリニル基含有不飽和単量体と共重
合可能なモノマーの例としては、エチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、イソブテン、3−メチルペンテン−
1、4−メチルペンテン−1,ブタジエン、シクロヘキ
セン、シクロヘキサジエン、スチレン、α−メチルスチ
レン、パラメチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレ
ン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
ル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エ
チル、(メタ)アクリル酸ブチルを挙げることができ
る。
【0013】オキサゾリニル基含有不飽和単量体と、こ
れと共重合可能なモノマーとの共重合体の製造方法は、
公知の塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合、
乳化重合が用いられる。
【0014】オキサゾリニル基含有不飽和単量体とグラ
フト反応する樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、ポリエ
チレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−
プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、エチレン−ブ
テン−1共重合体、エチレン−メチルペンテン共重合
体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体
(SEBS)、EVA、EEA、EMMA、エチレン−
メチルアクリレート共重合体(EMA)、ポリスチレン
(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、
スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチ
レン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などを挙げ
ることができる。
【0015】オキサゾリニル基含有不飽和単量体をグラ
フト反応させる好ましい製造例は、上記熱可塑性樹脂と
パーオキシドおよびオキサゾリニル基含有不飽和単量体
との混合物を押出機、ニーダー、バンバリーミキサーな
どの溶融混練機中で溶融状態にして通常の方法によりグ
ラフト反応させる方法で、簡単に短時間で求めるオキサ
ゾリニル基含有共重合体を得ることができる。
【0016】オキサゾリニル基と反応する官能基を含有
する熱可塑性樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリ
ル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合
体、スチレン−パラビニルフェノール共重合体、末端カ
ルボキシル基変性ポリスチレンなどを挙げることがで
き、さらに、オキサゾリニル基を分子内に2個以上有す
る化合物としては、
【化4】 で表される1,3−フェニレンビスオキサゾリンを挙げ
ることができる。
【0017】オキサゾリニル基を分子内に1個以上有す
る樹脂の好ましい例は、オキサゾリン変性したPE、P
P、エチレン−プロピレン共重合体、EVA、EEA、
EMMA、EMA、スチレン−エチレン−ブタジエン−
スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン
共重合体、PS、SAN、ポリイソブチレン、エチレン
−ブテン共重合体、ポリ−α−メチルスチレン、スチレ
ン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−
(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−(メ
タ)アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体、ポリ
(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エ
チル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)ア
クリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メ
チル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)ア
クリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキ
シルなどである。
【0018】オキサゾリニル基を分子内に1個以上有す
る熱硬化性樹脂の好ましい例は、尿素樹脂、メラミン樹
脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アニ
リン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキルベ
ンゼン樹脂、グアナミン樹脂、シリコン樹脂等のオキサ
ゾリニル基変性物が挙げられる。
【0019】オキサゾリニル基は、ポリマー分子中に1
個以上なければならない。ポリマー分子中のオキサゾリ
ニル基は、金属粉末、セラミックス粉末またはサーメッ
ト粉末表面と強固に固着し、粉末とバインダの濡れ性を
改善するうえ、加熱脱脂時にも焼結性粉末−バインダ界
面を強く密着することにより変形を防止する。
【0020】オキサゾリニル基は、ポリマー分子鎖中に
1個以上必要であるが、オキサゾリニル基があまりに多
過ぎると焼結性粉末とバインダとの混練中にゲル化反応
を起こしやすく、コンパウンドの粘度上昇、成形性悪化
の欠点が生じる。樹脂中のオキサゾリニル基の好ましい
含有量は、樹脂の分子量にもより、一概には言えない
が、例えばオキサゾリニル基導入にビリニルオキサゾリ
ンを用いた場合では、樹脂中のビニルオキサゾリンの含
有量で0.05〜15重量%である。
【0021】オキサゾリニル基を分子内に1個以上有す
る樹脂の好ましい分子量は約2,000〜500,000 である。
分子量2,000 以下では成形体の強度が不足するため成形
時に割れが発生しやすく、また脱脂時に変形を起こす。
500,000 を超えると、溶融粘度が高くなるため成形性が
悪化する。さらに好ましい分子量は、50,000〜300,000
である。
【0022】本発明における(b)オキサゾリニル基を
分子内に1個以上有する樹脂以外の樹脂は、熱可塑性樹
脂であるのが好ましく、熱硬化性樹脂であってもよい。
このような樹脂は、本発明の粉末射出成形用バインダの
脱脂を容易にするため加えた方が良く、熱または溶剤で
脱脂できるものならばいかなるものでもよい。このよう
な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の好ましいものとし
ては、溶剤脱脂時に、オキサゾリニル基を分子内に1個
以上有する樹脂を溶解しない溶剤に可溶であるもの、あ
るいは熱脱脂時に急激な分解によるふくれやクラック発
生を防ぐため、オキサゾリニル基を分子内に1個以上有
する樹脂と熱分解温度が異なるものが好ましい。具体的
な熱可塑性樹脂としては、PE、PP、ポリイソブチレ
ン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテ
ン、エチレン−ブテン共重合体、スチレン−エチレン−
ブチレン−スチレン共重合体、EVA、EEA、EM
A、EMMA、塩素化PEなどのポリオレフィン類、ポ
リスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ア
クリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル
酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリ(メ
タ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチ
ル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アク
リル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチ
ル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸
ブチル−メタクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体な
どのアクリル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニ
ルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニ
ルプロピオナールなどのポリビニルアセタール類、ポリ
ビニルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリ
ビニルエーテル類、ポリエチレンオキシド、ポリオキシ
メチレン、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレ
ングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド
共重合体などのポリエーテル類、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンセ
バテートなどのポリエステル類およびポリアミド類、ポ
リカーボネート類、ポリウレタン類などがある。これら
の樹脂の好ましい例は、オキサゾリニル基を分子内に1
個以上有する樹脂の種類に依存するので一概には言えな
いが、具体例で示すと、オキサゾニル基含有樹脂として
エチレン系樹脂を用いる場合は、スチレン系樹脂あるい
はアクリル系樹脂を焼結性粉末射出成形用バインダ成分
として組み合わせると良い。この組み合わせでは、トル
エン、クロロホルム、塩化メチレンなどの溶剤で成形体
から簡単にスチレン系、アクリル系樹脂を脱脂できる
し、加熱脱脂でも、分解温度が低いスチレン系、アクリ
ル系樹脂がまず分解し、次にエチレン系樹脂が分解する
ため、急激な分解ガス発生を抑制でき、脱脂時のふく
れ、クラック発生を防ぐことができる。
【0023】これらの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂
の分子量は、2,000 〜500,000 の範囲が好ましく、さら
に好ましくは50,000〜300,000 である。分子量が2,000
以下では成形体の強度が不足するため、成形時に割れが
発生しやすく、500,000 を越えると溶融粘度が高くなる
ため、成形性が悪化する。
【0024】本発明における(c)分子量2,000 以下の
有機化合物は、ワックス、可塑剤、あるいは滑剤などと
呼ばれるものであり、コンパウンドの粘度を低下させ、
成形性を改善させる働きと、溶剤あるいは熱で容易に脱
脂される働きを併わせもつ。
【0025】本発明に用いる(c)分子量2,000 以下の
有機化合物の例としては、ワックス、高級脂肪酸、高級
アルコール、高級脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、フタ
ル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステ
ルなどを挙げることができる。さらに具体的には、ワッ
クスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリ
ンワックス、酸化ワックス、ペトロラタム、酸化ペトロ
ラタム、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワック
ス、モンタンワックス誘導体のような合成ワックスや、
鯨ろう、シナろう、密ろう、羊毛ろう、キャンデリラワ
ックス、カルナウバワックス、木ろう、ナリキュリーワ
ックス、サトウキビろう、モンタンワックス、オゾケラ
イトワックス、セレシン、リグナイトワックスなどの天
然ワックスが挙げられる。高級脂肪酸としては、ステア
リン酸、ラウリン酸、バルモチン酸、イソステアリン
酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール
酸、パルミチン酸、リノレン酸、アラキン酸、アラキド
ン酸を挙げることができる。
【0026】高級脂肪酸アミドとしては、オレイン酸ア
ミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、リシノ
ール酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、バ
ルミチン酸アミド、エルシルアミド、硬化牛脂酸アミ
ド、ヤシ脂肪酸アミド、メチレンビスステアリルアミ
ド、エチレンビスステアリルアミド、メチレンビスアミ
ド、エチレンビスアミドを挙げることができる。
【0027】脂肪酸エステルとしては、C12〜C22の脂
肪酸とC1 〜C22の1価アルコールとのエステル、ある
いはグリコール類とのモノ、ジエステル、あるいはグリ
セリンとのモノ、ジ、トリエステルをあげることがで
き、具体的には、ブチルステアレート、ブチルラウレー
ト、オクチルパルミテート、イソプロピルパルミテー
ト、セチルパルミテート、ミリシルパルミテート、ミリ
シルセロチネート、ステアリン酸モノグリセライド、ジ
エチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリ
コールジ−2−エチルブチラート、ソルビタントリオレ
ート、落花生油、大豆油、ヤシ油、パーム油、アマニ
油、魚油、動物油、水添油などを挙げることができる。
【0028】フタル酸エステルとしては、フタル酸ジメ
チル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル(DB
P)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチ
ル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタ
ル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシ
ル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フ
タル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル
酸ブチルベンジル、フタル酸オクチルベンジル、フタル
酸ブチルオクチルを、二塩基酸エステルとしては、アジ
ビン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピ
ン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジデシル、ア
ジピン酸ジイソデシル、アジピン酸オクチルデシル、ア
ジピン酸ジブチルグリコール、アゼライン酸ジ−2−エ
チルブチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セ
バシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシ
ル、セバシン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、マレ
イン酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジブチルを挙
げることができる。
【0029】高級アルコールとしては、セチルアルコー
ル、セリルアルコール、メリシルアルコール、ステアリ
ルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコ
ールなどを挙げることができる。さらに、リン酸トリエ
チル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸
トリフェニルなどのリン酸エステルや、ホウ酸トリエチ
ル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリオクチルなどのホウ
酸エステル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マ
グネシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの高級脂肪
酸塩も使用できる。
【0030】(c)の化合物の分子量は、2,000 以下で
あり、好ましくは300 〜1,000 である。分子量が300
未満であると成形体に適度な強度を付与することができ
にくくなるからであり、分子量が1,000 を越えると成形
性と脱脂性が悪くなり、2,000 を越えると精密成形品の
成形は不可能であり、また脱脂時間も極めて長くなり、
本発明の目的である複雑形状の精密金属部品を高精度で
効率良く生産できなくなるからである。
【0031】溶剤脱脂を用いる場合は、分子量2,000 以
下の有機化合物は、オキサゾリニル基を分子内に1個以
上有する樹脂の樹脂成分を溶解しない溶剤に可溶である
ことが望ましい。また、加熱脱脂を用いる場合は、脱脂
工程中の変形、膨れなどの欠陥を避けるために、分子量
2,000 以下の有機化合物の成分は沸点の異なるものを2
種以上配合することが好ましい。これは、脱脂工程中の
欠陥が樹脂分解温度より低い温度において、低分子成分
の除去される時に発生しやすい傾向にあるので、それら
の欠陥を避けるために分子量2,000以下の有機化合
物を2種以上配合することにより、除去する温度域を広
範囲にしたほうが良いからである。
【0032】本発明におけるオキサゾリニル基を分子内
に1個以上有する樹脂は、バインダ中に3〜80重量%
含有される。3重量%未満であると、焼結性粉末表面を
当該樹脂が十分に覆うことができず、粉末とバインダの
濡れ性が改善されない。この結果、成形体強度が低く割
れやすい、脱脂時に変形したり、ふくれやクラックが発
生するなどの欠点を生じる。80重量%を越えると、コ
ンパウンド粘度が高くなり、成形性が悪化するうえ、脱
脂時にクラック、ふくれの欠陥を生じやすくなる。
【0033】本発明における(b)オキサゾリニン基を
分子内に1個以上有する樹脂以外の樹脂は、必須成分で
はないが、前述の如く、脱脂時間短縮のために、バイン
ダ中に含有された方が良く、70重量%以下含有され
る。70重量%を越えると、コンパウンド粘度が高くな
り、成形性が悪化するうえ、脱脂時にクラック、ふくれ
の欠陥が生じやすくなる。
【0034】(a)と(b)のそれぞれの樹脂成分の、
バインダ中のより好ましい配合比は、ほぼ同量とするの
が好ましく、このうち(a)オキサゾリニル基含有樹脂
は粉末表面を十分に覆うことができる量として(a)オ
キサゾリニル基を分子内に1個以上有する樹脂10〜7
0重量%であり、(b)前記(a)以外の樹脂は、これ
に対して10〜60重量%である。前者(a)と後者
(b)の樹脂成分の和は20〜70重量%が好ましく、
残部は(c)の分子量2,000 以下の有機化合物である。
【0035】本発明のバインダに使用できる焼結性粉末
は、金属粉末、セラミックス粉末またはサーメット粉末
を含むものであればいかなるものでもよい。具体的に
は、金属粉末としては、鉄、ニッケル、アルミニウム、
銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、クロム、モリブデ
ン、タングステン、ベリリウム、ゲルマニウム、コバル
ト、スカンジウム、イットリウム、ランタニド、アクチ
ニド、ハフニウム、トリウム、バナジウム、タンタル、
マンガン、テクネチウム、レニウム、シリコン、ルテニ
ウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウ
ム、白金、金、銀、カドミウム、タリウム、スズ、鉛、
ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウムおよ
びこれらの合金あるいは混合粉、例えば鉄−ニッケル、
ステンレス、鉄−シリコン、鉄−ボロン、鉄−コバル
ト、鉄−コバルト−バナジウムを挙げることができ、セ
ラミックスとしては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、
酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化ベリリウム、
酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モ
リブデン、酸化マンガン、酸化タングステン、酸化バナ
ジウム、酸化テクネチウム、酸化レニウム、酸化コバル
ト、酸化ニッケル、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸
化カドミウム、酸化タリウム、酸化ゲルマニウム、酸化
スズ、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化テ
ルル、酸化ベリリウム、酸化インジウム、酸化バリウ
ム、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウ
ム、酸化ストロンチウム、酸化ランタン、酸化セレン、
酸化スカンジウム、酸化アクチニウム、酸化トリウム、
酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化パラジウム、酸化オ
スミウム、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸鉛、チタン酸バ
リウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、チ
タン酸ジルコン酸鉛、チタン酸マグネシウム、チタン酸
マンガン、チタン酸鉄、チタン酸コバルト、チタン酸ニ
ッケル、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、
炭化タングステン、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭
化ハフニウム、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化ク
ロム、炭化バナジウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウ
ム、窒化ホウ素、窒化チタン、ホウ化チタン、ホウ化ジ
ルコニウム、ホウ化ランタン、2ケイ化モリブデン、硫
化カドミウム、硫化亜鉛およびこれらの2種以上の混合
物を挙げることができ、サーメットとしては、炭化ダン
グステン粉/コバルト粉、酸化アルミニウム粉/アルミ
ニウム粉、鉄粉/シリコン粉、鉄粉/ボロン粉、窒化ケ
イ素粉末/酸化イットリウム粉末/酸化アルミニウム粉
末などのような金属粉末/セラミック粉末あるいは金属
粉末/非金属粉末などの前記セラミックスと金属との合
金粉、あるいは混合粉またはサーメット粉末を挙げるこ
とができる。
【0036】焼結性粉末の製造法はいかなる方法でもよ
く、例えばカルボニル粉、水アトマイズ粉、ガスアトマ
イズ粉、粉砕粉、回転ディスク粉、還元粉、電気分解
粉、回転消耗電極粉などを使うことができる。
【0037】焼結性粉末の平均粒径は0.1 〜1,000 μm
の範囲である。粉末粒径は小さいほど射出成形時の流動
性が良く、焼結性も良いので有利であるが、微粉にする
ために膨大なエネルギーを必要とするため、実用上不利
となる。
【0038】また、1,000 μmを越えると、コンパウン
ドの流動性が極端に悪化し、射出成形が実質的に不可能
となる。実用上好ましい平均粒径の範囲は1〜50μm
である。
【0039】さらに、本発明の焼結性粉末射出成形用組
成物には、酸化防止剤、流動剤、界面活性剤などの添加
剤を適宜加えてもよい。
【0040】本発明の焼結性粉末射出成形用コンパウン
ドは金属粉末、セラミックス粉末またはサーメット粉末
100重量部に対して本発明の焼結性粉末射出成形用バ
インダ3〜20重量部と混練して製造するのが好まし
い。3重量部未満では粉末射出成形用バインダが焼結性
粉末間の隙間を埋め切れないために、コンパウンドの流
動性が悪く射出成形が困難となる。また、20重量部を
越えると流動性が良化し、容易に射出成形ができるもの
の、脱脂時の形状保持ができなくなるので好ましくな
い。
【0041】本発明の粉末射出成形用バインダと金属粉
末、セラミック粉末またはサーメット粉末の混練方法に
制限はなく、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサ
ー、ニーダー、ロールミル、単軸スクリュー押出機、2
軸スクリュー押出機など、バインダと焼結性粉末を混練
できるものならば何でも使用できる。
【0042】混練したコンパウンドは粉砕あるいは造粒
して成形材料とする。射出成形機は一般的な熱可塑性プ
ラスチック用射出成形機を用いることができる。射出成
形は射出温度100℃〜250℃の範囲で行うが、射出
温度が高すぎるとバインダ成分の変質が顕著になり、再
生材の成形性、脱脂性の変化をきたすので、好ましくは
射出温度は100℃〜180℃の範囲がよい。
【0043】脱脂は加熱脱脂法、溶剤抽出法のいずれも
利用できる。加熱脱脂法の場合は窒素、アルゴン、水素
などの気流中で行うか、あるいは減圧下にバインダを除
去するのが好ましい。昇温速度は成形体の厚さにもよる
が10℃/h〜100℃/hの範囲で昇温する。脱脂の
最高温度は450℃〜600℃ぐらいがよい。脱脂の最
高温度が450℃未満であると樹脂成分が効率的に分解
除去されないので好ましくなく、また600℃以上に昇
温しても樹脂成分の分解除去速度はさほど変わらず、逆
に脱脂時間の延長にあるだけである。
【0044】溶剤抽出法の場合は成形体からオキサゾリ
ニル基を分子内に1個以上有する樹脂以外、あるいは樹
脂成分以外のバインダ成分を溶剤で抽出除去し、しかる
後、加熱脱脂を行い残りのバインダ成分を除去する。
【0045】焼結工程は脱脂工程終了後、引き続き同一
炉内で行ってもよいし、脱脂体を脱脂炉から取り出し
後、異なる炉で行ってもよい。焼結は800 ℃〜2000℃の
温度で10分〜6時間保持して行うが、これら焼結条
件、焼結雰囲気は用いる焼結性粉末の材質、粉末特性に
応じて適宜選択して決める。
【0046】次に本発明の特徴を述べる。実施例で後述
するように、従来からバインダとして用いられてきたP
E,PP,PS,EVA,EEA,EMMA,アクリル
系樹脂は、コンパウンドの熱トルエン抽出により焼結性
粉末表面からほとんど洗い流されてしまうが、本発明の
オキサゾリニル基を分子内に1個以上有する樹脂をバイ
ンダ成分として用いたコンパウンドは、熱トルエンで洗
い流すことができない有機物が粉末表面に炭素量に換算
して約0.1 〜0.23%残存する。
【0047】水酸基で覆われた金属粉末と、バインダ中
の樹脂成分との固着は、官能基をもたない、PE,P
P,PSの場合、ファンデルワールス力と考えられ、エ
ステル基を有するEVA,EEA,EMMA,アクリル
系樹脂は水素結合と考えられるが、これらの結合は熱ト
ルエンで洗い流されてしまう弱い固着である。しかし、
本発明のバインダ組成では、熱トルエンで切ることので
きない、強い結合で各粉末表面に有機物が固着してい
る。恐らく、オキサゾリニル基が、粉末表面の水酸基と
反応し、共有結合のような強い結合を形成し、その結
果、粉末表面にポリマーがグラフトした形となっている
と思われる。そして、本発明の特徴は、粉末表面の強固
にグラフトしたポリマーに起因していると考えられる。
以下、本発明の特徴を述べる。
【0048】本発明のバインダを使用すると、混練時
に金属粉末の分散が非常に良好で、均一なコンパウンド
が得られるうえ、凝集粉の残存による流動性の悪化もな
く、成形性に優れる。また、流動性に優れるため少ない
バインダ量で済む。この結果、脱脂が容易になり、脱脂
時間が短縮でき、脱脂時の変形、ふくれ、クラックなど
の欠陥発生を防止できる。
【0049】粉末とバインダの界面が強固に結合して
いるため、成形体強度が高く、成形時や成形品運搬時の
割れ、変形が少ない。
【0050】成形体の加熱脱脂時に、変形が起こりに
くく、ふくれ、クラックなどの欠陥が起こりにくい。
【0051】
【実施例】以下、実施例にて本発明を具体的に説明する
が、まず実施例中で用いる原材料および評価方法につい
て説明する。
【0052】1.原料 1)金属粉末:平均粒径9.5μm、タップ密度3.8
g/ccの水アトマイズステンレス鉄粉 2)セラミックス粉末:平均粒径0.4μmの酸化イッ
トリウム粉 平均粒径0.3μmの酸化アルミニウム粉 3)PE:LDPE(スミカセンG807、住友化学工
業(株)製) 4)EVA:酢酸ビニル含有率20重量%(NUC31
50、日本ユニカー(株)製) 5)EEA:エチルアクリレート含有率28重量%(M
B910、日本ユニカー(株)製) 6)EMMA:メチルメタクリレート含有率20重量%
(アクリフトWH501、住友化学工業(株)製) 7)アクリル酸変性PE:アクリル酸含有率6重量%
(PB−1008,BPPerformance Polymers Inc. 製) 8)PS:重量平均分子量6万(ハイマーSB−12
5、三洋化成工業(株)製) 9)ポリブチルメタクリレート(PBMA):数平均分
子量約20万(CB−1、三洋化成工業(株)製) 10)オキサゾリン変性PS:ビニルオキサゾリン1重量
%含有PS(RRS−1001)と5重量%含有PS
(RPS−1005)、いずれも重量平均分子量約13
万(日本触媒化学工業(株)製) 11)オキサゾリン変性PE:6%アクリル酸変性PE2
00gと1,3−フェニレンビスオキサゾリン50g
を、加圧ニーダ中、200℃で30分間混練、反応させ
た。反応物は取り出し、冷却後粉砕し、過剰の1,3−
フェニレンビスオキサゾリンをトルエンで抽出除去し
た。得られたオキサゾリン変性PEのプロトンNMRか
ら、約15%の1,3−フェニレンビスオキサゾリンが
結合していることがわかった。
【0053】2.物性評価法 1)焼結性粉末に結合している有機物量:粉砕したコン
パウンドから、トルエン溶媒を用いてソックスレー抽出
器によりバインダを抽出除去した。バインダを除去した
焼結性粉末は、乾燥後、炭素定量分析に供した。なお、
抽出時間は、この炭素量が一定値になるまで、十分に行
った。この炭素量と混練前の原料粉末の炭素量の差は、
熱トルエンでも抽出できない、粉末表面に強固に固着し
ているポリマーに起因するものであり、その多少によっ
てバインダと焼結性粉末の相互作用の強さを評価するこ
とができる。 2)脱脂試験:図1に示す厚さ4mmの板を平面部1と
支持部2,2を有する台状に成形して射出成形試験片
(成形体)を得た。他の部分の形状は、図1に示すとお
りである。この試験片を、減圧下、常温から250℃ま
で12時間で昇温し、250℃で1時間保持した。その
後、窒素を導入し、窒素気流中500℃まで1時間で昇
温し、さらに1時間保持後冷却した。図2は脱脂前の成
形体(a)と脱脂後の成形体(b)を示す断面図であ
り、脱脂変形量は、脱脂工程前後における成形体の平面
部1の中央での変形量を測定した。この変形量は、脱脂
時に自重により変形したものである。
【0054】(実施例1〜8、比較例1〜6)表1に示
す2種の樹脂各25重量%、パラフィンワックス(融点
60℃)30重量%、DBP20重量%より成る焼結性
粉末射出成形用バインダを使用した。まず、加圧ニーダ
を140℃に加熱した後、バインダ成分9.8重量部を
投入して溶融させ、次にステンレス粉末100重量部を
徐々に投入した。粉末を全量投入してから1時間混練し
た後、混練物を取り出し、冷却後粉砕した。粉砕コンパ
ウンドは、ソックスレー抽出器にてバインダを除去し、
粉末炭素量を測定した。さらに同じ粉砕コンパウンドを
用いて図1に示す試験片に射出成形し、脱脂試験に供し
た。結果を表1に示す。比較例1と6は、粉末とバイン
ダの濡れ性が悪く、成形中に粉末とバインダが分離して
しまい、成形不能であった。EVA,EEA,EMM
A,アクリル酸変性PEを用いた場合(比較例2〜5)
は、良好な成形体が得られたものの、脱脂時にふくれが
発生したり、著しい変形を起こしたりした。しかし、実
施例1〜8に示すように、オキサゾリン変性樹脂を用い
た場合は、いずれも成形性が良好で、成形体、脱脂体に
ふくれや割れなどの欠陥がなく、脱脂変形も少なかっ
た。
【0055】(実施例9〜18)バインダ組成を表2に
しめしたものを使用した以外は、実施例1と同様に混
練、粉砕、射出成形、脱脂を行った。結果を表2に示
す。実施例9〜12はオキサゾリン変性PEを配合比3
〜80%の範囲で用いてあるうえ他の成分の配合比、分
子量も適切なので成形性、脱脂性ともに良好であった。
実施例13、14はオキサゾリン変性PEを用いている
が、その配合比が1%と少ないか85%と多いために脱
脂性がやや劣った。実施例15ではオキサゾリン変性P
E以外の樹脂(PE、PS)の配合比が75%と多いた
め脱脂時の変形がやや大きかった。実施例16、17は
オキサゾリン変性PEを用いているが、低分子成分であ
るマイクロクリスタリンワックス、DOPおよびDBP
の合計配合比が85%と多いか、15%と少いため脱脂
性がやや悪かった。実施例18は低分子成分PEワック
スの分子量が3000であり、2000を越えているの
でやはり脱脂変性量がやや大きかった。しかし、実施例
13〜18はオキサゾリン変性樹脂を用いていない比較
例1〜6(表1参照)と比べると優れたバインダとなっ
た。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】(実施例19)オキサゾリン変性PE/大
豆油/DBP=50/30/20(重量比)の組成比の
バインダを用いる以外は、実施例1と同様に混練、粉
砕、射出成形を行った。射出成形体を、メタノール中に
12時間浸漬し、可塑剤の大部分を抽出した後、成形体
を30分間真空乾燥した。成形体は窒素気流中で常温か
ら500℃まで4時間で昇温し、500℃で1時間保持
後冷却した。成形体外観、溶剤脱脂体外観、熱脱脂体外
観のいずれも欠陥発生が全くなく良好であり、変形も8
0μmと少なかった。
【0059】(比較例7)オキサゾリン変性PEの代わ
りに、PEを使う以外は実施例19と同様の操作を行な
った。成形時に成形体のいくつかにクラックが発生した
他、熱脱脂体にクラックが発生し、変形も4,500 μmと
大きかった。
【0060】(実施例20〜22、比較例8〜11)表
3に示す2種の樹脂各25重量%、パラフィンワックス
(融点60℃)30重量%、フタル酸ジブチル(DB
P)20重量%より成るバインダを使用した。まず、加
圧ニーダを140℃に加熱した後、バインダ12重量部
を投入して溶融させ、次に平均粒径1.0μmの窒化ケ
イ素粉末94重量%、平均粒径0.4μmの酸化イット
リウム粉末3重量%および平均粒径0.3μmの酸化ア
ルミニウム粉末3重量%の混合粉100重量部を徐々に
投入した。粉末を全量投入してから1時間混練した後、
混練物を取り出し、冷却後粉砕した。粉砕コンパウンド
はソックスレー抽出器にてバインダを除去し、粉末炭素
量を測定した。さらに同じ粉砕コンパウンドを用いて図
1に示す試験片に射出成形し、脱脂試験に供した。結果
を表3に示す。
【0061】比較例8は粉末とバインダの濡れ性が悪
く、射出成形時に粉末とバインダが分離し、成形不能で
あった。EVA,EEAあるいはアクリル酸変性PEを
用いた場合(比較例9〜11)は、良好な成形体が得ら
れたものの、脱脂時にふくれが発生したり、著しい変形
を起こしたりした。しかし、実施例20〜22に示すよ
うに、オキサゾリン変性樹脂を用いた場合は、いずれも
成形性が良好で、成形体、脱脂体にふくれやクラックな
どの欠陥がなく、脱脂変形も小さかった。
【0062】
【表3】
【0063】
【発明の効果】本発明は、バインダ成分に、金属粉末、
セラミックス粉末またはサーメット粉末と強固に固着す
る、オキサゾリニル基を分子内に1個以上有する樹脂を
用いたために、焼結性粉末とバインダの界面が強く結合
している焼結性粉末射出成形用組成物が得られた。この
ため、本発明の焼結性粉末射出成形用組成物は、成形性
が良く、脱脂時間が短くて済むなどの製造上の利点に加
え、強度が高いため、成形時の割れ、変形や脱脂時の変
形、ふくれ、クラック発生が激減する長所を有し、複雑
形状の精密部品が、高精度の寸法で効率良く生産できる
ようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例において作製した試験片の寸法を示す
図である。
【図2】 変形量の測定を説明するための成形体(a)
および(b)の断面図である。
【符号の説明】 1 平面部 2 支持部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22F 3/00 - 3/26 B28B 1/24 C04B 35/632 C08L 101/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オキサゾリニル基を分子内に1個以上有す
    る樹脂または化合物を含有することを特徴とする焼結性
    粉末射出成形用バインダ。
  2. 【請求項2】前記オキサゾリニル基を分子内に1個以上
    有する樹脂が、分子量2,000 を越えたものであり、さら
    に前記オキサゾリニル基を分子内に1個以上有する樹脂
    以外の樹脂および分子量2,000 以下の有機化合物を含む
    請求項1に記載の焼結性粉末射出成形用バインダ。
  3. 【請求項3】(a)分子量2,000 を越え、かつオキサゾ
    リニル基を分子内に1個以上有する樹脂を3〜80重量
    %、および、(c)分子量2,000 以下の有機化合物を2
    0〜80重量%含む請求項1に記載の焼結性粉末射出成
    形用バインダ。
  4. 【請求項4】(a)分子量2,000 を越え、かつオキサゾ
    リニル基を分子内に1個以上有する樹脂を3〜80重量
    %、(b)上記(a)以外の樹脂を70重量%以下、お
    よび、(c)分子量2,000 以下の有機化合物を20〜8
    0重量%含む請求項2に記載の焼結性粉末射出成形用バ
    インダ。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の焼結性粉
    末射出成形用バインダと金属粉末、セラミックス粉末ま
    たはサーメット粉末とを含有することを特徴とする焼結
    性粉末射出成形用組成物。
  6. 【請求項6】前記金属粉末、セラミックス粉末またはサ
    ーメット粉末が、平均粒径0.1 〜1,000 μmである請求
    項5に記載の焼結性粉末射出成形用組成物。
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