JP2841269B2 - 耐食性及び被削性に優れた銅基合金並びに該合金を用いたバルブ部品 - Google Patents

耐食性及び被削性に優れた銅基合金並びに該合金を用いたバルブ部品

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JP2841269B2
JP2841269B2 JP6015742A JP1574294A JP2841269B2 JP 2841269 B2 JP2841269 B2 JP 2841269B2 JP 6015742 A JP6015742 A JP 6015742A JP 1574294 A JP1574294 A JP 1574294A JP 2841269 B2 JP2841269 B2 JP 2841269B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、腐食水溶液存在下で使
用しても黄銅の脱亜鉛腐食への優れた耐食性及び被削性
に優れた銅基合金並びに該合金を用いたバルブ部品に
する。
【0002】
【従来の技術】一般に、Pb入り黄銅は、切削加工性な
どの優れた性質から広く使用されているが、腐食液雰囲
気中で脱亜鉛腐食を起こす欠点がある。そのために限ら
れた用途においてのみ使用されているのが実情である。
従来より使用されてきた耐脱亜鉛腐食黄銅は、満足な耐
脱亜鉛腐食性を示さないものであったり、SnやFeな
どの製造上不可避不純物を極力低く抑えるため、原材料
コストが高いバージン配合などをしなければならない等
の課題を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した実
情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、そ
の目的とするところは、Pb入り黄銅本来の切削加工性
を有し、原材料コストを低減することができ、しかも、
優れた耐脱亜鉛腐食性を有した銅基合金を提供すること
にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項1における発明は、Cu61.0〜63.0%、Pb
2.0〜4.5%、P0.05〜0.25%、Ni0.05〜0.30%を含有
し、残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上重量
%)を有した銅基合金である。また、請求項2における
発明は、Cu61.0〜63.0%、Pb2.0〜4.5%、P0.05〜
0.25%、Ni0.05〜0.30%、Ti0.02〜0.15%を含有
し、残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上重量
%)を有した銅基合金である。更に、請求項3における
発明は、Cu61.0〜63.0%、Pb2.0〜4.5%、P0.05〜
0.25%、Ni0.05〜0.30%を含有し、残りがZnと不可
避不純物からなる組成(以上重量%)を有した銅基合金
を材料としてバルブ部品を製造するようにした銅基合金
を用いたバルブ部品である。また、請求項4における発
明は、Cu61.0〜63.0%、Pb2.0〜4.5%、P0.05〜0.
25%、Ni0.05〜0.30%、Ti0.02〜0.15%を含有し、
残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)
を有した銅基合金を材料としてバルブ部品を製造するよ
うにした銅基合金を用いたバルブ部品である。
【0005】
【作用】上記した本発明における銅基合金の組成範囲と
その理由を具体的に説明する。 Cu:Cu量を増加させる程、耐脱亜鉛腐食性は高まる
が、CuはZnよりも材料単価が高価であるので低く抑
える必要がある。後に述べる耐脱亜鉛腐食性を向上させ
るために添加したP量との関係から満足な耐脱亜鉛腐食
性を示すCuの範囲を61.0〜63.0%とした。その中で
も、62.2〜62.6%の範囲が好ましい。
【0006】Pb:Pbは、本発明の主用途である切削
加工性を向上させるために添加した。Pbは0.5%以下
では効力を発揮せず、また、4.5%以上になると引張り
強さ、伸び及び衝撃値が低下するので、Pbの範囲を2.
0〜4.5%とした。その中でも、2.1〜4.2%の範囲が好ま
しい。
【0007】P:Pは、黄銅の耐脱亜鉛腐食性を向上さ
せるために添加した。表1及び表2に示すように添加す
る程、耐脱亜鉛腐食性は向上するが、添加したPの一部
が堅くて脆いCu3P相として合金中に存在してしまう
ため、添加量を低く抑える必要がある。そこで、満足な
耐脱亜鉛腐食性を示す本発明におけるPの範囲を0.05〜
0.25%とした。その中でも、0.07〜0.2%の範囲が好ま
しい。
【表1】
【表2】 なお、表1のサンプルは、Cu、Pb、Ni、Ti、Z
n量を略一定にした鋳物サンプルであり、脱亜鉛試験
は、ISO規格脱亜鉛試験法で行った。
【0008】Ni:Niは、添加することにより直接耐
脱亜鉛腐食性に効果がある。また、一方で鋳塊状態での
組織を微細化し、組織の均一細分化が可能であり、その
後の押出等の加工により均一に細かく分散し、耐脱亜鉛
腐食性に効果がある。そこで、Niの組成範囲を0.0
5〜0.30%とした。その中でも、0.05〜0.1
5%の範囲が好ましい。
【0009】Ti:Niとの相乗効果で組織の均一細分
化の効果を助長させるため添加した。Ti組成範囲を
0.02〜0.15%とした。その中でも、0.02〜
0.08%の範囲が好ましい。
【0010】なお、製造上、不可避不純物のFeやSn
などがあるが、合計して0.8%以下であればよい。この
範囲は、通常公知のJIS規格成分範囲内で一般黄銅を
製造している限り、特別なことをしなくても可能であ
り、また、これは原材料コストを低く抑えることにな
る。本発明における製造法の一例を示すと、上記した組
成合金鋳塊を公知の方法でビレット加熱温度700℃で押
出・抽伸後、熱処理により十分に棒製品内部応力を除去
することにより製造される。
【0011】
【実施例】本発明における耐食性及び被削性に優れた銅
基合金を適用した好ましい実施例を比較例と共に詳述す
る。表3に、切削性試験、耐脱亜鉛腐食性試験の結果を
示す。各サンプル共、250mm径ビレットから20Фの棒に
押出温度700℃で押出し、断面減少率20%で抽伸後、450
℃×2.0Hrの条件で熱処理し、十分に棒製品内部応力
除去したものである。切削性試験は、各サンプル共、一
定の試験方法で行い、切粉の状態が細かく分断したもの
を○印、切粉がつながったものを×印と示した。脱亜鉛
試験は、ISO規格脱亜鉛試験と同様の75±3℃の2.5ml
(1%Cucl2水溶液)/試験片暴露面積(mm2)に浸
漬し、その脱亜鉛深さを測定した。脱亜鉛深さが75μm
以下を◎印、75μm〜200μmを○印、200μm以上を×印
として示した。
【0012】
【表3】 表3中におけるNo.1は、公知のJISC3604で
あり、Cu量が低く、Pを添加しないため耐脱亜鉛腐食
性が劣る。図1は、このサンプルNo.1をISOー650
9法脱亜鉛試験により実施した脱亜鉛腐食部の写真(×
50)を示す。この写真によると、1100μm程度の脱亜
鉛腐食部1が確認された。No.2は、Cu量が多いた
め切削性が劣る。No.3、No.7は、Pを添加してい
ないため耐脱亜鉛腐食性が劣る。No.8は、Cu量が
低いため耐脱亜鉛腐食性が劣る。本発明におけるNo.
4、No.5、No.6は、切削性、耐脱亜鉛腐食性にも
優れている。図2は、サンプルNo.4、No.5、N
o.6をISOー6509法脱亜鉛試験により実施した脱亜
鉛腐食部の写真(×200)を示す。この写真による
と、20μm程度の脱亜鉛腐食部2しか確認されず、耐脱
亜鉛腐食性にも優れていることが確認された。また、第
3図は、表3中におけるNo.1の従来材の顕微鏡組織
写真(×200)を示し、第4図は、第一発明における
黄銅棒の顕微鏡組織写真(×200)であり、鋳塊組織
が細分化されているのが確認された。
【0013】第二発明における銅基合金において、Cu
61.0〜63.0%、Pb2.0〜4.5%、P0.05〜0.25%にNi
0.05〜0.30%、Ti0.02〜0.15%を添加すると、第5図
の黄銅棒の顕微鏡組織写真(×200)に示すように、
より鋳塊組織が細分化され、より耐脱亜鉛腐食効果が表
れることを確認した。以上のことから明らかなように、
第一発明並びに第二発明における銅基合金は、ステム、
弁座、ジスク等のバルブ部品、建築資材や電気・機械部
品、船舶用部品、給湯機器などの温水関連機器や塩水ラ
インなどのように、脱亜鉛腐食が発生しやすい機器など
の部材・部品或はその他の機器類に広く適用することが
できる。
【0014】
【発明の効果】従って、本発明による銅基合金による
と、優れた切削加工性を有し、かつコストの低減を図る
ことができるため経済性にも富み、しかも、耐食性及び
被削性に顕著な効果を奏する銅基合金を提供することが
可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例であるサンプルNo.1をISOー6509
法脱亜鉛試験により実施した脱亜鉛腐食部写真(×5
0)である。
【図2】第一の発明におけるサンプルNo.4、No.5
をISOー6509法脱亜鉛試験により実施した脱亜鉛腐食
部写真(×200)である。
【図3】従来材であるサンプルNo.1の顕微鏡組織写
真(×200)である。
【図4】第一の発明における黄銅棒の顕微鏡組織写真
(×200)である。
【図5】第二の発明における黄銅棒の顕微鏡組織写真
(×200)である。
【符号の説明】
2 脱亜鉛腐食部
フロントページの続き (72)発明者 小林 和彦 長野県茅野市宮川字小早川7377番地 株 式会社キッツ 茅野工場内 (56)参考文献 特開 平1−272734(JP,A) 特開 平6−108184(JP,A) 米国特許4101317(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 9/00 - 9/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cu61.0〜63.0%、Pb2.0
    〜4.5%、P0.05〜0.25%、Ni0.05〜
    0.30%を含有し、残りがZnと不可避不純物からな
    る組成(以上重量%)を有したことを特徴とする耐食性
    及び被削性に優れた銅基合金。
  2. 【請求項2】 Cu61.0〜63.0%、Pb2.0
    〜4.5%、P0.05〜0.25%、Ni0.05〜
    0.30%、Ti0.02〜0.15%を含有し、残り
    がZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を
    したことを特徴とする耐食性及び被削性に優れた銅基合
    金。
  3. 【請求項3】 Cu61.0〜63.0%、Pb2.0〜4.5%、P
    0.05〜0.25%、Ni0.05〜0.30%を含有し、残りがZn
    と不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有した銅
    基合金を材料としてバルブ部品を製造するようにしたこ
    とを特徴とする耐食性及び被削性に優れた銅基合金を用
    いたバルブ部品。
  4. 【請求項4】 Cu61.0〜63.0%、Pb2.0〜4.5%、P
    0.05〜0.25%、Ni0.05〜0.30%、Ti0.02〜0.15%を
    含有し、残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有した銅基合金を材料としてバルブ部品を
    造するようにしたことを特徴とする耐食性及び被削性に
    優れた銅基合金を用いたバルブ部品。
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