JP2838686B2 - 水とアルコールの混合溶媒中のチタン塩溶液からの結晶質チタニア粉末の製造方法 - Google Patents

水とアルコールの混合溶媒中のチタン塩溶液からの結晶質チタニア粉末の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶質のチタニア
(TiO2)粉末の製造方法に関する。更に詳しくは、
本発明は、出発原料としてのチタン塩及び溶媒としての
水とアルコールの混合物を用い、沈殿粒子の形状、粒
度、粒度分布などを制御することにより、微粉砕(mill
ing)を行なうことなく結晶質のチタニア粉末を製造す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタニア、酸化亜鉛、酸化鉛等の無機化
合物は、優れた光散乱効果と光遮断力を有する白色顔料
の材料として広く用いられてきた。これらの内で、ルチ
ル型のチタニアは、下記表1に示すように高い屈折率、
油吸着性、着色力、及び強酸性乃至強塩基性雰囲気下で
の化学的安定性を有するために、最も広く用いられてき
た。顔料としての使用に加えて、チタニアは 優れた白
さを有し、容易に酸化/還元しやすいので、コーティン
グ材料、光伝導体、光触媒等としても用いられてきた。
【0003】
【表1】 通常、チタニア粉末を得る方法としては、硫酸塩法(sa
lfate process)又は塩化物法(chloride process) が
行われてきた。
【0004】硫酸塩法は、硫酸水溶液中にイルメナイト
(FeO・TiO2)を溶解し、得られた溶液を95℃
を超える温度で加水分解して非晶質の水酸化チタン(T
iO2・xH2O)を形成し、該水酸化チタンを800〜
1000℃で、か焼し、該水酸化チタンを微粉砕して所
望の相のチタニアを形成する工程を含むものである。
【0005】しかしながら、硫酸塩法でチタニア粉末を
製造する場合には、多くの問題点が生じる。例えば、か
焼した水酸化チタニウム沈殿物を微粉砕する際に、多く
の不純物が混入する。この様な汚染によって、最終生成
物の性質が大きく劣化する。更に、微粉砕工程におい
て、粒子形状、粒径、粒径分布等の粒子の性質を制御す
ることができない。従って、微粉砕された粒子は、不規
則な形状で種々の粒径を有するものとなり、成形物の密
度の低下を生じる。更に、か焼工程で要求される高温度
によって、製造コストの増加をもたらす。硫酸などの強
酸の使用によって、環境汚染の問題を生じる。高温度と
強酸の使用を必要とする反応条件により、装置の激しい
腐食を生じる。
【0006】デュポン(Du Pont) によって開発された
塩化物法は、天然のルチル鉱石又は合成ルチル(純度9
0%)を高温でHClガスと反応させて四塩化チタンを
形成し、得られた生成物をO2ガスと反応させてチタニ
ア粉末を形成する工程を含む。この塩化物法によれば、
ルチル型のチタニア粉末が99.9%以上の純度で得ら
れる。しかしながら、この方法は、粒子形状、粒径、及
び粒径分布を簡単には制御できないという不利な点を有
する。更に、この方法は、天然のルチル鉱石が限定され
た地域に集中するので、実用性は限られたものである。
【0007】セラミック製品の性質は、原料粉末の性質
に大きく依存する。従って、粒子形状、粒径、粒径分布
等の原料粉末の性質を制御するための広範囲の研究が成
されてきた。
【0008】近年、環境汚染の問題を解決し、粉体の分
散性を改善するために、アルコキシ化チタンを用いて、
球状で均一な粒径のチタニア粉末を製造するための多く
の研究が行われてきた。
【0009】イー.マチジェビック(E.Matijevic)
他、“プレパレーション アンド メカニズム オブ
チタニウム ジオキサイド ハイドロゾルズ オブ ナ
ロウサイズ ディストリビューション(Preparation an
d Mechanism of TitaniumDioxide Hydrosols of Narrow
Size Distribution) ”、ジャーナル オブ コロイド
アンド インターフェイス サイエンス(J.Colloid a
nd Interface Sci.) ,61(2) , 302-311,1977 は、塩酸
及び硫酸ナトリウムを含有する四塩化チタン水溶液を9
5℃で37日間熟成することを含む球状粒子のチタニア
粉末を製造する方法を開示している。この粒子は、約
1.5μmの均一な粒径を有するものである。熟成時間
又は硫酸ナトリウム量が増加するに従って、粒径も増加
する。
【0010】イー.エー.バリンガー(E.A.Barringer)
他、“ハイ−ピュアリティー,モノディスパースド T
iO2 パウダーズ バイ ハイドロゾルズ オブ チ
タニウム テトラエトキシド(High-Purity, Monodispers
ed TiO2 Powders by Hydrosols of Titanium Tetraetho
xide) ”、ラングミュアー(Lamgmuir) ,1(4),414-420,
1985 は、チタニウム アルコキシドをエタノールに溶
解し、H2Oを添加して得られた溶液を加水分解及び縮
合することを含む、均一な粒径のチタニア粉末の製造方
法を開示している。この粒子は、0.3〜0.6μmの
平均粒径を有する。加水分解及び縮合は、添加する水の
量によって制御される。この方法では、粒子形状、粒径
及び粒径分布を制御するために、溶液のpH調節が必要
である。
【0011】アルコキシドを用いるゾル−ゲル法は、球
状で微細な均一粒径の粉末が得られるという有利な点を
有する。しかしながら、この方法によれば、空気中でも
加水分解が激しく生じるので、反応条件を厳密に制御す
ることが必要である。更に、この方法は、原料のアルコ
キシドが高価であるために未だ商業化されていない。従
って、この方法は、これまでは、実験室規模で行われて
きた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従って、より経済的な
コストで、環境汚染の問題を生じることのない単純化さ
れたチタニア粉末の製造方法が必要とされている。
【0013】本発明の目的は、環境汚染の問題を避ける
ことができ、微粉砕工程を省略することが可能であっ
て、制御された粒子形状、粒径及び粒径分布を有する微
細で均一な粒径の結晶質のチタニア粉末を製造するため
の改良された方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、出
発原料としての硫酸チタン及び塩化チタン等のチタン
塩、並びに溶媒としての水とアルコールの混合物を用い
ることによって達成される。
【0015】本発明は、下記の工程を含む結晶質のチタ
ニア粉末の製造方法を提供する:水とアルコールの混合
溶媒にチタン塩を溶解し;得られた溶液を15〜75℃
に加熱して水酸化チタンの沈殿物を形成し;該水酸化チ
タン沈殿物を結晶化する。
【0016】より詳しくは、本発明は、下記の工程を含
むアナターゼ相のチタニア粉末の製造方法を提供する: (a)水とアルコールの混合溶媒中にチタン塩を入れた
溶液を準備し; (b)得られた溶液を約15〜75℃に加熱して、水酸
化チタンの非晶質の沈殿を形成し; (c)得られた水酸化チタンの非晶質の沈殿物を1〜1
0気圧で150〜200℃で水熱的に結晶化する。
【0017】更に、本発明は、下記の工程を含むルチル
相のチタニア粉末の製造方法を提供する: (a)水とアルコールの混合溶媒中にチタン塩を入れた
溶液を準備し; (b)得られた溶液を約15〜75℃に加熱して、水酸
化チタンの非晶質の沈殿を形成し; (c)得られた水酸化チタンの非晶質の沈殿物を、60
0〜800℃で1時間、か焼する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明において出発原料として用
いることができるチタン塩は、塩化チタン、オキシ塩化
チタン(titanium oxychloride)、硫酸チタン、オキシ
硫酸チタン(titanium oxysulfate)等である。特に、
四塩化チタン、オキシ塩化チタン、二硫酸チタン(tita
nium disulfate)、又はオキシ硫酸チタンが好ましい。
【0019】本発明で用いるアルコールは、エタノー
ル、1−プロパノール、2−プロパノール、3−ブタノ
ール等の炭素数1〜4個の低級アルコール等である。混
合溶媒における水とアルコールの混合割合は、約1:0
〜約1:5の範囲である。この割合は、沈殿温度及び沈
殿粒子の性質の制御において非常に重要である。
【0020】次いで、水とアルコールの混合溶媒中にチ
タン塩を入れた溶液を一定の温度に加熱して、水酸化チ
タンの沈殿を形成する。沈殿温度は、水とアルコールの
混合割合及びアルコールの種類に応じて変化する。
【0021】原料のチタン塩として塩化チタンまたはオ
キシ塩化チタンを用いる場合には、水だけを溶媒として
用いる場合、即ち、水とアルコールの混合割合が1:0
の場合に、約75℃で沈殿が形成される。水とアルコー
ルの混合割合を約1:3まで増加させると、沈殿温度は
徐々に約45℃に低下する。水とアルコールの混合割合
が1:3を超えると、沈殿温度は再び上昇する。
【0022】硫酸チタンを原料物質として用いる場合に
は、水だけを溶媒として用いる場合、又は水とアルコー
ルを各種の割合で混合する場合のいずれの場合にも、約
75℃で、沈殿が形成される。即ち、水とアルコールの
混合割合を変えても、沈殿温度はほとんど変化しない。
【0023】オキシ硫酸チタンを用いる場合には、水だ
けを溶媒として用いる場合に、約75℃で沈殿が形成さ
れる。水とアルコールの混合割合を1:1まで増加させ
ると、沈殿温度は徐々に低下する。そして、水とアルコ
ールの混合割合が1:1を超えると、沈殿温度は実質的
に一定に維持される。
【0024】沈殿温度は、使用するアルコールの種類に
よって変わる。
【0025】原料のチタン塩として塩化チタンまたはオ
キシ塩化チタンを用いる場合には、水とエタノールの混
合溶媒では約75℃で沈殿が生じる。水と3−ブタノー
ルの混合溶媒を用いる場合には,水と3−ブタノールの
混合割合を約1:5まで増加させると、沈殿温度は徐々
に15℃に低下する。水とプロパノールの混合溶媒を用
いる場合には、水とプロパノールの混合割合を約1:3
まで増加させると、沈殿温度は徐々に約40℃に低下す
る。水とプロパノールの混合割合が1:3を超えると、
沈殿温度は再び上昇する。
【0026】硫酸チタンまたはオキシ硫酸チタンを原料
のチタン塩として用いる場合には、水とプロパノールの
混合溶媒中で沈殿が形成される。しかしながら、溶媒と
して水とエタノール若しくはブタノールとの混合物を用
いる場合には、沈殿は全く或いはほとんど形成されな
い。
【0027】上記方法によれば、粒子形状、粒径及び粒
径分布等の沈殿粒子の性質は、水とアルコールの混合割
合によって、制御することができる。
【0028】原料のチタン塩として硫酸チタンまたはオ
キシ硫酸チタンを用いる場合には、水とアルコールの混
合割合が約1:0では、沈殿粒子は、いかなる特定の形
状にもならない。混合割合が増加すると、沈殿粒子は徐
々に球形に変化する。水とアルコールの割合が約1:
0.5では、沈殿粒子は実質的に球形となる。水とアル
コールの割合が約1:1まで増加すると、完全に球状で
均一な粒径の粒子が沈殿する。水とアルコールの混合割
合が約1:1.0を超えると、沈殿粒子は球形ではなく
なる。水とアルコールの混合割合が約1:1.5を超え
ると、沈殿は、全く或いはほとんど形成されない。
【0029】塩化チタンまたはオキシ塩化チタンを原料
のチタン塩として用いる場合には、水とアルコールの混
合割合が約1:0では、沈殿粒子はいかなる特定の形状
にもならない。割合が増加すると、沈殿粒子は徐々に球
形に変化する。約1:0.5の混合割合では、沈殿粒子
は実質的に球形となる。約1:5を超える混合割合で
は、沈殿粒子は完全な球形である。従って、塩化チタン
またはオキシ塩化チタンを、水とアルコールの混合割合
が約1:1以上の混合溶媒に溶解する場合には、沈殿温
度は使用するアルコールの種類によって変化するが、沈
殿粒子の形状は球状である。
【0030】本発明による沈殿の形成は、加熱速度によ
って影響を受けることがある。沈殿粒子の粒径及び粒径
分布は、加熱速度を増加すると減少する。
【0031】本発明によれば、沈殿粒子の粒径は、使用
するチタン塩の濃度が増加すると大きくなる。この場合
には、チタン塩の濃度が0.1M未満或いは0.3Mを
超えると、粒子の凝集が生じることがある。従って、本
発明の目的のためには、非凝集状態で均一な粒径のチタ
ニア粉末を得るためには、チタン塩の好ましい濃度は、
約0.1M〜約0.3Mの範囲である。
【0032】沈殿温度において、反応時間を増加する
と、沈殿する粒子量が増加することがある。
【0033】原料のチタン塩として硫酸チタンまたはオ
キシ硫酸チタンを用いる場合には、反応時間を増加する
と、沈殿量が徐々に増加する。しかしながら、塩化チタ
ンまたはオキシ塩化チタンを原料のチタン塩として用い
る場合には、沈殿開始後20分間は沈殿量が増加する
が、その後、沈殿量は実質的に一定に維持される。
【0034】本発明によれば、沈殿した水酸化チタン粒
子は、0.5〜1μmの均一粒径で球形となる。X線回
折による分析により、沈殿粒子は、立方晶の結晶系であ
ることが示された。
【0035】水酸化チタンの沈殿物を、150〜200
℃の高温及び1〜10気圧の高圧の条件下で水熱結晶化
すると、アナターゼ型のチタニア粉末が得られる。或い
は、水酸化チタンの沈殿物を、常法に従って、600〜
800℃の温度の炉中で数時間、か焼すると、ルチル型
結晶のチタニア粉末が得られる。ルチル型チタニア粉末
の粒子は、か焼前のものと比べて、同一形状で小さい粒
径を有する。
【0036】本発明によれば、低温でのアナターゼ相か
ら高温でのルチル相への相転移が、例えば、600〜8
00℃という比較的低温で生じる。この温度範囲は、従
来の方法における800〜1000℃よりかなり低い。
【0037】本発明によれば、沈殿が生じる際に、沈殿
粒子の形状、粒径及び粒径分布について制御できるの
で、従来の方法で必須である微粉砕工程を必要としな
い。従って、微粉砕工程において生じることのある不純
物による汚染の問題を避けることができる。本発明によ
れば、従来の方法における95℃より低い、15〜75
℃という温度で短時間に沈殿が生じる。加えて、本発明
は酸素ガスとの反応を必要とせず、連続的に行うことが
できる。従って、本発明は、従来の方法と比べて、より
簡単で、より低コストである。更に、本発明の方法は、
従来のアルコキシド法とは異なり、粒子の形状、粒径及
び粒径分布を制御するために反応溶液のpH調節を必要
としない。
【0038】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を詳細に記載す
るが、これらの実施例は、本発明の例示であり、本発明
の範囲を限定するために解釈されない。
【0039】実施例1 二硫酸チタン(チタニウム ジサルフェート)を、1:
0、1:0.5、1:1.0及び1:1.5 の各体積割合の水と
1−プロパノールの混合溶媒中に溶解して、4種類の
0.1M溶液を調製した。四塩化チタンを1:0、1:
1、1:2、1:3、1:4及び1:5の各体積割合の
水とプロパノールの混合溶媒中に溶解して、6種類の
0.1M溶液を調製した。各溶液を2℃/分の一定速度
で加熱しながら、沈殿が生じる温度を観察した。
【0040】同様に、0.1M四塩化チタン溶液、0.
1Mオキシ塩化チタン溶液、及び0.1Mオキシ硫酸チ
タン溶液を上記方法と同様にして調製した。各溶液につ
いて、沈殿が生じる温度を観察した。
【0041】結果を図1及び図2に示す。二硫酸チタン
については、1−プロパノールを添加しない場合に、7
5℃で沈殿が形成された。添加する1−プロパノールの
量を増加した場合であっても、沈殿温度は一定に維持さ
れた。四塩化チタンについては、1−プロパノールを添
加しない場合に、75℃で沈殿が形成された。水と1−
プロパノールの割合を1:3まで増加すると、沈殿温度
が徐々に40℃に低下した。水と1−プロパノールの割
合が1:3を超えると、沈殿温度は再び上昇した。
【0042】オキシ硫酸チタンについては、1−プロパ
ノールを添加しない場合に、約75℃で沈殿が形成され
た。水と1−プロパノールの割合が1:1まで増加する
と、沈殿温度は徐々に70℃に低下した。水と1−プロ
パノールの割合が1:1を超えると、沈殿温度は約70
℃で一定に維持された。オキシ塩化チタンについては、
1−プロパノールを添加しない場合に、約75℃で沈殿
が形成された。水と1−プロパノールの割合を1:3ま
で増加すると、沈殿温度は徐々に40℃に低下した。水
と1−プロパノールの割合が1:3を超えると、沈殿温
度は再び上昇した。
【0043】実施例2 粒子の形状の変化に対する水とアルコールの混合割合の
影響を観察した。
【0044】1:0、1:0.5、1:1及び1:1.5の各
体積割合の水と1−プロパノールの混合溶媒に二硫酸チ
タン を溶解して、4種類の0.1M溶液を得た。この
溶液を2℃/分の一定速度で加熱して、沈殿粒子を形成
した。沈殿粒子の顕微鏡写真を図3〜図6に示す。図
3、図4、図5及び図6は、それぞれ、水と1−プロパ
ノールの割合が、1:0、1:0.5、1:1及び1:1.5
の場合の顕微鏡写真である。これらの顕微鏡写真に示さ
れている様に、水と1−プロパノールの割合が1:0の
場合には、沈殿粒子は特定の形状にはならなかった。水
と1−プロパノールの割合が1:0.5の場合に、実質
的に球形の粒子が得られた。均一な粒径で球形の粒子
は、水と1−プロパノールの割合が約1:1の場合に形
成された。しかしながら、水と1−プロパノールの割合
が約1:1.5の場合には、沈殿粒子は、完全な球形と
はならなかった。
【0045】同様に、上記方法と同様にして、0.1M
の四塩化チタン溶液を調製し、沈殿粒子の形状を観察し
た。沈殿物の顕微鏡写真を図7〜図10に示す。図7、
図8、図9及び図10は、それぞれ、水と1−プロパノ
ールの割合が、1:0、1:0.5、1:1及び1:1.5
の場合の顕微鏡写真である。この顕微鏡写真に示されて
いる様に、水と1−プロパノールの割合が1:0の場合
には、特定の形状にはならなかった。実質的に球形の粒
子は、水と1−プロパノールの割合が約1:0.5の場合
に得られた。水と1−プロパノールの割合が約1:1を
上回ると均一な粒径で球形の粒子が形成された。
【0046】実施例3 四塩化チタンを1:0、1:1、1:2、1:3、1:
4及び1:5の各体積割合の水とエタノールの混合溶媒
に溶解して、6種類の0.1M溶液を調製した。これら
の溶液を2℃/分の一定速度で加熱しながら、沈殿が生
じる温度を観察した。図11に示した様に、沈殿温度は
約75℃で一定に保たれた。
【0047】同様に、水と2−プロパノールの混合溶媒
を用いること以外は、上記と同様にして、0.1M四塩
化チタン溶液を調製し、沈殿温度を観察した。図11に
示した様に、水と2−プロパノールの割合が1:3まで
増加すると、沈殿温度は、約35℃まで徐々に低下し
た。水と2−プロパノールの割合が1:3を上回ると、
沈殿温度は再び上昇した。
【0048】同様に、水と3−ブタノールの混合溶媒を
用いること以外は、上記と同様にして、0.1M四塩化
チタン溶液を調製し、沈殿温度を観察した。図11に示
した様に、水と2−プロパノールの割合が1:5まで増
加すると、沈殿温度は、約15℃まで徐々に低下した。
【0049】二硫酸チタンを用いること以外は、上記方
法と同様にして、沈殿温度の変化に対する各種のアルコ
ールの影響を観察した。その結果、溶媒として、水とエ
タノール又は3−ブタノールとの混合物を用いた場合に
は、沈殿は形成されなかった。しかしながら、水と2−
プロパノールの混合溶媒を用いた場合には、水と2−プ
ロパノールの混合割合に関係なく、沈殿温度は約75℃
で一定であった。
【0050】実施例4 1:1の割合の水と1−プロパノールの混合物に四塩化
チタンを溶解して、5種類の0.1M溶液を調製した。
同様にして、4種類の0.1Mの二硫酸チタン溶液を調
製した。得られた溶液を、2℃/分、10℃/分、20
℃/分、40℃/分及び70℃/分の速度で加熱した。
得られた沈殿を観察した。結果を下記表2に示す。
【0051】
【表2】 上記表に示されている様に、加熱速度に関係なく、粒子
形状は、常に、球形に保たれた。粒子の平均直径及び粒
径分布は、加熱速度の増加に従って減少した。
【0052】別に、水と1−プロパノールの混合物中の
0.1M四塩化チタン溶液を調製し、マイクロ波で加熱
した。得られた沈殿物を観察した。沈殿粒子の顕微鏡写
真を図12に示す。図12に示されている様に、図5の
顕微鏡写真と比較すると、平均直径及び粒度分布は大き
く減少している。
【0053】実施例5 水と1−プロパノールの混合溶媒に四塩化チタンを溶解
して、各種の濃度の溶液を調製した。これらの溶液を、
40℃/分の速度で別々に加熱した。得られた沈殿物を
観察した。濃度の増加に伴って、沈殿粒子の大きさは増
加し、凝集する傾向にある。結果を下記表3に示す。
【0054】
【表3】 表3に示されている様に、非凝集で均一な大きさの粒子
の粉末は、0.1M〜0.3Mの濃度で得られる。
【0055】実施例6 水と1−プロパノールの混合溶媒に四塩化チタンを溶解
して、0.1M溶液を調製した。同様に、0.1Mの二
硫酸チタン溶液を調製した。これらの溶液を別々に40
℃/分の速度で加熱した。得られた沈殿量の変化を、反
応時間の増加に従って観察した。結果を図13に示す。
【0056】実施例7 水と1−プロパノールの混合溶媒に二硫酸チタンを溶解
して、0.1M溶液を調製した。得られた溶液を40℃
/分の速度で加熱した。次いで、得られた水酸化チタン
の沈殿について、180℃、10気圧で水熱結晶化を行
った。X線分光写真法による解析によれば、生成物がア
ナターゼ相の結晶であることが示された。結果を図14
に示す。
【0057】上記と同様にして0.1Mの二硫酸チタン
溶液を調製し、加熱した。得られ沈殿物を、800℃の
炉中で空気中において2時間、か焼した。X線分光写真
法による解析によれば、生成物がルチル相の結晶である
ことが示された。結果を図15に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】水とアルコールの混合割合による沈殿温度の変
化を示すグラフ。
【図2】水とアルコールの混合割合による沈殿温度の変
化を示すグラフ。
【図3】原料のチタン塩として(オキシ)硫酸チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図4】原料のチタン塩として(オキシ)硫酸チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図5】原料のチタン塩として(オキシ)硫酸チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図6】原料のチタン塩として(オキシ)硫酸チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図7】原料のチタン塩として(オキシ)塩化チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図8】原料のチタン塩として(オキシ)塩化チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図9】原料のチタン塩として(オキシ)塩化チタンを
用いた場合において、水とアルコールの混合割合による
沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図10】原料のチタン塩として(オキシ)塩化チタン
を用いた場合において、水とアルコールの混合割合によ
る沈澱粒子形状の変化を示す粒子構造の写真。
【図11】原料として四塩化チタンを用いた場合におい
て、アルコールの種類による沈澱温度の変化を示すグラ
フ。
【図12】水と1−プロパノールの混合溶媒中の四塩化
チタン溶液をマイクロ波で加熱することによって形成さ
れた沈澱粒子の粒子構造の写真。
【図13】反応時間による沈殿量の変化を示すグラフ。
【図14】非晶質の水酸化チタンを水熱結晶化して得ら
れた結晶質のチタニア生成物のX線スペクトルを示す図
面。
【図15】非晶質の水酸化チタンを、か焼して得られた
結晶質のチタニア生成物のX線スペクトルを示す図面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 朴 洪奎 大韓民国大田広域市儒城区九城洞373− 1 韓国科学技術院内 (56)参考文献 特開 平8−103631(JP,A) 特表 平3−503045(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 1/00 - 57/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記工程を含むアナターゼ相のチタニア粉
    末の製造方法: (a)水とアルコールの混合溶媒中にチタン塩を入れた
    溶液を準備し; (b)得られた溶液を約15〜75℃に加熱して、水酸
    化チタンの非晶質の沈殿を形成し; (c)得られた沈殿物を150〜200℃、1〜10気
    圧で水熱的に結晶化する。
  2. 【請求項2】下記工程を含むルチル相のチタニア粉末の
    製造方法: (a)水とアルコールの混合溶媒中にチタン塩を入れた
    溶液を準備し; (b)得られた溶液を約15〜75℃に加熱して、水酸
    化チタンの非晶質の沈殿を形成し; (c)得られた水酸化チタンの沈殿物を、600〜80
    0℃で1時間、か焼する。
  3. 【請求項3】チタン塩が、塩化チタン、オキシ塩化チタ
    ン、硫酸チタン、及びオキシ硫酸チタンからなる群から
    選ばれたものである請求項1又は2に記載のチタニア粉
    末の製造方法。
  4. 【請求項4】アルコールが炭素数1〜4の低級アルコー
    ルであり、混合溶媒における水とアルコールの混合割合
    が約1:0〜約1:5(v/v)である請求項1又は2
    に記載のチタニア粉末の製造方法。
  5. 【請求項5】チタン塩が硫酸チタンまたはオキシ硫酸チ
    タンであり、混合溶媒における水とアルコールの混合割
    合が約1:0.5〜約1:1.5である請求項1又は2
    に記載のチタニア粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】チタン塩が塩化チタンまたはオキシ塩化チ
    タンであり、混合溶媒における水とアルコールの混合割
    合が約1:0.5〜約1:5.0である請求項1又は2
    に記載のチタニア粉末の製造方法。
  7. 【請求項7】チタン塩の溶液が約0.1〜約0.3Mの
    濃度である請求項1又は2に記載のチタニア粉末の製造
    方法。
  8. 【請求項8】アルコールがプロパノールである請求項5
    に記載のチタニア粉末の製造方法。
  9. 【請求項9】アルコールがプロパノールである請求項6
    に記載のチタニア粉末の製造方法。
  10. 【請求項10】マイクロ波で急速加熱を行なう請求項1
    又は2に記載のチタニア粉末の製造方法。
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