JP2837112B2 - 音速ノズルを用いた質量流量制御方法および装置 - Google Patents

音速ノズルを用いた質量流量制御方法および装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音速ノズルを利用した
質量流量制御方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年においては各種産業の発展に伴い質
量流量の制御を行う必要が増大し、質量流量を精度良く
制御できないと製造等が適切に実施できない分野が多く
なってきている。例えば、半導体産業の分野では、微細
加工技術の発展と共に高集積化が進み、半導体製造プロ
セスの微細化にもとないウエハ上に生成される薄膜の制
御は重要となってきている。この薄膜の成長制御はプロ
セスガスの微少流量制御によって行われる。したがっ
て、このような製造過程において使用されるプロセスガ
ス等の流体の流量制御は、再現性、安定性だけでなく、
正確な絶対値としての質量流量が要求される。現在のと
ころ、このようなプロセスガス等の流体の流量制御は、
その殆どが熱式の質量流量計を用いて行われている。し
かしながら、いままでの質量流量計を用いた流量制御で
は、微少流量制御を必要とされるレベルで精度よく正確
に行うことを期待できない場合がある。
【0003】ここで、質量流量計としては音速ノズルが
利用されている。一般的には、この音速ノズルは、質量
流量にして約50グラム/分以上の中流量域において使
用されている。音速ノズルは、そのレイノルズ数が10
6 以上の領域においては流出係数が一定であり、その変
動率が0.1パーセント以下である。また、その上流側
流体圧力と下流側流体圧力の関係を臨界圧力比以下に保
持して音速流を形成すれば、下流側の流体圧力、温度等
の流体条件に影響されずに一定の質量流量で流体を供給
することができる。したがって、非常に正確に一定の質
量流量を得ることができる。しかし、レイノルズ数が1
6 よりも小さな領域では流出係数が非線型で大幅に変
化するので、このような範囲での使用、すなわち、微少
流量域では全く利用されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、音速ノズ
ルの利用領域として全く考慮されていなかった低レイノ
ルズ数域に着目し、音速ノズルを定流量素子としてでは
なく可変流量素子として利用可能なことを見いだした。
【0005】そして、本発明の課題は、この点に鑑み
て、このようなレイノルズ数の低い領域において音速ノ
ズルを用いて、従来に比べて精度良く微少流量制御を行
うことの可能な流量制御方法および装置を実現すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の音速ノズルを用いた質量流量制御方法
は、流体供給源と流体が供給される側の間を連通する流
体通路に、音速ノズルを直列に接続し、この音速ノズル
の下流側流体圧力(Pd)および上流側流体圧力(P
u)の比を臨界圧力比よりも小さくなるように保持し、
当該音速ノズルのスロート直径に基づくレイノルズ数
(ReTH)に対応する実際の流出係数(Cd)を較正
試験により求め、この関係に基づき、前記音速ノズルの
上流側流体圧力(pu)または流体温度(Tu)を変化
させて、前記音速ノズルを通過する流体の質量流量を目
標とする流量(Qm)となるように制御するようにして
いる。
【0007】ここで、使用する音速ノズルの個数は1個
でもよいが、制御レンジを広げるためには、同一径ある
いは異なる径の音速ノズルを流体通路に対して並列に多
数個接続すればよい。
【0008】また、本発明の方法は、特に微少流量制御
に適したものであり、レイノルズ数が106 未満の領域
内において使用される。特に、レイノルズ数が104
下の領域内において使用することができる。
【0009】一方、本発明の質量流量制御装置は、上記
方法を具現化したものであり、流体供給源から供給され
る流体を被供給側に向けて供給するための流体通路に直
列接続状態に介挿した音速ノズルと、この音速ノズルの
上流側流体圧力(Pu)および下流側流体圧力(Pd)
を検出する圧力検出手段と、前記音速ノズルの上流側流
体温度(Tu)を検出する温度検出手段と、予め求めら
れた前記音速ノズルのスロート直径に基づくレイノルズ
数(ReTH)と実際の流出係数(Cd)の対応関係を
記憶している記憶手段と、前記音速ノズルの上流側流体
圧力および密度のうちの少なくとも一方を変更可能な変
更手段と、この変更手段を制御して、目標とする質量流
量を得るための制御手段とを有する構成を採用してい
る。
【0010】この場合においても、多数個の音速ノズル
を並列配置することにより、流量制御範囲を広い範囲に
することができる。すなわち、微少流量から中流量の領
域に渡っての流量制御を実現できる。
【0011】
【作用】本発明の方法および装置においては、音速ノズ
ルを用いているので、下流側の流体条件に影響されるこ
となく流量の制御を行うことができる。また、音速ノズ
ルのスロート直径に基づくレイノルズ数(ReTH)と
実際の流出係数(Cd)の対応関係は、再現性があり、
変動幅も0.1パーセント程度に抑制したものを得るこ
とができることが確認されたので、高精度で微少流量制
御を行うことができる。さらには、上流側の流体条件を
変えるのみで流量を調整でき、ノズル径を絞る等といっ
た機械的な可動部分が不要であるので、信頼性のある流
量制御を実現できる。
【0012】
【実施例】以下に、図面を参照して、本発明の実施例を
説明する。
【0013】図1には、本発明を適用した質量流量制御
装置の概略構成を示してある。この図に示すように、本
例の質量流量制御装置1は、流体供給源2の側に連通し
ている上流側配管3と、流体供給系の下流側に配置され
ている真空ポンプ4の吸入ポートに連通している下流側
配管5との間に介挿される。
【0014】この質量流量制御装置1は、上流側配管3
と下流側配管5の間に接続された配管11を備え、この
配管11には、上流側から、管内圧力調整用の可変バル
ブ12と音速ノズル13がこの順序に配列されている。
音速ノズル13の上流側には、上流側流体の圧力Puお
よび温度Tuを検出するための圧力センサ14および温
度センサ15が取付けれ、その下流側には、下流側流体
の圧力Pdを検出するための圧力センサ16が取付けら
れている。
【0015】これら各センサの出力は、A/Dコンバー
タ17、18、19を介してデジタル化されて、マイク
ロコンピュータから構成される制御回路20に入力され
る。
【0016】制御回路20は、CPU、ROM、RAM
等を備え、I/Oポートを介して入力されたセンサ出力
に基づき、予めROM内に格納されている制御プログラ
ムを実行して、音速ノズル13を介して下流側に供給さ
れる流体の質量流量が、目標とする質量流量となるよう
に、ドライバ21を介して可変バルブ12を制御して、
音速ノズル13の上流側流体圧力Puを変化させる。
【0017】音速ノズル13としては、例えば、ISO
型トロコイダルスロートソニックベンチュリノズルを用
いることができ、この形式のノズル断面を図2(a)に
示してある。音速ノズル13は、例えば、図2(b)に
示すような形状のノズルホルダ130に取り付けて使用
する。本例で使用するのに適したノズル13のスロート
直径Dは約0.2mmから約0.7mm程度の細いもの
である。従来において一般的に使用されている中流量領
域で使用される音速ノズルのスロート直径は通常は約2
mm程度のものである。
【0018】この音速ノズル13の臨界圧力比(Pd/
Pu)は0.5乃至0.6の範囲である。この臨界圧力
比を越えないように上流側および下流側の流体圧力P
u、Pdを保持すれば、レイノルズ数が大きな領域では
ノズルの流出係数Cdはほぼ一定値をとり、その変動幅
は0.1パーセント以内である。ここで、この流出係数
Cdとは、理論質量流量QmTHと実際に精密天秤を使
って測定された質量流量Qmの比である。理論質量流量
は次式で表される。
【0019】 QmTH=a(*)・ρ(*)・A(*) (1) a(*):スロート部での音速 ρ(*):スロート部での密度 A(*):スロートの断面積 一方、図3には、音速ノズルの上流側流体圧力を制御し
て、スロート部分でのレイノルズ数ReTHを変化さ
せ、臨界圧力比よりも低い安定した圧力比(例えば、P
d/Pu=0.4)での音速ノズルの流出係数のレイノ
ルズ数の依存性の定性的変化状態を示してある。このグ
ラフから分かるように、レイノルズ数が104 以上、通
常は106 以上の領域では、一定値をとり、その変動幅
は0.1パーセントに過ぎない。このために、音速ノズ
ルは中流量以上の領域において一定質量流量素子して広
く利用されている。
【0020】しかし、例えば、104 程度よりも低いレ
イノルズ数の領域においては、流出係数はレイノルズ数
の変化に応じて非線型に変動する。したがって、このよ
うな所謂微少流量領域においては音速ノズルが使用され
ることはなかった。しかるに、このような低いレイノル
ズ数の領域における流出係数とレイノルズ数の対応関係
が判り、しかも、得られた対応関係に再現性があり変動
幅が0.1パーセントのような極めて微少であれば、こ
の領域を利用して、音速ノズルを質量流量制御のための
可変質量流量素子として利用することができる。本発明
者は、この点に着目して、実験を行ったところ、再現性
よくしかも正確にこのような領域におけるレイノルズ数
と流出係数との関係を求めることが可能なことを見いだ
した。すなわち、次式を求めることができる。
【0021】 Cd=f(ReTH) (2) このような関係式を実験により予め求めておき、音速ノ
ズルの上流側流体の圧力Puおよび温度Tuを検出すれ
ば理論質量流量QmTHおよび理論レイノルズ数ReT
Hを算出でき、算出したレイノルズ数に基づき、上記の
関係式Cd=f(ReTH)から実際の流出係数Cdを
算出できるので、次の関係式から実際の質量流量Qmを
算出することができる。
【0022】 Qm=Cd・QmTH (3) したがって、目標とする質量流量Qmを得るためには、
そのようなQmが得られるように、上記の関係式(2)
に基づき、音速ノズルの上流側流体の圧力Puまたは温
度(Tu)を制御すればよいことになる(勿論、双方を
制御してもよい。)。密度は、圧力および温度を検出す
ることにより算出することができる。
【0023】ここで再び図1に戻って本例の質量流量制
御装置1を説明すと、制御回路20のROM内には、音
速ノズル13を用いて較正試験を行うことによって求め
たレイノルズ数と流出係数の関係式(2)が予め対応テ
ーブルの形態で格納されている。したがって、入力部
(図示せず)を介して目標質量流量を設定入力すれば、
CPUにより演算が実行されて、その値の質量流量を得
るための上流側圧力Puおよび密度ρuが算出され、こ
れらの値となるように、可変バルブ12が駆動制御され
る。
【0024】このように構成した本例の質量流量制御装
置1は、音速ノズル13を使用して、質量流量、特に微
少質量流量を制御するようにしている。低いレイノルズ
数の領域、すなわち106 よりも小さな領域、特に10
4 以下の低い領域においては、実験により、再現性のあ
る変動幅の極めて小さなレイノルズ数と流出係数の関係
式を求めることができるので、極めて精度のよい微少流
量制御機構を実現できる。また、下流側流体の圧力、温
度等の条件が変動してもそれが質量流量には影響しない
という音速ノズルの優れた利点をそのまま活用できると
いう効果がある。さらには、機械的な可動部分を用いる
ことなく、上流側の流体の圧力、温度を変えるのみで目
標とする質量流量を得ることができるので、極めて信頼
性のある制御機構を実現できる。
【0025】なお、上記の例においては、音速ノズルを
1個だけ使用している。しかし、低いレイノルズ数の領
域において径の細い1個の音速ノズルを使用したのみで
は、広レンジでの質量流量調整を行うことができない。
したがって、一般には、同一径あるいは異なる径の音速
ノズルを多数個並列に接続し、これらの上流側に開閉弁
を接続して、選択的に必要な音速ノズルを用いて、必要
とされる質量流量の流体を下流側に供給することが望ま
しい。例えば、スロート直径Dが0.2mm、0.3m
m、0.5mm、0.7mmの4個の音速ノズルを並列
接続して使用することができる。
【0026】また、上記の例では、ベンチュリノズルを
用いているが、その他の形状の音速ノズルを用いてもよ
いことは勿論である。また、上記の例では、マイクロコ
ンピュータを用いて、関係式(2)を対応テーブルの形
態でデジタル値として記憶しているが、例えば、関数発
生器等を用いて関係式(2)を発生させてもよい。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の質量流量
制御方法および装置においては、低レイノルズ数の領域
でのレイノルズ数に対する音速ノズルの流出係数の関係
を予め実験により求めておき、この関係に基づき、音速
ノズルの上流側の圧力および密度を調整して、目標とす
る質量流量を得るようにしている。上記の関係は再現性
のある極めて変動幅の少ないものであるので、極めて正
確な微少質量流量の制御を実現することができる。ま
た、音速ノズルを用いているので、下流側の圧力、温度
等の変動要因には左右されずに流量制御を行うことがで
きるという実用上極めて優れた利点がある。さらには、
流量制御を行う部分である音速ノズルには、機械的な可
動部分が無いので、信頼性のある質量流量調整を実現で
きるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である微少質量流量制御装置
の概略構成図である。
【図2】図1の装置に組み込まれた音速ノズルの例を示
す図であり、(a)はその縦断面図、(b)はそれをホ
ルダに取付けた状態の縦断面図である。
【図3】音速ノズルにおけるレイノルズ数に対する実際
の流出係数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 質量流量制御装置 2 流体供給源 3 上流側配管 4 真空ポンプ 5 下流側配管 11 配管 12 可変バルブ 13 音速ノズル 14 圧力センサ 15 温度センサ 16 圧力センサ 17、18、19 A/Dコンバータ 20 制御回路 21 ドライバ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊奈 義高 神奈川県横浜市港北区新羽町2024−1 ライオンズマンション大倉山新羽町601 (72)発明者 横井 由一 神奈川県横浜市鶴見区上の宮2−24−8 (72)発明者 早川 正男 東京都府中市分梅町5−9−2 審査官 田良島 潔 (56)参考文献 特開 昭51−144889(JP,A) 実公 平2−12576(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G05D 7/06

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体供給源と流体が供給される側の間を
    連通する流体通路に、音速ノズルを直列に接続し、この
    音速ノズルの下流側流体圧力(Pd)および上流側流体
    圧力(Pu)の比を臨界圧力比よりも小さくなるように
    保持し、当該音速ノズルのスロート直径に基づくレイノ
    ルズ数(ReTH)に対応する実際の流出係数(Cd)
    を較正試験により求め、この関係に基づき、前記音速ノ
    ズルの上流側流体圧力(Pu)および流体温度(Tu)
    のうちの少なくとも一方を変化させて、当該音速ノズル
    を通過する流体の質量流量を目標とする流量(Qm)と
    なるように制御することを特徴とする質量流量制御方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記音速ノズルは並
    列接続された複数個の音速ノズルを含み、これらの音速
    ノズルのレイノルズ数と実際の流出係数の関係を個々に
    求め、これらの関係に基づき、複数の音速ノズルを用い
    てこれらを通過する流体の質量流量を目標とする流量と
    なるように制御することを特徴とする質量流量制御方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、レイノルズ
    数が106 未満の領域内において質量流量の制御を行う
    ことを特徴とする質量流量制御方法。
  4. 【請求項4】 流体供給源から供給される流体を被供給
    側に向けて供給するための流体通路に直列接続状態に介
    挿した音速ノズルと、この音速ノズルの上流側流体圧力
    (Pu)および下流側流体圧力(Pd)を検出する圧力
    検出手段と、前記音速ノズルの上流側流体温度(Tu)
    を検出する温度検出手段と、予め求められた前記音速ノ
    ズルのスロート直径に基づくレイノルズ数(ReTH)
    と実際の流出係数(Cd)の対応関係を記憶している記
    憶手段と、前記音速ノズルの上流側流体圧力を変更可能
    な変更手段と、この変更手段を制御して、目標とする質
    量流量を得るための制御手段とを有することを特徴とす
    る質量流量制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4において、前記音速ノズルは、
    並列接続された複数個の音速ノズルを含んでおり、各々
    の音速ノズルのレイノルズ数と実際の流出係数の関係が
    前記記憶手段によって記憶されていることを特徴とする
    質量流量制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4または5において、レイノルズ
    数が106 未満の領域内において質量流量の制御を行う
    ことを特徴とする質量流量制御装置。
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