JP2833311B2 - エアバッグ装置の衝突センサシステム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、車両の衝突を検知
し、エアバッグを展開させて二次衝突から乗員を保護す
るエアバッグ装置の衝突センサシステムに関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】衝突時に展開して乗員を保護するエアバ
ッグは、エアバッグ装置の一部であるインフレータで発
生する不活性ガスによって膨張させられるもので、特に
電気式エアバッグ装置は、車体の所定の部位に配設した
衝突センサが衝突を検知した際に出力される信号によっ
てインフレータ内のガス発生剤が点火され、発生する大
量のガスがエアバッグ内に急速に充填されて瞬時に膨張
し、例えば側面衝突時には、乗員とサイドドア内面等の
車室内側壁との間にエアバッグが展開して、二次衝突か
ら乗員を保護する。

【０００３】したがって、車体の構造による衝撃吸収量
が少ない側面衝突の場合には極めて短い時間でエアバッ
グを膨張させなければならないため、高感度の衝突セン
サを、車体上で最も速く衝突を検知できる箇所に取付け
る必要がある。

【０００４】そこで本願出願人は、この種の衝突センサ
システムについて特願平３−１６９３３３号として既に
出願している。この衝突センサシステムは、図４および
図５に示すように、サイドドア１内に設けられているサ
イドドアビーム２に衝突センサ３を配設したもので、こ
の衝突センサ３は、車両側面のサイドドアビーム２のド
アアウタパネル４側に設けられた長尺で板状のセカンダ
リセンサ５と、このセカンダリセンサ５の表面に重ねて
所定の間隔で配置された複数のプライマリセンサ６とを
備えており、各プライマリセンサ６は、比較的小さな衝
突荷重で圧潰し、このセンサ内に対向配置された接点が
互いに接触して電流が流れることにより衝突を検知する
高感度のセンサで、またセカンダリセンサ５は、プライ
マリセンサ６の場合より大きな所定以上の衝突荷重が加
わった場合に圧潰されて、プライマリセンサ６と同様
に、対向配置された接点が互いに接触して電流が流れる
ことにより衝突を検知するものである。

【０００５】また、このプライマリセンサ６およびセカ
ンダリセンサ５は、車体の中央寄りに設けられた制御装
置７にそれぞれ電気的に接続されており、同時に２個以
上のプライマリセンサ６が衝突を検知するか、あるいは
セカンダリセンサ５が衝突を検知すると、制御装置７か
ら図示してないインフレータへ着火信号が発信されるよ
うにして、衝突荷重の加わる広さが所定の範囲より狭い
場合には着火信号を出力しないように設定して、高感度
のプライマリセンサ６の非衝突時の誤動作を防ぐように
している。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述したように、同時
に２個以上のプライマリセンサ６が衝突を検知した場合
に、制御装置７からインフレータに着火信号が発信され
るように設定されている場合には、例えば図７に示すよ
うに、加害車両Ｗが被害車両Ｖの車体側面にほぼ直角に
衝突した場合には、２個以上のプライマリセンサ６が同
時に圧潰されて、同時に衝突が検知されるが、図６に示
すように加害車両Ｗが被害車両Ｖの車体側面に対して、
左側斜め前方から擦るように衝突した場合には、プライ
マリセンサ６が、前部側から後部側へ順々に圧潰される
ため、２個以上のプライマリセンサ６がそれぞれ衝突を
検知して、同時に検知信号を出力することがなく、した
がって、このような状況を考慮して、インフレータに確
実に着火信号を発信するために、セカンダリセンサの感
度を調整しなければならず、その感度調整が困難であっ
た。

【０００７】この発明は、上記の事情に鑑みなされたも
ので、斜め前方あるいは斜め後方からの側面衝突を容易
に検知することのできるエアバッグ装置の衝突センサシ
ステムを提供することを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの手段としてこの発明は、所定の間隔で配置された複
数の衝突センサのうちの２つ以上の衝突センサが車両の
衝突を検知することにより、同時に検知信号を出力して
ガス発生手段を動作させ、そのガス発生手段から発生す
るガスによりエアバッグを膨張させて、二次衝突から乗
員を保護するエアバッグ装置の衝突センサシステムにお
いて、前記衝突センサのうち車両の衝突を最初に検知し
た衝突センサが出力する信号を一定時間保持する信号保
持手段と、この信号が保持されている間に、他の衝突セ
ンサが衝突を検知して検知信号を出力した場合に、ガス
発生手段を作動させる信号を出力する出力手段とを含む
制御装置を有することを特徴としている。

【０００９】

【作用】上記のように、このエアバッグ装置の衝突セン
サシステムにおいては、加害車両と被害車両とが、同時
に広い面積に亘って衝突することにより、複数の衝撃セ
ンサが同時に衝突を検知した場合は、複数の衝突センサ
から同時に検知信号が出力される。すると、これらの検
知信号に基づいてガス発生手段が動作し、発生するガス
によってエアバッグが膨張・展開する。一方、所定の間
隔で配置された各衝突センサが衝突を検知したときに出
力する信号を、制御装置において一定時間保持するとと
もに、この信号が保持されている間に、別の衝突センサ
が衝突を検知して信号を出力すると、時間差を伴って出
力された２つの信号が同時に検出されるため、制御装置
から信号が出力されてガス発生手段がスイッチＯＮす
る。その結果、ガス発生手段からガスが発生してエアバ
ッグを膨張させ、乗員を二次衝突から保護する。

【００１０】

【実施例】以下、この発明のエアバッグ装置の衝突セン
サシステムを、側面衝突センサシステムに適用した実施
例を図１ないし図３に基づいて説明する。

【００１１】図１はこの発明の側面衝突センサシステム
の第１実施例を示すもので、車体側面のサイドドアＤ内
には、圧潰される接点が接触して衝突を検知する複数の
衝突センサ１１ａ，１１ｂ，１１ｃ，１１ｄが、車体前
方側（図１において左側）から所定の間隔で配置されて
おり、衝突センサ１１ａ，１１ｂ，１１ｃ，１１ｄのう
ちの１つが先ず側面衝突を検知すると、制御装置１２に
対して検知信号を発信するようになっている。

【００１２】また制御装置１２は、その内部に信号保持
回路と信号出力回路とを有しており、衝突センサ１１
ａ，１１ｂ，１１ｃ，１１ｄのうちの１つから検知信号
が入力されると、信号保持回路においてそれぞれの信号
を一定時間（例えば５〜１５ms程度）ホールドするとと
もに、この検知信号がホールドされている間に、残りの
衝突センサのうちの１つが衝突を検知し、その検知信号
が入力されて、同時に２つの検知信号が入力されたのと
同じ状態となるため、信号出力回路よりインフレータ１
３に対して着火信号を出力するようになっている。

【００１３】次に、上記のように構成されるこの実施例
の作用を説明すると、例えば被害車両の側面に、車両の
進行方向に対して直角方向から加害車両が側面衝突した
場合には、複数の衝突センサ１１ａ，１１ｂ，１１ｃ，
１１ｄのうちの２つ以上が同時に衝突を検知してそれぞ
れ検知信号を出力するため、両検知信号が同時に入力さ
れることにより、制御装置１２からインフレータ１３に
対して着火電流が流れ、着火されたインフレータ１３か
ら発生する窒素ガスによってエアバッグが膨張し、サイ
ドドア内面と乗員との間に展開して、二次衝突から乗員
を保護する。

【００１４】また、加害車両が被害車両の車体側面に対
して、左側斜め前方から後方へ擦るように側面衝突した
場合には、所定の間隔で複数配置されている衝突センサ
１１ａ，１１ｂ，１１ｃ，１１ｄが、衝突荷重によって
前部側から後部側へ順々に圧潰されるため、前方側から
衝突センサ１１ａ、衝突センサ１１ｂ、衝突センサ１１
ｃ、衝突センサ１１ｄの順に衝突を検知する。したがっ
て、最初の衝突を検知した衝突センサ１１ａから制御装
置１２に対して検知信号が入力されると、この信号は制
御装置１２の信号保持回路において一定時間ホールドさ
れる。そして２番目の衝突センサ１１ｂが衝突を検知し
て検知信号を出力すると、制御装置１２においてホール
ドされている信号に加えて２番目の検知信号が入力され
るため、２つの信号が同時に入力されたのと同じ状態と
なる。その結果、制御装置１２の信号出力回路からイン
フレータ１３に着火信号が送られて、インフレータが着
火される。そして、着火されたインフレータから発生す
る窒素ガスが、エアバッグ内に充填されて膨張し、サイ
ドドアの内面と乗員との間に展開して、二次衝突から乗
員を保護する。

【００１５】なお、この実施例で用いた衝突センサ１１
ａ，１１ｂ，１１ｃ，１１ｄをプライマリセンサとし
て、別のセカンダリセンサと組合わせて使用することも
できる。また、この実施例においては、説明の便宜上、
４つの衝突センサ１１ａ，１１ｂ，１１ｃ，１１ｄを備
えた場合について説明したが、衝突センサの数は任意に
増減することができる。

【００１６】また図２および図３はこの発明の側面衝突
センサシステムの第２実施例を示すもので、車体側面の
サイドドアＤ内には、複数の衝突センサ群１４，１５が
配設されており、一方の衝突センサ群１４は、圧潰する
と接点が接触して衝突を検出する３つの衝突センサ１４
ａ，１４ｂ，１４ｃを並列に接続したもので、また衝突
センサ群１５は、同様に並列に接続された３つの衝突セ
ンサ１５ａ，１５ｂ，１５ｃから構成されており、図３
に示すように、所定の間隔で配設された複数の衝突セン
サ１４ａ，１５ａ……１４ｃ，１５ｃがそれぞれ隣接す
るものの属する衝突センサ群１４，１５が異なるように
して、所定の間隔で取付け用平板１６上に配置されてい
る。そして、各衝突センサ群１４，１５のそれぞれから
１つずつの衝突センサより信号が入力されたとき、例え
ば車両前方側の衝突センサ１４ａが衝突を検知した後、
衝突センサ１５ａが遅れて衝突を検知した場合には、制
御装置１７に衝突センサ１４ａから入力された信号が一
定時間ホールドされ、この最初の信号がホールドされて
いる間に、衝突センサ１５ａが衝突を検知して発信した
２番目の検知信号が入力されると、制御装置１７からイ
ンフレータ１８に対して着火電流が流れるようになって
いる。また、例えば同一の衝突センサ群１４中の２つの
衝突センサ１４ａと衝突センサ１４ｂが、それぞれ衝突
を検知して同時に検知信号を発信した場合には、制御装
置１７から着火電流は流れないようになっている。

【００１７】そして、上記のように構成されるこの実施
例の側面衝突センサシステムは、被害車両の側面に、車
両の進行方向に対して直角方向から加害車両が側面衝突
した場合には、異なる衝突センサ群１４，１５のそれぞ
れから１つずつ、例えば衝突センサ１４ａと衝突センサ
１５ａとが同時に衝突を検知してそれぞれ検知信号を出
力するため、両検知信号が同時に入力されることによ
り、制御装置１７からインフレータ１８に対して着火電
流が流れ、着火されたインフレータ１８から発生する窒
素ガスによってエアバッグが膨張し、前記第１実施例の
場合と同様に、サイドドア内面と乗員との間に展開し
て、二次衝突から乗員を保護する。

【００１８】また、加害車両が被害車両の側面に対し
て、左側斜め前方から擦るように側面衝突した場合に
は、所定の間隔で複数配置されている衝突センサ１４
ａ，１５ａ，１４ｂ，１５ｂ，１４ｃ，１５ｃが、衝突
荷重によって前部側から後部側へ順々に圧潰されるた
め、前方側から衝突センサ１４ａ、衝突センサ１５ａ、
衝突センサ１４ｂ、衝突センサ１５ｂの順に衝突を検知
する。したがって、最初に衝突を検知した衝突センサ１
４ａから制御装置１７に対して検知信号が入力される
と、この信号は制御装置１７において一定時間ホールド
される。そして２番目の衝突センサ１５ａが衝突を検知
して検知信号を出力すると、制御装置１７においてホー
ルドされている信号に加えて２番目の検知信号が入力さ
れるため、２つの信号が同時に入力されたのと同じ状態
となる。その結果、制御装置１７から着火電流が流れて
インフレータ１８が着火される。そして、着火されたイ
ンフレータ１８から発生する窒素ガスが、エアバッグ内
に充填されて膨張し、サイドドアの内面と乗員との間に
展開して、二次衝突から乗員を保護する。

【００１９】この実施例においては、例えば３つの衝突
センサ１４ａ，１４ｂ，１４ｃを並列に接続して衝突セ
ンサ群１４としたので、サイドドア内の衝突センサと車
体側に設けられた制御装置との間の配線を大幅に減少さ
せることができる。

【００２０】なお、前記両実施例の場合には、この発明
の衝突センサシステムを側面衝突センサシステムに適用
した場合について説明したが、正面衝突用の衝突センサ
システムとしても好適に実施することができる。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したようにこの発明のエアバッ
グ装置の衝突センサシステムは、衝突を検知したときに
それぞれ検知信号を出力する複数の衝突センサと、この
各衝突センサのうち車両の衝突を最初に検知した衝突セ
ンサが出力した信号を一定時間保持するとともに、この
信号が保持されている間に、別の衝突センサが衝突を検
知して出力した検知信号が入力された場合に、ガス発生
手段をスイッチＯＮさせる信号を出力する制御装置とを
有しているので、車両外面を擦るような衝突時のよう
に、一定の時間内に２つ以上の衝突センサから時間差を
伴って検出信号が出力される場合にも衝突を検出して、
エアバッグを展開させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の衝突センサシステムを側面衝突セン
サシステムに適用した第１実施例のブロック図である。

【図２】同じく側面衝突センサシステムに適用した第２
実施例のブロック図である。

【図３】第２実施例における衝突センサの配置例を示す
説明図である。

【図４】従来の側面衝突センサシステムにおける衝突セ
ンサの配置を示すサイドドアの一部切欠斜視図である。

【図５】従来の側面衝突センサシステムの構成を示す説
明図である。

【図６】斜め前方からの側面衝突を示す説明図である。

【図７】真横からの側面衝突を示す説明図である。

【符号の説明】

１１ａ 衝突センサ １２ 制御装置 １３ インフレータ １４ 衝突センサ群 １４ａ 衝突センサ １５ 衝突センサ群 １５ａ 衝突センサ １７ 制御装置 １８ インフレータ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定の間隔で配置された複数の衝突セン
   サのうちの２つ以上の衝突センサが車両の衝突を検知す
   ることにより、同時に検知信号を出力してガス発生手段
   を動作させ、そのガス発生手段から発生するガスにより
   エアバッグを膨張させて、二次衝突から乗員を保護する
   エアバッグ装置の衝突センサシステムにおいて、 前記衝突センサのうち車両の衝突を最初に検知した衝突
   センサが出力する信号を一定時間保持する信号保持手段
   と、この信号が保持されている間に、他の衝突センサが
   衝突を検知して検知信号を出力した場合に、ガス発生手
   段を作動させる信号を出力する出力手段とを含む制御装
   置を有することを特徴とするエアバッグ装置の衝突セン
   サシステム。