JP2831162B2 - 多色印刷機用見当制御方法および装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は多色印刷機の印刷物の各
色の見当を自動的に合わせる見当制御方法および装置に
関する。

【０００２】

【従来の技術】通常の多色印刷においては、紙の上に
墨、藍、紅、黄の４色を刷り重ねて種々の色を再現す
る。この際、紙面上での各色間の相対印刷位置に可能な
限り一致させて、各色は印刷される必要がある。その一
致度の許容差は、±５０μｍ以下と言われている。

【０００３】従来、多色印刷機での各色間での見当合せ
は、まず、何枚かのテスト印刷を行い、次いで、それら
の印刷サンプルでの見当ズレ量をルーペ等で観察し、そ
の結果に応じて印刷機の見当調整装置によって、手動で
色見当を合せていた。したがって、見当合わせ作業は印
刷機のオペレータにとって大きな作業負担であった。こ
のため、多色印刷機において自動的に色見当を合わせる
装置が各社で開発され、発表されている。

【０００４】一例として、特開昭６０−１２９２６１号
公報による見当調整装置は、印刷版上にレジスターマー
クを入れて版材の位置関係を合わせることにより印刷開
始前に色見当を合わせようとするものである。しかしな
がら、この装置においては、版材上にマークを入れるこ
とは手間がかかる上に、印刷用紙の伸び縮みのため見当
合わせが正確にできないという問題があり、実際にはそ
れほど利用されていない。また、上記以外に印刷用紙に
印刷された特殊マークを光学センサで読み取って、見当
合わせを行う装置もあるが、この装置においても、特殊
なマークを入れる手間や用紙の無駄等の問題が残されて
いる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術には次
のような問題点がある。 （１）手動による色見当合わせ 作業者の熟練を必要とする他、可成りの労力と時間が必
要となる。 （２）特開昭６０−１２９２６１号公報の見当調整 印刷版上にレジスタ−マークを入れる作業に手間がかゝ
る。仮に版材の位置関係が合ったとしても、印刷用紙の
伸び縮みのため見当合わせが正確にできない。 （３）特殊マークを光学センサで読み取る方法 印刷用紙に特殊マークを入れる作業に手間がかゝる。ま
た印刷用紙にマークを入れるための余地が必要になる。

【０００６】本発明は、特別な見当合わせ用マークを必
要とせず、更に色分離の難しい墨色と他の３色の重ね刷
り部の識別が可能な多色印刷機用見当制御方法と制御装
置を提供することを目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】特別な見当合わせマーク
を入れることなしに、実際の絵柄と共に印刷される十字
トンボの拡大画像を、同時かつ同一場所の可視画像及び
赤外線画像として入力する手段と、その可視画像データ
から墨以外の各色を検出し、また赤外線画像からは墨だ
けの画像を得て基準位置とし、その基準位置と墨以外の
３色との見当ずれ量を算出する手段と、その算出された
見当ずれ量に応じて見当調整を行う手段とを設ける。

【０００８】

【作用】多色印刷機において、特別な見当合わせマーク
をいれることなしに、製版時に実際の絵柄と供に印刷さ
れる十字トンボを利用して、自動的に各色の見当合わせ
を行う。色分離の難しい墨色とその他のプロセス３色
（藍、紅、黄）の重ね刷り部の区別が可能となる。

【０００９】

【実施例】図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図１は、本発明の全体構成を示す概略図である。ここで
は、オフセット輪転印刷機に適応された実施例について
説明するが、対象となる印刷機がオフセット枚葉印刷機
の場合も同様である。

【００１０】ロール状の巻取り紙から印刷用紙７が、印
刷ユニット１ａ〜１ｄに供給され、各ユニットで墨、
藍、紅、黄の各色の絵柄が順次印刷される。例えば、墨
ユニット１ａは、表用版胴３ａ、表用ゴム胴４ａ、裏用
ゴム胴５ａ、裏用版胴６ａから構成され、２つのゴム胴
の間を印刷用紙７が通過する際に墨インキが加圧転移さ
れ、印刷が実施されることになる。これは、他のユニッ
ト１ｂ、１ｃ、１ｄについても同様である。ここでは、
印刷用紙の表面の見当合わせについてのみ説明を行う
が、裏面に付いても同様に実施可能であるため説明を省
略する。各色の見当合わせのためには、版胴３を回転方
向及び回転軸方向に位相調整を行うことによって見当調
整を行っているが、その調整は通常、特公昭５５−２５
０６２号公報等に開示されているように、各版胴に設け
られた位相合わせ用モータ２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄを駆
動して行っており、公知であるのでここでは詳しい説明
は省略する。

【００１１】各印刷ユニットにて各色の印刷を完了した
印刷用紙７は、乾燥部８で熱風乾燥され、冷却部９で冷
却され、ウェブパス部１５を通り、折部１４で折られて
排出される。ここで、ウェブパス部１５の一部に、フリ
ーガイドローラ１０（以下、ローラーと称する）が設け
られており、ローラ１０に巻き付いた印刷用紙７の十字
トンボを入力するために、光ファイバで印刷表面に集光
可能なストロボ１３と、顕微鏡２２等の拡大撮影装置
と、ハーフミラー２６とを具え、カラーテレビカメラと
赤外線カメラに同一場所のトンボを撮像できるようにし
た図２に示すセンサユニット１１が設けられている。セ
ンサユニット１１の赤外線カメラには、墨色インキの成
分によってのみ吸収を受ける波長範囲の赤外線のみを透
過するフイルター２７が装備されており、このフィルタ
ー２７を透して得られた赤外線画像信号は見当調整回路
２０に入力され、適当な二値化レベルで二値化され墨色
のトンボだけが検出される。また、可視光用カラーカメ
ラからの出力はＲ，Ｇ，Ｂの画像信号に色分解されて、
見当調整回路２０に入力され、それぞれのトンボが得ら
れる。このＲ，Ｇ，Ｂ各トンボから先ほどのフィルター
を透した赤外線カメラで得られた墨色トンボを差し引く
ことによりそれぞれのＲ，Ｇ，Ｂ画像からは藍、紅、黄
のトンボが検出できる。そこで赤外線画像による墨色の
トンボと合わせて４つの画像をエッジ検出等の画像処理
によりそれぞれの天地、左右の境界線を求め、各境界線
間のずれ量を例えば墨色の境界線を基準に算出し、それ
に応じて必要とされる各印刷ユニットの版胴位相合わせ
用モータ２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄを駆動して見当合わせ
が完了する。ここで、見当合わせは連続する印刷物全数
に対応して調整して行ってもよいし、数枚に一度の調整
を行ってもよい。

【００１２】印刷用紙７の進行方向において、センサユ
ニット１１の直前には、マークセンサ１２とよばれる反
射型ビームセンサが取り付けられており、これは印刷用
紙７上に連続して印刷された絵柄の印刷開始位置に設け
られているスタートマーク３０（図２２を参照）を読み
取るためにある。マークセンサ１２で検出するスタート
マーク３０は、図２２の様に印刷用紙７の余白に入れて
もよいし、スタートマークを挿入したくなければ、実印
刷の絵柄そのものの始まり３１でも構わない。さらにロ
ーラ１０にはロータリエンコーダ２１が取り付けてあり
マークセンサにからのスタート信号に対してパルスをカ
ウントすることによりトンボ位置を計測点として扱え
る。また図２に示すように、センサユニット１１はねじ
３３により左右方向に自由に移動できるものとし、任意
のポイントのトンボを計測エリア３２とすることができ
る。

【００１３】図２は、センサーユニット１１の構成を示
している。図２では、印刷用紙上の絵柄を以下の順序で
見当調整装置に取り込む。ローラ１０に取付けたロータ
リエンコーダ２１のタイミングでストロボ１３を発光さ
せ、その光を光ファイバ２３を通して、印刷された印刷
用紙７に照射する。その反射光を顕微鏡２２を通して拡
大しトンボが観測できるまでの画像とし、ハーフミラー
２６でカラーテレビカメラヘッド２４と、墨色インキの
成分によってのみ吸収を受ける波長範囲の赤外線を透過
するフィルター２７を透した赤外線カメラ２８のそれぞ
れに結像させる。この内カラーカメラの画像はカラーカ
メラコントローラ２５でＲ，Ｇ，Ｂ画像信号とし、見当
調整回路２０に送る。

【００１４】次に、見当調整回路内での処理方法につい
て説明する。図３に示すトンボの見当を計測する方法を
例に示すと、まずカラーカメラからのＲ，Ｇ，Ｂの各色
毎の画像信号は各フレームメモリ（画像記録装置）に格
納される。そしてその画像信号を各々設定済みのフレッ
シュホールド値（２値化レベル）にて２値化する。ただ
し、この設定値は、運転条件によって補正することが可
能である。こうして得られたＲ，Ｇ，Ｂの２値化画像
は、各々捕色関係にある藍、紅、黄のトンボとして検出
できる。墨については、理論的にはＲ，Ｇ，Ｂのすべて
に、前述よりさらに厳しいスレッシュホールド値を設定
し、共通する部分が墨と判定することができるが、トン
ボには、色の重なりがあるため、藍、紅、黄の三色が重
なった部分と墨との区別が、可視光のカラーカメラでは
つきにくい。そこで図４乃至図８のように各インキの赤
外線の分光反射率特性を比較すると、１１００〜１３０
０ｎｍまたは、１８００〜２０００ｎｍの波長で墨色イ
ンキだけ反射率の低い波長範囲が存在する。なお、図４
は白紙、図５は墨、図６は藍、図７は黄、図８は紅の分
光反射率特性を示し、図内の数字は波長１９００ｎｍの
分光反射率を示している。このどちらかの波長帯を透過
するフィルター２７を透かした赤外線カメラ２８の画像
をフレームメモリに格納する。そしてその画像信号から
墨色部分だけが反射率が低いので予め設定済のスレッシ
ュホールド値にて２値化することにより検出できる。図
９のように、この赤外線画像で得られた墨色インキ部
を、可視光カラーカメラの画像のマスク画像とし、Ｒ，
Ｇ，Ｂ各画像から差し引く。差し引かれたＲ，Ｇ，Ｂ画
像をそれぞれ捕色関係で二値化すると、図１０乃至図１
２のように、藍、紅、黄のトンボが得られる。ただし見
当が合っていて墨色のトンボに重なっている場合は二値
化結果が無いことになるが、それは調整する必要がない
ので、良いことになる。二値化結果が存在する場合、図
１３の藍を例に示すと、天地方向の見当をみるときに左
右方向にずらせた画像（図１４）と自分自身との論理積
を画像毎に計算することにより、水平成分のみの画像
（図１５）となり、その水平方向の境界を図１９のよう
な簡単な論理フィルターを用いエッジ抽出を行い、求め
る。この場合、図１６のように上下２本の線が求まる
が、基準線例えば墨の境界線より遠い方を境界と認識す
る。そして基準線側の墨の境界線は同様に図１７から図
１９のフィルタにより図１８のように認識され、境界線
に近い方を基準線として選び、２直線間の距離Ｌを図２
１のように求める。それが天地方向のズレ量となる。同
様に左右方向見当は、天地方向に画像をずらせて同様の
計測を行う。ただしフィルタは図２０をつかう。

【００１５】最初に図２３、図２４に示すロック図と処
理フローに沿って全体の処理手順を説明する。はじめに
測定場所を操作員が支持する際に、印刷物全体の絵柄を
特開昭６３−４５５４５号公報に記載されているような
印刷物検査装置のラインセンサで撮影する。この場合、
位置情報が必要なのでカラーにこだわることはない。こ
の画像をモニタテレビに表示し、操作員が、カーソル等
で計測エリアを表示する。そして図２のセンサユニット
全体が移動開始する。ここでその指示された計測場所が
図３に示されている様な十字トンボかどうかを判断す
る。この判定には、二値化法のうちの判別分析法によっ
てでも十分可能である。もし、十字トンボがなければセ
ンサユニット１１を移動させ、十字トンボが見つかるま
で繰り返す必要がある。見つければ、見当計測をする。
そして各色分離、見当ずれ量計測し、版位置調整を行
う。そして、印刷中であれば、常に見当を監視続け、調
整することが可能である。

【００１６】

【発明の効果】本発明は、印刷紙の走行速度に同期して
見当合せ模様の赤外線画像とカラー画像の拡大像を撮影
する手段と、上記赤外線画像を墨色画像に変換する手段
と、上記カラー画像を色分解し更に上記墨色画像を差引
いて藍、紅、黄画像に変換する手段と、上記墨、藍、紅
及び黄画像から各画像のずれ量を演算する手段と、同ず
れ量に基づき、各版胴の位相を調整する手段とからなる
ことにより、次の効果を有する。 （１）特別なマークを入れないので、製版部門の手間が
省ける。 （２）特別なマークを入れないので、印刷用紙の余分な
スペースがいらないなり用紙の節約になるし、従来のマ
ーク部の除去作業の手間が省ける。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係る商業オフセット輪転機の
概略図である。

【図２】図１のセンサユニットの構成図である。

【図３】各色の十字トンボの重なりを示す図である。

【図４】白紙の分光反射率特性を示す図である。

【図５】墨の分光反射率特性を示す図である。

【図６】藍の分光反射率特性を示す図である。

【図７】黄の分光反射率特性を示す図である。

【図８】紅の分光反射率特性を示す図である。

【図９】赤外線画像から得られた墨のトンボ（マスク画
像）を示す図である。

【図１０】カラーカメラの画像を二値化してマスクした
結果の藍のトンボを示す図である。

【図１１】カラーカメラの画像を二値化してマスクした
結果の紅のトンボを示す図である。

【図１２】カラーカメラの画像を二値化してマスクした
結果の黄のトンボを示す図である。

【図１３】藍を例として見当ずれ量を計測する方法の最
初の課程を示す図である。

【図１４】図１３の次の課程を示す図である。

【図１５】図１４の次の課程を示す図である。

【図１６】図１５の次の課程を示す図である。

【図１７】図１６の次の課程を示す図である。

【図１８】図１７の次の課程を示す図である。

【図１９】天地方向のずれ量を求める空間フィルタの図
である。

【図２０】左右方向のずれ量を求める空間フィルタの図
である。

【図２１】見当ずれ量の計測結果を示す図である。

【図２２】印刷物における計測場所の例を示す図であ
る。

【図２３】本発明の実施例のブロック図である。

【図２４】本発明の実施例の処理フローである。

【符号の説明】

１ａ 印刷ユニット １ｂ 印刷ユニット １ｃ 印刷ユニット １ｄ 印刷ユニット ７ 印刷用紙 １０ フリーガイドローラ １１ センサユニット １３ ストロボ ２０ 見当調整回路

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 印刷紙の見当合せ模様を赤外線画像とカ
   ラー画像に撮影し、これらの画像を変換して墨、藍、紅
   及び黄の４画像とし、更に墨色画像を基準として他の各
   色画像のずれ量を演算し、同ずれ量に基づき各版胴の位
   相を調整することを特徴とする多色印刷機用見当制御方
   法。
2. 【請求項２】 印刷紙の走行速度に同期して見当合せ模
   様の赤外線画像とカラー画像の拡大像を撮影する手段
   と、上記赤外線画像を墨色画像に変換する手段と、上記
   カラー画像を色分解し更に上記墨色画像を差引いて藍、
   紅、黄画像に変換する手段と、上記墨、藍、紅及び黄画
   像から各画像のずれ量を演算する手段と、同ずれ量に基
   づき、各版胴の位相を調整する手段とからなることを特
   徴とする多色印刷機用見当制御装置。